説明

食肉スライサ

【解決手段】求めたいスライス片b’の身幅寸法を設定するとともに、スライスすべき肉塊bの高さを測定し、設定された前記身幅寸法と測定された前記高さから計算される傾きとなるように、刃物の傾き角度βを自動制御する。
【効果】肉塊の高さに応じて刃物の傾き角度を自動制御することができるので、高さが異なる肉塊を切り落として行く場合においてもほぼ同じ大きさのスライス片を得ることができる。刃物によりスライス作業が行われるごとに、得られたスライス片の高さを読み取り、設定された身幅寸法と読み取られた前記高さとが同じでない場合には、スライス片を得るごとに刃物を一定角度ずつ移動させると、設定された身幅寸法とほぼ同じとなるスライス片b’を連続して得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肉箱から送り出される肉塊を回転する刃物で斜めにスライス(斜め切り)できる食肉スライサに関し、さらに詳しくは、スライスすべき肉塊の高さを測定し、測定された前記高さと同じ身幅に、あるいは、測定された前記高さとほぼ同じ身幅に肉塊をスライスできるように刃物の傾き角度を自動制御し得るようにした食肉スライサに関する。
【背景技術】
【0002】
肉送りタンク(肉箱)から送り出される肉塊を回転する刃物で連続的に切り落してスライス片を得る従来の食肉スライサにあっては、通常、刃物を垂直方向に回転させながら肉塊を保持する肉送りタンク(肉箱)を前記刃物に向けて往復運動させるのが一般的である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第2596133号公報
【0004】
この場合には、肉塊はその先端面と平行に刃物で切断されるので、得られるスライス片の大きさは肉塊の先端面の大きさと同じである。したがって、先端面の小さい肉塊からは小さいスライス片しか得ることができない。
【0005】
これに対して、肉塊の先端面と平行ではなく肉塊を斜めにスライス(斜め切り)することができれば、先端面の大きさより大きなスライス片を得ることができる。このようなスライスを可能ならしめるために、前下がりに傾斜する肉箱のすぐ前に刃物を垂直方向に配置した食肉スライサが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
【特許文献2】特開2002−113692号公報
【0007】
この場合にあっては、肉箱から前下がりに突出している肉塊を垂直方向に配置されている刃物で斜めにスライス(斜め切り)することができる。もっとも、肉箱の傾斜角度は調整可能であって、この傾斜角度を調整することによりスライス片の大きさを変えることができるようになっている。
なお、このスライサは斜めにスライス(斜め切り)する以外に、通常のいわゆる直角切り(肉塊の先端面と平行にスライスする切り方)もできるようにしてある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、スライス片の大きさを変えるに当って、従来は、肉箱の傾斜角度を調整する方式が採られており、この傾斜角度を制御することでスライス片の大きさを変えることができるが、本発明では、この方式とは異なって肉塊の高さに応じて刃物の傾き角度を変える方式を採用し、この傾き角度を肉塊の高さに応じて自動制御することで高さの異なる肉塊を切り落として行く場合においてほぼ同じ大きさのスライス片を得ることができるようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明においては、肉塊を保持する肉箱に対して傾斜して回転する刃物を備え、肉箱から送り出される肉塊を回転する刃物で連続的に切り落としてスライス片を得る食肉スライサであって、求めたいスライス片の身幅寸法を設定するとともに、スライスすべき肉塊の高さを測定し、設定された前記身幅寸法と測定された前記高さから計算される傾きとなるように、刃物の傾き角度βを自動制御する。
【0010】
例えば、図3(a)に示すように、肉塊bが比較的分厚い(仮に、厚さをTとする)場合には、垂直方向に作動する刃物1で前記肉塊bを切り落せば高さTで面積の広い(面積T’の)スライス片b’を得ることができる。これに対して、図3(b)に示すように、肉塊bが余り分厚くない(仮に、厚さをtとする)場合には、垂直方向に作動する刃物1でこの肉塊bを切り落すと、厚さが異なる分高さtで面積の小さい(面積t’の)スライス片b’しか得ることができない。
【0011】
そこで、図3(c)に示すように、肉塊bを厚さTに相当する身幅となるように斜めにスライス(斜め切り)することができれば、余り分厚くない高さtの肉塊bから高さTの肉塊bを垂直方向に切り落とした場合に得られる大きさと同じ(高さTで面積T’の)スライス片b’を得ることができる。
【0012】
この場合において、肉塊bの高さに応じて刃物1の傾き角度βを自動制御することができるようにしたのが本発明である。すなわち、本発明においては、求めたいスライス片の身幅寸法〔図3(c)において斜めにスライス(斜め切り)した場合の大きさ〕を、比較的分厚い肉塊bを切り落とした場合に得られる広いスライス片b’の高さと等しいTに設定しておき、スライスすべき肉塊bの高さtを測定し、設定された前記身幅寸法Tと測定された前記高さtから計算される傾きとなるように、刃物1の傾き角度βを自動制御する。
【0013】
この自動制御を可能ならしめた本食肉スライサとコンピュータ(シーケンサ)Cのハードウェアとの関係を、図1に示す。また、この基本動作手順を図2に示す。本食肉スライサの操作パネルDでは、求めたいスライス片b’の身幅寸法T〔図3(c)において斜めにスライス(斜め切り)した場合の大きさ〕を入力することができ、この値を入力すると(ステップS)、それがコンピュータ(シーケンサ)Cのメモリ部に格納され、コンピュータ(シーケンサ)Cはその値を記憶している。
【0014】
この状態において、操作ボタンEの運転ボタンを押して食肉スライサの運転を開始すると(ステップS)、コンピュータ(シーケンサ)Cの運転動作プログラムにしたがって刃物モータ8が駆動して刃物が回転するとともに、肉箱に保持されているスライスすべき肉塊bの高さを肉箱付近に設けられているエンコーダGで測定し(ステップS)、測定されたこのデータをコンピュータ(シーケンサ)Cの通信ポートを介してコンピュータ(シーケンサ)Cに転送し、この値とステップSで設定された値とを比較する(ステップS)。
【0015】
ステップSで設定された身幅の値がステップSで測定された値と等しいか、あるいはステップSで測定された値より小さい場合には(図2におけるステップSのYES)、刃物の傾き角度を変えることなくそのままスライス作業を継続する(ステップS)。そして、この作業により得られたスライス片b’の高さを前記エンコーダGで常時測定し(ステップS)、測定されたこのデータをコンピュータ(シーケンサ)Cの通信ポートを介してコンピュータ(シーケンサ)Cに転送し、この値とステップSで設定された値とを再度比較する(ステップS)。
【0016】
ステップSで測定されたこの値とステップSで設定された値とが等しいことを確認することができた場合には(ステップSのYES)、ステップSに戻ってステップS、ステップSまでの一連の動作を繰り返す。この動作を繰り返すことにより、肉箱に保持されている肉塊bを刃物で1枚ずつ切り落としてスライス片b’を得ることができる。
【0017】
逆に、ステップSで設定された身幅の値がステップSで測定された高さより大きい場合には(図2におけるステップSのNO)、これら2つの値から計算される刃物の傾き角度を記憶しているコンピュータ(シーケンサ)Cの身幅プログラムにしたがってモータ7が駆動し、前記2つの値から計算された傾き角度となるように刃物を移動させる(ステップS’)。そして、傾き角度を変えた刃物で肉箱に保持されている肉塊bを切り落すことができる(ステップS)。なお、ステップS以降の動作は先に説明した場合と全く同じである。
【0018】
一方、本発明においては、刃物によりスライス作業が行われるごとに、得られたスライス片の高さを読み取り、設定された身幅寸法と読み取られた前記高さとが同じでない場合には、スライス片を得るごとに刃物を一定角度ずつ移動させることができるようにしてある。すなわち、ステップSで測定された高さとステップSで設定された値とが等しくない場合には(ステップSのNO)、先程スライスしたときの刃物の傾き角度から刃物を一定角度すなわちx°ずつ移動させながら(ステップS)、スライス作業を継続する(ステップS)。この動作を繰り返すことにより、刃物の傾き角度をx°ずつ移動させながらステップSで設定された身幅寸法とほぼ同じとなるスライス片b’を連続して得ることができる。
【0019】
なお、ステップSにおいてスライス作業を継続しない場合には(ステップSのNO)、操作ボタンEの停止ボタンを押す。すると、コンピュータ(シーケンサ)Cの停止プログラムにしたがって刃物モータ8は停止し、刃物も回転しなくなる(ステップS10)。
【発明の効果】
【0020】
請求項1記載の発明によれば、肉塊の高さに応じて刃物の傾き角度を自動制御することができるので、高さが異なる肉塊を切り落として行く場合においてもほぼ同じ大きさのスライス片を得ることができる。
【0021】
請求項2記載の発明によれば、刃物によりスライス作業が行われるごとに、得られたスライス片の高さを読み取り、設定された身幅寸法と読み取られた前記高さとが同じでない場合には、スライス片を得るごとに刃物を一定角度ずつ移動させることができるので、設定された身幅寸法とほぼ同じとなるスライス片b’を連続して得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明を実施するための食肉スライサの最良の形態を、図4〜9に基いて詳細に説明する。ここに例示する食肉スライサAは、肉塊bを保持する肉箱Bを刃物1に対して往復運動させずに、回転する刃物1を停止している肉箱Bに対して往復運動させ、停止している肉箱Bから送り出される肉塊bを回転する刃物1で連続的に切り落してスライス片を得ることができる形式のものである。すなわち、図4および図5に示す状態から、回転する丸刃1を図6に示すように停止している肉箱Bに対してスライドさせ、あるいは、図6に示す状態から、回転する刃物1を元の位置に戻すことができる。
【0023】
肉箱Bを往復運動させない場合には、切り落されたスライス片b’を搬出するためのコンベヤCの一端を延び出させるためのスペースを、停止している肉箱の下方に確保できるので、当該コンベヤCをその一端が前記刃物1の下を越えて肉箱B側にまで延び出るごとく配置させることができる。したがって、刃物1によりスライスされたスライス片b’がコンベヤCに乗らずに落下することを解消することができ、従来のように歩留まりが悪くなることを防止できるのみならず、肉屑が肉箱BとコンベヤCとの隙間から落下してその付近が汚れるという事態を回避することができる。
【0024】
回転する刃物1を停止している肉箱Bに対して往復運動させるために、ここには、刃物1を保持している保持台2を、肉箱Bと直交する方向に配置されている上下一対のガイドレール3,3に沿って移動させ得るようにした場合が例示されている。この場合には、回転する刃物1を肉箱Bにできるだけ接近させた状態で確実に作動させることができ、後述のスライス作業を効率的に行うことができる。また、構造的にも極めてシンプルである。
【0025】
回転する刃物1を停止している肉箱Bに対して往復運動させるための機構としては、例えば、前記保持台2から延び出させてある上下一対の保持部材2a,2aを上下一対の前記ガイドレール3,3に嵌合する場合を挙げることができる。そして、上下一対の保持部材2a,2aとともに前記保持台2を上下一対の前記ガイドレール3,3に沿ってスライドさせると、回転する丸刃1を停止している肉箱Bに対して往復運動させることができ、後述のスライス作業を行うことができる。
【0026】
また、上下一対の保持部材2a,2aとともに前記保持台2を上下一対の前記ガイドレール3,3に沿ってスライドさせるには、前記保持台2ないし上下一対の保持部材2a,2aをシリンダに連結し、このシリンダの作動により前記保持台2をスライドさせてもよいが、ここでは、図4〜図6に示すように、前記保持台2をクランク機構4に連結し、このクランク機構4の垂直方向のクランク軸4aにクランクモータ5の減速機5aの垂直方向の軸5bを直結し、前記クランクモータ5の作動により前記保持台2をスライドさせるようにしてある。
【0027】
図4、図5の作動前の状態では、回転する刃物1は肉箱Bに対して遠い位置にある。この状態において、クランクモータ5を駆動させると、前記減速機5aを介して垂直方向の軸5bが回転し、この軸5bと直結するクランク軸4aも回転し、クランク機構4が図6に示すように作動し、このクランク機構4に取付腕4bを介して連結されている前記保持台2が上下一対の保持部材2a,2aとともに上下一対の前記ガイドレール3,3に沿ってスライドする。かくして、回転する刃物1が肉箱Bのすぐ前を横切るように走行する。
【0028】
回転する刃物1がこの往復運動を繰り返すことにより、肉箱Bから送り出される肉塊bを回転する刃物1で連続的に切り落し、次々とスライス片b’を得ることができる。連続的に切り落されて次々と得られるスライス片b’は、一端が前記刃物1の下を越えて肉箱B側にまで延び出るごとく配置されているコンベヤCに載せられ、順次排出される。
なお、図示はしないが、肉塊bは肉箱B内の送りコンベヤと押えコンベヤとに挟まれながら肉箱Bから順次送り出される。
【0029】
ここに例示する食肉スライサAにあっては、刃物1、刃物保持台2、上下一対のガイドレール3,3、クランク機構4などを、図7に示すように、肉箱Bと反対側の方向に傾け得るように構成されている。このようにした場合には、肉箱Bに保持されている肉塊bを斜めにスライス(斜め切り)することができるので、図3(c)に示すように、余り分厚くない肉塊bから比較的面積の広いスライス片T’を得ることができる。
【0030】
さらに、ここに例示する食肉スライサAにあっては、求めたいスライス片b’の身幅寸法を設定するとともに、スライスすべき肉塊bの高さを測定し、設定された前記身幅寸法と測定された前記高さから計算される傾きとなるように、刃物1の傾き角度βを自動制御することができるようにしてある。すなわち、求めたいスライス片の身幅寸法〔図3(c)において斜めにスライス(斜め切り)した場合の大きさ〕を、比較的分厚い肉塊bを切り落とした場合に得られる広いスライス片b’の高さと等しいTに設定しておき、スライスすべき肉塊bの高さtを測定し、設定された前記身幅寸法Tと測定された前記高さtから計算される傾きとなるように、刃物の傾き角度βを自動制御することができるようにしてある。
【0031】
この自動制御を可能ならしめた本食肉スライサAとコンピュータ(シーケンサ)Cのハードウェアとの関係を、図8に示す。また、この基本動作手順を図9に示す。本食肉スライサAの操作パネルD(図4参照)では、求めたいスライス片b’の身幅寸法T〔図3(c)において斜めにスライス(斜め切り)した場合の大きさ〕を入力することができ、この値を入力すると(ステップS)、それがコンピュータ(シーケンサ)Cのメモリ部に格納され、コンピュータ(シーケンサ)Cはその値を記憶している。
【0032】
この状態において、操作ボタンEの運転ボタンe(図4参照)を押して食肉スライサAの運転を開始すると(ステップS)、コンピュータ(シーケンサ)Cの運転動作プログラムにしたがって刃物モータ8が駆動して刃物1が回転するとともに、肉箱Bに保持されているスライスすべき肉塊bの高さを肉箱B付近に設けられているエンコーダG(図4〜図7では、図示しない)で測定し(ステップS)、測定されたこのデータをコンピュータ(シーケンサ)Cの通信ポートを介してコンピュータ(シーケンサ)Cに転送し、この値とステップSで設定された値とを比較する(ステップS)。
【0033】
ステップSで設定された身幅の値がステップSで測定された値と等しいか、あるいはステップSで測定された値より小さい場合には(図9におけるステップSのYES)、刃物1の傾き角度βを変えることなくそのままスライス作業を継続する(ステップS)。そして、この作業により得られたスライス片b’の高さを前記エンコーダGで常時測定し(ステップS)、測定されたこのデータをコンピュータ(シーケンサ)Cの通信ポートを介してコンピュータ(シーケンサ)Cに転送し、この値とステップSで設定された値とを再度比較する(ステップS)。
【0034】
ステップSで測定されたこの値とステップSで設定された値とが等しいことを確認することができた場合には(ステップSのYES)、ステップSに戻ってステップS、ステップSまでの一連の動作を繰り返す。この動作を繰り返すことにより、肉箱Bに保持されている肉塊bを刃物1で1枚ずつ切り落としてスライス片b’を得ることができる。
【0035】
逆に、ステップSで設定された身幅の値がステップSで測定された高さより大きい場合には(図9におけるステップSのNO)、これら2つの値から計算される刃物1の傾き角度βを記憶しているコンピュータ(シーケンサ)Cの身幅プログラムにしたがってモータ7が駆動し、前記2つの値から計算された傾き角度となるように刃物1を移動させる(ステップS’)。そして、傾き角度を変えた刃物1で肉箱Bに保持されている肉塊bを切り落すことができる(ステップS)。なお、ステップS以降の動作は先に説明した場合と全く同じである。
【0036】
ここに例示する食肉スライサAにあっては、刃物1によりスライス作業が行われるごとに、得られたスライス片b’の高さを読み取り、設定された身幅寸法と読み取られた前記高さとが同じでない場合には、スライス片b’を得るごとに刃物1を一定角度ずつ、例えば1°ずつ移動させることができるようにしてある。すなわち、ステップSで測定された高さとステップSで設定された値とが等しくない場合には(ステップSのNO)、先程スライスしたときの刃物1の傾き角度から刃物を例えば1°ずつ移動させながら(ステップS)、スライス作業を継続する(ステップS)。この動作を繰り返すことにより、刃物1の傾き角度を例えば1°ずつ移動させながらステップSで設定された身幅寸法とほぼ同じとなるスライス片b’を連続して得ることができる。
【0037】
ステップSにおいてスライス作業を継続しない場合には(ステップSのNO)、操作ボタンEの停止ボタンe(図4参照)を押す。すると、コンピュータ(シーケンサ)Cの停止プログラムにしたがって刃物モータ8は停止し、刃物1も回転しなくなる(ステップS10)。そして、連続して作動していたクランク機構4は元の定位置に戻り(ステップS11)、スライス作業は終了する(ステップS12)。その後、刃物1の傾き角度も原点に復帰し、次のスライス作業を行うべく待機する。
【0038】
操作パネルDでは、スライスすべき肉塊bの身幅以外にスライスする厚みも設定でき、さらに、刃物1の駆動速度、クランク機構4の駆動速度も設定できるようにしてあるが、図1、図2、図8、図9ではそれらを省略してある。また、操作パネルDで刃物1の駆動速度を設定してやると、コンピュータCの刃物速度制御プログラムにしたがって刃物1が駆動し、操作パネルDでクランク機構4の駆動速度を設定してやると、コンピュータCのクランク速度制御プログラムにしたがってクランク機構4が駆動する。
【0039】
また、ここに例示する食肉スライサAにあっては、刃物モータ8に刃物速度制御ユニットUが接続してあって、この刃物速度制御ユニットUにより刃物1を高速運転および低速運転できる。さらに、ここに例示する食肉スライサAにあっては、クランクモータ5にクランク速度制御ユニットUが接続してあって、このクランク速度制御ユニットUによりクランク機構4を高速運転および低速運転できる。
【0040】
一方、刃物1の傾き角度βを制御するためのモータとしては、サーボモータが最適であるが、汎用のモータやブラシレスモータなどあらゆるモータで刃物1の傾き角度βを制御してもよい。これらの場合においては、刃物1の傾き角度βの値に応じたパルスをモータのドライバに転送し、その作動指令によりモータをその厚み分だけ正・逆方向に動作させる。これらの場合においても所期の目的を達成することができる。油圧シリンダを用いることもできる。
【0041】
なお、ここに例示する食肉スライサAにあっては、スライス作業終了時において、クランク機構4が始動前の元の位置に戻ったことを確認するための近接センサHが取り付けてあって、クランク機構4が定位置に停止したことを確認することができる。また、図4に示すように、非常ボタンeも取り付けてあって、食肉スライサAを非常停止させることもできる。
【0042】
丸刃1、丸刃保持台2、上下一対のガイドレール3,3、クランク機構4などを肉箱Bと反対側の方向に傾けるための機構としては、例えば、図4、図5に示すように、それらを含むフレームF一式を左右一対の支持台6,6の水平方向の軸6a,6aで軸支しておき、一方の軸6aを減速機7a付きのモータ7の駆動により回動させる場合を挙げることができる。そして、このモータ7の回動角度を制御することにより、刃物1の傾き角度βを自動制御できる。
【0043】
なお、刃物1を回転させるための機構として、ここでは、刃物1側のプーリと刃物モータ8の減速機8a側のプーリとに無端状のベルト9を掛架しておき、刃物モータ8の駆動により刃物1を回転させる場合を例示する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明による食肉スライサとコンピュータ(シーケンサ)のハードウェアとの関係を示すブロック図である。
【図2】本発明による食肉スライサの基本動作手順を示すフローチャートである。
【図3】肉塊を回転する刃物で切り落とすことにより得られるスライス片の大きさを説明する原理図で、(a)は肉塊が比較的分厚い場合を、(b)は肉塊が余り分厚くない場合を、(c)は肉塊を斜めにスライス(斜め切り)した場合を示す。
【図4】本発明による食肉スライサの具体例を示す斜視図で、刃物が肉箱から遠い位置にある状態を示す。
【図5】刃物が図4と同じ位置にある場合の平面図である。
【図6】図4に示す食肉スライサの刃物が肉箱のすぐ前まで移動して来た状態を示す斜視図である。
【図7】刃物、刃物保持台、上下一対のガイドレール、クランク機構などを肉箱と反対側の方向に傾けた状態を示す側面図である。
【図8】図4〜図6に示す食肉スライサとコンピュータ(シーケンサ)のハードウェアとの関係を示すブロック図である。
【図9】図4〜図6に示す構成の食肉スライサの動作手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0045】
1…刃物、5…クランクモータ、7…モータ、8…刃物モータ、A…食肉スライサ、B…肉箱、b…肉塊、b’…スライス片、C…コンベヤ、D…操作パネル、E…操作ボタン、G…エンコーダ、U1…刃物速度制御ユニット、U…クランク速度制御ユニット、H…近接センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肉塊を保持する肉箱に対して傾斜して回転する刃物を備え、肉箱から送り出される肉塊を回転する刃物で連続的に切り落としてスライス片を得る食肉スライサであって、求めたいスライス片の身幅寸法を設定するとともに、スライスすべき肉塊の高さを測定し、設定された前記身幅寸法と測定された前記高さから計算される傾きとなるように、刃物の傾き角度βを自動制御することを特徴とする食肉スライサ。
【請求項2】
刃物によりスライス作業が行われるごとに、得られたスライス片の高さを読み取り、設定された身幅寸法と読み取られた前記高さとが同じでない場合には、スライス片を得るごとに刃物を一定角度ずつ移動させることを特徴とする請求項1記載の食肉スライサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−95897(P2009−95897A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−267511(P2007−267511)
【出願日】平成19年10月15日(2007.10.15)
【出願人】(591076028)株式会社なんつね (27)