説明

顕微鏡システム

【課題】本来取り外されるべきではないカセットがカセット格納部から誤って取り出されてしまうことをより確実に防止する。
【解決手段】複数のスライドSを収容可能なカセット6を複数格納可能なカセット格納部7と、該カセット格納部7のいずれかのカセット6からスライドSを取り出してその画像を取得する画像取得部12,13と、カセット格納部7に設けられ、該カセット格納部7に格納されたカセット6の取り出しを該カセット6毎に制限するロック機構23と、カセット格納部7に格納されているカセット6の状態を判別し、判別された該カセット6の状態に基づいてロック機構23を制御する制御部3とを備える顕微鏡システム1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顕微鏡システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、カセット格納部に、複数のスライドを収容可能なカセットを複数格納しておき、いずれかのカセット内からスライドを順次取り出してその画像を取得する顕微鏡システムが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
この顕微鏡システムにおいては、カセット格納部に設けた扉にインターロックをかけることにより、観察途中にカセット格納部の扉を開くことができないようにして、カセットの取り出しを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−233094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、カセット格納部内の全てのカセットに収容されているスライドについての画像取得が終了しない場合であっても、いずれかのカセットを交換したい場合がある。例えば、観察の優先順位のより高いスライドを収容したカセットが存在する場合等に、カセット単位で交換することが望まれる。
【0005】
このような場合には、インターロックを解除してカセット格納部の扉を開放することが必要となるが、カセットを見ただけでは、観察前の状態なのか、観察途中なのか、観察が終了しているのかを判別できないため、特許文献1の顕微鏡システムでは、観察途中のカセット等、本来取り外されるべきではないカセットが誤ってカセット格納部から取り出されてしまう不都合がある。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、本来取り外されるべきではないカセットがカセット格納部から誤って取り出されてしまうことをより確実に防止することができる顕微鏡システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、複数のスライドを収容可能なカセットを複数格納可能なカセット格納部と、該カセット格納部のいずれかの前記カセットから前記スライドを取り出してその画像を取得する画像取得部と、前記カセット格納部に設けられ、該カセット格納部に格納された前記カセットの取り出しを該カセット毎に制限するロック機構と、前記カセット格納部に格納されている前記カセットの状態を判別し、判別された該カセットの状態に基づいて前記ロック機構を制御する制御部とを備える顕微鏡システムを提供する。
【0008】
本発明によれば、カセット格納部に、複数のスライドを収容したカセットを複数格納しておくことにより、画像取得部がいずれかのカセットからスライドを取り出してその画像を取得するので、複数のスライドについての画像取得が自動的に行われていく。この場合において、ロック機構がカセット格納部からのカセットの取り出しをカセット毎に制限しており、ロック機構は制御部によって制御されている。
【0009】
したがって、何らかの理由によりカセット格納部内のカセットを交換する必要性が発生したときに、ユーザがカセットの取り出し作業を行っても、ロック機構によってカセットの取り出しが制限され、取り外すことが好ましくないカセットが誤ってカセット格納部から取り出されてしまう不都合の発生を未然に防止することができる。また、制御部はカセットの状態を判別してロック機構を制御しているので、取り外し可能な状態のカセットについてはロック機構による取り出し制限を解除することができる。
【0010】
上記発明においては、収容されている前記スライドの画像の前記画像取得部による取得状態を検出する画像取得状態検出部を備え、前記制御部が、前記画像取得状態検出部により、収容されている前記スライドの内、一部のスライドのみの画像が前記画像取得部により取得されていることが検出された前記カセットについて、前記カセット格納部からの取り出しを制限するよう前記ロック機構を制御してもよい。
【0011】
このようにすることで、何らかの理由によりカセット格納部内のカセットを交換する必要性が発生したときに、ユーザがカセットの取り出し作業を行っても、画像取得状態検出部により画像取得の途中で画像取得が完了していないことが検出されたカセットについては、ロック機構によって取り出しが制限される。これにより、画像取得途中のカセットが誤ってカセット格納部から取り出されてしまう不都合の発生を未然に防止することができる。また、制御部はカセットの状態を判別してロック機構を制御しているので、画像取得がまだ行われていないカセットや全てのスライドについての画像取得が完了しているカセットについてはロック機構による取り出し制限を解除することができる。
【0012】
また、上記発明においては、前記カセットの取り外し優先順位を記憶する記憶部を備え、前記制御部が、前記記憶部に記憶されている取り外し優先順位を判別し、判別された取り外し優先順位の最も高い前記カセットの前記ロック機構による制限を解除してもよい。
このようにすることで、何らかの理由によりカセット格納部内のカセットを交換する必要性が発生したときに、ユーザがカセットの取り出し作業を行っても、記憶部に記憶されている取り外しの優先順位が低いカセットについてはロック機構によって取り出しが制限される。これにより、取り外し優先順位の低いカセットが誤ってカセット格納部から取り出されてしまう不都合の発生を未然に防止することができる。
【0013】
また、上記発明においては、前記カセットが、複数の前記スライドを収容可能な収容部と、該収容部に対して取り外し可能に取り付けられ、前記収容部からの前記スライドの取り出しを制限するカセットカバーとを備え、前記カセット格納部に、格納されているカセットの収容部への前記カセットカバーの装着の有無を検出するカバー検出部が設けられ、前記制御部が、前記カバー検出部によりカバーが装着されていないことが検出された前記カセットの前記カセット格納部からの取り外しを制限するよう前記ロック機構を制御してもよい。
【0014】
このようにすることで、取り外しに際してカセットカバーが装着されていることがカバー検出部により検出された場合にのみロック機構の解除を可能とすることができる。これにより、カセットカバーが取り付けられていない状態でカセットが取り出されることにより、スライドがカセットから脱落してしまう不都合の発生を未然に防止することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、本来取り外されるべきではないカセットがカセット格納部から誤って取り出されてしまうことをより確実に防止することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る顕微鏡システムを示すブロック図である。
【図2】図1の顕微鏡システムに用いられるカセットのカセット本体を示す斜視図である。
【図3】図2のカセット本体にカセットカバーを取り付けた状態のカセットを示す斜視図である。
【図4】図1の顕微鏡システムに備えられるカセットロック機構を説明する部分的な拡大図である。
【図5】図1の顕微鏡システムにおいてマッピングにより検出されたカセット内のスライドの有無を示す表示の一例を示す図である。
【図6】図1の顕微鏡システムを動作させる際の最初の表示画面の一例を示す図である。
【図7】図1の顕微鏡システムに2つのカセットが挿入された状態での表示画面の一例を示す図である。
【図8】図1の顕微鏡システムによる撮影条件を入力する表示画面の一例を示す図である。
【図9】図1の顕微鏡システムにより取得されたマクロ画像を表示する表示画面の一例を示す図である。
【図10】図1の顕微鏡システムにより取得されたミクロ画像に画像取得領域を重ねて表示した例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態に係る顕微鏡システム1について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る顕微鏡システム1は、図1に示されるように、試料の画像取得を行う顕微鏡本体2と、該顕微鏡本体2における画像取得の制御および画像処理等を行う制御部3と、該制御部3に対する入力を行う入力部4と、制御部3によって処理された画像等を表示する表示部5とを備えている。
【0018】
顕微鏡本体2は、試料を搭載した複数のスライドSを収容可能なカセット6を複数格納可能なカセット格納部7と、該カセット格納部7に格納されたいずれかのカセット6からスライドSを取り出して搬送する試料搬送部8と、搬送されたスライドSを搭載するステージ9と、試料に対して照射する照明光を発生する2つの光源10,11と、マクロ画像用光源10から照明光を照射して試料のマクロ画像を取得するマクロ画像取得部(画像取得部)12と、ミクロ画像用光源11から照明光を照射して試料のミクロ画像を取得するミクロ画像取得部(画像取得部)13と、取得されたミクロ画像に対して必要な補正を行う画像補正部14と、これらを制御する駆動制御部15とを備えている。
【0019】
カセット6は、図2および図3に示されるように、一方向に開口する直方体容器状のカセット本体(収容部)16と、該カセット本体16の開口を閉鎖するように、矢印Aの方向(カセット本体16の長手方向)にスライドして取り付けられるカセットカバー17とを備えている。カセット本体16には、その長手方向に沿って、複数のスライドSを平行間隔をあけて収容するようにスライドSの幅方向の両縁部を収容する複数の平行な溝16aが形成されている。また、カセット本体16の長手方向の一端には、カセット6を操作するためのハンドル18が設けられている。また、カセット本体16の長手方向の他端には、ロック穴19aが形成されたタブ19が設けられている。
【0020】
カセットカバー17は、操作者によりカセット本体16に着脱可能であり、カセット6の搬送時にはカセット本体16に装着することでカセット本体16の開口を閉塞してスライドSの脱落を防止することができるようになっている。また、カセット6がカセット格納部7に格納された後には、後述する試料搬送部8によるスライドSの取り出しを許容するために、操作者がカセットカバー17をカセット本体16に対してスライドさせて取り外すようになっている。
【0021】
カセット格納部7は、複数のカセット6を収容する複数のカセット台20a,20b,20cを備えている。図1に示す例では3つのカセット台20a,20b,20cのそれぞれに1つずつカセット6が、カセット本体16の長手方向と水平方向とが一致する状態で収容されている。カセット格納部7には、該カセット格納部7を開閉するローダカバー21が設けられている。ローダカバー21は操作者によるカセット6の格納時および取り出し時に開閉されるもので、顕微鏡本体2の作動中に開放されることを防止するために駆動制御部15により制御されるカバーロック機構22を備えている。
【0022】
また、カセット格納部7には、各カセット台20a,20b,20cに収容されたカセット6を、その位置にロックして取り外しを防止するカセットロック機構23が、各カセット台20a,20b,20cに設けられている。
カセットロック機構(ロック機構)23は、図4(a)および図4(b)に示されるように、カセット6に設けられたタブ19のロック穴19aに挿脱可能なロックピン23aと、該ロックピン23aを駆動するプランジャ機構23bとを備えている。
【0023】
図4(a)に示されるようにして、カセット台20a,20b,20cにカセット6を挿入した状態で、後述する制御部3からの指令信号によって、駆動制御部15がプランジャ機構23bを作動させることにより、図4(b)に示されるように、ロックピン23aをカセット6のタブ19のロック穴19aに挿入するようになっている。これにより、カセット6をカセット台20a,20b,20cにロックしてカセット台20a,20b,20cからの取り出しを防止することができる。カセット6をカセット台20a,20b,20cから取り出すときには、図4(a)に示されるように、ロックピン23aをロック穴19aから抜き出すことでロック状態を解除するようになっている。
【0024】
また、カセット格納部7は、カセット台20a,20b,20c毎に、各カセット台20a,20b,20cに収容されたカセット6内のスライドSを幅方向に挟む位置に対向して配置されるとともに、スライドSの配列方向に移動可能に設けられた図示しないスライドセンサを備えている。スライドセンサは、発光部と受光部とを備え、発光部から発せられた光が受光部によって受光される位置ではスライドSが存在せず、受光部によって受光されない位置にスライドSが存在することを検出するようになっている。
さらに、カセット格納部7には、各カセット台20a,20b,20cに、カセットカバー17の有無を検出するカバーセンサ(カバー検出部)24が設けられている。
【0025】
試料搬送部8は、カセット格納部7に格納されているいずれかのカセット6の中からスライドSを取り出してステージ9上に移動するようになっている。
ステージ9は、試料搬送部8により搬送されてきた試料を載せたスライドSを搭載するとともに、該スライドS上の試料をマクロ画像取得部12によるマクロ画像の取得位置とミクロ画像取得部13によるミクロ画像の取得位置との間で移動させることができるようになっている。
【0026】
マクロ画像取得部12は、スライドS上に搭載されている試料の全体像に相当するマクロ画像を低解像度で取得するようになっている。
ミクロ画像取得部13は、スライドS上に搭載されている試料の部分的な拡大画像であるミクロ画像を高解像度で取得するようになっている。
画像補正部14は、ミクロ画像をシェーディング補正、ベイヤー変換およびカラーマトリックス変換等の処理を行う。
【0027】
制御部3は、マクロ画像取得部12により取得されたマクロ画像の画像データおよびミクロ画像取得部13により取得され画像補正部14により補正されたミクロ画像の画像データを処理するデータ処理部25と、駆動制御部15を制御して画像を取得させる画像取得制御部(画像取得状態検出部)26と、データ処理部25により処理された画像データや画像取得制御部26において用いられる制御情報等を必要に応じて記憶するデータ記憶部(記憶部)27とを備えている。
【0028】
また、制御部3は、画像取得制御26によって画像の取得状態を検出することで、カセット6の状態を判別し、その結果に基づいてカセットロック機構23を制御するようになっている。
さらに、制御部3は、カバーセンサ24によってカセットカバー17の有無を検出することで、カセット6の状態を判別し、その結果に基づいてカセットロック機構23を制御するようになっている。
制御部3は、例えば、CPU(中央演算処理装置)および必要なメモリ、ハードディスク等の記憶装置を含むコンピュータにより構成されている。
【0029】
入力部4は、例えば、キーボードやマウス等の入力装置であり、画像の取得に必要な情報の入力、画像取得動作についての指示の入力等を行うことができるようになっている。
表示部5は、ディスプレイ装置であって、顕微鏡システム1の動作に必要な操作画面の表示あるいは取得されたスライドSのマクロ画像やミクロ画像の表示を行うことができるようになっている。
【0030】
入力部4から、ローダカバー21を開くように指示が入力されると、制御部3は、駆動制御部15がマクロ画像取得部12あるいはミクロ画像取得部13の駆動制御中であるか否かを確認し、駆動制御中である場合には、顕微鏡本体2および試料搬送部8の駆動を停止した後、カバーロック機構22によるロック状態を解除してローダカバー21の開放を許容するようになっている。駆動制御中ではない場合には、ローダカバー21を開くように指示が入力された時点で、制御部3がカバーロック機構22によるロック状態を解除してローダカバー21の開放を許容するようになっている。
【0031】
また、入力部4から特定のカセット6の取り出しを可能とするように指示が入力されると、制御部3は、当該カセット6に格納されている全てのスライドSについての画像取得の状況を判定するようになっている。そして、制御部3は、画像取得がスライドSの一部について部分的に行われているカセット6については、入力部4からの取り出し指示に拘わらず、カセットロック機構23のロック状態を維持するようになっている。
【0032】
さらに、制御部3は、画像取得が完了しているかあるいは画像取得が全く行われていないカセット6については、入力部4からの取り出し指示に応じて、カセットロック機構23のロック状態を解除可能であると判断するようになっている。そして、ロック状態が解除可能であると判断されたカセット6については、制御部3は、カバーセンサ24によりカセット本体16にカセットカバー17が取り付けられていることを条件として、カセットロック機構23によるロック状態を解除するようになっている。
【0033】
このように構成された本実施形態に係る顕微鏡システム1の作用について以下に説明する。
本実施形態に係る顕微鏡システム1を用いて画像取得を行うには、操作者が、入力部4からローダカバー21を開くように指示を入力する。例えば、図6に示されるように、表示部5に表示された「COVER OPEN」のボタンB1をクリックする。
【0034】
すると、制御部3は、駆動制御部15がマクロ画像取得部12あるいはミクロ画像取得部13の駆動制御中でないことを条件としてカバーロック機構22によるロック状態を解除する。これにより、ローダカバー21を開放することができる。
【0035】
操作者は、ローダカバー21が開かれると、内部のカセット格納部7に設けられている複数のカセット台20a,20b,20cに、それぞれ、複数のスライドSを収容したカセットカバー17付きのカセット6を挿入し、その後、各カセット6からカセットカバー17を引き抜いて、ローダカバー21を閉じる。
本実施形態では、2つのカセット6を、第1(上段)カセット台20aおよび第2(中段)カセット台20bに水平方向にスライドして挿入している。一方、第3(下段)カセット台20cには、カセット6は挿入していない。
【0036】
この状態で、操作者は、マッピング開始の指示を入力部4から入力する。例えば、図7に示されるように、表示部5に表示された「START MAPPING」のボタンB2をクリックする。マッピング開始の指示が入力されると、制御部3は、カバーロック機構22およびカセットロック機構23を作動させ、ローダカバー21をロック状態に設定して開放を規制するとともに、カセットロック機構23をロック状態に維持してカセット6のカセット台20a,20bからの取り出しを規制する。
【0037】
そして、各カセット台20a,20bにおいては、図示しないスライドセンサが作動して、カセット6内のスライドSの有無が検出され、図5に示されるように、カセット6内に収容されているスライドSの位置が表示部5に表示される。図では、番号5,6,7,12,22,26の位置にスライドSが収容されていないことが確認できる。
【0038】
操作者は、入力部4から、必要に応じて撮影倍率や画像取得範囲等の撮影条件を図8に示される条件入力領域B3において入力し、画像取得の指示を入力する。そして、例えば、図8に示されるように、表示部5に表示された「SCAN START」のボタンB4をクリックする。これにより、制御部3は、いずれかのカセット6(本実施形態では第1カセット台20aに収容されているカセット6)から試料搬送部8によって画像取得を行うスライドSを順次取り出してステージ9に搬送し、マクロ画像取得部12によりマクロ画像を取得する。
【0039】
データ処理部25は、取得されたマクロ画像を処理することにより、ミクロ画像の取得範囲を自動的に設定する。その後、ステージ9を作動させてミクロ画像の取得位置にスライドSを移動させ、設定された撮影条件に従って、ミクロ画像取得部13によりミクロ画像を順次取得する。
【0040】
具体的には、ステージ9を所定の送り量で送りながら、各位置で焦点合わせを行って、スライドSの画像取得範囲を2次元的に走査することにより、複数のタイル状のミクロ画像を取得する。取得された複数のミクロ画像は、データ処理部25によって合成されることにより、高解像度のスライド画像であるバーチャルスライドを構成することができる。
【0041】
画像取得範囲内のミクロ画像の取得が終了したスライドSは、試料搬送部8によってステージ9によるミクロ画像の取得位置からカセット格納部7におけるカセット6内の収容位置に戻される。制御部3は、マクロ画像およびミクロ画像が取得された順に、図9に示されるように、マクロ画像Mを表示部5に表示していく。制御部3は、表示部5に表示されたマクロ画像Mを操作者が指定することにより、該マクロ画像Mに対応する複数のミクロ画像からなるバーチャルスライドを表示部5に表示する。これにより、操作者は個々のミクロ画像を確認することができる。
【0042】
ミクロ画像を確認した操作者は、バーチャルスライド内のいずれかのミクロ画像の画質、フォーカスまたはスキャン範囲が不良である等の判断をした場合には、図10に示されるように、そのミクロ画像に対応する画像取得領域Rをマクロ画像M上においてマニュアルで設定することにしてもよい。この場合には、設定された画像取得領域Rにおけるミクロ画像の再取得がミクロ画像取得部13によって行われ、画質不良等のミクロ画像を再取得されたミクロ画像に入れ替えることにしてもよい。
【0043】
一のカセット6(本実施形態では第1カセット台20aに収容されているカセット6)内の全てのスライドSについてマクロ画像およびミクロ画像の取得が完了すると、次のカセット6(本実施形態では第2カセット台20bに収容されているカセット6)内のスライドSについてのマクロ画像およびミクロ画像の取得が開始される。
【0044】
操作者は、図9に示されるように、表示部5に表示されたスライドSのマクロ画像およびミクロ画像を見て、第1カセット台20aに収容されているカセット6内の全てのスライドSのマクロ画像およびミクロ画像が良好であることを確認する。この時点で、より緊急の試料についての画像取得の必要性が発生した等の場合には、操作者は画像取得が終了したカセット6の取り出しを行いたい旨を入力部4から入力する。例えば、図8および図9に示されるように、表示部5に表示されている「CHANGE CASSETTE」のボタンB5をクリックする。
【0045】
制御部3は、指示に応じてマクロ画像取得部12およびミクロ画像取得部13を停止する。このとき、制御部3は、図9に示されるように、表示部5に表示されているマクロ画像のスライドSが収容されているカセット6のロック状態を解除可能とする。すなわち、本実施形態では、制御部3は、第1カセット台20aのカセットロック機構23によるカセット6のロック状態を解除可能とする。
【0046】
一方、この状態では、第2カセット台20bのカセットロック機構23によるカセット6のロック状態は維持されている。
その後、操作者が、図9に示されるように、表示部5に表示されている「COVER OPEN」のボタンB1をクリックすると、制御部3はカバーロック機構22のロック状態を解除してローダカバー21を開放可能にする。
【0047】
そして、操作者が、ローダカバー21を開放し、取り出したいカセット台(本実施形態では第1カセット台20a)のカセット本体16に対してカセットカバー17を挿入して取り付けることにより、カバーセンサ24がカセットカバー17を検出する。
カバーセンサ24によってカセットカバー17が検出されたカセット6が、第1カセット台20aに収納されたものである場合には、制御部3は、第1カセット台20aのカセットロック機構23によるカセット6のロック状態を完全に解除する。
【0048】
一方、カバーセンサ24によってカセットカバー17が検出されたカセット6が、第2カセット台20bに収納されたものである場合には、制御部3は、第2カセット台20bのカセットロック機構23によるカセット6のロック状態を解除しない。
操作者は、カセット本体16に設けられているハンドル18を引いてカセット6をカセット台20a,20bから引き抜く力を掛けることにより、カセットロック機構23のロック状態が解除されているカセット6については容易に取り出すことができ、ロック状態が維持されているカセット6については取り出すことができない。
【0049】
このように、本実施形態に係る顕微鏡システム1によれば、操作者が全てのスライドSを確認したカセット6すなわち操作者が意図したカセット6のみをカセット台20a,20bから取り出すことができる。これにより、本来取り外されるべきではないカセット6がカセット台20a,20bから誤って取り出されてしまうことを防止することができる。
【0050】
また、多数のスライドSを収容したカセット6は、それ自体の重量が大きいので、十分に慎重に抜き出さないと、カセット台20a,20bから抜き出された瞬間にカセット6が傾いて収容されているスライドSがカセット本体16の開口から飛び出してしまう不都合が考えられる。しかし、本実施形態によれば、カセットカバー17が取り付けられていないとカセット台20a,20bから取り出すことができないので、スライドSをカセット本体16から飛び出させてしまう不都合の発生を未然に防止することができるという利点がある。
【0051】
なお、操作者が、図9に示されているように、表示部5に表示されている「CHANGE CASSETTE」のボタンB5を指示したときに、カセットロック機構23のロック状態を解除可能とすると共に、カバーロック機構22のロックを解除しても良い。
【0052】
本実施形態では、操作者が全てのスライドSを確認したカセット6のみをカセット台20a,20bから取り出すようにしたが、カセット6内のスライドSの画像取得状況に応じてカセット6のロック機構を解除するようにしても良い。
この場合、制御部3は、画像取得制御部26によって管理する画像取得状況に基づいて、カバーセンサ24によってカセットカバー17が検出されたカセット6が、マクロ画像およびミクロ画像の取得が完了したカセット6であるか否か、または、マクロ画像およびミクロ画像のいずれも未だ取得していないカセット6であるか否かを判断する。
【0053】
カバーセンサ24によってカセットカバー17が検出されたカセット6が、マクロ画像およびミクロ画像の取得が完了したカセット6である場合、または、マクロ画像およびミクロ画像のいずれも未だ取得していないカセット6である場合には、制御部3は、カセットロック機構23によるカセット6のロック状態を解除する。一方、カセットカバー17が検出されたカセット6が、一部のスライドSについてのみ部分的にマクロ画像およびミクロ画像の取得が行われているカセット6である場合には、カバーセンサ24によってカセットカバー17が検出された場合においてもカセットロック機構23によるカセット6のロック状態は解除しない。
【0054】
この顕微鏡システム1によれば、全てのスライドSについて画像取得が完了し、かつ、カセットカバー17が装着されたカセット6のみをカセット台20a,20bから取り出すことができる。これにより、画像取得途中のカセット6が誤って取り出されてしまう不都合の発生を未然に防止することができる。
【0055】
なお、この顕微鏡システム1においては、カセットロック機構23のロック状態を維持または解除するための条件であるカセット6の状態として、一部のスライドSについて部分的にマクロ画像またはミクロ画像を取得している取得途中の状態であるか否かを判断することとしたが、これに代えて、カセット格納部7に格納されている全てのカセット6について予め定めた優先順位(例えば、取り出し優先順位)をカセット6の状態として採用してもよい。
【0056】
すなわち、操作者が引き抜こうとするカセット6の優先順位が低い場合には、カセットロック機構23によるロック状態を維持することにより、優先順位の高い順にカセット台20a,20b,20cから引き抜くことができるようにしてもよい。
【0057】
また、カセットカバー17が装着されていることを条件として、ロック状態を解除することとしたが、必ずしも、カセットカバー17の装着をロック解除の条件としなくてもよい。この場合には、カセット6の状態の判定のみによってカセットロック機構23のロック状態の解除または維持を切り替えることにすればよい。
【0058】
また、制御部3は、複数のスライドSのマクロ画像を取得しているときに、例えばスライドSが裏返しでカセット6に挿入されているが原因で、スライドS上のラベルの画像が連続して取得できなかった場合、ワーニングを発生させても良い。なお、ワーニングを報知させる方法としては、表示部5の画面に表示させても良いし、音によって行っても良い。
【0059】
本実施の形態では、カセットロック機構23として、カセット6に設けられたロック穴19aに挿脱可能なロックピン23aを用いたが、これに限らず、例えばカセット6に磁石を組み込み、この磁石の磁力を利用してカセット6をロックするようにしても良い。
【符号の説明】
【0060】
S スライド
1 顕微鏡システム
3 制御部
6 カセット
7 カセット格納部
12 マクロ画像取得部(画像取得部)
13 ミクロ画像取得部(画像取得部)
16 カセット本体(収容部)
17 カセットカバー
23 カセットロック機構(ロック機構)
24 カバーセンサ(カバー検出部)
26 画像取得制御部(画像取得状態検出部)
27 データ記憶部(記憶部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスライドを収容可能なカセットを複数格納可能なカセット格納部と、
該カセット格納部のいずれかの前記カセットから前記スライドを取り出してその画像を取得する画像取得部と、
前記カセット格納部に設けられ、該カセット格納部に格納された前記カセットの取り出しを該カセット毎に制限するロック機構と、
前記カセット格納部に格納されている前記カセットの状態を判別し、判別された該カセットの状態に基づいて前記ロック機構を制御する制御部とを備える顕微鏡システム。
【請求項2】
収容されている前記スライドの画像の前記画像取得部による取得状態を検出する画像取得状態検出部を備え、
前記制御部が、前記画像取得状態検出部により、収容されている前記スライドの内、一部のスライドのみの画像が前記画像取得部により取得されていることが検出された前記カセットについて、前記カセット格納部からの取り出しを制限するよう前記ロック機構を制御する請求項1に記載の顕微鏡システム。
【請求項3】
前記カセットの取り外し優先順位を記憶する記憶部を備え、
前記制御部が、前記記憶部に記憶されている取り外し優先順位を判別し、判別された取り外し優先順位の最も高い前記カセットの前記ロック機構による制限を解除する請求項1に記載の顕微鏡システム。
【請求項4】
前記カセットが、複数の前記スライドを収容可能な収容部と、該収容部に対して取り外し可能に取り付けられ、前記収容部からの前記スライドの取り出しを制限するカセットカバーとを備え、
前記カセット格納部に、格納されているカセットの収容部への前記カセットカバーの装着の有無を検出するカバー検出部が設けられ、
前記制御部が、前記カバー検出部によりカバーが装着されていないことが検出された前記カセットの前記カセット格納部からの取り外しを制限するよう前記ロック機構を制御する請求項1から請求項3のいずれかに記載の顕微鏡システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−227192(P2011−227192A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−95126(P2010−95126)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】