説明

飛沫戻り防止小便器

【課題】飛沫戻りや気化、衛生および臭気の問題を引き起こすその他の現象を軽減する機能を備えた小便器を提供すること。
【解決手段】利用者の尿を受ける便器であって、尿と内面との間の衝撃角を低減するように設計された曲線形状の内面を有するとともに、該形状が尿を利用者から離れた下方に運ぶように設計されている前記便器と、利用者が前記便器内に放尿するための開口部と、排水路と、の組み合わせから構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して小便器に関し、より詳細には、飛沫、臭気および消費水量を最小限に抑えるように設計された壁および/または床取付小便器に関する。本発明はまた、空間を引き立たせるような形状および色彩/模様のカスタムカバーを有する小便器に関する。
【背景技術】
【0002】
男性用トイレは一般的に、壁および/または床取付小便器を有している。これらの小便器は、男性客の放尿に都合がよいものである。さらに、これらの小便器は場所を節約するとともに、水洗便所で使用される水量を減少させる。
【0003】
従来の小便器に共通する問題は、飛沫戻りとして知られる現象である。飛沫戻りは、利用者の尿の流れが小便器の表面にぶつかる力によって、尿の飛沫が利用者にはね返って起こるものである。図5Aを参照のこと。これは、利用者の衣服に不快なシミを残すばかりでなく、健康被害を招く可能性もある。洗浄水の力もまた、飛沫戻りを起こす可能性がある。
【0004】
従来の小便器に共通する別の問題は、しばしば悪臭を放つことである。尿の流れが小便器の表面に接すると、一部の尿飛沫が気化することになる。飛沫戻りを最小限に抑えることによって、小便器で発生する臭気の量を大いに減少させるとともに、健康危機を軽減する。
【0005】
また、従来の小便器は一般的に、一度の洗浄につき1ガロン以上の水を消費する。低消費水量の小便器や無水小便器が提案され、ある程度の成功を収めてきたが、依然として飛沫戻りがあり、悪臭を放つことが多い。
【0006】
いくつかの発明は、これらの問題を修正することを目的としてきた。飛沫戻り問題を目的とした新しい手法には、円錐形小便器、オフセット頂点を有するV字形小便器、はねよけ付の小便器などがある。例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4を参照のこと。これらの設計の欠点は、尿の流れが別の方向に逸れるので、気化する尿の量が依然として臭気および健康の問題を生じることである。
【0007】
さらに他の発明は、まさに臭気問題を処理することを目的としてきた。これらの解決策には、換気装置を備えた小便器や排水トラップを備えた小便器などがある。例えば、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8を参照のこと。
【0008】
【特許文献1】米国特許第5,027,448号明細書
【特許文献2】米国特許第5,287,563号明細書
【特許文献3】米国特許第5,806,107号明細書
【特許文献4】米国特許第6,470,504号明細書
【特許文献5】米国特許第704,471号明細書
【特許文献6】米国特許第2,646,574号明細書
【特許文献7】米国特許第5,305,473号明細書
【特許文献8】米国特許第6,088,845号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、飛沫戻りや気化、衛生および臭気の問題を引き起こすその他の現象を軽減する機能を備えた小便器の要求を満たすものである。本発明は、利用者の尿を受ける便器であって、尿と内面との間の衝撃角を低減するとともに、尿を利用者から離れた下方に運ぶように設計された曲線形状の表面を有する前記便器と;利用者が前記便器に放尿するための開口部であって、便器に対して中心からずれている前記開口部と;前記開口部からずれたアライメント(配置構造)を有する排水路とからなる飛沫戻り防止小便器を提供する。
【0010】
小便器は、空間を引き立たせるような形状および色彩/模様のカスタムカバーも有する。本発明の好適な実施形態において、小便器は、気化する水および尿の量を減少させると同時に、一度の洗浄に使用される水量を減少させる働きをする節水洗浄装置を備えている。本発明の好適な実施形態において、節水洗浄装置は、ある程度便器の形状に沿う形状に曲げられた給排水管からなる枠部を有する。ノズルは、水または別の液体を、霧、水煙、細流、またはその他の流体形態で便器の表面に散布する。枠部は、小便器すなわち便器と一体的に製造されても、別々に作られてもよい。枠部はまた、従来の小便器に適合するように構成することもできる。
【0011】
特定の実施形態において、小便器はさらに、排気装置に接続されたエアフィルタを有する。小便器の内部および外部からの空気は、エアフィルタを通って排気装置に入る。排気装置は、手動または動作センサで作動するか、もしくは連続運転しているファンに接続される。好ましくは、エアフィルタは、空気が排気装置に入るときに、空気から水分を取り除くように設計された水ストリッパ・フィルタである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明のさらなる特徴および利点は、添付図面を併用して、以下の詳細な説明からわかる。
【0013】
本発明は、小便器に入り込む、および/または小便器の内部で生じる実質上すべての液体、蒸気およびガスの封じ込めおよび処分を最大限にしつつ、飛沫戻りを最小限にまたは解消するように設計された壁または床取付小便器を提供する。また、従来の小便器と違って、本発明の小便器は、形、色彩、質感および模様を含むがこれに限定されない外観の美的形式に関してカスタマイズすることができる。
【0014】
まず図1〜図4を参照すると、本発明にしたがった飛沫戻り防止小便器10は、尿を受ける開口部18を有する便器12からなっている。便器12は、尿の流れの衝撃角を利用者から、すなわち垂直から低減するように設計された曲線形状の内面24を有しており、尿が内面24に接して流れると、尿が開口部18から離れて下内方に案内される。衝撃角を低減することによって、飛沫戻りと気化のいずれもが軽減される。本発明の好適な実施形態では、内面24は、略外サイクロイドまたはハート形すなわち心臓形(カージオイド形)の外形を有する。好ましくは、開口部18は、便器12の底部の排水路22を含む便器12の内面24が開口部18と並ばないように、便器12の片側に向かって配置される。この構成により、尿の流れが開口部18から離れて下方に案内されることによって、飛沫戻りと気化が防止される。図5Bを参照のこと。さらに、便器12の形状と、開口部18の利用による内面24への出入りの制限とによって、内面24の形状によって画定された、すなわち、化学実験室などでよく見られる封じ込めフードと機能が似ている便器12の内部に、不快な臭気や有害な蒸気およびガスを捕獲する能力がもたらされる。
【0015】
小便器10は、液体および気体等の流体を通さない任意の種類の材料、例えばセラミック、プラスチック、ガラスおよび/または金属を含むがこれに限定されない材料から形成される。便器12の外面が任意の形状でよいのに対して、内面は前述したように曲線形状でなければならず、外面の形状とは関係がない。本発明の好適な実施形態では、小便器10は外側の非機能的カバー20を備えており、これは空間を引き立たせるためのさまざまな形状および色彩/模様を有する。
【0016】
図3は、図1の小便器の線3−3に沿った断面図である。図3および図5Bからわかるように、便器内面24の形状は尿の流れを案内して、飛沫戻りを防止し、放尿と流水に付随する気化および噴霧化を低減する。尿が内面24に接すると、尿は逸れて、開口部18から離れて排水路22に向かう方向に案内される。さらに、その形状によって尿が内面24により従いやすく、内面24から逸れて利用者の方にはね返るのではなく、排水路22に向かって表面を沿いやすくなる。この逸れを低減し、尿を開口部18から離して案内することによって、飛沫戻りが起きにくくなる。さらに、内面24の形状が乱流ではなく大きな層流を形成することによって、放尿と流水に付随する気化および噴霧化がさらに低減される。内面24の形状はさまざまな曲線形状であってよいが、好ましくは水平および垂直断面ともに心臓形(カージオイド形)である。さらに、開口部18に対してずらして排水路22を配置することによって特別な利点が生じるものの、排水路22が小便器10の内部の液体を排出する働きをしさえすれば、排水路は便器12の内部のどこへ配置してもよい。さらに、受入開口部18は曲線状の隅部を有する略直線形状として示されているが、開口部の形状と寸法は示されたものに限定されるのではなく、飛沫戻り、悪臭、有害な蒸気およびガスを最小限に抑えながら放尿するために、便器12の効率的な利用が可能な任意の寸法と形状にしてもよい。
【0017】
図2は、本発明の別の実施形態にしたがった飛沫戻り防止小便器10の分解斜視図である。小便器10は、便器12と、蓋14と、フィルタ16と、取付具26とからなる。小便器10はまた、フィルタ16を収容し保持するように構成された開口部28を有する。小便器10はまた、それを通って空気が自由に行き来する開口部30も有する。開口部28および30はさらに、洗浄のため、また洗浄時に便器12に水を入れるための配管を収容するために使用される。取付具26は略平面を形成しており、取付具26はそこで小便器10を壁と実質的に同一平面上に取り付けることができる。取付具26は小便器10を壁に取り付けるために使用されるが、取付具26は小便器10の床への取付にも拡張される。取付具26はまた、小便器10の後部に届くようにもしている。フィルタ16は、開口部28および30を通って排出される空気から水分を濾過するためのものである。一例として、排出中、空気は開口部28を通って上昇し、開口部30を通って流れる。蓋14は空気が小便器10から漏れるのを防止し、さらに空気流を開口部28から開口部30へ案内する。空気が開口部28およびフィルタ16を通って移動する際、フィルタ16は空気から水分を抽出して、それを便器12の内面24へ戻す。
【0018】
図3を再び参照すると、カバー20はまた空隙32を有しており、空気流を収容し、便器12の換気に使用されるさらなる空間を提供する。あるいは、カバー20は、主に美観のために使用される固定片であってもよい。さらに、カバー20は、本発明の飛沫戻り防止小便器10での限定使用に制限されておらず、壁および/または床に取り付けられた従来の小便器での使用にも適応される。そのような場合、カバー20はさらに、飛沫の可能性を制限するように従来の小便器の開口部をある程度覆うことによって、飛沫戻りを低減する。カバー20は、カバーを使用すべきトイレの色彩と装飾と調和または対比するカバーを提供するために、製造時に、着色、彩色および/または織り込み布地、壁紙および/または任意の他の材料から形成される。例えば、トイレの内装を引き立たせる布地または壁紙をカバーに重ねて、仕上げ塗装で保護してもよい。
【0019】
特に図4を参照すると、本発明の好適な実施形態において、尿が小便器の後部を通って換気されて、小便器10が取り付けられる壁に配置されたダクトを通って排出されるように、排気装置が小便器10に連結される。そのような実施形態では、空気は、トイレの屋根裏、天井および/または壁もしくは屋根などの建物の外部に配置されたファンから吸い込まれる。ファンは小便器10の内部に配置してもよく、ファンが便器12から空気を吸い、トイレの外に空気を排気する。ファンは、トイレ用に現在使用されている従来の排気ファンでよい。ファンが作動すると、空気は受入開口部18を通って便器12の内部に吸い込まれる。空気は、便器12の内面24、フィルタ16、開口部28および開口部30を通る空気流44となり、取付具26の開口部から壁40に配置されたダクト42を通って排気される。これにより、尿に付きまとう悪臭、有害な蒸気やガスを運ぶ空気の排出が可能になる。本発明の特定の実施形態は、例えば50立方フィート/分の容積流量の空気を排出するが、これに限らない。この排出により、小便器10から放たれるあらゆる臭気が実質的に解消される。排出量は、便器12の内部のみならず、小便器の周囲の空気の臭気、蒸気およびガスを充分に除去する任意の容積流量でよいことがわかるであろう。あるいは、空気を便器から対流的に吸い込んでもよい。
【0020】
フィルタ16は、排気装置を利用する本発明の特定の実施形態において使用される。フィルタ16は、空気流44から吸い込まれる空気中の水分を遮断して、水分を便器12へ戻す働きをする。フィルタ16は、例えばオフセット穴を有する硬質材料の層で形成される。この穴のオフセットにより、フィルタ16を通る空気が非直線的に移動することによって、フィルタ16の濾過能力が向上する。蒸気は空気から濾過されて、便器12へ戻される。これは、ダクト装置に入り得る水分の量の低減に役立ち、さらに、小便器10が一度取り付けられると開口部30からしか届かない小便器10の後部に位置する部分に形成し得る凝縮を除去する。これには、本来ならば小便器10の後部に衛生問題を形成し得る尿の凝縮も含まれる。フィルタ16はこのような衛生問題を防ぐ働きをし、実質的に小便器10の後部における凝縮の形成を防止する。
【0021】
排気ファンは、連続的に作動しても、例えば、利用者の小便器への接近を検知する動作センサによって断続的に作動させてもよい。排気ファンは、小便器の洗浄時に作動するように配線することもできる。
【0022】
独自の便器設計から生じる本発明の別の特徴および利点は、非常に低い消費水量で作動する能力、すなわち節水洗浄装置である。節水洗浄装置は、水を液状と霧状の両方で利用する。洗浄装置は取付具26の開口部から小便器に連結されており、開口部28および30は洗浄装置および/または排水路22内を円滑にするために利用され、排水路22の一部は洗浄目的で便器12内に水を流すためにある。洗浄装置は霧状および液状の水を利用して、便器12の内面24を洗浄し、便器の内部の水および尿を排水路から放出する。節水洗浄装置はさらに、便器12の内部に保持された尿の蒸発を少なくする。蒸発は、保持される尿の量が蒸発する従来の小便器の洗浄時にはよく起こることである。さらに、従来の小便器の洗浄は、水/尿の混合物の飛沫を利用者および/または床を含む周囲に発生させる。小便器の一般的な洗浄装置のこれらの制限は、本発明の特定の実施形態の節水洗浄装置で回避される。
【0023】
本発明の好適な一実施形態において、給排水管(一具体例では、1/4インチ内径を有する3/8インチ外径銅管)からなる噴霧洗浄装置を利用しており、この管は排水路から約7インチの高さで噴霧枠部の先端に向かって三日月形(クレセント形)に、便器の内壁に三日月が沿うような曲率半径で湾曲している。
【0024】
噴霧枠部は、垂直三日月形800(図6Aおよび図6B参照)および3〜12インチのさまざまな直径を有する円形光輪900(図7参照)などのさまざまな構成で試験されてきた。試験された枠部は、1〜12の噴霧ヘッドを含んでいた。
【0025】
噴霧装置は、小便器の本体と一体的でも、小便器から完全に分離していてもよい。小便器から分離している噴霧器は、排水路の領域の内部から、もしくは小便器の前方開口部の上部、側部または付近から延在する。噴霧装置は便器内部を穿孔して、便器の内部から、または便器に向かって霧を放出してもよい。しかしながら、上方開口部、前方開口部、または便器の内壁の実質的にあらゆる地点への穿孔を含むがこれに限定されない代わりの配置も適用できる。さらに、噴霧装置は便器壁そのものと一体的に形成して、マニホルドや他の給水管を介して便器の外部へ供給してもよい。水は、水の方向、速度、流量および種類(小滴、霧、細流、水煙、靄、蒸気など)を制御する噴霧ノズルおよび/またはスプレーヘッドによって、霧、水煙および/または他の液状または蒸気状形態で便器の内部に放出される。噴霧装置のその他の特定の実施形態には、前方および/または上方開口部を取り囲み、霧を便器の内部に、また前方開口部から出て離れるように案内する噴霧流路が含まれる。
【0026】
水滴寸法は、水圧および噴霧ノズルの修正/特化によって変動する。水滴の寸法が小さければ小さいほど、特定の水量でカバーされる表面領域が大きくなる。したがって、高圧力の流水と特化された噴霧ノズルによって、少量の水が活用できるようになる。
【0027】
噴霧装置が作動している(すなわち霧を生成している)間、便器の内部形状と噴霧ノズルの配向によって、1)換気装置が小便器に連結されて作動している、もしくは2)小便器に連結されていないか、作動していないかにかかわらず、便器から出る霧がなくなる。
【0028】
試験では、37分の噴霧洗浄によって2クオーツの洗浄水が消費された。試験された噴霧枠部は、三日月形で、同時に4つの噴霧ノズルから霧を放出するものであった。洗浄の目標長さは3分未満であり、前述のテストで消費された水の10分の1未満の消費となる。したがって、消費水量は一度の洗浄につき1パイント未満となる。
【0029】
さまざまな噴霧ノズルが市販されており、本発明で好都合に使用することができる。例えば、限定はされないが、1)真鍮ミストノズル MC103C「250PSI以下の圧力用」:1つのミストヘッドにつき毎時1/2〜1ガロン、10〜24のユニファイ並目ねじ ミスト&クール社(Mist&Cool L.L.C.、カリフォルニア州93065、シミ・バレー)より発売、または2)トルネード噴霧器 #162005:1つのミストヘッドにつき毎時7ガロン、全プラスチックノズル レインドリップ社(Raindrip)より発売、などがある。
【0030】
ミスト&クール社の真鍮ミストノズルは霧の小滴をより小さくすることによって、便器の内部を完全にコートするのに必要な水量を低減する。小滴の寸法を減少させることによって水の表面積が大きくなり、ひいては小便器の便器表面の同じ正方形領域をカバーするのに必要な全水量が少なくなる。したがって、高い水圧にすることによって、細かいミストノズルであっても、少量の水を小便器表面の同じ正方形領域をカバー/コート/洗浄するのに充分な霧に変えることができるようになる。
【0031】
噴霧装置は、小便器の洗浄水用の単独手段として使用しても、蒸気、靄、水煙、細流、霧状などの他の任意の種類の液体を利用する液体洗浄装置と併せて使用してもよい。
【0032】
水圧昇圧装置および給排水装置と併せて使用される空気圧縮機を利用して水圧をさらに高めることにより、噴霧装置で使用される細かな霧(小さな水滴)を発生させて、小便器の消費水量をさらに低減することができる。
【0033】
本発明の別の実施形態は、エアフィルタとして水ストリッパ(はぎ手)を利用する。本発明にしたがった水ストリッパは、小便器の便器から排出される空気および/または小便器の周囲の空気から、水、液体、霧、蒸気、靄、湿気などを含むがこれに限定されない流体を濾過および/または除去する。
【0034】
小便器用の水ストリッパは、便器の内部から排出される空気の経路に沿ってどこへ配置してもよい。一実施形態では、ストリッパは便器の上方オリフィス(開口部)全体を塞ぐようにはめ込んで(図8Aおよび図8B参照)、空気がストリッパの横を擦り抜けないように、さらに、換気装置によって空気が便器から、小便器が取り付けられている壁の内部のダクト、あるいは小便器またはトイレ内の他の場所からの空気がそれを通して排出される小便器の外部のダクト(図8Cおよび図8D参照)へ引き込まれる際に、すべての空気がストリッパを通って移動せざるを得ないようになっている。
【0035】
理論にとらわれずに、水ストリッパは運動量保存の法則に従って作用すると考えられている。そのため、水ストリッパを通過する空気流に取り込まれるあらゆる種類の液体(霧、蒸気、霧状液体、靄、湿気、小滴および細流)は、質量が空気よりも著しく大きいため、空気自体よりも大きな運動量を有する。ストリッパを通過する空気はストリッパを通る経路の形状によって急に方向を変えざるを得ないので、取り込まれたあらゆる種類の液体は空気ほど素早く方向を変えられず、そのため、(あらゆる種類の)液体がストリッパの固体表面に衝突して付着することによって、そこに運ばれてきた空気流から離れる。
【0036】
液体がストリッパの表面に衝突した結果、空気は湿気が少なくなり(運ぶ液体の量が減り)、換気装置を通って移動する。ストリッパの表面に衝突する液体は、より多くの液体が同じ表面に衝突するにつれて、ストリッパ表面で大量に凝結および集結する(小滴)。ストリッパにもたらされて継続するあらゆる種類(蒸気、霧、小滴、細流、霧状の尿などを含むがこれに限定されない)の液体の衝突と堆積は、1)小滴が重力によって付着面から引き離されて便器の内部に戻されるほどの大きさまで成長するか、2)小滴は成長し続けないが、その代わり、流れの中の空気の湿気が少なくなり、基本的にストリッパの表面を乾燥させるので、通ってきた空気流にゆっくりと蒸発して戻るか、まで続く。空気流の湿気は噴霧装置の作動中は実質的に減少し、便器を洗浄するための水の大部分は、便器の内部を排水路に向かって下方に滴下されることによって、実際に洗浄が行われる。
【0037】
小便器用の多種多様な水ストリッパのいずれかが本発明で具現化される。図9で示すように、このさまざまな水ストリッパには、限定はされないが、平行スラットを有する平行定盤1101、円形または他の形状のオフセット穴、押出スパイラル1102、ファン羽根が積み重なり集合したように見える層1103などがある。水ストリッパは一般的に、空気を案内して(空気の移動経路の断面積を増大または減少させることによって)速度を変え、かつ/または空気の移動用に直線経路ではなくジグザグ経路が存在するように空気流の方向を急に変えることによって、取り込まれた液体が衝突および付着する表面に案内される。図9は、そのような水ストリッパ内でそのような流れの方向および速度変化がもたらされるような硬質材料の切断の仕方を2次元で示す。
【0038】
使用時、噴霧洗浄水は便器の内部表面全体を均一にコートする。便器の内部形状と噴霧ノズルの配向だけでなく、換気装置を介して小便器の上方開口部に吸い込まれる空気の配向および方向とによって、便器の内部の空気の渦流が形成されて、小便器の便器中の霧の均一なコーティングとともに、便器の内部への霧の完全な封じ込めが促進される。
【0039】
便器の内部形状は、その内部の気体および液体流の渦流も促進する。この渦流はさまざまな有用性があり、例えば、限定はされないが、1)前方開口部から便器に入り込む尿(またはその他の液体流)の乱流の低減と層流の増加(そのような乱流の低減により、飛沫戻りを低減し、臭気を招く気化、噴霧化、蒸発が低減する)、2)便器の壁を通る流水の乱流の低減と層流の増加、3)便器の内壁全体への洗浄装置の噴霧の均一な分布、4)霧が小便器の便器を出るのを妨げるように前方開口部に沿って形成される空気の渦、および5)便器の上方開口部の霧ストリッパを通って吸い上げられる前に、便器の側部に対して霧の小滴を放つ働きもする渦流などがある。
【0040】
便器の内部形状と、噴霧ノズルの配向と、前方開口部に引き込まれ、最終的に便器の上方開口部から(水ストリッパを通って)取り出される空気の流れとはすべて、臭気、飛沫戻り、消費水量を低減する渦流を形成するために相乗的に働く。
【0041】
渦は前方開口部の周囲に形成されて、少なくとも次の2つの利点をもたらす。1)便器の内部に形成される霧を、前方開口部を通る便器内の空気の本流の移動と逆であっても、便器の内壁に沿って引き込むことによって、前方開口部まで小便器の壁を充分かつ完全かつ均一にコーティングすることと、2)便器の内部に抑え込まれ、取り込まれている霧を、便器から前方開口部を介して少しも逃がすことなく保持することである。
【0042】
小便器に連結された作動可能な換気装置がたとえなくても、霧そのものが空気から臭気を低減、緩和および除去する。したがって、たとえ換気装置が存在または作動していなくても、小便器の噴霧装置は、トイレの周囲や付属設備に流出し、汚染してしまう小便器の便器の内部の臭気を実質的に低減および/または解消する。
【0043】
換気装置はまた小便器の外部から便器内に空気を引き込むことによって、さらにトイレの臭気を低減する。
【0044】
本発明の精神および範囲から逸脱することなく、さまざまな変更を行うことができる。例えば、非機能的カバー20は従来の小便器に適合するような寸法および形状の別個の要素として形成してもよい。カバーは、既存の小便器に直接取り付けるために、非機能的スキン、シース、もしくは可撓粘着性のバックパネルまたは布地を含むその他の硬質または可撓性材料からなる。すなわち、図10A〜図10Cおよび図11A〜11Cに示すように、カバーは硬質または成形パネル、すなわち成形構造で形成される。したがって、例えば改装などによって設置された小便器の外観を新しくすることができる。また、エアフィルタ/水ストリッパは従来のトイレ用排気装置に取り入れることもできる。
【0045】
本明細書に記載の実施形態および実施例は、本発明とその実際の適用を最も良く説明し、それによって当業者が本発明を活用できるよう提示されるものであるが、前述の説明および実施例は、単に説明および例示目的で提示されたことが当業者には明らかであろう。記載の説明は、網羅的であること、すなわち本発明を開示の厳密な形態に限定することを目的としていない。したがって、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、前記実施例に照らして多くの修正および変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明にしたがった飛沫戻り防止小便器の正面図である。
【図2】本発明にしたがった飛沫戻り防止小便器の分解斜視図である。
【図3】本発明にしたがった図1の飛沫戻り防止小便器の線3−3に沿った断面図である。
【図4】本発明にしたがった図1の飛沫戻り防止小便器の線4−4に沿った断面図である。
【図5A】従来の小便器の概略上面図である。
【図5B】本発明にしたがった飛沫戻り防止小便器の概略上面図である。
【図6A】本発明の一実施形態にしたがった節水洗浄装置の三日月形噴霧枠部を示す、飛沫戻り防止小便器の分解斜視図である。
【図6B】本発明の一実施形態にしたがった節水洗浄装置の三日月形噴霧枠部を示す、飛沫戻り防止小便器の断面図である。
【図7】本発明の別の実施形態にしたがった節水洗浄装置の光輪(ハイロウ)状噴霧枠部の構成を示す、飛沫戻り防止小便器の斜視図である。
【図8A】本発明のさらに別の実施形態にしたがった空気流路を示す、飛沫戻り防止小便器の図である。
【図8B】本発明のさらに別の実施形態にしたがった空気流路を示す、飛沫戻り防止小便器の図である。
【図8C】本発明のさらに別の実施形態にしたがった空気流路を示す、飛沫戻り防止小便器の図である。
【図8D】本発明のさらに別の実施形態にしたがった空気流路を示す、飛沫戻り防止小便器の図である。
【図9】本発明にしたがって利用できる水ストリッパのさまざまな例示的な幾何学的形状を示す。
【図10A】本発明にしたがった小便器カバーの上面図である。
【図10B】本発明にしたがった小便器カバーの側面図である。
【図10C】本発明にしたがった小便器カバーの正面図である。
【図11A】本発明にしたがった小便器カバーの上面図である。
【図11B】本発明にしたがった小便器カバーの側面図である。
【図11C】本発明にしたがった小便器カバーの正面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者の尿を受ける便器であって、尿と内面との間の衝撃角を低減するように設計された曲線形状の内面を有するとともに、該形状が尿を利用者から離れた下方に運ぶように設計されている前記便器と、
利用者が前記便器内に放尿するための開口部と、
排水路と、
から構成されることを特徴とする小便器。
【請求項2】
前記排水路および前記開口部が利用者に対してずれていることを特徴とする請求項1に記載の小便器。
【請求項3】
エアフィルタをさらに有していることを特徴とする請求項1に記載の小便器。
【請求項4】
前記開口部の上方に前記フィルタにアクセスできる取り外し可能な蓋をさらに有することを特徴とする請求項3に記載の小便器。
【請求項5】
前記小便器が壁または床に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の小便器。
【請求項6】
利用者の尿を受ける便器であって、尿と内面とのの間の衝撃角を低減するとともに、尿を利用者から離れた下方に運ぶように設計された曲線形状の内面を有する前記便器と、
利用者が前記便器に放尿するための開口部であって、前記便器に対して中心からずれている前記開口部と、
前記開口部からずれている排水路と、
から構成され、
壁または床に取り付けられていることを特徴とする小便器。
【請求項7】
エアフィルタと排気装置をさらに有しており、前記小便器からの空気が前記エアフィルタを通って前記排気装置に入ることを特徴とする請求項6に記載の小便器。
【請求項8】
前記排気装置が好ましくはファンに接続されていることを特徴とする請求項7に記載の小便器。
【請求項9】
前記排気装置が前記小便器の内部および周囲から空気を収集することを特徴とする請求項8に記載の小便器。
【請求項10】
前記ファンが連続的に作動することを特徴とする請求項8に記載の小便器。
【請求項11】
前記ファンが動作センサの作動によって作動することを特徴とする請求項8に記載の小便器。
【請求項12】
前記ファンがユーザ入力によって作動することを特徴とする請求項8に記載の小便器。
【請求項13】
利用者の尿を受ける便器であって、尿と内面との間の衝撃角を低減するとともに、尿を利用者から離れた下方に運ぶように設計された曲線形状の内面を有する前記便器と、
利用者が前記便器に放尿するための開口部であって、前記便器に対して中心からずれている前記開口部と、
前記開口部からずれたアライメントを有する排水路と、
低流量で水を分配する枠部を有する節水洗浄装置であって、前記枠部は前記小便器の内面を補完するような形状に曲げられた管からなっており、前記管は噴霧ノズルを有しており、液体が一定圧力で前記枠部に供給される前記節水洗浄装置と、
から構成されることを特徴とする小便器。
【請求項14】
前記便器の内面の形状が心臓形であることを特徴とする請求項1に記載の小便器。
【請求項15】
前記便器の内面の形状が心臓形であることを特徴とする請求項6に記載の小便器。
【請求項16】
前記便器の内面の形状が心臓形であることを特徴とする請求項13に記載の小便器。
【請求項17】
小便器に洗浄水を供給するための枠部を有しており、該枠部が前記小便器の内面を補完するような形状に曲げられた管からなっており、該管が噴霧ノズルを有していることを特徴とする節水洗浄装置。
【請求項18】
前記管が排水管を介して前記小便器内に供給されることを特徴とする請求項17に記載の節水洗浄装置。
【請求項19】
前記管が前記小便器の上部を通って前記小便器内に供給されることを特徴とする請求項17に記載の節水洗浄装置。
【請求項20】
前記枠部が三日月形であることを特徴とする請求項17に記載の節水洗浄装置。
【請求項21】
前記枠部が光輪状であることを特徴とする請求項17に記載の節水洗浄装置。
【請求項22】
前記小便器内に水を分配する枠部を有する節水洗浄装置であって、該枠部は前記小便器の内面を補完するような形状に曲げられた管からなっており、該管は噴霧ノズルを有している節水洗浄装置をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の小便器。
【請求項23】
前記枠部が三日月形であることを特徴とする請求項13に記載の小便器。
【請求項24】
前記枠部が光輪状であることを特徴とする請求項13に記載の小便器。
【請求項25】
前記枠部が三日月形であることを特徴とする請求項22に記載の小便器。
【請求項26】
前記枠部が光輪状であることを特徴とする請求項22に記載の小便器。
【請求項27】
前記管が排水管を介して前記小便器に供給されることを特徴とする請求項13に記載の小便器。
【請求項28】
前記管が前記小便器の上部を通って前記小便器に供給されることを特徴とする請求項13に記載の小便器。
【請求項29】
前記管が排水管を介して前記小便器に供給されることを特徴とする請求項22に記載の小便器。
【請求項30】
前記管が前記小便器の上部を通って前記小便器に供給されることを特徴とする請求項22に記載の小便器。
【請求項31】
1パイント未満の水で作動することを特徴とする請求項16に記載の節水洗浄装置。
【請求項32】
1パイント未満の水で作動することを特徴とする請求項13に記載の小便器。
【請求項33】
1パイント未満の水で作動することを特徴とする請求項22に記載の小便器。
【請求項34】
装置に供給される水の水圧を上昇させるための昇圧器をさらに有することを特徴とする請求項13に記載の節水洗浄装置。
【請求項35】
装置に供給される水の水圧を上昇させるための昇圧器をさらに有することを特徴とする請求項17に記載の小便器。
【請求項36】
装置に供給される水の水圧を上昇させるための昇圧器をさらに有することを特徴とする請求項22に記載の小便器。
【請求項37】
排気装置に接続されたエアフィルタをさらに有しており、前記小便器からの空気が前記エアフィルタを通って前記排気装置に入ることを特徴とする請求項13に記載の小便器。
【請求項38】
前記エアフィルタは好ましくは少なくとも1つの水ストリッパを有しており、前記排気装置内を移動する空気が前記少なくとも1つの水ストリッパを通って引き込まれることを特徴とする請求項37に記載の小便器。
【請求項39】
前記エアフィルタは好ましくは少なくとも1つの水ストリッパを有しており、前記排気装置内を移動する空気が前記少なくとも1つの水ストリッパを通って引き込まれることを特徴とする請求項37に記載の小便器。
【請求項40】
前記少なくとも1つの水ストリッパは、平行スラットを有する平行面、オフセット穴、押出スパイラル、羽根が積み重なり集合した層、からなるグループから選択された幾何学的形状を有していることを特徴とする請求項38に記載の小便器。
【請求項41】
前記少なくとも1つの水ストリッパは、平行スラットを有する平行面、オフセット穴、押出スパイラル、羽根が積み重なり集合した層、からなるグループから選択された幾何学的形状を有していることを特徴とする請求項39に記載の小便器。
【請求項42】
前記開口部の上方に前記フィルタにアクセスできる取り外し可能な蓋をさらに有することを特徴とする請求項7に記載の小便器。
【請求項43】
前記開口部の上方に前記フィルタにアクセスできる取り外し可能な蓋をさらに有することを特徴とする請求項37に記載の小便器。
【請求項44】
非機能的形状のカバーをさらに有することを特徴とする請求項1に記載の小便器カバー。
【請求項45】
非機能的形状のカバーをさらに有することを特徴とする請求項6に記載の小便器。
【請求項46】
非機能的形状のカバーをさらに有することを特徴とする請求項13に記載の小便器。
【請求項47】
前記カバーが前記便器と一体的に形成されることを特徴とする請求項44に記載の小便器。
【請求項48】
前記カバーが前記便器と一体的に形成されることを特徴とする請求項45に記載の小便器。
【請求項49】
前記カバーが前記便器と一体的に形成されることを特徴とする請求項46に記載の小便器。
【請求項50】
前記カバーが前記便器と分離されて形成されることを特徴とする請求項44に記載の小便器。
【請求項51】
前記カバーが前記便器と分離されて形成されることを特徴とする請求項45に記載の小便器。
【請求項52】
前記カバーが前記便器と分離されて形成されることを特徴とする請求項46に記載の小便器。
【請求項53】
便器の利用を妨げることなく小便器に取り付けられる非機能的成形ボディを有することを特徴とする小便器カバー。
【請求項54】
前記成形ボディが中空ボディであることを特徴とする請求項53に記載の小便器カバー。
【請求項55】
前記カバーが硬質または成形パネル、すなわち成形構造で形成されることを特徴とする請求項53に記載の小便器カバー。
【請求項56】
前記カバーが可撓粘着性バックパネルまたは布地で形成されることを特徴とする請求項53に記載の小便器カバー。
【請求項57】
排気装置に接続されたトイレ用エアフィルタであって、少なくとも1つの水ストリッパを有しており、前記排気装置内を移動する空気が前記少なくとも1つの水ストリッパから引き込まれることを特徴とするエアフィルタ。
【請求項58】
前記少なくとも1つの水ストリッパは、平行スラットを有する平行面、オフセット穴、押出スパイラル、羽根が積み重なり集合した層、からなるグループから選択された幾何学的形状を有していることを特徴とする請求項57に記載のエアフィルタ。
【請求項59】
前記排気装置が電動排気装置であることを特徴とする請求項37に記載のエアフィルタ。
【請求項60】
前記排気装置が電動排気装置であることを特徴とする請求項57に記載のエアフィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【公表番号】特表2009−522474(P2009−522474A)
【公表日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−548876(P2008−548876)
【出願日】平成18年12月29日(2006.12.29)
【国際出願番号】PCT/US2006/062758
【国際公開番号】WO2007/100414
【国際公開日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(508191868)
【Fターム(参考)】