説明

飛翔害虫捕獲器具

【課題】飛び回るハエ、蚊などの害虫をはたいて粘着捕獲することができる飛翔害虫捕獲器具を提供する。
【解決手段】棒状の長い握り柄(2)と、該握り柄の先端部に隣り合う面間角度を90度にして取り付けた4個のコ状取付け枠(4)と、該コ状取付け枠に挿脱可能に装着した板体(5)とから構成し、板状体における周辺縁部を除く面部に粘着剤(10)を塗布しておく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛び回るハエ、蚊などの害虫をはたいて粘着捕獲するための飛翔害虫捕獲器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、室内を飛び回ったり壁やカーテンに止まったハエ、蚊、蛾等の厄介な害虫を退治するには、殺虫剤を吹き付けたりハエ叩きで叩いたりして退治するのが一般的である。しかし、殺虫剤を噴霧する方法は殺虫剤の霧が食品や家具にかかる上、人体への安全上の問題がある。ハエ叩きで叩いて殺す方法は潰れた虫の体液が壁や家具を汚し不衛生である。
【0003】
殺虫剤を使用せず、虫を潰さずに捕獲する方法の一つとして、粘着テープや粘着紙で粘着捕獲する方式がある。ハエについては、リボン状の粘着テープを吊しておく方法が知られている。これはハエが止まるのを待って粘着捕獲する方法であるが、より積極的に粘着紙に粘着させて捕獲する方式の捕獲器具が各種提案されている。例えば、特許文献1〜4には、ハエ叩き形状の叩き面に粘着紙を貼り付けた粘着式捕獲器具が開示されている。しかし、これらの捕獲器具は壁、家具、床等の近くで使用した場合、あるいは水平に置いた場合に、粘着面がそれらに接触して汚すおそれがある。また、前後、左右に急激に方向を変えて飛び回るハエ、蚊等を追いかけてはたく場合には、粘着面をハエ、蚊等の方向に向かせる急激な向き変えを必要とし、その向き変えの間に逃げられてしまうことが多い。
【0004】
粘着捕獲器具の形状をハエ叩き形状にするのではなく、凹状の容器として棒状の柄を取り付け、容器内面に粘着剤を塗布したものもある。この方式の捕獲器具の場合は、壁、襖に止まっているハエの上に容器をかぶせ、びっくりして飛び立つハエを粘着剤に付着させて捕える(特許文献5、6)。しかし、この捕獲器具の場合は、ある程度の広さのある平坦な面に止まっているハエしか捕獲できない。狭い場所では長い柄が邪魔して容器をかぶせることが難しく、かぶせる前に逃げられることが多い。
【特許文献1】特開2002−34420号公報
【特許文献2】実登3076246号公報
【特許文献3】実登3066267号公報
【特許文献4】実開昭62−153876号公報
【特許文献5】特開平09−205966号公報
【特許文献6】実開昭63−75179号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来技術のこうした問題点を解決するためになされたもので、その課題は飛び回るハエ、蚊などの害虫をはたいて素早く粘着捕獲することができ、且つ壁、襖、家具等の表面に粘着面が接触することのない飛翔害虫捕獲器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、飛び回るハエ、蚊などの害虫をはたいて粘着捕獲するための飛翔害虫捕獲器具であって、棒状の握り柄と、該握り柄の先端部に隣り合う面間角度を90度にして取り付けた4枚の略矩形の板状体とからなり、該板状体における周辺縁部を除く面部には粘着剤が塗布してあることを特徴とする飛翔害虫捕獲器具である。
【0007】
このような構成の捕獲器具は、飛び回るハエ、蚊等をV字状をなす2枚の板体で挟むようにしてはたくと、ハエ等は左右方向に逃げにくいため捕獲確率が高まる。また、ハエ等が方向を変えて逃げた場合も、2枚の板体が断面十字状に取り付けてあるため板体の面の向きを変えることなく素早くハエ等を追いかけてはたくことができる。そのため、従来の平面形ハエ叩きに粘着剤を塗布した器具よりもハエ等を捕獲し易い利点がある。また、粘着剤は板体の周辺縁部には塗布されていないので、はたく際に捕獲器具が壁、床、家具等に接触したとしても、粘着剤の塗布されていない板体周縁部が接触するだけで粘着剤の塗布面がそれらに接触することはない。また、床の上に寝かせて置いた場合でも床を粘着剤で汚すことがない。はたく代わりに天井等から逆さに吊り下げて粘着式ハエ捕り紙のように使用することもできる。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の飛翔害虫捕獲器具において、各板状体はコ状取付け枠と、該コ状取付け枠に挿脱可能に装着された板体とからなり、コ状取付け枠はその開放端側から板体を挿脱するための案内溝が形成されていて、開放端側を握り柄の先端側にして握り柄の先端部に取り付けてあり、板体は周辺縁部を除く面部に粘着剤が塗布してあることを特徴とする飛翔害虫捕獲器具である。
【0009】
このような構成によれば、ハエ等の捕獲により汚れた板体を汚れていない新たな板体に容易に交換することができる。
【0010】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の飛翔害虫捕獲器具において、4枚の板状体は幅方向中央に長手方向中央にまで延びるスリットを形成した2枚の矩形板体を互いのスリットを噛み合わせて十字状に交差させて構成し、握り柄は先端部に軸方向に延びる四つ割り溝を設け、該四つ割り溝に十字状に交差させた板体を挿入して取り付けるように構成してあることを特徴とする飛翔害虫捕獲器具である。
【0011】
このような構成の飛翔害虫捕獲器具は部品点数が3個と少なく、組立ても容易である。また、組立てる前は2枚の矩形板体を重ねて保管できるため場所を取らない。従って、使用直前に組立てて使用し、使用後は握り柄を含めてそのまま廃却するようにすれば、汚れた矩形板体の処置のために手を汚す必要がなくなる。
【0012】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3の何れかに記載の飛翔害虫捕獲器具において、板体にはハエ、蚊等が容易には通過することのできない程度の小さな孔が多数開けてあることを特徴とする飛翔害虫捕獲器具である。
【0013】
このような構成とすれば捕獲器具を振り回す際の空気抵抗が少なくなり、捕獲器具が迅速に動いてハエ等を捕獲しやすくなる。また、空気が小さな孔を通って反対側に抜けるため、V字状をなす2枚の板体で空気をハエ等に向けて押しやることが少なくなる。従って、押しやられた空気の流れに乗ってハエ等が逃げるのを防ぐことができる。
【0014】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1乃至3の何れかに記載の飛翔害虫捕獲器具において、各板状体における周辺縁部を除く面部に粘着剤を塗布することに代えて、表面に粘着剤を塗布し、裏面に再剥離可能な弱粘着性の粘着層を形成した粘着紙を貼り付けたことを特徴とする飛翔害虫捕獲器具である。
【0015】
このような構成にしておけば、ハエ等の捕獲により汚れた粘着紙を汚れていない新たな粘着紙に容易に交換することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る飛翔害虫捕獲器具の構成例を実施形態に分けて説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態の飛翔害虫捕獲器具1の全体斜視図、図2はその構成を説明するための分解斜視図である。飛翔害虫捕獲器具1は、図2に示すように棒状の長い握り柄3と、その先端部に取り付けた4個のコ状取付け枠4と、そのコ状取付け枠4に装着する4枚の板体5を備えて構成されている。板体5の表面には粘着剤10が塗布してある。
【0017】
握り柄3は樹脂製の長い支持棒で、後端側には手で把持し易くするためのグリップ7が、先端側には4個のコ状取付け枠4が形成されている。コ状取付け枠4は板体5を装着するためのもので、その開放端側から板体5を挿脱するための断面U字状の案内溝8がコ状取付け枠4の内側全体に形成されている。内側3本の案内溝8のうちコ状取付け枠4の開放端に対向する側の枠に設けられたU字状案内溝8aは、板体5の厚みより若干幅狭に形成してある。板体5を案内溝8に挿入する際、板体5をこの幅狭の案内溝8aに押し込む。それにより板体5はコ状取付け枠4から容易には抜けない状態で保持される。
【0018】
4個のコ状取付け枠4は、その開放端を握り柄3の先端方向に向け、装着した板体5の隣り合う面間角度が90度になるようにして握り柄3の先端部に握り柄3と一体的に形成してある。
【0019】
板体5は、厚紙又は樹脂板を矩形に形成したものである。板体5の表裏には、周辺縁部を除く面部に粘着剤10が塗布してある。粘着剤10を塗布する代わりに、表面に粘着剤を塗布し、裏面に再剥離可能な弱粘着性の粘着層を形成した粘着紙を貼り付けてもよい。最も好ましくは、図3に示すようにハエや蚊が容易には通過できない程度の小さな孔11を一面に開けて粘着剤を塗布した板体5aを採用するとよい。
【0020】
本実施形態の飛翔害虫捕獲器具1は握り柄3を持って振り回し、飛び回るハエ、蚊等をはたいて粘着剤10に付着させて捕獲する器具である。例えば、飛んでいるハエを捕獲する際は、図4に示すようにV字状をなす2枚の板体5でハエAを挟むようにはたく。2枚の板体5がV字状をなしているため、従来の平面形の粘着式ハエ叩きを使用した場合よりハエAは左右方向に逃げにくい。そのため捕獲確率が高まる。また、図中の矢印21のように捕獲器具1を振ったところ、ハエAが図中の点線20の軌跡のように逃げた場合、捕獲器具1を直ぐさま矢印22の方向に振ってハエAを追いかけ、はたくことができる。従来の平面形ハエ叩きの場合は、矢印21のように振って点線20のように逃げられた場合には、ハエ叩きの面をハエAの方向に向けねばならない。そのためには手首や腕を回転させるか柄を握り変える必要がある。これに対して本実施形態の捕獲器具1の場合は、そうした握り変えや手首、腕の回転を必要とせず、振る方向を矢印22の方向に切り替えるだけで再びV字状の2枚の板体5でハエAを追いかけ、はたくことができる。この方向の切り替えが瞬時に行なえることから、ハエAを捕獲できる確率が高まる効果を奏する。
【0021】
また、本実施形態の飛翔害虫捕獲器具1では、粘着剤10を塗布した4枚の板体5は十字状に取り付けたコ状取付け枠4に取り付けてある。そのため振り回しの際に捕獲器具1が壁、床、家具等に接触したとしても、コ状取付け枠4が接触するだけで粘着剤10の塗布面がそれらに接触することはない。従って、壁、床等に止まっているハエ、蚊等をV字状の2枚の板体5で覆うようにして捕獲することもできる。従来の平面形の粘着式ハエ叩きでは粘着剤10の塗布面が壁、床等に触れるためそれらの近くでは使用できないし、覆い隠すような捕獲方法も採用できない。また、本実施形態の飛翔害虫捕獲器具1は、床の上に寝かせて置いた場合でも床を粘着剤10で汚すことがない。また、振り回してはたくのではなく、天井等から逆さに吊り下げて粘着式ハエ捕り紙のように使用することもできる。
【0022】
図3に示したような小さな孔11を多数開けた板体5aを採用した場合には、振り回す際の空気抵抗が少なくなり、捕獲器具1が迅速に動いて捕獲しやすくなる。また、空気が小さな孔11を通って反対側に抜けるため、V字状をなす2枚の板体5で空気をハエAに向けて押しやることが少なくなる。従って、押しやられた空気の流れに乗ってハエAが逃げるのを防ぐ効果を奏する。
【0023】
(第2の実施形態)
図5は、第2の実施形態に係る飛翔害虫捕獲器具1aの全体斜視図である。第1の実施形態に係る図1の捕獲器具1では、4枚の板体5をコ状取付け枠4に挿脱可能に装着した。これに対して本実施形態の捕獲器具1aでは、4枚の板体5aは握り柄3の先端部に隣り合う面間角度が90度になるようにして固定的に取り付けてある。板体5aは握り柄3と同じ樹脂で形成されている。
【0024】
板体5aの表裏には、周辺縁部を除く面部に粘着剤10が塗布してある。粘着剤10を塗布する代わりに表面に粘着剤を塗布し、裏面に再剥離可能な弱粘着性の粘着層を形成した粘着紙を貼り付けてもよい。最も好ましくは図3に示したようにハエや蚊が容易には通過できない程度の小さな孔11を一面に開けて粘着剤を塗布するとよい。本実施形態の捕獲器具1aも第1の実施形態に係る飛翔害虫捕獲器具1と同様に使用することができ、同様の効果を奏する。
【0025】
(第3の実施形態)
図6は第3の実施形態に係る飛翔害虫捕獲器具1cの全体斜視図、図7はその分解斜視図である。本実施形態の飛翔害虫捕獲器具1cは、2枚の矩形板体21、22と握り柄23とから構成されている。2枚の矩形板体21、22の幅方向中央には、長手方向に延びるスリット24、25が形成してある。スリット24、25の幅は矩形板体21、22の板厚に等しく、長さは矩形板体21、22の長手方向長さの1/2である。
【0026】
握り柄23には、先端から軸方向に延びる四つ割り溝26が設けてある。四つ割り溝26は、幅が矩形板体21、22の厚さに等しく、長さは矩形板体21、22の長手方向長さより僅かに長くしてある。
【0027】
組立ての際は、矩形板体21、22を互いのスリットを噛み合わせて十字状に交差させて組み合せ、組み合せた状態で握り柄23の四つ割り溝26に挿入する。これにより、握り柄23の先端部に4枚の板体が隣り合う面間角度を90度にして取り付けられたと同じ状態になる。四つ割り溝26の先端部分は矩形板体21、22を挿入し易くするため少し幅広に形成しておくとよい。また、握り柄23の四つ割りされた部分は、溝が閉じる方向に弾性をもたせておくとよい。
【0028】
矩形板体21、22には、周辺縁部と握り柄24に接触する部分とを除く面部27に粘着剤を塗布しておくか、裏面に再剥離可能な弱粘着性の粘着層を形成した粘着紙を貼り付けておく。更に、空気抵抗を少なくするため、図3に示したと同様に矩形板体21、22にはハエ、蚊等が容易には通過することのできない程度の小さい孔を多数開けておくとよい。矩形板体21、22は、厚手の紙、合成樹脂板を材料として形成する。
【0029】
このような飛翔害虫捕獲器具1cは部品点数が3個と少なく、組立ても容易である。また、組立て前は2枚の矩形板体21、22を重ねて保管できるため場所を取らない。従って、使用直前に組立てて使用し、使用後は握り柄24を含めてそのまま廃却するようにすれば、汚れた矩形板体21、22の処置のために手を汚す必要がなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】第1の本実施形態に係る飛翔害虫捕獲器具1の全体斜視図である。
【図2】飛翔害虫捕獲器具1の分解斜視図である。
【図3】板体5の変形実施形態である。
【図4】飛翔害虫捕獲器具1の使用方法を説明する図である。
【図5】第2の本実施形態に係る飛翔害虫捕獲器具1aの全体斜視図である。
【図6】第3の本実施形態に係る飛翔害虫捕獲器具1bの全体斜視図である。
【図7】第3の本実施形態に係る飛翔害虫捕獲器具1bの、分解斜視図である。
【符号の説明】
【0031】
図面中、1、1a、1bは飛翔害虫捕獲器具、3、23は握り柄、4はコ状取付け枠、5、5aは板体、8、8aは案内溝、10は粘着剤、11は孔、21、22は矩形板体、24、25はスリット、26は四つ割り溝を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛び回るハエ、蚊などの害虫をはたいて粘着捕獲するための飛翔害虫捕獲器具であって、棒状の握り柄と、該握り柄の先端部に隣り合う面間角度を90度にして取り付けた4枚の略矩形の板状体とからなり、該板状体における周辺縁部を除く面部には粘着剤が塗布してあることを特徴とする飛翔害虫捕獲器具。
【請求項2】
請求項1に記載の飛翔害虫捕獲器具において、前記各板状体はコ状取付け枠と、該コ状取付け枠に挿脱可能に装着された板体とからなり、
前記コ状取付け枠はその開放端側から前記板体を挿脱するための案内溝が形成されていて、開放端側を前記握り柄の先端側にして前記握り柄の先端部に取り付けてあり、
前記板体は周辺縁部を除く面部に粘着剤が塗布してあることを特徴とする飛翔害虫捕獲器具。
【請求項3】
請求項1に記載の飛翔害虫捕獲器具において、前記4枚の板状体は幅方向中央に長手方向中央にまで延びるスリットを形成した2枚の矩形板体を互いのスリットを噛み合わせて十字状に交差させて構成し、前記握り柄は先端部に軸方向に延びる四つ割り溝を設け、該四つ割り溝に前記十字状に交差させた板体を挿入して取り付けるように構成してあることを特徴とする飛翔害虫捕獲器具。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載の飛翔害虫捕獲器具において、前記板体にはハエ、蚊等が容易には通過することのできない程度の小さな孔が多数開けてあることを特徴とする飛翔害虫捕獲器具。
【請求項5】
請求項1乃至3の何れかに記載の飛翔害虫捕獲器具において、前記各板状体における周辺縁部を除く面部に粘着剤を塗布することに代えて、表面に粘着剤を塗布し、裏面に再剥離可能な弱粘着性の粘着層を形成した粘着紙を貼り付けたことを特徴とする飛翔害虫捕獲器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−254325(P2009−254325A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−120782(P2008−120782)
【出願日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【特許番号】特許第4250670号(P4250670)
【特許公報発行日】平成21年4月8日(2009.4.8)
【出願人】(508083965)
【Fターム(参考)】