説明

頭部装着型表示装置および頭部装着型表示装置の制御方法

【課題】使用者の頭の向きを検知可能であり、かつ、装着感の良い頭部装着型表示装置を提供する。
【解決手段】頭部装着型表示装置は、画像データを用いて画像を表す画像光を生成し射出させる画像光生成部と、射出された画像光を使用者の眼に導く導光部と、を有し、使用者に虚像を視認させるための画像表示部と、画像表示部に画像データを送信し、画像表示部による画像表示を制御する制御部と、画像表示部と、制御部を中継する中継部と、画像表示部と中継部のうちのいずれか一方に配置された非可視光を射出可能な発光部と、他方に配置された射出された非可視光を受光する受光部と、受光部からの出力信号を用いて画像表示部の受光部に対する向きを検知する向き検知部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頭部に装着する表示装置である頭部装着型表示装置および頭部装着型表示装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
頭部に装着する表示装置である頭部装着型表示装置(ヘッドマウントディスプレイ(Head Mounted Display、HMD))が知られている。頭部装着型表示装置は、例えば、液晶ディスプレイおよび光源を利用して画像を表す画像光を生成し、生成された画像光を投写光学系や導光板を利用して使用者の眼に導くことにより、使用者に虚像を認識させる。
【0003】
上述のようなヘッドマウントディスプレイにおいて、使用者の顔の向きの変化を検知するため角速度センサーを搭載し、角速度センサーの検知結果に基づいて表示手段に出力する画像をトリミングする技術が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−219069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ヘッドマウントディスプレイは人間の頭部に装着されて使用される表示装置であるため、角速度センサーを搭載することに伴う装置の重量の増加や装置の大型化は、ヘッドマウントディスプレイの装着感を悪くするという問題があった。
【0006】
本発明は、使用者の頭の向きを検知可能であり、かつ、装着感の良い頭部装着型表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]
頭部装着型表示装置であって、
画像データを用いて画像を表す画像光を生成し、射出させる画像光生成部と、射出された前記画像光を使用者の眼に導く導光部と、を有し、使用者に虚像を視認させるための画像表示部と、
前記画像表示部に前記画像データを送信し、前記画像表示部による画像表示を制御する制御部と、
前記画像表示部と、前記制御部を中継する中継部と、
前記画像表示部と前記中継部のうちのいずれか一方に配置された非可視光を射出可能な発光部と、
他方に配置された射出された前記非可視光を受光する受光部と、
前記受光部からの出力信号を用いて前記画像表示部の前記受光部に対する向きを検知する向き検知部と、
を備える、頭部装着型表示装置。
このような構成とすれば、画像表示部と中継部のうちのいずれか一方には非可視光を射出可能な発光部を有し、他方には射出された非可視光を受光可能な受光部を有し、向き検知部は、受光部からの出力信号を用いて画像表示部の受光部に対する向きを検知するため、頭部装着型表示装置は、発光部と受光部のみの簡単な構成で画像表示部の向き(すなわち、使用者の頭の向き)を検知することができる。この結果、使用者の頭の向きを検知可能であり、かつ、頭部装着型表示装置の重量の増加や大型化を抑制することで装着感の良い頭部装着型表示装置を提供することができる。
【0009】
[適用例2]
適用例1記載の頭部装着型表示装置であって、
前記向き検知部は、
前記受光部からの出力信号が示す前記非可視光の輝度を用いて、予め定められた基準点に対する、前記画像表示部の鉛直方向と水平方向との少なくともいずれか一方の移動量を求めることによって、前記画像表示部の向きを検知する、頭部装着型表示装置。
このような構成とすれば、向き検知部は、受光部からの出力信号が示す前記非可視光の輝度を用いて、画像表示部の向き(すなわち、使用者の頭の向き)を検知することができる。
【0010】
[適用例3]
適用例1または2記載の頭部装着型表示装置であって、
前記制御部は、さらに、
検知された前記画像表示部の向きに応じて、前記画像データから一部をトリミングして前記画像を生成するように前記画像表示部を制御する、頭部装着型表示装置。
このような構成とすれば、制御部は、検知された画像表示部の向きに応じて、画像データから一部をトリミングして画像を生成するように画像表示部を制御するため、画像表示部の向き(すなわち、使用者の頭の向き)に応じて、使用者に視認させる虚像を変化させることができる。
【0011】
[適用例4]
適用例1ないし3のいずれか一項記載の頭部装着型表示装置であって、
前記発光部は、赤外線を射出する赤外線発光部であり、
前記受光部は、射出された前記赤外線を受光する赤外線受光部である、頭部装着型表示装置。
このような構成とすれば、発光部として赤外線を射出する赤外線発光部を用い、受光部として射出された赤外線を受光する赤外線受光部を用いるため、適用例1ないし3のいずれか一項記載の頭部装着型表示装置を低コストで実現することができる。
【0012】
[適用例5]
適用例1ないし4のいずれか一項記載の頭部装着型表示装置であって、
前記中継部はケーブル状であり、
前記発光部は、波長の異なる前記非可視光を射出可能な2つの発光部を含み、前記2つの発光部は、前記画像表示部の本体表面であって、前記受光部の側に前記非可視光を射出可能な位置にそれぞれ配置され、
前記受光部は、射出された波長の異なる前記非可視光をそれぞれ受光可能であり、前記受光部は、ケーブル状である前記中継部の中央部またはその周辺であって、前記発光部に向かう位置に配置される、頭部装着型表示装置。
このような構成とすれば、受光部は、画像表示部の本体表面であって、受光部の側に非可視光を射出可能な位置にそれぞれ配置された2つの発光部から射出された波長の異なる非可視光をそれぞれ受光することができるため、向き検知部は、受光部からの出力信号を用いて、画像表示部(すなわち、使用者の頭)の上下左右方向の向きを検知することが可能となる。
【0013】
[適用例6]
適用例1ないし4のいずれか一項記載の頭部装着型表示装置であって、
前記中継部はケーブル状であり、
前記発光部は、前記画像表示部の本体表面であって、前記受光部の側に前記非可視光を射出可能な位置に配置され、
前記受光部は、ケーブル状である前記中継部の中央部またはその周辺であって、前記発光部に向かう位置に配置される、頭部装着型表示装置。
このような構成とすれば、発光部は、画像表示部の本体表面であって、受光部の側に非可視光を射出可能な位置に1つ配置すればよいため、適用例1ないし4のいずれか一項記載の頭部装着型表示装置をより低コストで実現することができる。
【0014】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、頭部装着型表示装置および頭部装着型表示装置の制御方法、頭部装着型表示システム、これらの方法、装置またはシステムの機能を実現するためのコンピュータープログラム、そのコンピュータープログラムを記録した記録媒体等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施例における頭部装着型表示装置の外観の構成を示す説明図である。
【図2】ヘッドマウントディスプレイの構成を機能的に示すブロック図である。
【図3】画像光生成部によって画像光が射出される様子を示す説明図である。
【図4】使用者に認識される虚像の一例を示す説明図である。
【図5】基準情報(図2)の一例を示す説明図である。
【図6】基準情報を説明するための説明図である。
【図7】基準情報を説明するための他の説明図である。
【図8】受光部による赤外線RR,RLの検出値と画像表示部の移動量の関係の一例を示すグラフである。
【図9】向き判定処理の手順を示すフローチャートである。
【図10】画像表示部の向きに応じて行われる制御の一例を示す説明図である。
【図11】第2実施例におけるヘッドマウントディスプレイの外観の構成を示す説明図である。
【図12】第2実施例における基準情報(図2)の一例を示す説明図である。
【図13】第3実施例におけるヘッドマウントディスプレイの外観の構成を示す説明図である。
【図14】受光部が赤外線RMを受光する様子を示す説明図である。
【図15】変形例におけるヘッドマウントディスプレイの構成を機能的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施の形態を実施例に基づいて以下の順序で説明する。
【0017】
A.第1実施例:
(A−1)頭部装着型表示装置の構成:
図1は、本発明の一実施例における頭部装着型表示装置の外観の構成を示す説明図である。頭部装着型表示装置HMは、頭部に装着する表示装置であり、ヘッドマウントディスプレイ(Head Mounted Display、HMD)とも呼ばれる。本実施例のヘッドマウントディスプレイHMは、使用者が、虚像を視認すると同時に外景も直接視認可能な光学透過型の頭部装着型表示装置である。
【0018】
ヘッドマウントディスプレイHMは、使用者の頭部に装着された状態において使用者に虚像を視認させる画像表示部20と、画像表示部20を制御する制御部(コントローラー)10とを備えている。
【0019】
画像表示部20は、使用者の頭部に装着される装着体であり、本実施例では眼鏡形状を有している。画像表示部20は、耳掛部21と、右表示駆動部22と、左表示駆動部24と、右光学パネル26と、左光学パネル28と、右発光部61と、左発光部62とを含んでいる。耳掛部21は、右表示駆動部22および左表示駆動部24の端部から使用者の耳の上を横断するように設けられた部材であり、テンプル(つる)として機能する。右光学パネル26および左光学パネル28は、使用者が画像表示部20を装着した状態においてそれぞれ使用者の右および左の眼の前に位置するように配置されている。右表示駆動部22は、右耳用の耳掛部21と右光学パネル26との接続箇所に配置されている。また、左表示駆動部24は、左耳用の耳掛部21と左光学パネル28との接続箇所に配置されている。なお、以降では、右表示駆動部22および左表示駆動部24を総称して単に「表示駆動部」と、右光学パネル26および左光学パネル28を総称して単に「光学パネル」とも呼ぶ。
【0020】
右発光部61は、画像表示部20の本体表面であって、受光部63の側に非可視光を射出可能な位置に配置されている。具体的には、本実施例では、右発光部61は、右光学パネル26(右導光板261)を形成する筐体の表面であって、使用者の右側の眼またはこめかみまたはそれらの周辺を覆う位置(換言すれば、眼鏡形状を有する画像表示部20の右側の智部分またはその周辺位置)に配置されている。左発光部62も同様に、画像表示部20の本体表面であって、受光部63の側に非可視光を射出可能な位置に配置されている。具体的には、本実施例では、左発光部62は、左光学パネル28(左導光板262)を形成する筐体の表面であって、使用者の左側の眼またはこめかみまたはそれらの周辺を覆う位置(換言すれば、眼鏡形状を有する画像表示部20の左側の智部分またはその周辺位置)に配置されている。
【0021】
右発光部61および左発光部62は、それぞれ、波長の異なる非可視光を射出する。本実施例における右発光部61および左発光部62は、赤外線発光ダイオードにより構成され、非可視光である赤外線RRおよび赤外線RLを発光する。赤外線RRと、赤外線RLとは、波長の異なる赤外線光である。なお、右発光部61と、左発光部62とを総称して単に「発光部」とも呼ぶ。
【0022】
表示駆動部は、図示しないLCD(Liquid Crystal Display:液晶ディスプレイ)や、投写光学系等を含む。詳細は後述する。光学パネルは、図示しない導光板と、調光板とを含んでいる。導光板は、光透過性の樹脂材料等によって形成され、表示駆動部から取り込んだ画像光を使用者の眼に向けて射出させる。調光板は、薄板状の光学素子であり、前面側(使用者の眼の側とは反対の側)を覆うように配置されている。調光板は、導光板を保護し、導光板の損傷や、汚れの付着等を抑制するとともに、調光板の光透過率を調整することにより、使用者の眼に入る外光量を調整し、虚像の視認のしやすさを調整することができる。なお、調光板は省略可能である。
【0023】
画像表示部20は、さらに、右耳用の右イヤホン32および左耳用の左イヤホン34を有する。右イヤホン32および左イヤホン34は、使用者が画像表示部20を装着した際に、それぞれ右および左の耳に装着される。
【0024】
画像表示部20は、さらに、画像表示部20を制御部10に接続し、中継するための中継部40を有している。中継部40は、ケーブル状であって、制御部10に接続される本体コード48と、本体コード48が2本に分岐した右コード42と、左コード44と、ケーブル状の中継部40の中央部周辺の分岐点に設けられた中継部本体46と、受光部63とを含んでいる。右コード42は、右表示駆動部22に接続されており、左コード44は、左表示駆動部24に接続されている。画像表示部20と制御部10とは、中継部40を介して各種信号の伝送を行う。本体コード48における中継部本体46とは反対側の端部と、制御部10とのそれぞれには、互いに嵌合するコネクター(図示省略)が設けられており、本体コード48コネクターと制御部10のコネクターとの嵌合/嵌合解除により、制御部10と画像表示部20とが接続されたり切り離されたりする。右コード42と、左コード44と、本体コード48には、例えば、金属ケーブルや、光ファイバーを採用することができる。
【0025】
中継部本体46のうち、発光部61、62に向かう位置(換言すれば、中継部本体46の上面、中継部本体46が右コード42および左コード44と接続されている側の面)には、受光部63が配置されている。受光部63は、2つの発光部(右発光部61および左発光部62)から射出された波長の異なる非可視光をそれぞれ受光する。本実施例における受光部63は、赤外線フォトダイオードを用いて構成され、右発光部61および左発光部62から射出された赤外線RRと赤外線RLとをそれぞれ受光する。さらに、中継部本体46の筐体側面、換言すれば、受光部63が設けられている面と直交する面には、図示しないクリップが設けられている。このクリップは、例えば、観察者がヘッドマウントディスプレイHMを装着した状態で、観察者の衣服等に留めておくことで、中継部本体46を保持する。
【0026】
制御部10は、ヘッドマウントディスプレイHMを操作するための装置である。制御部10は、点灯部12と、タッチパッド14と、十字キー16と、電源スイッチ18とを含んでいる。点灯部12は、ヘッドマウントディスプレイHMの動作状態(例えば、電源のON/OFF等)を、その発光状態によって通知する。点灯部12としては、例えば、LED(Light Emitting Diode)を用いることができる。タッチパッド14は、タッチパッド14の操作面上での使用者の指の操作を検出して、検出内容に応じた信号を出力する。十字キー16は、上下左右方向に対応するキーへの押下操作を検出して、検出内容に応じた信号を出力する。電源スイッチ18は、スイッチのスライド操作を検出することで、ヘッドマウントディスプレイHMの電源投入状態を切り替える。
【0027】
図2は、ヘッドマウントディスプレイHMの構成を機能的に示すブロック図である。制御部10は、受光部63と、入力情報取得部110と、記憶部120と、電源130と、CPU140と、インターフェイス180と、送信部(Tx)51および52と、を備え、各部は図示しないバスにより相互に接続されている。
【0028】
受光部63は、右発光部61および左発光部62から射出された非可視光(赤外線RR、RL)をそれぞれ受光し、受光した赤外線RR、RLの輝度に応じた赤外線輝度信号を向き検知部145へ出力する。入力情報取得部110は、使用者による操作入力に応じた信号(例えば、タッチパッド14や十字キー16、電源スイッチ18に対する操作入力)を取得する機能を有する。記憶部120は、図示しないROM、RAM、DRAM、ハードディスク等を含む記憶部である。記憶部120は、基準情報CIを含んでいる。基準情報CIは、向き検知部145が画像表示部20の向きを検知するために用いる情報である。詳細は後述する。電源130は、ヘッドマウントディスプレイHMの各部に電力を供給する。電源130としては、例えば二次電池を用いることができる。
【0029】
CPU140は、予めインストールされたプログラムを実行することで、オペレーティングシステム(ОS)150としての機能を提供する。また、CPU140は、ROMやハードディスクに格納されているファームウェアやコンピュータープログラムをRAMに展開して実行することにより、向き検知部145、画像処理部160、音声処理部170、表示制御部190としても機能する。これら各部の詳細は後述する。
【0030】
向き検知部145は、右発光部61、左発光部62、受光部63の駆動を制御すると共に、受光部63からの出力信号を用いて、画像表示部20の受光部63に対する向きを検知する処理(向き判定処理)を実行する。向き判定処理の詳細は後述する。
【0031】
インターフェイス180は、制御部10に対して、コンテンツの供給元となる種々の外部機器OA(例えば、パーソナルコンピューターPCや携帯電話端末、ゲーム端末)を接続するためのインターフェイスである。インターフェイス180としては、例えば、USBインターフェイスや、マイクロUSBインターフェイス、メモリーカード用インターフェイス、無線LANインターフェイス等を備えることができる。また、コンテンツとは、画像(静止画像、動画像)や音声等からなる情報内容を意味する。
【0032】
画像処理部160は、インターフェイス180を介して入力されるコンテンツに基づき、クロック信号PCLK、垂直同期信号VSync、水平同期信号HSync、画像データDataを生成し、中継部40を介してこれらの信号を画像表示部20に供給する。具体的には、画像処理部160は、コンテンツに含まれる画像信号を取得する。取得した画像信号は、例えば動画像の場合、一般的に、1秒あたり30枚のフレーム画像から構成されているアナログ信号である。画像処理部160は、取得した画像信号から、垂直同期信号VSyncや水平同期信号HSync等の同期信号を分離する。また、画像処理部160は、分離した垂直同期信号VSyncや水平同期信号HSyncの周期に応じて、図示しないPLL回路等を利用してクロック信号PCLKを生成する。
【0033】
画像処理部160は、同期信号が分離されたアナログ画像信号を、図示しないA/D変換回路等を用いてデジタル画像信号に変換する。その後、画像処理部160は、変換後のデジタル画像信号を、対象画像の画像データData(RGBデータ)として、1フレームごとに記憶部120内のDRAMに格納する。なお、画像処理部160は、必要に応じて、画像データに対して、解像度変換処理、輝度や彩度の調整といった種々の色調補正処理、キーストーン補正処理等の画像処理を実行してもよい。
【0034】
画像処理部160は、生成したクロック信号PCLK、垂直同期信号VSync、水平同期信号HSyncと、記憶部120内のDRAMに格納された画像データDataとを、送信部51および52を介してそれぞれ送信する。なお、送信部51を介して送信される画像データDataを「右眼用画像データ」とも呼び、送信部52を介して送信される画像データDataを「左眼用画像データ」とも呼ぶ。送信部51、52は、制御部10と、画像表示部20との間におけるシリアル伝送のためのトランシーバーとして機能する。
【0035】
表示制御部190は、右表示駆動部22および左表示駆動部24を制御する制御信号を生成する。具体的には、表示制御部190は、制御信号により、右LCD制御部211による右LCD241の駆動ON/OFFや、右バックライト制御部201による右バックライト221の駆動ON/OFF、左LCD制御部212による左LCD242の駆動ON/OFFや、左バックライト制御部202による左バックライト222の駆動ON/OFF、などを個別に制御することにより、右表示駆動部22および左表示駆動部24のそれぞれによる画像光の生成および射出を制御する。例えば、表示制御部190は、右表示駆動部22および左表示駆動部24の両方に画像光を生成させたり、一方のみに画像光を生成させたり、両方共に画像光を生成させなかったりする。
【0036】
表示制御部190は、右LCD制御部211と左LCD制御部212とに対する制御信号を、送信部51および52を介してそれぞれ送信する。また、表示制御部190は、右バックライト制御部201と左バックライト制御部202とに対する制御信号を、それぞれ送信する。
【0037】
音声処理部170は、コンテンツに含まれる音声信号を取得し、取得した音声信号を増幅して、画像表示部20の右イヤホン32および左イヤホン34に中継部40を介して供給する。
【0038】
画像表示部20は、右表示駆動部22と、左表示駆動部24と、右光学パネル26としての右導光板261と、左光学パネル28としての左導光板262と、発光部としての右発光部61および左発光部62と、右イヤホン32と、左イヤホン34とを備えている。
【0039】
右表示駆動部22は、受信部(Rx)53と、光源として機能する右バックライト(BL)制御部201および右バックライト(BL)221と、表示素子として機能する右LCD制御部211および右LCD241と、右投写光学系251を含んでいる。なお、右バックライト制御部201と、右LCD制御部211と、右バックライト221と、右LCD241とを総称して「画像光生成部」とも呼ぶ。
【0040】
受信部53は、制御部10と、画像表示部20との間におけるシリアル伝送のためのレシーバーとして機能する。右バックライト制御部201は、入力された制御信号に基づいて、右バックライト221を駆動する機能を有する。右バックライト221は、例えば、LED等の発光体である。右LCD制御部211は、受信部53を介して入力されたクロック信号PCLKと、垂直同期信号VSyncと、水平同期信号HSyncと、右眼用画像データとに基づいて、右LCD241を駆動する機能を有する。右LCD241は、複数の画素をマトリクス状に配置した透過型液晶パネルである。
【0041】
図3は、画像光生成部によって画像光が射出される様子を示す説明図である。右LCD241はマトリクス状に配置された各画素位置に対応する液晶を駆動することによって、右LCD241を透過する光の透過率を変化させることにより、右バックライト221から照射される照明光ILを、画像を表す有効な画像光PLへと変調する機能を有する。なお、図3のように、本実施例ではバックライト方式を採用することとしたが、フロントライト方式や、反射方式を用いて画像光を射出する構成としてもよい。
【0042】
図2の右投写光学系251は、右LCD241から射出された画像光を並行状態の光束にするコリメートレンズによって構成される。右光学パネル26としての右導光板261は、右投写光学系251から出力された画像光を、所定の光路に沿って反射させつつ使用者の右眼に導く。なお、右投写光学系251と右導光板261とを総称して「導光部」とも呼ぶ。
【0043】
左表示駆動部24は、受信部(Rx)54と、光源として機能する左バックライト(BL)制御部202および左バックライト(BL)222と、表示素子として機能する左LCD制御部212および左LCD242と、左投写光学系252を含んでいる。なお、左バックライト制御部202と、左LCD制御部212と、左バックライト222と、左LCD242とを総称して「画像光生成部」と、左投写光学系252と、左導光板262とを総称して「導光部」とも呼ぶ。右表示駆動部22と左表示駆動部24とは対になっており、左表示駆動部24の各部は、右表示駆動部22で説明する各部と同様の構成および動作を有するため詳細な説明は省略する。
【0044】
図4は、使用者に認識される虚像の一例を示す説明図である。上述のようにして、ヘッドマウントディスプレイHMの使用者の両眼に導かれた画像光が使用者の網膜に結像することにより、使用者は虚像を視認することができる。図4に示すように、ヘッドマウントディスプレイHMの使用者の視野VR内には虚像VIが表示される。また、使用者の視野VRのうち、虚像VIが表示された部分以外については、使用者は、右光学パネル26および左光学パネル28を透過して、外景SCを見ることができる。なお、本実施例のヘッドマウントディスプレイHMでは、使用者の視野VRの内の虚像VIが表示された部分についても、虚像VIの背後に外景SCが透けて見えるようになっている。
【0045】
図5は、基準情報CI(図2)の一例を示す説明図である。基準情報CIは、向き検知部145が実行する向き判定処理において用いられる情報である。なお、基準情報CIは、予め用意され、記憶部120内に格納されている。基準情報CIは、垂直方向値と、水平方向値と、右発光部検出値と、左発光部検出値とを含んでいる。
【0046】
垂直方向値には、画像表示部20が垂直方向(鉛直方向)に対してどれだけ移動したかを数値で示す値が格納されている。同様に、水平方向値には、画像表示部20が水平方向に対してどれだけ移動したかを数値で示す値が格納されている。図5に示す基準情報CIでは、垂直方向と、水平方向値との組合せで、画像表示部20が、予め定められた基準点に対してどれだけ移動したかを示す「移動量」を表している。
【0047】
右発光部検出値には、垂直方向値と水平方向値により定まる移動量に対応付けられて、当該移動量の場合に受光部63によって検出される赤外線RR(右発光部61によって発光される非可視光)の輝度を示す値が格納されている。同様に、左発光部検出値には、垂直方向値と水平方向値により定まる移動量に対応付けられて、当該移動量の場合に受光部63によって検出される赤外線RL(左発光部62によって発光される非可視光)の輝度を示す値が格納されている。
【0048】
図6は、基準情報CIを説明するための説明図である。図6では、画像表示部20が予め定められた基準点BPを向いている場合を示している。図のように、本実施例では、予め定められた基準点BPを、画像表示部20を装着した使用者の頭がまっすぐ前を向いている状態における、画像表示部20の向きとしている。また、本実施例では、受光部63が設けられた中継部本体46は、使用者の身体の中央付近に保持されるものとしている。本実施例では、上述のような基準点BPに対する画像表示部20の移動量を、以下の規則に則って表わす。画像表示部20の水平方向HLの移動量については、画像表示部20が基準点BPよりも右側に移動した場合を−方向、画像表示部20が基準点BPよりも左側に移動した場合を+方向とし、移動の大きさを数値で表わす。同様に、画像表示部20の垂直方向PLの移動量については、画像表示部20が基準点BPよりも上側に移動した場合を−方向、下側に移動した場合を+方向とし、移動の大きさを数値で表わす。
【0049】
図5のレコードR01は、画像表示部20が図6に示した状態である場合の移動量と受光部63によって検出される輝度との関係を表している。具体的には、レコードR01は、画像表示部20が基準点BPを向いている、すなわち、画像表示部20の水平方向HLの移動量と、垂直方向PLの移動量が共に0である場合に、受光部63による赤外線RRの検出値と、赤外線RLの検出値は、それぞれ同じ値(128)であることを示している。これは、図6のように、画像表示部20が基準点BPを向いている場合、右発光部61から照射される赤外線RRと、左発光部62から照射される赤外線RLとは、均等に受光部63に入光するためである。
【0050】
図7は、基準情報CIを説明するための他の説明図である。図7では、画像表示部20が予め定められた基準点BPからずれている場合を示している。図5のレコードR02は、画像表示部20が図7に示した状態である場合の移動量と受光部63によって検出される輝度との関係を表している。具体的には、レコードR02は、画像表示部20が基準点BPよりも水平方向HLに対して右側(−方向)を向いている、すなわち、画像表示部20の水平方向HLの移動量が−10であり、垂直方向PLの移動量が共に0である場合に、受光部63による赤外線RRの検出値は112、赤外線RLの検出値は144であることを示している。これは、図7のように、画像表示部20が基準点BPよりも水平方向HLに対して右側(−方向)を向いている場合、右発光部61から照射される赤外線RRよりも、左発光部62から照射される赤外線RLの方が受光部63に近くなるため、赤外線RLが強く入光するためである。
【0051】
図8は、受光部63による赤外線RR、RLの検出値と、画像表示部20の移動量の関係の一例を示すグラフである。図5に示した基準情報CIでは、図8のようなグラフに基づいて、水平方向HL(+方向、−方向)と、垂直方向PL(+方向、−方向)の種々の組合せ(例えば、水平方向HLが+5、垂直方向PLが+10)に対して、受光部63によって検出される赤外線RRおよび赤外線RLの輝度を示す値が予め格納されている。このようにすれば、基準情報CIには、画像表示部20の基準点BPに対する様々な向きの移動量と、その時の受光部63によって検出される赤外線RR、RLの輝度との情報を保持しておくことができる。
【0052】
(A−2)向き判定処理:
図9は、向き判定処理の手順を示すフローチャートである。向き判定処理は、向き検知部145によって定期的に実行されてもよいし、また、向き検知部145が受光部63から取得した赤外線輝度信号(受光部63が検出した赤外線RR、RLの輝度を表わす信号)に変更が生じた際に実行されてもよい。
【0053】
まず、向き検知部145は、受光部63の検出値を取得する(ステップS102)。具体的には、向き検知部145は、受光部63から出力される赤外線輝度信号から、赤外線RRの輝度と、赤外線RLの輝度とを取得する。次に、向き検知部145は、基準情報CI(図5)を参照する(ステップS104)。向き検知部145は、参照した基準情報CIに基づいて、垂直方向値と水平方向値を求める(ステップS106)。具体的には、向き検知部145は、ステップS102で取得した赤外線RRの輝度を示す値と、赤外線RLの輝度を示す値とをキーとして、基準情報CIの右発光部検出値と、左発光部検出値とを検索し、一致するレコードを求める。向き検知部145は、一致するレコードの垂直方向値と、水平方向値とを、画像表示部20の移動量(すなわち、画像表示部20の向き)であるものと決定し、処理を終了する。なお、基準情報CIから一致するレコードを検索する際、相互の値が完全一致するレコードを求めるのではなく、相互の値が最も近いレコードを求めることとしてもよい。
【0054】
図10は、画像表示部20の向きに応じて行われる制御の一例を示す説明図である。制御部10の画像処理部160は、向き判定処理で求められた画像表示部20の移動量(すなわち、画像表示部20の向き)を取得する。画像処理部160は、取得した画像表示部20の移動量に応じて、コンテンツ中の画像PTから生成される画像データDataから、その一部の領域をトリミングするように垂直同期信号VSyncと水平同期信号HSyncとを調整する。具体的には、例えば、垂直同期信号VSyncと水平同期信号HSyncとに対して、ダミーラインデータとダミードットデータを挿入することで、垂直同期信号VSyncと水平同期信号HSyncとを調整することができる。この結果、図4に示す使用者の視野VR内には、画像PTのうちの一部の領域が虚像VIとして表示される。
【0055】
図10(A)は、画像表示部20の移動量が、水平方向値、垂直方向値共に0である場合に、画像処理部160によってトリミングされる領域の例を示している。このように、画像表示部20が基準点BPを向いている場合は、コンテンツ中の画像PTの中央部分の領域が虚像VIとして表示される。図10(B)は、画像表示部20の移動量が、水平方向値が0、垂直方向値が−25である場合に、画像処理部160によってトリミングされる領域の例を示している。このように、画像表示部20が基準点BPよりも上を向いている場合は、コンテンツ中の画像PTの中央上部分の領域が虚像VIとして表示される。図10(C)は、画像表示部20の移動量が、水平方向値が+25、垂直方向値が0である場合に、画像処理部160によってトリミングされる領域の例を示している。このように、画像表示部20が基準点BPよりも左を向いている場合は、コンテンツ中の画像PTの左中央部分の領域が虚像VIとして表示される。
【0056】
なお、制御部10の画像処理部160は、垂直同期信号VSyncと水平同期信号HSyncの調整に代えて、画像PTの一部を予めトリミングした画像データDataを生成することとしてもよい。
【0057】
このようにすれば、制御部10の画像処理部160は、向き検知部145によって検知された画像表示部20の移動量(すなわち、画像表示部20の向き)に応じて、画像データDataから、その一部の領域をトリミングして画像を生成するように、画像表示部20(具体的には、右LCD241、左LCD242)を制御する。このため、本実施例におけるヘッドマウントディスプレイHMによれば、画像表示部20の向き、すなわち、使用者の頭の向きに応じて、使用者に視認させる虚像VIを変化させることができる。この結果、使用者は臨場感溢れる画像表示を楽しむことができる。
【0058】
なお、上記では、画像表示部20が右発光部61と、左発光部62とを備え、中継部40が受光部63を備えるものとして記載した。しかし、これらの配置はあくまで一例であり、例えば、逆に配置してもよい。具体的には、画像表示部20の右発光部61に代えて右受光部を備え、左発光部62に代えて左受光部を備え、中継部40の受光部63に代えて発光部を備えるものとしても良い。このような構成としても、向き検知部145は、右受光部と、左受光部とが受光した非可視光の輝度によって、画像表示部20の移動量を検知することができる。なお、右受光部および左受光部の構成は受光部63と同様、発光部の構成は右発光部61と同様である。
【0059】
以上のように、第1実施例によれば、画像表示部20と中継部40のうちのいずれか一方には非可視光(赤外線RR、RL)を射出可能な発光部(右発光部61、左発光部62)を有し、他方には射出された非可視光を受光可能な受光部(受光部63)を有し、向き検知部145は、受光部からの出力信号(赤外線輝度信号)を用いて画像表示部20の受光部に対する向きを検知するため、頭部装着型表示装置(ヘッドマウントディスプレイHM)は、発光部と受光部のみの簡単な構成で画像表示部20の向き(すなわち、使用者の頭の向き)を検知することができる。上記実施例では、発光部は赤外線発光ダイオードにより構成され、受光部は赤外線フォトダイオードを用いて構成されているため、角速度センサー等を搭載する場合に比べて、装置の小型化、軽量化を図ることができる。これらの結果、使用者の頭の向きを検知可能であり、かつ、頭部装着型表示装置の重量の増加や大型化を抑制することで装着感の良い頭部装着型表示装置を提供することができる。
【0060】
さらに、第1実施例では、発光部(右発光部61、左発光部62)として赤外線を射出する赤外線発光部を用い、受光部(受光部63)として射出された赤外線を受光する赤外線受光部を用いるため、頭部装着型表示装置を低コストで実現することができる。
【0061】
さらに、第1実施例では、受光部63は、画像表示部20の本体表面であって、受光部63の側に非可視光を射出可能な位置にそれぞれ配置された2つの発光部(右発光部61、左発光部62)から射出された波長の異なる非可視光(赤外線RR、RL)をそれぞれ受光することができるため、向き検知部145は、受光部63からの出力信号を用いて、画像表示部20(すなわち、使用者の頭)の上下左右方向の向きを検知することが可能となる。
【0062】
B.第2実施例:
本発明の第2実施例では、頭部装着型表示装置が備える発光部と受光部の個数が異なる構成について説明する。以下では、第1実施例と異なる構成および動作を有する部分についてのみ説明する。なお、図中において第1実施例と同様の構成部分については先に説明した第1実施例と同様の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0063】
(B−1)頭部装着型表示装置の構成:
図11は、第2実施例におけるヘッドマウントディスプレイHMaの外観の構成を示す説明図である。図1および図6に示した第1実施例との違いは、画像表示部20が左発光部62(なお、右発光部61でもよい)を備えない点と、記憶部120内部に格納されている基準情報CIa(図2)の構成のみであり、他の構成や動作は第1実施例と同じである。
【0064】
図12は、第2実施例における基準情報CIa(図2)の一例を示す説明図である。図5に示した第1実施例との違いは、垂直方向値と、左発光部検出値を備えない点のみである。図12のように、第2実施例の基準情報CIaでは、垂直方向値によって、画像表示部20が、予め定められた基準点BPに対して水平方向にどれだけ移動したかを示す移動量を表している。
【0065】
(B−2)向き判定処理:
第2実施例における待ち受け処理の手順は、図9で説明した第1実施例と同様である。
【0066】
以上のように、第2実施例によれば、発光部は、画像表示部20の本体表面であって、受光部63の側に非可視光を射出可能な位置に1つ配置すればよい。発光部が1つしか必要ないため、本実施例の頭部装着型表示装置(ヘッドマウントディスプレイHMa)では、垂直方向PLの移動量が検知できない。その一方で、本実施例によれば、使用者の頭の向きを検知可能な頭部装着型表示装置を、より低コストで実現することができる。
【0067】
C.第3実施例:
本発明の第3実施例では、頭部装着型表示装置が備える発光部と受光部の構成が異なる構成について説明する。以下では、第1実施例と異なる構成および動作を有する部分についてのみ説明する。なお、図中において第1実施例と同様の構成部分については先に説明した第1実施例と同様の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0068】
(C−1)頭部装着型表示装置の構成:
図13は、第3実施例におけるヘッドマウントディスプレイHMbの外観の構成を示す説明図である。図1および図6に示した第1実施例との違いは、画像表示部20が右発光部61と左発光部62に代えて発光部64を備える点と、中継部40が受光部63に代えて受光部65を備える点と、記憶部120内部に格納されている基準情報CIb(図2)の構成のみであり、他の構成や同際は第1実施例と同じである。
【0069】
発光部64は、画像表示部20の本体表面であって、受光部65の側に非可視光を射出可能な位置には位置されている。具体的には、本実施例では、発光部64は、眼鏡形状を有する画像表示部20のブリッジ部分の下面に配置されている。発光部64は指向性を有する非可視光を射出する。本実施例における発光部64は、赤外線発光ダイオードにより構成され、非可視光である赤外線RMを発光する。受光部65は、中継部本体46のうち、発光部64に向かう位置(換言すれば、中継部本体46の上面)に配置されている。受光部65は、発光部64から射出された指向性を有する非可視光を面で受光する。
【0070】
図14は、受光部65が赤外線RMを受光する様子を示す説明図である。第3実施例における基準情報CIbでは、受光部65の受光面における赤外線RMの水平方向HLの移動により、水平方向値が求められる。また、受光部65の受光面における赤外線RMの検知面積により、垂直方向値が求められる。具体的には、赤外線RMの検知面積が大きければ、光源(発光部64)が遠くにある、すなわち、画像表示部20が受光部65から遠ざかる方向に移動していることになる。同様に、赤外線RMの検知面積が小さければ、光源(発光部64)が近くにある、すなわち、画像表示部20が受光部65に近づく方向に移動していることになる。
【0071】
図14(A)は、画像表示部20の移動量が、水平方向値、垂直方向値共に0である場合において、受光部65が受光する赤外線RMを示している。図14(B)は、画像表示部20の移動量が、水平方向値が−15、垂直方向値が0である場合において、受光部65が受光する赤外線RMを示している。図14(C)は、画像表示部20の移動量が、水平方向値が0、垂直方向値が+20である場合において、受光部65が受光する赤外線RMを示している。
【0072】
(C−2)向き判定処理:
第3実施例における待ち受け処理の手順は、図9で説明した第1実施例と同様である。
【0073】
以上のように、第3実施例によれば、受光部65は、発光部64から射出された指向性を有する非可視光(赤外線RM)を面で受光することが可能であるため、1つの発光部64を備える構成においても、第1実施例と同様に、画像表示部20(すなわち、使用者の頭)の上下左右方向の向きを検知することが可能となる。
【0074】
D.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の構成をとることができる。例えば、ソフトウェアによって実現した機能は、ハードウェアによって実現するものとしてもよい。また、上記実施例で説明した機能の一部は他の装置(例えば、ネットワーク経由で接続されるサーバー等)によって実現されるものとしても良い。そのほか、以下のような変形が可能である。
【0075】
D1.変形例1:
上記実施例では、ヘッドマウントディスプレイの構成について例示した。しかし、ヘッドマウントディスプレイの構成は、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に定めることが可能であり、例えば、各構成部の追加・削除・変換等を行うことができる。
【0076】
上記実施例では、説明の便宜上、制御部が送信部(51、52)を備え、画像表示部が受信部(53、54)を備えるものとした。しかし、上記実施例の送信部(51、52)および受信部(53、54)は、いずれも、双方向通信が可能な機能を備えており、送受信部として機能することができる。
【0077】
例えば、図15に示すように、接続部を省略し、制御部と、画像表示部とが無線通信可能な構成としてもよい。具体的には、制御部にさらに、無線通信部(81)を備えると共に、画像表示部にさらに、無線通信部(82)と、電源(280)とを備える構成とする。この場合、無線通信部81が上記実施例における送信部(51、52)として機能し、無線通信部82が上記実施例における受信部(53、54)として機能する。
【0078】
例えば、図1に示した構成において、右コードと、左コードとの分岐を省略してもよい。その場合、中継部(40)は、1本のコードと、当該1本のコードの中央部周辺に設けられた中継部本体と、中継部本体に設けられた受光部と、から構成される。
【0079】
例えば、図1に示した制御部、画像表示部の構成は任意に変更することができる。具体的には、例えば、制御部からタッチパネルを省略し、十字キーのみで操作する構成としてもよい。また、制御部に操作用スティック等の他の操作用インターフェイスを備えても良い。また、制御部にはキーボードやマウス等のデバイスを接続可能な構成として、キーボードやマウスから入力を受け付けるものとしてもよい。また、制御部にWi−Fi(wireless fidelity)等を用いた通信部を設けてもよい。
【0080】
例えば、図1に示した制御部は、有線の信号伝送路を介して画像表示部と接続されているものとした。しかし、制御部と、画像表示部とは、無線LANや赤外線通信やBluetooth(登録商標)等の無線の信号伝送路を介した接続により接続されていてもよい。
【0081】
例えば、ヘッドマウントディスプレイは、両眼タイプの透過型ヘッドマウントディスプレイであるものとしたが、使用者がヘッドマウントディスプレイを装着した状態において外景が遮断される非透過型ヘッドマウントディスプレイとして構成してもよい。また、単眼タイプのヘッドマウントディスプレイとしてもよい。
【0082】
例えば、画像光生成部は、左右のバックライト制御部と、左右のLCD制御部と、左右のバックライトと、左右のLCDとを用いて構成されるものとしたが、これらに代えて、有機EL(有機エレクトロルミネッセンス、Organic Electro-Luminescence)と、有機EL制御部とを用いても良い。有機ELの場合、温度上昇に伴う劣化がLCDよりも激しいため、本発明が特に有効である。なお、有機ELおよび有機EL制御部は請求項における「画像光生成部」に相当する。
【0083】
例えば、画像処理部、表示制御部、音声処理部等の機能部は、CPUがROMやハードディスクに格納されているコンピュータープログラムをRAMに展開して実行することにより実現されるものとして記載した。しかし、これら機能部は、当該機能を実現するために設計されたASIC(Application Specific Integrated Circuit:特定用途向け集積回路)を用いて構成されてもよい。
【0084】
例えば、上記実施例では、画像表示部を眼鏡のように装着するヘッドマウントディスプレイであるとしているが、画像表示部が通常の平面型ディスプレイ装置(液晶ディスプレイ装置、プラズマディスプレイ装置、有機ELディスプレイ装置等)であるとしてもよい。この場合にも、制御部と画像表示部との間の接続は、有線の信号伝送路を介した接続であってもよいし、無線の信号伝送路を介した接続であってもよい。このようにすれば、制御部を、通常の平面型ディスプレイ装置のリモコンとして利用することができる。
【0085】
また、画像表示部として、眼鏡のように装着する画像表示部に代えて、例えば帽子のように装着する画像表示部といった他の形状の画像表示部を採用してもよい。また、イヤホンは耳掛け型やヘッドバンド型を採用してもよく、省略しても良い。
【0086】
例えば、上記実施例では、電源として二次電池を用いることしたが、電源としては二次電池に限らず、種々の電池を使用することができる。例えば、一次電池や、燃料電池、太陽電池、熱電池等を使用してもよい。
【0087】
D2.変形例2:
上記実施例において、画像処理部は、同じ画像データを右眼用画像データおよび左眼用画像データとして出力することとした。しかし、画像処理部は、右眼用画像データと、左眼用画像データとを、異なる画像データにすることで、使用者に3Dの虚像を視認させることが可能な構成としてもよい。
【0088】
また、向き検知部は、右眼用画像データと左眼用画像データが同じ画像データである場合(2Dモードと呼ぶ)と、右眼用画像データと左眼用画像データが異なる画像データである場合(3Dモードと呼ぶ)とを切り替え可能な構成において、3Dモードが選択された際に、向き判定処理(図9)を実行してもよい。
【0089】
D3.変形例3:
上記実施例では、画像表示部の向きを検知するための発光部と、受光部の配置や構成の一例を示した。しかし、上記実施例における発光部と受光部の配置や構成はあくまで一例であり、種々の変更が可能である。
【0090】
例えば、上記実施例では、画像表示部が発光部を備え、中継部が受光部を備えるものとした。しかし、これらの配置は逆でもよい。すなわち、画像表示部が受光部を備え、中継部が発光部を備える構成としてもよい。
【0091】
例えば、発光部から射出される非可視光を予め定められた特定の波長とすることで、画像表示部の認証を行ってもよい。
【0092】
D4.変形例4:
上記実施例では、画像表示部の向きに応じて行われる制御の一例として、画像処理部が、検知された画像表示部の移動量(すなわち、画像表示部の向き)に応じて、画像データDataからその一部の領域をトリミングして画像を生成するよう、画像表示部を制御する例を挙げた。しかし、上記はあくまで一例であり、向き検知部が検知した画像表示部の向きは、種々の制御に用いることができる。
【0093】
例えば、制御部は、向き検知部が検知した画像表示部の向き(すなわち、使用者の頭の向き)の履歴を取得した上で、この履歴を用いて、画像表示部をモーションコントローラーのように使用することも可能である。
【符号の説明】
【0094】
10…制御部(コントローラー)
12…点灯部
14…タッチパッド
16…十字キー
18…電源スイッチ
20…画像表示部
21…耳掛部
22…右表示駆動部
24…左表示駆動部
26…右光学パネル
28…左光学パネル
32…右イヤホン
34…左イヤホン
40…中継部
42…右コード
44…左コード
46…中継部本体
48…本体コード
51…送信部
52…送信部
53…受信部
54…受信部
61…右発光部(発光部)
62…左発光部(発光部)
63…受光部
64…発光部
65…受光部
81…無線通信部
82…無線通信部
110…入力情報取得部
120…記憶部
130…電源
140…CPU
145…向き検知部
160…画像処理部
170…音声処理部
180…インターフェイス
190…表示制御部
201…右バックライト制御部(画像光生成部)
202…左バックライト制御部(画像光生成部)
211…右LCD制御部(画像光生成部)
212…左LCD制御部(画像光生成部)
221…右バックライト(画像光生成部)
222…左バックライト(画像光生成部)
241…右LCD(画像光生成部)
242…左LCD(画像光生成部)
251…右投写光学系(導光部)
252…左投写光学系(導光部)
261…右導光板(導光部)
262…左導光板(導光部)
VSync…垂直同期信号
HSync…水平同期信号
Data…画像データ
OA…外部機器
PC…パーソナルコンピューター
SC…外景
VI…虚像
HM、HMa、HMb…ヘッドマウントディスプレイ(頭部装着型表示装置)
VR…視野
RR…赤外線
RL…赤外線
CI…基準情報
HL…水平方向
PL…垂直方向
BP…基準点
PL…画像光
IL…照明光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部装着型表示装置であって、
画像データを用いて画像を表す画像光を生成し、射出させる画像光生成部と、射出された前記画像光を使用者の眼に導く導光部と、を有し、使用者に虚像を視認させるための画像表示部と、
前記画像表示部に前記画像データを送信し、前記画像表示部による画像表示を制御する制御部と、
前記画像表示部と、前記制御部を中継する中継部と、
前記画像表示部と前記中継部のうちのいずれか一方に配置された非可視光を射出可能な発光部と、
他方に配置された射出された前記非可視光を受光する受光部と、
前記受光部からの出力信号を用いて前記画像表示部の前記受光部に対する向きを検知する向き検知部と、
を備える、頭部装着型表示装置。
【請求項2】
請求項1記載の頭部装着型表示装置であって、
前記向き検知部は、
前記受光部からの出力信号が示す前記非可視光の輝度を用いて、予め定められた基準点に対する、前記画像表示部の鉛直方向と水平方向との少なくともいずれか一方の移動量を求めることによって、前記画像表示部の向きを検知する、頭部装着型表示装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の頭部装着型表示装置であって、
前記制御部は、さらに、
検知された前記画像表示部の向きに応じて、前記画像データから一部をトリミングして前記画像を生成するように前記画像表示部を制御する、頭部装着型表示装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一項記載の頭部装着型表示装置であって、
前記発光部は、赤外線を射出する赤外線発光部であり、
前記受光部は、射出された前記赤外線を受光する赤外線受光部である、頭部装着型表示装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項記載の頭部装着型表示装置であって、
前記中継部はケーブル状であり、
前記発光部は、波長の異なる前記非可視光を射出可能な2つの発光部を含み、前記2つの発光部は、前記画像表示部の本体表面であって、前記受光部の側に前記非可視光を射出可能な位置にそれぞれ配置され、
前記受光部は、射出された波長の異なる前記非可視光をそれぞれ受光可能であり、前記受光部は、ケーブル状である前記中継部の中央部またはその周辺であって、前記発光部に向かう位置に配置される、頭部装着型表示装置。
【請求項6】
請求項1ないし4のいずれか一項記載の頭部装着型表示装置であって、
前記中継部はケーブル状であり、
前記発光部は、前記画像表示部の本体表面であって、前記受光部の側に前記非可視光を射出可能な位置に配置され、
前記受光部は、ケーブル状である前記中継部の中央部またはその周辺であって、前記発光部に向かう位置に配置される、頭部装着型表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−203125(P2012−203125A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66376(P2011−66376)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】