説明

食用生地整形装置

【課題】捻りを付与された棒状食用生地がベルトコンベヤの進行方向に対しほぼ直交するように整列して送り出され、また該食用生地に付与する捻り巻数を容易に変更できる。
【解決手段】食用生地整形装置1は、ベルトコンベヤ2と該ベルトコンベヤの上方に平行に配置された低速走行ベルト4と該低速走行ベルトより高速に進行する高速走行ベルト5と、前記高速走行ベルトの下方に前記ベルトコンベヤ上面と摺接する非移動プレート6とを備え、前記2つの走行ベルト4、5は、棒状食用生地の端部をベルトコンベヤの進行方向に進行可能に配置され、また速度を調整する速度調整機能を備え、前記2つの走行ベルト4、5の速度調整をし、前記棒状食用生地の一端部xを前記低速走行ベルトと前記ベルトコンベヤ間にて移動させ、棒状食用生地の他端部yを前記高速走行ベルトと非移動プレート間にて捻転させながら移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、棒状食用生地に捻りを付与し整形加工を行う食用生地整形装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
捻りを付与した棒状のパン等を製造する場合、予め食用生地から棒状の細長い食用生地を作り、該棒状食用生地に捻りを付与している。
しかし、食用生地は柔らかで粘性があることから、棒状食用生地に捻りを付与する工程を機械化することができても、製造工程を自動化するには不十分なものである。
従来より棒状食用生地に捻りを付与する装置としては、特公昭49−42546号公報(特許文献1)の生パン捻り装置が提案されている。この発明と同様な食用生地整形装置が、現在では一般的に使用されている。これを図4に示す従来例に基づいて説明すると、棒状食用生地53aを載せて搬送するベルトコンベヤ52と、前記ベルトコンベヤ52の上方に設けられ、かつ、搬送される前記棒状食用生地53aの長さより短い間隔にて平行に配置された低速走行ベルト54と前記低速走行ベルト54より高速に進行する高速走行ベルト55から構成され、ベルトコンベヤ52で搬送されてくる前記棒状食用生地53aの一端部をベルトコンベヤ52と低速走行ベルト54とで上下から挟むようにして移動させ、該棒状食用生地53aの他端部をベルトコンベヤ52と前記高速走行ベルト55とで上下から挟むようにして捻転させながら移動させ、捻りを付与した棒状食用生地53bを成形するものであった。
【0003】
また、実開昭59−101682号公報(特許文献2)において、麺の一端を挟持するための一対の第1の下側と上側の搬送ベルトと、麺の他端を挟持するための一対の第2の下側と上側の搬送ベルトを、間隔を置いて並行に配置すると共に、第1の下側搬送ベルトと第2の上側搬送ベルトを第1の搬送速度で走行させ、第1の上側搬送ベルト及び第2の下側搬送ベルトを第1の搬送速度と異なる第2の搬送速度で、それぞれ同方向に走行させ麺に捻りを付与するものが提案されている。
【0004】
さらに、実開平3−9185号公報(特許文献3)は、カーブコンベヤを使用し、カーブコンベヤ上に棒状生地片の厚みよりも少ない間隔をおいて、扇状の転圧板を設け、生地片をカーブコンベヤと扇状の転圧板との隙間を通過させて、捻りを加えるもので、捻りの原理は、カーブコンベヤの内側と外側の搬送速度の相違により捻るもので、転圧板とカーブコンベヤとの隙間を通過させる際、生地片が上下から狭圧された状態でカーブコンベヤにより搬送されつつ捻りが付与されるものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭49−42546号
【特許文献2】実開昭59−101682号
【特許文献3】実開平3−9185号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1及び従来例として示した図4に開示されている発明は、棒状食用生地に捻りを付与する工程を行った後、捻り工程から送り出されてくる捻りを付与された棒状食用生地が、ベルトコンベヤの進行方向に対し斜めになって送り出されたり、整列することなくバラバラの向きになって送り出される。
また、棒状食用生地に付与する捻り巻き数を変更すると、さらに、送り出される捻りを付与された食用生地は、捻り巻き数を変える度にベルトコンベヤの進行方向に対する傾斜角度が変わって送り出される。
そのため、捻りを付与された食用生地が次の工程に送られ、天板に載せる場合、又は、該食用生地をさらに渦巻き整形等を行う場合、ベルトコンベヤの進行方向に対し斜めに送り出されたり、バラバラの方向を向いて送り出されてくる棒状食用生地を、手作業によりベルトコンベヤ上等において、ベルトコンベヤの進行方向に対し直交する方向になるよう修正する整列作業が必要になり、製造ラインを自動化することが困難であった。
【0007】
また、上記特許文献2に開示されている考案は、捻りを付与された麺が、搬送ベルトの進行方向に対しほぼ直交するように送り出されると推測されるが、上下一対づつ間隔を置いて平行に配置した搬送ベルトで麺の両端を挟持し、搬送しながらひねることによりひねり麺を作るものであるから、麺などの細い食用生地においては可能であっても、パン等の太い棒状食用生地では両端部を挟持し捻りを付与する方法では、棒状食用生地自身の重量に中間部が垂れ下が、捻りを付与した形の整った棒状食用生地を作ることは困難である。
その上、捻りを付与する専用の装置を、棒状食用生地を搬送するベルトコンベヤを分割して製造ラインに組み込むことが必要で、従来の製造ラインをそのまま利用することができないという欠点がある。
さらに、上記特許文献3の考案も、捻りを付与された棒状食用生地が、カーブコンベヤの出口において進行方向に対しほぼ直交するように送り出されるが、捻り巻数を変えることができず、かつ、カーブコンベヤを使用するため、製造ラインも大幅に改造することが必要となる等の問題点があった。
【0008】
本発明は上記問題点に鑑みなされたもので、捻りを付与された棒状食用生地がベルトコンベヤの進行方向に対しほぼ直交するように整列して送り出されるものであり、また、棒状食用生地に付与する捻り巻き数を変更することが容易で、かつ、捻り巻数を変えても同様にベルトコンベヤの進行方向に対しほぼ直交するように整列して送り出すことを可能としたものである。
さらに、捻りを付与する工程を行う専用の装置を製造ラインに組み込まなくても、従来の製造装置をそのまま利用し該装置に付設するだけでよく、製造ラインの大幅な改造等を必要としない食用生地整形装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するものは、以下のものである。
(1)棒状食用生地に捻りを付与する食用生地整形装置であって、該食用生地整形装置は、
棒状食用生地を載せて搬送するベルトコンベヤと、
前記ベルトコンベヤの上方に設けられ、かつ、搬送される前記棒状食用生地の長さより短い間隔にて平行に配置された低速走行ベルトと前記低速走行ベルトより高速に進行する高速走行ベルトと、
前記高速走行ベルトの下方に、前記ベルトコンベヤ上面と摺接するもしくは前記ベルトコンベヤ上面と若干離間した状態に配置された非移動プレートとを備え、
前記低速走行ベルトおよび前記高速走行ベルトは、前記ベルトコンベヤ上面との間に前記棒状食用生地の厚みよりも小さい間隔を有するように、かつ、前記棒状食用生地のそれぞれの端部を前記ベルトコンベヤの進行方向に進行可能に配置されており、
前記食用生地整形装置は、前記低速走行ベルトおよび前記高速走行ベルトの速度を調整する速度調整機能を備え、前記棒状食用生地の一端部を前記低速走行ベルトと前記ベルトコンベヤ間にて移動させ、前記棒状食用生地の他端部を前記高速走行ベルトと前記非移動プレート間にて捻転させながら移動させ、かつ、前記低速走行ベルトおよび前記高速走行ベルトは、前記低速走行ベルトおよび前記高速走行ベルトの配置部位より離脱しかつ捻りが付与された前記棒状食用生地が、前記ベルトコンベアの進行方向に対してほぼ直交するように、前記速度調整機能により速度調整されていることを特徴とする食用生地整形装置。
【0010】
(2)前記速度調整機能は、前記棒状食用生地の一端部を進行させる一端部進行速度と、前記棒状食用生地の他端部を進行させる他端部進行速度が、ほぼ同一となるように、前記低速走行ベルトおよび前記高速走行ベルトの速度を調整するものである上記(1)に記載の食用生地整形装置。
(3)前記食用生地整形装置は、前記速度調整機能による前記低速走行ベルトと前記高速走行ベルトの速度制御により、前記棒状食用生地に付与する捻りの巻き数を調節可能である上記(1)または(2)に記載の食用生地整形装置。
【0011】
(4)前記低速走行ベルトの進行速度は、前記ベルトコンベヤの進行速度とほぼ同じである上記(1)ないし(3)に記載の食用生地整形装置。
(5)前記食用生地整形装置は、前記速度調整機能による前記低速走行ベルトの進行速度を前記ベルトコンベヤの進行速度と異なるものとすることにより、前記棒状食用生地の一端部を前記低速走行ベルトと前記ベルトコンベヤ間にて捻転可能である上記(1)ないし(3)に記載の食用生地整形装置。
【0012】
(6)前記非移動プレートは、前記ベルトコンベア進行方向の上流側から下流側に向かって幅が徐々に広くなる上流側端部を有している上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の食用生地整形装置。
(7)前記非移動プレートは、前記ベルトコンベア進行方向の上流側から下流側に向かって幅が徐々に広くなる上流側端部と、該上流側端部と連続しかつほぼ同じ幅にて延びる同幅部とを有している上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の食用生地整形装置。
(8)前記非移動プレートは、前記ベルトコンベア進行方向の上流側から下流側に向かって幅が徐々に広くなる上流側端部と、該上流側端部と連続しかつほぼ同じ幅にて延びるを同幅部と、該同幅部と連続し、前記ベルトコンベア進行方向の上流側から下流側に向かって幅が徐々に狭くなる下流側端部とを有している上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の食用生地整形装置。
(9)前記非移動プレートは、該非移動プレートの高速走行ベルト側端部は、前記高速走行ベルト配置部位より側方に延び、前記棒状食用生地の他端部全体を裁置可能であり、前記非移動プレートの低速走行ベルト側端部は、前記低速走行ベルトと前記高速走行ベルトの中間部もしくは所定長低速走行ベルト側に位置するものとなっている上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の食用生地整形装置。
(10)前記非移動プレートの低速走行ベルト側端部は、前記低速走行ベルトと前記高速走行ベルト間の中央より、両者間の距離の1/10〜1/5分前記低速走行ベルト側に位置するものとなっている上記(9)に記載の食用生地整形装置。
【0013】
(11)前記低速走行ベルトおよび前記高速走行ベルトは、スポンジベルトである上記(1)ないし(10)のいずれかに記載の食用生地整形装置。
(12)前記食用生地整形装置は、前記低速走行ベルトと前記高速走行ベルトとの間隔を調整するベルト間隔調整機能を備えている上記(1)ないし(11)のいずれかに記載の食用生地整形装置。
(13)前記食用生地整形装置は、前記低速走行ベルトおよび前記高速走行ベルトと前記ベルトコンベアもしくは前記非移動プレート間の高さ調整する高さ調整機能を備えている上記(1)ないし(12)のいずれかに記載の食用生地整形装置。
【発明の効果】
【0014】
本発明の食用生地整形装置によれば、棒状食用生地に捻りを付与して送り出された食用生地が、ベルトコンベヤの進行方向に対し、ほぼ直交するように整然と並んで送り出されるので、ベルトコンベヤ上等において、人手により食用生地をベルトコンベヤの進行方向に対し直交するように修正する整列作業が不要となる。
また、棒状食用生地に付与する捻り巻数を容易に変えることができ、さらに、捻り巻数を変えても捻りを付与された食用生地は、ベルトコンベヤの進行方向に対しほぼ直交するように整列して送り出される。
【0015】
本発明の食用生地整形装置によれば、前記低速走行ベルトの進行速度を、前記ベルトコンベヤの進行速度とほぼ同じにすることにより、前記棒状食用生地の一端部を把持した状態で移動しつつ、前記棒状食用生地の他端部からのみ捻りあげることができる。そのため、前記棒状食用生地の一端部の形状は、食用生地整形装置に入ってきたときの形状のまま送り出される。
また、前記速度調整機能により前記低速走行ベルトの進行速度を前記ベルトコンベヤの進行速度と異なる進行速度に設定すると、前記棒状食用生地の一端部も前記低速走行ベルトと前記ベルトコンベヤ間にて捻転され、前記棒状食用生地の両端から捻りを加えることができ、さらに、棒状食用生地の両端部が捻転しながら移動するので、棒状食用生地の両端部を丸く成形することができる。
【0016】
本発明の食用生地整形装置によれば、前記非移動プレートは、前記ベルトコンベア進行方向の上流側から下流側に向かって幅が徐々に広くなる上流側端部を有しているので、食用生地整形装置に入ってくる棒状食用生地が、初めは端部が非移動プレートと接触し次第に接触する部分が多くなると同時に、ベルトコンベヤとの接触する部分が少なくなるので、棒状食用生地の他端部から捻りが徐々に加えられ、きれいな捻りを付与することができる。
また、前記非移動プレートは、前記上流側端部と、該上流側端部と連続しかつほぼ同じ幅にて延びるを同幅部とを有しているので、棒状食用生地がベルトコンベヤに接触する範囲が少ない状態で移動し、前記高速走行ベルトによる捻る力が棒状食用生地の広い範囲に伝わり捻りが付与され、確実に所定の巻数に捻られた棒状食用生地を送り出すことができる。
さらに、前記非移動プレートは、前記ベルトコンベア進行方向の上流側から下流側に向かって幅が徐々に狭くなる下流側端部を有しているので、棒状食用生地はベルトコンベヤとの接触範囲を徐々に大きくしながら移動し、ベルトコンベヤが食用生地に作用する力が徐々に大きくなり、所定の捻り巻数に捻りを付与された食用生地は、その形を保ったままベルトコンベア上に載せられ食用生地整形装置から送り出される。
【0017】
本発明の食用生地整形装置によれば、前記非移動プレートは、前記棒状食用生地の他端部側の全体を裁置でき、また、該非移動プレートの低速走行ベルト側端部(前記同幅部の部分)は、前記低速走行ベルトと前記高速走行ベルトの中間部もしくは所定長だけ低速走行ベルト側にまで設けてあるので、棒状食用生地がベルトコンベヤから受ける力を遮る範囲が広くなり、前記高速走行ベルト5による捻る力が棒状食用生地全体に及び、棒状食用生地全体に渡って均等な捻りを形成することができる。
そして、前記非移動プレートの低速走行ベルト側端部を、前記低速走行ベルトと前記高速走行ベルト間の中央より、両者間の距離の1/10〜1/5分だけ前記低速走行ベルト側に位置するように設けるのが好ましい。
【0018】
本発明の食用生地整形装置によれば、前記低速走行ベルトおよび前記高速走行ベルトにスポンジベルトを使用するので、棒状食用生地の表面を傷めることなく、また、すべりを生じることなく、確実に捻りを付与しながら前記棒状食用生地の一端部と他端部を進行させることができる。
また、前記食用生地整形装置は、前記低速走行ベルトと前記高速走行ベルトとの間隔を調整するベルト間隔調整機能を備えているので、棒状食用生地の長さに対応して調節でき、さらに、前記低速走行ベルトと前記ベルトコンベア間の高さ調節、および、前記高速走行ベルトと前記非移動プレート間の高さ調整をする高さ調整機能を備えているので、棒状食用生地の厚さ、或いは、径の大きさに合わせて調節することができ、棒状食用生地に的確な捻りを付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の食用生地整形装置の説明図である。
【図2】図2は、本発明の食用生地整形装置の平面図である。
【図3】図3は、本発明の食用生地整形装置の正面図である。
【図4】図4は、従来の食用生地整形装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の食用生地整形装置について、図に示す実施例を用いて説明する。
図1は、本発明の食用生地整形装置の一実施例の斜め前方から見た説明図、図2は、本発明の食用生地整形装置の平面図、図3は、本発明の食用生地整形装置の正面図、図4は、従来の食用生地整形装置の斜め前方から見た説明図である。
【0021】
図1〜図3において、1はこの実施例の食用生地整形装置であり、ベルトコンベヤ2と低速走行ベルト4と高速走行ベルト5と非移動プレート6から構成されている。
前記ベルトコンベヤ2は、捻りを付与する前の棒状食用生地3a、及び、捻りを付与した棒状食用生地3bの棒状食用生地3を載せて搬送するものであり、また、捻りを付与する前の棒状食用生地3aの一端部xを前記低速走行ベルト4と該ベルトコンベヤ間にて挟みながら移動させ、棒状食用生地3aの他端部yも移動させ、その後、捻りを付与した棒状食用生地3bを、天板に載せる等の次工程に搬送するものである。
前記ベルトコンベヤ2の上方には、低速走行ベルト4と該低速走行ベルトより高速で進行する高速走行ベルト5が、搬送される前記棒状食用生地3の両端部x、yに上方から当接できるように、該棒状食用生地3の長さより短い間隔を置いて平行に配置されている。
また、前記低速走行ベルト4は、前記ベルトコンベヤ2で搬送されてくる捻りを付与する前の棒状食用生地3aの一端部x(図2においてベルトコンベヤの左側端側)を、該ベルトコンベヤ2と上下から挟みベルトコンベヤ2の進行方向に移動又は捻転できるように、前記ベルトコンベヤ上面との間に前記棒状食用生地3aの厚みよりも小さい間隔を有する位置に設けられている。同様に、前記高速走行ベルト5も捻りを付与する前の棒状食用生地3aの他端部y(図2においてベルトコンベヤの右側端側)を、後述する非移動プレート6との間に前記棒状食用生地の厚みよりも小さい間隔を有するように設けられている。
【0022】
この実施例の食用生地整形装置は、図示してないが、前記低速走行ベルト4および前記高速走行ベルト5をプーリーを介して駆動するモーターと、該モーターの回転速度を制御する制御装置及びインバーターとを備え、棒状食用生地3の捻り巻数、棒状食用生地の厚み又は径の大きさ等に対応して、制御装置で前記低速走行ベルト4および前記高速走行ベルト5の走行速度等を算出し、その速度で走行するように、インバーターによりモーターの回転速度を制御し、高速走行ベルトの速度調整、或いは、低速走行ベルトと高速走行ベルトとの両方の走行速度を調節できる速度調整機能を備えている。
【0023】
前記非移動プレート6は、前記高速走行ベルト5との間で棒状食用生地3を挟みながら捻転できるようにするものであり、前記高速走行ベルト5の下方に位置し、前記ベルトコンベヤ上面と摺接するように配置され、ベルトコンベヤの動きに影響されないように固定されている。
尚、前記非移動プレート6は、前記ベルトコンベヤ上面と若干離間した状態に配置してもよい。
前記非移動プレート6は、平面から見てほぼ台形状であり合成樹脂製の平坦な板からなり、具体的には、前記ベルトコンベア進行方向の上流側から下流側に向かって幅が徐々に広くなるように傾斜して形成した上流側端部6aを有し、この上流側端部6aと連続し、かつ、ほぼ同じ幅にて前記ベルトコンベア進行方向に延びる同幅部6bを有し、さらに、該同幅部と連続し、前記ベルトコンベア進行方向の上流側から下流側に向かって幅が徐々に狭くなるように傾斜して形成した下流側端部6cとを有している。
そして、前記非移動プレート6の大きさは、前記ベルトコンベヤ2の進行方向の長さが、低速走行ベルト4の下部平坦部4a及び高速走行ベルト5の下部平坦部5aの長さLと同じかやや長い程度である。該非移動プレート6の幅は、高速走行ベルト側端部が、前記高速走行ベルト配置部位より側方に延び、前記棒状食用生地の他端部全体を裁置できる大きさである。前記非移動プレート6の低速走行ベルト側端部(同幅部6b)は、前記低速走行ベルト4と前記高速走行ベルト5の中間部もしくは所定長だけ低速走行ベルト側に位置する大きさである。
具体的には、前記非移動プレート6の低速走行ベルト側端部(同幅部6b)は、前記低速走行ベルトと前記高速走行ベルト間の中央より、両者間の距離Mの1/10〜1/5分だけ前記低速走行ベルト側に位置するのが好ましい。
さらに、棒状食用生地3と接する前記非移動プレート6の上面は、前記棒状食用生地3が滑ることなく、確実に捻りが加えられるように滑り止めが施されている。滑り止めは非移動プレート6の中央部に縦方向(ベルトコンベヤ2の進行方向)に所定の幅の微細なギザギザを設けた帯状としたものでもよい。
【0024】
前記低速走行ベルト4および前記高速走行ベルト5は、スポンジベルトを使用してもよく、スポンジベルトを使用すると棒状食用生地3の表面を傷つけることなく捻りを付与しながら移動させることができ、また、前記低速走行ベルト4と棒状食用生地3との間、前記高速走行ベルト4と棒状食用生地3との間に滑りが生じることがなく、設定した捻り巻数に捻りを付与した棒状食用生地に整形することができる。
また、前記低速走行ベルト4および前記高速走行ベルト5は2つのプーリーにより駆動され、プーリーはカップリング等を介して駆動用モーターに接続され、該駆動用モーターは制御装置からの制御信号によりインバーターを介して回転速度を調整する構成となっており、これらの内、低速走行ベルト、プーリー、カップリング、駆動用モーターからなる低速走行ベルト駆動装置と、同じく、高速走行ベルト、プーリー、カップリング、駆動用モーターからなる高速走行ベルト駆動装置がそれぞれ独立して設けられ、低速走行ベルト駆動装置も高速走行ベルト駆動装置もベルトコンベヤ上に架設された支持杆に対し、左右方向に移動可能に設けられ前記低速走行ベルト4と前記高速走行ベルト5との間隔Mを調整することができ、また、上下方向にも移動可能に設けられ前記低速走行ベルト4又は前記高速走行ベルト5の高さ調整をすることができるようになっている。
これにより、前記低速走行ベルト4と前記高速走行ベルト5との間隔Mを、捻りを付与する前の棒状食用生地3aの長さに対応して調節することができる。また、捻りを付与する前の棒状食用生地3aの厚み又は径の大きさに合わせ、ベルトコンベヤ上面と低速走行ベルト4との間隔、非移動プレート6の上面と高速走行ベルト5との間隔を調整できるようになっている。
【0025】
上記構成としたので、ベルトコンベヤで搬送されてくる捻りを付与される前の棒状食用生地3aは、該棒状食用生地3aの一端部xが低速走行ベルト4の下部平坦部4aとベルトコンベヤ2とにより上下から挟まれるようにして、低速走行ベルトの走行速度とベルトコンベヤの進行速度の平均速度で、ベルトコンベヤの進行方向に移動される。また、該棒状食用生地の他端部yは非移動プレート6の上流側端部6aの端部に差し掛かり、ほぼ同時に高速走行ベルト5の下部平坦部5aと当接し、非移動プレート6と高速走行ベルト5に上下から挟まれ、棒状食用生地3は徐々にベルトコンベヤから非移動プレート上に乗る分量が多くなり、合わせて高速走行ベルト5が棒状食用生地3の他端部側から徐々に捻りの力を付与することになる。捻りを付与される棒状食用生地3は非移動プレート6の同幅部6b上を捻転しながらベルトコンベヤ2及び高速走行ベルト5の進行方向に移動され、やがて、非移動プレート6の下流側端部6cに差し掛かり、非移動プレート上を捻転し移動している棒状食用生地3が、徐々に非移動プレート6からベルトコンベヤ2との接触範囲を大きくし、捻りを付与され整形された棒状食用生地がその形を崩すことなくベルトコンベヤ上に移動される。
【0026】
棒状食用生地3の一端部xと、棒状食用生地3の他端部yの移動について説明すると、
ベルトコンベヤ速度をV、低速走行ベルト速度をV、高速走行ベルト速度Vとすると、棒状食用生地3の一端部xは、低速走行ベルト速度Vとベルトコンベヤ2の平均速度(V+V) /2で移動し、棒状食用生地3の他端部yは、非移動プレートは固定されているので速度0として考えると、移動速度はV/2となる。
そこで、(V+V)/2=V/2、すなわち、V=(V+V)とすることで、棒状食用生地の一端部xと他端部yの移動する速度が等しくなり、捻りを付与した棒状食用生地がベルトコンベヤの進行方向に対し直交するように整列して送り出される。
例えば、ベルトコンベヤ2の進行速度Vと、低速走行ベルト4の走行速度Vを等しくV=Vに設定すると、棒状食用生地3の一端部xはベルトコンベヤ2の上面と低速走行ベルトの下部平坦部4aとに挟まれ、ベルトコンベヤ速度と低速走行速度の平均速度Vで、棒状食用生地に捻りを加えることなく、そのままベルトコンベヤ2の進行方向に移動する。
これに対し、棒状食用生地3の他端部yは、V=V+Vに成るように設定されているので、V/2=2V/2=Vの速度で移動するので、移動する速度は低速走行ベルト側の棒状食用生地の一端部xと、高速走行ベルト側の棒状食用生地の他端部yは同じになり、棒状食用生地の他端部yは高速走行ベルト5により捻る力を加えられながら捻転しながら移動し、各棒状食用生地がベルトコンベヤの進行方向に直交するように平行に並んで送り出されることになる。
【0027】
棒状食用生地に捻りが付与されることについて説明すると、
低速走行ベルト4とベルトコンベヤ2に挟まれた棒状食用生地3の一端部xは、その速度差に比例した巻数を生じ、棒状食用生地を挟む部分の間隔をhとすると、低速走行ベルト側で時間当たり(V−V)/πh回、高速走行ベルト側で時間当たり、V/πh回捻ることになる。
したがって、上記のベルトコンベヤ2の進行速度Vと、低速走行ベルト4の走行速度Vを等しく設定すると、低速走行ベルト側の捻り付与は、(V−V)/πh回=0となり、捻る力を棒状食用生地の一端部xには加えない状態で移動させることになる。一方、高速走行ベルト側は、時間当たりV/πh=2V/πh回で捻りを加えることになり棒状食用生地の他端部yを捻り上げながら移動することになる。
捻り巻数については、
棒状食用生地を捻る有効長さをLとすると、時間は
2L/V(=2L/(V+V
と計算されるので、この実施例の食用生地整形装置による捻りの巻き数は、
(V/πh−(V−V)πh)×(2L/(V+V))=
(L/πh)((3V−V)/(V+V))
で計算することができる。
つまり、棒状食用生地の厚さ又は径hが変わっても、低速走行ベルトの速度Vを下げれば捻り巻数を増やすことができ、逆に低速走行ベルトの速度Vを上げれば巻数を減らすことができ、任意に調節が可能である。
【0028】
この実施例の食用生地整形装置によれば、捻りを付与された棒状食用生地をベルトコンベヤの進行方向に対しほぼ直交するように整列して送り出すことができる。また、制御装置とインバーターとモーター等からなる速度調整機能を備えているので棒状食用生地に付与する捻り巻き数を変更することが容易で、かつ、低速走行ベルトの速度とベルトコンベヤの速度との和を、高速走行ベルトの速度と等しくなるように保てば、捻り巻数を変えても同様にベルトコンベヤの進行方向に対しほぼ直交するように整列して送り出すことができる。
それ故、捻りを付与した棒状食用生地を次工程に送る際、人手により該棒状食用生地を整列させる作業が不要となり自動化を図ることができる。
さらに、上記食用生地整形装置はシンプルな構造であり、捻りを付与する工程を行う専用の装置を製造ラインに組み込まなくても、従来の製造装置をそのまま利用し該装置に付設するだけでよく、製造ラインの大幅な改造等を必要としない利点がある。
【符号の説明】
【0029】
1 食用生地整形装置
2 ベルトコンベヤ
3 棒状食用生地
x 棒状食用生地の一端部
y 棒状食用生地の他端部
3a 捻りを付与する前の棒状食用生地
3b 捻りを付与した棒状食用生地
4 低速走行ベルト
4a 低速走行ベルトの下部平坦部
5 高速走行ベルト
5a 高速走行ベルトの下部平坦部
6 非移動プレート
6a 非移動プレートの上流側端部
6b 非移動プレートの同幅部
6c 非移動プレートの下流側端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状食用生地に捻りを付与する食用生地整形装置であって、該食用生地整形装置は、
棒状食用生地を載せて搬送するベルトコンベヤと、
前記ベルトコンベヤの上方に設けられ、かつ、搬送される前記棒状食用生地の長さより短い間隔にて平行に配置された低速走行ベルトと前記低速走行ベルトより高速に進行する高速走行ベルトと、
前記高速走行ベルトの下方に、前記ベルトコンベヤ上面と摺接するもしくは前記ベルトコンベヤ上面と若干離間した状態に配置された非移動プレートとを備え、
前記低速走行ベルトおよび前記高速走行ベルトは、前記ベルトコンベヤ上面との間に前記棒状食用生地の厚みよりも小さい間隔を有するように、かつ、前記棒状食用生地のそれぞれの端部を前記ベルトコンベヤの進行方向に進行可能に配置されており、
前記食用生地整形装置は、前記低速走行ベルトおよび前記高速走行ベルトの速度を調整する速度調整機能を備え、前記棒状食用生地の一端部を前記低速走行ベルトと前記ベルトコンベヤ間にて移動させ、前記棒状食用生地の他端部を前記高速走行ベルトと前記非移動プレート間にて捻転させながら移動させ、かつ、前記低速走行ベルトおよび前記高速走行ベルトは、前記低速走行ベルトおよび前記高速走行ベルトの配置部位より離脱しかつ捻りが付与された前記棒状食用生地が、前記ベルトコンベアの進行方向に対してほぼ直交するように、前記速度調整機能により速度調整されていることを特徴とする食用生地整形装置。
【請求項2】
前記速度調整機能は、前記棒状食用生地の一端部を進行させる一端部進行速度と、前記棒状食用生地の他端部を進行させる他端部進行速度が、ほぼ同一となるように、前記低速走行ベルトおよび前記高速走行ベルトの速度を調整するものである請求項1に記載の食用生地整形装置。
【請求項3】
前記食用生地整形装置は、前記速度調整機能による前記低速走行ベルトと前記高速走行ベルトの速度制御により、前記棒状食用生地に付与する捻りの巻き数を調節可能である請求項1または2に記載の食用生地整形装置。
【請求項4】
前記低速走行ベルトの進行速度は、前記ベルトコンベヤの進行速度とほぼ同じである請求項1ないし3に記載の食用生地整形装置。
【請求項5】
前記食用生地整形装置は、前記速度調整機能による前記低速走行ベルトの進行速度を前記ベルトコンベヤの進行速度と異なるものとすることにより、前記棒状食用生地の一端部を前記低速走行ベルトと前記ベルトコンベヤ間にて捻転可能である請求項1ないし3に記載の食用生地整形装置。
【請求項6】
前記非移動プレートは、前記ベルトコンベア進行方向の上流側から下流側に向かって幅が徐々に広くなる上流側端部を有している請求項1ないし5のいずれかに記載の食用生地整形装置。
【請求項7】
前記非移動プレートは、前記ベルトコンベア進行方向の上流側から下流側に向かって幅が徐々に広くなる上流側端部と、該上流側端部と連続しかつほぼ同じ幅にて延びる同幅部とを有している請求項1ないし5のいずれかに記載の食用生地整形装置。
【請求項8】
前記非移動プレートは、前記ベルトコンベア進行方向の上流側から下流側に向かって幅が徐々に広くなる上流側端部と、該上流側端部と連続しかつほぼ同じ幅にて延びるを同幅部と、該同幅部と連続し、前記ベルトコンベア進行方向の上流側から下流側に向かって幅が徐々に狭くなる下流側端部とを有している請求項1ないし5のいずれかに記載の食用生地整形装置。
【請求項9】
前記非移動プレートは、該非移動プレートの高速走行ベルト側端部は、前記高速走行ベルト配置部位より側方に延び、前記棒状食用生地の他端部全体を裁置可能であり、前記非移動プレートの低速走行ベルト側端部は、前記低速走行ベルトと前記高速走行ベルトの中間部もしくは所定長低速走行ベルト側に位置するものとなっている請求項1ないし8のいずれかに記載の食用生地整形装置。
【請求項10】
前記非移動プレートの低速走行ベルト側端部は、前記低速走行ベルトと前記高速走行ベルト間の中央より、両者間の距離の1/10〜1/5分前記低速走行ベルト側に位置するものとなっている請求項9に記載の食用生地整形装置。
【請求項11】
前記低速走行ベルトおよび前記高速走行ベルトは、スポンジベルトである請求項1ないし10のいずれかに記載の食用生地整形装置。
【請求項12】
前記食用生地整形装置は、前記低速走行ベルトと前記高速走行ベルトとの間隔を調整するベルト間隔調整機能を備えている請求項1ないし11のいずれかに記載の食用生地整形装置。
【請求項13】
前記食用生地整形装置は、前記低速走行ベルトおよび前記高速走行ベルトと前記ベルトコンベアもしくは前記非移動プレート間の高さ調整する高さ調整機能を備えている請求項1ないし12のいずれかに記載の食用生地整形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−97895(P2011−97895A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−255993(P2009−255993)
【出願日】平成21年11月9日(2009.11.9)
【出願人】(591108927)敷島製パン株式会社 (18)
【Fターム(参考)】