説明

音響反射板装置

【課題】 所望の音響効果を演出し得るのはもちろんのこと、いたずらな格納場所の占拠の危惧をなくして利用人数が大幅に大小される場合の利用にも向くようにする。
【解決手段】 舞台Sの奥側に立設される正面反射板1と、舞台Sの上方に斜めに展設される天井反射板2とを有してなる音響反射板装置において、基端を舞台Sの奥壁S1に枢支させて先端側を起伏可能する支持ブーム3の先端に天井反射板2と共に吊持される正面反射板1が副反射板4を有してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、音響反射板装置に関し、特に、劇場などの舞台に設けられる可動型の音響反射板装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、劇場などの舞台に設けられる可動型の音響反射板装置としては、従来から、種々の提案があるが、その中で、たとえば、特許文献1には、舞台の奥側に立設される正面反射板と舞台の上方に斜めに展設される天井反射板を舞台の奥壁に基端が枢支されて先端側が起伏可能とされる支持ブームの先端に吊持してなるものが開示されている。
【0003】
ちなみに、この提案にあって、天井反射板は、客席側に対向する先端側が舞台の上方から垂下されるワイヤなどの牽引部材によっても牽引されるとしており、この牽引部材における垂下長さを調整することで、その傾斜状態が選択されるとしている。
【0004】
それゆえ、この提案にあっては、基本的には、適宜の手段で支持ブームを起伏させることで、正面反射板の立設と天井反射板の展設が可能になる。
【特許文献1】特開2003−53057号公報(特許請求の範囲 請求項1,図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した音響反射板装置にあっては、その規模をいわゆる大小できず、したがって、好ましい音響効果が得られなくなることがあると指摘される可能性がある。
【0006】
すなわち、上記した音響反射板装置にあっては、あらかじめその大きさが決まった状態に構成されるから、その規模に応じた、たとえば、交響楽団の場合には最適な音響効果を演出し得るとしても、四重奏などの極めて少ない人数で利用の場合にはいわゆる大き過ぎることになり、好ましい音響効果を演出できないことになる。
【0007】
一方、この種の可動型の音響反射板装置を舞台に常設するについては、多くの場合に、大は小を兼ねるという発想の下に形成されるから、大き過ぎることがあっても小さ過ぎることがないのが常態である。
【0008】
それゆえ、少人数での利用の場合にも所定の音響効果を演出し得るようにするには、たとえば、少人数用の音響反射板装置を別途に用意しておき、これを利用するとの提案をなし得るが、この場合には、いわゆる複数の音響反射板装置を準備することになり、舞台上の有効利用を妨げる不具合がある。
【0009】
この発明は、前記した事情を鑑みて創案されたものであって、その目的とするところは、所望の音響効果を演出し得るのはもちろんのこと、いたずらな格納場所の占拠の危惧をなくして利用人数が大幅に大小される場合の利用にも向き、その汎用性の向上を期待するのに最適となる音響反射板装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した目的を達成するために、この発明の構成を、舞台の奥側に立設される正面反射板と、舞台の上方に斜めに展設される天井反射板とを有してなる音響反射板装置において、基端を舞台の奥壁に枢支させて先端側を起伏可能する支持ブームの先端に天井反射板と共に吊持される正面反射板が副反射板を有してなるとする。
【発明の効果】
【0011】
それゆえ、請求項1の発明にあっては、支持ブームを倒して正面反射板を舞台上に立設させるときに、この正面反射板が有する副反射板の使用あるいは不使用を選択することで、大人数用の音響反射板装置あるいは小人数用の音響反射板装置のいずれかに設定でき、いわゆる規模に応じた音響効果を演出し得ることになる。
【0012】
その結果、この発明によれば、所望の音響効果を演出し得るのはもちろんのこと、いたずらな格納場所の占拠の危惧をなくして利用人数が大幅に大小される場合の利用にも向き、その汎用性の向上を期待するのに最適となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、図示した実施形態に基づいて、この発明を説明するが、この発明による音響反射板装置は、図1に示すように、たとえば、劇場における舞台Sの図中で左側となる奥側に立設される正面反射板1と、舞台Sの上方に斜めに展設される天井反射板2とを有してなるとしている。
【0014】
そして、この音響反射板装置は、正面反射板1および天井反射板2が基端を舞台Sの奥壁S1に枢支させて先端側を起伏可能する支持ブーム3の先端に吊持されてなるととしている。
【0015】
さらに、この発明による音響反射板装置にあっては、正面反射板1が副反射板4を有してなるとし、図示するところでは、天井反射板2が子供反射板5を有してなるとしている。
【0016】
ちなみに、側面反射板は、図示しないが、たとえば、舞台Sの間口方向となる左右の奥の収納場所たるいわゆる袖から所定位置に引き出され、あるいは、舞台Sの上方の収納場所から所定位置に引き降ろされて、正面反射板1と天井反射板2とで形成される空間を側方から画成して所定の音響空間を区画する。
【0017】
なお、正面反射板1,天井反射板2および側面反射板、さらには、後述する副反射板4および子供反射板5の構成については、所定の音響効果を得られる限りにおいて任意の構成を採用でき、たとえば、図示しないが、軽量化を可能にするためにフレーム構造に形成された本体に音響効果を得易い薄鋼板やシートを展張するなどして形成される。
【0018】
ところで、上記の正面反射板1および天井反射板2を吊持する支持ブーム3は、舞台Sの奥壁S1に保持されたブラケット31に枢着されてなるとしており、その起伏は、図示しないが、舞台S上方の簀の子上に配在されたウインチに巻上げられる牽引部材たるワイヤWの昇降で実現されるとしている。
【0019】
このとき、支持ブーム3は、結果的に、先端に正面反射板1と天井反射板2を吊持するものであれば足りるから、所定の自己支持性を有するのに十分となる機械的強度を有する限りにおいて、任意の形状に形成されて良い。
【0020】
ただ、この支持ブーム3は、図示するところでは、基端から先端部近傍までがストレートに形成されながら先端部近傍から先端にかけての適宜の長さで屈曲されてなるとしている。
【0021】
これによって、図中に仮想線図で示すように、支持ブーム3を起立させて、正面反射板1と天井反射板2を収納状態に維持するときに、各反射板1,2を無理なく垂直状態に維持することが容易となる。
【0022】
また、図中に実線図で示すように、支持ブーム3を倒伏させて、正面反射板1と天井反射板2を使用状態に維持するときに、正面反射板1を起立状態に維持しながら天井反射板2を傾斜した展設状態に維持することが可能になる。
【0023】
もっとも、天井反射板2を傾斜した状態に展設するについては、図示するところでは、この天井反射板2の先端側、すなわち、図中で右端側となり客席S2側に対向する側がワイヤWで牽引されることによって実現されるとしている。
【0024】
ちなみに、このときのワイヤWも前記した支持ブーム3を起伏させるワイヤWと同様に、図示しないが、舞台S上方の簀の子上に配在されたウインチに巻装されてなるとしている。
【0025】
それゆえ、上記した支持ブーム3を有する音響反射板装置にあっては、支持ブーム3の起立で正面反射板1を、また、この正面反射板1に副わせるようにして天井反射板2を舞台Sの奥壁S1に副わせるように収納し得ることになる。
【0026】
つぎに、この発明にあっては、正面反射板1が副反射板4を有してなることに特徴があるが、この副反射板4は、これを有しない音響反射板装置を大掛りにすることに比較して、これを有することで音響反射板装置を言わば大掛りになり過ぎないようにすることが可能になる。
【0027】
このことからすれば、この副反射板4は、正面反射板1より全体的な規模を小さくするように設定されるのが常態であろうし、図示するところでは、正面反射板1より背丈を小さくするように設定されてなるとしている。
【0028】
これにより、図中に実線図で示すように、この副反射板4を立設するとき、言わば後方にある正面反射板1より規模を小さくする言わば正面反射板を設置し得ることになる。
【0029】
そして、図中に仮想線図で示すように、この副反射板4を正面反射板1に副わせるとき、正面反射板1に言わば一体化される態様を呈することになり、収納時の容積をいたずらに占有しないことになる。
【0030】
ちなみに、副反射板4における左右方向となる幅方向の大きさ、すなわち、幅についても、この発明の規模を小さくする音響反射板装置を得る目的からすれば、図示しないが、正面反射板1に比較してかなり狭くするように設定されて良いと言い得るだろうし、多くの場合に、狭くするように設定されるであろう。
【0031】
以上のように、言わば小さく形成された副反射板4は、具体的には、基端を正面反射板1の下端側に枢着させて先端側を起伏可能にする基体たる支持体41と、この支持体41の上端に吊持されるように連繋される反射板体42とを有してなる。
【0032】
そして、図中に実線図で示すように、支持体41が前傾するときに反射板体42が舞台Sに立設され、また、図中に仮想線図で示すように、支持体41が起立するときに反射板体42が支持体41と共に正面反射板1に副うように収納されることになる。
【0033】
なお、上記した副反射板4の起伏は、図示するところでは、正面反射板1の背面に保持されたウインチ43に巻装されたワイヤWの引き出しおよび巻き取りで実現されるとしているが、基本的には、所定の起伏が実現される限りにおいて、自由な構成が採用されて良い。
【0034】
一方、この発明にあって、図示するところでは、天井反射板2が先端側に子供反射板5を有してなるとし、このとき、この子供反射板5が昇降可能に天井反射板2に連繋されてなるとしている。
【0035】
すなわち、図中に実線図で示すように、この子供反射板5が下降されるときには、前記した副反射板4と共に言わば小さい規模の音響反射板装置を構成するもので、仮に、この子供反射板5が無いとすると、天井反射板2だけが離れて存在することになり、好ましい音響空間を具現化できなくなることを避けるためである。
【0036】
それゆえ、音響反射板装置を収納する場合も含めて、この子供反射板5を利用しないときには、この子供反射板5が天井反射板2と一体化されていることが好ましくなり、したがって、図示するところにあっても、いわゆる不使用時には、図中に破線図で示すように、ウインチ51の作動で上昇位置に維持されるとしている。
【0037】
以上のように、天井反射板2における子供反射板5が下降されることで、前記した副反射板4と共に規模の小さい音響反射板装置を構成することが可能になるが、このときには、好ましくは客席S2の上方の音響天井Rも下降されるのが良い。
【0038】
前記したところでは、正面反射板1と天井反射板2とを支持ブーム3の先端に吊持させるについて、支持ブーム3に吊持される正面反射板1の上端に天井反射板2を連繋させる構成としているが、凡そ正面反射板1と天井反射板2とが吊持される限りには、たとえば、正面反射板1と天井反射板2とがそれぞれ支持ブーム3の先端に吊持されてなるとしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】この発明による音響反射板装置を使用状態で示す概略縦断面図である。
【符号の説明】
【0040】
1 正面反射板
2 天井反射板
3 支持ブーム
4 副反射板
5 子供反射板
41 支持体
42 反射板体
S 舞台
S1 奥壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
舞台の奥側に立設される正面反射板と、舞台の上方に斜めに展設される天井反射板とを有してなる音響反射板装置において、基端を舞台の奥壁に枢支させて先端側を起伏可能する支持ブームの先端に天井反射板と共に吊持される正面反射板が副反射板を有してなることを特徴とする音響反射板装置
【請求項2】
副反射板が基端を正面反射板の下端側に枢着させて先端側を起伏可能にする支持体を有してなると共に、この支持体の上端に吊持される反射板体を有してなり、支持体が前傾するときに反射板体が舞台に立設されてなる請求項1に記載の音響反射板装置
【請求項3】
天井反射板が先端側に子供反射板を有してなると共にこの子供反射板が昇降可能とされてなる請求項1に記載の音響反射板装置

【図1】
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