説明

食器の洗浄装置

【課題】洗浄装置の設置された作業室の空調熱負荷の削減、作業環境の良化を図った食器の洗浄装置を提供する。
【解決手段】複数の食器37を収納した収納具14と、前記収納具14を移動させる搬送手段2と、収納具14の搬入口1aおよび搬出口1bと、前記搬送手段2により移動する収納具14の搬送方向の複数の位置に、収納具14に収納した食器37に所定温度に加熱した温水を洗浄水として噴射する洗浄ゾーン7b、7cを含むノズル10、11を有する複数の洗浄ゾーン7を備え、前記所定温度に加熱した温水を洗浄水として噴射する洗浄ゾーンを挟んで前記搬入口1aおよび搬出口1b側に位置する洗浄ゾーン7a、7dに有するノズル10、11から冷水を洗浄水として噴射することを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に学校、病院等の給食のように皿、お椀、トレイなどの被洗浄物である食器を比較的大量に使用する状況における食器の洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、食器の洗浄装置内において発生する高温多湿な空気を処理する手段を備えてものとして主に下記のものが知られている。
【0003】
洗浄室内から高温多湿な空気を吸引し、これを凝縮器に通して湿気を除去した上で洗浄装置外に排出するものがある(特許文献1参照)。
【0004】
洗浄機械内部と機械外部が流体連通している少なくとも1つの注入口を含む機械密閉部と、スプレーノズルによる水噴射を含むハウジングと機械密閉部とハウジング間を流体連通する少なくとも1つの導管とを含む取り出し手段であって、前記スプレーノズルが、注入口を通して食器洗浄機に外気を注入しながら、導管を通して食器洗浄機から高温湿り雰囲気を除去するためのハウジング内の減圧領域を生成するのに効果的な水噴霧を供給する取り出し手段とを含む食器洗浄機としたものがある(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2005−245639号公報
【特許文献2】特開2000−37338号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1に記載されたものは、ブロア等の吸引手段で洗浄室内から温度の上昇した高温多湿な空気を吸引するが、洗浄室内の全体に亘って均一に吸引することが困難であり、搬送コンベアへの食器の供給部および食器の出口部から多量の空気を導入して洗浄室内を流動させないと、搬送コンベアへの食器の供給部および食器の出口部から高温多湿な空気が流出することになる。食器の供給部および食器の出口部から多量の空気を導入した場合、この空気とともに高温多湿な空気を凝縮器に通して湿気を除去する必要があり、凝縮器で水分を十分除去できない。また、ブロアの吸引能力を大きくする必要が生じるとともに騒音もより高くなる。さらに、凝縮器、ブロア等の吸引手段を備える必要から構成が複雑となりコストが高くなる課題がある。
【0006】
また、前記特許文献2に記載されたものは、または食器洗浄機の機械内部から高圧冷水噴霧機構により、外気を注入しながら高温多湿な空気を吸い込み、これを冷却、凝結させて食器洗浄機外に排出するが、前記特許文献1と同様に、多量の外気を導入した場合、この空気とともに高温多湿な空気を高圧冷水噴霧機構に通して湿気を除去する必要があり、水分を十分除去できない恐れがある。また、高圧冷水噴霧機構の吸引能力を大きくする必要が生じるとともに、高圧ポンプが必要となり、騒音もより高くなる。さらに、高圧ポンプを備える必要から構成が複雑となりコストが高くなる課題がある。また、高圧冷水噴霧機構に供給する冷水は、食器の洗浄には直接寄与しないで排出するため、食器洗浄機全体としての水の消費量が増加する課題がある。
【0007】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、簡素化した構成により洗浄装置の設置された作業室の空調熱負荷の削減、作業環境の良化を図った食器の洗浄装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記従来の課題を解決するために、本発明の食器の洗浄装置は、複数の食器を収納した収納具と、前記収納具を移動させる搬送手段と、収納具の搬入口および搬出口と、前記搬送手段により移動する収納具の搬送方向の複数の位置に、収納具に収納した食器に所定温度に加熱した温水を洗浄水として噴射する洗浄ゾーンを含むノズルを有する複数の洗浄ゾーンを備え、前記所定温度に加熱した温水を洗浄水として噴射する洗浄ゾーンを挟んで前記搬入口および搬出口側に位置する洗浄ゾーンに有するノズルから冷水を洗浄水として噴射することを特徴とする食器の洗浄装置としたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の食器の洗浄装置によれば、簡素化した構成により洗浄装置の設置された作業室の空調熱負荷の削減、作業環境の良化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
第1の発明は、複数の食器を収納した収納具と、前記収納具を移動させる搬送手段と、収納具の搬入口および搬出口と、前記搬送手段により移動する収納具の搬送方向の複数の位置に、収納具に収納した食器に所定温度に加熱した温水を洗浄水として噴射する洗浄ゾーンを含むノズルを有する複数の洗浄ゾーンを備え、前記所定温度に加熱した温水を洗浄水として噴射する洗浄ゾーンを挟んで前記搬入口および搬出口側に位置する洗浄ゾーンに有するノズルから冷水を洗浄水として噴射することを特徴とする食器の洗浄装置としたものである。
【0011】
これによって、簡素化した構成により洗浄装置内で発生する高温多湿な空気の洗浄装置外への流出を防止して、洗浄装置の設置された作業室の空調熱負荷の削減、作業環境の良化を図った食器の洗浄装置とすることができる。
【0012】
第2の発明は、第1の発明において、搬入口および搬出口側に位置する洗浄ゾーンに有する複数のノズルから冷水を洗浄水として噴射することを特徴とする食器の洗浄装置としたものである。
【0013】
これによって、複数に分割して噴射する冷水の洗浄水と高温多湿な空気との気液接触が促進され、高温多湿な空気の温度をより効果的に下げることができる。
【実施例】
【0014】
以下、本発明の一実施例を、丸形形状をした皿を食器例として図1〜図12を参照しながら説明する。図1は本発明の一実施例の食器である皿の洗浄方法を実施する洗浄装置の基本構成を示す正面構成図、図2は図1のA−A線における側断面図、図3は皿の収納具の概観斜視図、図4は図3の収納具の上面図、図5は複数の皿を鉛直方向に積み重ねた状態を示す概観図、図6は鉛直方向に積み重ねた皿を収納具に収納した状態を示す正面図、図7は収納具を鉛直方向から水平方向に倒した状態における皿の姿勢を示す図、図8は複数の皿を収納具に収納し、収納具を水平方向にしたときの先頭部に位置する皿の上方側の周端部および最後尾部に位置する皿の上方側の周端部の一部拡大図、図9〜12は洗浄時における皿の離間および姿勢状態変化を示す図である。なお、図1中の実線矢印は収納具14の移動方向(搬送方向)を示す。
【0015】
図1に示すように、洗浄装置1は、搬送手段であるコンベア2と、コンベア2の下方に位置する仕切部材3により上下方向に区分され、下方部は下部外郭体4によって機器スペース5を構成している。上方部は上部外郭体6によって洗浄スペース7を構成している。また洗浄水を貯留するタンク8からポンプ9によって洗浄水を噴射するノズル10、11を備えている。
【0016】
複数の皿37を収納した収納具14が洗浄装置1に設けた搬入口1aからコンベア2上に搬入され、図1中の実線矢印方向に所定の速度で移動するものである。洗浄を終了した収納具14は、洗浄装置1に設けた搬出口1bから搬出される。また、搬入口1a、搬出口1bには、上端部を固定し、下端部を固定せず自由として垂下した屈曲自在な仕切部材1c、1dを設けている。収納具14は、前記縦方向に切れ目を入れた仕切部材1c、1dに当たりながら移動する。なお、コンベア2は収納具14に収納した皿37に、ノズル10、11より噴射する洗浄水の妨げにならないようレール状に構成されている。タンク8、ポンプ9、ノズル10、11は配管12、13により接続されている。
【0017】
図2に示すように、ノズル10、11は、皿37重ね方向と直交する方向(皿37の径方向)における鉛直中心を挟んで互いに所定角度(θ2)を有して配置し、皿37の上半部側より皿37の略中央部に向けて洗浄水を噴射する。またノズル10、11は、図1に示すように鉛直面に対して所定角度(θ1)を有して配置しているものである。さらにノズル10、11の各々と皿37との距離は、皿37の複数の大きさに対応させるため、最も外径の大きい皿37をベースにできるだけ皿37の周端部に近接した位置に配置している。なおノズル10、11の所定角度(θ1)は鉛直面に対して例えば略10度に設定しているものである。
【0018】
洗浄スペース7には、収納具14の移動方向に沿って皿37を収納した複数の収納具14が所定間隔をおいてコンベア2上に位置し、収納具14に対応した位置に各々ノズル10、11を備えている。また洗浄スペース7は、収納具14の入口側から荒洗浄ゾーン7a、中間洗浄ゾーン7b、7c、仕上げ洗浄ゾーン7dに区分されている。各々の洗浄ゾーンに、洗浄水を貯留するタンク8、ポンプ9、ノズル10、11を一つのユニットとして少なくとも一つ備えているものである。なお洗浄ゾーンの区分およびその数、各々の洗浄ゾーンにおけるタンク8、ポンプ9、ノズル10、11の各々の配置数は一例であって、これに限定されるものではない。
【0019】
また、中間洗浄ゾーン7b、7cにある各々のタンク8には、タンク8内の洗浄水を所定温度(例えば60〜80度C)に加熱するための加熱出段8aが設けられている。これによって中間洗浄ゾーン7b、7cにあるノズル10、11から温水を噴射するものである。加熱出段8aは、熱源として水蒸気、電気ヒータ等を用いる。
また、荒洗浄ゾーン7a、仕上げ洗浄ゾーン7dにある各々のタンク8には、前記した加熱出段8aは設けていない。これによって荒洗浄ゾーン7a、仕上げ洗浄ゾーン7dにあるノズル10、11からは冷水を噴射するものである。この冷水は常温レベル(5〜40度C)の水道水をタンク8に導入する。なお、冷水の温度を一定化させるため別途冷却手段を備えてもよい。
【0020】
図3の皿37の収納具14の概観斜視図および図4の収納具14の上面図に示すように、収納具14は主に収納部15、保持部26により構成されている。収納部15はベース板16、枠17を有し、ベース板16と枠17は所定長さの支柱18、19、20、21により一体化されている。さらに断面が円形である棒状の支持体22、23がベース板16と枠17の間に固定されている。また保持部26はベース板27、枠28を有し、ベース板27と枠28は所定長さの支柱29、30、31、32により一体化されている。さらに断面が円形である棒状の支持体33、34がベース板27と枠28の間に固定されている。収納部15の支柱21と保持部26の支柱31の複数個所に回動部材35を設け、収納部15と保持部26を回動自在に構成して保持部26の開閉を可能としてある。さらに保持部26の支柱32にフック部材36を設けて、保持部26を収納部15に対して閉状態したとき各々を固定するようにしたものである。枠17には取手24を設け、この取手24は回動部材25によって回転可能に構成されている。
【0021】
図5、図6に示すように、喫食後における未洗浄の食器である皿37は、皿37の表面37aを上にして所定個数(例えば20〜40個)鉛直方向(縦方向)に積み重ねる。これを一単位として鉛直方向の姿勢にした収納具14の保持部26を開状態として収納部15に収納する。最下部の皿37の裏面37bの糸底37dがベース板16上に乗り、皿37の周端部37cが支持体22、23に接触するまで押し込んで収納する。この後保持部26を回動させて閉状態とする。このとき皿37の周端部37cが支持体33、34に接触または近接した状態なる。これによって所定個数、鉛直方向に積み重ねた皿37は、支持体22、23、33、34により周端部37cの複数個所が支持される。
【0022】
また、積み重ねた皿37の先頭(最上部)に位置する皿37の表面37a側と、最後尾(最下部)位置する皿37の裏面37b側(糸底37dを含む)との全長(L1)に対して、先頭(最上部)に位置する皿37の表面37aと枠17、28の内面とに所定のスペース(L2)を有するように収納具14に積み重ねた皿37を収納する。したがって収納具14のベース板16、27の内面と枠17、28の内面との全長(L3)は(L1)に(L2)を加えたものとなる。所定のスペース(L2)は、例えば10〜20ミリメートルに設定する。(S1)は互いに隣り合う皿37の周端部37cの間隔を示す。
【0023】
皿37を鉛直方向に積み重ね、これを一単位として鉛直方向の姿勢にした収納具14に収納するようにしたが、収納部15を下にして収納具14を水平方向(横方向)の姿勢として、積み重ねた皿37を収納することもできる。
【0024】
収納具14に複数の皿37を収納した後、収納部15を下にして収納具14を水平方向(横方向)の姿勢にして洗浄スペース7のコンベア2上に投入する。収納具14を鉛直方向から水平方向にした際の複数の皿37の姿勢状態を図7に示す。
【0025】
また、収納部15を下にして収納具14を水平方向にした際には、先頭に位置する皿37の表面37a側の下部が枠17(位置規制部材)に接触し、最後尾に位置する皿37の裏面37b側の一部がベース板27(位置規制部材)に接触して、両端の位置が規制されている。また収納具14を鉛直方向にして複数の皿37を収納したときの先頭に位置する皿37の表面37aと枠17、28の内面との所定のスペース(L2)に相当する所定範囲において、複数の皿37の周端部37cが支持体22、23、33、34を自由に滑って重ね方向に沿って移動自在に支持されている。
【0026】
さらに、複数の皿37の周端部37cが支持体22、23、33、34を自由に滑って重ね方向に沿って移動自在に支持するとともに、複数の皿37全体の周端部37cおよび先頭に位置する皿37の表面37a側と最後尾に位置する皿37の裏面37b側のみを位置規制部材であるベース板16、27、枠17、28により支持して位置規制するものである。これによって所定のスペース(L2)に相当する所定範囲において、表面37a側と裏面37b側を水平方向に重ねた複数の皿37を、重ね方向に沿った移動および鉛直方向(縦方向)および水平方向(横方向)の姿勢変化を所定範囲内で自在となるようにして収納するものである。
【0027】
収納部15を下にして収納具14を水平方向にした際に、皿37の重心が皿37の裏面37b側に位置することによって、複数の皿37は皿37の裏面37b側を下方として周端部37cが支持体22、23、33、34を滑って、複数の皿37は互いにその一部が接触し、折り重なるようにして同方向に所定角度(θ3)に傾斜した姿勢となっている。また、皿37の傾斜角度は、先頭に位置する皿37と最後尾に位置する皿37とで異なり、先頭に位置する皿37の傾斜角度(θ3)を最大とし、最後尾に位置する皿37側方向につれて傾斜角度が徐々に小さくなった状態となる。
【0028】
また、傾斜した複数の皿37の下方側の周端部37cは支持体22、23に接触し、さらに先頭に位置する皿37の傾斜角度(θ3)を最大とし、最後尾に位置する皿37側方向につれて傾斜角度が徐々に小さくなった状態となっていることから、複数の皿37の上方側の周端部37cの高さは、最後尾に位置する皿37の周端部37cから先頭に位置する皿37の周端部37cにかけて徐々に低くなる状態となっている。この状態では複数の皿37の上方側の周端部37cは支持体33、34に接触せず離れているものである。なお複数の皿37の傾斜角度は、所定のスペース(L2)を一定とした場合、皿37の直径寸法によって異なり、皿37の直径がより大きい場合に傾斜角度(θ3)は小さくなることになる。また、互いに隣り合う皿37の下方側の周端部37cの間隔(S2)は、上方側の周端部37cの間隔(S3)よりも広くなった状態となる。
【0029】
複数の皿37の上方側の周端部37cの高さは、最後尾に位置する皿37の周端部37cから先頭に位置する皿37の周端部37cにかけて徐々に低くなる状態となっている。これによって図8に示すように、互いに隣り合う皿37の周端部37cの高さ方向に段差(S5)が形成されるとともに、互いに隣り合う皿37は表面37a側と裏面37b側の一部(例えば糸底37d)が接触することによって、周端部37c間に間隔(S3)が形成される。また複数の皿37が折り重なるようにして同方向に所定角度(θ3)に傾斜した姿勢となっていることから、先頭に位置する皿37の上方側の周端部37cと収納具14の枠17との間に間隔(S4)が形成されている。また、図8に示すように、最後尾に位置する皿37の裏面37b側の一部(例えば糸底37d)がベース板16、27に接触することによって、最後尾に位置する皿37の上方側の周端部37cとベース板16および27との間に間隔(S6)が形成されている。
【0030】
また本実施例においては、断面が円形である棒状の支持体22、23、33、34と皿37の周端部37cとはほぼ点接触となり滑り抵抗を減少させることができる。支持体22、23および33、34は、平滑性のよい加工表面または少なくとも表面が樹脂等であることが好ましく、この場合には支持体22、23および33、34と皿37の周端部37cとの滑り性を良くして皿37の移動をスムーズにし、洗浄時における互いに隣り合う皿37の離間動作と姿勢変化をより確実に行うことができる。
【0031】
なお、食器を収納した後の収納具は、容易に持ち運びができ、また洗浄装置への投入、搬出作業が容易にできるように考慮する必要がある。このため食器の種類、形状、質量等によって異なるが、特に総質量の面から収納具14へ収納する皿37の個数は例えば20〜40個程度が好ましい。
【0032】
また、収納具14の支持体22、23および33、34の数、断面形状、配置位置等は、実施例に限定されるものではなく、食器(皿37)の形状、大きさ、質量、材質等によって、洗浄時の食器の傾斜姿勢および傾斜姿勢から鉛直方向への移動の安定性を考慮して最適条件に設定すればよい。実施例においては、収納部15を下にして収納具14を水平方向(横方向)の姿勢にして洗浄を行うので、複数の食器(皿37)の質量を収納部15の支持体22、23が受けて支持することになる。したがって収納部15の支持体22、23の数を保持部26の支持体33、34の数よりも多くしてもよく、この場合には安定性をより向上させることができる。
【0033】
以上のように、収納具14は、複数の皿37の周端部37cが支持体22、23、33、34を自由に滑って重ね方向に沿って移動自在に支持するとともに、先頭に位置する皿37の表面37a側と最後尾に位置する皿37の裏面37b側のみの位置を位置規制部材であるベース板16、27および枠17、28により規制して、表面37a側と裏面37b側を水平方向に重ねた複数の皿37を、重ね方向に沿った移動および鉛直方向の姿勢変化を所定範囲内で自在となるように収納するものである。
【0034】
これによって、寸法にばらつきのある皿37、周端部37c間の(外縁)のピッチが小さく近接した皿37、喫食後の残飯、肉片等の固形物が付着した皿37を積み重ねてそのまま収納具に挿入、収納することができる。また複数の皿37の個々の嵌め込み具合の確認も不要となり、複数の皿37の収納および取り出しを極めて容易にして収納性を向上させることができる。
【0035】
また、積み重ねた皿37の全長に対して所定スペースだけ与えて収納すればよく、複数の皿37をコンパクトに収納して、収納具自体の小型化、軽量化を図ることができる。さらに構造の簡素化により、収納具に収納した複数の皿37へ噴射する洗浄水の流れに対して妨げとなる構成要素が少なく、複数の皿37の洗浄を確実に行うことができる。また収納具自体の洗浄も確実に行うことができるとともに、複数の皿37の汚れ成分が引っかかり収納具に残ってしまうこともない。このように収納具の構成を簡素化するとともに皿37の収納性を向上させることができる。
【0036】
収納部15を下にして収納具14を水平方向(横方向)の姿勢にした際に、皿37の重心が皿37の裏面37b側に位置することによって、複数の皿37は、裏面37b側を下方として周端部37cが支持体22、23、33、34を滑って、複数の皿37は互いにその一部が接触し、折り重なるようにして同方向に所定角度(θ3)に傾斜した姿勢となるものである。このように個々の皿37を支持、拘束し、この支持機構を操作して複数の皿37を傾斜させる必要がなく、収納具14を水平方向にするだけで複数の皿37が傾斜した姿勢となるので、洗浄時における操作作業を簡素化することができる。さらに複数の皿37の姿勢を安定化させた状態で洗浄装置に投入、搬送することができる。
【0037】
また、互いに隣り合う皿37の下方側の周端部37cの間隔を、上方側の周端部37cの間隔よりも広くなるようにして複数の皿37を収納する。これによって、複数の皿37の姿勢をより安定化させた状態で洗浄装置に投入、搬送することができる。また洗浄後に保管する際、皿37の表面37a側と裏面37b側に付着した洗浄水が流出しやすく乾燥をより早めることができる。
【0038】
次に、図9〜12に基づいて、基本的な洗浄の動作、作用および洗浄における皿の離間および姿勢状態変化を説明する。なお図中において、Wは噴射された洗浄水の流れを示す。
【0039】
図9(a)は、移動方向における先頭に位置する収納具14に収納された皿37の表面37aの洗浄状態を示す。ノズル10、11から間隔(S4)部分に洗浄水を互いに交差する方向に噴射する。これによってノズル10、11からの洗浄水が皿37の表面37a部において衝突流となって拡散し汚れを除去するものである。特に皿37の表面37a部と枠17、28との間で洗浄水が跳ね返りながら表面37a部に当たることによって汚れを確実に除去するものである。
【0040】
図9(a)の状態においては、複数の食器37は所定角度に傾斜した姿勢であるが、ノズル10、11からの洗浄水が皿37の表面37aへの動圧を与え、また皿37の表面37a部と枠17、28との間隔を上方から下方へ洗浄水が流動することによって、図9(b)に示すように、皿37の表面37aの下部が枠17、28から離れて離間し、先頭から最後尾に位置する複数の皿37が所定角度に傾斜した姿勢から略鉛直姿勢に変化する。さらに皿37の表面37a部と枠17、28との間隔を上方から下方へ洗浄水が流動し、皿37の表面37aの汚れを除去するものである。
【0041】
図10(a)は、図9(b)の状態から固定配置したノズル10、11に対し、コンベア2により収納具14が移動して、洗浄水が先頭に位置する皿37の周端部37cに当たっている状態を示す。ノズル10、11から噴射する洗浄水は、所定の幅を有し、また洗浄水はその中央部の流速が外周部の流速よりも早い速度分布となっている。さらに周端部37cの厚さ(幅)は小さく、所定の曲率を有する構造となっている。これらによって洗浄水は皿37の周端部37cに当たるとき周端部37cの両側に分流され、この分流量の割合は収納具14の移動によりごく短時間に変化することになる。なおノズル10、11から噴射する洗浄水の収納具14の移動方向における幅は細く絞る必要はなく、例えば互いに隣り合う皿37の周端部37cのピッチ寸法程度でよい。
【0042】
したがって、収納具14の移動により先頭に位置する皿37の周端部37cから枠17、28側への洗浄水の分流成分の量が、先頭に位置する皿37の周端部37cから隣り合う二番目の皿37側への洗浄水の分流成分の量よりも多いときは、皿37の表面37a部と枠17、28は図9(b)に示す離間した状態にある。
【0043】
さらに、収納具14の移動により先頭に位置する皿37の周端部37cから隣り合う二番目の皿37側への洗浄水の分流成分の量が、先頭に位置する皿37の周端部37cから枠17、28側への洗浄水の分流成分の量よりも多くなると、上方側の周端部37cの間隔(S3)に入り込んだ洗浄水の動圧および静圧が、先頭に位置する皿37の裏面37bおよび二番目の皿37の表面37aに作用してこれらを押し広げ、図10(b)に示すように先頭に位置する皿37は、枠17、28側へ支持体22、23、33、34を周端部37cが滑って移動して枠17、28へ接触し、同時に先頭に位置する皿37と隣り合う二番目の皿37とが接触した状態から離れて離間する。
【0044】
前記離間した間隔内を洗浄水が上部から下部方向および上部から横方向に流動し、先頭に位置する食器37の裏面37bおよび二番目の食器37の表面37aの汚れを除去して洗浄するものである。洗浄水が離間した間隔内を流動するとき、食器37の表面37aおよび裏面37bの汚れを確実に除去するとともに、離間した間隔の形成を保持することができる。
【0045】
前記したように、分流量の割合は収納具14の移動によりごく短時間に変化することから、図10(a)から図10(b)に示す状態の移行はほぼ瞬時に行われ、収納具14に収納した複数の皿37は略鉛直姿勢を維持したままの状態となる。図10(b)に示す状態において、洗浄水の流動により先頭に位置する皿37の裏面37bと隣り合う二番目の皿37の表面37aの汚れを除去するものである。
【0046】
図10(a)、(b)に示す状態において、収納具14に収納した複数の皿37は略鉛直姿勢を維持したままの状態となることから、所定角度(θ3)傾斜して収納した状態での上方側の周端部37cの間隔(S3)は、皿37を鉛直方向に積み重ねて収納具14に収納したときの周端部37cの間隔(S1)とほぼ同一となる。これによって互いに隣り合う皿37の上方側の周端部37cの間隔が広くなり、洗浄水がより互いに隣り合う皿37の周端部37cの間隔に入りやすくなる。
【0047】
図11(a)は、図10(b)の状態から固定配置したノズル10、11に対し、コンベア2により収納具14が移動して、洗浄水が二番目に位置する皿37の周端部37cに当たっている状態を示す。前記図10(a)、図10(b)における状態変化と同様に、収納具14の移動により二番目に位置する皿37の周端部37cから先頭に位置する皿37側への洗浄水の分流成分の量が、二番目から隣り合う三番目の皿37側への洗浄水の分流成分の量よりも多いときは、先頭に位置する皿37の裏面37bと二番目に位置する皿37の表面37aは図10(b)に示す離間した状態にある。
【0048】
さらに、収納具14の移動により二番目に位置する皿37の周端部37cから隣り合う三番目の皿37側への洗浄水の分流成分の量が、二番目に位置する皿37の周端部37cから先頭に位置する皿37側への洗浄水の分流成分の量よりも多くなると、図11(b)に示すように二番目に位置する皿37は先頭に位置する皿37側へ支持体22、23、33、34を滑って移動して先頭に位置する皿37へ接触し、同時に二番目に位置する皿37と隣り合う三番目の皿37とが接触した状態から離れて離間する。
【0049】
前記したように、分流量の割合は収納具14の移動によりごく短時間に変化することから、図11(a)から図11(b)に示す状態の移行はほぼ瞬時に行われ、収納具14に収納した複数の皿37は略鉛直姿勢を維持したままの状態となる。図11(b)に示す状態において、洗浄水の流動により二番目に位置する皿37の裏面37bと隣り合う三番目の皿37の表面37aの汚れを除去するものである。これ以降、収納具14の移動により前記した同様の動作、作用を繰り返し、収納具14に収納した食器37の洗浄を順次行うものである。
【0050】
図12(a)は、収納具14の移動により、ノズル10、11からの洗浄水が、最後尾に位置する皿37の裏面37bの位置に移動したときの洗浄状態を示す。ノズル10、11の洗浄水は、最後尾に位置する皿37の裏面37bとベース板16、27との間隔(S6)に入り、収納具14のベース板16、27の面と最後尾に位置する皿37の裏面37bとの間で衝突を繰り返し最後尾に位置する皿37の裏面37bの汚れを除去し洗浄する。収納具14に収納した複数の皿37は、最後尾に位置する皿37の裏面37bが洗浄水に押されていることにより略鉛直方向の姿勢となっているものである。
【0051】
一般的に食器の表面よりも食器の裏面の汚れは少ないが、前記作用により最後尾に位置する皿37の裏面37bの汚れを確実に除去するものである。なお図9〜12に示した洗浄状態において、収納具14自体もノズル10、11から噴射した洗浄水および皿37からの洗浄水の流動によって洗浄されるものである
図12(b)は、図12(a)の状態から収納具14の移動により、ノズル10、11からの洗浄水が収納具14のベース板16、27より外れた位置に移動したときの洗浄状態を示す。このときはノズル10、11からの洗浄水が複数の皿37に当たらないので、図7に示すように複数の皿37は収納時と同様に所定角度(θ3)に傾斜した状態に戻ることになる。
【0052】
以上のように、図9〜12に示した洗浄動作を、荒洗浄ゾーン7a、中間洗浄ゾーン7b、7c、仕上げ洗浄ゾーン7dの各々において行い、収納具14とともに収納した皿37の洗浄を完了する。
【0053】
洗浄を終了した皿37は、収納具14に収納したまま、次工程で例えば乾燥、殺菌等を行い保管されるものである。なお一つの洗浄ゾーンにおいて、収納具14の一方向の移動により図9〜12に示した洗浄動作を複数回行うようにしてもよく、必要に応じて選択する。
【0054】
なお、丸形状の食器としてお椀があるが、前記皿37と同様の構成、洗浄動作、作用、効果となるものである。
【0055】
以上のように、本実施例における洗浄装置は、表面37a側と裏面37b側を水平方向に重ねた複数の食器である皿37の周端部37cを重ね方向に沿って複数の支持体22、23、33、34により支持するとともに、前記複数の皿37の内、先頭に位置する皿37の表面37a側と最後尾に位置する皿37の裏面37b側の位置を位置規制部材であるベース板16、27および枠17、28により規制して、複数の皿37を重ね方向に沿った移動および姿勢変化を所定範囲内で自在となるようにして収納具14に収納し、前記収納具14に収納した複数の皿37の周端部にノズル10、11から洗浄水を重ね方向に沿って順次噴射し、前記ノズル10、11から噴射した洗浄水により、接触した互いに隣り合う皿37を離して離間させ、離間した間隔に流入した洗浄水の流動により複数の皿37の洗浄を順次行うものである。
【0056】
皿37の個々ごとに周端部37cを支持、拘束せずに所定範囲内で自由に重ね方向の移動、姿勢変化を自由にして収納し、この周端部37cに重ね方向に沿って順次噴射する。これによって個々の皿37が洗浄水の流動に瞬時に追従して動いて揺動し、互いに隣り合う皿37が接触状態と離れた非接触状態を順次繰り返しながら離間する。前記洗浄水が離間した間隔内を流動するとき、汚れを確実に除去するとともに離間した間隔の形成を保持することがでる。
【0057】
また、互いに隣り合う皿37が接触状態と離れた非接触状態を順次繰り返しながら、皿37が複数の支持体22、23、33、34に沿って移動、揺動し、さらに互いに隣り合う皿37が早い速度で接触しあうことになる。この移動および接触時の反動によって皿37に付着した汚れを除去することができ、残渣物の剥離を促進して洗浄性能をより高めることができる。さらに皿37の周端部37cが移動することによって周端部37c部分および収納具14自体の汚れも確実に除去することができる。
【0058】
このように、個々の皿37の周端部37cの支持を不要とし、且つ互いに隣り合う皿37の間に洗浄水が流動するに必要な所定スペースを有して複数の皿37を収納具14に収納すればよく、収納具14を小型化することができる。これにより洗浄装置に、同時により多くの収納具14を投入して洗浄することができる。また前記したように互いに隣り合う皿37が瞬時に離間し、且つ汚れを確実に除去することができる。したがって、収納具にコンパクトに収納した皿37の汚れを確実にかつ効率的に除去することができるものである。
【0059】
また、本実施例においては、ノズル10、11から噴射した洗浄水により、所定角度傾斜した姿勢で収納した複数の皿37を略鉛直の姿勢に変化させて接触した互いに隣り合う皿37を離して離間させるものである。互いに隣り合う皿37を確実に離間させるとともに、洗浄水は、皿37の表面37aおよび裏面37bに必ず接触して流動することになり、さらに略鉛直の姿勢とすることで汚れ成分の落下を促進して汚れを確実に除去することができる。
【0060】
また、皿37の周端部37cに複数のノズル10、11より洗浄水を重ね方向に沿って噴射することによって、皿37の姿勢を安定させた状態で離間させるとともに、十分な洗浄水が離間した間隔に入り込み汚れを確実に除去することができる。さらに皿37の周端部37cの間隔に複数のノズル10、11から互いに交差する方向に洗浄水を噴射することによって、複数のノズル10、11からの洗浄水が離間した間隔内で衝突流となって拡散し、洗浄水の噴射の無い周端部37c側から外方に排出する高速の洗浄水流を形成し、汚れを確実に除去することができる。
【0061】
なお、所定スペース(L2)の寸法は、複数の皿37の鉛直面に対する傾斜角度(θ3)、互いに隣り合う皿37の洗浄時における必要な離間距離を考慮し、最適条件に設定すればよい。傾斜角度(θ3)が大き過ぎると皿37の姿勢がばらつき、不安定となり好ましくない。離間距離は、洗浄水が互いに隣り合う皿37の表面37aおよび裏面37bの全面に流動する寸法でよく、大きな距離を必要としない。皿37の種類、形状、寸法、質量等によって異なるが、傾斜角度(θ3)は例えば5〜10度、離間距離は例えば10〜20ミリメートルに設定する。したがって皿37を収納具14にコンパクトに収納し、この状態まま洗浄することができる。
【0062】
また、収納具14の移動速度は、洗浄水の噴射量および噴射速度、互いに隣り合う皿37が離間して洗浄水が流動している時間と相関し、皿37の汚れが多い場合には移動速度をより遅くし、汚れが少ない場合には移動速度をより早くすればよく、状況に応じて設定する。通常収納具14の移動速度は例えば分速0.5〜1メートルに設定する。
【0063】
なお、前記した洗浄状態において、洗浄水により複数の皿37を所定角度傾斜した姿勢から略鉛直姿勢に変化させたが、所定角度(θ3)傾斜した姿勢を若干鉛直方向に変化させ、傾斜した姿勢のまま、互いに隣り合う皿37を接触状態から非接触状態として離間させて洗浄水を流動させて洗浄を行うようにしてもよい。この場合の非接触状態における互いに隣り合う皿37の上方側の間隔は、例えば10ミリメートル以下と狭くなるが、この状態においてもノズル10、11からの洗浄水を皿37の上方側の周端部37cの間隔に入り込ませ、さらに皿37の下方側に抜けるようにして流動させて洗浄することができる。
【0064】
前記した皿37の所定角度(θ3)傾斜した姿勢から鉛直方向への姿勢の変化角度は、例えばノズル10、11からの洗浄水の量、噴射速度、洗浄スペース7内での収納具14の移動速度等によって調節することができる。ノズル10、11からの洗浄水の量を減少させること、噴射速度を遅くすること、洗浄スペース7内での収納具14の移動速度をより早くすることのうち、少なくともいずれかを調節することによって、鉛直方向への姿勢の変化角度は小さくなる傾向となり、互いに隣り合う食器の上方側の離間した間隔も狭くなる。これは、食器の形状、質量および汚れの程度によって最適条件に設定すればよい。
【0065】
また皿37の所定角度(θ3)傾斜した姿勢から鉛直方向への姿勢の変化角度を少なくして傾斜したまま洗浄水を噴射する場合には、図7および図8に示すように、互いに隣り合う皿37の周端部37cの高さ方向に段差(S5)が形成されているとともに、ノズル10、11は鉛直面に対して所定角度(θ1)を有して設けていることによって、ノズル10、11から噴射された洗浄水は、段差(S5)部分に当たって捕捉され、皿37の上方側の周端部37cの間隔に入り込み易い状態となる。
【0066】
前記した段差(S5)部分による洗浄水の捕捉作用により、傾斜した姿勢のまま複数の皿37を順次離間させて洗浄することができる。この場合には収納具14に収納した複数の皿37も傾斜した姿勢となっている。
【0067】
なお、図示しないが、収納具14を一方向の移動から駆動手段により往復移動させて皿37の洗浄を行うか、または収納具14を固定し、駆動手段によりノズル10、11を往復移動させて皿37の洗浄を行うことによって、洗浄装置の小型化が可能となり、省スペース化を図ることができる。特に洗浄する皿37の個数の比較的少ない場合に最適である。
【0068】
さらに、本実施例の洗浄装置においては、荒洗浄ゾーン7aにおいては、ノズル10、11から冷水を洗浄水として噴射する。これによって、食器である皿37に付着した汚れに先ず水分を与え、汚れを軟化させるとともに、離間した間隔での洗浄水の流動により汚れを除去する。
【0069】
中間洗浄ゾーン7b、7cにおいては、ノズル10、11から例えば60〜80度Cの温水を洗浄水として噴射する。さらに、必要に応じて洗剤をタンク8に混入させて、洗剤を含む洗浄水を噴射する。これによって、皿37に付着した汚れをさらに確実に除去する。
【0070】
仕上げ洗浄ゾーン7dにおいては、ノズル10、11からは冷水を洗浄水として噴射する。中間洗浄ゾーン7b、7cにおいて用いた洗剤成分を洗い流し、さらに汚れの除去を確実なものとする。
【0071】
中間洗浄ゾーン7b、7cにおいては、ノズル10、11から60〜80度Cの温水を洗浄水として噴射するため、洗浄ゾーン7内の全体にわたって温度が上昇し、さらに水蒸気が発生する高温多湿な状態となる。この高温多湿な空気が収納具14の搬入口1a、搬出口1bから高温多湿な熱気および水蒸気の粒として視認される状態で洗浄装置外に流出し場合、搬入口1a、搬出口1b近傍で作業する作業者にとって不快であり、さらに洗浄装置が設置された部屋の温度、湿度が高くなり、これを処理する空調機器の負荷が大きくなる。
【0072】
本発明の実施例においては、搬入口1a、搬出口1b側の荒洗浄ゾーン7a、仕上げ洗浄ゾーン7dの各々のノズル10、11から冷水を洗浄水として噴射する構成とする。中間洗浄ゾーン7b、7cにおいて生じた高温多湿な空気は、ノズル10、11から冷水を洗浄水として噴射する荒洗浄ゾーン7a、仕上げ洗浄ゾーン7dへ流動する。
【0073】
高温多湿な空気が搬入口1a、搬出口1bへ向けて荒洗浄ゾーン7a、仕上げ洗浄ゾーン7dを通過するとき、ノズル10、11から噴射した温度の低い(冷水)洗浄水および収納具14および皿37に当たって拡散した温度の低い洗浄水に気液接触する。この高温多湿な空気と温度の低い洗浄水との気液接触により、高温多湿な空気の温度を下げるとともに凝縮作用を生じる。さらに拡散した洗浄水は、荒洗浄ゾーン7a、仕上げ洗浄ゾーン7dを構成する壁面に当たって温度を低下させ、この壁面での凝縮作用による結露を生じる。
【0074】
これらの作用により、高温多湿な空気が荒洗浄ゾーン7a、仕上げ洗浄ゾーン7dを通過することによって、高温多湿な空気は温度低下し、除湿され、水蒸気の粒として視認されない状態として搬入口1a、搬出口1bから流出する。これによって、洗浄装置内で発生する高温多湿な空気の洗浄装置外への流出を防止して、洗浄装置の設置された作業室の空調熱負荷の削減、作業環境の良化を図った食器の洗浄装置とすることができる。
【0075】
さらに、食器の洗浄に使用する洗浄水の作用により高温多湿な空気の洗浄装置外への流出を確実に防止するもので、凝縮器、ブロア、または高圧ポンプ、高圧冷水噴霧機構等を必要とせず、構成の簡素化、小型化を図ることができるとともに、騒音を低くすることができる。
【0076】
中間洗浄ゾーン7b、7cにおいて温度上昇した食器および食器を収納した収納具は、仕上げ洗浄ゾーン7dを通過することによって冷却され、搬出口1bから搬出する際の取り扱いをより容易にすることができる。
【0077】
また、搬入口1a、搬出口1bには、上端部を固定し、下端部を固定せず自由として垂下した屈曲自在な仕切部材1c、1dを設けている。ノズル10、11から噴射した温度の低い洗浄水および収納具14および皿37に当たって拡散した温度の低い洗浄水が仕切部材1c、1dに当たってさらに拡散するとともに、仕切部材1c、1dの温度を低下させ凝縮作用による結露を生じる。したがってこの作用からも高温多湿な空気の洗浄装置外への流出を防止することができる。
【0078】
なお、荒洗浄ゾーン7a、仕上げ洗浄ゾーン7dにある各々のタンク8には、常温レベル(5〜40度C)の水道水をタンク8に導入するようにしたが、ノズル10、11に直接水道水を供給し、排水するようにしてもよい。また温度の安定している井戸水を利用してもよい。
【0079】
また、搬入口1aおよび搬出口1b側に位置する洗浄ゾーンに有する複数のノズルから冷水を洗浄水として噴射することによって、複数に分割して噴射する温度の低い洗浄水と高温多湿な空気との気液接触が促進され、高温多湿な空気の温度をより効果的に下げることができる。
【0080】
以上のように、本発明の食器の洗浄装置によれば、簡素化した構成により洗浄装置内で発生する高温多湿な空気の洗浄装置外への流出を防止して、洗浄装置の設置された作業室の空調熱負荷の削減、作業環境の良化を図った食器の洗浄装置とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
食器に限らず、例えば機械加工部品等の被洗浄物の洗浄用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の一実施例の食器の洗浄装置の基本構成を示す正面構成図。
【図2】図1のA−A線における側断面図。
【図3】食器例である皿の収納具の概観斜視図。
【図4】図3の収納具の上面図。
【図5】複数の皿を鉛直方向に積み重ねた状態を示す概観図。
【図6】鉛直方向に積み重ねた皿を収納具に収納した状態を示す正面図。
【図7】収納具を鉛直方向から水平方向に倒した状態における皿の姿勢を示す図。
【図8】複数の皿を収納具に収納し、収納具を水平方向にしたときの先頭部に位置する皿の上方側の周端部および最後尾部に位置する皿の上方側の周端部の一部拡大図。
【図9】(a)(b)洗浄時における皿の離間および姿勢状態変化を示す図。
【図10】(a)(b)洗浄時における皿の離間および姿勢状態変化を示す図。
【図11】(a)(b)洗浄時における皿の離間および姿勢状態変化を示す図。
【図12】(a)(b)洗浄時における皿の離間および姿勢状態変化を示す図。
【符号の説明】
【0083】
1 洗浄装置
1a 搬入口
1b 搬出口
1c 仕切部材
1d 仕切部材
2 コンベア(搬送手段)
3 仕切部材
4 下部外郭体
5 機器スペース
6 上部外郭体
7 洗浄スペース
7a 荒洗浄ゾーン
7b 中間洗浄ゾーン
7c 中間洗浄ゾーン
7d 仕上げ洗浄ゾーン
8 洗浄水タンク
8a 加熱手段
9 ポンプ
10、11 ノズル
12、13 配管
14 収納具
15 収納部
16 ベース板(位置規制部材)
17 枠(位置規制部材)
18、19、20、21 支柱
22、23 支持体
24 取手
25 回動部材
26 保持部
27 ベース板(位置規制部材)
28 枠(位置規制部材)
29、30、31、32 支柱
33、34 支持体
35 回動部材
36 フック部材
37 皿(食器、被洗浄物)
37a 皿の表面
37b 皿の裏面
37c 皿の周端部
37d 糸底


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の食器を収納した収納具と、前記収納具を移動させる搬送手段と、収納具の搬入口および搬出口と、前記搬送手段により移動する収納具の搬送方向の複数の位置に、収納具に収納した食器に所定温度に加熱した温水を洗浄水として噴射する洗浄ゾーンを含むノズルを有する複数の洗浄ゾーンを備え、前記所定温度に加熱した温水を洗浄水として噴射する洗浄ゾーンを挟んで前記搬入口および搬出口側に位置する洗浄ゾーンに有するノズルから冷水を洗浄水として噴射することを特徴とする食器の洗浄装置。
【請求項2】
搬入口および搬出口側に位置する洗浄ゾーンに有する複数のノズルから冷水を洗浄水として噴射することを特徴とする請求項1に記載の食器の洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−75575(P2010−75575A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−249425(P2008−249425)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(390007456)株式会社中西製作所 (26)
【Fターム(参考)】