説明

食品から離れやすい食品保存剤の包装材

【課題】 食品包装に使用される脱酸素剤や製剤といわれる小袋入り保存材が容器・包装と食品の間に挟まり密着した状態に維持されると食品に対する保存機能が不均一になる、アルコール製剤の様な薬効を活用する保存剤では高濃度で移行した部分的に対し匂いや食味の変化を起こす、またこの部分を食した過敏症者へ毒性を示す、さらに開封後も密着状態に気がつかないと誤食を起こす。
【解決手段】食品からの離脱性の良い保存材として外側に合成樹脂性不織布を配置し内側に合成樹脂層を貼り合せた2層以上の食品保存剤の包装材。印刷を必要とする場合は2層以上の成樹脂製多層材の層間に印刷を行い食品に直接印刷面が触れないように配置し、包装材の最内層がヒートシール層である包装材とすることにより食品メーカーの荷扱い輸送、店頭における陳列作業、顧客の購入、持ち帰り時の振動衝撃等の応力により保存材が離脱移動し食品の定位置に留まらない様にする。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】

【技術分野】
【0001】
食品保存材は食品の密封包装に於いて容器・包装(以下容器という)内に食品とともに投入する食品保存剤を包含する小型の袋状包装体(以下保存材という)である。洋菓子、和菓子、珍味、パン、ナッツ、燻製、他多くの包装食品の保存期間長期化のために使用される。この小型軽量の保存材が食品への付着性を低下させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
保存材は気体が出入りできる材料または開口部を持つ袋に食品保存剤を入れた物である。袋は紙及びフィルムシート類から出来ており、開口部を持つものは内容物が流失しない構造である。
【0003】
ここで言う保存材を大別すると三つあり、一つは脱酸素材であり主剤は鉄粉でこの酸化反応により容器内の酸素を吸収し黴及び虫の発生や増殖と食品成分の酸敗を抑制するもの(三菱ガス化学(株)エージレス等)。なお主剤が鉄以外の有機系の物もある。二つめは製剤といわれるエチルアルコール、イソプロピルアルコールその他薬剤をシリカゲル、パルプ等の担体に吸着させ徐々に蒸散せしめることによりこの静菌殺菌作用で容器内の微生物の増殖を抑える物(フロイント産業(株)アンチモールド等)。三つ目は脱酸素剤と製剤の二つの機能を合わせ持つ物(フロイント産業(株)ネガモールド等)である。
これら保存材の形状を図1に示す。大きさは一辺が数センチメートル、厚さは1から5ミリメートルの大きさである。
【0004】
保存性発現には容器内で保存剤が均一かつすばやく酸素を吸収またはアルコール類を蒸散することが求められる。このため食品に接する保存剤の包装材の役割は重要である。
【0005】
図2に透過性の材料や有孔材を使用する形態の四辺密封型の形状を、図3に四隅のみ封をする四辺開放型の形状を示す。後者は製剤を板状のパルプ片に吸着させ袋から飛び出さない寸法関係で四隅の封をする。
【0006】
現在使用されている代表的包装材の構成は各種合成樹脂製フィルムと撥水耐油加工紙(以下加工紙)等の組み合わせであり、構成例は▲1▼有孔〔PET/印刷/PE〕/加工紙/有孔PE(図4)でPET/印刷/PE全層を貫通する細孔0.01から1mm径程度の穴を1から15mm程度の間隔でフィルムシートに開け通気性を保持し、保存剤である粉末の飛び出しは加工紙でとめる。おもに脱酸素剤の包装材として使われている。
【0007】
製剤に使用される物として、▲2▼包装用延伸フィルム/印刷/シール層(図5)で四辺開放用である。▲3▼有孔〔包装用延伸フィルム/印刷/シール層〕(図6)、この孔の寸法は▲1▼と同様である。▲4▼印刷加工紙/EVA(図7)等で▲1▼▲3▼▲4▼の包装材は4辺密封用である。上記▲4▼の加工紙は紙であるから十分気体を透過し、貼り合わせるEVAは酢酸ビニル含有量8から30モル%のアルコール透過量の多い材料である。
【0008】
一般的に袋の表裏は同一の組み合わせであるが片面透過用は表裏別の組み合わせとする場合もある。ここでこれまでに使用した略語について述べる。PET:ポリエチレンテレフタレートフィルム(12μm)、PE:ポリエチレンフィルム(20〜30μm)、EVA:エチレン酢酸ビニル共重合フィルム(30μm)、包装用延伸フィルム:OPPとは延伸ポリプロピレンフィルム(20μm),PET(12μm),ナイロンフィルム(15μm)等、シール層:ポリオレフィン系フィルムでPE,EVA,CPP等。CPPはキャスト法のポリプロピレンフィルム(20〜30μm)。なお単にPPとした場合はポリプロピレン系のホモまたはコーポリマーでポリプロピレン樹脂を主剤とした材料を示す。
【0009】
保存材の容器への投入方法は▲A▼容器に接着剤や両面粘着テープで固定する。▲B▼食品を気流が確保されたトレイや台紙を使用しこれらの下に入れる。▲C▼食品の上に乗せる。▲D▼食品の直下に入れる等の投入方法がある。
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記フィルム等で包装した食品保存剤を上記▲D▼の様に直接食品と接触するよう投入した場合、食品の重みが加わった状態で維持されると両者の表面状態や液体分で密着状態になる。食品の上におかれる▲C▼の場合も商品を積み重ねると同様な状態になる。容器内で密着状態に保存材が置かれる状態を図8に示す。なお保存材と食品の位置関係が上下以外にもフレキシブルな容器の中では密着状態になることはある。
【0011】
食品に保存材が密着停留していると次のアからエの問題が生じる。
ア.食品を食するとき食品と保存材の密着状態に気がつかないと誤食の原因となる。特に食品の見えない面に密着していると誤食の危険が高い。
イ.保存材が食品の下に置かれ容器と食品の間で密着状態になり動かなくなると、局部的には食品保存機能を発揮するが気流の流れがなくなるため全体へ保存機能が波及しない。これと同様食品の上に保存材が置かれ商品を積み重ねた場合も同じである。
ウ.製剤がイと同様に置かれると静菌・殺菌効果のバラつきのみならず、アルコールの臭気や食味の変化をその部分が強く受ける。
エ.アルコール系保存材の投入量は食品の持つ水分活性値により多少変わるが、食品の重量の1%を目安に封入する。ウに於いて保存剤が食品に強く移行した部分を食した場合アルコール過敏症者は異常を起こす。
オ.密着問題以外の問題として、フッ素系加工紙は製造過程、廃棄処理時に汚染問題が危惧され、加工に手間がかかることから高価である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以上に示したいずれの包装形態の保存材も食品との関係は同じである。問題の改善策は保存材が食品へ密着状態となった場合も生産者の輸送や荷扱い、店頭の陳列作業、顧客の購入持ち帰り、開封時の振動や衝撃等の応力で移動または脱落するようにすることである。保存材が食品に対し移動する性質を離脱性と言う事とする。
【0013】
このような効果を得るために保存材の包装材表面に付与すべき性質は滑り性、非粘着性、気流の流れを妨げない性質を包装材の表面に付与することである。離脱性を高める方法として材料面ではフッ素系材料やシリコーン系材料が一般包材より滑り性や非粘着性が良く、形状面では包装材料表面に凹凸をつけ非粘着性及び滑り性を付与する方法がある。包装材料に凹凸をつける方法としてエンボス加工、マット加工、焼き穴加工等がある。また合成樹脂系の不織布は撥水性があり繊維による凹凸もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
表1に離脱性評価に使用した表面材を示す。フッ素系は公害問題を含みシリコーン系同様高価ゆえ除外した。
No.6はアルコール製剤に使用され離脱性のよい物と考えられ、市場でも誤食が少ないといわれている物で評価の標準とし、この包装材を使用している日本化薬フードテクノ株式会社のオイテックCAを使用した。
【0015】
No.1,2,4,5は現在使用されている合成樹脂層を表面としたもので内層のヒートシール層はPE構成としてドライラミネート法で張り合わせ試料を作成した。No.3のマット加工品は凹凸レベルの異なる物として評価に加えた。エンボス加工および孔明け加工は貼り合わせ後に行った。
【表1】

【0016】
No.7から10の各種不織布と貼り合わせで作る評価用試料の構成は不織布/印刷基材/印刷/シール層として接着剤を使用してドライラミ法で貼り合わせたものと印刷基材/印刷/シール層を上記と同様に作成後孔を開け印刷基材側に熱圧着ラミネート法で不織布を貼った。前者はPE系スパンボンド不織布/OPP/印刷/PE(No.7)及び(PP/PET混抄不織布)/OPP/印刷/PE(No.8)。後者はPP系不織布/コーポリPP/印刷/コーポリPP(No.9)及び(PP/PET混抄不織布)/コーポリPP/印刷/コーポリPP(No.10)である。なおコーポリPPの厚さは20μmである。
【0017】
No.7,8は無孔であるから四辺開放用である。No.9,10は合成樹脂層が有孔であるから穴からの気体の出入りを活用する四辺密封用である。合成樹脂製有孔材に流動物である接着剤及び溶融PE等を糊として材料の貼り合せを行うとこれらが孔を塞ぎ通気性がなくなる。また孔から上記流動物が裏回りし加工工程上問題を起こすため使用できない。この場合基材そのものが熱接着性を持つ材料または基材表面に易接着性を持つ層を設けたフィルムを使用し熱圧着ラミネート法により不織布を貼る方法が可能である。たとえば易接着性フィルムとして東洋紡績((株))パイレンフィルムSLがある。
【0018】
有孔包装材を得るもう一つの方法は不織布/印刷基材/印刷/シール層を得た後有孔化する方法がある。粉末の酸素吸収剤やシリカゲルに吸着させたアルコール系製剤のような微粉体は全構成材を貫通した孔を通って流失し食品を汚染する。よってこのタイプの包装材は包装材に空けた孔を通過しない保存材の有孔でも四辺開放用または4辺密封用に使用できる。
【0019】
以上に示した包装材の代表例を図9に示す。印刷は食品に接しないように合成樹脂材料の層間にすることが衛生上必要であり有孔で四辺密封用であるが四辺開放用としても使用できる。
【発明の効果】
【0020】
離脱性の測定方法は保存材が食品に対し密着状態になる平面を持つ食品類の菓子パン、饅頭、和洋菓子などの中から試験評価中の取り扱いで評価面となる面が平面性を維持しやすく、均一なスポンジ状のものとして約30g/個のバターロールを使用した。これに以上に述べた材料を40x55mmの寸法のエチルアルコール系保存材を作成し、バターロールの底面を上にして保存材を置きナイロン系フィルム袋に入れ封をする。密着度を均一にすることと積み重なって保管流通されることを想定して2個分の荷重60gの重りを袋の上に置き25℃48時間保持する。保存材の重量は1.5から1.8g/個とした。重りを置いた保持状態を図10に示す。
【0021】
48時間保存後重りをはずし保存材が動かないように袋を開き、ついで保存材が密着したバターロールを分度器の前で徐々に傾ける。傾ける速度は5秒で90度とした。水平をゼロ度として保存材が滑落または離脱する角度を読み取る。繰り返し数3個の平均を離脱角度とし、評価結果を表2に示す。
なお不織布を外層とした物は不織布を貼らない物に対して印刷の図柄の視認性が悪くなるので不織布の貼り合せ法、ドライラミネート法と熱圧着ラミネート法による差異を官能的に不織布を貼らない物と比較した。
【0022】
結果を表2に示す。No.6の加工紙及びNo.7から10の不織布を貼った物は85から120度の範囲90度近辺で離脱して滑り性、非粘着性の良さを示した。これらは離脱する角度に大きな差はなかったが不織布を貼った4種類中、No.9,10の熱圧着ラミネート法による物が他の貼り合せ法に比較しよい離脱性を示すとともに視認性も良いという結果を示した。これは熱圧着ラミネート法によるアイロン効果で不織布表面の毛羽立ちが押さえられ、食品表面との引っ掛かりが少なくなり浅い角度で離脱し、嵩密度が増して印刷した図柄の視認性も良くなったと考えられる。印刷の視認性を考慮すると四辺開放型で無孔の物にもこの方法での不織布の張り合わせが良い。
【0023】
PP系フィルムに表面をエンボス、マット、穴あけ加工した物およびPET系穴あけ品は170度以上の離脱角度を示し反転しても落下しない物もあった。食品に対し離脱性をを示さず安全性に問題を示した。
【表2】

【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
食品からの離脱性の良い保存材の包装材として外側に合成樹脂性不織布を配置し合成樹脂層を貼り合せた2層以上の食品保存剤の包装材。印刷による表示を必要とする場合は2層以上の成樹脂製多層材の層間に印刷があり食品に直接印刷面が触れないように配置され、包装材の最内層がヒートシール層である包装材。
【産業上の利用可能性】
【0025】
食品包装における保存性の向上のため投入される保存材が食品に対し動きやすくなり保存機能が均一になり、部分的な味や食味の変化がなくなり、アルコール製剤の様な薬効を活用する保存材では高濃度で移行したこの部分を食す過敏症者への中毒性が軽減され、さらに開封後食品に付着せず離脱することにより誤食がなくなり、安全性の向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】保存材断面図
【図2】保存材四辺密封型平面図
【図3】保存材四辺開放型平面図(保存剤担体パルプ)
【図4】包装材(孔PET系)
【図5】包装材(OPP系)
【図6】包装材(孔OPP系)
【図7】包装材(撥水加工紙系)
【図8】保存材の置かれる状態
【図9】不織布張り合わせ品の構成
【図10】密着性評価配置図
【符号の説明】
【0027】
1:包装材
2:食品保存剤
2a:食品保存剤+担体
3:封(ヒートシール)
4:透過性/有孔包装材
5:四隅封
6:開放部
7:孔
8:PETフィルム
9:印刷
10:シール層
11:PE
12:撥水耐油加工紙
13:OPPフィルム
14:EVAフィルム
15:保存材
16:食品
17:容器
18:不織布
19:基材
20:重り

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器包装内へ食品とともに投入する食品保存剤の包装材の外層を不織布とし内層を合成樹脂の順とした包装材。
【請求項2】
前記不織布がポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエステル等合成樹脂製不織布またはこれら合成樹脂の組み合わせによる合成樹脂製混抄不織布及びこれら合成樹脂で耐熱性のある樹脂を軸とし低融点樹脂でコーティングした積層不織布である請求項1に記載の包装材。
【請求項3】
前記合成樹脂層が印刷表示を行うための構成として印刷基材と印刷とヒートシール層又は無印刷用として基材とヒートシール層又はヒートシール層単層からなる請求項1に記載の包装材。
【請求項4】
前記合成樹脂層の印刷基材と前記不織布との積層が熱と圧力によるアイロン効果で不織布の毛羽立ちを抑え、嵩密度を上げ積層する請求項1〜3に記載の包装材の製法。
【請求項5】
前記アイロン効果による貼り合わせが熱圧着ラミネート法である請求項4記載の製法。
【請求項6】
前記合成樹脂層の印刷基材が前記不織布に対し熱圧着法で積層可能なポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン等及びこれらに易接着層を持つ材料である請求項1〜4のいずれかに記載の包装材。
【請求項7】
ヒートシール層がエチレン酢酸ビニル共重合物、ポリエチレン、ポリプロピレンである請求項1に記載の包装材。
【請求項8】
合成樹脂層が有孔または無孔である請求項1〜7のいずれかに記載の包装材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−1068(P2010−1068A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−186517(P2008−186517)
【出願日】平成20年6月23日(2008.6.23)
【出願人】(500025019)株式会社フレテック (5)
【Fターム(参考)】