説明

音響式歩行者誘導付加装置

【課題】 配設時の作業負担や配設コストを低減させ、適切な音量にて歩行者に歩行者信号の状態を可聴表示することができる音響式歩行者信号付加装置を提供する。
【解決手段】 電源回路11は青色灯色信号PGの供給に応じてこれを整流および安定化して直流電圧の電源出力21の出力を開始し、起動回路12はこの電源出力21に応じて起動出力23を出力する。これに応じて音声生成回路15から横断可を示す所定の音声出力24が出力され、増幅回路16を介してスピーカ17から歩行者に出力される。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、音響式歩行者誘導付加装置に関し、特に横断歩道の歩行者信号灯器あるいはその近傍に設置され、歩行者信号の状態を音声出力により可聴表示を行う音響式歩行者誘導付加装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に、横断歩道において、交通弱者、特に目の不自由な歩行者に対して、歩行者信号の状態を通知する場合、音声出力により可聴表示を行う音響式歩行者誘導付加装置が配設される。従来、この種の付加装置は、図4に示すように、歩行者信号灯器1または車両信号灯器2の近傍に配設されるものとなっていた。
【0003】図4において、1は横断歩道の両端に配設されている1対の歩行者信号灯器、2は車両信号灯器、3は横断歩道のいずれか一端に配設され、横断歩道両端の歩行者に対して音声出力により可聴表示を行う音響式歩行者誘導付加装置(以下、付加装置という)、4は歩行者信号灯器1、車両信号灯器2、および付加装置3を制御する信号制御機である。歩行者信号灯器1および車両信号灯器2内の各信号灯は、それぞれ配線5,6を介して信号制御機4から供給される灯色信号に基づいて点灯、滅灯が制御されており、一般にはAC100Vの駆動電力からなる灯色信号の供給有無に応じて、直接、駆動制御されるものとなっている。
【0004】また、付加装置3には、歩行者信号灯器1の青信号に応じて、信号制御機4から配線7を介して電源および制御信号が供給されており、これら電源および制御信号に応じて、横断可を示す所定の音声出力が歩行者に対して送出されるものとなっている。図5は、従来の付加装置3の配設形態を示す説明図であり、1Rおよび1Gは歩行者信号灯器1の赤色信号灯および青色信号灯である。通常、歩行者信号灯器1が配設されている支柱に配設され、対向側の歩行者に対して横断歩道越しに音声出力が届くように、歩行者信号灯器1より上方に配設され、比較的大きな音量にて音声出力を送出するものとなっていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】したがって、このような従来の音響式歩行者誘導付加装置では、信号制御機4から個別に供給される電源および制御信号に基づいて駆動されるものとなっているため、信号制御機4から付加装置3までの配線7が必要不可欠となり、設置時の作業負担や配設コストを増加させ、信号制御機4のハードウェア量を増大化させるという問題点があった。
【0006】さらに、この設置時の作業負担や配設コストの増加から、横断歩道のいずれか一端、多くは信号制御機4側に配設した場合、対向側の歩行者に対して横断歩道越しに音声出力が届くように、比較的大きな音量にて音声出力を送出する必要があり、付加装置の真下の歩行者にとっては音量が大きすぎるという問題点があった。本発明はこのような課題を解決するためのものであり、配設時の作業負担や配設コストを低減させ、適切な音量にて歩行者に歩行者信号の状態を可聴表示することができる音響式歩行者信号付加装置を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】このような目的を達成するために、本発明による音響式歩行者誘導付加装置は、歩行者信号灯器の信号灯を駆動するための灯色信号を入力として所定の電源出力を出力する電源回路と、電源出力を検出して所定の起動出力を出力する起動回路と、起動出力に応じて所定の音声出力を出力する音声生成回路と、音声出力を歩行者に対して出力するスピーカとを備えるものである。したがって、電源回路により、歩行者信号灯器の信号灯を駆動するための灯色信号を入力として所定の電源出力が出力され、この電源出力が起動回路により検出されて所定の起動出力が出力され、この起動出力に応じて音声生成回路から所定の音声出力が出力され、スピーカから歩行者に対して出力される。
【0008】また、各回路およびスピーカを歩行者信号灯器の内部に配設するようにしたものである。また、スピーカを歩行者信号灯器の底面部あるいは下側面部に配設するようにしたものである。また、電源回路は、歩行者信号灯器の青色信号灯を駆動するための青色灯色信号を入力として所定の電源出力を出力し、起動回路は、この電源出力が所定時間継続して出力された場合に起動出力を出力するようにしたものである。したがって、電源回路により、歩行者信号灯器の青色信号灯を駆動するための青色灯色信号を入力として所定の電源出力が出力しされ、起動回路により、この電源出力が所定時間継続して出力された場合に起動出力が出力される。
【0009】
【発明の実施の形態】次に、本発明について図面を参照して説明する。図1は本発明の一実施の形態である音響式歩行者信号付加装置のブロック図であり、同図において、1Rおよび1Gは歩行者信号灯器1の赤色信号灯および青色信号灯であり、信号制御機4(図4参照)から配線5R−5C間に供給されるAC100Vの灯色信号PR(赤色灯色信号)に応じて赤色信号灯1Rが点灯し、配線5G−5C間に供給されるAC100Vの灯色信号PG(青色灯色信号)に応じて青色信号灯1Gが点灯するものとなる。
【0010】30は横断歩道両端の歩行者信号灯器1の近傍または内部にそれぞれ配設される音響式歩行者信号付加装置(以下、付加装置という)であり、付加装置30において、11は灯色信号PGを入力として所定の電源出力21を付加装置30内の各部に供給する電源回路、12は電源出力21に応じて起動出力23を出力する起動回路、15は起動出力23に応じて横断可を示す所定の音声出力24を出力する音声生成回路、16はフィルタおよび増幅器からなり、音声出力24を増幅してスピーカ17へ出力する増幅回路である。
【0011】また、起動回路12において、13は電源出力21の所定電圧値の検出に応じて検出出力22を出力する検出回路、14は検出出力22の立ち上がりに応じて所定時間を計時するタイマをスタートさせ、このタイマのタイムアップに応じて起動出力23を出力するとともに、検出出力22の立ち下がりに応じてタイマをリセットするタイマ回路である。
【0012】次に、図1を参照して、本発明の動作を説明する。信号制御機4(図4参照)から横断可を示す青色灯色信号PG(AC100V)の供給が開始された場合、歩行者信号灯器1の青色信号灯1Gは、この青色灯色信号PGに応じて点灯する。電源回路11は、この青色灯色信号PGの供給に応じて、これを整流および安定化して直流電圧の電源出力21の出力を開始し、起動回路12はこの電源出力21に応じて起動出力23を出力する。
【0013】これに応じて音声生成回路15から横断可を示す所定の音声出力24、例えば連続音、断続音、メロディーあるいは音声ガイダンスなどが出力され、増幅回路16を介してスピーカ17から歩行者に出力されるものとなる。音声出力24は、出力開始から所定時間継続して出力された後に停止され、しかる後、青色灯色信号PGの供給が停止され、横断不可を示す赤色灯色信号PRの供給が開始されるものとなる。
【0014】このように、信号制御機4から各歩行者信号灯器1に出力される青色灯色信号PGを入力として所定の電源出力21を出力する電源回路11を設けて、この電源出力21に応じて横断可を示す所定の音声出力24をスピーカ17から歩行者に対して出力するようにしたので、歩行者信号灯器1から付加装置30までの僅かな距離の配線で済み、従来のような信号制御機4から付加装置30までの比較的長い距離の配線が不要となり、設置時の作業負担や配設コストを低減し、信号制御機4のハードウェア量を削減することができる。
【0015】また、このような信号制御機4から付加装置30までの配線が不要となったことから、横断歩道両端の歩行者信号灯器1の近傍に僅かな作業負担や配設コストにより配設することが可能となる。したがって、従来の横断歩道の一端から対向側の歩行者に対して横断歩道越しに音声出力が届くように、比較的大きな音量にて音声出力を送出する必要がなく、それぞれの付加装置30の下で待機する歩行者に対してのみ音声出力を出力すれば良く、音声出力を適切な音量まで低減することが可能となる。
【0016】また、付加装置30は、歩行者信号灯器1の近傍に配設される場合に限られるものではなく、例えば図3に示すように、歩行者信号灯器1内部に配設するようにしても良い。図3において、17はスピーカ、18は付加装置30の各回路が実装された回路ユニットであり、この場合、スピーカ17は歩行者信号灯器1の底面部、また回路ユニット18は歩行者信号灯器1の背面部に配設されている。
【0017】このように、付加装置30を歩行者信号灯器1の内部に配設して一体化するようにしたので、歩行者信号灯器1と付加装置30との間の配線が最も短くなるとともに、付加装置30の外装ケースや支柱への配設支持部材が不要となり、配設時の作業負担および配設コストを大幅に低減することが可能となる。さらに、外観的に煩雑感がなくなり街の景観を損なうことがなくなるとともに、待ち時間表示装置などの他の付加装置を配設する際にも障害とならない。また、スピーカ17を歩行者信号灯器1の底面部あるいは下側面部に配設することにより、スピーカ17と歩行者との距離を短縮できるとともに、スピーカ17から出力される音声出力が効率よく歩行者の方向に出力することが可能となり、歩行者に対し比較的小さな音量で横断可を可聴表示することが可能となる。
【0018】次に、図2を参照して起動回路の動作について説明する。図2は、起動回路12の動作を示すタイミングチャートである。同図において、前述の説明(図1参照)と同じまたは同等部分には同一符号を付してあり、25はタイマ回路14内部のタイマである。まず、時刻T0において横断可を示す青色灯色信号PG(AC100V)の供給が開始された場合、歩行者信号灯器1の青色信号灯1Gは、この青色灯色信号PGに応じて点灯する。
【0019】電源回路11は、この青色灯色信号PGの供給に応じて電源出力21の出力を開始する。起動回路12の検出回路13はこの電源出力21が所定電圧値、例えば付加装置30の各部が動作可能な電圧値であるか否かを検出して検出出力22を出力し(「H」レベル)、この検出出力22に応じてタイマ回路14は内部タイマ25をスタート(「ON」)させる。このタイマ25は、スタートから所定時間tだけ経過した後にタイムアップ(「OFF」)するものとなっており、時刻T0から時間t経過した時刻T1にタイムアップ(「OFF」)して、起動出力23が出力される(「H」レベル)。
【0020】これに応じて音声生成回路15からの横断可を示す所定の音声出力24が、増幅回路16を介してスピーカ17から出力されるものとなる。一方、検出回路13からの検出出力22は、リセット信号(RESET)としてもタイマ回路14に入力されており、タイマ25がスタートした後、タイムアップする前に青色灯色信号PGの供給が停止され、検出回路13からの検出出力22が停止(「L」レベル)した場合には、その時点でタイマ25がリセット(「OFF」)されるため、起動出力23は出力されない(「L」レベル)。
【0021】したがって、青色灯色信号PGが所定時間t以上継続して供給された場合にのみ、起動回路12から起動出力23が出力されて横断可を示す音声出力24が、歩行者に対して出力されるものとなる。これにより、青色信号灯1Gの点滅時間(一般には0.25秒のON/OFF)より長い時間(例えば、1秒)をタイマ25のタイムアップ時間tとして設定しておくことにより、青色信号灯1Gの点滅による起動を抑止し、横断可を示す正規の青色信号灯1Gの点灯開始を確実に検出することが可能となる。
【0022】なお、以上の説明において、起動回路12に検出回路13とタイマ回路14とを設けて、電源出力21の所定電圧値を検出し、その検出出力22が所定時間継続した場合に起動出力23を出力するようにした場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、電源出力21を積分する積分回路の時定数を青色信号灯1Gの点滅時間より大きくして点滅による電源出力21の低下を抑制し、電源出力21の立ち上がりに応じて起動出力23を出力するようにしても良く、また電源出力21そのものを起動出力23として利用し、電源出力21の上昇に応じて音声生成回路15から音声出力24の出力を開始するようにしても良い。
【0023】また、以上の説明において、電源回路11は、青色灯色信号PGを入力として電源出力21を出力し、これに応じて音声生成回路15から横断可を示す音声出力24を出力するようにした場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば赤色灯色信号PRを入力として電源回路11から電源出力21を出力し、これに応じて音声生成回路15から横断不可を示す音声出力24を出力するようにしても良く、前述と同様の作用効果を奏するものとなる。ただし、この場合、赤色灯色信号PRには点滅区間がないことから、点滅による音声生成回路15の起動を抑制する手段が不要となる。
【0024】
【発明の効果】以上説明したように、本発明は、歩行者信号灯器の信号灯を駆動するための灯色信号を入力として所定の電源出力を出力する電源回路と、電源出力を検出して所定の起動出力を出力する起動回路と、起動出力に応じて所定の音声出力を出力する音声生成回路とを設けて、歩行者信号灯器の信号灯を駆動するための灯色信号から電源および起動タイミングを生成し、所定の音声出力を歩行者に対して出力するようにしたので、歩行者信号灯器から付加装置までの僅かな距離の配線で済み、従来のような信号制御機から付加装置までの比較的長い距離の配線が不要となり、設置時の作業負担や配設コストを低減し、信号制御機のハードウェア量を削減することができる。
【0025】さらに、このような信号制御機から付加装置までの配線が不要となったことから、横断歩道両端の歩行者信号灯器の近傍に僅かな作業負担や配設コストにより配設することが可能となり、従来の横断歩道の一端から対向側の歩行者に対して横断歩道越しに音声出力が届くように、比較的大きな音量にて音声出力を送出する必要がなく、それぞれの付加装置の下で待機する歩行者に対してのみ音声出力を出力すれば良く、音声出力を適切な音量まで低減することが可能となる。
【0026】また、各回路およびスピーカを歩行者信号灯器の内部に配設して一体化するようにしたので、歩行者信号灯器と付加装置との間の配線が最も短くなるとともに、付加装置の外装ケースや支柱への配設支持部材が不要となり、配設時の作業負担および配設コストを大幅に低減することが可能となる。さらに、外観的に煩雑感がなくなり街の景観を損なうことがなくなるとともに、待ち時間表示装置などの他の付加装置を配設する際にも障害とならない。また、スピーカを歩行者信号灯器の底面部あるいは下側面部に配設するようにしたので、スピーカと歩行者との距離を短縮できるとともに、スピーカから出力される音声出力が効率よく歩行者の方向に出力することが可能となり、歩行者に対し比較的小さな音量で横断可を可聴表示することが可能となる。
【0027】また、電源回路により、歩行者信号灯器の青色信号灯を駆動するための青色灯色信号を入力として所定の電源出力を出力し、起動回路により、この電源出力が所定時間継続して出力された場合に起動出力を出力するようにしたので、青色信号灯の点滅による起動を抑止し、横断可を示す正規の青色信号灯の点灯開始を確実に検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施の形態による音響式歩行者誘導付加装置のブロック図である。
【図2】 図1に示した実施の形態の各部におけるタイミングチャートである。
【図3】 付加装置の配設例を示す説明図である。
【図4】 従来の付加装置の配設例を示す説明図である。
【図5】 従来の付加装置の配設例(拡大)を示す説明図である。
【符号の説明】
1…歩行者信号灯器、1R…赤色信号灯、1G…青色信号灯、30…歩行者誘導付加装置(付加装置)、11…電源回路、12…起動回路、13…検出回路、14…タイマ回路、15…音声生成回路、16…増幅回路、17…スピーカ、18…回路ユニット、21…電源出力、22…検出出力、23…起動出力、24…音声出力。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 横断歩道に設置され、歩行者に対して歩行者信号の状態を音声出力により可聴表示する音響式歩行者誘導付加装置において、歩行者信号灯器の信号灯を駆動するための灯色信号を入力として所定の電源出力を出力する電源回路と、電源出力を検出して所定の起動出力を出力する起動回路と、起動出力に応じて所定の音声出力を出力する音声生成回路と、音声出力を歩行者に対して出力するスピーカとを備えることを特徴とする音響式歩行者誘導付加装置。
【請求項2】 請求項1記載の音響式歩行者誘導付加装置において、各回路およびスピーカを歩行者信号灯器の内部に配設するようにしたことを特徴とする音響式歩行者誘導付加装置。
【請求項3】 請求項2記載の音響式歩行者誘導付加装置において、スピーカを歩行者信号灯器の底面部あるいは下側面部に配設するようにしたことを特徴とする音響式歩行者誘導付加装置。
【請求項4】 請求項1記載の音響式歩行者誘導付加装置において、電源回路は、歩行者信号灯器の青色信号灯を駆動するための青色灯色信号を入力として所定の電源出力を出力し、起動回路は、この電源出力が所定時間継続して出力された場合に起動出力を出力するようにしたことを特徴とする音響式歩行者誘導付加装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図3】
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【図5】
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【公開番号】特開平9−147286
【公開日】平成9年(1997)6月6日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−301069
【出願日】平成7年(1995)11月20日
【出願人】(390010054)小糸工業株式会社 (136)