順送プレス加工装置
【課題】順送プレスにおいて温間成形加工を可能とし、かつ、温間成形加工を行う際に生じる熱が周辺部に悪影響を及ぼすことのない順送プレス加工装置を提供する。
【解決手段】金型基台100上に複数工程を行う動作部200がワーク材Wの搬送方向に沿って設置され、ワーク材Wに対し動作部200が複数工程を行って製品を製造する順送プレス加工装置10であって、動作部200は、ワーク材Wの加工範囲Waを加熱する加熱部400と、加熱後の加工範囲Waを所定温度に保持した状態で温間成形加工する温間成形加工部(絞り加工部)500と、温間成形加工後に温間成形加工された加工範囲Waを冷間成形加工する冷間成形加工部(打ち抜き加工部)600とを有し、加熱部400は、加熱部400を冷却する流体を流通させる第1冷却用流体流通路440を有する。
【解決手段】金型基台100上に複数工程を行う動作部200がワーク材Wの搬送方向に沿って設置され、ワーク材Wに対し動作部200が複数工程を行って製品を製造する順送プレス加工装置10であって、動作部200は、ワーク材Wの加工範囲Waを加熱する加熱部400と、加熱後の加工範囲Waを所定温度に保持した状態で温間成形加工する温間成形加工部(絞り加工部)500と、温間成形加工後に温間成形加工された加工範囲Waを冷間成形加工する冷間成形加工部(打ち抜き加工部)600とを有し、加熱部400は、加熱部400を冷却する流体を流通させる第1冷却用流体流通路440を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、順送プレス加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
1つの金型基台の上に設置された複数の動作部が各々の工程を行うことによって所望とする製品を製造する順送プレスと呼ばれる加工技術は従来から知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1に記載されている加工技術は、圧延鋼板などに対し、冷間による成形加工(冷間成形加工という。)など複数の工程を行うことによって所望とする製品を製造する順送プレスによる加工技術である。
【0004】
ここで、「冷間成形加工」というのは、被加工部材を常温以下の温度で成形加工を行う加工技術を指すものである。「冷間成形加工」に対して、温間による成形加工(温間成形加工という。)、熱間による成形加工(熱間成形加工という。)と呼ばれる加工技術がある。「温間成形加工」は被加工部材を数百度(例えば200℃〜500℃程度)に加熱して成形加工を行う加工技術であり、「熱間成形加工」は被加工部材を800℃以上の高温に加熱して成形加工を行う加工技術である。なお、温間成形加工を行う際の温度は、被加工部材の材質や加工の種類などによっては、70℃程度の温度で加工することが好ましい場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−247738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されている加工技術のように、順送プレスによる加工技術は、冷間成形加工を行うものが一般的である。しかしながら、順送プレスによる加工技術においても、被加工部材の種類や製造すべき製品の種類によっては、温間成形加工を行うことが好ましい場合も多い。特に、コバール、ニッケル、マグネシウム、チタンといった難加工材を成形加工するような場合には、温間成形加工を行うことが好ましいとされる。
【0007】
従来、温間成形加工を行う場合には、順送プレスではなく、各工程を別々の加工装置で行うことが一般的である。例えば、被加工部材を切断装置によって所定サイズに切断して、所定サイズとなった被加工部材を作業者又はロボットが加熱装置にまで運んで、当該被加工部材を所定温度(例えば200℃〜500℃程度)にまで加熱したのち、加熱した被加工部材を作業者又はロボットがプレス装置にまで運んで、例えば、絞り加工などを行うというように、別々に設置された個々の加工装置によって各々の工程を行うことが一般的である。このような加工技術は、製品のサイズが比較的大きく、単位時間当たりの生産量も少ない場合には特に問題のない加工技術である。
【0008】
しかしながら、製品のサイズが微小で、単位時間当たりの生産量が多い場合(例えば、毎分100個以上生産するような場合)には、上記した従来の温間成形加工技術では対応できない。
【0009】
一方、特許文献1に記載された加工技術のような順送プレスを用いた加工技術においては、温間成形加工を行うという発想は一般的にはない。これは、順送プレスを行う加工装置(順送プレス加工装置という。)は、1つの金型基台上に複数の動作部が隣接した状態で設置されているため、特に微小な製品を製造する順送プレス加工装置においては、最初の工程を行う動作部から最後の工程を行う動作部までの間の距離は、数10cmである場合が多く、1つの金型基台上に被加工部材を加熱するための加熱部が存在すると、加熱部によって発生した熱(例えば、200℃〜500℃程度)が周辺部にまで伝わってしまい、冷間成形加工として、例えば、打ち抜き加工を行うような場合、当該打ち抜き加工に悪影響を及ぼすこととなるといった問題が生じるからである。
【0010】
そこで本発明は、順送プレスにおいて温間による加工を可能とし、かつ、温間による加工を行う際に発生する熱が周辺部に悪影響を及ぼすことのない順送プレス加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
[1]本発明の順送プレス加工装置は、金型基台の上に複数の工程を行う動作部が被加工部材の搬送方向に沿って設置され、前記被加工部材を搬送しながら前記動作部が複数の工程を行うことによって所望とする製品を製造する順送プレス加工装置であって、前記動作部は、前記被加工部材において加工すべき加工範囲を加熱する加熱部と、前記加熱部で加熱された加工範囲を所定温度に保持した状態で前記加工範囲を温間成形加工する温間成形加工部と、前記温間成形加工部による温間成形加工が終了した後に当該温間成形加工された前記加工範囲を冷間成形加工する冷間成形加工部とを有し、前記加熱部は、当該加熱部を冷却するための流体を流通させる第1冷却用流体流通路を有していることを特徴とする。
【0012】
本発明の順送プレス加工装置によれば、順送プレス加工に設けられる動作部として、被加工部材を加熱するための加熱部を設けるようにしている。このため、順送プレス加工装置でありながら、温間成形加工が可能となる。また、加熱部には第1冷却用流体流通路を設けるようにしている。これにより、加熱部によって被加工部材を加熱する際に発生する熱が周辺部に悪影響を及ぼさないようにすることができる。特に、加熱部によって被加工部材を加熱する際に発生する熱が、冷間成形加工を行うべき冷間成形加工部に伝わりにくくすることができるため、冷間成形加工部においては適切な冷間成形加工を行うことができる。
【0013】
[2]本発明の順送プレス加工装置においては、前記第1冷却用流体流通路は、当該第1冷却用流体流通路を流通する流体を流通の過程において一時的に貯留する流体貯留槽を有することが好ましい。
第1冷却用流体流通路がこのような流体貯留槽を有することにより、冷却能力をより大きなものとすることができる。
【0014】
[3]本発明の順送プレス加工装置においては、前記温間成形加工部は、電気によって発熱する発熱体を有していることが好ましい。
このような構成とすることにより、温間成形加工部自体が熱くなるため、加熱部によって加熱された被加工部材の温度を温間成形加工に適した温度に保持することができる。なお、温間成形加工部と、当該温間成形加工部に隣接する冷間成形加工部との間には断熱材を介在させることが好ましい。温間成形加工部と冷間成形加工部との間に断熱材を介在させることにより、温間成形加工部の熱が冷間成形加工部に直接的には伝わらないようにすることができる。
【0015】
[4]本発明の順送プレス加工装置においては、前記温間成形加工部は、当該温間成形加工部の温度を測定して、測定した温度に対応する温度信号を出力する温度測定部をさらに有することが好ましい。
このような温度測定部を有することにより、当該温度測定部から出力される温度信号に基づいて発熱体を制御することが可能となり、温間成形加工部を適切な温度に保持することができる。
【0016】
[5]本発明の順送プレス加工装置においては、前記温間成形加工部は、保温用の流体を流通させる保温用流体流通路を有し、前記保温用流体流通路は、前記第1冷却用流体流通路に連結され、前記第1冷却用流体流通路を流通して温度の上昇した流体が前記保温用流体流通路を流通するように構成されていることが好ましい。
このような構成とすることにより、保温用流体流通路を流通する温水が電気ヒーターによる保温の補助的な役目をなすため、温間成形加工部の発熱体の消費電力を削減することができる。
【0017】
[6]本発明の順送プレス加工装置においては、前記冷間成形加工部は、前記温間成形加工のなされた前記加工範囲を冷却するための冷却手段を有することが好ましい。
このような構成とすることにより、温間成形加工によって温度の上昇した被加工部材の加工範囲を冷却することができ、温間成形加工の後に行われる冷間成形加工を効率よく適切に行うことができる。
【0018】
[7]本発明の順送プレス加工装置においては、前記冷間成形加工部は、前記冷却手段として、前記加工範囲にエアーの吹き付けを行うエアー吹き付け部を有することが好ましい。
このように、エアーの吹き付けにより加工範囲の冷却を行うことによって、加工範囲の冷却を効率よく行うことができる。なお、ここでの冷却は加工範囲を常温程度とするものである。
【0019】
[8]本発明の順送プレス加工装置においては、前記金型基台は、当該金型基台を冷却するための流体を流通させる第2冷却用流体流通路を有していることが好ましい。
このように、金型基台においても第2冷却用流体流通路を設けることにより、加熱部によって被加工部材を加熱する際に発生する熱が周辺部に悪影響を及ぼさないようにすることができる。
【0020】
[9]本発明の順送プレス加工装置においては、前記第2冷却用流体流通路は、当該第2冷却用流体流通路を流通する流体を流通の過程において一時的に貯留する流体貯留槽を有することが好ましい。
第2冷却用流体流通路がこのような流体貯留槽を有することにより、冷却能力をより大きなものとすることができる。
【0021】
[10]本発明の順送プレス加工装置においては、前記第1冷却用流体流通路と前記第2冷却用流体流通路とは連結されており、前記第2冷却用流体流通路を流通した前記流体が前記第1冷却用流体流通路を流通するように構成されていることが好ましい。
このような構成とすることにより、第1冷却用流体流通路と前記第2冷却用流体流通路とが一本の流通路として機能するため、冷却水を有効利用することができ、かつ、効率的な冷却が可能となる。
【0022】
[11]本発明の順送プレス加工装置においては、前記冷間成形加工部は、冷却用の流体を流通させる第3冷却用流体流通路を有し、当該第3冷却用流体流通路は、前記第2冷却用流体流通路に連結され、前記第3冷却用流体流通路を流通した流体が前記第2冷却用流体流通路を流通するように構成されていることが好ましい。
【0023】
このような構成とすることにより、冷間成形加工部に設けられている第3冷却用流体流通路を流れる流体によって、冷間成形加工部を予冷しておくことができるため、被加工部材の冷却を効率よく行うことができる。すなわち、冷間成形加工部において、被加工部材をエアーの吹き付けによって冷却する際、冷間成形加工部自体を予冷した状態としておくことにより、エアーによる被加工部材の冷却を効率よく行うことができる。
【0024】
[12]本発明の順送プレス加工装置においては、前記動作部は、前記加工範囲を部分的に囲むような抜き孔を前記被加工部材に形成する抜き孔形成用金型部をさらに有し、前記抜き孔形成用金型部は、前記被加工部材の搬送方向において前記加熱部よりも手前側に設置されていることが好ましい。
【0025】
このような抜き孔を設けることにより、加熱部において加熱する際の熱を加工範囲に集中させることができ、加工範囲を効率的に加熱することができるため、加工範囲の温度を短時間で適切な温度にまで上昇させることができる。また、温間成形加工部により、例えば絞り加工などを行ったときに、被加工部材が加工範囲に向かって引っ張られることにより生ずる被加工部材の歪みを抑制することができる。
【0026】
[13]本発明の順送プレス加工装置においては、前記加熱部は、前記被加工部材を電磁誘導の原理を利用して加熱する電磁誘導発生器を有していることが好ましい。
このように、加熱部は電磁誘導加熱の原理を利用して被加工部材を加熱することにより、被加工部材の加工範囲を短時間に所望とする温度にまで上昇させることができる。
【0027】
[14]本発明の順送プレス加工装置においては、前記電磁誘導発生器は、電磁力を発生するためのコイルの前記被加工部材に対向する面が平面であることが好ましい。
このように、電磁力を発生するためのコイルの前記被加工部材に対向する面を平面とすることにより、被加工部材に対して電磁力を広い面積で与えることができ、被加工部材を効率よく加熱することができる。
【0028】
[15]本発明の順送プレス加工装置においては、前記加熱部は、前記被加工部材をレーザー光によって加熱するレーザー発生器を有していることも好ましい。
このように、レーザー光を利用して被加工部材を加熱することによっても被加工部材の加工範囲を短時間に所望とする温度にまで上昇させることができる。また、レーザー光を利用して被加工部材を加熱することによって、加工範囲の所定部分を局所的に加熱することもできるため、局所的な加工を行う場合に有効なものとなる。
【0029】
[16]本発明の順送プレス加工装置においては、前記温間成形加工は、絞り加工であり、前記冷間成形加工は、打ち抜き加工であることが好ましい。
【0030】
順送プレス加工装置における加工工程として、絞り加工と打ち抜き加工とが存在する場合、絞り加工は温間成形加工として行い、打ち抜き加工は冷間成形加工として行う。このように、絞り加工を温間成形加工として行うことによって、絞り加工を容易かつ高精度に行うことができる。これは、被加工部材を例えば70℃〜500℃程度にまで高めると、被加工部材の応力が減少するからであると考えられる。このため、特に、被加工部材が上記したような難加工材である場合においては、絞り加工を温間成形加工として行うことにより、難加工材の絞り加工を容易かつ高精度に行うことができる。なお、絞り加工を行う際の温度は、被加工部材の種類や厚みなどに応じて、上記した温度範囲内の適切な温度を設定することが好ましい。
【0031】
[17]本発明の順送プレス加工装置においては、前記温間成形加工は、曲げ加工であり、前記冷間成形加工は、打ち抜き加工であることも好ましい。
【0032】
このように、順送プレス加工装置における加工工程として、曲げ加工と打ち抜き加工とが存在する場合、曲げ加工は温間成形加工として行い、打ち抜き加工は冷間成形加工として行う。このように、曲げ加工を温間成形加工として行うことによって、曲げ加工を容易かつ高精度に行うことができる。これは、被加工部材を例えば70℃〜500℃程度にまで高めると、被加工部材の応力が減少するからであると考えられる。このため、特に、被加工部材が上記したような難加工材である場合においては、曲げ加工を温間成形加工として行うことにより、難加工材の曲げ加工を容易かつ高精度に行うことができる。なお、曲げ加工を行う際の温度は、被加工部材の種類や厚みなどに応じて、上記した温度範囲内の適切な温度を設定することが好ましい。
【0033】
[18]本発明の順送プレス加工装置においては、前記温間成形加工は、鍛造加工であり、前記冷間成形加工は、打ち抜き加工であることも好ましい。
【0034】
このように、順送プレス加工装置における加工工程として、鍛造加工と打ち抜き加工とが存在する場合、鍛造加工は温間成形加工として行い、打ち抜き加工は冷間成形加工として行う。このように、鍛造加工を温間成形加工として行うことによって、鍛造加工を容易かつ高精度に行うことができる。これは、被加工部材を例えば70℃〜500℃程度にまで高めると、被加工部材の応力が減少するからであると考えられる。このため、特に、被加工部材が上記したような難加工材である場合においては、鍛造加工を温間成形加工として行うことにより、難加工材の鍛造加工を容易かつ高精度に行うことができる。なお、鍛造加工を行う際の温度は、被加工部材の種類や厚みなどに応じて、上記した温度範囲内の適切な温度を設定することが好ましい。
【0035】
[19]本発明の順送プレス加工装置においては、前記温間成形加工は、局所的打ち抜き部を形成するための局所的打ち抜き加工であり、前記冷間成形加工は、前記局所的打ち抜き部を含む所定範囲を前記被加工部材から切り離すための打ち抜き加工であることも好ましい。
【0036】
このように、順送プレス加工装置における加工工程として、局所的打ち抜き加工と、局所的打ち抜き部を含む所定範囲を被加工部材から切り離すための打ち抜き加工とが存在する場合、局所的打ち抜き加工は温間成形加工として行い、被加工部材から切り離すための打ち抜き加工は冷間成形加工として行う。このように、局所的打ち抜き加工を温間成形加工として行うことによって、局所的打ち抜き加工を容易かつ高精度に行うことができる。これは、被加工部材を例えば70℃〜500℃程度にまで高めると、被加工部材の応力が減少するからであると考えられる。このため、特に、被加工部材が上記したような難加工材である場合においては、局所的打ち抜き加工を温間成形加工として行うことにより、難加工材の局所的打ち抜き加工を容易かつ高精度に行うことができる。なお、局所的打ち抜き加工を行う際の温度は、被加工部材の種類や厚みなどに応じて、上記した温度範囲内の適切な温度を設定することが好ましい。
【0037】
[20]本発明の順送プレス加工装置においては、前記局所的打ち抜き部は、当該局所的打ち抜き部の打ち抜き方向に直交する断面の大きさが当該打ち抜き方向に沿った前記被加工部材の厚みに比べて小さいことが好ましい。
【0038】
このように、局所的な打ち抜き部の断面(打ち抜き方向に直交する断面)の大きさが当該打ち抜き方向に沿った前記被加工部材の厚みに比べて小さい場合、すなわち、アスペクト比が大きい場合においては、温間成形加工として打ち抜きを行った方が容易かつ高精度に打ち抜き可能となる場合もある。これは、被加工部材の温度を温間成型に適した温度にまで上昇させると、被加工部材の応力が減少するためであり、被加工部材が難加工材である場合には特に有効である。なお、この明細書において、「局所的打ち抜き部の断面の大きさ」というのは、局所的打ち抜き部の断面の形状が例えば「円」である場合には、当該円の径を例示することができ、また、局所的打ち抜き部の断面の形状が例えば「矩形」である場合には、当該矩形の対角線を例示することができる。
【0039】
[21]本発明の順送プレス加工装置においては、前記局所的打ち抜き部は、孔であることが好ましい。
このように、被加工部材に孔を形成する場合、当該孔の断面(打ち抜き方向に直交する断面)の大きさが当該孔の打ち抜き方向長さに比べて小さいと、打ち抜きは困難なものとなる。特に、被加工部材が上記したような難加工材である場合においては、このような孔の打ち抜きは困難なものとなる。そこで、当該孔を形成するための局所的打ち抜き加工を温間成形加工として行うことにより、容易かつ高精度に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】実施形態1に係る順送プレス加工装置10を説明するために示す図である。
【図2】図1(a)におけるB−B線矢視図である。
【図3】実施形態1に係る順送プレス加工装置10において製造される製品900の一例を示す図である。
【図4】ワーク部材Wに形成された抜き孔Cを説明するために示す図である。
【図5】加熱部400を説明するために示す図である。
【図6】実施形態2に係る順送プレス加工装置20を説明するために示す図である。
【図7】実施形態3に係る順送プレス加工装置30を説明するために示す図である。
【図8】実施形態4に係る順送プレス加工装置40を説明するために示す図である。
【図9】実施形態5に係る順送プレス加工装置50を説明するために示す図である。
【図10】実施形態6に係る順送プレス加工装置60を説明するために示す図である。
【図11】実施形態6に係る順送プレス加工装置60において製造される製品910の一例を示す図である。
【図12】実施形態7に係る順送プレス加工装置70を説明するために示す図である。
【図13】実施形態7に係る順送プレス加工装置70において製造される製品920の一例を示す図である。
【図14】実施形態8に係る順送プレス加工装置80を説明するために示す図である。
【図15】実施形態8に係る順送プレス加工装置80において製造される製品930の一例を示す図である。
【図16】局所的打ち抜き部の変形例を説明するために示す図である。
【図17】実施形態9に係る順送プレス加工装置90を説明するために示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に示す各実施形態においては、温間成形加工としては絞り加工を例示し、冷間成形加工としては打ち抜き加工を例示して説明する。
【0042】
[実施形態1]
図1は、実施形態1に係る順送プレス加工装置10を説明するために示す図である。図1(a)は順送プレス加工装置10における下側の金型基台100及び当該金型基台100に設置されている動作部200の構成を模式的に示す平面図であり、図1(b)は図1(a)におけるA−A線矢視図である。なお、図1(b)においては一部が断面として示されている。図2は、図1(a)におけるB−B線矢視図である。なお、図2においては一部が断面として示されている。
【0043】
実施形態1に係る順送プレス加工装置10は、図1及び図2に示すように、1つの金型基台100の上に複数の工程を行う動作部200が被加工部材W(ワーク部材Wという)の搬送方向(矢印x方向とする。)に沿って設置され、ワーク部材Wを搬送しながら動作部200において複数の工程を行うことによって所望とする製品を生成するものである。
【0044】
動作部200には、抜き孔形成用金型部300と、加熱部400と、温間成形加工部としての絞り金型部500と、冷間絞り加工部としての打ち抜き金型部600とが存在し、これらは、ワーク部材Wの搬送方向(図1における矢印x方向)に沿って、金型基台100上に、抜き孔形成用金型部300、加熱部400、絞り金型部500及び打ち抜き金型部600の順に設置されている。これら抜き孔形成用金型部300、加熱部400、絞り金型部500及び打ち抜き金型部600は、金型基台100にボルト(図示せず。)などによって固定されている。
【0045】
なお、加熱部400は、低熱伝導性の合成樹脂プレート490を介して金型基台100に設置されている。また、絞り金型部500は、低熱伝導性の板材540及び台座550を介して金型基台100設置されている。また、絞り金型部500と打ち抜き金型部600との間には、ガラス繊維などを用いた断熱材590が介在されている。
【0046】
また、金型基台100の四隅には、ガイドバー700が設けられており、上側の金型基台(図示せず。)が当該ガイドバーに沿って上下動するようになっており、それによって、抜き孔形成用金型部300による抜き孔形成加工、絞り金型部500による絞り加工及び打ち抜き金型部600による打ち抜き加工がなされるようになっている。すなわち、金型基台100に設置されている抜き孔形成用金型部300、絞り金型部500及び打ち抜き金型部600はそれぞれ雌型であり、上側の金型基台(図示せず。)には、抜き孔形成用金型部300、絞り金型部500及び打ち抜き金型部600の雄型がそれぞれ設置されていて、上側の金型基台(図示せず。)がガイドバー700に沿って下降することによって、それぞれ対応する加工がなされるようになっている。
【0047】
また、ワーク部材Wは、長尺の薄板状金属板であって、x軸に沿った方向(矢印x方向)に所定ピッチ(ピッチP)ごとに送られる。なお、ワーク部材Wにおいて破線で囲まれた矩形範囲は、製品とするために加工すべき範囲であり、本明細書においてはこれを加工範囲Waと呼ぶことにする。この加工範囲Waは、ワーク部材WがピッチPごとに送られることによって、動作部200によって各々の工程が行われる部分であり、ワーク部材Wに実際に設定されるものではなく、説明を分かり易くするためにワーク部材W上に加工範囲Waとして便宜的に示されている。
【0048】
図3は、実施形態1に係る順送プレス加工装置10において製造される製品900の一例を示す図である。実施形態1に係る順送プレス加工装置10において製造される製品900は、図3に示すように、容器状の製品であり、上面側が鍔部900aを有する開口面となっている。このような製品900の寸法は、鍔部900aを含めた容器の上面側が、縦方向及び横方向ともに4.5mm、容器の内側が、縦方向及び横方向ともに3.7mm、容器の底部までの深さが1.8mmの微小な製品(部品)である。
【0049】
実施形態1に係る順送プレス加工装置10においては、図3に示すような製品900を毎分100個以上、製造可能とするものである。なお、図3において示した製品900の形状及び寸法は一例であってこれに限定されるものではなく、種々の絞り金型を取り付けることによって様々な形状及び寸法の製品を製造することができる。
【0050】
このような製品900は、薄板(厚みが0.1mm程度とする。)上の金属板を絞り加工したのちに、打ち抜き加工することによって製造することができるが、金属板が例えばコバール、ニッケル、マグネシウム、チタンといった難加工材である場合には、絞り加工を行う際においては、所定の温度(200℃〜500℃程度)に加熱して絞り加工(いわゆる温間による絞り加工)を行い、絞り加工後に行う打ち抜き加工は、常温に戻した状態で行うことが好ましい。なお、温間成形加工を行う際は、前述したように、被加工部材の材質や加工の種類などによっては、200度よりも低い温度(70℃程度の温度)で加工することが好ましい場合もあるため、以下、温間成形加工に適した温度は「70℃〜500℃程度」であるとする。
【0051】
ところで、図1に示す順送プレス加工装置10の動作部200における抜き孔形成用金型部300は、加工範囲Waを部分的に囲むような抜き孔C(図4参照。)をワーク部材Wに形成する工程を行うものである。抜き孔形成用金型部300によって形成される抜き孔Cは、加工範囲Waを部分的に囲むように形成されるものであり、ここでは、ほぼ弧状をなす複数の抜き孔によって構成されている。
【0052】
図4は、ワーク部材Wに形成された抜き孔Cを説明するために示す図である。抜き孔Cは、図4に示すように、加工範囲Waを2重に取り囲むにように形成されており、内側(加工範囲Waに近い側)の抜き孔を内側抜き孔C1とし、その外側に設けられる抜き孔を外側抜き孔C2とする。このような内側抜き孔C1及び外側抜き孔C2を形成するために、抜き孔形成用金型部300は、図1に示すように、2つの抜き孔加工部(内側抜き孔加工部310及び外側抜き孔加工部320)を有している。
【0053】
ワーク部材Wに図4に示すような抜き孔C(内側抜き孔C1及び外側抜き孔C2)を形成することによって、加熱部400により加熱する際の熱がワーク部材W上で拡散することを抜き孔C1,C2によってくい止めることができ、また、絞り金型部500による絞り加工を行う際、加工範囲Waに向かってワーク部材Wに働く引っ張り力を抜き孔C1,C2によってくい止めることができる。それによって、ワーク部材Wを加熱部400によって加熱する際の熱を加工範囲Waに効率的に集中させることができるとともに、絞り金型部500による絞り加工を行ったときに、被加工部材が加工範囲に向かって引っ張られることにより生ずる被加工部材の歪みを抑制することができる。
【0054】
なお、内側抜き孔C1及び外側抜き孔C2は、ほぼ弧状として形成され、内側抜き孔C1は、この場合、y軸に沿った軸上の対向する位置に設けられ、外側抜き孔C2は、この場合、x軸に沿った軸上の対向する位置に設けられている。内側抜き孔C1と外側抜き孔C2とをこのよう形成することによって、加熱部400により加熱する際の熱がワーク部材W上において放射状に拡散してしまうことを防止することができ、それによって熱を加工範囲により効率的に集中させることができる。
【0055】
図1及び図2に説明が戻る。加熱部400は、電磁誘導発生器420を有し、ワーク部材Wの加工範囲Waを電磁誘導の原理を用いて、70℃〜500℃程度に加熱するものである。なお、加熱部400についての詳細は後述する。
【0056】
絞り金型部500は、ワーク部材Wの加工範囲Waに対して、温間による絞り加工を行うものであり、絞り加工を行う絞り加工部510と、電気によって発熱する発熱体(電気ヒーターという。)520と、絞り金型部500の温度(表面温度が好ましい。)を測定する温度測定部530とを有している。
【0057】
電気ヒーター520は、絞り加工部510による絞り加工を行う際に、加工範囲Waの温度が絞り加工に適した温度(70℃〜500℃程度)を保持できるように絞り金型部500を保温するものである。また、温度測定部530は、絞り金型部500の温度(例えば表面温度)を測定して、測定した温度を温度信号として出力するものである。この温度信号は、電気ヒーター制御部(図示せず。)に与えられる。電気ヒーター制御部は、絞り金型部500が予め設定された温度となるように電気ヒーター520を制御する。これにより、絞り金型部500はその表面温度を所定温度に保持することができ、それによって、加熱部400によって加熱されたワーク部材Wの温度を絞り加工に適した温度に保持することができる。
【0058】
このような電気ヒーター520及び温度測定部530は、上側の金型基台(図示せず。)に設置された絞り金型部(上側絞り金型部という。)にも設けられており、上側絞り金型部においても、当該上側絞り金型部の表面温度が絞り加工に適した温度を保持するように制御される。これにより、加熱部400によって加熱されたワーク部材Wの温度を適切な温度に保持した状態で絞り加工することができる。
【0059】
なお、絞り金型部500は、電気ヒーター520によって高い温度となり、絞り金型部500の熱が打ち抜き金型部600に伝わってしまい、打ち抜き金型部600の温度が冷間成形加工に不適当な温度となってしてしまう恐れがあるが、絞り金型部500と打ち抜き金型部600との間には断熱材590が介在されているために、絞り金型部500の熱が打ち抜き金型部600に直接的には伝わらないようにすることができる。
【0060】
また、打ち抜き金型部600は、絞り金型部500によって絞り加工のなされた加工範囲Waを打ち抜いて、図3に示すような製品とするものである。打ち抜き金型部600は、絞り金型部500によって絞り加工のなされた加工範囲Waの温度を常温程度にまでに低下させる冷却手段としてのエアー吹き付け部610と、当該エアー吹き付け部610によるエアーの吹き付けによって冷却された加工範囲Waを打ち抜く打ち抜き加工部620とを有している。なお、冷却手段としては、エアーの吹き付けによるもの以外にも種々の冷却手段を採用することが可能である。
【0061】
上記した抜き孔形成用金型部300における外側抜き孔加工部320、内側抜き孔加工部310、加熱部400における電磁誘導発生器420、絞り金型部500における絞り加工部510、打ち抜き金型部600におけるエアー吹き付け部610及び打ち抜き加工部620は、それぞれの中心位置がピッチPに対応する間隔ごとに設けられている。
【0062】
図5は、加熱部400を説明するために示す図である。図5(a)は加熱部400を斜め上方から見た場合の外観図であり、図5(b)は図5(a)において加熱部400の一部の部品を取り外した状態を示す図であり、図5(c)は加熱部400を斜め下方向から見た場合で、かつ、加熱部400の一部の部品を取り外した状態を示す図である。
【0063】
加熱部400は、図5に示すように、加熱部本体410と、電磁誘導発生器420を保持する電磁誘導発生器保持部430と、矢印xで示すワーク部材Wの搬送方向に直交するように加熱部本体410を貫通して設けられ、冷却用の流体(水とする。)を流通させる冷却用流体流通路440とを有している。この冷却用流体流通路440は、冷却用流体流通路440を流通する水を流通の過程で一時的に貯留する流体貯留槽450を有している。なお、加熱部本体410は、セラミックなどの耐熱性及び低熱伝導性部材で形成されている。
【0064】
また、電磁誘導発生器420は、電磁力を発生する渦巻き状のコイルで構成され、当該コイルは、ワーク部材Wに対向する面が平面であることが好ましい。ワーク部材Wに対向する面を平面とするには、コイルの延伸方向に直交する断面形状が、例えば、矩形状、台形又は逆台形などを有するものを用いることによって実現できる。コイルがこのような断面形状を有していることにより、ワーク部材Wに対して電磁力を広い面積で与えることができ、ワーク部材Wを効率よく加熱することができる。
【0065】
流体貯留槽450は、加熱部本体410内において下面側が開口面となっており、当該開口面にゴム板451と底板452とを取り付けることによって、有底の流体貯留槽を形成することができる。
【0066】
電磁誘導発生器保持部430は、底の浅い箱状をなし、底面部431に電磁誘導発生器420が載置される。なお、底面部431の中心部には円盤状の凸部432が形成されており、電磁誘導発生器420は、渦巻き状のコイルが凸部432を取り囲むように載置される。この凸部432は、電磁誘導発生器420の動きを規制して、電磁誘導発生器420が電磁誘導発生器保持部430内で位置ずれしないようにするためのものである。すなわち、渦巻き状のコイルが凸部432を取り囲むように電磁誘導発生器420が底面部431に載置されることによって、電磁誘導発生器420の動きが規制され、それによって、電磁誘導発生器420が電磁誘導発生器保持部430内で位置ずれしないようにすることができる。
【0067】
また、電磁誘導発生器保持部430の上面は開口面となっており、当該開口面はセラミック製の上蓋460で覆われる。この上蓋460の厚みは、数ミリ程度のものが好ましく、実施形態1に係る順送プレス加工装置10においては、2.5mm程度としている。
【0068】
このように構成された加熱部400は、金型基台100において、抜き孔形成用金型部300と絞り金型部500との間に設置され、抜き孔形成用金型部300で図4に示すような抜き孔C(外側抜き孔C2及び内側抜き孔C1)が形成されたワーク部材Wに対し、当該ワーク部材Wの加工範囲Waを加熱する。すなわち、ワーク部材Wは、図4(a)における矢印x方向に搬送され、ピッチPごとにワーク部材Wの加工範囲Waの中心が加熱部400の上蓋460上(渦巻状の電磁誘導発生器420の中心)に位置するため、加工範囲Waを加熱することができる。
【0069】
ところで、加熱部400に設けられている冷却用流体流通路440の一方の端部には、パイプ481(図1及び図2参照。)が接続されており、冷却用流体流通路440の他方の端部には、パイプ482(図1及び図2参照。)が接続されている。そして、流体としての水は、図1において、パイプ481から加熱部本体410の冷却用流体流通路440を流通し、冷却用流体流通路440の途中において流体貯留槽450で一時的に蓄えられたのちにパイプ482へと流通するようになっている。
【0070】
なお、図1における矢印a,bは、水の流通方向を示しており、これは、後述する図6〜図9においても同様である。また、当該水は加熱部本体410に流入する前の段階では常温以下の水であって、加熱部本体410を通過した後には温度が上昇し、常温の水に比べて比較的高温の水となっている。なお、以下では、常温以下の水を「冷水」と呼ぶ場合もある。また、加熱部本体410を通過した後に温度の上昇した水を「温水」と呼ぶ場合もある。
【0071】
一方、金型基台100においても、当該金型基台100において加熱部400が設置されている部分には、冷却用流体流通路110が設けられている。この冷却用流体流通路110にも金型基台100の内部において流体貯留槽120が設けられている(図2参照。)。流体貯留槽120は、上面側が開口面となっており、ゴム板121によって密閉されている。
【0072】
また、冷却用流体流通路110の一方の端部にはパイプ131が接続され(図1及び図2参照。)、冷却用流体流通路110の他方の端部にはパイプ132(図1及び図2参照。)が接続されている。そして、図1において、冷水はパイプ131から金型基台100の冷却用流体流通路110を流通し、冷却用流体流通路110の途中において流体貯留槽120で一時的に蓄えられたのちにパイプ132へと流通するようになっている。なお、当該冷水は金型基台100を通過した状態では、常温の水に比べて多少温度が上昇した状態となっている。
【0073】
なお、以下では、加熱部400側に設けられている冷却用流体流通路440を第1冷却用流体流通路440とし、金型基台100側に設けられている冷却用流体流通路を第2冷却用流体流通路110として説明する。また、第1冷却用流体流通路440に設けられている流体貯留槽450を第1流体貯留槽450とし、第2冷却用流体流通路110に設けられている流体貯留槽120を第2流体貯留槽120として説明する。
【0074】
これら第1冷却用流体流通路440及び第2冷却用流体流通路110は、加熱部400及び金型基台100において、それぞれ冷却手段としての機能を有するものである。加熱部400及び金型基台100がこのような冷却手段を有することにより、加熱部400がワーク部材Wを加熱することによって発生する熱を冷却することができる。それによって、冷間での加工を行うべき打ち抜き金型部600が高温となることを防ぐことができ、当該打ち抜き金型部600においては冷間による加工が可能となる。
【0075】
すなわち、実施形態1に係る順送プレス加工装置10は、上記したような寸法を有する微小の製品900(例えば図3参照。)を製造するものであって、抜き孔形成用金型部300から打ち抜き金型部600までの間の距離は、数10cm程度である。このため、加熱部400及び金型基台100に冷却手段を設けないと、高温(例えば、200℃〜500℃程度)となったワーク部材Wの熱によって、加熱部400及び金型基台100も温度が上昇してしまい、特に、高温となったワーク部材Wの熱が打ち抜き金型部600に伝わってしまうと、冷間によって行うべき打ち抜き加工に悪影響を及ぼすこととなる。
【0076】
これを防ぐために、実施形態1に係る順送プレス加工装置10においては、上記したような冷却手段を有することにより、高温となったワーク部材Wの熱が打ち抜き金型部600に伝わることを防ぐことができる。また、絞り金型部500と打ち抜き金型部600との間には断熱材590が介在されているために、絞り金型部500の熱が打ち抜き金型部600に直接的には伝わらないようにすることができる。
【0077】
以上のように構成された順送プレス加工装置10において全体的な動作について説明する。長尺のワーク部材Wは、ピッチPごとに矢印x方向に送られる。まず、外側抜き孔加工部320による外側抜き孔形成工程がなされて、加工範囲Waを取り囲むように外側抜き孔C2が形成され、さらに1ピッチ分(ピッチP分)の送りがなされることによって、内側抜き孔加工部310による内側抜き孔形成工程がなされて、内側抜き孔C1が形成される(図4参照。)。なお、これら各工程は、図示しない上側の金型基台のz軸に沿った下降動作によって同時に行われるので、内側抜き孔形成工程が行われているときは、外側抜き孔形成工程も同時に行われていることとなる。
【0078】
そして、さらに1ピッチ(ピッチP)分の送りがなされると、図4に示すような内側抜き部C1及び外側抜き孔C2が形成された先頭の加工範囲(第1番目の加工範囲Wa1とする。但し、図示は省略する。)が、加熱部400に達し、加熱工程が行われる。なお、説明をわかり易くするため、加熱部400以降における各工程については、第1番目の加工範囲Wa1に注目して説明する。
【0079】
第1番目の加工範囲Wa1が加熱部400に達すると、第1番目の加工範囲Wa1が加熱部400によって電磁誘導加熱される。これにより、この段階では、第1番目の加工範囲Wa1の温度は、70℃〜500℃程度となる。そして、第1番目の加工範囲Wa1が加熱部400で加熱されたのち、ワーク部材Wがさらに1ピッチ分送られると、第1番目の加工範囲Wa1は、絞り金型部500の絞り加工部510に位置し、当該絞り加工部510による絞り工程がおこなわれる。
【0080】
そして、絞り金型部500による絞り工程が終了すると、ワーク部材Wがさらに1ピッチ分送られ、絞り加工された第1番目の加工範囲Wa1は、打ち抜き金型部600のエアー吹き付け部610に位置し、当該エアー吹き付け部610による冷却工程がなされ、ほぼ常温にまで冷却される。そして、ワーク部材Wがさらに1ピッチ分送られると、第1番目の加工範囲Wa1は、打ち抜き金型部600の打ち抜き加工部620に位置し、打ち抜き加工部620による打ち抜き工程がなされ、第1番目の加工範囲Wa1が打ち抜かれて、図3に示すような製品900を製造することができる。
【0081】
以上は第1番目の加工範囲Wa1に注目して加熱部以降の各工程について説明したが、第1番目の加工範囲Wa1に続く加工範囲(第2番目の加工範囲Wa2,第3番目の加工範囲Wa3,・・・とする。但し、これらの図示は省略する。)も同様に、外側抜き孔形成工程及び内側抜き孔形成工程が終了したあとは、加熱部400による加熱工程、絞り金型部500における絞り加工部510による絞り工程、打ち抜き金型部600のエアー吹き付け部610による冷却工程と打ち抜き加工部620により打ち抜き工程が順次行われる。これらの一連の工程は高速に行われ、実施形態1に係る順送プレス加工装置10においては、毎分100個以上の製品の製造を可能とする。
【0082】
なお、上記した各工程は同時行われるので、第1番目の加工範囲Wa1に対して打ち抜き工程を行っているときには、第2番目の加工範囲Wa2に対してはエアーの吹き付けによる冷却工程を行っており、第3番目の加工範囲Wa3に対しては絞り工程を行っており、第4番目の加工範囲Wa4に対しては加熱工程を行っており、第5番目の加工範囲Wa5に対しては内側抜き孔形成工程を行っており、第6番目の加工範囲Wa6に対しては外側抜き孔形成工程程を行っている。
【0083】
以上説明したように実施形態1に係る順送プレス加工装置10においては、絞り金型部500の前段に加熱部400を設け、当該加熱部400によりワーク部材Wを加熱するようにしている。これによって、絞り金型部500においては温間による絞り加工が可能となる。
【0084】
このように、絞り加工を温間成形加工として行うことにより、絞り加工を容易かつ高精度に行うことができる。これは、ワーク部材Wを例えば70℃〜500℃程度にまで高めると、ワーク部材Wの応力が減少するからであると考えられる。このため、特に、ワーク部材Wが上記したような難加工材である場合においては、当該難加工材を温間成形加工として絞り加工を行うことにより、難加工材の絞り加工を容易かつ高精度に行うことができる。なお、温間成形加工として絞り加工を行う際の温度は、ワーク部材Wの種類や厚みなどに応じて、上記した温度範囲内の適切な温度を設定することが好ましい。
【0085】
また、実施形態1に係る順送プレス加工装置10においては、加熱部400において、加熱部400に設けられている第1冷却用流体流通路440を冷水が流通し、かつ、流通した冷水が第1流体貯留槽450において一時的に貯留される構造となっているとともに、金型基台100においても金型基台100に設けられている第2冷却用流体流通路110を冷水が流通し、かつ、流通した冷水が第2流体貯留槽120において一時的に貯留される構造となっている。
【0086】
このため、加熱部400でワーク部材Wを加熱することにより発生した熱によって、加熱部本体410や金型基台100が高温となることを防止することができ、順送プレス加工装置10全体が高温となることを防止することができる。特に、冷間による加工を行うべき打ち抜き金型部600が高温となってしまうことを防止できる。
【0087】
[実施形態2]
実施形態1に係る順送プレス加工装置10においては、加熱部400に設けられている第1冷却用流体流通路440及び金型基台100に設けられている第2冷却用流体流通路110を、それぞれ個別に冷水を流通させるような構成としたが、実施形態2に係る順送プレス加工装置20においては、これら第1冷却用流体流通路440と第2冷却用流体流通路110とをパイプで連結することにより一本の流通路として機能するような構成とする。
【0088】
図6は、実施形態2に係る順送プレス加工装置20を説明するために示す図である。図6(a)は順送プレス加工装置20における下側の金型基台100及び当該金型基台100に設置されている動作部200の構成を模式的に示す平面図であり、図6(b)は図6(a)におけるA−A線矢視図であり、一部が断面として示されている。なお、図6(a)におけるB−B線矢視図は、図2と同様に表すことができる。
【0089】
実施形態2に係る順送プレス加工装置20の基本的な構成は、実施形態1に係る順送プレス加工装置10と同じであるので、同一構成要素には同一符号が付されている。また、実施形態2に係る順送プレス加工装置20の動作部200としての抜き孔形成用金型部300、加熱部400、絞り金型部500及び打ち抜き金型部600が行う動作は、実施形態1に係る順送プレス加工装置10と同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0090】
実施形態2に係る順送プレス加工装置20においては、図6に示すように、金型基台100に設けられている第2冷却用流体流通路110と加熱部400に設けられている第1冷却用流体流通路440とを連結パイプ810によって連結することによって、これら各流体流通路が一本の流通路として機能するような構成としている。
【0091】
このような構成において、冷水はパイプ131から第2冷却用流体流通路110を流通し、当該第2冷却用流体流通路110の途中に設けられている第2流体貯留槽120に一時的に蓄えられたのち、連結パイプ810を介して第1冷却用流体流通路440を流通し、第1冷却用流体流通路440の途中に設けられている第1流体貯留槽450に一時的に蓄えられたのち、当該第1冷却用流体流通路440に接続されたパイプ482へと流通する。
【0092】
このように、第1冷却用流体流通路440と第2冷却用流体流通路110とを連結パイプ810によって連結することによって、これら各流体流通路が一本の流通路として機能するような構成としても、実施形態1に係る順送プレス加工装置10と同様の効果が得られる。また、実施形態2に係る順送プレス加工装置20によれば、一本の流通路に冷却水を流すことによって、加熱部400及び金型基台100の両方を冷却することができるため、水を有効利用することができ、かつ、効率的な冷却が可能となる。
【0093】
[実施形態3]
図7は、実施形態3に係る順送プレス加工装置30を説明するために示す図である。図7(a)は順送プレス加工装置30における下側の金型基台100及び当該金型基台100に設置されている動作部200の構成を模式的に示す平面図であり、図7(b)は図7(a)におけるA−A線矢視図であり、一部が断面として示されている。なお、図7(a)におけるB−B線矢視図は、図2とほぼ同様に表すことができる。
【0094】
実施形態3に係る順送プレス加工装置30の基本的な構成は、実施形態1に係る順送プレス加工装置10と同じであるので、同一構成要素には同一符号が付されている。また、実施形態3に係る順送プレス加工装置30の動作部200としての抜き孔形成用金型部300、加熱部400、絞り金型部500及び打ち抜き金型部600)が行う動作は、実施形態1に係る順送プレス加工装置10と同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0095】
実施形態3に係る順送プレス加工装置30は、絞り金型部500の内部に、2本の保温用流体流通路560,570がy軸方向に沿って平行に設けられている。そして、保温用流体流通路560の一方の端部は、連結パイプ820によって加熱部400に設けられている第1冷却用流体流通路440に連結されている。また、保温用流体流通路560の他方の端部と保温用流体流通路570の一方の端部との間は連結パイプ830によって連結されている。また、保温用流体流通路570の他方の端部にはパイプ581が連結されている。なお、金型基台100には、実施形態1に係る順送プレス加工装置10と同様に、第2冷却用流体流通路440が設けられている。
【0096】
このような構成とすることにより、加熱部400を流通した温水が連結パイプ820を介して絞り金型部500に設けられている一方の保温用流体流通路560を流通したのち、連結パイプ830を介して絞り金型部500に設けられている他方の保温用流体流通路570を流通するため、絞り金型部500の温度を、ある程度の温度にまで上昇させることができる。
【0097】
このため、実施形態3に係る順送プレス加工装置30によれば、実施形態1に係る順送プレス加工装置10によって得られる効果に加えて、保温用流体流通路560,570を流通する温水が、電気ヒーター520の補助的な役目をなすため、絞り金型部500の電気ヒーター520の消費電力を削減することができるといった効果が得られる。
【0098】
[実施形態4]
図8は、実施形態4に係る順送プレス加工装置40を説明するために示す図である。図8(a)は順送プレス加工装置40における下側の金型基台100及び当該金型基台100に設置されている動作部200の構成を模式的に示す平面図であり、図8(b)は図8(a)におけるA−A線矢視図であり、一部が断面として示されている。なお、図8(a)におけるB−B線矢視図は、図2とほぼ同様に表すことができる。
【0099】
実施形態4に係る順送プレス加工装置40の基本的な構成は、実施形態1に係る順送プレス加工装置10と同じであるので、同一構成要素には同一符号が付されている。また、実施形態4に係る順送プレス加工装置40の動作部200としての抜き孔形成用金型部300、加熱部400、絞り金型部500及び打ち抜き金型部600が行う動作は、実施形態1に係る順送プレス加工装置10と同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0100】
実施形態4に係る順送プレス加工装置40は、実施形態2に係る順送プレス加工装置20と実施形態3に係る順送プレス加工装置30とを組み合わせたものである。
【0101】
すなわち、実施形態4に係る順送プレス加工装置40においては、実施形態2に係る順送プレス加工装置20と同様に、加熱部400に設けられている第1冷却用流体流通路440と金型基台100に設けられている第2冷却用流体流通路110とを連結パイプ810によって連結し、さらに、実施形態3に係る順送プレス加工装置30と同様に、保温用流体流通路560の一方の端部を連結パイプ820によって第1冷却用流体流通路440に連結するとともに、保温用流体流通路560の他方の端部と保温用流体流通路570の一方の端部との間を連結パイプ830によって連結し、また、保温用流体流通路570の他方の端部にパイプ581を連結した構成となっている。ただし、第1冷却用流体流通路440及び保温用流体流通路560,570における水の流通方向が実施形態3に係る順送プレス加工装置30の場合とは逆方向となっている。
【0102】
このように、実施形態4に係る順送プレス加工装置40においては、第2冷却用流体流通路110、第1冷却用流体流通路440及び保温用流体流通路560,570を直列に連結することによって、これら各流体流通路が一本の流通路として機能するような構成としている。
【0103】
このような構成における水の流通経路は、水が第2冷却用流体流通路110から第1冷却用流体流通路440を通って保温用流体流通路560,570へと流通する経路となる。このような構成とすることにより、金型基台100及び加熱部400の冷却と、絞り金型部500の保温とが一本の流通路によって行えるとともに、水を有効利用することができる。また、実施形態3に係る順送プレス加工装置30と同様に、絞り金型部500の電気ヒーター520の消費電力を削減することができるといった効果が得られる。
【0104】
[実施形態5]
図9は、実施形態5に係る順送プレス加工装置50を説明するために示す図である。図9(a)は順送プレス加工装置50における下側の金型基台100及び当該金型基台100に設置されている動作部200の構成を模式的に示す平面図であり、図9(b)は図9(a)におけるA−A線矢視図であり、一部が断面として示されている。なお、図9(a)におけるB−B線矢視図は、図2とほぼ同様に表すことができる。
【0105】
また、実施形態5に係る順送プレス加工装置50の基本的な構成は、実施形態1に係る順送プレス加工装置10と同じであるので、同一構成要素には同一符号が付されている。また、実施形態5に係る順送プレス加工装置50の動作部200としての抜き孔形成用金型部300、加熱部400、絞り金型部500及び打ち抜き金型部600が行う動作は、実施形態1に係る順送プレス加工装置10と同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0106】
実施形態5に係る順送プレス加工装置50は、図8に示した実施形態4に係る順送プレス加工装置40の構成に、打ち抜き金型部600の内部に冷却用流体流通路630(第3冷却用流体流通路630という。)をy軸方向に沿って設け、この第3冷却用流体流通路630の一方の端部を連結パイプ840によって金型基台100に設けられている第2冷却用流体流通路110に連結するような構成としている。なお、第3冷却用流体流通路630の他方の端部にはパイプ641が接続されている。
【0107】
すなわち、実施形態5に係る順送プレス加工装置50においては、第3冷却用流体流通路110、第2冷却用流体流通路110、第1冷却用流体流通路440及び保温用流体流通路560,570を直列に連結することによって、これら各流体流通路が一本の流通路として機能するような構成としている。
【0108】
このような構成における水の流通経路は、水が第3冷却用流体流通路630、第2冷却用流体流通路110、第1冷却用流体流通路440、保温用流体流通路560,570へと流通する経路となる。
【0109】
このような構成とすることにより、打ち抜き金型部600に設けられている第3冷却用流体流通路630を流通する冷水によって打ち抜き金型部600を予冷しておくことができるため、エアー吹き付け部610によるワーク部材Wの冷却を効率よく行うことができる。
【0110】
このように、実施形態5に係る順送プレス加工装置50によれば、実施形態4に係る順送プレス加工装置40によって得られる効果に加えて、エアー吹き付け部610によるワーク部材Wの冷却を効率よく行うことができるといった効果が得られる。
【0111】
ところで、上記各実施形態においては、温間成形加工部としては絞り金型部500を設け、当該絞り金型部500によってワーク部材Wの加工範囲に絞り加工を施すようにしたが、温間成形加工としては、絞り加工に限られるものではなく、曲げ加工、鍛造加工、局所的な打ち抜き加工(局所的打ち抜き加工という。)などの各加工を温間成形加工として行うことができる。これら曲げ加工、鍛造加工、局所的打ち抜き加工などの各加工を温間成形加工として行う場合を以下に示す実施形態6〜実施形態8として説明する。
【0112】
なお、以下に示す実施形態6〜実施形態8においては、当該各実施形態に係る順送プレス加工装置60,70,80の冷却用流体流通路などの構成は、実施形態1に係る順送プレス加工装置10の構成を採用した場合を説明するが、実施形態2〜実施形態5に係る順送プレス加工装置20,30,40,50の構成を採用することもできることは勿論である。
【0113】
[実施形態6]
図10は、実施形態6に係る順送プレス加工装置60を説明するために示す図である。実施形態6に係る順送プレス加工装置60が実施形態1に係る順送プレス加工装置10と異なるのは、絞り金型部500の代わりに曲げ金型部501を設けた点であり、その他の構成は、実施形態1に係る順送プレス加工装置10と同様であるので、実施形態1に係る順送プレス加工装置10と同一構成要素には同一符号が付されている。
【0114】
図11は、実施形態6に係る順送プレス加工装置60において製造される製品910の一例を示す図である。なお、実施形態6に係る順送プレス加工装置60によって製造される製品の形状は、図11に示すような形状に限られるものではなく、種々の曲げ金型を取り付けることによって様々な形状及び寸法の製品を製造することができる。
【0115】
曲げ金型部501は、ワーク部材Wの加工範囲Waに対して、温間による曲げ加工を行うものであり、曲げ加工を行う曲げ加工部502と、電気によって発熱する発熱体(電気ヒーター520)と、曲げ金型部502の温度(表面温度が好ましい。)を測定する温度測定部530とを有している。なお、曲げ金型部502は、上側の金型基台(図示せず。)に設置された上側の曲げ金型部(図示せず。)が下降することによって、ワーク部材Wにおける加工範囲Waの所定部分に、例えば、図11に示すような曲げ部911,912を形成する。
【0116】
このように構成された順送プレス加工装置70の全体的な動作は、実施形態1に係る順送プレス加工装置10と同様の工程によって行うことができる。なお、加工範囲Waを加熱部400によって加熱するまでの動作は実施形態1に係る順送プレス加工装置10と同様であるため、加熱部400による加熱後の動作について簡単に説明する。
【0117】
加熱部400による加熱後においては、曲げ金型部501の曲げ加工部502によって温間による曲げ加工を行い、曲げ加工が終了すると打ち抜き金型部600のエアー吹き付け部610によってほぼ常温にまで冷却したのち、打ち抜き金型部600の打ち抜き加工部620によって冷間による打ち抜き工程を行う。これによって、図11に示すような製品910を製造することができる。
【0118】
このように、実施形態6に係る順送プレス加工装置60においては、曲げ金型部501の前段に加熱部400を設け、当該加熱部400によりワーク部材Wの温度が70℃〜500℃程度となるようにワーク部材Wを加熱している。これによって、曲げ金型部501においては曲げ加工を温間成形加工として行うことが可能となる。
【0119】
曲げ加工を温間成形加工として行うことにより、曲げ加工を容易かつ高精度に行うことができる。これは、ワーク部材Wを70℃〜500℃程度にまで高めると、ワーク部材Wの応力が減少するからであると考えられる。このため、特に、ワーク部材Wが上記したような難加工材である場合においては、曲げ加工を温間成形加工として行うことにより、難加工材の曲げ加工を容易かつ高精度に行うことができる。なお、曲げ加工を温間成形加工として行う際の温度は、ワーク部材Wの種類や厚みなどに応じて、上記した温度範囲(70℃〜500℃程度)内の適切な温度を設定することが好ましい。
【0120】
また、実施形態6に係る順送プレス加工装置60においても、上記各実施形態で説明したような冷却用流体流通路110,440,630(図2及び図9参照。)を設けることによって、加熱部400でワーク部材Wを加熱することにより発生した熱によって、加熱部本体410や金型基台100が高温となることを防止することができ、順送プレス加工装置60全体が高温となることを防止することができる。特に、冷間による加工を行うべき打ち抜き金型部600が高温となってしまうことを防止できる。また、曲げ金型部501に保温用流体流通路560,570(図7〜図9参照。)を設けることにより、保温用流体流通路560,570を流通する温水が、電気ヒーター520の補助的な役目をなすため、曲げ金型部501の電気ヒーター520の消費電力を削減することができるといった効果が得られる。
【0121】
[実施形態7]
図12は、実施形態7に係る順送プレス加工装置70を説明するために示す図である。実施形態7に係る順送プレス加工装置70が、上記実施形態1に係る順送プレス加工装置10と異なるのは、絞り金型部500の代わりに鍛造金型部503を設けた点であり、その他の構成は、実施形態1に係る順送プレス加工装置10と同様であるので、実施形態1に係る順送プレス加工装置10と同一構成要素には同一符号が付されている。
【0122】
図13は、実施形態7に係る順送プレス加工装置70において製造される製品920の一例を示す図である。なお、実施形態7に係る順送プレス加工装置70によって製造される製品の形状は、図13に示すような形状に限られるものではなく、種々の鍛造金型を取り付けることによって様々な形状及び寸法の製品を製造することができる。
【0123】
鍛造金型部503は、ワーク部材W(肉厚のワーク部材であるとする。)の加工範囲Waに対して、温間による鍛造加工を行うものであり、鍛造加工を行う鍛造加工部504と、電気によって発熱する発熱体(電気ヒーター520)と、鍛造金型部503の温度(表面温度が好ましい。)を測定する温度測定部530とを有している。なお、鍛造金型部503は、上側の金型基台(図示せず。)に設置された上側の鍛造金型部(図示せず。)が下降することによって、ワーク部材Wにおける加工範囲Waを鍛造加工し、それによって、図13に示すような傾斜部921,922と薄板部923,924とを形成する。
【0124】
このように構成された順送プレス加工装置70の全体的な動作は、実施形態1に係る順送プレス加工装置10と同様の工程によって行うことができる。なお、加工範囲Waを加熱部400によって加熱するまでの動作は実施形態1に係る順送プレス加工装置10と同様であるため、加熱部400による加熱後の動作について簡単に説明する。
【0125】
加熱部400による加熱後においては、鍛造金型部503の鍛造加工部504によって温間による鍛造加工を行い、鍛造加工が終了すると打ち抜き金型部600のエアー吹き付け部610によってほぼ常温にまで冷却したのち、打ち抜き金型部600の打ち抜き加工部620によって冷間による打ち抜き工程を行う。これによって、図13に示すような製品920を製造することができる。
【0126】
このように、実施形態7に係る順送プレス加工装置70においては、鍛造金型部503の前段に加熱部400を設け、当該加熱部400によりワーク部材Wを加熱するようにしている。これによって、鍛造金型部503においては鍛造加工を温間成形加工として行うことができる。
【0127】
鍛造加工を温間成形加工として行うことにより、鍛造加工を容易かつ高精度に行うことができる。これは、ワーク部材Wを70℃〜500℃程度にまで高めると、ワーク部材Wの応力が減少するからであると考えられる。このため、特に、ワーク部材Wが上記したような難加工材である場合においては、鍛造加工を温間成形加工として行うことにより、難加工材の鍛造加工を容易かつ高精度に行うことができる。なお、鍛造加工を温間成形加工として行う際の温度は、ワーク部材Wの種類や厚みなどに応じて、上記した温度範囲(70℃〜500℃程度)内の適切な温度を設定することが好ましい。
【0128】
また、実施形態7に係る順送プレス加工装置70においても、上記各実施形態で説明したような冷却用流体流通路110,440,630(図2及び図9参照。)を設けることによって、加熱部400でワーク部材Wを加熱することにより発生した熱によって、加熱部本体410や金型基台100が高温となることを防止することができ、順送プレス加工装置70全体が高温となることを防止することができる。特に、冷間による加工を行うべき打ち抜き金型部600が高温となってしまうことを防止できる。また、鍛造金型部503に保温用流体流通路560,570(図7〜図9参照。)を設けることにより、保温用流体流通路560,570を流通する温水が、電気ヒーター520の補助的な役目をなすため、鍛造金型部503の電気ヒーター520の消費電力を削減することができるといった効果が得られる。
【0129】
[実施形態8]
図14は、実施形態8に係る順送プレス加工装置80を説明するために示す図である。実施形態8に係る順送プレス加工装置80が、実施形態1に係る順送プレス加工装置10と異なるのは、絞り金型部500の代わりに、加工範囲の所定部分に局所的な打ち抜き部(以下、局所的打ち抜き部という。)を形成するための打ち抜き金型部505を設けた点が異なるだけであり、その他の構成は、実施形態1に係る順送プレス加工装置10と同様であるので、実施形態1に係る順送プレス加工装置10と同一構成要素には同一符号が付されている。
【0130】
絞り金型部500の代わりに設けられている「打ち抜き金型部505」は、加工範囲の所定部分に局所的打ち抜き部を形成するための打ち抜き金型部であるため、元々存在している「打ち抜き金型部600」と区別するため、「打ち抜き金型部505」を「局所的打ち抜き金型部505」と呼ぶことにする。また、局所的打ち抜き金型部505による打ち抜き加工を「局所的打ち抜き加工」と呼ぶことにする。
【0131】
図15は、実施形態8に係る順送プレス加工装置80において製造される製品930の一例を示す図である。なお、実施形態8に係る順送プレス加工装置80によって製造される製品の形状は、図15に示すような形状に限られるものではなく、種々の局所的打ち抜き金型を取り付けることによって様々な形状及び寸法の製品を製造することができる。
【0132】
製品930は、図15に示すように、加工範囲の所定部分に局所的打ち抜き金型部505によって孔931が形成されている。実施形態8に係る順送プレス加工装置80においては、孔931は、当該孔931の断面(打ち抜き方向に直交する断面)S1の形状が円形であるとする。なお、孔931は、アスペクト比が大きい孔であるとする。すなわち、断面S1の大きさ(ここでは孔931の断面の形状が円形であるとしているので、この場合は円の径とする。)は、当該孔931の打ち抜き方向に沿ったワーク部材Wの厚みtに比べて十分に小さいものとする。
【0133】
局所的打ち抜き金型部505は、ワーク部材Wの加工範囲Waに対して、温間による局所的打ち抜き加工を行うものであり、局所的打ち抜き加工部506と、電気によって発熱する発熱体(電気ヒーター520)と、局所的打ち抜き金型部505の温度(表面温度が好ましい。)を測定する温度測定部530とを有している。なお、局所的打ち抜き金型部505は、上側の金型基台(図示せず。)に設置された上側の局所的打ち抜き金型部(図示せず。)が下降することによってワーク部材Wにおける加工範囲Waの所定部分に、例えば、図15に示すような孔931を形成する。
【0134】
このように構成された順送プレス加工装置80の全体的な動作は、実施形態1に係る順送プレス加工装置10と同様の工程によって行うことができる。なお、加工範囲Waを加熱部400によって加熱するまでの動作は実施形態1に係る順送プレス加工装置10と同様であるので、加熱部400による加熱後の動作について簡単に説明する。
【0135】
加熱部400による加熱後においては、局所的打ち抜き金型部505の局所的打ち抜き加工部506によって温間による局所的打ち抜き加工を行い、局所的打ち抜き加工が終了すると打ち抜き金型部600のエアー吹き付け部610によってほぼ常温にまで冷却したのち、打ち抜き金型部600の打ち抜き加工部620によって冷間による打ち抜き工程を行う。これによって、図15に示すような製品930を製造することができる。
【0136】
このように、実施形態8に係る順送プレス加工装置80においては、局所的打ち抜き金型部505の前段に加熱部400を設け、当該加熱部400によりワーク部材Wを加熱するようにしている。これによって、局所的打ち抜き金型部505においては局所的打ち抜き加工を温間成形加工として行うことができる。
【0137】
局所的打ち抜き加工を温間成形加工として行うことにより、局所的打ち抜き加工を容易かつ高精度に行うことができる。これは、ワーク部材Wを70℃〜500℃程度にまで高めると、ワーク部材Wの応力が減少するからであると考えられる。このため、特に、ワーク部材Wが上記したような難加工材である場合においては、局所的打ち抜き加工を温間成形加工として行うことにより、難加工材の局所的打ち抜き加工を容易かつ高精度に行うことができる。なお、局所的打ち抜き加工を温間成形加工として行う際の温度は、ワーク部材Wの種類や厚みなどに応じて、上記した温度範囲(70℃〜500℃程度)内の適切な温度を設定することが好ましい。
【0138】
また、実施形態8に係る順送プレス加工装置80においても、上記各実施形態で説明したような冷却用流体流通路110,440,630(図2及び図9参照。)を設けることによって、加熱部400でワーク部材Wを加熱することにより発生した熱によって、加熱部本体410や金型基台100が高温となることを防止することができ、順送プレス加工装置80全体が高温となることを防止することができる。特に、冷間による加工を行うべき打ち抜き金型部600が高温となってしまうことを防止できる。また、局所的打ち抜き金型部505に保温用流体流通路560,570(図7〜図9参照。)を設けることにより、保温用流体流通路560,570を流通する温水が、電気ヒーター520の補助的な役目をなすため、局所的打ち抜き金型部505の電気ヒーター520の消費電力を削減することができるといった効果が得られる。
【0139】
なお、局所的打ち抜き加工によって形成される局所的打ち抜き部としての孔931は、当該孔931の断面形状が円形である場合を例示したが、断面形状が円形であることに限られるものではなく、楕円形、矩形、台形、三角形、星形など種々の断面形状とすることができる。また、局所的打ち抜き加工によって形成される打ち抜き部は「孔」に限られるものではなく、例えば、縁部に形成される切り欠きであってもよい。
【0140】
図16は、局所的打ち抜き部の変形例を説明するために示す図である。図16においては、製品930の縁部に局所的な切り欠き部932が形成されている。切り欠き部932の断面S2の形状は矩形状をなしている。なお、切り欠き部932は、アスペクト比が大きい切り欠き部であるとする。すなわち、当該切り欠き部932の断面S2の大きさ(ここでは切り欠き部932の断面S2の形状が矩形状であるとしているので、例えば当該矩形の対角線の長さとする。)は、当該切り欠き部932の打ち抜き方向に沿ったワーク部材Wの厚みtに比べて小さいものとする。
【0141】
このような切り欠き部932を形成するための局所的打ち抜き加工は、温間成形加工として行うことにより、当該局所的打ち抜き加工を容易かつ高精度によって行うことができる。なお、切り欠き部932の断面形状は、矩形状に限られるものではなく、例えば、半円形、三角形など種々の断面形状とすることができる。
【0142】
[実施形態9]
上記各実施形態においては、加熱部400における加熱手段として電磁誘導発生器を使用した場合を例示したが、レーザー発生器の使用も可能である。なお、加熱部400における加熱手段としてレーザー発生器の使用が可能であることは、上記該実施形態1〜実施形態8のいずれの順送プレス加工装置10〜80において共通である。
【0143】
図17は、実施形態9に係る順送プレス加工装置90の構成を説明するために示す図である。図17は、加熱部400及び当該加熱部400が設けられている下側の金型基台100の一部と、当該加熱部400に対向する上側の金型基台101の一部を模式的に示す側面図である。なお、実施形態9に係る順送プレス加工装置90は、加熱部400の加熱手段としてレーザー光を用いた点が上記各実施形態に係る順送プレス加工装置10〜80と異なるだけで、その他の構成は、上記各実施形態に係る順送プレス加工装置10〜80と同様の構成とすることができる。
【0144】
実施形態9に係る順送プレス加工装置90は、図17に示すように、加熱部400に対向する上側の金型基台101には、レーザー発生器421を収納したレーザーユニット422が設けられている。一方、加熱部400は、加熱部本体410を有しており、当該加熱部本体410の内部には、第1冷却用流体流通路440(図2参照。)と流体貯留槽450とが設けられ、当該第1冷却用流体流通路440にはパイプ481が接続されている。なお、加熱部本体410は上記各実施形態と同様にセラミックなどの耐熱性及び低熱伝導性部材で形成されている。
【0145】
また、レーザーユニット422は、上側の金型基台101が下降した状態となったときに、レーザーユニット422の先端部422aが加熱部400上のワーク部材Wに当接しないように上側金型基台101に取り付けられている。
【0146】
実施形態9に係る順送プレス加工装置90においては、レーザーユニット422に収納されているレーザー発生器421から照射されるレーザー光によって、ワーク部材Wの加工範囲Wa(図1参照。)を加熱する。このとき、加工範囲Wa全体を加熱するようにしてもよく、また、加工範囲Wa内の所定部(加工部)のみを局所的に加熱するようにしてもよい。例えば、実施形態8で説明したように、局所的打ち抜き加工によって孔931を形成するような加工を行う場合には、当該孔931に対応する部分のみを加熱するようにしてもよい。
【0147】
このように、加熱手段としてレーザー発生器421を用い、当該レーザー発生器421からワーク部材Wの加工範囲Waにレーザー光を照射することによっても、上記各実施形態と同様、ワーク部材Wの温度を温間成形加工に適した温度とすることができる。
【0148】
なお、本発明は上記した各実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能となるものである。たとえば、下記に示すような変形実施も可能である。
【0149】
(1)上記した各実施形態においては、絞り金型部500による絞り加工、曲げ金型部501による曲げ加工、鍛造金型部503による鍛造加工及び局所的打ち抜き金型部505による局所的打ち抜き加工は、それぞれ1回の加工を行う場合を例示したが、それぞれの加工を2回以上行う場合においても本発明を適用することができる。
【0150】
(2)上記した実施形態5においては、打ち抜き金型部600の第3冷却用流体流通路630を実施形態4に係る順送プレス加工装置40(図8参照。)に示す第2冷却用流体流通路110に連結パイプ840によって連結するような構成としたが(図9参照。)、このような構成に限られるものではなく、冷却用流体流通路630は、実施形態1に係る順送プレス加工装置10(図1参照。)に示す第2冷却用流体流通路110に接続するような構成としてもよく、また、実施形態2に係る順送プレス加工装置20(図6参照。)に示す第2冷却用流体流通路110に接続するような構成としてもよく、また、実施形態3に係る順送プレス加工装置30(図7参照。)に示す第2冷却用流体流通路110に接続するような構成としてもよい。
【0151】
(3)上記実施形態においては、打ち抜き金型部600における冷却手段としてエアーの吹き付けによって絞り加工された加工領域を冷却するようにしたが、冷却手段としてはエアーのみに限られるものではない。
【0152】
(4)上記した各実施形態では、流体は水としたが、冷却又は保温が可能であれば水以外の液体であってもよく、また、気体であってもよい。
【0153】
(5)上記した各実施形態では、温間成形加工としては絞り加工、曲げ加工、鍛造加工及び局所的打ち抜き加工を例示して説明したが、これらの加工に限られるものではない。また、冷間成形加工は打ち抜き加工を例示したが、これに限られるものではない。
【0154】
(6)上記した各実施形態を説明するために示した各図(図1、図6〜図10、図12及び図14)においては、水の流通方向を矢印a及び矢印bで示すのみであって、当該水の供給元や水の排出先などについては示されていないが、冷却及び保温した水を繰り返し利用するような循環型の構成とすることも可能である。例えば、実施形態5に係る順送プレス加工装置(図9参照。)を例にとると、絞り金型部500から矢印b方向に流通する温水を冷却するための冷却部を設け、当該冷却部によって少なくとも常温程度に冷却した水を再び打ち抜き金型部600に矢印a方向に流入させるといった循環型の構成とすることも可能である。
【0155】
(7)上記した実施形態1〜8においては、加熱部400の電磁誘導発生器420としてのコイルは、ワーク部材Wに対向する面が平面となっているコイル(例えば、断面が矩形状、台形又は逆台形などを有するコイル)が好ましいとしたが、必ずしも、ワーク部材Wに対向する面が平面となっているコイルであることに限られるものではなく、例えば、断面が円形や楕円形のコイルであってもよい。
また、コイルを中空として、当該中空部に冷却用の流体を流通させるような構成となっているものを使用することも可能である。このようなコイルを用いることによって、コイルそのものが高温となることを抑制でき、被加工部材を加熱する際に発生する熱が周辺部に悪影響を及ぼさないようにすることができる。
【符号の説明】
【0156】
10,20,30,40,50,60,70,80,90・・・順送プレス加工装置、100・・・金型基台(下側の金型基台)、101・・・上側の金型基台、110・・・冷却用流体流通路(第2冷却用流体流通路)、120・・・流体貯留槽(第2流体貯留槽)、200・・・動作部、300・・・抜き孔形成用金型部、310・・・内側抜き孔加工部、320・・・外側抜き孔加工部、400・・・加熱部、410・・・加熱部本体、420・・・電磁誘導発生器、422・・・レーザーユニット、430・・・電磁誘導発生器保持部、440・・・冷却用流体流通路(第1冷却用流体流通路)、450・・・流体貯留槽(第1流体貯留槽)、500・・・絞り金型部、501・・・曲げ金型部、502・・・曲げ加工部、503・・・鍛造金型部、504・・・鍛造加工部、505・・・局所的打ち抜き金型部、506・・・局所的打ち抜き加工部、510・・・絞り加工部、520・・・電気ヒーター(発熱体)、530・・・温度測定部、560、570・・・保温用流体流通路、590・・・断熱材、600・・・打ち抜き金型部、610・・・エアー吹き付け部、620・・・打ち抜き加工部、630・・・第3冷却用流体流通路、700・・・ガイドバー、810〜840・・・連結パイプ、900,910,920,930・・・製品、911,912・・・曲げ部、921,922・・・傾斜部、923,924・・・薄板部、931・・・孔、932・・・切り欠き部、C1・・・内側抜き孔部、C2・・・外側抜き孔部、S1,S2・・・断面、W・・・ワーク部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、順送プレス加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
1つの金型基台の上に設置された複数の動作部が各々の工程を行うことによって所望とする製品を製造する順送プレスと呼ばれる加工技術は従来から知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1に記載されている加工技術は、圧延鋼板などに対し、冷間による成形加工(冷間成形加工という。)など複数の工程を行うことによって所望とする製品を製造する順送プレスによる加工技術である。
【0004】
ここで、「冷間成形加工」というのは、被加工部材を常温以下の温度で成形加工を行う加工技術を指すものである。「冷間成形加工」に対して、温間による成形加工(温間成形加工という。)、熱間による成形加工(熱間成形加工という。)と呼ばれる加工技術がある。「温間成形加工」は被加工部材を数百度(例えば200℃〜500℃程度)に加熱して成形加工を行う加工技術であり、「熱間成形加工」は被加工部材を800℃以上の高温に加熱して成形加工を行う加工技術である。なお、温間成形加工を行う際の温度は、被加工部材の材質や加工の種類などによっては、70℃程度の温度で加工することが好ましい場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−247738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されている加工技術のように、順送プレスによる加工技術は、冷間成形加工を行うものが一般的である。しかしながら、順送プレスによる加工技術においても、被加工部材の種類や製造すべき製品の種類によっては、温間成形加工を行うことが好ましい場合も多い。特に、コバール、ニッケル、マグネシウム、チタンといった難加工材を成形加工するような場合には、温間成形加工を行うことが好ましいとされる。
【0007】
従来、温間成形加工を行う場合には、順送プレスではなく、各工程を別々の加工装置で行うことが一般的である。例えば、被加工部材を切断装置によって所定サイズに切断して、所定サイズとなった被加工部材を作業者又はロボットが加熱装置にまで運んで、当該被加工部材を所定温度(例えば200℃〜500℃程度)にまで加熱したのち、加熱した被加工部材を作業者又はロボットがプレス装置にまで運んで、例えば、絞り加工などを行うというように、別々に設置された個々の加工装置によって各々の工程を行うことが一般的である。このような加工技術は、製品のサイズが比較的大きく、単位時間当たりの生産量も少ない場合には特に問題のない加工技術である。
【0008】
しかしながら、製品のサイズが微小で、単位時間当たりの生産量が多い場合(例えば、毎分100個以上生産するような場合)には、上記した従来の温間成形加工技術では対応できない。
【0009】
一方、特許文献1に記載された加工技術のような順送プレスを用いた加工技術においては、温間成形加工を行うという発想は一般的にはない。これは、順送プレスを行う加工装置(順送プレス加工装置という。)は、1つの金型基台上に複数の動作部が隣接した状態で設置されているため、特に微小な製品を製造する順送プレス加工装置においては、最初の工程を行う動作部から最後の工程を行う動作部までの間の距離は、数10cmである場合が多く、1つの金型基台上に被加工部材を加熱するための加熱部が存在すると、加熱部によって発生した熱(例えば、200℃〜500℃程度)が周辺部にまで伝わってしまい、冷間成形加工として、例えば、打ち抜き加工を行うような場合、当該打ち抜き加工に悪影響を及ぼすこととなるといった問題が生じるからである。
【0010】
そこで本発明は、順送プレスにおいて温間による加工を可能とし、かつ、温間による加工を行う際に発生する熱が周辺部に悪影響を及ぼすことのない順送プレス加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
[1]本発明の順送プレス加工装置は、金型基台の上に複数の工程を行う動作部が被加工部材の搬送方向に沿って設置され、前記被加工部材を搬送しながら前記動作部が複数の工程を行うことによって所望とする製品を製造する順送プレス加工装置であって、前記動作部は、前記被加工部材において加工すべき加工範囲を加熱する加熱部と、前記加熱部で加熱された加工範囲を所定温度に保持した状態で前記加工範囲を温間成形加工する温間成形加工部と、前記温間成形加工部による温間成形加工が終了した後に当該温間成形加工された前記加工範囲を冷間成形加工する冷間成形加工部とを有し、前記加熱部は、当該加熱部を冷却するための流体を流通させる第1冷却用流体流通路を有していることを特徴とする。
【0012】
本発明の順送プレス加工装置によれば、順送プレス加工に設けられる動作部として、被加工部材を加熱するための加熱部を設けるようにしている。このため、順送プレス加工装置でありながら、温間成形加工が可能となる。また、加熱部には第1冷却用流体流通路を設けるようにしている。これにより、加熱部によって被加工部材を加熱する際に発生する熱が周辺部に悪影響を及ぼさないようにすることができる。特に、加熱部によって被加工部材を加熱する際に発生する熱が、冷間成形加工を行うべき冷間成形加工部に伝わりにくくすることができるため、冷間成形加工部においては適切な冷間成形加工を行うことができる。
【0013】
[2]本発明の順送プレス加工装置においては、前記第1冷却用流体流通路は、当該第1冷却用流体流通路を流通する流体を流通の過程において一時的に貯留する流体貯留槽を有することが好ましい。
第1冷却用流体流通路がこのような流体貯留槽を有することにより、冷却能力をより大きなものとすることができる。
【0014】
[3]本発明の順送プレス加工装置においては、前記温間成形加工部は、電気によって発熱する発熱体を有していることが好ましい。
このような構成とすることにより、温間成形加工部自体が熱くなるため、加熱部によって加熱された被加工部材の温度を温間成形加工に適した温度に保持することができる。なお、温間成形加工部と、当該温間成形加工部に隣接する冷間成形加工部との間には断熱材を介在させることが好ましい。温間成形加工部と冷間成形加工部との間に断熱材を介在させることにより、温間成形加工部の熱が冷間成形加工部に直接的には伝わらないようにすることができる。
【0015】
[4]本発明の順送プレス加工装置においては、前記温間成形加工部は、当該温間成形加工部の温度を測定して、測定した温度に対応する温度信号を出力する温度測定部をさらに有することが好ましい。
このような温度測定部を有することにより、当該温度測定部から出力される温度信号に基づいて発熱体を制御することが可能となり、温間成形加工部を適切な温度に保持することができる。
【0016】
[5]本発明の順送プレス加工装置においては、前記温間成形加工部は、保温用の流体を流通させる保温用流体流通路を有し、前記保温用流体流通路は、前記第1冷却用流体流通路に連結され、前記第1冷却用流体流通路を流通して温度の上昇した流体が前記保温用流体流通路を流通するように構成されていることが好ましい。
このような構成とすることにより、保温用流体流通路を流通する温水が電気ヒーターによる保温の補助的な役目をなすため、温間成形加工部の発熱体の消費電力を削減することができる。
【0017】
[6]本発明の順送プレス加工装置においては、前記冷間成形加工部は、前記温間成形加工のなされた前記加工範囲を冷却するための冷却手段を有することが好ましい。
このような構成とすることにより、温間成形加工によって温度の上昇した被加工部材の加工範囲を冷却することができ、温間成形加工の後に行われる冷間成形加工を効率よく適切に行うことができる。
【0018】
[7]本発明の順送プレス加工装置においては、前記冷間成形加工部は、前記冷却手段として、前記加工範囲にエアーの吹き付けを行うエアー吹き付け部を有することが好ましい。
このように、エアーの吹き付けにより加工範囲の冷却を行うことによって、加工範囲の冷却を効率よく行うことができる。なお、ここでの冷却は加工範囲を常温程度とするものである。
【0019】
[8]本発明の順送プレス加工装置においては、前記金型基台は、当該金型基台を冷却するための流体を流通させる第2冷却用流体流通路を有していることが好ましい。
このように、金型基台においても第2冷却用流体流通路を設けることにより、加熱部によって被加工部材を加熱する際に発生する熱が周辺部に悪影響を及ぼさないようにすることができる。
【0020】
[9]本発明の順送プレス加工装置においては、前記第2冷却用流体流通路は、当該第2冷却用流体流通路を流通する流体を流通の過程において一時的に貯留する流体貯留槽を有することが好ましい。
第2冷却用流体流通路がこのような流体貯留槽を有することにより、冷却能力をより大きなものとすることができる。
【0021】
[10]本発明の順送プレス加工装置においては、前記第1冷却用流体流通路と前記第2冷却用流体流通路とは連結されており、前記第2冷却用流体流通路を流通した前記流体が前記第1冷却用流体流通路を流通するように構成されていることが好ましい。
このような構成とすることにより、第1冷却用流体流通路と前記第2冷却用流体流通路とが一本の流通路として機能するため、冷却水を有効利用することができ、かつ、効率的な冷却が可能となる。
【0022】
[11]本発明の順送プレス加工装置においては、前記冷間成形加工部は、冷却用の流体を流通させる第3冷却用流体流通路を有し、当該第3冷却用流体流通路は、前記第2冷却用流体流通路に連結され、前記第3冷却用流体流通路を流通した流体が前記第2冷却用流体流通路を流通するように構成されていることが好ましい。
【0023】
このような構成とすることにより、冷間成形加工部に設けられている第3冷却用流体流通路を流れる流体によって、冷間成形加工部を予冷しておくことができるため、被加工部材の冷却を効率よく行うことができる。すなわち、冷間成形加工部において、被加工部材をエアーの吹き付けによって冷却する際、冷間成形加工部自体を予冷した状態としておくことにより、エアーによる被加工部材の冷却を効率よく行うことができる。
【0024】
[12]本発明の順送プレス加工装置においては、前記動作部は、前記加工範囲を部分的に囲むような抜き孔を前記被加工部材に形成する抜き孔形成用金型部をさらに有し、前記抜き孔形成用金型部は、前記被加工部材の搬送方向において前記加熱部よりも手前側に設置されていることが好ましい。
【0025】
このような抜き孔を設けることにより、加熱部において加熱する際の熱を加工範囲に集中させることができ、加工範囲を効率的に加熱することができるため、加工範囲の温度を短時間で適切な温度にまで上昇させることができる。また、温間成形加工部により、例えば絞り加工などを行ったときに、被加工部材が加工範囲に向かって引っ張られることにより生ずる被加工部材の歪みを抑制することができる。
【0026】
[13]本発明の順送プレス加工装置においては、前記加熱部は、前記被加工部材を電磁誘導の原理を利用して加熱する電磁誘導発生器を有していることが好ましい。
このように、加熱部は電磁誘導加熱の原理を利用して被加工部材を加熱することにより、被加工部材の加工範囲を短時間に所望とする温度にまで上昇させることができる。
【0027】
[14]本発明の順送プレス加工装置においては、前記電磁誘導発生器は、電磁力を発生するためのコイルの前記被加工部材に対向する面が平面であることが好ましい。
このように、電磁力を発生するためのコイルの前記被加工部材に対向する面を平面とすることにより、被加工部材に対して電磁力を広い面積で与えることができ、被加工部材を効率よく加熱することができる。
【0028】
[15]本発明の順送プレス加工装置においては、前記加熱部は、前記被加工部材をレーザー光によって加熱するレーザー発生器を有していることも好ましい。
このように、レーザー光を利用して被加工部材を加熱することによっても被加工部材の加工範囲を短時間に所望とする温度にまで上昇させることができる。また、レーザー光を利用して被加工部材を加熱することによって、加工範囲の所定部分を局所的に加熱することもできるため、局所的な加工を行う場合に有効なものとなる。
【0029】
[16]本発明の順送プレス加工装置においては、前記温間成形加工は、絞り加工であり、前記冷間成形加工は、打ち抜き加工であることが好ましい。
【0030】
順送プレス加工装置における加工工程として、絞り加工と打ち抜き加工とが存在する場合、絞り加工は温間成形加工として行い、打ち抜き加工は冷間成形加工として行う。このように、絞り加工を温間成形加工として行うことによって、絞り加工を容易かつ高精度に行うことができる。これは、被加工部材を例えば70℃〜500℃程度にまで高めると、被加工部材の応力が減少するからであると考えられる。このため、特に、被加工部材が上記したような難加工材である場合においては、絞り加工を温間成形加工として行うことにより、難加工材の絞り加工を容易かつ高精度に行うことができる。なお、絞り加工を行う際の温度は、被加工部材の種類や厚みなどに応じて、上記した温度範囲内の適切な温度を設定することが好ましい。
【0031】
[17]本発明の順送プレス加工装置においては、前記温間成形加工は、曲げ加工であり、前記冷間成形加工は、打ち抜き加工であることも好ましい。
【0032】
このように、順送プレス加工装置における加工工程として、曲げ加工と打ち抜き加工とが存在する場合、曲げ加工は温間成形加工として行い、打ち抜き加工は冷間成形加工として行う。このように、曲げ加工を温間成形加工として行うことによって、曲げ加工を容易かつ高精度に行うことができる。これは、被加工部材を例えば70℃〜500℃程度にまで高めると、被加工部材の応力が減少するからであると考えられる。このため、特に、被加工部材が上記したような難加工材である場合においては、曲げ加工を温間成形加工として行うことにより、難加工材の曲げ加工を容易かつ高精度に行うことができる。なお、曲げ加工を行う際の温度は、被加工部材の種類や厚みなどに応じて、上記した温度範囲内の適切な温度を設定することが好ましい。
【0033】
[18]本発明の順送プレス加工装置においては、前記温間成形加工は、鍛造加工であり、前記冷間成形加工は、打ち抜き加工であることも好ましい。
【0034】
このように、順送プレス加工装置における加工工程として、鍛造加工と打ち抜き加工とが存在する場合、鍛造加工は温間成形加工として行い、打ち抜き加工は冷間成形加工として行う。このように、鍛造加工を温間成形加工として行うことによって、鍛造加工を容易かつ高精度に行うことができる。これは、被加工部材を例えば70℃〜500℃程度にまで高めると、被加工部材の応力が減少するからであると考えられる。このため、特に、被加工部材が上記したような難加工材である場合においては、鍛造加工を温間成形加工として行うことにより、難加工材の鍛造加工を容易かつ高精度に行うことができる。なお、鍛造加工を行う際の温度は、被加工部材の種類や厚みなどに応じて、上記した温度範囲内の適切な温度を設定することが好ましい。
【0035】
[19]本発明の順送プレス加工装置においては、前記温間成形加工は、局所的打ち抜き部を形成するための局所的打ち抜き加工であり、前記冷間成形加工は、前記局所的打ち抜き部を含む所定範囲を前記被加工部材から切り離すための打ち抜き加工であることも好ましい。
【0036】
このように、順送プレス加工装置における加工工程として、局所的打ち抜き加工と、局所的打ち抜き部を含む所定範囲を被加工部材から切り離すための打ち抜き加工とが存在する場合、局所的打ち抜き加工は温間成形加工として行い、被加工部材から切り離すための打ち抜き加工は冷間成形加工として行う。このように、局所的打ち抜き加工を温間成形加工として行うことによって、局所的打ち抜き加工を容易かつ高精度に行うことができる。これは、被加工部材を例えば70℃〜500℃程度にまで高めると、被加工部材の応力が減少するからであると考えられる。このため、特に、被加工部材が上記したような難加工材である場合においては、局所的打ち抜き加工を温間成形加工として行うことにより、難加工材の局所的打ち抜き加工を容易かつ高精度に行うことができる。なお、局所的打ち抜き加工を行う際の温度は、被加工部材の種類や厚みなどに応じて、上記した温度範囲内の適切な温度を設定することが好ましい。
【0037】
[20]本発明の順送プレス加工装置においては、前記局所的打ち抜き部は、当該局所的打ち抜き部の打ち抜き方向に直交する断面の大きさが当該打ち抜き方向に沿った前記被加工部材の厚みに比べて小さいことが好ましい。
【0038】
このように、局所的な打ち抜き部の断面(打ち抜き方向に直交する断面)の大きさが当該打ち抜き方向に沿った前記被加工部材の厚みに比べて小さい場合、すなわち、アスペクト比が大きい場合においては、温間成形加工として打ち抜きを行った方が容易かつ高精度に打ち抜き可能となる場合もある。これは、被加工部材の温度を温間成型に適した温度にまで上昇させると、被加工部材の応力が減少するためであり、被加工部材が難加工材である場合には特に有効である。なお、この明細書において、「局所的打ち抜き部の断面の大きさ」というのは、局所的打ち抜き部の断面の形状が例えば「円」である場合には、当該円の径を例示することができ、また、局所的打ち抜き部の断面の形状が例えば「矩形」である場合には、当該矩形の対角線を例示することができる。
【0039】
[21]本発明の順送プレス加工装置においては、前記局所的打ち抜き部は、孔であることが好ましい。
このように、被加工部材に孔を形成する場合、当該孔の断面(打ち抜き方向に直交する断面)の大きさが当該孔の打ち抜き方向長さに比べて小さいと、打ち抜きは困難なものとなる。特に、被加工部材が上記したような難加工材である場合においては、このような孔の打ち抜きは困難なものとなる。そこで、当該孔を形成するための局所的打ち抜き加工を温間成形加工として行うことにより、容易かつ高精度に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】実施形態1に係る順送プレス加工装置10を説明するために示す図である。
【図2】図1(a)におけるB−B線矢視図である。
【図3】実施形態1に係る順送プレス加工装置10において製造される製品900の一例を示す図である。
【図4】ワーク部材Wに形成された抜き孔Cを説明するために示す図である。
【図5】加熱部400を説明するために示す図である。
【図6】実施形態2に係る順送プレス加工装置20を説明するために示す図である。
【図7】実施形態3に係る順送プレス加工装置30を説明するために示す図である。
【図8】実施形態4に係る順送プレス加工装置40を説明するために示す図である。
【図9】実施形態5に係る順送プレス加工装置50を説明するために示す図である。
【図10】実施形態6に係る順送プレス加工装置60を説明するために示す図である。
【図11】実施形態6に係る順送プレス加工装置60において製造される製品910の一例を示す図である。
【図12】実施形態7に係る順送プレス加工装置70を説明するために示す図である。
【図13】実施形態7に係る順送プレス加工装置70において製造される製品920の一例を示す図である。
【図14】実施形態8に係る順送プレス加工装置80を説明するために示す図である。
【図15】実施形態8に係る順送プレス加工装置80において製造される製品930の一例を示す図である。
【図16】局所的打ち抜き部の変形例を説明するために示す図である。
【図17】実施形態9に係る順送プレス加工装置90を説明するために示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に示す各実施形態においては、温間成形加工としては絞り加工を例示し、冷間成形加工としては打ち抜き加工を例示して説明する。
【0042】
[実施形態1]
図1は、実施形態1に係る順送プレス加工装置10を説明するために示す図である。図1(a)は順送プレス加工装置10における下側の金型基台100及び当該金型基台100に設置されている動作部200の構成を模式的に示す平面図であり、図1(b)は図1(a)におけるA−A線矢視図である。なお、図1(b)においては一部が断面として示されている。図2は、図1(a)におけるB−B線矢視図である。なお、図2においては一部が断面として示されている。
【0043】
実施形態1に係る順送プレス加工装置10は、図1及び図2に示すように、1つの金型基台100の上に複数の工程を行う動作部200が被加工部材W(ワーク部材Wという)の搬送方向(矢印x方向とする。)に沿って設置され、ワーク部材Wを搬送しながら動作部200において複数の工程を行うことによって所望とする製品を生成するものである。
【0044】
動作部200には、抜き孔形成用金型部300と、加熱部400と、温間成形加工部としての絞り金型部500と、冷間絞り加工部としての打ち抜き金型部600とが存在し、これらは、ワーク部材Wの搬送方向(図1における矢印x方向)に沿って、金型基台100上に、抜き孔形成用金型部300、加熱部400、絞り金型部500及び打ち抜き金型部600の順に設置されている。これら抜き孔形成用金型部300、加熱部400、絞り金型部500及び打ち抜き金型部600は、金型基台100にボルト(図示せず。)などによって固定されている。
【0045】
なお、加熱部400は、低熱伝導性の合成樹脂プレート490を介して金型基台100に設置されている。また、絞り金型部500は、低熱伝導性の板材540及び台座550を介して金型基台100設置されている。また、絞り金型部500と打ち抜き金型部600との間には、ガラス繊維などを用いた断熱材590が介在されている。
【0046】
また、金型基台100の四隅には、ガイドバー700が設けられており、上側の金型基台(図示せず。)が当該ガイドバーに沿って上下動するようになっており、それによって、抜き孔形成用金型部300による抜き孔形成加工、絞り金型部500による絞り加工及び打ち抜き金型部600による打ち抜き加工がなされるようになっている。すなわち、金型基台100に設置されている抜き孔形成用金型部300、絞り金型部500及び打ち抜き金型部600はそれぞれ雌型であり、上側の金型基台(図示せず。)には、抜き孔形成用金型部300、絞り金型部500及び打ち抜き金型部600の雄型がそれぞれ設置されていて、上側の金型基台(図示せず。)がガイドバー700に沿って下降することによって、それぞれ対応する加工がなされるようになっている。
【0047】
また、ワーク部材Wは、長尺の薄板状金属板であって、x軸に沿った方向(矢印x方向)に所定ピッチ(ピッチP)ごとに送られる。なお、ワーク部材Wにおいて破線で囲まれた矩形範囲は、製品とするために加工すべき範囲であり、本明細書においてはこれを加工範囲Waと呼ぶことにする。この加工範囲Waは、ワーク部材WがピッチPごとに送られることによって、動作部200によって各々の工程が行われる部分であり、ワーク部材Wに実際に設定されるものではなく、説明を分かり易くするためにワーク部材W上に加工範囲Waとして便宜的に示されている。
【0048】
図3は、実施形態1に係る順送プレス加工装置10において製造される製品900の一例を示す図である。実施形態1に係る順送プレス加工装置10において製造される製品900は、図3に示すように、容器状の製品であり、上面側が鍔部900aを有する開口面となっている。このような製品900の寸法は、鍔部900aを含めた容器の上面側が、縦方向及び横方向ともに4.5mm、容器の内側が、縦方向及び横方向ともに3.7mm、容器の底部までの深さが1.8mmの微小な製品(部品)である。
【0049】
実施形態1に係る順送プレス加工装置10においては、図3に示すような製品900を毎分100個以上、製造可能とするものである。なお、図3において示した製品900の形状及び寸法は一例であってこれに限定されるものではなく、種々の絞り金型を取り付けることによって様々な形状及び寸法の製品を製造することができる。
【0050】
このような製品900は、薄板(厚みが0.1mm程度とする。)上の金属板を絞り加工したのちに、打ち抜き加工することによって製造することができるが、金属板が例えばコバール、ニッケル、マグネシウム、チタンといった難加工材である場合には、絞り加工を行う際においては、所定の温度(200℃〜500℃程度)に加熱して絞り加工(いわゆる温間による絞り加工)を行い、絞り加工後に行う打ち抜き加工は、常温に戻した状態で行うことが好ましい。なお、温間成形加工を行う際は、前述したように、被加工部材の材質や加工の種類などによっては、200度よりも低い温度(70℃程度の温度)で加工することが好ましい場合もあるため、以下、温間成形加工に適した温度は「70℃〜500℃程度」であるとする。
【0051】
ところで、図1に示す順送プレス加工装置10の動作部200における抜き孔形成用金型部300は、加工範囲Waを部分的に囲むような抜き孔C(図4参照。)をワーク部材Wに形成する工程を行うものである。抜き孔形成用金型部300によって形成される抜き孔Cは、加工範囲Waを部分的に囲むように形成されるものであり、ここでは、ほぼ弧状をなす複数の抜き孔によって構成されている。
【0052】
図4は、ワーク部材Wに形成された抜き孔Cを説明するために示す図である。抜き孔Cは、図4に示すように、加工範囲Waを2重に取り囲むにように形成されており、内側(加工範囲Waに近い側)の抜き孔を内側抜き孔C1とし、その外側に設けられる抜き孔を外側抜き孔C2とする。このような内側抜き孔C1及び外側抜き孔C2を形成するために、抜き孔形成用金型部300は、図1に示すように、2つの抜き孔加工部(内側抜き孔加工部310及び外側抜き孔加工部320)を有している。
【0053】
ワーク部材Wに図4に示すような抜き孔C(内側抜き孔C1及び外側抜き孔C2)を形成することによって、加熱部400により加熱する際の熱がワーク部材W上で拡散することを抜き孔C1,C2によってくい止めることができ、また、絞り金型部500による絞り加工を行う際、加工範囲Waに向かってワーク部材Wに働く引っ張り力を抜き孔C1,C2によってくい止めることができる。それによって、ワーク部材Wを加熱部400によって加熱する際の熱を加工範囲Waに効率的に集中させることができるとともに、絞り金型部500による絞り加工を行ったときに、被加工部材が加工範囲に向かって引っ張られることにより生ずる被加工部材の歪みを抑制することができる。
【0054】
なお、内側抜き孔C1及び外側抜き孔C2は、ほぼ弧状として形成され、内側抜き孔C1は、この場合、y軸に沿った軸上の対向する位置に設けられ、外側抜き孔C2は、この場合、x軸に沿った軸上の対向する位置に設けられている。内側抜き孔C1と外側抜き孔C2とをこのよう形成することによって、加熱部400により加熱する際の熱がワーク部材W上において放射状に拡散してしまうことを防止することができ、それによって熱を加工範囲により効率的に集中させることができる。
【0055】
図1及び図2に説明が戻る。加熱部400は、電磁誘導発生器420を有し、ワーク部材Wの加工範囲Waを電磁誘導の原理を用いて、70℃〜500℃程度に加熱するものである。なお、加熱部400についての詳細は後述する。
【0056】
絞り金型部500は、ワーク部材Wの加工範囲Waに対して、温間による絞り加工を行うものであり、絞り加工を行う絞り加工部510と、電気によって発熱する発熱体(電気ヒーターという。)520と、絞り金型部500の温度(表面温度が好ましい。)を測定する温度測定部530とを有している。
【0057】
電気ヒーター520は、絞り加工部510による絞り加工を行う際に、加工範囲Waの温度が絞り加工に適した温度(70℃〜500℃程度)を保持できるように絞り金型部500を保温するものである。また、温度測定部530は、絞り金型部500の温度(例えば表面温度)を測定して、測定した温度を温度信号として出力するものである。この温度信号は、電気ヒーター制御部(図示せず。)に与えられる。電気ヒーター制御部は、絞り金型部500が予め設定された温度となるように電気ヒーター520を制御する。これにより、絞り金型部500はその表面温度を所定温度に保持することができ、それによって、加熱部400によって加熱されたワーク部材Wの温度を絞り加工に適した温度に保持することができる。
【0058】
このような電気ヒーター520及び温度測定部530は、上側の金型基台(図示せず。)に設置された絞り金型部(上側絞り金型部という。)にも設けられており、上側絞り金型部においても、当該上側絞り金型部の表面温度が絞り加工に適した温度を保持するように制御される。これにより、加熱部400によって加熱されたワーク部材Wの温度を適切な温度に保持した状態で絞り加工することができる。
【0059】
なお、絞り金型部500は、電気ヒーター520によって高い温度となり、絞り金型部500の熱が打ち抜き金型部600に伝わってしまい、打ち抜き金型部600の温度が冷間成形加工に不適当な温度となってしてしまう恐れがあるが、絞り金型部500と打ち抜き金型部600との間には断熱材590が介在されているために、絞り金型部500の熱が打ち抜き金型部600に直接的には伝わらないようにすることができる。
【0060】
また、打ち抜き金型部600は、絞り金型部500によって絞り加工のなされた加工範囲Waを打ち抜いて、図3に示すような製品とするものである。打ち抜き金型部600は、絞り金型部500によって絞り加工のなされた加工範囲Waの温度を常温程度にまでに低下させる冷却手段としてのエアー吹き付け部610と、当該エアー吹き付け部610によるエアーの吹き付けによって冷却された加工範囲Waを打ち抜く打ち抜き加工部620とを有している。なお、冷却手段としては、エアーの吹き付けによるもの以外にも種々の冷却手段を採用することが可能である。
【0061】
上記した抜き孔形成用金型部300における外側抜き孔加工部320、内側抜き孔加工部310、加熱部400における電磁誘導発生器420、絞り金型部500における絞り加工部510、打ち抜き金型部600におけるエアー吹き付け部610及び打ち抜き加工部620は、それぞれの中心位置がピッチPに対応する間隔ごとに設けられている。
【0062】
図5は、加熱部400を説明するために示す図である。図5(a)は加熱部400を斜め上方から見た場合の外観図であり、図5(b)は図5(a)において加熱部400の一部の部品を取り外した状態を示す図であり、図5(c)は加熱部400を斜め下方向から見た場合で、かつ、加熱部400の一部の部品を取り外した状態を示す図である。
【0063】
加熱部400は、図5に示すように、加熱部本体410と、電磁誘導発生器420を保持する電磁誘導発生器保持部430と、矢印xで示すワーク部材Wの搬送方向に直交するように加熱部本体410を貫通して設けられ、冷却用の流体(水とする。)を流通させる冷却用流体流通路440とを有している。この冷却用流体流通路440は、冷却用流体流通路440を流通する水を流通の過程で一時的に貯留する流体貯留槽450を有している。なお、加熱部本体410は、セラミックなどの耐熱性及び低熱伝導性部材で形成されている。
【0064】
また、電磁誘導発生器420は、電磁力を発生する渦巻き状のコイルで構成され、当該コイルは、ワーク部材Wに対向する面が平面であることが好ましい。ワーク部材Wに対向する面を平面とするには、コイルの延伸方向に直交する断面形状が、例えば、矩形状、台形又は逆台形などを有するものを用いることによって実現できる。コイルがこのような断面形状を有していることにより、ワーク部材Wに対して電磁力を広い面積で与えることができ、ワーク部材Wを効率よく加熱することができる。
【0065】
流体貯留槽450は、加熱部本体410内において下面側が開口面となっており、当該開口面にゴム板451と底板452とを取り付けることによって、有底の流体貯留槽を形成することができる。
【0066】
電磁誘導発生器保持部430は、底の浅い箱状をなし、底面部431に電磁誘導発生器420が載置される。なお、底面部431の中心部には円盤状の凸部432が形成されており、電磁誘導発生器420は、渦巻き状のコイルが凸部432を取り囲むように載置される。この凸部432は、電磁誘導発生器420の動きを規制して、電磁誘導発生器420が電磁誘導発生器保持部430内で位置ずれしないようにするためのものである。すなわち、渦巻き状のコイルが凸部432を取り囲むように電磁誘導発生器420が底面部431に載置されることによって、電磁誘導発生器420の動きが規制され、それによって、電磁誘導発生器420が電磁誘導発生器保持部430内で位置ずれしないようにすることができる。
【0067】
また、電磁誘導発生器保持部430の上面は開口面となっており、当該開口面はセラミック製の上蓋460で覆われる。この上蓋460の厚みは、数ミリ程度のものが好ましく、実施形態1に係る順送プレス加工装置10においては、2.5mm程度としている。
【0068】
このように構成された加熱部400は、金型基台100において、抜き孔形成用金型部300と絞り金型部500との間に設置され、抜き孔形成用金型部300で図4に示すような抜き孔C(外側抜き孔C2及び内側抜き孔C1)が形成されたワーク部材Wに対し、当該ワーク部材Wの加工範囲Waを加熱する。すなわち、ワーク部材Wは、図4(a)における矢印x方向に搬送され、ピッチPごとにワーク部材Wの加工範囲Waの中心が加熱部400の上蓋460上(渦巻状の電磁誘導発生器420の中心)に位置するため、加工範囲Waを加熱することができる。
【0069】
ところで、加熱部400に設けられている冷却用流体流通路440の一方の端部には、パイプ481(図1及び図2参照。)が接続されており、冷却用流体流通路440の他方の端部には、パイプ482(図1及び図2参照。)が接続されている。そして、流体としての水は、図1において、パイプ481から加熱部本体410の冷却用流体流通路440を流通し、冷却用流体流通路440の途中において流体貯留槽450で一時的に蓄えられたのちにパイプ482へと流通するようになっている。
【0070】
なお、図1における矢印a,bは、水の流通方向を示しており、これは、後述する図6〜図9においても同様である。また、当該水は加熱部本体410に流入する前の段階では常温以下の水であって、加熱部本体410を通過した後には温度が上昇し、常温の水に比べて比較的高温の水となっている。なお、以下では、常温以下の水を「冷水」と呼ぶ場合もある。また、加熱部本体410を通過した後に温度の上昇した水を「温水」と呼ぶ場合もある。
【0071】
一方、金型基台100においても、当該金型基台100において加熱部400が設置されている部分には、冷却用流体流通路110が設けられている。この冷却用流体流通路110にも金型基台100の内部において流体貯留槽120が設けられている(図2参照。)。流体貯留槽120は、上面側が開口面となっており、ゴム板121によって密閉されている。
【0072】
また、冷却用流体流通路110の一方の端部にはパイプ131が接続され(図1及び図2参照。)、冷却用流体流通路110の他方の端部にはパイプ132(図1及び図2参照。)が接続されている。そして、図1において、冷水はパイプ131から金型基台100の冷却用流体流通路110を流通し、冷却用流体流通路110の途中において流体貯留槽120で一時的に蓄えられたのちにパイプ132へと流通するようになっている。なお、当該冷水は金型基台100を通過した状態では、常温の水に比べて多少温度が上昇した状態となっている。
【0073】
なお、以下では、加熱部400側に設けられている冷却用流体流通路440を第1冷却用流体流通路440とし、金型基台100側に設けられている冷却用流体流通路を第2冷却用流体流通路110として説明する。また、第1冷却用流体流通路440に設けられている流体貯留槽450を第1流体貯留槽450とし、第2冷却用流体流通路110に設けられている流体貯留槽120を第2流体貯留槽120として説明する。
【0074】
これら第1冷却用流体流通路440及び第2冷却用流体流通路110は、加熱部400及び金型基台100において、それぞれ冷却手段としての機能を有するものである。加熱部400及び金型基台100がこのような冷却手段を有することにより、加熱部400がワーク部材Wを加熱することによって発生する熱を冷却することができる。それによって、冷間での加工を行うべき打ち抜き金型部600が高温となることを防ぐことができ、当該打ち抜き金型部600においては冷間による加工が可能となる。
【0075】
すなわち、実施形態1に係る順送プレス加工装置10は、上記したような寸法を有する微小の製品900(例えば図3参照。)を製造するものであって、抜き孔形成用金型部300から打ち抜き金型部600までの間の距離は、数10cm程度である。このため、加熱部400及び金型基台100に冷却手段を設けないと、高温(例えば、200℃〜500℃程度)となったワーク部材Wの熱によって、加熱部400及び金型基台100も温度が上昇してしまい、特に、高温となったワーク部材Wの熱が打ち抜き金型部600に伝わってしまうと、冷間によって行うべき打ち抜き加工に悪影響を及ぼすこととなる。
【0076】
これを防ぐために、実施形態1に係る順送プレス加工装置10においては、上記したような冷却手段を有することにより、高温となったワーク部材Wの熱が打ち抜き金型部600に伝わることを防ぐことができる。また、絞り金型部500と打ち抜き金型部600との間には断熱材590が介在されているために、絞り金型部500の熱が打ち抜き金型部600に直接的には伝わらないようにすることができる。
【0077】
以上のように構成された順送プレス加工装置10において全体的な動作について説明する。長尺のワーク部材Wは、ピッチPごとに矢印x方向に送られる。まず、外側抜き孔加工部320による外側抜き孔形成工程がなされて、加工範囲Waを取り囲むように外側抜き孔C2が形成され、さらに1ピッチ分(ピッチP分)の送りがなされることによって、内側抜き孔加工部310による内側抜き孔形成工程がなされて、内側抜き孔C1が形成される(図4参照。)。なお、これら各工程は、図示しない上側の金型基台のz軸に沿った下降動作によって同時に行われるので、内側抜き孔形成工程が行われているときは、外側抜き孔形成工程も同時に行われていることとなる。
【0078】
そして、さらに1ピッチ(ピッチP)分の送りがなされると、図4に示すような内側抜き部C1及び外側抜き孔C2が形成された先頭の加工範囲(第1番目の加工範囲Wa1とする。但し、図示は省略する。)が、加熱部400に達し、加熱工程が行われる。なお、説明をわかり易くするため、加熱部400以降における各工程については、第1番目の加工範囲Wa1に注目して説明する。
【0079】
第1番目の加工範囲Wa1が加熱部400に達すると、第1番目の加工範囲Wa1が加熱部400によって電磁誘導加熱される。これにより、この段階では、第1番目の加工範囲Wa1の温度は、70℃〜500℃程度となる。そして、第1番目の加工範囲Wa1が加熱部400で加熱されたのち、ワーク部材Wがさらに1ピッチ分送られると、第1番目の加工範囲Wa1は、絞り金型部500の絞り加工部510に位置し、当該絞り加工部510による絞り工程がおこなわれる。
【0080】
そして、絞り金型部500による絞り工程が終了すると、ワーク部材Wがさらに1ピッチ分送られ、絞り加工された第1番目の加工範囲Wa1は、打ち抜き金型部600のエアー吹き付け部610に位置し、当該エアー吹き付け部610による冷却工程がなされ、ほぼ常温にまで冷却される。そして、ワーク部材Wがさらに1ピッチ分送られると、第1番目の加工範囲Wa1は、打ち抜き金型部600の打ち抜き加工部620に位置し、打ち抜き加工部620による打ち抜き工程がなされ、第1番目の加工範囲Wa1が打ち抜かれて、図3に示すような製品900を製造することができる。
【0081】
以上は第1番目の加工範囲Wa1に注目して加熱部以降の各工程について説明したが、第1番目の加工範囲Wa1に続く加工範囲(第2番目の加工範囲Wa2,第3番目の加工範囲Wa3,・・・とする。但し、これらの図示は省略する。)も同様に、外側抜き孔形成工程及び内側抜き孔形成工程が終了したあとは、加熱部400による加熱工程、絞り金型部500における絞り加工部510による絞り工程、打ち抜き金型部600のエアー吹き付け部610による冷却工程と打ち抜き加工部620により打ち抜き工程が順次行われる。これらの一連の工程は高速に行われ、実施形態1に係る順送プレス加工装置10においては、毎分100個以上の製品の製造を可能とする。
【0082】
なお、上記した各工程は同時行われるので、第1番目の加工範囲Wa1に対して打ち抜き工程を行っているときには、第2番目の加工範囲Wa2に対してはエアーの吹き付けによる冷却工程を行っており、第3番目の加工範囲Wa3に対しては絞り工程を行っており、第4番目の加工範囲Wa4に対しては加熱工程を行っており、第5番目の加工範囲Wa5に対しては内側抜き孔形成工程を行っており、第6番目の加工範囲Wa6に対しては外側抜き孔形成工程程を行っている。
【0083】
以上説明したように実施形態1に係る順送プレス加工装置10においては、絞り金型部500の前段に加熱部400を設け、当該加熱部400によりワーク部材Wを加熱するようにしている。これによって、絞り金型部500においては温間による絞り加工が可能となる。
【0084】
このように、絞り加工を温間成形加工として行うことにより、絞り加工を容易かつ高精度に行うことができる。これは、ワーク部材Wを例えば70℃〜500℃程度にまで高めると、ワーク部材Wの応力が減少するからであると考えられる。このため、特に、ワーク部材Wが上記したような難加工材である場合においては、当該難加工材を温間成形加工として絞り加工を行うことにより、難加工材の絞り加工を容易かつ高精度に行うことができる。なお、温間成形加工として絞り加工を行う際の温度は、ワーク部材Wの種類や厚みなどに応じて、上記した温度範囲内の適切な温度を設定することが好ましい。
【0085】
また、実施形態1に係る順送プレス加工装置10においては、加熱部400において、加熱部400に設けられている第1冷却用流体流通路440を冷水が流通し、かつ、流通した冷水が第1流体貯留槽450において一時的に貯留される構造となっているとともに、金型基台100においても金型基台100に設けられている第2冷却用流体流通路110を冷水が流通し、かつ、流通した冷水が第2流体貯留槽120において一時的に貯留される構造となっている。
【0086】
このため、加熱部400でワーク部材Wを加熱することにより発生した熱によって、加熱部本体410や金型基台100が高温となることを防止することができ、順送プレス加工装置10全体が高温となることを防止することができる。特に、冷間による加工を行うべき打ち抜き金型部600が高温となってしまうことを防止できる。
【0087】
[実施形態2]
実施形態1に係る順送プレス加工装置10においては、加熱部400に設けられている第1冷却用流体流通路440及び金型基台100に設けられている第2冷却用流体流通路110を、それぞれ個別に冷水を流通させるような構成としたが、実施形態2に係る順送プレス加工装置20においては、これら第1冷却用流体流通路440と第2冷却用流体流通路110とをパイプで連結することにより一本の流通路として機能するような構成とする。
【0088】
図6は、実施形態2に係る順送プレス加工装置20を説明するために示す図である。図6(a)は順送プレス加工装置20における下側の金型基台100及び当該金型基台100に設置されている動作部200の構成を模式的に示す平面図であり、図6(b)は図6(a)におけるA−A線矢視図であり、一部が断面として示されている。なお、図6(a)におけるB−B線矢視図は、図2と同様に表すことができる。
【0089】
実施形態2に係る順送プレス加工装置20の基本的な構成は、実施形態1に係る順送プレス加工装置10と同じであるので、同一構成要素には同一符号が付されている。また、実施形態2に係る順送プレス加工装置20の動作部200としての抜き孔形成用金型部300、加熱部400、絞り金型部500及び打ち抜き金型部600が行う動作は、実施形態1に係る順送プレス加工装置10と同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0090】
実施形態2に係る順送プレス加工装置20においては、図6に示すように、金型基台100に設けられている第2冷却用流体流通路110と加熱部400に設けられている第1冷却用流体流通路440とを連結パイプ810によって連結することによって、これら各流体流通路が一本の流通路として機能するような構成としている。
【0091】
このような構成において、冷水はパイプ131から第2冷却用流体流通路110を流通し、当該第2冷却用流体流通路110の途中に設けられている第2流体貯留槽120に一時的に蓄えられたのち、連結パイプ810を介して第1冷却用流体流通路440を流通し、第1冷却用流体流通路440の途中に設けられている第1流体貯留槽450に一時的に蓄えられたのち、当該第1冷却用流体流通路440に接続されたパイプ482へと流通する。
【0092】
このように、第1冷却用流体流通路440と第2冷却用流体流通路110とを連結パイプ810によって連結することによって、これら各流体流通路が一本の流通路として機能するような構成としても、実施形態1に係る順送プレス加工装置10と同様の効果が得られる。また、実施形態2に係る順送プレス加工装置20によれば、一本の流通路に冷却水を流すことによって、加熱部400及び金型基台100の両方を冷却することができるため、水を有効利用することができ、かつ、効率的な冷却が可能となる。
【0093】
[実施形態3]
図7は、実施形態3に係る順送プレス加工装置30を説明するために示す図である。図7(a)は順送プレス加工装置30における下側の金型基台100及び当該金型基台100に設置されている動作部200の構成を模式的に示す平面図であり、図7(b)は図7(a)におけるA−A線矢視図であり、一部が断面として示されている。なお、図7(a)におけるB−B線矢視図は、図2とほぼ同様に表すことができる。
【0094】
実施形態3に係る順送プレス加工装置30の基本的な構成は、実施形態1に係る順送プレス加工装置10と同じであるので、同一構成要素には同一符号が付されている。また、実施形態3に係る順送プレス加工装置30の動作部200としての抜き孔形成用金型部300、加熱部400、絞り金型部500及び打ち抜き金型部600)が行う動作は、実施形態1に係る順送プレス加工装置10と同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0095】
実施形態3に係る順送プレス加工装置30は、絞り金型部500の内部に、2本の保温用流体流通路560,570がy軸方向に沿って平行に設けられている。そして、保温用流体流通路560の一方の端部は、連結パイプ820によって加熱部400に設けられている第1冷却用流体流通路440に連結されている。また、保温用流体流通路560の他方の端部と保温用流体流通路570の一方の端部との間は連結パイプ830によって連結されている。また、保温用流体流通路570の他方の端部にはパイプ581が連結されている。なお、金型基台100には、実施形態1に係る順送プレス加工装置10と同様に、第2冷却用流体流通路440が設けられている。
【0096】
このような構成とすることにより、加熱部400を流通した温水が連結パイプ820を介して絞り金型部500に設けられている一方の保温用流体流通路560を流通したのち、連結パイプ830を介して絞り金型部500に設けられている他方の保温用流体流通路570を流通するため、絞り金型部500の温度を、ある程度の温度にまで上昇させることができる。
【0097】
このため、実施形態3に係る順送プレス加工装置30によれば、実施形態1に係る順送プレス加工装置10によって得られる効果に加えて、保温用流体流通路560,570を流通する温水が、電気ヒーター520の補助的な役目をなすため、絞り金型部500の電気ヒーター520の消費電力を削減することができるといった効果が得られる。
【0098】
[実施形態4]
図8は、実施形態4に係る順送プレス加工装置40を説明するために示す図である。図8(a)は順送プレス加工装置40における下側の金型基台100及び当該金型基台100に設置されている動作部200の構成を模式的に示す平面図であり、図8(b)は図8(a)におけるA−A線矢視図であり、一部が断面として示されている。なお、図8(a)におけるB−B線矢視図は、図2とほぼ同様に表すことができる。
【0099】
実施形態4に係る順送プレス加工装置40の基本的な構成は、実施形態1に係る順送プレス加工装置10と同じであるので、同一構成要素には同一符号が付されている。また、実施形態4に係る順送プレス加工装置40の動作部200としての抜き孔形成用金型部300、加熱部400、絞り金型部500及び打ち抜き金型部600が行う動作は、実施形態1に係る順送プレス加工装置10と同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0100】
実施形態4に係る順送プレス加工装置40は、実施形態2に係る順送プレス加工装置20と実施形態3に係る順送プレス加工装置30とを組み合わせたものである。
【0101】
すなわち、実施形態4に係る順送プレス加工装置40においては、実施形態2に係る順送プレス加工装置20と同様に、加熱部400に設けられている第1冷却用流体流通路440と金型基台100に設けられている第2冷却用流体流通路110とを連結パイプ810によって連結し、さらに、実施形態3に係る順送プレス加工装置30と同様に、保温用流体流通路560の一方の端部を連結パイプ820によって第1冷却用流体流通路440に連結するとともに、保温用流体流通路560の他方の端部と保温用流体流通路570の一方の端部との間を連結パイプ830によって連結し、また、保温用流体流通路570の他方の端部にパイプ581を連結した構成となっている。ただし、第1冷却用流体流通路440及び保温用流体流通路560,570における水の流通方向が実施形態3に係る順送プレス加工装置30の場合とは逆方向となっている。
【0102】
このように、実施形態4に係る順送プレス加工装置40においては、第2冷却用流体流通路110、第1冷却用流体流通路440及び保温用流体流通路560,570を直列に連結することによって、これら各流体流通路が一本の流通路として機能するような構成としている。
【0103】
このような構成における水の流通経路は、水が第2冷却用流体流通路110から第1冷却用流体流通路440を通って保温用流体流通路560,570へと流通する経路となる。このような構成とすることにより、金型基台100及び加熱部400の冷却と、絞り金型部500の保温とが一本の流通路によって行えるとともに、水を有効利用することができる。また、実施形態3に係る順送プレス加工装置30と同様に、絞り金型部500の電気ヒーター520の消費電力を削減することができるといった効果が得られる。
【0104】
[実施形態5]
図9は、実施形態5に係る順送プレス加工装置50を説明するために示す図である。図9(a)は順送プレス加工装置50における下側の金型基台100及び当該金型基台100に設置されている動作部200の構成を模式的に示す平面図であり、図9(b)は図9(a)におけるA−A線矢視図であり、一部が断面として示されている。なお、図9(a)におけるB−B線矢視図は、図2とほぼ同様に表すことができる。
【0105】
また、実施形態5に係る順送プレス加工装置50の基本的な構成は、実施形態1に係る順送プレス加工装置10と同じであるので、同一構成要素には同一符号が付されている。また、実施形態5に係る順送プレス加工装置50の動作部200としての抜き孔形成用金型部300、加熱部400、絞り金型部500及び打ち抜き金型部600が行う動作は、実施形態1に係る順送プレス加工装置10と同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0106】
実施形態5に係る順送プレス加工装置50は、図8に示した実施形態4に係る順送プレス加工装置40の構成に、打ち抜き金型部600の内部に冷却用流体流通路630(第3冷却用流体流通路630という。)をy軸方向に沿って設け、この第3冷却用流体流通路630の一方の端部を連結パイプ840によって金型基台100に設けられている第2冷却用流体流通路110に連結するような構成としている。なお、第3冷却用流体流通路630の他方の端部にはパイプ641が接続されている。
【0107】
すなわち、実施形態5に係る順送プレス加工装置50においては、第3冷却用流体流通路110、第2冷却用流体流通路110、第1冷却用流体流通路440及び保温用流体流通路560,570を直列に連結することによって、これら各流体流通路が一本の流通路として機能するような構成としている。
【0108】
このような構成における水の流通経路は、水が第3冷却用流体流通路630、第2冷却用流体流通路110、第1冷却用流体流通路440、保温用流体流通路560,570へと流通する経路となる。
【0109】
このような構成とすることにより、打ち抜き金型部600に設けられている第3冷却用流体流通路630を流通する冷水によって打ち抜き金型部600を予冷しておくことができるため、エアー吹き付け部610によるワーク部材Wの冷却を効率よく行うことができる。
【0110】
このように、実施形態5に係る順送プレス加工装置50によれば、実施形態4に係る順送プレス加工装置40によって得られる効果に加えて、エアー吹き付け部610によるワーク部材Wの冷却を効率よく行うことができるといった効果が得られる。
【0111】
ところで、上記各実施形態においては、温間成形加工部としては絞り金型部500を設け、当該絞り金型部500によってワーク部材Wの加工範囲に絞り加工を施すようにしたが、温間成形加工としては、絞り加工に限られるものではなく、曲げ加工、鍛造加工、局所的な打ち抜き加工(局所的打ち抜き加工という。)などの各加工を温間成形加工として行うことができる。これら曲げ加工、鍛造加工、局所的打ち抜き加工などの各加工を温間成形加工として行う場合を以下に示す実施形態6〜実施形態8として説明する。
【0112】
なお、以下に示す実施形態6〜実施形態8においては、当該各実施形態に係る順送プレス加工装置60,70,80の冷却用流体流通路などの構成は、実施形態1に係る順送プレス加工装置10の構成を採用した場合を説明するが、実施形態2〜実施形態5に係る順送プレス加工装置20,30,40,50の構成を採用することもできることは勿論である。
【0113】
[実施形態6]
図10は、実施形態6に係る順送プレス加工装置60を説明するために示す図である。実施形態6に係る順送プレス加工装置60が実施形態1に係る順送プレス加工装置10と異なるのは、絞り金型部500の代わりに曲げ金型部501を設けた点であり、その他の構成は、実施形態1に係る順送プレス加工装置10と同様であるので、実施形態1に係る順送プレス加工装置10と同一構成要素には同一符号が付されている。
【0114】
図11は、実施形態6に係る順送プレス加工装置60において製造される製品910の一例を示す図である。なお、実施形態6に係る順送プレス加工装置60によって製造される製品の形状は、図11に示すような形状に限られるものではなく、種々の曲げ金型を取り付けることによって様々な形状及び寸法の製品を製造することができる。
【0115】
曲げ金型部501は、ワーク部材Wの加工範囲Waに対して、温間による曲げ加工を行うものであり、曲げ加工を行う曲げ加工部502と、電気によって発熱する発熱体(電気ヒーター520)と、曲げ金型部502の温度(表面温度が好ましい。)を測定する温度測定部530とを有している。なお、曲げ金型部502は、上側の金型基台(図示せず。)に設置された上側の曲げ金型部(図示せず。)が下降することによって、ワーク部材Wにおける加工範囲Waの所定部分に、例えば、図11に示すような曲げ部911,912を形成する。
【0116】
このように構成された順送プレス加工装置70の全体的な動作は、実施形態1に係る順送プレス加工装置10と同様の工程によって行うことができる。なお、加工範囲Waを加熱部400によって加熱するまでの動作は実施形態1に係る順送プレス加工装置10と同様であるため、加熱部400による加熱後の動作について簡単に説明する。
【0117】
加熱部400による加熱後においては、曲げ金型部501の曲げ加工部502によって温間による曲げ加工を行い、曲げ加工が終了すると打ち抜き金型部600のエアー吹き付け部610によってほぼ常温にまで冷却したのち、打ち抜き金型部600の打ち抜き加工部620によって冷間による打ち抜き工程を行う。これによって、図11に示すような製品910を製造することができる。
【0118】
このように、実施形態6に係る順送プレス加工装置60においては、曲げ金型部501の前段に加熱部400を設け、当該加熱部400によりワーク部材Wの温度が70℃〜500℃程度となるようにワーク部材Wを加熱している。これによって、曲げ金型部501においては曲げ加工を温間成形加工として行うことが可能となる。
【0119】
曲げ加工を温間成形加工として行うことにより、曲げ加工を容易かつ高精度に行うことができる。これは、ワーク部材Wを70℃〜500℃程度にまで高めると、ワーク部材Wの応力が減少するからであると考えられる。このため、特に、ワーク部材Wが上記したような難加工材である場合においては、曲げ加工を温間成形加工として行うことにより、難加工材の曲げ加工を容易かつ高精度に行うことができる。なお、曲げ加工を温間成形加工として行う際の温度は、ワーク部材Wの種類や厚みなどに応じて、上記した温度範囲(70℃〜500℃程度)内の適切な温度を設定することが好ましい。
【0120】
また、実施形態6に係る順送プレス加工装置60においても、上記各実施形態で説明したような冷却用流体流通路110,440,630(図2及び図9参照。)を設けることによって、加熱部400でワーク部材Wを加熱することにより発生した熱によって、加熱部本体410や金型基台100が高温となることを防止することができ、順送プレス加工装置60全体が高温となることを防止することができる。特に、冷間による加工を行うべき打ち抜き金型部600が高温となってしまうことを防止できる。また、曲げ金型部501に保温用流体流通路560,570(図7〜図9参照。)を設けることにより、保温用流体流通路560,570を流通する温水が、電気ヒーター520の補助的な役目をなすため、曲げ金型部501の電気ヒーター520の消費電力を削減することができるといった効果が得られる。
【0121】
[実施形態7]
図12は、実施形態7に係る順送プレス加工装置70を説明するために示す図である。実施形態7に係る順送プレス加工装置70が、上記実施形態1に係る順送プレス加工装置10と異なるのは、絞り金型部500の代わりに鍛造金型部503を設けた点であり、その他の構成は、実施形態1に係る順送プレス加工装置10と同様であるので、実施形態1に係る順送プレス加工装置10と同一構成要素には同一符号が付されている。
【0122】
図13は、実施形態7に係る順送プレス加工装置70において製造される製品920の一例を示す図である。なお、実施形態7に係る順送プレス加工装置70によって製造される製品の形状は、図13に示すような形状に限られるものではなく、種々の鍛造金型を取り付けることによって様々な形状及び寸法の製品を製造することができる。
【0123】
鍛造金型部503は、ワーク部材W(肉厚のワーク部材であるとする。)の加工範囲Waに対して、温間による鍛造加工を行うものであり、鍛造加工を行う鍛造加工部504と、電気によって発熱する発熱体(電気ヒーター520)と、鍛造金型部503の温度(表面温度が好ましい。)を測定する温度測定部530とを有している。なお、鍛造金型部503は、上側の金型基台(図示せず。)に設置された上側の鍛造金型部(図示せず。)が下降することによって、ワーク部材Wにおける加工範囲Waを鍛造加工し、それによって、図13に示すような傾斜部921,922と薄板部923,924とを形成する。
【0124】
このように構成された順送プレス加工装置70の全体的な動作は、実施形態1に係る順送プレス加工装置10と同様の工程によって行うことができる。なお、加工範囲Waを加熱部400によって加熱するまでの動作は実施形態1に係る順送プレス加工装置10と同様であるため、加熱部400による加熱後の動作について簡単に説明する。
【0125】
加熱部400による加熱後においては、鍛造金型部503の鍛造加工部504によって温間による鍛造加工を行い、鍛造加工が終了すると打ち抜き金型部600のエアー吹き付け部610によってほぼ常温にまで冷却したのち、打ち抜き金型部600の打ち抜き加工部620によって冷間による打ち抜き工程を行う。これによって、図13に示すような製品920を製造することができる。
【0126】
このように、実施形態7に係る順送プレス加工装置70においては、鍛造金型部503の前段に加熱部400を設け、当該加熱部400によりワーク部材Wを加熱するようにしている。これによって、鍛造金型部503においては鍛造加工を温間成形加工として行うことができる。
【0127】
鍛造加工を温間成形加工として行うことにより、鍛造加工を容易かつ高精度に行うことができる。これは、ワーク部材Wを70℃〜500℃程度にまで高めると、ワーク部材Wの応力が減少するからであると考えられる。このため、特に、ワーク部材Wが上記したような難加工材である場合においては、鍛造加工を温間成形加工として行うことにより、難加工材の鍛造加工を容易かつ高精度に行うことができる。なお、鍛造加工を温間成形加工として行う際の温度は、ワーク部材Wの種類や厚みなどに応じて、上記した温度範囲(70℃〜500℃程度)内の適切な温度を設定することが好ましい。
【0128】
また、実施形態7に係る順送プレス加工装置70においても、上記各実施形態で説明したような冷却用流体流通路110,440,630(図2及び図9参照。)を設けることによって、加熱部400でワーク部材Wを加熱することにより発生した熱によって、加熱部本体410や金型基台100が高温となることを防止することができ、順送プレス加工装置70全体が高温となることを防止することができる。特に、冷間による加工を行うべき打ち抜き金型部600が高温となってしまうことを防止できる。また、鍛造金型部503に保温用流体流通路560,570(図7〜図9参照。)を設けることにより、保温用流体流通路560,570を流通する温水が、電気ヒーター520の補助的な役目をなすため、鍛造金型部503の電気ヒーター520の消費電力を削減することができるといった効果が得られる。
【0129】
[実施形態8]
図14は、実施形態8に係る順送プレス加工装置80を説明するために示す図である。実施形態8に係る順送プレス加工装置80が、実施形態1に係る順送プレス加工装置10と異なるのは、絞り金型部500の代わりに、加工範囲の所定部分に局所的な打ち抜き部(以下、局所的打ち抜き部という。)を形成するための打ち抜き金型部505を設けた点が異なるだけであり、その他の構成は、実施形態1に係る順送プレス加工装置10と同様であるので、実施形態1に係る順送プレス加工装置10と同一構成要素には同一符号が付されている。
【0130】
絞り金型部500の代わりに設けられている「打ち抜き金型部505」は、加工範囲の所定部分に局所的打ち抜き部を形成するための打ち抜き金型部であるため、元々存在している「打ち抜き金型部600」と区別するため、「打ち抜き金型部505」を「局所的打ち抜き金型部505」と呼ぶことにする。また、局所的打ち抜き金型部505による打ち抜き加工を「局所的打ち抜き加工」と呼ぶことにする。
【0131】
図15は、実施形態8に係る順送プレス加工装置80において製造される製品930の一例を示す図である。なお、実施形態8に係る順送プレス加工装置80によって製造される製品の形状は、図15に示すような形状に限られるものではなく、種々の局所的打ち抜き金型を取り付けることによって様々な形状及び寸法の製品を製造することができる。
【0132】
製品930は、図15に示すように、加工範囲の所定部分に局所的打ち抜き金型部505によって孔931が形成されている。実施形態8に係る順送プレス加工装置80においては、孔931は、当該孔931の断面(打ち抜き方向に直交する断面)S1の形状が円形であるとする。なお、孔931は、アスペクト比が大きい孔であるとする。すなわち、断面S1の大きさ(ここでは孔931の断面の形状が円形であるとしているので、この場合は円の径とする。)は、当該孔931の打ち抜き方向に沿ったワーク部材Wの厚みtに比べて十分に小さいものとする。
【0133】
局所的打ち抜き金型部505は、ワーク部材Wの加工範囲Waに対して、温間による局所的打ち抜き加工を行うものであり、局所的打ち抜き加工部506と、電気によって発熱する発熱体(電気ヒーター520)と、局所的打ち抜き金型部505の温度(表面温度が好ましい。)を測定する温度測定部530とを有している。なお、局所的打ち抜き金型部505は、上側の金型基台(図示せず。)に設置された上側の局所的打ち抜き金型部(図示せず。)が下降することによってワーク部材Wにおける加工範囲Waの所定部分に、例えば、図15に示すような孔931を形成する。
【0134】
このように構成された順送プレス加工装置80の全体的な動作は、実施形態1に係る順送プレス加工装置10と同様の工程によって行うことができる。なお、加工範囲Waを加熱部400によって加熱するまでの動作は実施形態1に係る順送プレス加工装置10と同様であるので、加熱部400による加熱後の動作について簡単に説明する。
【0135】
加熱部400による加熱後においては、局所的打ち抜き金型部505の局所的打ち抜き加工部506によって温間による局所的打ち抜き加工を行い、局所的打ち抜き加工が終了すると打ち抜き金型部600のエアー吹き付け部610によってほぼ常温にまで冷却したのち、打ち抜き金型部600の打ち抜き加工部620によって冷間による打ち抜き工程を行う。これによって、図15に示すような製品930を製造することができる。
【0136】
このように、実施形態8に係る順送プレス加工装置80においては、局所的打ち抜き金型部505の前段に加熱部400を設け、当該加熱部400によりワーク部材Wを加熱するようにしている。これによって、局所的打ち抜き金型部505においては局所的打ち抜き加工を温間成形加工として行うことができる。
【0137】
局所的打ち抜き加工を温間成形加工として行うことにより、局所的打ち抜き加工を容易かつ高精度に行うことができる。これは、ワーク部材Wを70℃〜500℃程度にまで高めると、ワーク部材Wの応力が減少するからであると考えられる。このため、特に、ワーク部材Wが上記したような難加工材である場合においては、局所的打ち抜き加工を温間成形加工として行うことにより、難加工材の局所的打ち抜き加工を容易かつ高精度に行うことができる。なお、局所的打ち抜き加工を温間成形加工として行う際の温度は、ワーク部材Wの種類や厚みなどに応じて、上記した温度範囲(70℃〜500℃程度)内の適切な温度を設定することが好ましい。
【0138】
また、実施形態8に係る順送プレス加工装置80においても、上記各実施形態で説明したような冷却用流体流通路110,440,630(図2及び図9参照。)を設けることによって、加熱部400でワーク部材Wを加熱することにより発生した熱によって、加熱部本体410や金型基台100が高温となることを防止することができ、順送プレス加工装置80全体が高温となることを防止することができる。特に、冷間による加工を行うべき打ち抜き金型部600が高温となってしまうことを防止できる。また、局所的打ち抜き金型部505に保温用流体流通路560,570(図7〜図9参照。)を設けることにより、保温用流体流通路560,570を流通する温水が、電気ヒーター520の補助的な役目をなすため、局所的打ち抜き金型部505の電気ヒーター520の消費電力を削減することができるといった効果が得られる。
【0139】
なお、局所的打ち抜き加工によって形成される局所的打ち抜き部としての孔931は、当該孔931の断面形状が円形である場合を例示したが、断面形状が円形であることに限られるものではなく、楕円形、矩形、台形、三角形、星形など種々の断面形状とすることができる。また、局所的打ち抜き加工によって形成される打ち抜き部は「孔」に限られるものではなく、例えば、縁部に形成される切り欠きであってもよい。
【0140】
図16は、局所的打ち抜き部の変形例を説明するために示す図である。図16においては、製品930の縁部に局所的な切り欠き部932が形成されている。切り欠き部932の断面S2の形状は矩形状をなしている。なお、切り欠き部932は、アスペクト比が大きい切り欠き部であるとする。すなわち、当該切り欠き部932の断面S2の大きさ(ここでは切り欠き部932の断面S2の形状が矩形状であるとしているので、例えば当該矩形の対角線の長さとする。)は、当該切り欠き部932の打ち抜き方向に沿ったワーク部材Wの厚みtに比べて小さいものとする。
【0141】
このような切り欠き部932を形成するための局所的打ち抜き加工は、温間成形加工として行うことにより、当該局所的打ち抜き加工を容易かつ高精度によって行うことができる。なお、切り欠き部932の断面形状は、矩形状に限られるものではなく、例えば、半円形、三角形など種々の断面形状とすることができる。
【0142】
[実施形態9]
上記各実施形態においては、加熱部400における加熱手段として電磁誘導発生器を使用した場合を例示したが、レーザー発生器の使用も可能である。なお、加熱部400における加熱手段としてレーザー発生器の使用が可能であることは、上記該実施形態1〜実施形態8のいずれの順送プレス加工装置10〜80において共通である。
【0143】
図17は、実施形態9に係る順送プレス加工装置90の構成を説明するために示す図である。図17は、加熱部400及び当該加熱部400が設けられている下側の金型基台100の一部と、当該加熱部400に対向する上側の金型基台101の一部を模式的に示す側面図である。なお、実施形態9に係る順送プレス加工装置90は、加熱部400の加熱手段としてレーザー光を用いた点が上記各実施形態に係る順送プレス加工装置10〜80と異なるだけで、その他の構成は、上記各実施形態に係る順送プレス加工装置10〜80と同様の構成とすることができる。
【0144】
実施形態9に係る順送プレス加工装置90は、図17に示すように、加熱部400に対向する上側の金型基台101には、レーザー発生器421を収納したレーザーユニット422が設けられている。一方、加熱部400は、加熱部本体410を有しており、当該加熱部本体410の内部には、第1冷却用流体流通路440(図2参照。)と流体貯留槽450とが設けられ、当該第1冷却用流体流通路440にはパイプ481が接続されている。なお、加熱部本体410は上記各実施形態と同様にセラミックなどの耐熱性及び低熱伝導性部材で形成されている。
【0145】
また、レーザーユニット422は、上側の金型基台101が下降した状態となったときに、レーザーユニット422の先端部422aが加熱部400上のワーク部材Wに当接しないように上側金型基台101に取り付けられている。
【0146】
実施形態9に係る順送プレス加工装置90においては、レーザーユニット422に収納されているレーザー発生器421から照射されるレーザー光によって、ワーク部材Wの加工範囲Wa(図1参照。)を加熱する。このとき、加工範囲Wa全体を加熱するようにしてもよく、また、加工範囲Wa内の所定部(加工部)のみを局所的に加熱するようにしてもよい。例えば、実施形態8で説明したように、局所的打ち抜き加工によって孔931を形成するような加工を行う場合には、当該孔931に対応する部分のみを加熱するようにしてもよい。
【0147】
このように、加熱手段としてレーザー発生器421を用い、当該レーザー発生器421からワーク部材Wの加工範囲Waにレーザー光を照射することによっても、上記各実施形態と同様、ワーク部材Wの温度を温間成形加工に適した温度とすることができる。
【0148】
なお、本発明は上記した各実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能となるものである。たとえば、下記に示すような変形実施も可能である。
【0149】
(1)上記した各実施形態においては、絞り金型部500による絞り加工、曲げ金型部501による曲げ加工、鍛造金型部503による鍛造加工及び局所的打ち抜き金型部505による局所的打ち抜き加工は、それぞれ1回の加工を行う場合を例示したが、それぞれの加工を2回以上行う場合においても本発明を適用することができる。
【0150】
(2)上記した実施形態5においては、打ち抜き金型部600の第3冷却用流体流通路630を実施形態4に係る順送プレス加工装置40(図8参照。)に示す第2冷却用流体流通路110に連結パイプ840によって連結するような構成としたが(図9参照。)、このような構成に限られるものではなく、冷却用流体流通路630は、実施形態1に係る順送プレス加工装置10(図1参照。)に示す第2冷却用流体流通路110に接続するような構成としてもよく、また、実施形態2に係る順送プレス加工装置20(図6参照。)に示す第2冷却用流体流通路110に接続するような構成としてもよく、また、実施形態3に係る順送プレス加工装置30(図7参照。)に示す第2冷却用流体流通路110に接続するような構成としてもよい。
【0151】
(3)上記実施形態においては、打ち抜き金型部600における冷却手段としてエアーの吹き付けによって絞り加工された加工領域を冷却するようにしたが、冷却手段としてはエアーのみに限られるものではない。
【0152】
(4)上記した各実施形態では、流体は水としたが、冷却又は保温が可能であれば水以外の液体であってもよく、また、気体であってもよい。
【0153】
(5)上記した各実施形態では、温間成形加工としては絞り加工、曲げ加工、鍛造加工及び局所的打ち抜き加工を例示して説明したが、これらの加工に限られるものではない。また、冷間成形加工は打ち抜き加工を例示したが、これに限られるものではない。
【0154】
(6)上記した各実施形態を説明するために示した各図(図1、図6〜図10、図12及び図14)においては、水の流通方向を矢印a及び矢印bで示すのみであって、当該水の供給元や水の排出先などについては示されていないが、冷却及び保温した水を繰り返し利用するような循環型の構成とすることも可能である。例えば、実施形態5に係る順送プレス加工装置(図9参照。)を例にとると、絞り金型部500から矢印b方向に流通する温水を冷却するための冷却部を設け、当該冷却部によって少なくとも常温程度に冷却した水を再び打ち抜き金型部600に矢印a方向に流入させるといった循環型の構成とすることも可能である。
【0155】
(7)上記した実施形態1〜8においては、加熱部400の電磁誘導発生器420としてのコイルは、ワーク部材Wに対向する面が平面となっているコイル(例えば、断面が矩形状、台形又は逆台形などを有するコイル)が好ましいとしたが、必ずしも、ワーク部材Wに対向する面が平面となっているコイルであることに限られるものではなく、例えば、断面が円形や楕円形のコイルであってもよい。
また、コイルを中空として、当該中空部に冷却用の流体を流通させるような構成となっているものを使用することも可能である。このようなコイルを用いることによって、コイルそのものが高温となることを抑制でき、被加工部材を加熱する際に発生する熱が周辺部に悪影響を及ぼさないようにすることができる。
【符号の説明】
【0156】
10,20,30,40,50,60,70,80,90・・・順送プレス加工装置、100・・・金型基台(下側の金型基台)、101・・・上側の金型基台、110・・・冷却用流体流通路(第2冷却用流体流通路)、120・・・流体貯留槽(第2流体貯留槽)、200・・・動作部、300・・・抜き孔形成用金型部、310・・・内側抜き孔加工部、320・・・外側抜き孔加工部、400・・・加熱部、410・・・加熱部本体、420・・・電磁誘導発生器、422・・・レーザーユニット、430・・・電磁誘導発生器保持部、440・・・冷却用流体流通路(第1冷却用流体流通路)、450・・・流体貯留槽(第1流体貯留槽)、500・・・絞り金型部、501・・・曲げ金型部、502・・・曲げ加工部、503・・・鍛造金型部、504・・・鍛造加工部、505・・・局所的打ち抜き金型部、506・・・局所的打ち抜き加工部、510・・・絞り加工部、520・・・電気ヒーター(発熱体)、530・・・温度測定部、560、570・・・保温用流体流通路、590・・・断熱材、600・・・打ち抜き金型部、610・・・エアー吹き付け部、620・・・打ち抜き加工部、630・・・第3冷却用流体流通路、700・・・ガイドバー、810〜840・・・連結パイプ、900,910,920,930・・・製品、911,912・・・曲げ部、921,922・・・傾斜部、923,924・・・薄板部、931・・・孔、932・・・切り欠き部、C1・・・内側抜き孔部、C2・・・外側抜き孔部、S1,S2・・・断面、W・・・ワーク部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型基台の上に複数の工程を行う動作部が被加工部材の搬送方向に沿って設置され、前記被加工部材を搬送しながら前記動作部が複数の工程を行うことによって所望とする製品を製造する順送プレス加工装置であって、
前記動作部は、
前記被加工部材において加工すべき加工範囲を加熱する加熱部と、
前記加熱部で加熱された加工範囲を所定温度に保持した状態で前記加工範囲を温間成形加工する温間成形加工部と、
前記温間成形加工部による温間成形加工が終了した後に当該温間成形加工された前記加工範囲を冷間成形加工する冷間成形加工部と、
を有し、
前記加熱部は、当該加熱部を冷却するための流体を流通させる第1冷却用流体流通路を有していることを特徴とする順送プレス加工装置。
【請求項2】
請求項1に記載の順送プレス加工装置において、
前記第1冷却用流体流通路は、当該第1冷却用流体流通路を流通する流体を流通の過程において一時的に貯留する流体貯留槽を有することを特徴とする順送プレス加工装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の順送プレス加工装置において、
前記温間成形加工部は、電気によって発熱する発熱体を有していることを特徴とする順送プレス加工装置。
【請求項4】
請求項3に記載の順送プレス加工装置において、
前記温間成形加工部は、当該温間成形加工部の温度を測定して、測定した温度に対応する温度信号を出力する温度測定部をさらに有することを特徴とする順送プレス加工装置。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の順送プレス加工装置において、
前記温間成形加工部は、保温用の流体を流通させる保温用流体流通路をさらに有し、前記保温用流体流通路は、前記第1冷却用流体流通路に連結され、前記第1冷却用流体流通路を流通して温度の上昇した流体が前記保温用流体流通路を流通するように構成されていることを特徴とする順送プレス加工装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の順送プレス加工装置において、
前記冷間成形加工部は、前記温間成形加工のなされた前記加工範囲を冷却するための冷却手段を有することを特徴とする順送プレス加工装置。
【請求項7】
請求項6に記載の順送プレス加工装置において、
前記冷間成形加工部は、前記冷却手段として、前記加工範囲にエアーの吹き付けを行うエアー吹き付け部を有することを特徴とする順送プレス加工装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の順送プレス加工装置において、
前記金型基台は、当該金型基台を冷却するための流体を流通させる第2冷却用流体流通路を有していることを特徴とする順送プレス加工装置。
【請求項9】
請求項8に記載の順送プレス加工装置において、
前記第2冷却用流体流通路は、当該第2冷却用流体流通路を流通する流体を流通の過程において一時的に貯留する流体貯留槽を有することを特徴とする順送プレス加工装置。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の順送プレス加工装置において、
前記第1冷却用流体流通路と前記第2冷却用流体流通路とは連結されており、前記第2冷却用流体流通路を流通した前記流体が前記第1冷却用流体流通路を流通するように構成されていることを特徴とする順送プレス加工装置。
【請求項11】
請求項8〜10のいずれかに記載の順送プレス加工装置において、
前記冷間成形加工部は、冷却用の流体を流通させる第3冷却用流体流通路を有し、当該第3冷却用流体流通路は、前記第2冷却用流体流通路に連結され、前記第3冷却用流体流通路を流通した流体が前記第2冷却用流体流通路を流通するように構成されていることを特徴とする順送プレス加工装置。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の順送プレス加工装置において、
前記動作部は、前記加工範囲を部分的に囲むような抜き孔を前記被加工部材に形成する抜き孔形成用金型部をさらに有し、
前記抜き孔形成用金型部は、前記被加工部材の搬送方向において前記加熱部よりも手前側に設置されていることを特徴とする順送プレス加工装置。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載の順送プレス加工装置において、
前記加熱部は、前記被加工部材を電磁誘導の原理を利用して加熱する電磁誘導発生器を有していることを特徴とする順送プレス加工装置。
【請求項14】
請求項13に記載の順送プレス加工装置において、
前記電磁誘導発生器は、電磁力を発生するためのコイルの前記被加工部材に対向する面が平面であることを特徴とする順送プレス加工装置。
【請求項15】
請求項1〜12のいずれかに記載の順送プレス加工装置において、
前記加熱部は、前記被加工部材をレーザー光によって加熱するレーザー発生器を有していることを特徴とする順送プレス加工装置。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれかに記載の順送プレス加工装置において、
前記温間成形加工は、絞り加工であり、前記冷間成形加工は、打ち抜き加工であることを特徴とする順送プレス加工装置。
【請求項17】
請求項1〜15のいずれかに記載の順送プレス加工装置において、
前記温間成形加工は、曲げ加工であり、前記冷間成形加工は、打ち抜き加工であることを特徴とする順送プレス加工装置。
【請求項18】
請求項1〜15のいずれかに記載の順送プレス加工装置において、
前記温間成形加工は、鍛造加工であり、前記冷間成形加工は、打ち抜き加工であることを特徴とする順送プレス加工装置。
【請求項19】
請求項1〜15のいずれかに記載の順送プレス加工装置において、
前記温間成形加工は、前記加工範囲の所定部分に局所的打ち抜き部を形成するための局所的打ち抜き加工であり、前記冷間成形加工は、前記局所的打ち抜き加工を施した範囲を含む所定範囲を前記被加工部材から切り離すための打ち抜き加工であることを特徴とする順送プレス加工装置。
【請求項20】
請求項19に記載の順送プレス加工装置において、
前記局所的打ち抜き部は、当該局所的打ち抜き部の打ち抜き方向に直交する断面の大きさが当該打ち抜き方向に沿った前記被加工部材の厚みに比べて小さいことを特徴とする順送プレス加工装置。
【請求項21】
請求項20に記載の順送プレス加工装置において、
前記局所的打ち抜き部は、孔であることを特徴とする順送プレス加工装置。
【請求項1】
金型基台の上に複数の工程を行う動作部が被加工部材の搬送方向に沿って設置され、前記被加工部材を搬送しながら前記動作部が複数の工程を行うことによって所望とする製品を製造する順送プレス加工装置であって、
前記動作部は、
前記被加工部材において加工すべき加工範囲を加熱する加熱部と、
前記加熱部で加熱された加工範囲を所定温度に保持した状態で前記加工範囲を温間成形加工する温間成形加工部と、
前記温間成形加工部による温間成形加工が終了した後に当該温間成形加工された前記加工範囲を冷間成形加工する冷間成形加工部と、
を有し、
前記加熱部は、当該加熱部を冷却するための流体を流通させる第1冷却用流体流通路を有していることを特徴とする順送プレス加工装置。
【請求項2】
請求項1に記載の順送プレス加工装置において、
前記第1冷却用流体流通路は、当該第1冷却用流体流通路を流通する流体を流通の過程において一時的に貯留する流体貯留槽を有することを特徴とする順送プレス加工装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の順送プレス加工装置において、
前記温間成形加工部は、電気によって発熱する発熱体を有していることを特徴とする順送プレス加工装置。
【請求項4】
請求項3に記載の順送プレス加工装置において、
前記温間成形加工部は、当該温間成形加工部の温度を測定して、測定した温度に対応する温度信号を出力する温度測定部をさらに有することを特徴とする順送プレス加工装置。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の順送プレス加工装置において、
前記温間成形加工部は、保温用の流体を流通させる保温用流体流通路をさらに有し、前記保温用流体流通路は、前記第1冷却用流体流通路に連結され、前記第1冷却用流体流通路を流通して温度の上昇した流体が前記保温用流体流通路を流通するように構成されていることを特徴とする順送プレス加工装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の順送プレス加工装置において、
前記冷間成形加工部は、前記温間成形加工のなされた前記加工範囲を冷却するための冷却手段を有することを特徴とする順送プレス加工装置。
【請求項7】
請求項6に記載の順送プレス加工装置において、
前記冷間成形加工部は、前記冷却手段として、前記加工範囲にエアーの吹き付けを行うエアー吹き付け部を有することを特徴とする順送プレス加工装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の順送プレス加工装置において、
前記金型基台は、当該金型基台を冷却するための流体を流通させる第2冷却用流体流通路を有していることを特徴とする順送プレス加工装置。
【請求項9】
請求項8に記載の順送プレス加工装置において、
前記第2冷却用流体流通路は、当該第2冷却用流体流通路を流通する流体を流通の過程において一時的に貯留する流体貯留槽を有することを特徴とする順送プレス加工装置。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の順送プレス加工装置において、
前記第1冷却用流体流通路と前記第2冷却用流体流通路とは連結されており、前記第2冷却用流体流通路を流通した前記流体が前記第1冷却用流体流通路を流通するように構成されていることを特徴とする順送プレス加工装置。
【請求項11】
請求項8〜10のいずれかに記載の順送プレス加工装置において、
前記冷間成形加工部は、冷却用の流体を流通させる第3冷却用流体流通路を有し、当該第3冷却用流体流通路は、前記第2冷却用流体流通路に連結され、前記第3冷却用流体流通路を流通した流体が前記第2冷却用流体流通路を流通するように構成されていることを特徴とする順送プレス加工装置。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の順送プレス加工装置において、
前記動作部は、前記加工範囲を部分的に囲むような抜き孔を前記被加工部材に形成する抜き孔形成用金型部をさらに有し、
前記抜き孔形成用金型部は、前記被加工部材の搬送方向において前記加熱部よりも手前側に設置されていることを特徴とする順送プレス加工装置。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載の順送プレス加工装置において、
前記加熱部は、前記被加工部材を電磁誘導の原理を利用して加熱する電磁誘導発生器を有していることを特徴とする順送プレス加工装置。
【請求項14】
請求項13に記載の順送プレス加工装置において、
前記電磁誘導発生器は、電磁力を発生するためのコイルの前記被加工部材に対向する面が平面であることを特徴とする順送プレス加工装置。
【請求項15】
請求項1〜12のいずれかに記載の順送プレス加工装置において、
前記加熱部は、前記被加工部材をレーザー光によって加熱するレーザー発生器を有していることを特徴とする順送プレス加工装置。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれかに記載の順送プレス加工装置において、
前記温間成形加工は、絞り加工であり、前記冷間成形加工は、打ち抜き加工であることを特徴とする順送プレス加工装置。
【請求項17】
請求項1〜15のいずれかに記載の順送プレス加工装置において、
前記温間成形加工は、曲げ加工であり、前記冷間成形加工は、打ち抜き加工であることを特徴とする順送プレス加工装置。
【請求項18】
請求項1〜15のいずれかに記載の順送プレス加工装置において、
前記温間成形加工は、鍛造加工であり、前記冷間成形加工は、打ち抜き加工であることを特徴とする順送プレス加工装置。
【請求項19】
請求項1〜15のいずれかに記載の順送プレス加工装置において、
前記温間成形加工は、前記加工範囲の所定部分に局所的打ち抜き部を形成するための局所的打ち抜き加工であり、前記冷間成形加工は、前記局所的打ち抜き加工を施した範囲を含む所定範囲を前記被加工部材から切り離すための打ち抜き加工であることを特徴とする順送プレス加工装置。
【請求項20】
請求項19に記載の順送プレス加工装置において、
前記局所的打ち抜き部は、当該局所的打ち抜き部の打ち抜き方向に直交する断面の大きさが当該打ち抜き方向に沿った前記被加工部材の厚みに比べて小さいことを特徴とする順送プレス加工装置。
【請求項21】
請求項20に記載の順送プレス加工装置において、
前記局所的打ち抜き部は、孔であることを特徴とする順送プレス加工装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−139724(P2012−139724A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−69032(P2011−69032)
【出願日】平成23年3月26日(2011.3.26)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、独立行政法人科学技術振興機構、研究成果最適展開支援事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(304023994)国立大学法人山梨大学 (223)
【出願人】(391001619)長野県 (64)
【出願人】(591093494)株式会社ミスズ工業 (58)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月26日(2011.3.26)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、独立行政法人科学技術振興機構、研究成果最適展開支援事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(304023994)国立大学法人山梨大学 (223)
【出願人】(391001619)長野県 (64)
【出願人】(591093494)株式会社ミスズ工業 (58)
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