説明

食品包装用袋及び包装食材

【課題】フィルムの製造が容易でかつ小孔から蒸気を排出できる容器を得る、包装された食材を蒸すことが可能となる。
【解決手段】食品包装用袋は、合成樹脂フィルム製の包装用袋のフィルム1aに小孔5を多数形成し、前記小孔を塞ぐ閉塞フィルム1bをラミネート層着して構成する。前記小孔と閉塞フィルムとは、この袋に食材を入れて密封した状態で電子レンジ加熱を行う際に、内部の空気圧で前記小孔を塞ぐフィルムが破断して蒸気が排出されるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子レンジで加熱する際に、内圧の上昇により袋が破裂せずに逃圧することができ、かつ蒸気や熱風が強く吹き出すことのない、電子レンジ対応の食品包装用袋及び包装食材に関するものである。

【背景技術】
【0002】
電子レンジ対応の合成樹脂絵師包装用袋として、小孔を多数設けてこの小孔から蒸気を放出するようにしたものとして、特開平8−91450号の発明及び特開平9−66943号の発明が存在する。
【特許文献1】特開平8−91450号公報 特許文献1に開示された発明は、小孔を多数設けた内側フィルムと、このフィルムと熱溶着しない外側フィルムとを接着剤で断続的に接着させた複合フィルムであり、電子レンジによる加熱で発生する蒸気は内側フィルムと外側フィルムとの間隙を経て放出されるものである。
【特許文献2】特開平9−66943号公報 特許文献2に開示された発明は、小孔を多数設けた内側フィルムと透湿セロハン紙又は不織布などを積層し、小孔を抜ける蒸気をセロハン紙又は不織布に保持させるものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1の技術においては、加熱によって生ずる蒸気は多数の位置から放出されるので、一箇所から強い蒸気が噴出することはない。しかしながら、蒸気の噴出位置を予め知ることが困難であり、また接着剤を用いて内外のフィルムを積層する構成であるために、製造上コストがかかるなどの問題がある。
上記特許文献2の技術においては、小孔はセロハン紙や不織布などで塞がれているのみであるから、容器の密封性、バリア性に難がある。
そして、いずれの技術においても、蒸気は比較的低圧の状態から外部に流出し、又はセロハン紙などに吸湿されるために加熱中の容器内の蒸気量は比較的少ないものであり、「蒸す」という作業を行うことはできない。
【0004】
この発明は、フィルムの製造が容易でかつ小孔から蒸気を排出できる容器を得ることを第一の課題とし、包装された食材を蒸すことが可能となることを第二の課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明の食品包装用袋は、合成樹脂フィルム製の包装用袋のフィルムに小孔を多数形成し、前記小孔を塞ぐ閉塞フィルムをラミネート層着して構成する。前記小孔と閉塞フィルムとは、この袋に食材を入れて密封した状態で電子レンジ加熱を行う際に、内部の空気圧で前記小孔を塞ぐフィルムが破断して蒸気が排出されるように構成する。
前記小孔は、は包装用袋の全面に設けても、一部領域に設けてもよいが、包装用袋を電子レンジに入れたときに上側になる面に設けることが好ましい。下側になる面に小孔を設けた場合、下側の小孔から蒸気が排出されると、包装用袋の電子レンジ内での安定性が損なわれるおそれがあるためである。
前記小孔の寸法は、大きすぎると閉塞フィルムが破断しにくいので、2ないし5ミリ程度が適当であるが、食材の性質、閉塞フィルムの強度との兼ね合いを考慮して選定することとなる。
包装用袋の全体を構成する合成樹脂フィルム(以下「基フィルム」という。)と閉塞フィルムの材質は、加熱時に食品に悪影響を与えることなく、120度程度の耐熱性を備えたものであればよい。
【0006】
前記包装用袋の具体的な形態に限定はなく、筒状、多面体状なども適宜選択することができる。
閉塞フィルムは、電子レンジで加熱した際に、包装用袋が破裂する前に小孔対応部が破断することが必要であるが、破断を容易とするために小孔対応部分において薄肉とすることが好ましい。なお、基フィルムと閉塞フィルムのいずれを外側としてもよい。
【0007】
この発明の包装食材は、請求項1に記載の食品包装用フィルムに食材を収納し、開口部を密封して構成する。請求項5の発明は、表裏の合成樹脂フィルムの接続縁を対向させた位置で開口部を密封し、内部に空間を形成するものである。内部に空間を形成するための構成はこれに限られず、筒状、多面体状なども適宜選択することができる。
前記食材は、電子レンジで加熱する食材であれば種類を問わない。「蒸す」作用を利用する場合、食材としては野菜やきのこ、果実が一般的と考えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、この発明の食品包装用袋の実施例を説明する。
【実施例1】
【0009】
図1は食品包装用袋Aの正面図であり、縦長長方形(縦25センチ、横18センチ)の表フィルム1と同形の裏フィルム2をその上縁を除く3方の縁が閉じられて、上縁部が開口部3としてある。
前記表フィルム1の開口部側に、その全幅にわたり、上下寸法の2/5程度の領域が小孔を設けた領域4としてある。この領域4において、表フィルム1は基フィルム1a(厚さ30ミクロンのOPPフィルム)と閉塞フィルム1b(厚さ7ミクロンのポリエチレンフィルム)とをラミネートして構成してあり、前記基フィルム1aには小孔5が多数設けてある(図2参照)。
前記小孔5は配列の一例を示す図1においては、千鳥状に上下14列配置してあり、その大きさは直径3ミリであり、横方向に隣接する小孔中心間の間隔は8ミリ、上下の列間隔は5ミリとしてある。
前記裏フィルム2は前記基フィルムのみで構成してある。
【0010】
前記閉塞フィルム1bは、小孔5の対応部分において他の部分よりも薄肉としてある。この薄肉加工は、基フィルム1aに閉塞フィルム1bをラミネートする際に、閉塞フィルムの張力を調整して行う。
【0011】
以上のように構成された食品包装用袋Aは任意の食材を包装し、開口部3を密閉して電子レンジに入れて加熱する。
冷凍食品の包装用に使用する場合のように、工場や食材販売店で食材を包装する場合は、開口部はラミネートでミップすることが通常であるが、過程で任意の食材を包装して加熱する場合は、棒状のクリップを用いることもできる。
【0012】
食材を電子レンジで加熱すると、蒸気が発生し、また袋内の空気が膨張して内部の圧力が高まる。圧力が高まると、閉塞フィルム1bの小孔対応部分が内圧に負けて破断し、小孔が次第に開放されて内部の蒸気が複数の小孔から分散して放出される。なお、必ずしも全ての透孔5が開放されるものではなく、圧力状況に応じて適宜の位置の小孔が開放されることとなる。
したがって、袋内は比較的高圧となりつつも袋が破裂する前に蒸気が放出さる。加えて、多数の小孔が順次開放されるので蒸気の放出部を一点のみとした場合のように、大きな破断音が発生することも、一点が集中的に熱くなることもない。
【実施例2】
【0013】
以下この発明の包装食材の実施例を説明する。
図4はこの発明の包装食材Bの実施例を示すものであり、実施例1に示した食品包装用袋Aに食材Cを包装し、開口部3をラミネートにより密封して構成する。この実施例の包装食材Bは「蒸す」作用を得ることを目的としており、前記食材としては生野菜、例えばキャベツ、カボチャ、玉葱、もやし、キノコ類などが好ましいが、肉も可能であり、格別の限定はない。
【0014】
前記開口部3の密封は、包装用袋Aの開口部3の左右の縁3a、3bを突き合わせた状態で行ってある。このように密封することにより、食品包装用袋Aは三角錐状の立体的な形態となり、内部に縦断面略三角形状の空間Sが得られる。
【0015】
このように構成された包装食材Bを電子レンジで加熱すると、食品が加熱することによって発生した熱により内部の空気及び食材から生じる蒸気が上昇し、上方で冷却されて下方に戻る対流が生ずる。この対流により下部に熱が集中すると共に、袋内では温度の急激な上昇が生ずることなく、同様に空気圧が急激に上昇することもない。
したがって、食材の持つ水分だけで加水することなく、食材を蒸すことができ、タジン鍋のような調理が可能となる。
生野菜を包装して500Wの電子レンジで2分加熱したところ、食べ頃となった。
【産業上の利用可能性】
【0016】
この発明の食品包装用袋によれば、フィルムの製造が容易でかつ小孔から蒸気を排出できる容器を得ることができ、包装食材によれば、包装された食材を蒸すことが可能となるなど、産業上の利用可能性を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例1の平面図
【図2】同じく小孔部分の断面図
【図3】同じく小孔の開放状態を示す断面図
【図4】実施例2の斜視図
【図5】同じく加熱時の状態を示す断面図
【符号の説明】
【0018】
A 食品包装用袋
B 包装食材
C 食材
1 表フィルム
1a 基フィルム
1b 閉塞フィルム
2 裏フィルム
3 開口部
4 小孔を設けた領域
5 小孔


【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂フィルム製の包装用袋において、
フィルムに小孔を多数形成し、前記小孔を塞ぐ閉塞フィルムをラミネート層着し、
この袋に食材を入れて密封した状態で電子レンジ加熱を行う際に、内部の空気圧で前記小孔を塞ぐフィルムが破断して蒸気が排出されるようにした、食品包装用袋
【請求項2】
包装用袋は、表裏の合成樹脂フィルムよりなり、一側が開口した平面状のものとし、小孔を形成する領域は表面フィルム又は裏面フィルムの開口部側とした、請求項1記載の食品包装用袋
【請求項3】
閉塞フィルムは、小孔対応部分において薄肉とした、請求項1又は2に記載の食品包装用フィルム
【請求項4】
請求項1に記載の食品包装用袋に食材を収納し、開口部を密封した包装食材
【請求項5】
請求項2に記載の食品包装用袋に食材を収納し、表裏の合成樹脂フィルムの接続縁を対向させた位置で開口部を密封し、内部に空間が形成された、包装食材


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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