食い込み式管接続構造、弁、食い込み式管継手及び冷凍装置
【課題】フェルール先端部のテーパ面が当接されるカム面周りの構造を改良することにより、気密性に優れた食い込み式管接続構造を提供すること。
【解決手段】継手本体1は、基部11から一体的に結合部材側に円筒状に延びるとともに内周面に雌ねじ部13aが形成された雌ねじ筒部13と、基部11から雌ねじ筒部13内へ突出する軸部14と、軸部14の軸心部に形成された接続すべき配管Pを差し込む配管差込口16とを備えている。また、軸部14の先端にはカム面19が形成され、軸部14の外周側には円筒状の空間部15が形成されている。そして、円筒状の空間部15の軸方向長さをS1、カム面19の軸方向長さをS2、軸部14の径方向の厚さをD1としたときに、S1/S2≧0.5(式1)、S1/D1≦0.5(式2)となるように形成されている。
【解決手段】継手本体1は、基部11から一体的に結合部材側に円筒状に延びるとともに内周面に雌ねじ部13aが形成された雌ねじ筒部13と、基部11から雌ねじ筒部13内へ突出する軸部14と、軸部14の軸心部に形成された接続すべき配管Pを差し込む配管差込口16とを備えている。また、軸部14の先端にはカム面19が形成され、軸部14の外周側には円筒状の空間部15が形成されている。そして、円筒状の空間部15の軸方向長さをS1、カム面19の軸方向長さをS2、軸部14の径方向の厚さをD1としたときに、S1/S2≧0.5(式1)、S1/D1≦0.5(式2)となるように形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食い込み式管接続構造に関し、特に、カム面が継手本体に形成された食い込み式管接続構造における継手本体の構造に関する。また、本発明は、このような食い込み式管接続構造を用いた弁、食い込み式管継手及び冷凍装置に関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍装置の冷媒配管、温水装置の給湯配管や給水配管などの配管システムにおいて、配管接続の対象である被接続側の装置、配管等に取り付けられる継手本体と、接続すべき配管に外装された状態で継手本体に螺合されて組み付けされる結合部材と、継手本体と結合部材との間に挟着されるフェルールとを備えた食い込み式管継手が用いられている。
【0003】
このような食い込み式管継手として、図11に記載のようなものがある。これについて説明する。継手本体110は、軸方向の中間部に位置する基部111と、基部111の反結合部材側に形成された非接続装置の機器に螺合により螺子結合されるソケット部112と、ソケット部112の反対側に結合部材120を螺合する雌ねじ筒部113とを備えている。ソケット部112は、外周面に雄ねじ部114を備えている。雌ねじ筒部113は、内周面に結合部材120を螺合する雌ねじ部115を備えている。また、雌ねじ筒部113内の側壁、すなわち、基部111にフェルール130の先端部のテーパ面131を押接するためのカム面116が形成されている。
【0004】
また、継手本体110に螺合される結合部材120は、継手本体110の雌ねじ部115に螺合される雄ねじ部121を備えるとともに、継手本体側の端部から突出するようにフェルール130が薄肉部132を介して一体的に形成されている。フェルール130は、結合部材120の締結工程において薄肉部132が切断され、その後の締結過程において独立のフェルールと同様に作用するものである。フェルール130の後方には所定の空間を空けて押圧面122が形成されている。なお、図11は、結合部材120の締結途中の状態図であって、フェルール130の薄肉部132が切断され、フェルール130の後端面がこの押圧面122のより押圧されている。これを先行技術1と称する。
【0005】
また、他の先行技術として、図12に示すようなものがある。これについて説明する。継手本体210は、軸方向の中間部に位置する基部211と、基部211の反結合部材側に形成されたソケット部212と、基部211の結合部材側に形成された雌ねじ筒部213とを備えている。ソケット部212は、被接続装置の配管Paにろう付される。雌ねじ筒部213は、内周面に結合部材220を螺合する雌ねじ部214が形成されている。雌ねじ筒部213の後側部の内部には、基部211から突出するように軸部215が形成されている。そして、軸部215の先端には、フェルール230のテーパ面231が押接されるカム面216が形成され、軸部215の外周と雌ねじ筒部213の内周面との間には、円筒状の空間部217が形成されている。
【0006】
継手本体210に螺合される結合部材220は、継手本体210の雌ねじ部214に螺合される雄ねじ部221を備えるとともに、継手本体側の端部から突出するようにフェルール230が薄肉部232を介して一体的に形成されている。フェルール230の後方には所定の空間を空けて押圧面222が形成されている。さらに、結合部材220の継手本体側の端部における外周部から突出するように、フェルール230の外側を囲う保護筒部223が結合部材220と一体的に形成されている。この保護筒部223は、フェルール230が損傷を受けるのを保護するためのものであって、前述の空間部217は結合部材220が継手本体210に締結されるときに、保護筒部223を収納するスペースとして機能する。なお、図12は、結合部材2の締結開始時の状態図であって、フェルール230の薄肉部232がまだ切断されていない状態となっているが、締結過程が進むと図11のように切断される。以下これを先行技術2と称する。
【0007】
なお、上記先行技術1及び先行技術2は特許文献1に記載されている。
【特許文献1】特開2008−106935号公報、図22、図60
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、本発明者がカム面とフェルールのテーパ面とのシールのメカニズムについて研究を重ねた結果、先行技術1について次のような問題点のあることが解明された。
すなわち、先行技術1の場合には、カム面116が継手本体110の基部111に直接形成されるため、基部111の剛性により、フェルール130を配管に食い込ませるときに、図示Z矢印方向へのカム面116の撓みや、フェルール130のテーパ面131に馴染むようなカム面116の変形が少なくなる。このため、カム面116とフェルール130のテーパ面131とが面接触し難くなるとともに円周方向に均一な接触が維持され難くなり、漏れが生じやすくなる。
【0009】
なお、先行技術2は、カム面216が軸部215の先端に形成されているので、軸部215の剛性が大きい場合には上記先行技術と同一の問題点を有する。しかしながら、先行技術2は、このようなカム面216とフェルール230のテーパ面231との面接触を加味してカム面216及び軸部215周りの形状を設定したものではなく、上記問題点とは無関係に定められた構造を示しているに過ぎない。
【0010】
本発明は、従来技術に存在するこのような問題点に着目してなされたものであって、フェルール先端部のテーパ面が当接されるカム面周りの構造を改良することにより気密性に優れた食い込み式管接続構造を提供することを目的とする。また、本発明は、このような食い込み式管接続構造を用いた弁、食い込み式管継手及び冷凍装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る食い込み式管接続構造は、上記課題を解決するものであって、被接続側に取り付けられる継手本体と、継手本体に螺合される結合部材と、継手本体と結合部材との間に挟着されるフェルールとを備え、前記継手本体は、基部から一体的に結合部材側に円筒状に延びるとともに内周面に雌ねじ部が形成された雌ねじ筒部と、基部から雌ねじ筒部内へ突出する軸部と、軸部の軸心部に形成された接続すべき配管を差し込む配管差込口と、この配管差込口に連続して軸部の先端に形成された、フェルールの先端部のテーパ面を押し付けるためのカム面と、軸部と雌ねじ筒部の内周面との間に形成された円筒状の空間部とを有し、前記継手本体における円筒状の空間部及び軸部は、次の(式1)及び(式2)
S1/S2≧0.5 (式1)
S1/D1≧0.5 (式2)
但し、S1=円筒状の空間部の軸方向長さ、
S2=カム面の軸方向長さ、
D1=軸部の径方向の厚さ
を満たすように構成されていることを特徴とする。
【0012】
このような構成上の特徴を有する本発明に係る食い込み式管接続構造によれば、基部から雌ねじ筒部内へ突出する軸部の先端にカム面が形成されるとともに、軸部の外周側には円筒状の空間部が形成されている。そして、円筒状の空間部の軸方向長さ、カム面の軸方向長さ、及び、軸部の径方向の厚さが適切な関係に形成される。これにより、カム面とフェルールのテーパ面との馴染みが良好になり、気密性に優れた食い込み式管接続構造を提供することができる。
【0013】
また、このような食い込み式管接続構造において、前記継手本体における円筒状の空間部を、次の(式3)
S1/D2≦2.0 (式3)
但し、D2=円筒状の空間部の径方向の幅
を満たすように構成することが好ましい。このように構成すれば、軸部外周側の円筒状の空間部の加工が容易となり、加工時間を短縮することができる。
【0014】
また、このような食い込み式管接続構造において、前記継手本体における円筒状の空間部及び軸部は、次の(式4)
0.1<S2/D0<0.4 (式4)
但し、D0=接続すべき配管の外径、
を満たすように構成することが好ましい。このように構成すれば、冷凍装置用の管継手などに実用化する上で適切な構造とすることができる。
【0015】
また、前記継手本体は、基部の反結合部材側にソケット部を有し、このソケット部は、被接続側にろう付されるように構成してもよい。このようにソケット部をろう付構造として、継手本体が被接続側に固定される場合、ろう付のための熱が継手本体に加えられる。しかしながら、継手本体を加熱する熱は、軸部と雌ねじ筒部の内周面との間に形成された円筒状の空間部による熱遮断作用により、カム面への直接的な伝熱が回避されるので、カム面に熱変形を生じることがなくなるとともに、カム面の表面に酸化被膜が形成されるといったことがなくなる。この結果、カム面とフェルールのテーパ面との気密性能を向上することができる。
【0016】
また、このような食い込み式管接続構造において、接続すべき配管は銅管とし、前記継手本体、結合部材及びフェルールは黄銅製とすることができる。このように構成すれば冷凍装置用に好適な食い込み式管接続構造を提供することができる。
【0017】
また、このような食い込み式管接続構造において、前記結合部材は、接続すべき配管を貫通させる配管貫通孔を備えるとともに、継手本体側の側面にフェルールを押圧する押圧面が形成され、さらに、外周面に前記雌ねじ部に螺合される雄ねじ部が形成された管接続部を有するように構成してもよい。このように構成すれば、継手本体及び結合部材と別体に形成されたフェルールを用いた食い込み式管接続構造を容易に形成することができる。
【0018】
また、本発明に係る弁及び管継手は、上記何れかの管接続構造を管継手部に用いたことを特徴とする。したがって、このような弁、管継手は、気密性に優れたものとすることができる。
【0019】
また、本発明に係る冷凍装置は、これら弁或は管継手を冷媒回路に用いたことを特徴とする。したがって、本発明に係る冷凍装置は、上記のような弁、管継手を用いているので、気密性の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る食い込み式管接続構造によれば、先端部にカム面を有する軸部と雌ねじ筒部の内周面との間に形成された円筒状の空間部の軸方向長さ、カム面の軸方向長さ、及び、軸部の径方向の厚さが適切な関係に形成されるので、気密性に優れたものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態に係る食い込み式管接続構造について、図面に基づき説明する。
本実施の形態に係る管接続構造は、空気調和機などの冷凍装置の分野において、冷媒回路中の食い込み式管継手における管継手部に適用される他、分離型空気調和機の室外機における室内外連絡配管を接続する閉鎖弁の管継手部などに適用される。図1は、このような管接続構造を管継手部に採用した食い込み式管継手の部分断面図であって、締結開始時の状態図であり、図2は、同食い込み式管継手においてフェルールを結合部材に仮止めした組付状態図である。
【0022】
本実施の形態に係る食い込み式管接続構造は、図1及び図2に示すように、配管を接続しようとする被接続側に取り付けられる継手本体1と、継手本体1に螺合されて組み付けられる結合部材2と、継手本体1及び結合部材2とは別体に形成されるとともに、継手本体1と結合部材2との間に挟着されるフェルール3とを備えている。なお、本明細書の説明において前後の方向をいうときは、継手本体1側、例えば、図1における継手本体側、すなわち、図1における左側を前側とし、結合部材2側、すなわち、図1における右側を後側とする。
【0023】
継手本体1は、黄銅製であって、前述の図1、図2、及び継手本体の単体図面である図3に示すように、軸方向の中心部に位置する基部11の前側にソケット部12が形成されるとともに、基部11の外周部の後側に雌ねじ筒部13が形成され、さらに、基部11の軸心部の後側に、雌ねじ筒部13内の空間部に突出する軸部14が形成されている。雌ねじ筒部13の内面には、結合部材2の螺合部としての雌ねじ部13aが形成されている。軸部14の外周側には、配管接続時に軸部14の強度を調節するための円筒状の空間部15が形成されている。また、この円筒状の空間部15の基端部には内部凍結防止用の通気孔15aが形成されている(図3(b)参照)。
【0024】
基部11及び雌ねじ筒部13の外形は、六角ナット状に一体的に形成されている。基部11から軸部14にかけての軸心部には配管Pを差し込む配管差込口16が形成され、基部11からソケット部12にかけての軸心部には被接続側装置から導出される配管Paを差し込む配管差込口17が形成されている。また、配管差込口16と配管差込口17との間には、連通孔を形成するとともに配管P及び配管Paの位置規制を行う段部18が形成されている。段部18は、配管差込口16、17に差し込まれた配管P,Paの先端部を段部18の端面に当接させることにより、配管P,Paの先端位置を一定に保持する。なお、段部18の前側の端面は、加工時の刃具の外形形状が残されてテーパ状に形成されている。
【0025】
軸部14の先端部、すなわち、配管差込口16の入口部にはカム面19が形成されている。カム面19は、前側において配管差込口16に連なり、後側(結合部材2側)に向けて径が大きくなる円錐状の面に形成されている。また、カム面19は、入口側、すなわち、後側(結合部材2側)の円錐部の拡がり角度θ1に対し、前側の配管差込口16に連なる近辺部19aの拡がり角度θ2が大となるように形成されている(図3(c)参照)。
【0026】
上記構成において、図3(b)に示すように、
S1=円筒状の空間部15の軸方向長さ、
S2=カム面19の軸方向長さ、
D1=軸部14の径方向の厚さ
D2=円筒状の空間部15の径方向の幅
D0=接続すべき配管Pの外径
としたときに、
S1/S2≧0.5 (式1)
S1/D1≧0.5 (式2)
S1/D2≦2.0 (式3)
0.1<D1/D0<0.4 (式4)
の関係に形成されている。
【0027】
結合部材2は、黄銅製であって、図1、図2、及び結合部材の単体図面である図4に示すように、軸心に配管Pを貫通させる配管貫通孔21が形成されるとともに、結合部材2を二分するように径方向の切れ目を成す円盤状スリット22が形成されている。そして、円盤状スリット22の継手本体側に継手本体1に螺合されるとともに配管接続機構を構成する管接続部23が形成され、円盤状スリット22の反継手本体側に一般の締結工具で把持可能とするように形成された把持部24が形成されている。なお、円盤状スリット22の軸方向の位置は、継手本体1に対し結合部材2が締結されて配管接続作業が完了した状態において、継手本体1の結合部材側端面の位置と略一致するように配置されている(図6参照)。
【0028】
管接続部23の外周には、継手本体1と螺合する螺合部としての雄ねじ部23aが形成されている。また、把持部24の外形は、締結工具で把持可能とするように六角ナット状に形成されている。そして、円盤状スリット22と配管貫通孔21との間に、薄肉の管状部により管接続部23と把持部24とを連結する管状連結部26が形成されている。管状連結部26は、把持部24を締め付ける回転トルクが配管接続完了時の値まで大きくなると切断される強度に設計されている。
【0029】
管接続部23の継手本体端部には、本発明の骨子を成すフェルール3の後端部を仮止めするための仮止め機構の一部が形成されている。すなわち、管接続部23の継手本体側端部には凹部27が形成され、この凹部27の奥端面がフェルール3を押圧する押圧面28として形成されている。押圧面28は、軸心側が後方へ広がる傾斜面に形成されている。そして、この凹部27の入口には径方向内向きの環状の突部29が形成されている。この突部29の端面は、前方に径が大きくなる傾斜面に形成されている(図2及び図4(c)参照)。この傾斜面29aは、後述するフェルール3の後端部に形成される環状の突部35を圧入し易くするためのものである。また、この内向きの突部29と押圧面28との間に環状の拡径部29bが形成されている。
【0030】
また、管接続部23の反継手本体側の面には、後述する特別の工具と係合する係合部として、断面が円形で所定深さの4個の係合穴部51が形成されている。また、把持部24には、前記係合穴部51を把持部24の反継手本体側から加工可能とする加工用穴52が形成されている。この加工用穴52は、係合穴部51と相対向する位置に加工されており、図5に示すように、所定円周上において等間隔に4個形成されている。
【0031】
フェルール3は、黄銅製であって、図1、図2、及びフェルールの単体図面である図5に示すように、継手本体1及び結合部材2とは別体に形成された独立のフェルールである。そして、フェルール3は、配管Pを挿通させる挿通孔31が形成された環状物であって、軸方向に切断した断面で見て、前部32の外周面が先細のテーパ面33に形成され、さらに、後部34の外周面が軸心に略平行な円筒状の平行面に形成されている。
【0032】
前方外周面を成すテーパ面33は、軸心に対する傾斜角度がカム面19の後側の円錐部の拡がり角度θ1より小さく形成されている。これにより、フェルール3の前部が曲げられ易くなり、カム面19とテーパ面33との接触面積が大きくなるように形成されている。
【0033】
また、フェルール3の後端部には、フェルール3の仮止め機構の一部として、径方向外向きの環状の突部35が形成されている。この突部35の外周端面は、フェルール3の後部34の突部35を結合部材2の拡径部29bに圧入しやすくするために、後方に径が小さくなる傾斜面35aに形成されている(図2参照)。この突部35の最大径部の外径は、前述の結合部材2の径方向内向きの環状の突部29の最小内径より僅かに大きく形成されており、圧入変形により前記内向きの突部29を介して拡径部29bに押し込められる。また、突部35の軸方向寸法は、前述の拡径部29bの軸方向寸法より僅かに小さくなるように形成されている。
【0034】
フェルール3の仮止め機構は、管接続部23の継手本体側端面及びフェルール3の後端部において上述のように構成されている。これにより、フェルール3の後端部が結合部材2の継手本体側側面に形成された凹部27に対し、着脱自在に、かつ、結合部材2に仮止めされて一体化されたまま搬送可能に、かつ、継手本体1に対し組み付け可能に構成されている。
【0035】
フェルール3の後端面は、押圧面28により押圧される受圧面である。また、フェルール3の後端面は、中心側が前方となる傾斜面34aが中心軸側に形成され、中心軸に垂直な垂直面34bが外周側に形成されている。また、傾斜面34aと挿通孔31との交差により形成される角部が後エッジ部を形成している。
【0036】
また、フェルール3には、挿通孔31の内周面から外周方向に切り込まれた切込部である第1ノッチ36、第2ノッチ37が形成されている。第1ノッチ36は軸方向の先端部に形成され、第2ノッチ37は軸方向の後よりに形成されている。第1ノッチ36は、この第1ノッチ36の前方にある先端部分の変形を容易にするためのものである。第1ノッチ36は、軸心方向に切断した断面形状が直角三角形であって、後方の切込端面と挿通孔31との交差により形成される角部が前エッジ部を形成している。
【0037】
第2ノッチ37は、軸方向における第1ノッチ36と後端面との間における後端面よりの位置に形成されている。この第2ノッチ37は、外周側に短い辺を備えた略三角形状に形成されている。フェルール3は、図2に示すように、第2ノッチ37とフェルール3の外周面との間に薄肉部38が形成されるとともに、後端面に傾斜面34aが形成されていることにより、薄肉部38をヒンジのようにして前後部が軸心側に曲がり易くなっている。この結果、フェルール3の前部32のテーパ面33がカム面19に密着し易くなるとともに、フェルール3の後端に形成される後エッジ部が配管Pに食い込み易くなっている。
【0038】
以上のように形成されるフェルール3は、部品として搬送及び管理段階において、その後端部が結合部材2に仮止めされて一体化される。この仮止めされた状態図が図2である。このような仮止め状態とするには、フェルール3の中心軸と結合部材2の中心軸とを芯合せした状態として、フェルール3の後端部を結合部材2の凹部27に押し付ける。これにより、フェルール3の突部35の外周端面の傾斜面35aと結合部材2の内向き突部29の内周端面の傾斜面29aとが当接し、次いで、フェルール3の後端部が圧入変形される。そして、フェルール3の突部35が僅かに縮径して、拡径部29b内に挿入される。突部35は、拡径部29bに挿入された後自由状態に戻るため、外径が結合部材2の内向き突部29の内径より僅かに大きくなり、フェルール3が仮止めされるとともに搬送作業時においてフェルール3の仮止めされた状態が維持される。しかし、この内向き突部29と外向き突部35の引っ掛かりは僅かであるため、フェルール3を軸方向に引っ張ることによりフェルール3を結合部材2から取り外すことも可能である。
【0039】
次に、以上のように構成された本結合部材による配管接続方法について説明する。
継手本体1及び結合部材2により配管Pを接続するに際しては、先ず継手本体1が被接続側の配管Paにろう付される。このろう付は、配管Paの先端部が段部18に当接するように、配管Paをソケット部12の配管差込口17に差し込み、次いで、ソケット部12を加熱しながらろう材を配管差込口17と配管Paの隙間に流し込んでろう付される。このとき、ソケット部12に加えられた熱がカム面19の方に熱伝導されるが、円筒状の空間部15の熱遮断効果によりカム面19に熱変形が生じたり、カム面19に酸化皮膜が形成されたりすることが抑制される。なお、継手本体1が取り付けられる対象としては、配管、閉鎖弁等の各種機器の配管接続ポートである。
【0040】
このように被接続側の配管Paに取り付けられた継手本体1に対し、接続すべき配管Pが次のようにして接続される。先ず配管Pを、フェルール3が仮止めされた状態の結合部材2の配管貫通孔21及びフェルール3の挿通孔31に貫挿させて結合部材2を配管Pに外装する。この外装作業は、フェルール3が仮止めされた状態の結合部材2を継手本体1から分離した状態として配管Pに外装してもよいし、フェルール3が仮止めされた状態の結合部材2を継手本体1に緩く螺合した状態としておいて、結合部材2の後方から配管Pを挿入するようにしてもよい。そして、配管Pの先端部をフェルール3の挿通孔31を通して配管差込口16に挿入し、その先端を段部18の段差状の端面に当接させた状態として結合部材2を継手本体1に螺合する。この螺合により図1に示すようにフェルール3の後端部が押圧面28に当接する状態となる。
【0041】
この状態から引き続き結合部材2を手回しで締め付けると、フェルール3における第1ノッチ36前方の先端部分が配管Pと配管差込口16との間に楔状に差し込まれ、配管Pが仮止めされる。そして、締結工具により結合部材2がさらに締め付けられると、押圧面28の軸心側が後方へ拡がる傾斜面に形成されているので、フェルール3の薄肉部38を中心として前後の部分が軸心側に曲がりやすくなる。したがって、フェルール3は、第2ノッチ37の前部においては、薄肉部38を中心にして前エッジ部が配管Pに食い込むように傾斜し、第2ノッチ37の後部においては、薄肉部38を中心にして後端の後エッジ部が配管Pに食い込むように傾斜する(図6参照)。これにより、フェルール3のテーパ面33がカム面19に押し付けられる。また、一方で、カム面19を形成する軸部14周りの寸法が、前述の関係に形成されているため、カム面19とテーパ面33との馴染みが良好となり、配管接続後の漏れ量が低減される。
【0042】
このようにして、フェルール3における前エッジ部及び後エッジ部の食い込みが所定量に達すると、図6に示すように、継手本体1の雌ねじ筒部13の端部と円盤状スリット22の継手本体側の面とが略一致する。また、このような状態まで結合部材2が締め付けられると、回転トルクが配管接続完了時の値に到達し、管状連結部26が切断されて継手本体1の雌ねじ筒部13から突出した状態にある把持部24が切断される。これにより結合部材2の接続作業が完了する。
【0043】
次に、上記のような状態で締結された配管接続部は、把持部24が切断されるため誰でもが勝手に接続部を緩めることができないが、図7に示すような専用の工具を用いることにより、この配管接続部を緩めることができる。
【0044】
この専用工具60は、図7に示すように、半円盤状の基体部61に柄部62が取り付けられている。基体部61の半円状穴63の内周半径は配管Pよりやや大径に形成されている。また、係合部として基体部61の側面に、管接続部23の4個の係合穴部51の内、任意の隣り合う3個に係合可能な3個の円柱状の係合突部64が形成されている。
【0045】
そして、この専用工具の係合突部64を管接続部23の任意の隣り合う3個の係合穴部51に係合させて、専用工具60の柄部62に力を入れて基体部61を回転させることにより、管接続部23を回転させて継手本体1との螺合を緩めることができ、配管Pを継手本体1から取り外すことができる。この配管接続解除方法によれば、配管Pを切断することなく、配管Pを取り外すことができるので配管接続解除工事が簡単になる。また、継手本体1を残した状態で配管Pを取り外すとともに、結合部材2に仮止めされていたフェルール3を引き抜くことにより、この継手本体1に対し新たなフェルール3を用いて配管Pを再度接続することができる。
【0046】
次に以上のように構成された本実施の形態に係る食い込み式管接続構造によれば次のような効果を奏することができる。
(1)基部11から雌ねじ筒部13内へ突出する軸部14の先端にカム面19が形成されるとともに、軸部14の外周に形成される円筒状の空間部15の軸方向長さS1、カム面19の軸方向長さS2、及び、軸部14の径方向の厚さD1が前述の式(1)及び式(2)のような関係に形成されている。これにより、カム面19とフェルール3のテーパ面33との馴染みを良好にすることができる。図8及び図9は、円筒状の空間部15の軸方向長さS1、カム面の軸方向長さS2、及び、軸部14の径方向の厚さD1を前述の式(1)及び式(2)のような関係とする根拠を示したもので、この式を満たすことにより漏れ量が低減され、気密性に優れた食い込み式管接続構造を提供することができる。
【0047】
(2)また、円筒状の空間部15の軸方向長さS1と円筒状の空間部の径方向の幅D2とが式(3)を満たすように形成されているので、円筒状の空間部15の径方向の幅D2が小さく、円筒状の空間部15の軸方向長さS1が大きいといった形状にはならない。これにより、円筒状の空間部15の加工が容易となり、円筒状の空間部15の加工時間を短縮することができる。図10は、式(3)の根拠となるデータを示したものである。
【0048】
(3)また、カム面19の軸方向長さS2と接続すべき配管Pの外径D0とが式(4)を満たすように形成されているので、冷凍装置用の管継手などに実用化する上で適切な構造とすることができる。
【0049】
(4)また、ソケット部12に配管Paをろう付するときに加えられる熱が、円筒状の空間部15による熱遮断効果により、カム面19に直接的に伝導されないので、カム面19に熱変形が生じたり、カム面19の表面に酸化被膜が形成されたりといったことがなくなる。
【0050】
(5)また、接続すべき配管Pを銅管とし、継手本体1、結合部材2及びフェルール3を黄銅製としているので、冷凍装置用に好適な食い込み式管接続構造を提供することができる。
【0051】
(6)また、結合部材2は、接続すべき配管Pを貫通させる配管貫通孔21を備えるとともに、継手本体側の側面にフェルール3を押圧する押圧面28が形成され、さらに、外周面に雌ねじ部13aに螺合される雄ねじ部23aが形成された管接続部23を有するように構成されている。したがって、継手本体1及び結合部材2と別体に形成されたフェルール3を用いた食い込み式管接続構造を容易に形成することができる。
【0052】
(7)また、継手本体1及び結合部材2とは別体に形成されたフェルール3を用いるので、前述の従来例のような結合部材2に一体化されたフェルール3を用いる場合に比較すると、フェルール3の加工時間を短縮することができる。
【0053】
(8)また、フェルール3は、継手本体1及び結合部材2とは別体に形成されているが、部品としての取り扱いの段階からフェルール3の後端部が結合部材2に仮止めすることができるので、通常の別体独立型のフェルールを用いる場合のように、部品管理の工数が大きくなったり、フェルールを紛失したりするなどの問題がない。
【0054】
(9)また、本発明の弁や管継手は、上記構成の管接続構造を管継手部に用いているので、加工時間が短縮され、コスト軽減が行われる。また、気密性に優れたものとすることができる。
【0055】
(10)また、本発明の冷凍装置は、このような弁或は管継手を冷媒回路に用いているので、冷凍装置のコスト軽減及び気密性の向上を図ることができる。
(変形例)
上記実施の形態において以下のように変更することもできる。
【0056】
・フェルール3は、上記実施の形態においては、継手本体1及び結合部材2とは別体に形成されるとともに、結合部材2に仮止めされて一体化されたたまま保管、搬送、継手本体1への取付が可能に形成されているが、このように仮止めを行わずに別体独立の部品として従来と同様に取り扱うものとしてもよい。また、従来例のように結合部材2と一体に形成されたものとしてもよい。
【0057】
・フェルール3と結合部材2との仮止め機構は、結合部材2に対し回動可能及び所定範囲内で軸方向に移動可能に仮止めされるとともに、結合部材2に仮止めされて一体化されたたまま搬送可能、かつ、継手本体に対し組み付け可能に構成されるものであれば、他の構造に変更してもよい。
【0058】
・結合部材2に仮止めされたフェルール3を保護するための囲いを結合部材2に対し着脱自在に取り付けるようにしてもよい。
・継手本体1は、被接続側の配管Paにろう付により固定されるように形成されているが、ソケット部12が被接続側の容器、装置等の接続口に挿入され、ろう付されて固定されるように形成されているものでもよい。この場合においても、ろう付によりソケット部12に加えられる熱は円筒状の空間部15により熱遮断されるので、カム面19における熱歪みの発生や酸化膜の形成を抑制することができる。
【0059】
・また、ソケット部12の外周面に雄ねじ部を形成し、ソケット部12が被接続側の機器等に螺合されて、継手本体1が被接続側に固定される構造としてもよい。
・本実施の形態においては、材料として黄銅が用いられているが、用途によって鉄系金属などの他の材料としてもよい。
【0060】
・継手本体1に内部凍結防止用の通気孔15aが設けられているが、この通気孔15aを設けていないものも本発明に包含される。
・各実施の形態における結合部材2は、結合部材2の締結過程において管接続部23と把持部24とに分割しない構造としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、冷凍装置、空気調和装置、給湯器等の温水装置、給水装置、一般の製造設備などにおける冷媒回路、水回路、ガス回路などに使用される食い込み式管接続構造に対し適用することができる。また、本発明を適用した食い込み式管接続構造は、配管同士の接続、閉鎖弁等の弁における管継手部、その他各種装置における管継手部に適用することができる。また、本発明を適用した食い込み式管接続構造が対象とする配管は、銅管、ステンレス管などの金属管を初め樹脂配管をも包含する。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施の形態に係る食い込み式管接続構造の断面図であって、配管接続開始の状態図である。
【図2】同食い込み式管接続構造において、フェルールの後端部を結合部材に対し仮止めして一体化した状態図である。
【図3】同食い込み式管接続構造における継手本体の単体図面であって、(a)は側面図であり、(b)は(a)におけるA−A断面図であり、(c)はカム面部の拡大図である。
【図4】同食い込み式管接続構造における結合部材の単体図面であって、(a)は側面図であり、(b)は(a)におけるB−B断面図であり、(c)は継手本体側側面に形成された仮止め機構の構成図である。
【図5】同食い込み式管接続構造におけるフェルールの単体図面であって、(a)は側面図であり、(b)は(a)におけるC−C断面図である。
【図6】同食い込み式管接続構造の部分断面図であって、配管接続完了時の状態図である。
【図7】同食い込み式管接続構造に用いられる専用工具の斜視図である。
【図8】本発明における、S1/S2に対する漏れ量の線図である。
【図9】本発明における、S1/D1に対する漏れ量の線図である。
【図10】本発明における、S1/D2に対する加工速度の線図である。
【図11】従来の食い込み式管接続構造の部分断面図であって、締結工程中の状態図である。
【図12】他の従来の食い込み式管接続構造の部分断面図であって、締結開始時の状態図である。
【符号の説明】
【0063】
P、Pa…配管、S1…円筒状の空間部の軸方向長さ、S2…カム面の軸方向長さ、D0…(配管の)外径、D1…軸部の径方向の厚さ、D2…円筒状の空間部の径方向の幅、1…継手本体、2…結合部材、3…フェルール、11…基部、12…ソケット部、13…雌ねじ筒部、13a…雌ねじ部、14…軸部、15…(円筒状の)空間部、16…配管差込口、19…カム面、21…配管貫通孔、23…管接続部、23a…雄ねじ部、28…押圧面、33…テーパ面。
【技術分野】
【0001】
本発明は、食い込み式管接続構造に関し、特に、カム面が継手本体に形成された食い込み式管接続構造における継手本体の構造に関する。また、本発明は、このような食い込み式管接続構造を用いた弁、食い込み式管継手及び冷凍装置に関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍装置の冷媒配管、温水装置の給湯配管や給水配管などの配管システムにおいて、配管接続の対象である被接続側の装置、配管等に取り付けられる継手本体と、接続すべき配管に外装された状態で継手本体に螺合されて組み付けされる結合部材と、継手本体と結合部材との間に挟着されるフェルールとを備えた食い込み式管継手が用いられている。
【0003】
このような食い込み式管継手として、図11に記載のようなものがある。これについて説明する。継手本体110は、軸方向の中間部に位置する基部111と、基部111の反結合部材側に形成された非接続装置の機器に螺合により螺子結合されるソケット部112と、ソケット部112の反対側に結合部材120を螺合する雌ねじ筒部113とを備えている。ソケット部112は、外周面に雄ねじ部114を備えている。雌ねじ筒部113は、内周面に結合部材120を螺合する雌ねじ部115を備えている。また、雌ねじ筒部113内の側壁、すなわち、基部111にフェルール130の先端部のテーパ面131を押接するためのカム面116が形成されている。
【0004】
また、継手本体110に螺合される結合部材120は、継手本体110の雌ねじ部115に螺合される雄ねじ部121を備えるとともに、継手本体側の端部から突出するようにフェルール130が薄肉部132を介して一体的に形成されている。フェルール130は、結合部材120の締結工程において薄肉部132が切断され、その後の締結過程において独立のフェルールと同様に作用するものである。フェルール130の後方には所定の空間を空けて押圧面122が形成されている。なお、図11は、結合部材120の締結途中の状態図であって、フェルール130の薄肉部132が切断され、フェルール130の後端面がこの押圧面122のより押圧されている。これを先行技術1と称する。
【0005】
また、他の先行技術として、図12に示すようなものがある。これについて説明する。継手本体210は、軸方向の中間部に位置する基部211と、基部211の反結合部材側に形成されたソケット部212と、基部211の結合部材側に形成された雌ねじ筒部213とを備えている。ソケット部212は、被接続装置の配管Paにろう付される。雌ねじ筒部213は、内周面に結合部材220を螺合する雌ねじ部214が形成されている。雌ねじ筒部213の後側部の内部には、基部211から突出するように軸部215が形成されている。そして、軸部215の先端には、フェルール230のテーパ面231が押接されるカム面216が形成され、軸部215の外周と雌ねじ筒部213の内周面との間には、円筒状の空間部217が形成されている。
【0006】
継手本体210に螺合される結合部材220は、継手本体210の雌ねじ部214に螺合される雄ねじ部221を備えるとともに、継手本体側の端部から突出するようにフェルール230が薄肉部232を介して一体的に形成されている。フェルール230の後方には所定の空間を空けて押圧面222が形成されている。さらに、結合部材220の継手本体側の端部における外周部から突出するように、フェルール230の外側を囲う保護筒部223が結合部材220と一体的に形成されている。この保護筒部223は、フェルール230が損傷を受けるのを保護するためのものであって、前述の空間部217は結合部材220が継手本体210に締結されるときに、保護筒部223を収納するスペースとして機能する。なお、図12は、結合部材2の締結開始時の状態図であって、フェルール230の薄肉部232がまだ切断されていない状態となっているが、締結過程が進むと図11のように切断される。以下これを先行技術2と称する。
【0007】
なお、上記先行技術1及び先行技術2は特許文献1に記載されている。
【特許文献1】特開2008−106935号公報、図22、図60
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、本発明者がカム面とフェルールのテーパ面とのシールのメカニズムについて研究を重ねた結果、先行技術1について次のような問題点のあることが解明された。
すなわち、先行技術1の場合には、カム面116が継手本体110の基部111に直接形成されるため、基部111の剛性により、フェルール130を配管に食い込ませるときに、図示Z矢印方向へのカム面116の撓みや、フェルール130のテーパ面131に馴染むようなカム面116の変形が少なくなる。このため、カム面116とフェルール130のテーパ面131とが面接触し難くなるとともに円周方向に均一な接触が維持され難くなり、漏れが生じやすくなる。
【0009】
なお、先行技術2は、カム面216が軸部215の先端に形成されているので、軸部215の剛性が大きい場合には上記先行技術と同一の問題点を有する。しかしながら、先行技術2は、このようなカム面216とフェルール230のテーパ面231との面接触を加味してカム面216及び軸部215周りの形状を設定したものではなく、上記問題点とは無関係に定められた構造を示しているに過ぎない。
【0010】
本発明は、従来技術に存在するこのような問題点に着目してなされたものであって、フェルール先端部のテーパ面が当接されるカム面周りの構造を改良することにより気密性に優れた食い込み式管接続構造を提供することを目的とする。また、本発明は、このような食い込み式管接続構造を用いた弁、食い込み式管継手及び冷凍装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る食い込み式管接続構造は、上記課題を解決するものであって、被接続側に取り付けられる継手本体と、継手本体に螺合される結合部材と、継手本体と結合部材との間に挟着されるフェルールとを備え、前記継手本体は、基部から一体的に結合部材側に円筒状に延びるとともに内周面に雌ねじ部が形成された雌ねじ筒部と、基部から雌ねじ筒部内へ突出する軸部と、軸部の軸心部に形成された接続すべき配管を差し込む配管差込口と、この配管差込口に連続して軸部の先端に形成された、フェルールの先端部のテーパ面を押し付けるためのカム面と、軸部と雌ねじ筒部の内周面との間に形成された円筒状の空間部とを有し、前記継手本体における円筒状の空間部及び軸部は、次の(式1)及び(式2)
S1/S2≧0.5 (式1)
S1/D1≧0.5 (式2)
但し、S1=円筒状の空間部の軸方向長さ、
S2=カム面の軸方向長さ、
D1=軸部の径方向の厚さ
を満たすように構成されていることを特徴とする。
【0012】
このような構成上の特徴を有する本発明に係る食い込み式管接続構造によれば、基部から雌ねじ筒部内へ突出する軸部の先端にカム面が形成されるとともに、軸部の外周側には円筒状の空間部が形成されている。そして、円筒状の空間部の軸方向長さ、カム面の軸方向長さ、及び、軸部の径方向の厚さが適切な関係に形成される。これにより、カム面とフェルールのテーパ面との馴染みが良好になり、気密性に優れた食い込み式管接続構造を提供することができる。
【0013】
また、このような食い込み式管接続構造において、前記継手本体における円筒状の空間部を、次の(式3)
S1/D2≦2.0 (式3)
但し、D2=円筒状の空間部の径方向の幅
を満たすように構成することが好ましい。このように構成すれば、軸部外周側の円筒状の空間部の加工が容易となり、加工時間を短縮することができる。
【0014】
また、このような食い込み式管接続構造において、前記継手本体における円筒状の空間部及び軸部は、次の(式4)
0.1<S2/D0<0.4 (式4)
但し、D0=接続すべき配管の外径、
を満たすように構成することが好ましい。このように構成すれば、冷凍装置用の管継手などに実用化する上で適切な構造とすることができる。
【0015】
また、前記継手本体は、基部の反結合部材側にソケット部を有し、このソケット部は、被接続側にろう付されるように構成してもよい。このようにソケット部をろう付構造として、継手本体が被接続側に固定される場合、ろう付のための熱が継手本体に加えられる。しかしながら、継手本体を加熱する熱は、軸部と雌ねじ筒部の内周面との間に形成された円筒状の空間部による熱遮断作用により、カム面への直接的な伝熱が回避されるので、カム面に熱変形を生じることがなくなるとともに、カム面の表面に酸化被膜が形成されるといったことがなくなる。この結果、カム面とフェルールのテーパ面との気密性能を向上することができる。
【0016】
また、このような食い込み式管接続構造において、接続すべき配管は銅管とし、前記継手本体、結合部材及びフェルールは黄銅製とすることができる。このように構成すれば冷凍装置用に好適な食い込み式管接続構造を提供することができる。
【0017】
また、このような食い込み式管接続構造において、前記結合部材は、接続すべき配管を貫通させる配管貫通孔を備えるとともに、継手本体側の側面にフェルールを押圧する押圧面が形成され、さらに、外周面に前記雌ねじ部に螺合される雄ねじ部が形成された管接続部を有するように構成してもよい。このように構成すれば、継手本体及び結合部材と別体に形成されたフェルールを用いた食い込み式管接続構造を容易に形成することができる。
【0018】
また、本発明に係る弁及び管継手は、上記何れかの管接続構造を管継手部に用いたことを特徴とする。したがって、このような弁、管継手は、気密性に優れたものとすることができる。
【0019】
また、本発明に係る冷凍装置は、これら弁或は管継手を冷媒回路に用いたことを特徴とする。したがって、本発明に係る冷凍装置は、上記のような弁、管継手を用いているので、気密性の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る食い込み式管接続構造によれば、先端部にカム面を有する軸部と雌ねじ筒部の内周面との間に形成された円筒状の空間部の軸方向長さ、カム面の軸方向長さ、及び、軸部の径方向の厚さが適切な関係に形成されるので、気密性に優れたものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態に係る食い込み式管接続構造について、図面に基づき説明する。
本実施の形態に係る管接続構造は、空気調和機などの冷凍装置の分野において、冷媒回路中の食い込み式管継手における管継手部に適用される他、分離型空気調和機の室外機における室内外連絡配管を接続する閉鎖弁の管継手部などに適用される。図1は、このような管接続構造を管継手部に採用した食い込み式管継手の部分断面図であって、締結開始時の状態図であり、図2は、同食い込み式管継手においてフェルールを結合部材に仮止めした組付状態図である。
【0022】
本実施の形態に係る食い込み式管接続構造は、図1及び図2に示すように、配管を接続しようとする被接続側に取り付けられる継手本体1と、継手本体1に螺合されて組み付けられる結合部材2と、継手本体1及び結合部材2とは別体に形成されるとともに、継手本体1と結合部材2との間に挟着されるフェルール3とを備えている。なお、本明細書の説明において前後の方向をいうときは、継手本体1側、例えば、図1における継手本体側、すなわち、図1における左側を前側とし、結合部材2側、すなわち、図1における右側を後側とする。
【0023】
継手本体1は、黄銅製であって、前述の図1、図2、及び継手本体の単体図面である図3に示すように、軸方向の中心部に位置する基部11の前側にソケット部12が形成されるとともに、基部11の外周部の後側に雌ねじ筒部13が形成され、さらに、基部11の軸心部の後側に、雌ねじ筒部13内の空間部に突出する軸部14が形成されている。雌ねじ筒部13の内面には、結合部材2の螺合部としての雌ねじ部13aが形成されている。軸部14の外周側には、配管接続時に軸部14の強度を調節するための円筒状の空間部15が形成されている。また、この円筒状の空間部15の基端部には内部凍結防止用の通気孔15aが形成されている(図3(b)参照)。
【0024】
基部11及び雌ねじ筒部13の外形は、六角ナット状に一体的に形成されている。基部11から軸部14にかけての軸心部には配管Pを差し込む配管差込口16が形成され、基部11からソケット部12にかけての軸心部には被接続側装置から導出される配管Paを差し込む配管差込口17が形成されている。また、配管差込口16と配管差込口17との間には、連通孔を形成するとともに配管P及び配管Paの位置規制を行う段部18が形成されている。段部18は、配管差込口16、17に差し込まれた配管P,Paの先端部を段部18の端面に当接させることにより、配管P,Paの先端位置を一定に保持する。なお、段部18の前側の端面は、加工時の刃具の外形形状が残されてテーパ状に形成されている。
【0025】
軸部14の先端部、すなわち、配管差込口16の入口部にはカム面19が形成されている。カム面19は、前側において配管差込口16に連なり、後側(結合部材2側)に向けて径が大きくなる円錐状の面に形成されている。また、カム面19は、入口側、すなわち、後側(結合部材2側)の円錐部の拡がり角度θ1に対し、前側の配管差込口16に連なる近辺部19aの拡がり角度θ2が大となるように形成されている(図3(c)参照)。
【0026】
上記構成において、図3(b)に示すように、
S1=円筒状の空間部15の軸方向長さ、
S2=カム面19の軸方向長さ、
D1=軸部14の径方向の厚さ
D2=円筒状の空間部15の径方向の幅
D0=接続すべき配管Pの外径
としたときに、
S1/S2≧0.5 (式1)
S1/D1≧0.5 (式2)
S1/D2≦2.0 (式3)
0.1<D1/D0<0.4 (式4)
の関係に形成されている。
【0027】
結合部材2は、黄銅製であって、図1、図2、及び結合部材の単体図面である図4に示すように、軸心に配管Pを貫通させる配管貫通孔21が形成されるとともに、結合部材2を二分するように径方向の切れ目を成す円盤状スリット22が形成されている。そして、円盤状スリット22の継手本体側に継手本体1に螺合されるとともに配管接続機構を構成する管接続部23が形成され、円盤状スリット22の反継手本体側に一般の締結工具で把持可能とするように形成された把持部24が形成されている。なお、円盤状スリット22の軸方向の位置は、継手本体1に対し結合部材2が締結されて配管接続作業が完了した状態において、継手本体1の結合部材側端面の位置と略一致するように配置されている(図6参照)。
【0028】
管接続部23の外周には、継手本体1と螺合する螺合部としての雄ねじ部23aが形成されている。また、把持部24の外形は、締結工具で把持可能とするように六角ナット状に形成されている。そして、円盤状スリット22と配管貫通孔21との間に、薄肉の管状部により管接続部23と把持部24とを連結する管状連結部26が形成されている。管状連結部26は、把持部24を締め付ける回転トルクが配管接続完了時の値まで大きくなると切断される強度に設計されている。
【0029】
管接続部23の継手本体端部には、本発明の骨子を成すフェルール3の後端部を仮止めするための仮止め機構の一部が形成されている。すなわち、管接続部23の継手本体側端部には凹部27が形成され、この凹部27の奥端面がフェルール3を押圧する押圧面28として形成されている。押圧面28は、軸心側が後方へ広がる傾斜面に形成されている。そして、この凹部27の入口には径方向内向きの環状の突部29が形成されている。この突部29の端面は、前方に径が大きくなる傾斜面に形成されている(図2及び図4(c)参照)。この傾斜面29aは、後述するフェルール3の後端部に形成される環状の突部35を圧入し易くするためのものである。また、この内向きの突部29と押圧面28との間に環状の拡径部29bが形成されている。
【0030】
また、管接続部23の反継手本体側の面には、後述する特別の工具と係合する係合部として、断面が円形で所定深さの4個の係合穴部51が形成されている。また、把持部24には、前記係合穴部51を把持部24の反継手本体側から加工可能とする加工用穴52が形成されている。この加工用穴52は、係合穴部51と相対向する位置に加工されており、図5に示すように、所定円周上において等間隔に4個形成されている。
【0031】
フェルール3は、黄銅製であって、図1、図2、及びフェルールの単体図面である図5に示すように、継手本体1及び結合部材2とは別体に形成された独立のフェルールである。そして、フェルール3は、配管Pを挿通させる挿通孔31が形成された環状物であって、軸方向に切断した断面で見て、前部32の外周面が先細のテーパ面33に形成され、さらに、後部34の外周面が軸心に略平行な円筒状の平行面に形成されている。
【0032】
前方外周面を成すテーパ面33は、軸心に対する傾斜角度がカム面19の後側の円錐部の拡がり角度θ1より小さく形成されている。これにより、フェルール3の前部が曲げられ易くなり、カム面19とテーパ面33との接触面積が大きくなるように形成されている。
【0033】
また、フェルール3の後端部には、フェルール3の仮止め機構の一部として、径方向外向きの環状の突部35が形成されている。この突部35の外周端面は、フェルール3の後部34の突部35を結合部材2の拡径部29bに圧入しやすくするために、後方に径が小さくなる傾斜面35aに形成されている(図2参照)。この突部35の最大径部の外径は、前述の結合部材2の径方向内向きの環状の突部29の最小内径より僅かに大きく形成されており、圧入変形により前記内向きの突部29を介して拡径部29bに押し込められる。また、突部35の軸方向寸法は、前述の拡径部29bの軸方向寸法より僅かに小さくなるように形成されている。
【0034】
フェルール3の仮止め機構は、管接続部23の継手本体側端面及びフェルール3の後端部において上述のように構成されている。これにより、フェルール3の後端部が結合部材2の継手本体側側面に形成された凹部27に対し、着脱自在に、かつ、結合部材2に仮止めされて一体化されたまま搬送可能に、かつ、継手本体1に対し組み付け可能に構成されている。
【0035】
フェルール3の後端面は、押圧面28により押圧される受圧面である。また、フェルール3の後端面は、中心側が前方となる傾斜面34aが中心軸側に形成され、中心軸に垂直な垂直面34bが外周側に形成されている。また、傾斜面34aと挿通孔31との交差により形成される角部が後エッジ部を形成している。
【0036】
また、フェルール3には、挿通孔31の内周面から外周方向に切り込まれた切込部である第1ノッチ36、第2ノッチ37が形成されている。第1ノッチ36は軸方向の先端部に形成され、第2ノッチ37は軸方向の後よりに形成されている。第1ノッチ36は、この第1ノッチ36の前方にある先端部分の変形を容易にするためのものである。第1ノッチ36は、軸心方向に切断した断面形状が直角三角形であって、後方の切込端面と挿通孔31との交差により形成される角部が前エッジ部を形成している。
【0037】
第2ノッチ37は、軸方向における第1ノッチ36と後端面との間における後端面よりの位置に形成されている。この第2ノッチ37は、外周側に短い辺を備えた略三角形状に形成されている。フェルール3は、図2に示すように、第2ノッチ37とフェルール3の外周面との間に薄肉部38が形成されるとともに、後端面に傾斜面34aが形成されていることにより、薄肉部38をヒンジのようにして前後部が軸心側に曲がり易くなっている。この結果、フェルール3の前部32のテーパ面33がカム面19に密着し易くなるとともに、フェルール3の後端に形成される後エッジ部が配管Pに食い込み易くなっている。
【0038】
以上のように形成されるフェルール3は、部品として搬送及び管理段階において、その後端部が結合部材2に仮止めされて一体化される。この仮止めされた状態図が図2である。このような仮止め状態とするには、フェルール3の中心軸と結合部材2の中心軸とを芯合せした状態として、フェルール3の後端部を結合部材2の凹部27に押し付ける。これにより、フェルール3の突部35の外周端面の傾斜面35aと結合部材2の内向き突部29の内周端面の傾斜面29aとが当接し、次いで、フェルール3の後端部が圧入変形される。そして、フェルール3の突部35が僅かに縮径して、拡径部29b内に挿入される。突部35は、拡径部29bに挿入された後自由状態に戻るため、外径が結合部材2の内向き突部29の内径より僅かに大きくなり、フェルール3が仮止めされるとともに搬送作業時においてフェルール3の仮止めされた状態が維持される。しかし、この内向き突部29と外向き突部35の引っ掛かりは僅かであるため、フェルール3を軸方向に引っ張ることによりフェルール3を結合部材2から取り外すことも可能である。
【0039】
次に、以上のように構成された本結合部材による配管接続方法について説明する。
継手本体1及び結合部材2により配管Pを接続するに際しては、先ず継手本体1が被接続側の配管Paにろう付される。このろう付は、配管Paの先端部が段部18に当接するように、配管Paをソケット部12の配管差込口17に差し込み、次いで、ソケット部12を加熱しながらろう材を配管差込口17と配管Paの隙間に流し込んでろう付される。このとき、ソケット部12に加えられた熱がカム面19の方に熱伝導されるが、円筒状の空間部15の熱遮断効果によりカム面19に熱変形が生じたり、カム面19に酸化皮膜が形成されたりすることが抑制される。なお、継手本体1が取り付けられる対象としては、配管、閉鎖弁等の各種機器の配管接続ポートである。
【0040】
このように被接続側の配管Paに取り付けられた継手本体1に対し、接続すべき配管Pが次のようにして接続される。先ず配管Pを、フェルール3が仮止めされた状態の結合部材2の配管貫通孔21及びフェルール3の挿通孔31に貫挿させて結合部材2を配管Pに外装する。この外装作業は、フェルール3が仮止めされた状態の結合部材2を継手本体1から分離した状態として配管Pに外装してもよいし、フェルール3が仮止めされた状態の結合部材2を継手本体1に緩く螺合した状態としておいて、結合部材2の後方から配管Pを挿入するようにしてもよい。そして、配管Pの先端部をフェルール3の挿通孔31を通して配管差込口16に挿入し、その先端を段部18の段差状の端面に当接させた状態として結合部材2を継手本体1に螺合する。この螺合により図1に示すようにフェルール3の後端部が押圧面28に当接する状態となる。
【0041】
この状態から引き続き結合部材2を手回しで締め付けると、フェルール3における第1ノッチ36前方の先端部分が配管Pと配管差込口16との間に楔状に差し込まれ、配管Pが仮止めされる。そして、締結工具により結合部材2がさらに締め付けられると、押圧面28の軸心側が後方へ拡がる傾斜面に形成されているので、フェルール3の薄肉部38を中心として前後の部分が軸心側に曲がりやすくなる。したがって、フェルール3は、第2ノッチ37の前部においては、薄肉部38を中心にして前エッジ部が配管Pに食い込むように傾斜し、第2ノッチ37の後部においては、薄肉部38を中心にして後端の後エッジ部が配管Pに食い込むように傾斜する(図6参照)。これにより、フェルール3のテーパ面33がカム面19に押し付けられる。また、一方で、カム面19を形成する軸部14周りの寸法が、前述の関係に形成されているため、カム面19とテーパ面33との馴染みが良好となり、配管接続後の漏れ量が低減される。
【0042】
このようにして、フェルール3における前エッジ部及び後エッジ部の食い込みが所定量に達すると、図6に示すように、継手本体1の雌ねじ筒部13の端部と円盤状スリット22の継手本体側の面とが略一致する。また、このような状態まで結合部材2が締め付けられると、回転トルクが配管接続完了時の値に到達し、管状連結部26が切断されて継手本体1の雌ねじ筒部13から突出した状態にある把持部24が切断される。これにより結合部材2の接続作業が完了する。
【0043】
次に、上記のような状態で締結された配管接続部は、把持部24が切断されるため誰でもが勝手に接続部を緩めることができないが、図7に示すような専用の工具を用いることにより、この配管接続部を緩めることができる。
【0044】
この専用工具60は、図7に示すように、半円盤状の基体部61に柄部62が取り付けられている。基体部61の半円状穴63の内周半径は配管Pよりやや大径に形成されている。また、係合部として基体部61の側面に、管接続部23の4個の係合穴部51の内、任意の隣り合う3個に係合可能な3個の円柱状の係合突部64が形成されている。
【0045】
そして、この専用工具の係合突部64を管接続部23の任意の隣り合う3個の係合穴部51に係合させて、専用工具60の柄部62に力を入れて基体部61を回転させることにより、管接続部23を回転させて継手本体1との螺合を緩めることができ、配管Pを継手本体1から取り外すことができる。この配管接続解除方法によれば、配管Pを切断することなく、配管Pを取り外すことができるので配管接続解除工事が簡単になる。また、継手本体1を残した状態で配管Pを取り外すとともに、結合部材2に仮止めされていたフェルール3を引き抜くことにより、この継手本体1に対し新たなフェルール3を用いて配管Pを再度接続することができる。
【0046】
次に以上のように構成された本実施の形態に係る食い込み式管接続構造によれば次のような効果を奏することができる。
(1)基部11から雌ねじ筒部13内へ突出する軸部14の先端にカム面19が形成されるとともに、軸部14の外周に形成される円筒状の空間部15の軸方向長さS1、カム面19の軸方向長さS2、及び、軸部14の径方向の厚さD1が前述の式(1)及び式(2)のような関係に形成されている。これにより、カム面19とフェルール3のテーパ面33との馴染みを良好にすることができる。図8及び図9は、円筒状の空間部15の軸方向長さS1、カム面の軸方向長さS2、及び、軸部14の径方向の厚さD1を前述の式(1)及び式(2)のような関係とする根拠を示したもので、この式を満たすことにより漏れ量が低減され、気密性に優れた食い込み式管接続構造を提供することができる。
【0047】
(2)また、円筒状の空間部15の軸方向長さS1と円筒状の空間部の径方向の幅D2とが式(3)を満たすように形成されているので、円筒状の空間部15の径方向の幅D2が小さく、円筒状の空間部15の軸方向長さS1が大きいといった形状にはならない。これにより、円筒状の空間部15の加工が容易となり、円筒状の空間部15の加工時間を短縮することができる。図10は、式(3)の根拠となるデータを示したものである。
【0048】
(3)また、カム面19の軸方向長さS2と接続すべき配管Pの外径D0とが式(4)を満たすように形成されているので、冷凍装置用の管継手などに実用化する上で適切な構造とすることができる。
【0049】
(4)また、ソケット部12に配管Paをろう付するときに加えられる熱が、円筒状の空間部15による熱遮断効果により、カム面19に直接的に伝導されないので、カム面19に熱変形が生じたり、カム面19の表面に酸化被膜が形成されたりといったことがなくなる。
【0050】
(5)また、接続すべき配管Pを銅管とし、継手本体1、結合部材2及びフェルール3を黄銅製としているので、冷凍装置用に好適な食い込み式管接続構造を提供することができる。
【0051】
(6)また、結合部材2は、接続すべき配管Pを貫通させる配管貫通孔21を備えるとともに、継手本体側の側面にフェルール3を押圧する押圧面28が形成され、さらに、外周面に雌ねじ部13aに螺合される雄ねじ部23aが形成された管接続部23を有するように構成されている。したがって、継手本体1及び結合部材2と別体に形成されたフェルール3を用いた食い込み式管接続構造を容易に形成することができる。
【0052】
(7)また、継手本体1及び結合部材2とは別体に形成されたフェルール3を用いるので、前述の従来例のような結合部材2に一体化されたフェルール3を用いる場合に比較すると、フェルール3の加工時間を短縮することができる。
【0053】
(8)また、フェルール3は、継手本体1及び結合部材2とは別体に形成されているが、部品としての取り扱いの段階からフェルール3の後端部が結合部材2に仮止めすることができるので、通常の別体独立型のフェルールを用いる場合のように、部品管理の工数が大きくなったり、フェルールを紛失したりするなどの問題がない。
【0054】
(9)また、本発明の弁や管継手は、上記構成の管接続構造を管継手部に用いているので、加工時間が短縮され、コスト軽減が行われる。また、気密性に優れたものとすることができる。
【0055】
(10)また、本発明の冷凍装置は、このような弁或は管継手を冷媒回路に用いているので、冷凍装置のコスト軽減及び気密性の向上を図ることができる。
(変形例)
上記実施の形態において以下のように変更することもできる。
【0056】
・フェルール3は、上記実施の形態においては、継手本体1及び結合部材2とは別体に形成されるとともに、結合部材2に仮止めされて一体化されたたまま保管、搬送、継手本体1への取付が可能に形成されているが、このように仮止めを行わずに別体独立の部品として従来と同様に取り扱うものとしてもよい。また、従来例のように結合部材2と一体に形成されたものとしてもよい。
【0057】
・フェルール3と結合部材2との仮止め機構は、結合部材2に対し回動可能及び所定範囲内で軸方向に移動可能に仮止めされるとともに、結合部材2に仮止めされて一体化されたたまま搬送可能、かつ、継手本体に対し組み付け可能に構成されるものであれば、他の構造に変更してもよい。
【0058】
・結合部材2に仮止めされたフェルール3を保護するための囲いを結合部材2に対し着脱自在に取り付けるようにしてもよい。
・継手本体1は、被接続側の配管Paにろう付により固定されるように形成されているが、ソケット部12が被接続側の容器、装置等の接続口に挿入され、ろう付されて固定されるように形成されているものでもよい。この場合においても、ろう付によりソケット部12に加えられる熱は円筒状の空間部15により熱遮断されるので、カム面19における熱歪みの発生や酸化膜の形成を抑制することができる。
【0059】
・また、ソケット部12の外周面に雄ねじ部を形成し、ソケット部12が被接続側の機器等に螺合されて、継手本体1が被接続側に固定される構造としてもよい。
・本実施の形態においては、材料として黄銅が用いられているが、用途によって鉄系金属などの他の材料としてもよい。
【0060】
・継手本体1に内部凍結防止用の通気孔15aが設けられているが、この通気孔15aを設けていないものも本発明に包含される。
・各実施の形態における結合部材2は、結合部材2の締結過程において管接続部23と把持部24とに分割しない構造としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、冷凍装置、空気調和装置、給湯器等の温水装置、給水装置、一般の製造設備などにおける冷媒回路、水回路、ガス回路などに使用される食い込み式管接続構造に対し適用することができる。また、本発明を適用した食い込み式管接続構造は、配管同士の接続、閉鎖弁等の弁における管継手部、その他各種装置における管継手部に適用することができる。また、本発明を適用した食い込み式管接続構造が対象とする配管は、銅管、ステンレス管などの金属管を初め樹脂配管をも包含する。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施の形態に係る食い込み式管接続構造の断面図であって、配管接続開始の状態図である。
【図2】同食い込み式管接続構造において、フェルールの後端部を結合部材に対し仮止めして一体化した状態図である。
【図3】同食い込み式管接続構造における継手本体の単体図面であって、(a)は側面図であり、(b)は(a)におけるA−A断面図であり、(c)はカム面部の拡大図である。
【図4】同食い込み式管接続構造における結合部材の単体図面であって、(a)は側面図であり、(b)は(a)におけるB−B断面図であり、(c)は継手本体側側面に形成された仮止め機構の構成図である。
【図5】同食い込み式管接続構造におけるフェルールの単体図面であって、(a)は側面図であり、(b)は(a)におけるC−C断面図である。
【図6】同食い込み式管接続構造の部分断面図であって、配管接続完了時の状態図である。
【図7】同食い込み式管接続構造に用いられる専用工具の斜視図である。
【図8】本発明における、S1/S2に対する漏れ量の線図である。
【図9】本発明における、S1/D1に対する漏れ量の線図である。
【図10】本発明における、S1/D2に対する加工速度の線図である。
【図11】従来の食い込み式管接続構造の部分断面図であって、締結工程中の状態図である。
【図12】他の従来の食い込み式管接続構造の部分断面図であって、締結開始時の状態図である。
【符号の説明】
【0063】
P、Pa…配管、S1…円筒状の空間部の軸方向長さ、S2…カム面の軸方向長さ、D0…(配管の)外径、D1…軸部の径方向の厚さ、D2…円筒状の空間部の径方向の幅、1…継手本体、2…結合部材、3…フェルール、11…基部、12…ソケット部、13…雌ねじ筒部、13a…雌ねじ部、14…軸部、15…(円筒状の)空間部、16…配管差込口、19…カム面、21…配管貫通孔、23…管接続部、23a…雄ねじ部、28…押圧面、33…テーパ面。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被接続側に取り付けられる継手本体と、継手本体に螺合される結合部材と、継手本体と結合部材との間に挟着されるフェルールとを備え、
前記継手本体は、基部から一体的に結合部材側に円筒状に延びるとともに内周面に雌ねじ部が形成された雌ねじ筒部と、基部から雌ねじ筒部内へ突出する軸部と、軸部の軸心部に形成された接続すべき配管を差し込む配管差込口と、この配管差込口に連続して軸部の先端に形成された、フェルールの先端部のテーパ面を押し付けるためのカム面と、軸部と雌ねじ筒部の内周面との間に形成された円筒状の空間部とを有し、
前記継手本体における円筒状の空間部及び軸部は、次の(式1)及び(式2)
S1/S2≧0.5 (式1)
S1/D1≧0.5 (式2)
但し、S1=円筒状の空間部の軸方向長さ、
S2=カム面の軸方向長さ、
D1=軸部の径方向の厚さ
を満たすように形成されていることを特徴とする食い込み式管接続構造。
【請求項2】
請求項1記載の食い込み式管接続構造において、前記継手本体における円筒状の空間部は、次の(式3)
S1/D2≦2.0 (式3)
但し、D2=円筒状の空間部の径方向の幅
を満たすように構成されていることを特徴とする食い込み式管接続構造。
【請求項3】
請求項1又は2記載の食い込み式管接続構造において、前記継手本体における円筒状の空間部及び軸部は、次の(式4)
0.1<D1/D0<0.4 (式4)
但し、D0=接続すべき配管の外径、
を満たすように構成されていることを特徴とする食い込み式管接続構造。
【請求項4】
前記継手本体は、基部の反結合部材側にソケット部を有し、このソケット部は、被接続側にろう付されるように構成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の食い込み式管接続構造。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載の食い込み式管接続構造において、前記接続すべき配管は銅管であり、前記継手本体、結合部材及びフェルールは黄銅製であることを特徴とする食い込み式管接続構造。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項に記載の食い込み式管接続構造において、前記結合部材は、接続すべき配管を貫通させる配管貫通孔を備えるとともに、継手本体側の側面にフェルールを押圧する押圧面が形成され、さらに、外周面に前記雌ねじ部に螺合される雄ねじ部が形成された管接続部を有することを特徴とする食い込み式管接続構造。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1項に記載の管接続構造を管継手部に用いた弁。
【請求項8】
請求項1〜6の何れか1項に記載の管接続構造を管継手部に用いた食い込み式管継手。
【請求項9】
請求項7記載の弁を冷媒回路に用いたことを特徴とする冷凍装置。
【請求項10】
請求項8記載の食い込み式管継手を冷媒回路に用いたことを特徴とする冷凍装置。
【請求項1】
被接続側に取り付けられる継手本体と、継手本体に螺合される結合部材と、継手本体と結合部材との間に挟着されるフェルールとを備え、
前記継手本体は、基部から一体的に結合部材側に円筒状に延びるとともに内周面に雌ねじ部が形成された雌ねじ筒部と、基部から雌ねじ筒部内へ突出する軸部と、軸部の軸心部に形成された接続すべき配管を差し込む配管差込口と、この配管差込口に連続して軸部の先端に形成された、フェルールの先端部のテーパ面を押し付けるためのカム面と、軸部と雌ねじ筒部の内周面との間に形成された円筒状の空間部とを有し、
前記継手本体における円筒状の空間部及び軸部は、次の(式1)及び(式2)
S1/S2≧0.5 (式1)
S1/D1≧0.5 (式2)
但し、S1=円筒状の空間部の軸方向長さ、
S2=カム面の軸方向長さ、
D1=軸部の径方向の厚さ
を満たすように形成されていることを特徴とする食い込み式管接続構造。
【請求項2】
請求項1記載の食い込み式管接続構造において、前記継手本体における円筒状の空間部は、次の(式3)
S1/D2≦2.0 (式3)
但し、D2=円筒状の空間部の径方向の幅
を満たすように構成されていることを特徴とする食い込み式管接続構造。
【請求項3】
請求項1又は2記載の食い込み式管接続構造において、前記継手本体における円筒状の空間部及び軸部は、次の(式4)
0.1<D1/D0<0.4 (式4)
但し、D0=接続すべき配管の外径、
を満たすように構成されていることを特徴とする食い込み式管接続構造。
【請求項4】
前記継手本体は、基部の反結合部材側にソケット部を有し、このソケット部は、被接続側にろう付されるように構成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の食い込み式管接続構造。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載の食い込み式管接続構造において、前記接続すべき配管は銅管であり、前記継手本体、結合部材及びフェルールは黄銅製であることを特徴とする食い込み式管接続構造。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項に記載の食い込み式管接続構造において、前記結合部材は、接続すべき配管を貫通させる配管貫通孔を備えるとともに、継手本体側の側面にフェルールを押圧する押圧面が形成され、さらに、外周面に前記雌ねじ部に螺合される雄ねじ部が形成された管接続部を有することを特徴とする食い込み式管接続構造。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1項に記載の管接続構造を管継手部に用いた弁。
【請求項8】
請求項1〜6の何れか1項に記載の管接続構造を管継手部に用いた食い込み式管継手。
【請求項9】
請求項7記載の弁を冷媒回路に用いたことを特徴とする冷凍装置。
【請求項10】
請求項8記載の食い込み式管継手を冷媒回路に用いたことを特徴とする冷凍装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−43695(P2010−43695A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−208010(P2008−208010)
【出願日】平成20年8月12日(2008.8.12)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月12日(2008.8.12)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】
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