説明

音響センサを坑壁の近くに取り付ける装置及び方法

ダウンホールツール用の交換可能スリーブが、ダウンホールツールの周囲に係合するよう構成された実質的に円筒形の本体と、本体から半径方向に延びるブレードと、ブレード内に配置された変換器とを有する。掘削組立体が、ドリルカラーと、ドリルカラーに結合されるよう構成された交換性ブレードと、ブレード内に配置された変換器とを有する。ブレードのサイズ及び変換器のサイズは、ダウンホールツールが入れられた状態で用いられるべき坑井の直径に基づいて選択される。ダウンホールツール用の交換可能スリーブを製造する方法が、スリーブの本体上にブレードを形成してブレードが本体から半径方向に延びるようにするステップと、変換器をブレード内に配置するステップと、スリーブがダウンホールツールに周方向に係合するようスリーブを構成するステップとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、坑井ロッギング(坑井検層)ツールに関する。本発明は、特に、変換器を坑壁の近くに取り付ける装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
坑井ロッギングツールは、炭化水素の抽出のために坑井周りの地層の評価の際に用いられる。ロッギングツールの設計における1つの重要な検討事項は、地層ロッギングデータから地層の性状を導き出すための地層への変換器の結合である。かかる結合は、変換器に利用可能な電力が制限される場合のあるダウンホール環境、例えば電池式の場合がある「掘削しながらロッギングする(LWD:logging-while-drilling)」システムのダウンホール環境において適正な信号を提供するために必要である。
【0003】
典型的なLWD掘削組立体が図1及び図2に示されている。ドリルストリング12が坑井内に吊り下げられており、このドリルストリングは、その下端部のところにドリルビット15を有する。坑外システムが坑井を覆って位置決めされたデリック(やぐら)組立体2を有し、この組立体2は、ロータリテーブル16、ケリー17及びロータリスイベル19を含む。ドリルストリング12は、ロータリテーブル16により回転させられ、このロータリテーブルは、ドリルストリング12の上端部のところでケリー17に係合する。坑外システムは、坑井現場のところに形成されたピット27内に貯留されている坑井流体26を更に有する。ポンプ29が坑井流体26をスイベル19に設けられているポート経由でドリルストリング12の内部に送り出し、それにより、坑井流体は、方向を示す矢印8で示されているようにドリルストンリグ12を通って下方に流れる。坑井流体26は、ドリルビット15のポートを経てドリルストリング12から流出し、次に、方向を示す矢印9により示されているようにドリルストリング12の外部と坑井の壁(坑壁)との間の環状域を通って上方に循環する。坑井流体26は、この周知の仕方でドリルビット15を潤滑すると共にこれが再循環のためにピット27に戻されるときに地層掘屑(カッティングス)を地表まで運搬する。
【0004】
地層ロッギングデータから地層の性状を導き出すため、変換器又はセンサが掘削組立体、例えば上述した掘削組立体に取り付けられている。図1のLWD掘削組立体では、変換器14は、ドリルカラー50内に設けられている。図14に示されているように、低密度窓6aを備えたスリーブ6が変換器14への信号の伝送を視準すると共に変換器14から泥水を排出するのを助けるようドリルカラー50に係合されてもよい。図2では、変換器24は、ドリルカラー50の本体に一体化されたスタビライザ40に取り付けられている。スタビライザ40は、ドリルカラー50の物理的一体部分である。
【発明の概要】
【0005】
一観点では、本発明は、一般に、ダウンホールツール用の交換可能スリーブであって、ダウンホールツールの周囲に係合するよう構成された本体と、本体から半径方向に延びるブレードと、ブレード内に配置された変換器とを有することを特徴とするスリーブに関する。
【0006】
別の観点では、本発明は、一般に、掘削組立体であって、ドリルカラーと、交換可能スリーブとを有し、交換可能スリーブは、ドリルカラーの周囲に係合するよう構成された実質的に円筒形の本体、本体から半径方向に延びるブレード及びブレード内に配置された変換器を有することを特徴とする掘削組立体に関する。
【0007】
別の観点では、本発明は、一般に、掘削組立体であって、ダウンホールツールと、ダウンホールツールの周囲に係合するよう構成された本体及び本体から半径方向に延びる複数個のブレードを有する交換可能スリーブと、ダウンホールツール内に配置されると共にブレードからオフセットする(ずれる)よう位置決めされた複数個の変換器とを有することを特徴とする掘削組立体に関する。
【0008】
別の観点では、本発明は、一般に、掘削組立体であって、ダウンホールツールと、ダウンホールツールに結合されるよう構成された交換性ブレードとを有し、ブレードのサイズは、ダウンホールツールが入れられた状態で用いられるべき坑井の直径に基づいて選択され、掘削組立体は、ブレード内に配置された変換器を更に有し、変換器のサイズは、ブレードのサイズに比例していることを特徴とする掘削組立体に関する。
【0009】
別の観点では、本発明は、一般に、ダウンホールツール用の交換可能スリーブを製造する方法であって、ブレードをスリーブの本体上に形成してブレードが本体から半径方向に延びるようにするステップと、変換器をブレード内に配置するステップと、スリーブがダウンホールツールの周囲に係合するようスリーブを構成するステップとを有することを特徴とする方法に関する。
【0010】
別の観点では、本発明は、一般に、変換器をダウンホールツールに取り付ける方法であって、交換可能スリーブを用意するステップを有し、交換可能スリーブは、本体と、本体から半径方向に延びるブレードと、ブレード内に配置された変換器とを有し、この方法は、スリーブをダウンホールツールの周囲に係合させるステップを更に有することを特徴とする方法に関する。
【0011】
別の観点では、本発明は、一般に、変換器をダウンホールツールに取り付ける方法であって、各々が本体を有する複数個の交換可能スリーブを用意するステップと、スリーブの各々の本体から半径方向に延びるブレードを形成するステップとを有し、ブレードのサイズは、スリーブの各々のサイズとは異なっており、この方法は、変換器をブレードの各々内に配置するステップを更に有し、変換器のサイズは、ブレードのサイズに比例しており、この方法は、スリーブをダウンホールツールが入れられた状態で用いられるべき坑井の直径に基づいて選択するステップと、選択したスリーブをダウンホールツールの周囲に係合させるステップとを更に有することを特徴とする方法に関する。
【0012】
別の観点では、本発明は、一般に、変換器をダウンホールツールに取り付ける方法であって、複数個の交換性ブレードを用意するステップを有し、ブレードのサイズは、互いに異なっており、この方法は、変換器をブレードの各々内に配置するステップを更に有し、変換器のサイズは、ブレードのサイズに比例しており、この方法は、ブレードをダウンホールツールが入れられた状態で用いられるべき坑井の直径に基づいて選択するステップと、選択したブレードをダウンホールツールに結合するステップとを更に有することを特徴とする方法に関する。
【0013】
本発明の他の観点及び利点は、以下の説明及び特許請求の範囲の記載から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】変換器が取り付けられた従来型の掘削しながらロッギングを行うツールの一例を示す図である。
【図2】変換器が取り付けられた従来型の掘削しながらロッギングを行うツールの別の例を示す図である。
【図3】本発明の1つ又は2つ以上の実施形態に従って変換器を坑壁の近くに取り付ける方法及び装置を示す図である。
【図4A】本発明の1つ又は2つ以上の実施形態に従ってドリルカラーに取り付けられたスリーブの側面図である。
【図4B】図4Aに示されているスリーブのIVB−IVB線矢視断面図である。
【図4C】図4Aに示されているスリーブのIVC−IVC線矢視断面図である。
【図5A】本発明の1つ又は2つ以上の実施形態に従ってドリルカラーに取り付けられたスリーブの側面図である。
【図5B】図5Aに示されているスリーブのVB−VB線矢視断面図である。
【図5C】図5Aに示されているスリーブのVC−VC線矢視断面図である。
【図6A】本発明の1つ又は2つ以上の実施形態に従ってドリルカラーに取り付けられたスリーブの側面図である。
【図6B】図6Aに示されているスリーブのVIB−VIB線矢視断面図である。
【図6C】図6Aに示されているスリーブのVIC−VIC線矢視断面図である。
【図7】本発明の1つ又は2つ以上の実施形態に従ってドリルカラーに取り付けられたスリーブの側面図である。
【図8A】本発明の1つ又は2つ以上の実施形態に従ってドリルカラーに取り付けられたスリーブの側面図である。
【図8B】図8Aに示されているスリーブのVIIIB−VIIIB線矢視断面図である。
【図8C】図8Aに示されているスリーブのVIIIC−VIIIC線矢視断面図である。
【図9A】本発明の1つ又は2つ以上の実施形態に従ってドリルカラーに取り付けられたスリーブの側面図である。
【図9B】図9Aに示されたスリーブのIXB−IXB線矢視断面図である。
【図10A】本発明の1つ又は2つ以上の実施形態に従ってドリルカラーに取り付けられたスリーブの側面図である。
【図10B】図10Aに示されているスリーブのXB−XB線矢視断面図である。
【図10C】図10Aに示されているスリーブのXC−XC線矢視断面図である。
【図11】本発明の1つ又は2つ以上の実施形態に従って単一のブレード及び単一の変換器を備えたスリーブの断面図である。
【図12】本発明の1つ又は2つ以上の実施形態としてのスリーブの種々の構成例の断面図である。
【図13】本発明の1つ又は2つ以上の実施形態としてのスリーブの種々のサイズのブレード及び変換器の断面図である。
【図14A】低密度窓を備えた従来型スリーブの一例を示す図である。
【図14B】図14Aに示されたスリーブのXIVB−XIVB線矢視断面図である。
【図14C】図14Bに示されたスリーブのXIVC−XIVC線矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の特定の実施形態について添付の図面を参照して説明する。図中、同一のアイテムは、同一の参照符号で示されている。
【0016】
本発明の実施形態の以下の詳細な説明において、本発明のより完全な理解を可能にするために多くの特定の細部が記載されている。しかしながら、本発明は、これら特定の細部なしで実施できることは当業者には明らかであろう。他の場合、本発明の内容を分かりにくくするのを回避するために周知の特徴について詳細には説明していない。
【0017】
図3は、本発明の実施形態を採用することができる坑井現場システムを示している。1つ又は2つ以上の実施形態は、掘削組立体のダウンホールツール(例えば、ドリルカラー)の周囲に係合するよう構成された交換可能スリーブを提供する。図4〜図14Cは、本発明の1つ又は2つ以上の実施形態としての交換可能スリーブ100を示している。図4Aに示されているように、スリーブ100は、ドリルカラー10の周囲に係合し、このスリーブは、スリーブ100の振動及び回転を阻止するよう構成されたロック機構体30によって特定の向きに配置されると共に保持されている。1つ又は2つ以上の実施形態では、ロック機構体30は、図4Aに示されているようにスリーブ100をドリルカラー10上の適所に固定する歯付き嵌合部品を備えたメカニカルインターフェイスであるのが良い。スリーブ100は、更に、円形ロックリング20により定位置に保持されるのが良い。ロックリング20は、ドリルカラー上でのスリーブ又はスタビライザの回転及び軸方向運動を阻止するために用いられる周知のロックリングであるのが良い。
【0018】
図4Bは、図4AのIVB−IVB線矢視断面図である。1つ又は2つ以上の実施形態によれば、1つ又は2つ以上の変換器(トランスデューサ)104がスリーブ100内に配置されるのが良く、これら変換器104は、ドリルカラー10内のエレクトロニクスキャビティ11を介して電気的に接続されるのが良い。エレクトロニクスキャビティ11は、電子部品、例えばプリント回路板を保持し、それによりロッギングツールエレクトロニクスを坑井流体から保護するよう構成されているのが良い。さらに、変換器104は、当該技術分野において周知のようにドリルカラー10を通って隔壁コネクタ40により電気的に接続されるのが良い。
【0019】
図4Cは、図4AのIVC−IVC線矢視断面図である。1つ又は2つ以上の実施形態では、スリーブ100は、スリーブ100の本体から半径方向に延びる複数個のブレード102を有するのが良く、このスリーブ本体は、実質的に円筒形の形を有するものとして示されている。さらに、図4B及び図4Cに示されているように、変換器104は、ブレード102内に配置されている。
【0020】
図5A〜図5Cは、複数個の大型ブレード202及び大型変換器204を備えたスリーブ200の一実施形態を示しており、図6A〜図6Cは、複数個の小型ブレード302及び小型変換器304を備えたスリーブ300の一実施形態を示している。スリーブ200,300は、ブレードのサイズ及び変換器のサイズを除き、スリーブ100と実質的に同一である。図中、同一のコンポーネントは、同一の参照符号で示されており、これらについての説明については省略する。
【0021】
図4〜図6を互いに比較することにより理解できるように、1つ又は2つ以上の実施形態によれば、ブレードのサイズ及び変換器のサイズは、スリーブごとに様々であって良い。図13は、ブレードのサイズ及び変換器のサイズが特定のロッギング作業の坑井のサイズに応じてどのように様々であって良いかを更に示している。したがって、ブレードのサイズ及び変換器のサイズは、ドリルカラーの寸法(例えば、直径、長さ、壁厚等)が同一のままの状態で、特定の坑井又は作動上の制約に対応するよう変更可能である。例えば、大型ブレードを備えたスリーブは、大径の坑井をロッギングするために選択されるのが良く、小型ブレードを備えたスリーブは、小径の坑井をロッギングするために選択されるのが良い。特定のスリーブは、ブレードと坑壁の内周部との間の距離が最小限に抑えられるよう選択されるのが良い。1つ又は2つ以上の実施形態によれば、変換器のサイズは、図4〜図6の相互比較により理解できるように、ブレードのサイズに比例するのが良い。
【0022】
具体的に説明すると、図5A〜図5Cに示されている実施形態としてのスリーブ200のブレード202は、図4A〜図4Cに示されているスリーブ100のブレード102よりも大きい。かくして、大径坑井に対応するため、スリーブ100をスリーブ200に交換するのが良い。変換器204もまた、大径坑井を励振するのに必要な追加のエネルギーをもたらすよう大型である。他方、図6A〜図6Cに示されている実施形態としてのスリーブ300のブレード302及び変換器304は、ブレード102及び変換器104よりも小型である。かくして、小径坑井に対応するため、スリーブ100をスリーブ300に交換するのが良い。スリーブ300の1つ又は2つ以上の実施形態によれば、変換器304は、ドリルカラー内の凹部又はキャビティ内に延びて変換器304が図6Cに示されているように部分的にドリルカラー内に配置されるようにするのが良い。この形態により、変換器304を小型ブレード302内に配置することができる。
【0023】
本明細書において説明する実施形態としてのスリーブのブレードは、図3〜図6に示されているような真っ直ぐなブレードの形状又は向きには限定されない。1つ又は2つ以上の実施形態では、他の形状及び向きを提供することができる。図7は、螺旋状ブレード402を備えたスリーブ400を示している。スリーブ404は、ブレード402がスリーブ周りに螺旋を描くよう構成されている点を除き、上述した他のスリーブと実質的に同一である。
【0024】
本発明の1つ又は2つ以上の実施形態によれば、変換器をスリーブのブレード内に配置するのではなく、変換器をドリルカラー内にブレードからオフセットした状態で設けても良い。図8A〜図8Cは、ブレード502及び変換器504を備えた一実施形態としてのスリーブ500を示している。図8Bは、図8AのVIIIB−VIIIB線矢視断面図であり、図8Cは、図8AのVIIIC−VIIIC線矢視断面図である。図示のように、変換器504は、ブレード502からオフセットした状態で位置決めされるのが良い。この形態の結果として、ブレード502は、信号相互間の干渉を阻止するバッフルとしての役目を果たすことができ、例えば、坑壁の地層に達する前に音波が坑井流体中で互いに打ち消し合うのを阻止するのを助けることができる。この設計により、特にドリルカラー外周部と坑井内周部との間の距離が長い場合に強力な信号が坑井中に伝搬することができる。
【0025】
本明細書において説明する実施形態としてのスリーブのブレードはまた、耐摩耗性材料(図示せず)により表面硬化されるのが良く、かかる耐摩耗性材料としては、坑壁との接触により起因する摩滅からブレードを保護するよう構成されたセラミック材料が挙げられるが、これには限定されない。ブレードを一段と保護するため、本発明の1つ又は2つ以上の実施形態はまた、図9A及び図9Bに示されているようにゲージスタビライザ60を提供するのが良い。理解できるように、スタビライザ60は、ドリルカラー10にスリーブに隣接したところで係合するよう構成されているのが良い。スタビライザ60は、1つ又は2つ以上のスタビライザブレード62を有し、これらスタビライザブレードは、スリーブ600のブレード602よりも僅かに大きいのが良く、その結果、スタビライザブレード62は、ブレード602が坑壁に接触するのを阻止するようになっている。
【0026】
図4〜図9は、ロック機構体30を歯付き嵌合部品を備えたメカニカルインターフェイスとして示しているが、ロック機構体は、かかる形態には限定されない。例えば、歯付き嵌合部品ではなく、1つ又は2つ以上の実施形態としてのロック機構体は、図14に示されている従来型スリーブ6のピン6b及び6cに類似したドエル又はボルトを有しても良い。当業者であれば認識されるように、ロック機構体は、歯付き嵌合部品と組み合わせて用いられる機構部品、例えばピン又はドエルの組み合わせを有しても良い。スリーブをドリルカラー上の定位置に固定するために当該技術分野において知られている他の形態を用いることができる。
【0027】
本発明の1つ又は2つ以上の実施形態では、スリーブなしでドリルカラーに結合される交換性ブレードを更に提供することができる。図10Aは、ドリルカラー10に直接係合するよう構成された一実施形態としてのブレード72を示している。図10Bは、図10AのXB−XB線矢視断面図であり、図10Cは、図10AのXC‐XC線矢視断面図である。図10B及び図10Cで理解できるように、ブレード72は、ボルト70によりドリルカラー10に結合されるのが良い。上述の実施形態と同様に、変換器74は、ブレード72内に配置され、ブレード72のサイズは、ドリルカラー10が入れられた状態でこのドリルカラー10が用いられる坑井の壁の直径に応じて変更可能である。
【0028】
図4〜図10の各々は、スリーブ上に形成された4つのブレード及び4つのブレードの各々内に配置された変換器を示しているが、本発明は、ブレード又は変換器についていかなる特定の数にも限定されない。例えば、図11に示されているように、本発明の1つ又は2つ以上の実施形態では、単一ブレード及び単一変換器を備えたスリーブ又はドリルカラーを提供することができる。さらに、変換器は、必ずしも全てのブレード内に配置される必要はなく、変換器の数は、必ずしもブレードの数に一致する必要はない。
【0029】
本明細書において説明するスリーブは、種々の仕方でドリルカラーの周囲に係合することができる。1つ又は2つ以上の実施形態によれば、スリーブは、ドリルカラー上でこれに沿って摺動するよう構成されているのが良い。変形例として、図12に示されているように、スリーブは、ドリルカラー周りに相互に係合するよう構成された2つ又は3つ以上の部分で構成されても良い。この実施形態では、2つ又は3つ以上の部分は、互いにヒンジ止めされ、機械的器具(例えば、ねじ、ボルト等)により互いに締結され、互いに溶接され、或いは、ドリルカラーの周囲に係合する他の公知の手段により互いに組み立てられても良い。
【0030】
本明細書において説明する実施形態としての変換器は、種々の形式のものであって良く、例えば、音響変換器、抵抗率センサ、電磁誘導センサ、ガンマ線センサ及び地層ロッギングで用いられる他の一般的な形式のものである。変換器は、受動型又は能動型のものであって良く、或いは、重要な回路部品、例えば増幅器及びマイクロプロセッサを備えた高度計装型のものであっても良い。さらに、ブレード及び変換器は、特定のロッギング作業に基づいて種々のサイズ及び幾何学的形状のものであって良い。
【0031】
本発明の利点は、1つ又は2つ以上の実施形態によれば、以下の利点のうちの1つ又は2つ以上を含むのが良い。
【0032】
本発明の1つ又は2つ以上の実施形態によれば、変換器をドリルカラーの周囲に係合するスリーブのブレードに取り付けることにより、変換器を坑壁の近くに配置することができる。これにより、地層への変換器の結合度を向上させることができ、しかも、地層の性状を高い効率で地層ロッギングデータから導き出すことができる。同様な結果は、変換器がスリーブを用いないでドリルカラーに係合するよう構成された交換性ブレード内に設けられている他の実施形態によって達成できる。
【0033】
さらに、本発明の1つ又は2つ以上の実施形態により、ドリルカラーは、同一寸法のものであって良く、他方、スリーブ又はブレードは、特定のロッギング作業の特定の坑井サイズに対応するよう交換される。かかる設計により、種々の坑井サイズについて多種類のドリルカラー又はドリルカラー/スタビライザサイズの組み合わせを備えておくことは不要である。したがって、掘削組立体の製造時間及び多数の坑井サイズに対処するコストを大幅に減少させることができる。
【0034】
さらに、表面硬化ブレードにより、かかるブレードは、坑壁と直接的な接触関係をなすことができ、それにより、変換器を地層の一層近くに位置決めすることができる。他の実施形態では、スタビライザブレードを備えた大型ゲージスタビライザを用いてスリーブのブレードが坑壁に接触するのを阻止することができる。この形態により、スリーブのブレード内に設けられた変換器が保護されるだけでなく、ブレードがより複雑精巧な形状をとることができる。
【0035】
当業者であれば認識されるように、本発明の1つ又は2つ以上の実施形態としてのスリーブは、ドリルカラーには限定されず、他のダウンホールツール(例えば、ドリルパイプ及びワイヤラインツールハウジング)にも使用でき、しかも、かかるスリーブは、これらダウンツールの周囲に係合するよう構成可能である。
【0036】
さらに、本発明の1つ又は2つ以上の実施形態としての掘削組立体は、陸上又は海上で利用可能である。さらに、本明細書において説明した本発明の実施形態は、音響学的サンプル採取には限定されず、測定値がガンマ線密度、中性子孔隙率、地層圧及びサンプリング測定値、分解能抵抗率測定値等である場合にも利用できる。
【0037】
本発明を限定された数の実施形態に関して説明したが、本発明の開示の利益を享受する当業者であれば、本明細書において開示した本発明の範囲から逸脱しない他の実施形態を想到できることは理解されよう。したがって、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載にのみ基づいて定められるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダウンホールツール用の交換可能スリーブであって、
前記ダウンホールツールの周囲に係合するよう構成された本体と、
前記本体から半径方向に延びるブレードと、
前記ブレード内に配置された変換器とを有する、スリーブ。
【請求項2】
前記変換器を前記ダウンホールツールのエレクトロニクスキャビティに電気的に接続する隔壁コネクタを更に有する、請求項1記載のスリーブ。
【請求項3】
位置決めシステムを備え、かつ前記スリーブを前記ダウンホールツールに係止するよう構成されたロック機構体と、
前記スリーブを前記ダウンホールツール上で安定化させるロックリングとを更に有する、請求項1記載のスリーブ。
【請求項4】
前記本体は、前記ダウンホールツール上で摺動するよう構成されている、請求項1記載のスリーブ。
【請求項5】
前記本体は、前記ダウンホールツールと相互に係合するよう構成された少なくとも2つの部分を有する、請求項1記載のスリーブ。
【請求項6】
前記ブレードのサイズ及び前記変換器のサイズは、前記ダウンホールツールが中で用いられるべき坑井の直径に基づいて選択される、請求項1記載のスリーブ。
【請求項7】
前記変換器は、部分的に前記ダウンホールツール内に配置されている、請求項6記載のスリーブ。
【請求項8】
前記本体から半径方向に延びる少なくとも1つの追加ブレードと、
前記少なくとも1つの追加ブレードの各々内に配置された変換器とを更に有する、請求項1記載のスリーブ。
【請求項9】
表面硬化材料が前記ブレードの表面に設けられている、請求項1記載のスリーブ。
【請求項10】
スタビライザが前記ダウンホールツールの周囲に係合し、前記スタビライザは、前記スリーブの前記ブレードが坑壁に接触するのを阻止するよう構成された1つ又は2つ以上のスタビライザブレードを有する、請求項1記載のスリーブ。
【請求項11】
前記ブレードは、前記本体周りに螺旋に形成されている、請求項1記載のスリーブ。
【請求項12】
掘削組立体であって、
ドリルカラーと、
交換可能スリーブとを有し、前記交換可能スリーブは、
前記ドリルカラーの周囲に係合するよう構成された実質的に円筒形の本体と、
前記本体から半径方向に延びるブレードと、
前記ブレード内に配置された変換器とを有する、掘削組立体。
【請求項13】
前記変換器を前記ドリルカラーのエレクトロニクスキャビティに電気的に接続する隔壁コネクタを更に有する、請求項12記載の掘削組立体。
【請求項14】
位置決めシステムを備え、かつ前記スリーブを前記ドリルカラーに係止するよう構成されたロック機構体と、
前記スリーブを前記ドリルカラー上で安定化させるロックリングとを更に有する、請求項12記載の掘削組立体。
【請求項15】
前記スリーブの前記本体は、前記ドリルカラー上で摺動するよう構成されている、請求項12記載の掘削組立体。
【請求項16】
前記スリーブの前記本体は、前記ドリルカラー周りに相互に係合すると筒体を形成するように構成された少なくとも2つの部分を有する、請求項12記載の掘削組立体。
【請求項17】
前記ブレードのサイズ及び前記変換器のサイズは、前記ドリルカラーが中で用いられるべき坑井の直径に基づいて選択される、請求項12記載の掘削組立体。
【請求項18】
前記ドリルカラーは、キャビティを有し、前記変換器は、部分的に前記ドリルカラー内に位置すると共に部分的に前記ブレード内に位置するよう配置されている、請求項17記載の掘削組立体。
【請求項19】
前記スリーブは、
前記本体から半径方向に延びる少なくとも1つの追加ブレードと、
前記少なくとも1つの追加ブレードの各々内に配置された変換器とを更に有する、請求項12記載の掘削組立体。
【請求項20】
表面硬化材料が前記ブレードの表面に設けられている、請求項12記載の掘削組立体。
【請求項21】
前記ドリルカラーの周囲に係合するよう構成されたスタビライザを更に有し、前記スタビライザは、前記スリーブの前記ブレードが坑壁に接触するのを阻止するよう構成された1つ又は2つ以上のスタビライザブレードを有する、請求項12記載の掘削組立体。
【請求項22】
前記ブレードは、前記本体周りに螺旋に形成されている、請求項12記載の掘削組立体。
【請求項23】
掘削組立体であって、
ダウンホールツールと、
前記ダウンホールツールの周囲に係合するよう構成された本体及び前記本体から半径方向に延びる複数個のブレードを有する交換可能スリーブと、
前記ダウンホールツール内に配置されると共に前記ブレードからオフセットするよう位置決めされた複数個の変換器とを有する、掘削組立体。
【請求項24】
掘削組立体であって、
ダウンホールツールを有し、
前記ダウンホールツールに結合されるよう構成された交換性ブレードを有し、前記ブレードのサイズは、前記ダウンホールツールが入れられた状態で用いられるべき坑井の直径に基づいて選択され、
前記ブレード内に配置された変換器を有し、前記変換器のサイズは、前記ブレードの前記サイズに比例している、掘削組立体。
【請求項25】
ダウンホールツール用の交換可能スリーブを製造する方法であって、前記方法は、
ブレードが前記交換可能スリーブの前記本体から半径方向に延びるように、前記ブレードを前記本体上に形成するステップと、
変換器を前記ブレード内に配置するステップと、
前記交換可能スリーブが前記ダウンホールツールの周囲に係合するよう前記交換可能スリーブを構成するステップとを有する、方法。
【請求項26】
変換器をダウンホールツールに取り付ける方法であって、前記方法は、
交換可能スリーブを用意するステップを有し、前記交換可能スリーブは、本体と、前記本体から半径方向に延びるブレードと、前記ブレード内に配置された変換器とを有し、
前記交換可能スリーブを前記ダウンホールツールの周囲に係合させるステップを有する、方法。
【請求項27】
変換器をダウンホールツールに取り付ける方法であって、前記方法は、
各々が本体を有する複数個の交換可能スリーブを用意するステップを有し、
前記スリーブの各々の前記本体から半径方向に延びるブレードを形成するステップを有し、前記ブレードのサイズは、前記スリーブの各々のサイズとは異なっており、
変換器を前記ブレードの各々内に配置するステップを有し、前記変換器のサイズは、前記ブレードの前記サイズに比例しており、
前記スリーブを前記ダウンホールツールが中で用いられるべき坑井の直径に基づいて選択するステップを有し、
前記選択したスリーブを前記ダウンホールツールの周囲に係合させるステップを有する、方法。
【請求項28】
変換器をダウンホールツールに取り付ける方法であって、前記方法は、
複数個の交換可能ブレードを用意するステップを有し、前記ブレードのサイズは、互いに異なっており、
変換器を前記ブレードの各々内に配置するステップを有し、前記変換器のサイズは、前記ブレードの前記サイズに比例しており、
前記ブレードを前記ダウンホールツールが中で用いられるべき坑井の直径に基づいて選択するステップを有し、
前記選択したブレードを前記ダウンホールツールに結合するステップを有する、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14A】
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【図14B】
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【図14C】
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【公表番号】特表2012−511648(P2012−511648A)
【公表日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−540227(P2011−540227)
【出願日】平成21年12月1日(2009.12.1)
【国際出願番号】PCT/IB2009/007595
【国際公開番号】WO2010/067156
【国際公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(500177204)シュルンベルジェ ホールディングス リミテッド (51)
【氏名又は名称原語表記】Schlnmberger Holdings Limited