説明

飲料冷却装置

【課題】冷却水槽の内部構造、配置等を適宜に構成し、その冷却水によって飲料冷却コイルを通過する飲料を十分、かつ効率良く冷却する。
【解決手段】冷却水槽3内に、蒸発コイル8と、飲料冷却コイル5と、冷却水のアジテータ9と、アジテータ9を囲繞する筒状の送水ガイド15と、カーボネータ6とを浸漬配備し、冷凍機の運転により蒸発コイル8の周囲に生成した氷塊の蓄熱で、飲料冷却コイル5内を通過する飲料と、カーボネータ6とを冷却する飲料冷却装置において、冷却水槽3内の下部領域に飲料冷却コイル5を螺旋状に配管するとともに、その上方に、飲料冷却コイル5に対向するように、送水ガイド15に囲繞されたアジテータ9と、カーボネータ6と、これらを取り囲むように配備された蒸発コイル8と、を備え、アジテータ9の駆動によって、冷却水を送水ガイド15の下方から飲料冷却コイル5に向けて吐出し循環させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料ディスペンサやカップ式自動販売機などに適用する飲料冷却装置に関し、特に冷却水が貯留された水槽内に配設した冷却器の周囲に氷塊を生成し、その潜熱により飲料を冷却する飲料冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこのような飲料冷却装置としては、先に出願、公開された特開2003−34395号公報(特許文献1)に記載されるような冷却水槽が知られている。この特許文献1に記載される冷却水槽は、図2に示すように水槽3内に貯留した冷却水を冷却する中空筒状の蒸発コイル8を有し、この蒸発コイル8の周りに氷塊を形成するとともに、その蒸発コイル8の内側でプロペラ9aが回転する攪拌機9により冷却水を攪拌する冷却水槽であって、蒸発コイル8とプロペラ9aとの間に、蒸発コイル8に形成された氷塊とプロペラ9aとの接触を防止する中空筒状のプロペラガード17を設置するものである。また、このプロペラガード17には、プロペラ9aの周りを除いてスリット17aが多数設けられており、冷却水はプロペラ9aの回転により、スリット17aを通して(矢印で示すように)水槽3内を循環するように構成されている。そして、これによれば、蒸発コイル8の周りに異常成長した氷塊と攪拌機9のプロペラ9aとの接触を、中空筒状のプロペラガード17により防止することができるから、蒸発コイル8とプロペラ9aとの隙間を最小限に抑えて蒸発コイル8を小形化し、全体的に飲料冷却装置の小型化を図れるとともに、蒸発コイル8に生成される氷塊との接触による攪拌機9のプロペラ9aの破損やアジテータモータ9bの損傷を確実に防止することができるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−34395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような従来の冷却水槽において、冷却水は、図2に矢印で示すように、プロペラ9aの回転によりプロペラガード17の内側を下に向い、蒸発コイル8の外側を通って上昇した後、プロペラガード17のスリット17aを通してその内側に吸い込まれる循環を行う。そしてこの循環過程で、冷却水が蒸発コイル8の外側を上昇する際に蒸発コイル8の周りに形成された氷塊の表面を洗い流して低温に冷却され、この冷却された冷却水により、蒸発コイルの外側に配置された飲料冷却コイル5を冷却し、その内部を通過する飲料を冷却している。ここで、蒸発コイル8の周りに生成された氷塊の表面を洗い流して冷却される冷却水は、直接に飲料冷却コイル5を冷却するものではなく、一旦プロペラガード17のスリット17aを通してその内側に吸い込まれて下方に向かい、再び蒸発コイル8の外側を上昇するときに、その一部が蒸発コイル8の外側に配置される飲料冷却コイル5と接してこれを冷却するから、流速の低下等も加わって、その冷却効率が低下し、飲料が飲料冷却コイル5を連続して通過すると十分に冷えない問題があった。また、プロペラガード17の下部領域において、プロペラ9aにより下方に吐出される水流の一部は、遠心力作用によりプロペラ9aの近傍周域をショートサーキットして吸込み側に還流し、その下方側から蒸発コイル8および飲料冷却コイル5を経由した通常の循環経路を流れる冷却水の流量、流速が減少し、飲料冷却コイル5を通過する飲料の冷却能力が低下する問題もあった。
【0005】
本発明は、このような問題に対応するため、蒸発コイル8の氷塊により冷却される冷却水によって、飲料冷却コイル5を通過する飲料を十分、かつ効率良く冷却することができるように冷却水槽3の内部構造、配置等を適宜に構成し、飲料が飲料冷却コイル5を連続して通過する場合も十分にそれを冷却することができ、また水槽3内の攪拌効率等を向上させることによりアジテータモータ9bの小型化を可能にして、消費電力を低減し、コストを安くすることができる飲料冷却装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、冷却水を貯留した冷却水槽内に、冷凍機の蒸発コイルと、飲料冷却コイルと、前記冷却水の攪拌用のアジテータと、前記アジテータのプロペラを囲繞するように配置された筒状の送水ガイドと、炭酸水を生成するカーボネータと、を浸漬配備し、前記冷凍機の運転により前記蒸発コイルの周囲に生成した氷塊の蓄熱で、前記飲料冷却コイル内を通過する飲料と、前記カーボネータとを冷却する飲料冷却装置において、前記冷却水槽内の下部領域に前記飲料冷却コイルを螺旋状に巻回して配管するとともに、前記下部領域の上方に、前記飲料冷却コイルに対向するように、前記送水ガイドに囲繞された前記アジテータと、前記カーボネータと、これらを取り囲むようにその周域に螺旋状に配備された前記蒸発コイルとを備え、前記アジテータの駆動によって、前記冷却水を前記送水ガイドの下方から吐出して前記飲料冷却コイルに向けて送水し循環させるものである。
これによれば、前記蒸発コイルの周りに生成された氷塊により冷却された冷却水を直接にその下方の前記螺旋状の飲料冷却コイルに向けて送水して循環させ、前記飲料冷却コイル内を通過する飲料を冷却することができるから、その冷却効率を向上させることができる。
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の飲料冷却装置において、前記アジテータの駆動によって前記送水ガイドの下方から吐出される前記冷却水が、前記螺旋状の飲料冷却コイルに向けて垂直に流下するように、前記送水ガイドを前記アジテータのプロペラの下方に延設するものである。
これによれば、前記送水ガイドの下方から吐出される前記冷却水を、垂直に流下して前記螺旋状の飲料冷却コイルに向けて効率的に送水し、前記飲料冷却コイル内を通過する飲料を冷却することができるから、その冷却効率をさらに向上させ、飲料冷却装置の冷却能力を向上させることができる。
【発明の効果】
【0007】
以上説明したように請求項1に係る発明によれば、冷却水を直接に螺旋状の飲料冷却コイルに向けて送水して循環させ、飲料冷却コイル内を通過する飲料の冷却効率を向上させることができるから、飲料が飲料冷却コイルを連続して通過する場合にもそれを十分に冷却することが可能な飲料冷却装置を提供することができる。
また、請求項2に係る発明によれば、送水ガイドの下方から吐出される冷却水を垂直に流下して螺旋状の飲料冷却コイルに向けて効率的に送水し、これにより飲料冷却コイル内を通過する飲料の冷却効率をさらに向上させて飲料冷却装置の冷却能力を向上させることができるから、例えば飲料を連続販売した場合にも、飲料冷却コイルを通過する飲料を安定して冷却することができる高品質の飲料冷却装置を提供することができる。
また、請求項1、もしくは請求項2に係る発明によれば、冷却水槽内の冷却水の攪拌、循環効率を向上させることができるから、例えばアジテータモータを小型化して、消費電力を低減し、コストを安くすることができる飲料冷却装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態の飲料冷却装置の構造を模式的に示す図であって、(a)は平面図、(b)は縦断面図である。
【図2】従来の飲料冷却装置の冷却水槽の構造を例示する縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施の形態について図を参照して説明する。図1は、本発明の実施の形態の飲料冷却装置の構造を模式的に示す図であって、(a)は平面図、(b)は縦断面図である。なお、図中において従来の飲料冷却装置と同じ、または同様の機能を有すものには同符号を付す。
図に示すように、この飲料冷却装置1は、カップ式自動販売機や、飲料ディスペンサにおいて、カップに吐出して供給される飲料水等を冷却する装置として用いられるもので、冷却水を満たした冷却水槽3と、その冷却水槽3内に浸漬配備した飲料冷却コイル5と、カーボネータ6と、冷凍機(図示なし)の蒸発コイル8と、冷却水の攪拌用のアジテータ9とを備えている。ここで、飲料冷却コイル5は、図示しない水リザーバタンクから供給される飲料水等を冷却水槽3に満たされた冷却水中を通過させることにより冷却し、図示しないベンドステージ上のカップ等に吐出して供給するためのものである。また、カーボネータ6は、冷却水槽3内の冷却水に浸漬され冷却された状態において、水に炭酸ガスを効率的に溶融して炭酸水を製造し、同様に図示しないベンドステージ上のカップ等に吐出、供給するためのものである。
【0010】
冷却水槽3内では、図示のようにその上部領域の外周3aに沿って冷凍機の蒸発コイル8を螺旋状に巻回して配管するとともに、その内周側にカーボネータ6、および冷却水の攪拌用のアジテータ(プロペラ式の軸流ポンプ)9を水平方向に略並列に配置している。さらに、アジテータ9の周囲には、そのプロペラ9aを囲繞するように中空状の送水ガイド15を備えている。
さらに、螺旋状に巻回された蒸発コイル8の下方の下部領域には、蒸発コイル8と同様に螺旋状に巻回して配置された飲料冷却コイル5が備えられている。そして、この飲料冷却コイル5の端部に設けられる入口管5a及び出口管5bは、冷却水槽3内において、蒸発コイル8の外周側にこれと所定の間隔を隔てて上下方向に延設して備えられている。なお、螺旋状の蒸発コイル8の底部と螺旋状の飲料冷却コイル5の上部の間には、蒸発コイル8の周りに生成される氷塊が、下方の飲料冷却コイル5に及ばない程度の間隔が設けられている。
【0011】
ここで、送水ガイド15に囲繞されたアジテータ9は飲料冷却コイル5と対向するようにその上方に配置されている。また、送水ガイド15は、アジテータ9のプロペラ9aの回転によりその下方から吐出される冷却水が、垂直に流下して螺旋状の飲料冷却コイル5に向かうように、その下端をアジテータ9のプロペラ9aの下方に延ばして形成されている。なお、送水ガイド15の上部には、冷却水をその内側に取り込むための複数のスリット部15aがその周面に形成されている
また、蒸発コイル8の周りには、その周りに生成される氷塊を検知する複数の図示しない電極式のコントロールセンサを備えている。これらの電極式のコントロールセンサは、氷と水の電導度(抵抗値)が違う性質(水よりも氷の方が比抵抗が大きい)を利用して、蒸発コイル8の周囲に生成される氷塊の氷厚(大きさ)を制御する。そして、蒸発コイル8の周りに生成した氷塊を蓄熱源として、アジテータ9の運転により冷却水槽3内に満たした冷却水を攪拌、循環し、飲料冷却コイル5内を通過する飲料水、及びカーボネータ6及びこれによって生成される炭酸水を冷却するようにしている。
【0012】
このような構成において、アジテータ9のプロペラ9aを回転駆動すると、プロペラ9aの回転力により生じた冷却水の水流は、略垂直に流下して直接に冷却水槽3の下部領域に螺旋状に配管された飲料冷却コイル5に向かい、その周囲に広がって、これと接触し熱交換を行うことにより飲料冷却コイル5を通過する飲料を冷却する。その後、この冷却水は冷却水槽3内の側面に沿って上昇し、冷却水槽3の上部領域に螺旋状に配管された蒸発コイル8の周りに生成された氷塊と接触して熱交換することで冷却される。そして、下方に反転して氷塊が生成された蒸発コイル8の内側を下に向かって流下し、その内部に配設されたカーボネータ6を冷却しながらプロペラ9aに還流するように循環する。ここで、プロペラ9aにより下方に吐出される冷却水は、その回りを囲繞する送水ガイド15に拘束されて全水量が下方に向けて吐出され、プロペラ9aの端部近傍で逆流することがない。
【0013】
すなわち、これにより循環する冷却水の量が増えるから、冷却水と飲料冷却コイル5との熱伝達が高まり、飲料冷却コイル5を通過する飲料が効率的に冷却される。なお、蒸発コイル5の周りに生成される氷塊の蓄氷量が減少すれば、図示しない電極式のコントロールセンサの検知信号に基づき冷凍機が始動して製氷動作を開始し、氷塊の蓄氷量を回復させる。
以上のように、本発明の飲料冷却装置1は、冷却水を直接に螺旋状の飲料冷却コイル5に向けて送水して循環させ、飲料冷却コイル5内を通過する飲料の冷却効率を向上させることができるから、飲料が飲料冷却コイル5を連続して通過する場合もそれを十分に冷却することが可能な飲料冷却装置を提供することができる。また、送水ガイド15の下方から吐出される冷却水の略全量を垂直に流下して螺旋状の飲料冷却コイル5に向けて効率的に送水し、これにより飲料冷却コイル5内を通過する飲料の冷却効率をさらに向上させて飲料冷却装置1の冷却能力を向上させることができるから、例えば飲料を連続販売した場合にも、飲料冷却コイル5を通過する飲料を安定して冷却することができる高品質の飲料冷却装置1を提供することができる。また、これらによって、冷却水槽3内の冷却水の攪拌、循環効率を向上させることができるから、アジテータモータ9bを小型化して、消費電力を低減し、コストを安くすることができる飲料冷却装置を提供することができる。
なお、本発明は、言うまでもなく本実施の形態に示す装置にのみ限定されず、その趣旨の包含する範囲で応用変更が可能である。例えば、この飲料冷却装置1を構成する冷却水槽3や蒸発コイル8、飲料冷却コイル5等の構成、形状や、送水ガイド15の配置、形状等は、この実施形態に示すものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0014】
1 飲料冷却装置
3 冷却水槽
5 飲料冷却コイル
6 カーボネータ
8 蒸発コイル
9 アジテータ
9a プロペラ
15 送水ガイド


【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却水を貯留した冷却水槽内に、冷凍機の蒸発コイルと、飲料冷却コイルと、前記冷却水の攪拌用のアジテータと、前記アジテータのプロペラを囲繞するように配置された筒状の送水ガイドと、炭酸水を生成するカーボネータと、を浸漬配備し、前記冷凍機の運転により前記蒸発コイルの周囲に生成した氷塊の蓄熱で、前記飲料冷却コイル内を通過する飲料と、前記カーボネータとを冷却する飲料冷却装置において、前記冷却水槽内の下部領域に前記飲料冷却コイルを螺旋状に巻回して配管するとともに、前記下部領域の上方に、前記飲料冷却コイルに対向するように、前記送水ガイドに囲繞された前記アジテータと、前記カーボネータと、これらを取り囲むようにその周域に螺旋状に配備された前記蒸発コイルとを備え、前記アジテータの駆動によって、前記冷却水を前記送水ガイドの下方から吐出して前記飲料冷却コイルに向けて送水し循環させることを特徴とする飲料冷却装置。
【請求項2】
前記アジテータの駆動によって前記送水ガイドの下方から吐出される前記冷却水が、前記螺旋状の飲料冷却コイルに向けて垂直に流下するように、前記送水ガイドを前記アジテータのプロペラの下方に延設することを特徴とする請求項1に記載の飲料冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−1219(P2012−1219A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−135184(P2010−135184)
【出願日】平成22年6月14日(2010.6.14)
【出願人】(000237710)富士電機リテイルシステムズ株式会社 (1,851)
【Fターム(参考)】