説明

食肉スライサ

【解決手段】刃物1を回転させながら肉塊を保持するタンク2を前記刃物1に向けて往復運動させ、タンク2から所定の送り出し量で送り出される肉塊を回転する刃物1で連続的に切り落してスライス片を得る食肉スライサAにおいて、電流を流し得るシャフト5を前記タンク2のスライド方向に配置する。前記タンク2のスライドベース2bに備えられているブラシセット6を前記シャフト5に接触させ、前記シャフト5と食肉スライサAの制御盤Bとを電気的に接続する。電流が流れている前記シャフト5と前記ブラシセット6とを介して、前記タンク2に備えられているタンク定位置センサ12と上押えセンサ14とが前記制御盤Bに電気的に接続されるようにする。
【効果】肉塊を保持するタンク2と食肉スライサAの制御盤Bとの間にケーブルを用いていないので、当該ケーブルがタンク2の稼動の邪魔になることがなく、断線しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刃物を回転させながら肉塊を保持するタンクを前記刃物に向けて往復運動させ、タンクから所定の送り出し量で送り出される肉塊を回転する刃物で連続的に切り落してスライス片を得る食肉スライサに関し、さらに詳しくは、電流を流し得るシャフトをタンクのスライド方向に配置したものに関する。
【背景技術】
【0002】
刃物を回転させながら肉塊を保持するタンクを前記刃物に向けて往復運動させ、タンクから所定の送り出し量で送り出される肉塊を回転する刃物で連続的に切り落してスライス片を得る食肉スライサにおいて、肉塊を保持するタンクはかなりの速さで往復運動する。
【0003】
このタンクを稼動させてスライス作業を行うためには、少なくとも前記タンクと食肉スライサの制御盤とが電気的に接続されていなければならず、従来の場合には、通常、可撓性のあるケーブル(いわゆる電線)でタンクのスライドベースと前記制御盤とを接続してある。そして、前記制御盤内に組み込まれている制御装置により、前記タンクの速度や肉送り量などスライスに必要な情報を自動制御できるようにしてある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、前記タンクを稼動させるためには、前記ケーブルをあえてたるませておくスペースが必要になるだけでなく、それもかなりの長さになるので、少なくともタンクの稼動の邪魔になるばかりでなく、断線する危険性もあった。しかも、このようなケーブルがタンクの稼動範囲内にあるところから、稼動させるべきタンク付近にはセンサを配置し辛かった。
本発明は、これらの欠点を解消することを目的とするもので、前記タンクと食肉スライサの制御盤との間にケーブルを用いないことにより、タンク定位置センサと上押えセンサとをタンクに備えることができるようにするとともに、タンク定位置センサと上押えセンサとが前記制御盤に電気的に接続されるように構成したものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明では、刃物を回転させながら肉塊を保持するタンクを前記刃物に向けて往復運動させ、タンクから所定の送り出し量で送り出される肉塊を回転する刃物で連続的に切り落してスライス片を得る食肉スライサにおいて、電流を流し得るシャフトを前記タンクのスライド方向に配置するとともに、前記タンクのスライドベースに備えられているブラシセットを前記シャフトに接触させ、前記シャフトと食肉スライサの制御盤とを電気的に接続し、電流が流れている前記シャフトと前記ブラシセットとを介して、前記タンクに備えられているタンク定位置センサと上押えセンサとが前記制御盤に電気的に接続されるように構成したものである。
【0006】
このようにした場合には、肉塊を保持するタンクと食肉スライサの制御盤との間にケーブルを用いていないので、当該ケーブルがタンクの稼動の邪魔になることがなく、断線する危険性もない。その結果、タンクにタンク定位置センサと上押えセンサとを備えることが可能になるという利点を有する。
【0007】
タンク定位置センサが感知している状態であって、上押えセンサが感知していない状態では、電気信号が制御盤に流れ、食肉スライサを稼動、ないし、稼動を継続させ得るように構成するとよい。
【0008】
このようにした場合には、タンクが定位置にあることをタンク定位置センサが感知するとともに、上押えセンサが感知していないので、上押えローラが正規の位置にあってタンク内の肉塊を押えているという電気信号が制御盤に流れ、制御盤がこの電気信号を受けることになるので、食肉スライサを稼動、ないし、タンクの稼動によるスライス作業を継続することができる。そして、スライス作業が停止すると、タンクは稼動前の正規の位置である手前側に停止し、スライス作業を終了する。
【0009】
一方、タンク定位置センサが感知している状態であって、上押えセンサが感知していない状態で無い場合には、電気信号が制御盤に流れず、食肉スライサを稼動させ得ないか、もしくは、動作中の食肉スライサを非常停止させることができるように構成するとよい。
【0010】
このようにした場合には、タンクが定位置にあることをタンク定位置センサが感知していても、上押えセンサが感知しているので、上押えローラが正規の位置になくタンク内の肉塊を押えていないことになり、電気信号が制御盤に流れず、食肉スライサを稼動させ得ないか、もしくは、動作中の食肉スライサを非常停止させることができる。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明によれば、肉塊を保持するタンクと食肉スライサの制御盤との間にケーブルを用いていないので、当該ケーブルがタンクの稼動の邪魔になることがなく、断線する危険性もない。その結果、タンクにタンク定位置センサと上押えセンサとを備えることが可能になるという利点を有する。
【0012】
請求項2記載の発明によれば、タンク定位置センサと上押えセンサとを用いて、タンクが定位置にあること、及び上押えが正規の位置にあってタンク内の肉塊を押えていることを正確に検知することができるので、食肉スライサを正確に稼動させ、スライス作業を確実に継続することが可能となる。
【0013】
請求項3記載の発明によれば、タンク定位置センサと上押えセンサとを用いて、タンクが定位置にあること、及び上押えローラが正規の位置になくタンク内の肉塊を押えていないこと正確に検知することができるので、食肉スライサを正確に稼動させ得ない状態にしたり、もしくは、動作中の食肉スライサを確実に非常停止させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明による食肉スライサの一例を示す斜視図で、タンクが稼動する前の状態を示す。
【図2】本発明による食肉スライサの一例を示す斜視図で、タンクが途中まで稼動した状態を示す。
【図3】本発明による食肉スライサの一例を示す斜視図で、タンクが稼動した後の状態を示す。
【図4】本発明による食肉スライサの一例を示す側面図で、上押えローラが正規の位置にある状態を示す。
【図5】本発明による食肉スライサの一例を示す側面図で、上押えローラが正規の位置になく、持ち上げられた状態を示す。
【図6】本発明による食肉スライサの動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
本発明にいう食肉スライサAとは、図1〜図3に示すように、刃物1を回転させながら肉塊(図示しない)を保持するタンク2を前記刃物1に向けて往復運動させ、タンク2から所定の送り出し量で送り出される肉塊を回転する刃物1で連続的に切り落し、刃物1の刃先とタンク2の当て板2aとの隙間からスライス片(図示しない)を得ることができる装置である。
【0016】
刃物1は水平方向の軸(図示しない)を中心として回転可能に機台3上に支持されており、図示してないモータにより回転せしめられ、上述のスライス作業を行う。
【0017】
タンク2は、機台3上において、前記刃物1とほぼ平行方向に往復移動可能に配置されており、モータMの回転によりギヤケース4a内のギヤ(図示しない)を回動させ、その回動によって駆動するクランク機構4により、タンク2のスライドベース2bを前記刃物1とほぼ平行方向に往復移動させることができる。タンク2の稼動前の状態を図1に、タンク2の稼動と中の状態を図2に、さらに、タンク2の稼動後の状態を図3に示す。ただし、いずれも異なる方向から見た場合を示す。
【0018】
図3に示すように、前記機台3の下方において、電流を流し得る2本の平行なシャフト5,5をタンク2のスライド方向に配置し、前記スライドベース2bから延び出させた取付杆2cの先端にブラシセット6を取り付け、このブラシセット6を前記2本のシャフト5,5に接触させる。そして、前記2本のシャフト5,5と食肉スライサAの制御盤Bとを図1において符号7で示すケーブルにより電気的に接続し、2本のシャフト5,5に電気信号を流し得るようにしてある。
【0019】
前記ブラシセット6とは、樹脂製の容器内に2つのカーボンブラシ(図示しない)が収納されたものであって、各カーボンブラシを前記2本のシャフト5,5に1本ごと接触させてある。なお、カーボンブラシが擦れて減ったときでも、シャフト5に絶えず接触するように、前記容器内に配置されているばね(図示しない)によりカーボンブラシをシャフト5に絶えず押し付けるように工夫されている。
【0020】
図2に示すように、タンク2内には、肉送りコンベヤ8とその上方に肉送りローラである上押えローラ9とが配置されており、その間に肉塊(図示しない)を挟み込み得るようになっている。肉箱2の当て板2aは肉箱2から送り出される肉塊の先端位置を規制するためのものであり、図2において符号10で示すハンドルにより位置調整できる。また、肉送りコンベヤ8と上押えローラ9とによる肉塊の送り出し量は、図2、図3において図面符号11で示すハンドルにより調整できる。
【0021】
タンク2の稼動範囲内において、その稼動前である初期位置付近には、タンク定位置センサ12が配置されており、タンク2の稼動前である初期位置を検知することができる。このタンク定位置センサ12とは、検出対象に接触することなく物体の存在を検出できる近接センサとすることができ、例えば、磁気式の場合には、図4、図5において符号13で示す磁石によりスイッチのリード片を動作させることができる。なお、上記の磁石式に代えて、従来から知られている誘導形の近接センサや静電容量形の近接センサを用いることもできる。
【0022】
前記上押えローラ9は、通常図2、図3に示すように、タンク2内に位置しているが、タンク2内に肉塊を載せる場合やタンク2内を掃除する場合には、図5に示すように、門形の保持腕9aを起して持ち上げることができるようになっている。そして、この保持腕9aの回動範囲内に、上押えセンサ14が設置されている。この上押えセンサ14は、図1〜図4に示すように、上押えローラ9が正常な位置にある場合には作動せず、図5に示すように、門形の保持腕9aを起して上押えローラ9を持ち上げた場合には、前記保持腕9aが上押えセンサ14を押し、上押えセンサ14を作動させることができる。
【0023】
そして、前記シャフト5,5と接触している前記ブラシセット6から前記タンク定位置センサ12へと、さらに、前記上押えセンサ14へと直列で電気的に接続してある。したがって、上述したように、制御盤Bからシャフト5,5までがケーブル7により電気的に接続されていることと相俟って、タンク定位置センサ12、上押えセンサ14が感知した電気信号は、ブラシセット6のカーボンブラシ、シャフト5,5を伝って制御盤Bにまで達することが可能になる。
【0024】
この場合には、肉塊を保持するタンク2と食肉スライサAの制御盤Bとの間に従来のようなケーブルを用いていないので、当該ケーブルがタンク2の稼動の邪魔になることがなく、断線する危険性もない。その結果、上述したように、タンク2にタンク定位置センサ12と上押えセンサ14とを備えることが可能になるという利点を有することになる。
【0025】
ここでは、タンク定位置センサ12が感知している状態であって、上押えセンサ14が感知していない状態では、前記電気信号が制御盤Bに流れ、食肉スライサSを稼動、ないし、稼動を継続させ得るように構成されている。
【0026】
このようにした場合には、タンク2が定位置にあることをタンク定位置センサ12が感知するとともに、上押えセンサ14が感知していないので、上押えローラ9が正規の位置にあってタンク2内の肉塊を押えているという電気信号が制御盤Bに流れ、制御盤Bがこの電気信号を受けることになるので、食肉スライサSを稼動、ないし、タンク2の稼動によるスライス作業を継続することができる。そして、スライス作業が停止すると、タンク2は稼動前の正規の位置である手前側に停止し、スライス作業を終了する。
【0027】
この手順を図6のフローチャートに基づいて説明すると、運転前のステップSの状態から食肉スライサSに運転指令が出されると(ステップS)、タンク2が定位置にあることをタンク定位置センサ12が感知しているか否か、さらには、上押えセンサ14が感知しているか否かを、食肉スライサSに搭載されているコンピュータが読み取り(ステップS)、タンク2が定位置にあることをタンク定位置センサ12が感知するとともに、上押えセンサ14が感知していない場合には(ステップSのYES)、運転が開始される(ステップS)。
なお、この逆の場合には(ステップSのNO)、ステップSの前に戻って再び運転指令を待つ。
【0028】
ステップSの次のステップであるステップSにおいて、同じく、タンク2が定位置にあることをタンク定位置センサ12が感知しているか否か、さらには、上押えセンサ14が感知しているか否かを、食肉スライサSに搭載されたコンピュータが読み取り、タンク2が定位置にあることをタンク定位置センサ12が感知するとともに、上押えセンサ14が感知していない場合には(ステップSのYES)、スライス作用を継続する(ステップS)。
【0029】
そして、次のステップであるステップSにおいて、スライス作業が停止すると(ステップSのYES)、タンク2は稼動前の手前側の初期位置に戻り(ステップS)、スライス作業が終了する(ステップS)。
【0030】
一方、ここでは、ステップSにおいて、タンク定位置センサ12が感知している状態であって、上押えセンサ14が感知していない状態で無い場合には(ステップSのNO)、電気信号が制御盤Bに流れず、食肉スライサSを稼動させ得ないので、ステップSの前に戻って再び運転指令を待つように構成されている。
【0031】
このようにした場合には、タンク2が定位置にあることをタンク定位置センサ12が感知していても、上押えセンサ14が感知しているので、上押えローラ14が正規の位置になくタンク2内の肉塊を押えていないことになり、電気信号が制御盤Bに流れず、食肉スライサを稼動させ得ない。
【0032】
また、ここでは、ステップSにおいて、タンク定位置センサ12が感知している状態であって、上押えセンサ14が感知していない状態で無い場合には(ステップSのNO)、電気信号が制御盤Bに流れず、動作中の食肉スライサSを非常停止させることができるように構成されている(ステップS)。
【0033】
このようにした場合には、タンク2が定位置にあることをタンク定位置センサ12が感知していても、上押えセンサ14が感知しているので、動作中の食肉スライサSを非常停止させることができる。
【0034】
なお、ステップSにおいて、スライス作業が停止しない場合(ステップSのNO)には、ステップSに戻ってタンク2が定位置にあることをタンク定位置センサ12が感知しているか否か、さらには、上押えセンサ14が感知しているか否かを、食肉スライサSに搭載されているコンピュータが再び読み取り、上記のステップSに進むか、あるいはステップSに進むかを判定する。
【符号の説明】
【0035】
1…刃物、2…タンク、2a…当て板、2b…スライドベース、5…シャフト、6…ブラシセット、7…ケーブル、8…上押え、12…タンク定位置センサ、14…上押えセンサ、A…食肉スライサ、B…制御盤。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
刃物を回転させながら肉塊を保持するタンクを前記刃物に向けて往復運動させ、タンクから所定の送り出し量で送り出される肉塊を回転する刃物で連続的に切り落してスライス片を得る食肉スライサにおいて、電流を流し得るシャフトを前記タンクのスライド方向に配置するとともに、前記タンクのスライドベースに備えられているブラシセットを前記シャフトに接触させ、前記シャフトと食肉スライサの制御盤とを電気的に接続し、電流が流れている前記シャフトと前記ブラシセットとを介して、前記タンクに備えられているタンク定位置センサと上押えセンサとが前記制御盤に電気的に接続されるように構成したことを特徴とする食肉スライサ。
【請求項2】
タンク定位置センサが感知している状態であって、上押えセンサが感知していない状態では、電気信号が制御盤に流れ、食肉スライサを稼動、ないし、稼動を継続させ得るように構成したことを特徴とする請求項1記載の食肉スライサ。
【請求項3】
タンク定位置センサが感知している状態であって、上押えセンサが感知していない状態で無い場合には、電気信号が制御盤に流れず、食肉スライサを稼動させ得ないか、もしくは、動作中の食肉スライサを非常停止させることができるように構成したことを特徴とする請求項1記載の食肉スライサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−251389(P2011−251389A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−128153(P2010−128153)
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(591076028)株式会社なんつね (27)