説明

飲料ディスペンサ

【課題】臭い及び微生物の発生を抑えて衛生上良好な飲料水を供給することができる飲料ディスペンサを提供する。
【解決手段】飲料ディスペンサ1は、ボトル11から流入した液体Wを貯留するタンク31と、その上部にボトル11を着脱自在に取付け可能とされた装置本体21と、タンク31に設けられた注出口51と、注出口51から流出した液体Wに換えて空気Aをタンク31に取り込む空気路71と、空気路71へ流入する空気Aを殺菌する殺菌装置61とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料ディスペンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、安全で衛生的な飲料水の需要が増えており、小売店等の商業施設において、飲料水を提供する飲料ディスペンサが多く設置されるようになってきている。
そして、このような飲料ディスペンサは、水等の飲料水が満たされて開口を下向きに設けたボトルと、該ボトルの開口に連結されるとともに該ボトルの下側に設置されたタンクと、該タンクと配管により連結されたコックとを備えるものである。そして、コックを回すことにより、タンクより適量の飲料水を供給する構成がとられている。
【0003】
コックを回して飲料水を供給する際には、タンクより配管を通して飲料水がコック側に吐出するとともに、ボトルの開口よりタンクに飲料水が流出する流路となっている。また、飲料水がボトルの開口よりタンクに流出するにともない、タンク中の空気がボトル側に移動することとなる。
【0004】
ここで、空気には微生物等が含まれるために、飲料水の供給にともない、空気と共に該微生物等が飲料水に混合し、結果として飲料水が汚染される現象が起きていた。そこで、オゾンを発生させて、空気中に含まれる微生物等(細菌)を殺菌する方法が採用されている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−52752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載の飲料ディスペンサでは、オゾンがタンク中に存在すると、数日経過後にオゾン独特の臭いが発生するという問題点があった。
また、約10日経過後には微生物が発生する場合があり、衛生面上好ましくないという問題点もあった。
【0007】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、臭い及び微生物の発生を抑えて衛生上良好な飲料水を供給することができる飲料ディスペンサを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用している。
すなわち、本発明に係る飲料ディスペンサは、ボトルから流入した液体を貯留するタンクと、該タンクに設けられた注出口と、該注出口から流出した液体に換えて空気を前記タンクに取り込む空気路と、該空気路へ流入する前記空気を殺菌する殺菌装置とを備えたことを特徴とする。
【0009】
このような飲料ディスペンサでは、ボトルにある液体はタンクに流入し、タンクに設けられた注出口より該液体は注出される。また、該液体が注出される際には、殺菌装置で殺菌された空気を空気路を通じてタンクに取り込むことが可能である。よって、殺菌された空気がタンク内に取り込まれることにより、臭い及び微生物の発生を抑えて衛生上良好な飲料水を供給することができる。
【0010】
また、本発明に係る飲料ディスペンサは、前記殺菌装置はイオン発生装置であることを特徴とする。
【0011】
このような飲料ディスペンサでは、イオン発生装置で殺菌された空気を空気路を通じてタンクに取り込むことが可能である。よって、殺菌された空気がタンク内に取り込まれることにより、臭い及び微生物の発生を抑えて衛生上良好な飲料水を供給することができる。
【0012】
また、本発明に係る飲料ディスペンサは、その上部に前記ボトルを着脱自在に取付け可能とされた装置本体を備え、該装置本体の内部に前記タンクが配置されるとともに該タンクの上部に前記ボトルからの前記液体を導く管路が挿入配置され、該ボトルの上部に前記空気路が設けられていることを特徴とする。
【0013】
このような飲料ディスペンサでは、タンクの上部に空気路が設けられているので、殺菌された空気を空気路を通じてタンクの上部に取り込むことが可能である。また、タンクとボトルは管路で連結されているので、管路を通じて液体がボトルからタンクに移動するとともに、タンク内の空気がタンクからボトルに移動する。よって、タンク内の殺菌された空気をボトルに取り込むことが可能である。したがって、殺菌された空気がタンク内及びボトル内に取り込まれることにより、臭い及び微生物の発生を抑えて衛生上良好な飲料水を供給することができる。
【0014】
また、本発明に係る飲料ディスペンサは、前記タンクに圧力を送る送風装置を備えていることを特徴とする。
【0015】
このような飲料ディスペンサでは、送風装置によりタンク内部に圧力を送るため、タンク内部を陽圧にすることで、臭い及び微生物の発生を抑えて衛生上良好な飲料水を供給することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る飲料ディスペンサによれば、臭い及び微生物の発生を抑えて衛生上良好な飲料水を供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る飲料ディスペンサの縦断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る飲料ディスペンサのボトル部分の構成を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る飲料ディスペンサのボトルとタンクの接続部分の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1に示すように、飲料ディスペンサ1は、飲料水W(液体)が満たされたボトル11と、ボトル11を着脱可能に取付け可能とする装置本体21と、装置本体21の内部に配置されたタンク31と、ボトル11とタンク31を接続する管路41と、タンク31に接続された注出口51と、イオンを発生するイオン発生装置61と、イオン発生装置61に連結された送風装置81と、イオン発生装置61で発生したイオンをタンク31に取り込む空気路71とを備える。
【0019】
ボトル11は、飲料水Wが注入、及び注出される開口部114を下方に向けて、装置本体21の上部に設置されている。また、ボトル11は、設置された状態で、上面を形成する底部111と、底部111に接続して下方に延在する周壁部112と、周壁部112より下側に向かうにしたがって内方へと形成された傾斜部113と、傾斜部113の下部に設けられた開口部114とを備える。
【0020】
開口部114は、ボトル11を装置本体21の上部に設置する前の状態では、図2に示すように、該開口部114の端部を覆うように水平断面視して円形のキャップ部材115が嵌合されている。
また、キャップ部材115は、水平断面視して環状に形成されるとともに開口部114の端部と係合された外側キャップ部116と、水平断面視して円形に形成されるとともに外側キャップ部116と係合された内側キャップ部117とを備える。
ここで、ボトル11を装置本体21の上部に設置した状態では、図3に示すように、内側キャップ部117が管路41の上部に係合されることにより、内側キャップ部117と外側キャップ部116の係合が解除され、内側キャップ部117と管路41が一体となる構成となっている。
【0021】
装置本体21は、下面を形成する略矩形床板121と、床板121より立設された複数の側板122と、側板122の上部で上面を形成する天板123とを備える。
側板122のうち装置本体21の前部に配された前板124は、側面視して内方に凹部が形成されるように、内方に突出した上壁部125及び下壁部126と、上壁部125と下壁部126を連結する奥壁部127とを備える。奥壁部127には注出口51が設けられ、下壁部126には飲料水Wを収容する容器を設置することができる(不図示。以下同じ。)。
また、天板123には内方に向かって形成された凹部が設けられており、該凹部にボトル11の開口部114が挿入されている。
【0022】
タンク31は、管路41を介してボトル11と連結され、冷水の飲料水W(冷水Wと称する。以下同じ。)を貯留する冷水タンク131と、温水の飲料水W(温水Wと称する。以下同じ。)を貯留する温水タンク132とを備える。冷水タンク131が上側、温水タンク132が下側に設置されるとともに、冷水タンク131と温水タンク132は連結管133で連結されている。
冷水タンク131には図示しない冷却装置が設けられ、温水タンク132には図示しない加熱装置が設けられ、それぞれ飲料水Wの温度を一定に保っている。
また、連結管133は、冷水タンク131から温水タンク132への飲料水Wの導入を可能としている。よって、後述する注出口51からの温水Wの供給より、温水タンク132の飲料水Wが減れば、その減った体積に相当する分の冷水の飲料水Wが、連結管133を通って冷水タンク131から温水タンク132に導入される構成となっている。
【0023】
管路41は、有底円筒状の部材であり、底側を上方に向けて配されるとともに、上側がボトル11の開口部114を貫通してボトル11の内部に、下側が冷水タンク131の内部に、それぞれ挿入配置されている。
また、管路41のうちボトル11の内部に挿入されている部分には、外周に所定の間隔で貫通孔141が設けられている。該貫通孔141を通って、飲料水Wはボトル11から冷水タンク131へ導入されるとともに、冷水タンク131の中に存在する空気Aは冷水タンク131からボトル11へ導入される構成となっている。
【0024】
注出口51は、冷水タンク131の下部に設けられた冷水用注出口151と、冷水用注出口151の先端に設けられた冷水用コック152と、温水タンク132の上部に設けられた温水用注出口153と、温水用注出口153の先端に設けられた温水用コック154とを備える。
冷水用注出口151は、冷水タンク131の下部より下方に伸び途中で装置本体21の奥壁部127方向に屈曲し、奥壁部127の外側で冷水用コック152に接続されている。また、温水用注出口153は、温水タンク132の上部より上方に伸び途中で装置本体21の奥壁部127方向に屈曲し、奥壁部127の外側で温水用コック154に接続されている。
【0025】
イオン発生装置61は、イオンを製造する装置であり、装置本体21の内部に配されている。図示しない制御部からの指令に基づいて所定量のイオンを常時製造して、空気を殺菌している。
【0026】
送風装置81は、圧力を送る装置であり、イオン発生装置61に連結されるとともに、装置本体21の内部に配されている。図示しない制御部からの指令に基づいて、所定の圧力を空気路71に送っている。
【0027】
空気路71は、一端がイオン発生装置61に連結された送風装置81に接続され、他端が冷水タンク131に接続されている。また、該空気路71を通じて、イオン発生装置61で製造されたイオンを含む空気Aを冷水タンク131に導入している。
【0028】
次に、上記の飲料ディスペンサ1における飲料水W及び空気Aの流れを説明する。
ここでは、温水用コック154を開栓した場合を例に挙げて説明する。
温水用コック154を開栓すると、温水Wが温水タンク132より温水用注出口153を通って、装置本体21の下壁部126に設置した容器に供給される。ここで、温水Wが温水用注出口153に導入されるにともない、導入された温水Wの体積に相当する分の冷水Wが、連結管133を通って冷水タンク131側から温水タンク132側に導入される。
そして、冷水タンク131において冷水Wが減少すると、管路41を通って飲料水Wがボトル11側から冷水タンク131側に導入される。この際、飲料水Wがボトル11から管路41の貫通孔141を通って管路41の内部を通過して冷水タンク131に導入されるとともに、冷水タンク131の中に存在する空気Aが冷水タンク131から管路41の内部を通過して貫通孔141を通ってボトル11に導入される。
ここで、イオン発生装置61では常時イオンを製造しているので、冷水タンク131の中に存在する空気Aはイオンを含むとともに、上述のボトル11に導入される空気Aもイオンを含むこととなる。
なお、冷水用コック152を開栓し冷水Wを供給する場合は、冷水タンク131側から温水タンク132側への冷水Wの導入がない点を除いては、飲料水W及び空気Aの流れは上記と同様であるため、説明を省略する。
【0029】
このように構成された飲料ディスペンサ1では、イオン発生装置61で製造したイオンを含み殺菌された空気Aを、空気路71を通じて冷水タンク131の上部に取り込むことが可能である。また、冷水タンク131の中に存在する殺菌された空気Aを、管路41を通じてボトル11に取り込むことが可能である。よって、殺菌された空気Aが冷水タンク131の内部及びボトル11の内部に取り込まれることにより、臭い及び微生物の発生を抑えて良好な飲料水Wを供給することができる。
また、送風装置81より冷水タンク131内部に圧力を送るため、冷水タンク131内部を陽圧にすることで、送風装置81以外からの外気の侵入を防止することができ、臭い及び微生物の発生を効果的に抑えて良好な飲料水Wを供給することができる。
【0030】
また、イオン発生装置61は装置本体21の内部に配置されているので、外観上の見栄えが良好である。また、既設の装置本体21と同じスペースに設置することが可能である。
【0031】
(実施例、比較例)
以下、上記の飲料ディスペンサ1を使用して実験した結果を表1に、比較例としてイオン発生装置を設けない飲料ディスペンサを使用して実験した結果を表2に、それぞれ示す。
【0032】
【表1】

【0033】
【表2】

本実験で使用するイオン発生装置は、Panasonic製のナノイー発生機(品番:F−GME03)である(ナノイーは、パナソニック電工株式会社の登録商標である)。
また、冷水タンク内の冷水の温度を5℃、温水タンク内の温水の温度を85℃、検査を実施する部屋の温度を25℃とした。
また、1日当たりの飲料水の使用量は冷水と温水の合計で1L以下とする。実施例では、ボトルを3日目、17日目、27日目、31日目、35日目に交換し、38日目まで実験した。比較例では、ボトルを3日目、17日目に交換し、24日目まで実験した。
また、表2では、13日目、14日目でTNTC(Too Numerous To Count)と表記する通り一般細菌の数が膨大となり計測できなかったため、15日目以降は希釈して測定した。
【0034】
実施例と比較例を比較すると、比較例では10日目から一般細菌が発生し始め、9日目で大量の一般細菌が発生するのに対し、実施例では13日目には一般細菌が発生していないことが判明した。よって、本実施形態では微生物の発生を効果的に抑止することが可能である。
【0035】
なお、上述した実施の形態において示した動作手順、あるいは各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【符号の説明】
【0036】
1…飲料ディスペンサ
11…ボトル
21…装置本体
31…タンク
41…管路
51…注出口
61…イオン発生装置(殺菌装置)
71…空気路
81…送風装置
W…飲料水(液体)、冷水、温水
A…空気

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボトルから流入した液体を貯留するタンクと、
該タンクに設けられた注出口と、
該注出口から流出した液体に換えて空気を前記タンクに取り込む空気路と、
該空気路へ流入する前記空気を殺菌する殺菌装置とを備えたことを特徴とする飲料ディスペンサ。
【請求項2】
請求項1に記載の飲料ディスペンサであって、
前記殺菌装置は、イオン発生装置であることを特徴とする飲料ディスペンサ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の飲料ディスペンサであって、
その上部に前記ボトルを着脱自在に取付け可能とされた装置本体を備え、
該装置本体の内部に前記タンクが配置されるとともに該タンクの上部に前記ボトルからの前記液体を導く管路が挿入配置され、該ボトルの上部に前記空気路が設けられていることを特徴とする飲料ディスペンサ。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の飲料ディスペンサであって、
前記タンクに圧力を送る送風装置を備えていることを特徴とする飲料ディスペンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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