説明

風速測定装置の設置方法及び風速測定装置

【課題】配管内の風速を検知する風速測定装置における超音波送信器及び超音波受信器付近の結露を低減させる。
【解決手段】配管130内を流れる流体にカルマン渦を発生させる渦発生体24と、渦発生体24の下流側に配置された超音波送信器20と、超音波送信器20に所定間隔をあけて、渦発生体24をはさんで対向配置された超音波受信器22とを備え、超音波受信器22の受信信号に基づいて、超音波送信器20と超音波受信器22との間を通過したカルマン渦の数をカウントし、カルマン渦のカウント数から風速を測定する風速測定装置1を、配管130に設置する際に、超音波送信器20及び超音波受信器22を、鉛直方向に対して傾斜させ、超音波送信器20と超音波受信器22とを、配管130内を流れる流体の移動方向に対して直角に対向させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気筒に送られる排ガスの風速を検出する風速測定装置の設置方法及び風速測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、原子力発電所の施設から発生した排ガスは、有害成分が除去された後に排気筒を介して排出される。排ガスを排気筒に送るための配管には、風速測定装置が設置されており、この風速測定装置によって排ガスの移動速度を測定することにより、配管系統における異常の有無を管理している。
【0003】
また、従来、この種の風速測定装置としては、特許文献1に示すような超音波渦流量計、すなわち、測定管路内を流れる流体にカルマン渦を発生させるための渦発生体と、渦発生体の下流側に対向配置された超音波送信器及び超音波受信器とを有し、超音波送信器より送信された信号がカルマン渦により変調された信号を超音波受信器で受信して流体の流量を測定する超音波渦流量計が適用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−308630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示す超音波渦流量計においては、超音波送信器及び超音波受信器の少なくともいずれかに水滴が付着すると、計器測定誤差が大きくなり、カルマン渦の測定精度が低下するおそれがある。特に、発電施設から発生した排ガスに多量の水分が含まれている状態で気温が低下すると、超音波送信器及び超音波受信器に結露水が付着するおそれがある。
【0006】
本発明は、このような問題点を解決し、超音波送信器及び超音波受信器付近の結露水を低減させることを実現した風速測定装置の設置方法及び風速測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明は、次に記載する構成を備えている。
【0008】
(1) 配管内を流れる流体にカルマン渦を発生させる渦発生体と、当該渦発生体の下流側に配置された超音波送信器と、当該超音波送信器に所定間隔をあけて、前記渦発生体をはさんで対向配置された超音波受信器とを備え、前記超音波受信器の受信信号に基づいて、前記超音波送信器と前記超音波受信器との間を通過した前記カルマン渦の数をカウントし、前記カルマン渦のカウント数から前記流体の流量を測定する超音波渦流量計を、前記配管に設置する際に、前記超音波送信器及び前記超音波受信器を、鉛直方向に対して傾斜させ、前記超音波送信器と前記超音波受信器とを、前記配管内を流れる流体の移動方向に対して直角に対向させることを特徴とする風速測定装置の設置方法。
【0009】
(1)によれば、超音波送信器及び超音波受信器が、鉛直方向に対して傾斜しているため、超音波送信器及び超音波受信器に結露水が発生した場合、結露水が傾斜に沿って落下するようになる。これにより、超音波送信器及び超音波受信器付近の結露水を低減させることが可能になる。
【0010】
(2) (1)において、前記超音波送信器及びその周辺と、前記超音波受信器及びその周辺とに撥水剤を塗布したことを特徴とする風速測定装置の設置方法。
【0011】
(2)によれば、超音波送信器及びその周辺と、超音波受信器及びその周辺とに撥水剤を塗布することによって、撥水剤を塗布した領域に付着した結露水が滑りやすくなるため、超音波送信器及びその周辺、並びに超音波受信器及びその周辺に発生した結露水が、傾斜に沿って落下しやすくなる。
【0012】
(3) 配管内を流れる流体にカルマン渦を発生させる渦発生体と、当該渦発生体の下流側に配置位置された超音波送信器と、当該超音波送信器に所定間隔を開けて対向配置された超音波受信器と、前記超音波受信器の受信信号に基づいて、前記超音波送信器と前記超音波受信器との間を通過した前記カルマン渦の数をカウントし、前記カルマン渦のカウント数から前記流体の流速を測定する流速測定手段と、前記超音波送信器及び前記超音波受信器に向かって空気を噴出する空気噴出手段と、前記超音波受信器に基づいて前記超音波送信器及び前記超音波受信器における結露の有無を判定し、結露していると判断した場合に、前記空気噴出手段を駆動させる噴出制御手段とを設けたことを特徴とする風速測定装置。
【0013】
(3)によれば、超音波送信器及び前記超音波受信器に結露水が発生した場合に、空気噴出手段が超音波送信器及び超音波受信器に向かって空気を噴出することにより、結露水が吹き飛ばされる。これにより、超音波送信器及び前記超音波受信器における結露水を低減させることができる。
【0014】
(4) (3)において、前記超音波送信器及びその周辺と、前記超音波受信器及びその周辺とに撥水剤を塗布したことを特徴とする風速測定装置。
【0015】
(4)によれば、超音波送信器及びその周辺と、超音波受信器及びその周辺とに撥水剤を塗布することによって、撥水剤を塗布した領域に付着した結露水が滑りやすくなるため、空気噴出手段から噴出される空気によって、結露水が吹き飛ばされやすくなる。
【0016】
(5) 配管内を流れる流体にカルマン渦を発生させる渦発生体と、当該渦発生体の下流側に配置位置された超音波送信器と、当該超音波送信器に所定間隔を開けて対向配置された超音波受信器と、前記超音波受信器の受信信号に基づいて、前記超音波送信器と前記超音波受信器との間を通過した前記カルマン渦の数をカウントし、前記カルマン渦のカウント数から前記流体の流速を測定する流速測定手段と、前記超音波送信器及び前記超音波受信器を加温する加温手段と、前記配管内の露点温度を求め、前記超音波送信器及び前記超音波受信器の温度が前記露点温度よりも高くなるように加温手段を駆動させる加温制御手段とを設けたことを特徴とする風速測定装置。
【0017】
(5)によれば、配管内の露点温度よりも超音波送信器及び前記超音波受信器の温度が高くなるように、加温装置が制御されることにより、超音波送信器及び前記超音波受信器における結露水の発生を防止することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、超音波送信器及び超音波受信器付近の結露水を低減させることが可能になり、より正確な風速の測定が可能な風速測定装置を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態の風速測定装置を備えた原子力発電所のシステム構成を示す説明図である。
【図2】本発明の第1実施形態の風速測定装置の構成を示す側面図である。
【図3】風速検出部の外観を示す正面図である。
【図4】風速検出部の要部構造を示す側面図である。
【図5】配管に風速測定装置を取り付けた状態を示す外観図である。
【図6】図5の配管内の状態を示す説明図である。
【図7】風速測定装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図8】本発明の第2実施形態の風速測定装置の概略構成を示す説明図である。
【図9】本発明の第2実施形態の風速測定装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図10】本発明の第3実施形態の風速測定装置の概略構成を示す説明図である。
【図11】本発明の第3実施形態の風速測定装置の電気的構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明の実施形態の風速測定装置を備えた原子力発電所のシステム構成を示す説明図である。原子力発電所には、原子炉施設100、タービン建屋110、及び排気筒150等が備えられている。原子炉施設100には、原子炉102が配備されている。タービン建屋110には、タービン112、復水器114が配備されている。そして、原子炉102に水を供給し、水を原子炉102によって加熱して蒸気を発生させる。原子炉施設100で発生した蒸気は、タービン建屋110に供給され、蒸気の力でタービン112を回転させることにより、タービン112に連結されている発電機(図示せず)を回転させる。これにより、発電が行われる。タービン112を通過した蒸気は、復水器114によって水に戻されて、給水ポンプ(図示せず)によって原子炉102に再び供給される。
【0022】
原子炉施設100には配管104が接続されており、この配管104にフィルタ120が接続されている。さらに、フィルタ120には配管106が接続されており、この配管106には、排気筒150に直結している配管130が接続されている。また、タービン建屋110には配管116が接続されており、この配管116にフィルタ122が接続されている。さらに、フィルタ122には配管130が接続されている。
【0023】
また、配管130には、風速測定装置1が設置されている。ここで、配管106と配管130とは、風速測定装置1よりも下流側で合流している。
【0024】
原子炉施設100の排ガスは、配管104を介してフィルタ120に送られる。このフィルタ120によって有害物質が除去されてから、配管116及び配管130を通って排気筒150から大気中に排出される。タービン建屋110の排ガスは、配管116を介してフィルタ122に送られる。排ガスは、このフィルタ122によって有害物質が除去されてから配管130を介して排気筒150に送られる。
【0025】
また、配管130内の排ガスにおける、配管104と合流前の排ガスの流速(以下、風速と称する)が風速測定装置1によって測定され、この検知結果が、図示しない管理室に送られる。
【0026】
[第1実施形態]
図2は、本発明の第1実施形態の風速測定装置の構成を示す側面図である。風速測定装置1は、風速検出部10、変換部12、プローブ14及び固定部16を備えており、プローブ14の一端部に風速検出部10を設け、プローブ14の他端部に変換部12を設け、プローブ14の中央部に固定部16を設けたものである。
【0027】
風速検出部10は、詳細は図3を用いて説明するが、超音波送信器20(図3参照)と超音波受信器22(図3参照)とを備えており、風速検出部10内にカルマン渦を発生させ、超音波送信器20(図3参照)と超音波受信器22(図3参照)との間を通過するカルマン渦によって、超音波送信器20(図3参照)から送信された超音波が変調され、この変調された超音波を超音波受信器22(図3参照)が検出して電気信号として出力するものである。
【0028】
変換部12は、風速検出部10を駆動させるための電源(図示せず)や、超音波受信器22からの電気信号に基づいて風速を求めるための制御回路50(図7参照)を実装した制御基板(図示せず)を備えている。この制御回路50(図7参照)は、超音波受信器22からの電気信号からカルマン渦の通過を検出するごとに、カウンタのカウントをアップする制御を行う。言い換えれば、制御回路50(図7参照)は、カルマン渦の数をカウントする処理を行う。そして、所定時間内におけるカルマン渦の数に基づいて風速を求める処理を行う。
【0029】
プローブ14内には、風速検出部10に電源を供給するための電源線(図示せず)や、風速検出部10からの電気信号を変換部12に送信するための信号線となるリード線(図示せず)が備えられている。
【0030】
固定部16は、風速測定装置1を配管130(図1参照)に設置する際に、配管130(図1参照)との間で密閉状態を保つように連結するものである。
【0031】
図3は、風速検出部の外観を示す正面図である。図4は、風速検出部の要部構造を示す側面図である。風速検出部10は、超音波送信器20、超音波受信器22、渦発生体24及び筐体26を備えている。また、筐体26には、プローブ14の長手方向に対して直角方向に貫通し、正面視略長方形の開口部26aが形成されている。この開口部26aを形成する4つの側面において、プローブ14の長手方向に対向する側面には、超音波送信器20及び超音波受信器22がそれぞれ設置されている。超音波送信器20は、プローブ14に近い側面に固定されており、この超音波送信器20に対して所定の間隔をあけて超音波受信器22が対向配置されている。また、開口部26aを形成する4つの側面において、超音波送信器20及び超音波受信器22が設置されていない一対の側面の中央部には、プローブ14の長手方向に対して直角方向に、渦発生体24となる棒状部材が配置されている。この渦発生体24は、図3に示すように、正面視した場合に、超音波送信器20と超音波受信器22との間に挟まれる位置で、かつ、図4に示すように、側面視した場合に、排ガスが流れる方向において、超音波送信器20及び超音波受信器22に対して上流側に配置されている。
【0032】
また、図4に示すように、開口部26aを形成する4つの側面において、超音波送信器20及び超音波受信器22がそれぞれ設置されている一対の側面は、中央部から上流側に向かって開口が広くなるような斜面となっている。ここで、中央部から排ガスが流れる方向における上流側に渦発生体24が設置されており、中央部から下流側に超音波送信器20及び超音波受信器22が設置されている。
【0033】
さらに、超音波送信器20及び超音波受信器22の表面及びその周囲には、撥水層30が形成されている。この撥水層30は、撥水剤を塗布することによって形成される。なお、撥水層30は、配管130に風速測定装置1を設置する時に形成することが望ましい。また、超音波送信器20及び超音波受信器22の表面を含め、筐体26全体に撥水剤を塗布してもよい。
【0034】
図5は、配管に風速測定装置を取り付けた状態を示す外観図であり、図6は、図5の配管内の状態を示す説明図である。配管130には、風速測定装置1を取り付けるための取付部132が設けられており、この取付部132から風速検出部10及びプローブ14を差し込んでから、固定部16を取付部132に固定する。これにより、風速検出部10が配管130の内部に位置付けられる。
【0035】
配管130の内部において、風速検出部10は、図6に示すように、開口部26aが配管130の軸方向に沿うように位置付けられる。また、プローブ14は、鉛直方向に対して所定角度傾斜させた状態で固定される。本実施形態においては、鉛直方向に対して45°傾斜させた状態で固定される。これにより、撥水層30が形成されている超音波送信器20及び超音波受信器22の表面は、鉛直方向に対して45°傾斜した状態となる。また、配管130に風速測定装置1を取り付けた場合、超音波送信器20と超音波受信器22とは、配管130内を流れる排ガスの移動方向(図6を正面視する方向)に対して直角に対向する。
【0036】
図7は、風速測定装置の電気的構成を示すブロック図である。制御回路50は、CPU52、メモリ54及び外部端子56を備えている。また、制御回路50には、超音波送信器20及び超音波受信器22が接続されている。
【0037】
CPU52は、風速測定装置1全体を制御するものである。メモリ54には、風速測定装置1を制御するための各種のプログラムが記憶されている。例えば、超音波受信器22からの電気信号から、カルマン渦を検出する処理を実行するプログラムや、カルマン渦を検出した場合に、メモリ54の所定領域に記憶されているカウント値を1加算した値に更新するプログラム等が記憶されている。外部端子56は、外部の電子機器に接続し、風速の測定結果を外部の電子機器に出力可能にするものである。
【0038】
次に、図4、図7を参照しながら、風速測定装置1による風速の測定方法について説明する。図4に示すように、配管130内の排ガスの一部は、風速測定装置1の開口部26aを通過する。排ガスが渦発生体24を通過する際に、渦発生体24が障害となってカルマン渦が発生し、このカルマン渦が、超音波送信器20及び超音波受信器22の間を通過する。この時、超音波送信器20から超音波受信器22に向かって発信する超音波がカルマン渦によって変調され、超音波受信器22は、変調された超音波を受信する。また、超音波受信器22は、受信した超音波を電気信号に変換して、変換部12の制御回路50(図7参照)に送信する。そして、図7において、制御回路50のCPU52は、超音波受信器22の電気信号が所定のレベルを越えた否かを検知し、越えたと判断した場合に、カウンタとして機能するメモリ54の所定領域のカウント値を1加算した値に更新する。このように、CPU52は、流速測定手段に相当する。
【0039】
そして、CPU52は、所定時間内におけるカウント値に基づいて風速を求め、求めた風速は、外部端子56を介して管理室に送信され、管理室において風速をモニタ表示させたり、あるいは外部端子56に外部接続された表示装置(図示せず)に送信して、その場でモニタ表示させることにより、風速の監視が行われる。
【0040】
ところで、配管130内を通過する排ガスに、多量の水分が含まれている場合には、気温(配管130内の温度)が低下すると、超音波送信器20及び超音波受信器22に結露水が付着するおそれがある。ここで、本実施形態によれば、仮に、超音波送信器20及び超音波受信器22に結露水が付着したとしても、超音波送信器20及び超音波受信器22に撥水層30が形成されており、しかも、超音波送信器20及び超音波受信器22が鉛直方向に対して45°傾いているため、結露水が超音波送信器20及び超音波受信器22の表面に沿って流れ落ちるようになる。
【0041】
このように第1実施形態によれば、超音波送信器20及び超音波受信器22に結露水が付着した場合に、結露水が超音波送信器20及び超音波受信器22の表面に沿って流れ落ちるようになるため、超音波送信器20及び超音波受信器22付近の結露水を低減させることが可能になる。その結果、結露に起因する計器測定誤差を小さくすることが可能となり、カルマン渦の測定精度が向上することによって、信頼性の高い風速の測定値を得ることが可能になる。
【0042】
[第2実施形態]
図8は、本発明の第2実施形態の風速測定装置の概略構成を示す説明図である。なお、図8に示す第2実施形態の風速測定装置において、図2〜図7に示す第1実施形態の風速測定装置における部材と同一の部材、あるいは同一機能の部材については、同一の符号を付して、詳細な説明は省略した。
【0043】
図8に示す第2実施形態の風速測定装置1は、図2に示す第1実施形態の風速測定装置1に対して、さらに、空気噴出手段に相当するエアパージセット60を設けたものである。
【0044】
エアパージセット60は、先端部に90°の曲げが施され、配管130内に挿入する挿入管62、挿入管62をプローブ14と同じ方向に沿ってスライド移動させる移動機構64、及び挿入管62に空気を供給するエア供給装置66を備えている。
【0045】
挿入管62は、配管130における風速測定装置1の取り付け位置に対して、排ガスの移動方向下流側に設置されている。また、挿入管62は、プローブ14と同一方向に沿ってスライド移動可能であり、移動機構64を駆動制御することにより、図8(a)に示すように、挿入管62の先端部を風速検出部10の開口部26aに対向させること、及び図8(b)に示すように、配管130外に退避させることが可能である。
【0046】
図9は、風速測定装置の電気的構成を示すブロック図である。制御回路50は、CPU52、メモリ54及び外部端子56を備えている。また、制御回路50には、超音波送信器20、超音波受信器22、移動機構64及びエア供給装置66が接続されている。
【0047】
CPU52は、風速測定装置1全体を制御するものである。メモリ54には、風速測定装置1を制御するためのプログラムの他に、移動機構64を制御するプログラム、エア供給装置66を制御するプログラム等が記憶されている。
【0048】
次に、移動機構64及びエア供給装置66の制御について説明する。まず、風速測定装置1を配管130に設置して風速の測定を開始させると、制御回路50のCPU52は、初期設定を行い、超音波受信器22の出力に基づいて、超音波の周波数、振幅、波形等をメモリ54に記憶する制御を行う。その後、制御回路50のCPU52は、メモリ54に記憶した超音波の周波数、振幅、波形等と、超音波受信器22から出力される風速の測定値とを所定時間毎に比較して、超音波の減衰量を求める。そして、CPU52は、超音波の減衰量が所定値よりも大きいと判断した場合に、移動機構64を駆動させ、挿入管62の先端部を開口部26aに対向させる。さらに、CPU52は、エア供給装置66を駆動させ、挿入管62から開口部26aにエアを吹き付ける制御を行う。
【0049】
ここで、挿入管62からのエア圧は、排ガスによる圧力以上の圧力に設定する必要がある。本実施形態においては、流速5m/sの排ガスに対して、20〜30kPaのエア圧でエアを吹き付けている。また、エアを吹き付けた後、CPU52は、そのまま、挿入管62の先端部を開口部26aに対向させた状態で待機させた状態で、超音波の減衰量を求める。
【0050】
そして、CPU52は、超音波の減衰量が所定値よりも大きいか否かを判断して、減衰量が所定値よりも大きいと判断した場合には、再度、挿入管62から開口部26aにエアを吹き付ける。CPU52が、減衰量が所定値よりも大きいと判断しない場合には、移動機構64を駆動させて、挿入管62の先端部を退避させる。このように、CPU52は、噴出制御手段に相当する。
【0051】
このように構成したことにより、超音波送信器20及び超音波受信器22に結露水が付着して、風速の測定値の信頼度が低下した場合に、挿入管62から開口部26aにエアを吹き付けて、結露水を吹き飛ばす。これにより、超音波送信器及び超音波受信器付近の結露水を低減させることが可能になり、その結果、計器測定誤差を小さくすることが可能となり、カルマン渦の測定精度が向上することによって、信頼性の高い風速の測定値を得ることが可能になる。
【0052】
なお、挿入管62を配管130内に待機させる場合には、挿入管62を180°回転させて、挿入管62の先端部に排ガスが入り込まないようにしてもよい。
【0053】
また、超音波送信器20及び超音波受信器22の表面に撥水剤を塗布することにより、撥水層30(図4参照)上において、結露水が滑りやすくなるため、より効率的に結露水を吹き飛ばすことが可能になる。
【0054】
なお、上述した第2実施形態によれば、挿入管62は、配管130における風速測定装置1の取り付け位置に対して、排ガスの移動方向下流側に設置されているが、それに限らず、配管130における風速測定装置1の取り付け位置に対して、排ガスの移動方向上流側に設置してもよい。これにより、排ガスの流れに沿って、開口部26aにエアを吹き付けることができるために、効率よく超音波送信器及び超音波受信器付近の結露水を吹き飛ばすことが可能になる。しかしながら、この場合には、超音波送信器20及び超音波受信器22の上流側において、挿入管62によって排ガスの流れが乱されることにより、超音波送信器20及び超音波受信器22によって正確な風速の計測ができない可能性がある。このため、挿入管62から開口部26aにエアを吹き付けた後に挿入管62を配管130外に退避させ、挿入管62が超音波送信器20及び超音波受信器22の上流側の排ガスの流れを乱さないようにする必要がある。
【0055】
また、上述した第2実施形態によれば、風速測定装置1のCPU52を用いて、移動機構64及びエア供給装置66を制御しているが、それに限らず、エアパージセット60にCPUを設け、このCPUに移動機構64及びエア供給装置66を制御させてもよい。すなわち、外部端子56を介して風速測定装置1とエア供給装置66とを電気的に接続し、風速測定装置1における風速の測定データをエアパージセット60に送信し、エアパージセット60のCPUが、風速測定装置1からの測定データに基づいて、移動機構64及びエア供給装置66を駆動するか否か判断させてもよい。この場合、風速測定装置1に対してエアパージセット60を外付けのオプションとして使用可能であり、エアパージセット60を他の場所で利用することが可能になる。
【0056】
また、上述した第2実施形態によれば、CPU52が、超音波の減衰量が所定値よりも大きいと判断しない場合に、自動的にエアの吹き付けが実行されるが、それ以外でも、例えば、定期的に自動的にエアの吹き付けを実行してもよく、さらには、エアパージセット60に操作パネルを設け、作業員が操作パネルを手動操作することによって、エアの吹き付けを実行可能にしてもよい。
【0057】
[第3実施形態]
図10は、本発明の第3実施形態の風速測定装置の概略構成を示す説明図、図11は、第3実施形態の風速測定装置の電気的構成を示すブロック図である。なお、図10、図11に示す第3実施形態の風速測定装置において、図2〜図7に示す第1実施形態の風速測定装置における部材と同一の部材、あるいは同一機能の部材については、同一の符号を付して、詳細な説明は省略した。
【0058】
図10、図11に示す第3実施形態の風速測定装置1は、図2、図7に示す第1実施形態の風速測定装置1に対して、さらに、加温手段に相当するヒータ70、温度検出器72及び配管温度検出器74を設けたものである。
【0059】
ヒータ70は、プローブ14内における風速検出部10の近傍に配置されている。温度検出器72は、風速検出部10の筐体26(図3参照)内に設置され、風速検出部10の温度、特に超音波送信器20及び超音波受信器22付近の温度を検知するものである。
【0060】
配管温度検出器74は、配管130内における風速測定装置1の近傍に配置され、配管130内の温度を検知するものである。
【0061】
次に、電気的構成について説明する。図11に示すように、制御回路50は、CPU52、メモリ54及び外部端子56を備えている。また、制御回路50には、超音波送信器20、超音波受信器22、ヒータ70、温度検出器72及び配管温度検出器74が接続されている。
【0062】
CPU52は、風速測定装置1全体を制御するものである。メモリ54には、風速測定装置1を制御するためのプログラムの他に、ヒータ70への電源供給を制御するプログラム、配管130内の温度から露点温度を求めるテーブル等が記憶されている。
【0063】
次に、ヒータ70の制御について説明する。制御回路50のCPU52は、配管温度検出器74の検出結果に基づいて露点温度を求め、この露点温度より若干高い温度を基準温度としてメモリ54の所定領域に記憶する。次に、CPU52は、温度検出器72の検出結果に基づいて、ヒータ70への電源供給のオン、オフを行い、風速検出部10の温度が基準温度以下にならないようにフィードバック制御を実行する。このように、CPU52は、加温制御手段に相当する。
【0064】
なお、第3実施形態においては、風速検出部10に結露が発生しないことから、超音波送信器20及び超音波受信器22の表面に撥水剤を塗布して、撥水層30(図4参照)を形成する作業を省略することができる。
【0065】
このように構成した第3実施形態によれば、ヒータ70を制御することによって、プローブ14及び風速検出部10の温度を、配管130内の露点温度よりも高くすることが可能となるため、超音波送信器20及び超音波受信器22に結露水が付着することを、より確実に防止することが可能になる。
【符号の説明】
【0066】
1 風速測定装置
10 風速検出部
12 変換部
14 プローブ
16 固定部
20 超音波送信器
22 超音波受信器
24 渦発生体
26 筐体
26a 開口部
30 撥水層
50 制御回路
52 CPU
54 メモリ
56 外部端子
60 エアパージセット
62 挿入管
64 移動機構
66 エア供給装置
70 ヒータ
72 温度検出器
74 配管内温度検出器
100 原子炉施設
102 原子炉
104、106、116、130 配管
110 タービン建屋
112 タービン
114 復水器
120、122 フィルタ
132 取付部
150 排気筒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管内を流れる流体にカルマン渦を発生させる渦発生体と、当該渦発生体の下流側に配置された超音波送信器と、当該超音波送信器に所定間隔をあけて、前記渦発生体をはさんで対向配置された超音波受信器とを備え、前記超音波受信器の受信信号に基づいて、前記超音波送信器と前記超音波受信器との間を通過した前記カルマン渦の数をカウントし、前記カルマン渦のカウント数から前記流体の速度を測定する風速測定装置を、前記配管に設置する際に、
前記超音波送信器及び前記超音波受信器を、鉛直方向に対して傾斜させ、前記超音波送信器と前記超音波受信器とを、前記配管内を流れる流体の移動方向に対して直角に対向させることを特徴とする風速測定装置の設置方法。
【請求項2】
前記超音波送信器及びその周辺と、前記超音波受信器及びその周辺とに撥水剤を塗布したことを特徴とする請求項1記載の風速測定装置の設置方法。
【請求項3】
配管内を流れる流体にカルマン渦を発生させる渦発生体と、
当該渦発生体の下流側に配置された超音波送信器と、
当該超音波送信器に所定間隔を開けて対向配置された超音波受信器と、
前記超音波受信器の受信信号に基づいて、前記超音波送信器と前記超音波受信器との間を通過した前記カルマン渦の数をカウントし、前記カルマン渦のカウント数から前記流体の速度を測定する流速測定手段と、
前記超音波送信器及び前記超音波受信器に向かって空気を噴出する空気噴出手段と、
前記超音波受信器に基づいて前記超音波送信器及び前記超音波受信器における結露の有無を判定し、結露していると判断した場合に、前記空気噴出手段を駆動させる噴出制御手段とを設けたことを特徴とする風速測定装置。
【請求項4】
前記超音波送信器及びその周辺と、前記超音波受信器及びその周辺とに撥水剤を塗布したことを特徴とする請求項3記載の風速測定装置。
【請求項5】
配管内を流れる流体にカルマン渦を発生させる渦発生体と、
当該渦発生体の下流側に配置された超音波送信器と、
当該超音波送信器に所定間隔を開けて対向配置された超音波受信器と、
前記超音波受信器の受信信号に基づいて、前記超音波送信器と前記超音波受信器との間を通過した前記カルマン渦の数をカウントし、前記カルマン渦のカウント数から前記流体の流速を測定する流速測定手段と、
前記超音波送信器及び前記超音波受信器を加温する加温手段と、
前記配管内の露点温度を求め、前記超音波送信器及び前記超音波受信器の温度が前記露点温度よりも高くなるように加温手段を駆動させる加温制御手段とを設けたことを特徴とする風速測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−83260(P2012−83260A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−230638(P2010−230638)
【出願日】平成22年10月13日(2010.10.13)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)