説明

顕微鏡検査のための被検物ホルダ

【解決手段】顕微鏡検査のために被検物(9)を保持するための被検物ホルダ(10)であって、互いに向き合う側面(7)に夫々少なくとも一つの凹み(4a)を備え反対方向に変位可能な二本のバー(3a,3b)を有して構成され、上記凹みを被検物(9)の外縁に少なくとも部分的に接触することによって被検物(9)を保持する、被検物ホルダにして、両方のバー(3,3a,3b)が付加的に、互いに背を向ける両バー(3,3a,3b)の二側面(7)にも夫々少なくとも一つの凹み(4a;4b)を備える。
【効果】上記構成によって、180度回転した後にバーを交換したり挿入することで、バー(3a,3b)の両側面(7)が用いられる際に被検物保持の可能性が高まる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顕微鏡検査のための被検物ホルダに関し、当該ホルダは、それぞれ少なくとも一つの凹みを備え互いに向き合う側に配され反対方向に変位可能な二本のバーを備えて構成され、それら凹みと被検物の外縁との少なくとも部分接触によって当該被検物を保持するようになっている。
【背景技術】
【0002】
基本的に、異なる寸法の被検物を例えば顕微鏡の被検物台に保持するために、二種類の被検物容器が知られている。即ち、被検物台上にスプリング形状で取り付けられた被検物クランプは、被検物を、通常は被検物担体を台上に保持する。更に互いに変位可能な二枚のプレートから成る被検物ホルダが特許文献1から公知である。この文献によれば、二枚のプレートは被検物ホルダに取り付けられ、これら互いに向き合ったプレートの側面は互いに接離するように可動で、即ち反対方向に変位可能である。プレートの互いに向き合った側面は刻み目を備えており、その結果、プレートが互いに向かって摺動する際に開口が生じる。各刻み目は付加的に後退部を含み、この上に被検物、例えば円筒状被検物担体や矩形被検物担体が置かれ得る。当該被検物担体は逆に後退部におけるノッチによって側方方向に保持される。プレートがそれらガイド部との摩擦係合によって又はバネ力によって互いに支えられているので、被検物は前記ノッチで適所に挟持される。円筒状被検物は多くの場合、被検物の外縁に対して接線方向に延在するノッチを用いて保持される一方、矩形被検物は多くの場合、被検物の角部に対して接触するノッチで保持される。プレートにおける刻み目によって生じた開口は、特に透過光顕微鏡に、即ち被検物を透照するのに適する。そして被検物自体は後退部上に二枚のプレートの縁に置かれ、上述したように、ノッチを用いて側方に保持される。
【0003】
特許文献1に係る前記被検物ホルダは、プレートの案内と相互挟持が被検物ホルダにとって複雑な構成となり、当該ホルダで更にごく限定された数の異なる横断面形状を有した被検物のみが保持され得るという欠点を有する。公知の被検物ホルダを多数の被検物担体に用いることができるようにするために、異なるノッチを有したプレートの交換が必要になる。しかしながら、これは、案内と相互挟持のために、分解を相当に困難とする溝にプレートを把持するので、複雑である。
【0004】
前述のスプリングクランプは、ペトリ皿(シャーレ)、ミクロ滴定プレート又はマルチウェルプレート(multi-well plates)のような被検物があまりに高く、それらの寸法があまりに多様であるので、これら被検物には適さない。
【0005】
【特許文献1】DE 3028154 A1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、特に異なる横断面形態を有した多数の被検物を保持することを可能にしながら、よりフレキシブルな取り扱いと簡略化した製造を可能とする冒頭に記載したような被検物ホルダを示すことにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一アスペクトにおいて、顕微鏡検査用被検物を保持するための被検物ホルダは、それぞれ少なくとも一つの凹みを備え互いに向き合う側に配され反対方向に変位可能な二本のバーを備えて構成することが提案される。上記凹みと被検物の外縁との少なくとも部分接触によって当該被検物を保持するようになっている。本発明によれば、両方のバーは付加的に、互いに隔たる側に、それぞれ少なくとも一つの凹みを備えている。これによって、被検物を保持するためのバーの両側を用いることが可能となり、これに関連して、保持されることが可能な異なった横断面形態の被検物の数が増加する。
【0008】
二本のバーは、それら側面の両方に、前もって作り上げられるか特別に製作された凹みを有し、これによってバーの互いに向き合う二側面の間に位置した被検物が保持される。本発明によれば、バーの夫々の側は被検物保持に用いられ得、その結果、保持されるべき被検物形状の数が限りなく増加する。そのために、一本のバーの二側面は特に異なる凹みを備えて構成され、その関連において多数の凹みが夫々の側の長さに沿って存在し得る。
【0009】
バーを簡単に製造して被検物を正確に保持するために、バーが二本のバーの互いに向き合った側の間に対称的に延在する中心線に対して鏡面対称を示すならば、有利である。この特徴は、被検物ホルダにおけるバーの位置に関して定められる。夫々のバーをその縦軸回りに180度回すか、二本のバーを交換/取り替えしてこれらを被検物ホルダ内に再挿入することによって、異なる凹みを備えたバーの二側面は鏡面対象で互いに向き合う。一般に(一般論に関して制限なしに)、バーは(被検物ホルダでの)輪郭レールと(バーの上側及び/又は下側での)ガイド溝とを用いて被検物ホルダに画定された様で変位される。被検物を保持するために、二本のバーが、当該日本のバーの間に延びる中心線に関して対称的に変位する。本発明に従いその縦軸回りに各バーが180度回転することによって被検物保持のために両方のバーの側面が用いられるならば、バーに上側と下側でガイド溝が存在しなければならない。その代わりに、ガイド溝をバーの上端面又は下端面に設けることも考慮の対象となるであろう。バーがひっくり返される場合、既述の後退部を有した刻み目も、それらがバーの上側と下側に対称的に設けられている場合にのみ可能である。二本のバーはそれにもかかわらず、バーの上側と下側が対称的に形作られるならば、等しく具現化することが可能である。本発明に従って、二本のバーが(ひっくり返すことなく)互いに取り替えられ、被検物ホルダに再挿入されることによって、バーの両側が被検物を保持するために用いられるならば、バーの上側と下側は異なり得、その場合、二本の異なるバーが使われることになる。両方のバーの側面のいずれが特定の被検物を保持するのに用いられるべきかは、バー側面での凹みのタイプから直ちに明らかである。
【0010】
本発明の範囲において、バーの狭めの側の一方を被検物ホルダへ案内するのに用いる一方で、バーの二つの長い側に前記凹みを設けることが特に有利である。これによって、多数の異なる凹みを一本のバーに実現することが可能になり、本発明に係る被検物ホルダーが多様な被検物ホルダーのためにあまねく利用可能となる。
【0011】
有利な実施態様によれば、少なくとも一本の輪郭レールが各バーの案内のためにバーの変位方向に沿って設けられ、輪郭レールの輪郭は、バーの案内のために、特にバーの下側に対応して補完的に形成された溝と協働する。この形態で、単一の輪郭レールは両方のバーの案内のために設けられ得る。この場合、バーは互いに鏡面対称に具現化され、当該鏡面対称はバーの向き合う二面の間の中心線に関わっている。他方、一本の輪郭レールが各レールの案内のために設けられ得、例えば、一本のバーがその上端で案内され、他方のバーがその下端で案内され、各々は一本の輪郭レールに沿っている。最後に、当然ながら、各バーあたり二本以上の輪郭レールも案内のために設けられ得る。それらレールはまた他方で夫々別のバーによる案内に利用される。最小遊びでのバーの狂いのない変位と、それゆえに被検物の正確な保持のために、被検物ホルダーが二本の輪郭レールを有し、各輪郭レールが変位方向に一本のバーを案内するならば、適切である。被検物ホルダの中央で被検物を保持することが通常望まれるので、またしても、二本の輪郭レールの間の中心線に関して鏡面対称(言い換えれば、凹みを備えたバー側面に対し垂直な中央鉛直線に関して鏡面対称)にバーを具現化することが適切である。二本の等しく形作られたバーが用いられ得るという前述した利点はそれゆえ、二本の輪郭レールが用いられる場合、それどころかバーの上側と下側の対称性が放棄される場合にも、存在する。
【0012】
各バーの両側が被検物を保持するために用いられるために、被検物ホルダからバーを容易に取り除き、また交換後又は180度回転後にそれらを再挿入することが可能でなければならない。バーを案内する前記様式及びそれに左右されるバーの形態に応じて、バーを前述のように180度回転することは、バーの下側が上側になるようなそれ自身の縦軸回りの回転として、又はバーの上端が下方に回転するようなバーの中心点回りの180度回転として(言い換えれば、被検物ホルダに対して垂直な又はバーに対して垂直な軸回りの180度回転として)、行われる。バーの容易な取り除きと再挿入のために、バーが前述した輪郭レール上に置かれて、そこで力係合(non-positive engagement:非確実係合、摩擦連結)及び/又は形状係合(positive engagement:確実係合、形状拘束係合)によって保持されるならば、有用である。
【0013】
例えば輪郭レールと協働する輪郭部がバーの下側に設けられ、バーを形状係合によって輪郭レールに解放可能に保持することができる。被検物は変位方向に生じる摩擦力(摩擦係合)によって保持される。
【0014】
これに関連して、輪郭レールとバーの間の力係合が磁力によってもたらされるならば、特に有利であることが判明した。輪郭レールはその目的のために磁化可能な材料、特にスチールから製造され、磁石がバーに補完的に形成された溝の領域に配置される。バーと輪郭レールの間の磁気的な力係合の影響は、バーが被検物ホルダに解放可能に保持され得ることである。同時に輪郭レールに沿った正確な案内が可能である。
【0015】
一般に、バーの解放可能な磁力保持が本発明にとって適切で有利である点を指摘する。例えば、バーが被検物ホルダのプレート上で変位させられるならば、バーの解放可能な磁力保持は次の様々なやり方でもたらされ得る:一方では、電磁石によって磁力が発生し、この場合には磁場が上記プレートを突き抜ければ十分であり、バーは少なくともその磁場の領域において磁化可能材料から製作される。他方、プレート全体又は案内に用いられる前記輪郭レールのみがまた磁性材料から製作され得る。そしてバーが少なくとも部分的に又は少なくとも夫々の輪郭レールの領域において、磁化可能材料から製造されているならば、十分である。最後に、既に述べたように、バーは全体に又は部分的に磁性材料から製作され、又はプレート及び/又は輪郭レールが磁化可能でなければならない場合に磁石を含む可能性がある。
【0016】
輪郭レールの構成のために、それらレールがL形状に具現化され、L形状の短い方の突出部がバーの下側の溝に係合しているならば有用である。
一般に被検物ホルダが輪郭レールに沿って、或いは当該レールに隣接して目盛り又はマーキング能を有していれば、有用である。これは、サンプル交換に関して(特に被検物の横断面の幾何学的形態が同じ場合に)再現可能な設定を容易にする。マーキング能は輪郭レールに沿って変位可能なマーキングであり得る。輪郭レールがL形状に構成されている場合、マーキング又は目盛りはL形状の長い方の突出部に取り付けられ得る。サンプルが交換される場合、バーの位置はマークされ、又は目盛りで読み取られ、被検物位置が戻され得る。
【0017】
本発明の別のアスペクトにおいて、顕微鏡検査のために被検物を保持すべく、プレート上を反対方向に変位可能な二本のバーを備えて構成される被検物ホルダが提案される。当該被検物ホルダでは、被検物はバーの互いに向き合った二面に備えられた凹みの、被検物の外縁に対する少なくとも部分的な接触によって保持されることになり、本発明によればバーは磁気的に解放可能なようにプレートに保持される。バーの磁気的な解放可能保持に対する様々な可能性に関する上記記載が参照され得る。もう一度繰り返すと、電磁石によって、又はプレートに若しくはそこに位置した輪郭レールに含まれる磁性材料によって磁力が発生する。この場合、磁気引力を発生するために、バーは少なくとも部分的に磁化可能材料から製作される。他方、少なくとも部分的に磁性材料からバーを製作し、又はバー上若しくはバー内に磁石を取り入れることが可能で容易に達成され得る。この場合、バーに在る磁石と共にバーの解放可能保持を構成する磁化可能材料がバーの変位方向に沿って被検物ホルダのプレート上に設けられているならば、有用である。
【0018】
本発明の第二のアスペクトに従う被検物ホルダにおけるバーの磁力保持は、バーの狂いのない調整能力を伴う解放可能な保持を可能とし、それゆえ従来公知の被検物ホルダと比較してよりフレキシブルな取り扱いと簡略化された製造を可能とする。これによって生じるバーの容易な分解可能性は、本発明のこのアスペクトが本発明の前記第一アスペクトと組み合わされる場合に特に有利である。そしてバーの交換によって、又は180度回転後のバーの挿入によって、バー夫々の両側を互いに組み合わせることが可能である。組立と分解は本発明に係る磁気的な連結によって成し遂げられることが容易である。
【0019】
この際、第一アスペクトに係る発明とこの発明の全ての実施態様が第二アスペクトに係る発明と組み合わされ得、また第二アスペクトに係る発明とこの発明の全ての実施態様が第一アスペクトに係る発明と組み合わされ得ることがはっきりと指摘される。
【0020】
特に、磁化可能材料が、バーに相補的に具現化された溝とともにバーのためのガイドを構成する輪郭レールとして具現化されていれば、有利である。輪郭レールは、被検物ホルダのベースプレートに力係合的に又は直接係合的に取り付けられ得る。各バーは案内のために一本以上の輪郭レールを用いることができる。一本以上の輪郭レールはまた、両方のバーによって取り分けられるように用いられ得る。被検物ホルダでの輪郭レールとのバーの磁気的連結は、輪郭レールに沿ったバーの正確な変位と輪郭レールでのバーの解放可能保持を容認する力係合/非確実係合を生み出す。
【0021】
また本発明の第二アスペクトに関連して、またしても、輪郭レールがL形状に具現化され、短いほうの突出部がバーの下側の溝に係合するならば、望ましい。被検物はまた輪郭レールに沿って、或いは当該レールに隣接して目盛り又はマーキング能を有し得る。本発明の第一アスペクトに関連して述べられた内容は、ここでの特徴に関しても適用され得るものである。
【0022】
各バーが互いに背を向ける二面に夫々少なくとも一つの凹みを備えていれば特に有用である。これに関連して、本発明の第二アスペクトがその主題(subject matter)として、最初から凹みを備えることが必ずしも必要でないバーを有した被検物ホルダを有することがはっきりと指摘される。被検物保持のため簡単に、被検物ホルダの機能性にとって凹みがバーの片側又は両側に導入されることが必要である。それら凹みは標準的に最初からバーの側面に組み入れられ得るが、同じく顧客固有の凹みを構成するために、それをユーザーに委ねることも可能である。
【0023】
本発明の第一アスペクトに関連して既に述べたように、バーの二つの側面の各々が、互いに異なる凹みを備えて構成され、バーの両側がそれら凹みを他のバーの夫々対応する側と組み合わせることによって被検物保持のために利用可能であれば、好ましい。
【0024】
発明の二つのアスペクトとそれらの利点を、図面に描写し以下に続く例示的な実施形態において一層詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1に示すような本発明に係る被検物ホルダ1は、実質上、その長手方向側又は側方側に2本の輪郭レール2a,2bが非確実係合/力係合又は直接係合/形状係合で取り付けられたプレート1と、二本のバー3a,3bを備えて構成されている。プレート1は、顕微鏡のテーブルプレートの機能を有する。それは、透過光顕微鏡のために透明である(ガラスかプラスチックで適切に作られる)か、入射光顕微鏡のために非透明である(プラスチックか金属、好ましくは黒色酸化被膜処理されたアルミニウムで適切に作られる)。プレート1は、特許文献1の実施形態で上述されたように、その中心に穴を有していてよく、それによって被検物又は被検物担体を透照する。テーブルプレートは定置式でも、それ自体公知の横摺動テーブル(説明せず)で構成されていてもよい。本例において(且つ本発明の第二アスペクトに従い)、輪郭レール2a,2bは磁化可能材料から、好ましくはスチールから製造されている。バー3a,3bはそれらの下側で一端に、夫々輪郭レール2a,2bに沿ってバー3a,3bの案内のための夫々の溝を有する。それら端部の少なくとも一方に、バー3a,3bは輪郭レールと共に被確実係合を形成する夫々磁石6(図2比較参照)を有し、解放可能にバー3a,3bをプレート1に保持する。既に述べたように、二本のバー3a,3bはまた、分担案内のために単一の輪郭レールのみを用いることもでき、また案内のために夫々が両方の輪郭レールを用いることもできる。本例(特に図2比較参照)においては、バー3a,3bの各々は案内のために夫々一本の輪郭レール2a,2bを用いる。
【0026】
輪郭レール2a,2bの横断面は対称的である。輪郭レールはワンピースである必要がなく、(案内に必要な程度まで)セグメントにおいてのみ実施されてもよい。
図1に係る実施形態は、対称配置のために、二本の等しいバー3aと3bが利用可能であるという利点を有する。これは製造を簡単化し、コストを低減する。被検物ホルダでの配置において、二本のバー3aと3bの凹み4aと4bは中心線11と12に関して鏡面対称を呈する。
【0027】
被検物9(本例の場合、五つの等しい標準的な矩形被検物担体)の保持のため、バー3aと第二のバー3bは輪郭レール2aと2bの上を案内され、それらの間隔が調整される。二本のバー3a,3bの対向する側面7での凹み4aは、被検物担体9の角部を囲む小さな矩形凹みを有し、これら被検物担体を保持する。バー3a,3bの縦側面7の全体が用いられ得るので、一つの側面7に凹み4a(及び4b)の繰り返し形状を備えることが可能であり、その結果、一つの被検物ホルダを用いて多種多様の被検物担体9を保持することができる。
【0028】
図2は、バー3(3a又は3b)を有する被検物ホルダ10を通る、紙面に対し垂直な横断面である。図2Aは全体断面を描写するのに対して、図2Bと図2Cは夫々、上端と下端を拡大して描写する。図2Aは、被検物ホルダ10のプレート1とそれに当接するバー3を示し、プレートには輪郭レール2aと2bが直接係合又は非確実係合で据え付けられている。バー3の上端と下端に、夫々磁石6が輪郭レール2aと2bの上又は並んだ領域に据え付けられている。図2Bと図2Cは、輪郭レール2aと2bの領域における関係を拡大して示す。輪郭レール2aはL形状に具現化され、短めの突出部はバー3の溝5に係合し、それによって輪郭レール2aに沿ったバー3のためのガイド系を形成する。磁石6は、溝5の領域において、この例示的な実施形態ではバー3の下側に配置されている。図2Bに示されたように、溝5は、バー3に係合する輪郭レール2aの輪郭に対応して、V溝として具現化されている。案内が輪郭レール2a,2b両方に沿って起こるならば、バー3の下側部分に相応して溝5を修正構成することも望ましい。図2Cは、案内されていない側を支持するのに供される矩形切り抜き5’の場合を示し、バー3の実際の案内は上側溝5と上側輪郭レール2aを通してのみ成し遂げられる。180度回転させられた後にバー3が挿入されるならば、案内は前記溝5と輪郭レール2bを通して成し遂げられる。等しいバー3aと3bがこの構成においても用いられ得(図1比較参照)、バー3aが輪郭レール2aによって案内され、バー3bが輪郭レール2bによって案内されることを指摘する。
【0029】
磁気輪郭レールを通して磁気連結を実施することが望ましい状況が考えられ、その場合、バー3が磁石6の代わりに単に磁化可能な材料を含むことが必要であり、又はそのような材料から製造されることが必要となる点を、更に今一度指摘する。
【0030】
本例及び以下の実施形態において、被検物ホルダ10のプレート1は、中央開口(穴)なしに描写されている。しかしながら、これはプレート1にそのような穴を備える可能性を除外するものではない。更にバー3aと3bの側面7は対応して、既に述べた特許文献1に描写されたような刻み目と後退部なしに具現化されている。そのような刻み目と後退部はもちろん、必要の時には、本明細書における実施形態において備えられ得る。そして、バー側面7におけるそのような刻み目はプレート1における中央開口を覆わない目的を有する一方、バー側面7における後退部はバー側面7に沿って凹みによって側方に保持される被検物を後退部へおくことができるのに適している。
【0031】
図3は、図1に描写したと同様な被検物ホルダ10を示し、バー3aと3bはここでは180度回転され互いに入れ替えられた後に挿入されている。凹み4bが対応して被検物の保持に供されている。本発明にしたがい、バー3aの両側面7での凹み4aと4bの、バー3bの一方の側面7での対応する凹みとの組み合わせの可能性は、被検物容器の普遍性・一般性を拡張する。
【0032】
図3は、非常に長い矩形被検物担体9のための配置を示す一方、図4はバー3aと3bを同じ向きにして、断面円形の被検物の保持を示す。図4と図5は、様々な径のペトリ皿や他の円形被検物担体に対する保持を示す。図4と図5から明らかなように、保持に供される凹み4bは被検物9の外縁に沿って接線方向に延在する。この凹み形状は、円形凹みに比して、異なる(円)径を有する被検物を保持可能であるという利点を有する。
【0033】
図6と図7は、再びバー3aと3bが同じ向きで、互いに90度回転した二方向での、ミクロ滴定プレート又は「マルチウェル」プレートの受け入れと保持を示す。この種のマルチウェルプレートは、横断面が円形の多数の被検物担体を受け入れるのに適する。例えば12×8=96のそのような個別被検物担体が一つのそのようなプレートに存し得る。
【0034】
図8に概略的に描写された別の実施形態において、バー3は凹みを有さず、ユーザーが顧客固有の凹みを製作することを可能にする。そのような顧客固有の凹み4は図8のバー3に示されている。この種の実施形態は特に、バーの両側に凹みを備える必要はないけれども、バーの磁気連結に関係する本発明の第二アスペクトに対応する。しかしながら、ここでも、図1〜9にしたがいここに描写された実施形態全てが原則的に、逆のことが明示的に述べられていない限り、本発明の両アスペクトに当てはまることが強調される。
【0035】
最後に、図9は、サンプル変更(被検物又は被検物担体9の変更)の関連における再現可能な設定を容易にするため、バー3aと3bの位置を正確に決めることができる目盛り8を備えた本発明に係る被検物ホルダ10の下側部分を概略的に示す。図9に係る例示の実施形態において、目盛り8はL形状の輪郭レール2bの長いほうの突出部に据えられている。バー3aと3bは目盛りを覆い、その結果、目盛り8を介してバー3a,3bの左右の縁で位置が読み取られ、方位/位置確定の目的に適う。
【0036】
一般に、顕微鏡検査のため被検物9を保持するための本発明に係る被検物ホルダ10の関連において、その被検物9はプレート1上に置かれ、バー3aと3bが方位/位置確定され、適切な凹み4a又は4bが被検物のほうに向けられ、バー3aと3bが輪郭レール2a,2b上に位置して、被検物を保持するために、相応する凹みが被検物9の外縁と少なくとも部分的に接触するまで共に導かれる。輪郭レール2a,2bとのバー3a,3bの磁気連結によって被検物が保持される。
【0037】
磁気連結(バーと輪郭レールの間の磁力、より一般的にはバーと実際の被検物ホルダ又は被検物ホルダーのベースプレートの間の磁力)は、バー保持の目的に適い、これらバーの取り付け、除去及び方位/位置確定を容易にする。同時に磁力は、二本のバーの間に位置した被検物の保持を可能とする。本発明のこのアスペクトは、バー3の両側を利用することを容易にし、それゆえ被検物保持に関するフレキシビリティを高める凹みの数を増やすことを容易にする。このアスペクト(両側を用いる可能性)は、本願において独立して特許請求されている。広範な見地において、本発明に係る被検物ホルダはまた、多重部分ガイド系を取り付ける必要がないので、顧客固有の解決を可能にする。むしろ、本発明に係る被検物ホルダに必要とされることは、本質的に二本の輪郭レールと二本の(有利には等しく構成された)バーのみである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】五つの保持された矩形被検物担体を備える本発明に係る被検物ホルダの使用時での概略図である。
【図2】バーを備えた被検物ホルダを通る紙面に垂直な概略断面(図2A)であり、B,Cは夫々、Aに示されたバーの上端及び下端の領域の拡大図である。
【図3】保持された矩形被検物担体を備える本発明に係る被検物ホルダの図である。
【図4】保持された円柱形被検物担体を備えた本発明に係る被検物ホルダの図である。
【図5】別の保持された円柱形被検物担体を備えた本発明に係る被検物ホルダの図である。
【図6】或る位置でマルチウェルプレートを備えた本発明に係る被検物ホルダの図である。
【図7】図6とは異なる位置でマルチウェルプレートを備えた本発明に係る被検物ホルダの図である。
【図8】予め作られた凹みを有さないバーを備えた被検物ホルダの図である。
【図9】バー位置を検知するための目盛りを備えた本発明に係る被検物ホルダの下側部分の図である。
【符号の説明】
【0039】
1 プレート
2,2a,2b 輪郭レール
3,3a,3b バー
4,4a,4b 或るバー側面の凹み
5 バーの溝
5’ バーの凹み
6 磁石
7 バーの側面
8 目盛り
9 被検物、被検物担体
10 被検物ホルダ
11 中心線(二本のバーの間)
12 中心線(バーの側面に対して垂直)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顕微鏡検査のために被検物(9)を保持するための被検物ホルダであって、互いに向き合う側面(7)に夫々少なくとも一つの凹み(4a;4b)を備え反対方向に変位可能な二本のバー(3,3a,3b)を有して構成され、上記凹みを被検物(9)の外縁に少なくとも部分的に接触することによって被検物(9)を保持する、被検物ホルダにおいて、
両方のバー(3,3a,3b)が付加的に、互いに背を向けるそれら二側面(7)に夫々少なくとも一つの凹み(4a;4b)を備えることを特徴とする被検物ホルダ。
【請求項2】
バー(3,3a,3b)の二側面の夫々の凹み(4a;4b)が互いに異なっていることを特徴とする請求項1に記載の被検物ホルダ。
【請求項3】
二本のバー(3a,3b)での凹み(4a,4b)が、二本のバー(3a,3b)の互いに向き合う側面(7)の間で鏡面対称を呈することを特徴とする請求項1又は2に記載の被検物ホルダ。
【請求項4】
少なくとも一つの輪郭レール(2,2a,2b)が各バー(3,3a,3b)の案内のためにバー(3,3a,3b)の変位方向に沿って備えられ、その輪郭レール(2,2a,2b)の輪郭が、バーの案内のために、バー(3,3a,3b)に相応的に補完するように具現化された溝(5)と協働することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の被検物ホルダ。
【請求項5】
両方のバー(3a,3b)が一つの輪郭レール(2a;2)上で案内されることを特徴とする請求項4に記載の被検物ホルダ。
【請求項6】
二本のバー(3a,3b)の各々が異なる輪郭レール(2a,2b)上を案内されることを特徴とする請求項5に記載の被検物ホルダ。
【請求項7】
二本のバー(3a,3b)が等しいことを特徴とする請求項6に記載の被検物ホルダ。
【請求項8】
バー(3a,3b)がプレート(1)上を変位可能であり、この上でバーが磁気的に解放可能に保持されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の被検物ホルダ。
【請求項9】
輪郭レール(2a,2b)が磁気材料から製作され、その輪郭レールに沿って変位可能なバー(3a,3b)が少なくとも溝(5)の領域で磁化可能材料から製作されていることを特徴とする請求項4に記載の被検物ホルダ。
【請求項10】
輪郭レール(2a,2b)が磁化可能材料から製作され、その輪郭レールに沿って変位可能なバー(3a,3b)が少なくとも溝(5)の領域で磁気材料又は磁石(6)から製作されていることを特徴とする請求項4に記載の被検物ホルダ。
【請求項11】
輪郭レール(2,2a,2b)がL形状に具現化され、短いほうの突出部がバー(3,3a,3b)の下側での溝(5)に係合することを特徴とする請求項4に記載の被検物ホルダ。
【請求項12】
多重の凹み(4a;4b)がバー(3a;3b)の一方の側面(7)に沿って存在して、異なる横断面形態の被検物(9)を保持可能とすることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の被検物ホルダ。
【請求項13】
被検物ホルダ(10)が輪郭レール(2b)に沿って若しくは当該輪郭レールに隣接してマーキング能又は目盛り(8)を有していることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の被検物ホルダ。
【請求項14】
顕微鏡検査のために被検物(9)を保持するための被検物ホルダであって、プレート(1)上を反対方向に変位可能な二本のバー(3,3a,3b)を有して構成され、上記バー(3,3a,3b)の互いに向き合う二側面(7)に備えられた凹み(4a;4b)を被検物(9)の外縁に少なくとも部分的に接触することによって被検物(9)が保持される、被検物ホルダにおいて、
バー(3,3a,3b)がプレート(1)上に、磁気的に解放可能に保持されることを特徴とする被検物ホルダ。
【請求項15】
プレート(1)上に、バー(3,3a,3b)の変位方向に沿って、磁化可能材料が設けられ、各バー(3,3a,3b)に存する磁石(6)と共にバー(3,3a,3b)の解放可能保持をもたらすことを特徴とする請求項14に記載の被検物ホルダ。
【請求項16】
磁化可能材料が、バー(3,3a,3b)に相応して補完的に具現化された溝(5)と共にバー(3,3a,3b)のためのガイドを構成する輪郭レール(2,2a,2b)として具現化されていることを特徴とする請求項15に記載の被検物ホルダ。
【請求項17】
輪郭レール(2,2a,2b)がL形状に具現化され、短いほうの突出部がバー(3,3a,3b)の下側での溝(5)に係合することを特徴とする請求項16に記載の被検物ホルダ。
【請求項18】
被検物ホルダ(10)が輪郭レール(2b)に沿って若しくは当該輪郭レールに隣接してマーキング能又は目盛り(8)を有していることを特徴とする請求項16又は17に記載の被検物ホルダ。
【請求項19】
各バー(3,3a,3b)が、互いに背を向けるその二側面(7)に、夫々少なくとも一つの凹み(4a;4b)を備えるか、備えることができるようになっていることを特徴とする請求項14〜18のいずれか一項に記載の被検物ホルダ。
【請求項20】
バー(3,3a,3b)の二側面(7)の各々での凹み(4a,4b)が互いに異なっていることを特徴とする請求項19に記載の被検物ホルダ。
【請求項21】
一つの輪郭レール(2a;2b)が両方のバー(3a,3b)を案内するために設けられていることを特徴とする請求項16に記載の被検物ホルダ。
【請求項22】
二本の輪郭バー(3a,3b)が設けられ、当該二本のバー(3a,3b)の各々が異なる輪郭レール(2a,2b)上を案内され、特に両方のバー(3a,3b)が等しく構成されていることを特徴とする請求項16に記載の被検物ホルダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−242951(P2006−242951A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−50442(P2006−50442)
【出願日】平成18年2月27日(2006.2.27)
【出願人】(503078863)ライカ マイクロシステムス (シュヴァイツ) アクチエンゲゼルシャフト (13)
【Fターム(参考)】