説明

飲料水供給装置

【課題】 低温水側への高温水の逆流を阻止することができながら、高温水を任意に汲み出すことができる、飲料供給装置を提供すること。
【解決手段】 温水タンク36に接続され、飲料水容器21内の飲料水を温水タンク36に供給するための供給管42と、温水タンク36に接続され、温水タンク36内の温水を汲み出すための温水汲出管41と、供給管42の流路を開閉するための供給側開閉弁62と、温水汲出管41の流路を開閉するための温水側開閉弁61とを備えるウォータサーバ1において、温水側開閉弁61の開閉動作に供給側開閉弁62を連動させて、供給管42を開閉する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料水を貯留し、貯留された飲料水の温度を調節することができる飲料水供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ミネラルウォータなどの飲料水を貯留し、貯留された飲料水の温度を用途に応じて調節することができるウォータサーバが知られている。
この種のウォータサーバとして、たとえば、貯留された飲料水の温度を調節することによって、飲料水を冷水および温水として貯留できるものが知られており、使用者は、サーバ本体に設けられた冷水フォーセットや温水フォーセットを適宜操作することによって、冷水および温水を自由に汲み出すことができる。
【0003】
具体的な装置としては、たとえば、バッグインボックス型の飲料水容器が収容される冷蔵庫と、飲料水容器から2方に分岐された供給配管と、供給配管の一方の端部が接続され、ヒータが設けられた温水タンクと、供給配管の他方の端部が接続され、冷却機が設けられた冷水タンクとを備える飲料水ディスペンサが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
また、冷却装置を備えた貯水タンクと、貯水タンクから上方に伸びる導水管に着脱可能に取り付けられ、飲料水を収容する樹脂製容器と、貯水タンクの下方に配置され、加熱装置を備えた温水タンクと、貯水タンクと温水タンクとを接続する給水管と、給水管における貯水タンクとの接続部に設けられた開閉弁とを備える飲料水用サーバが提案されている(たとえば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−190577号公報
【特許文献2】特開2009−35322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、相対的に高い温度の飲料水が貯留される温水タンクと、相対的に低い温度の飲料水が貯留される飲料水容器や冷水タンクとが、供給配管を介して連通している特許文献1のような構成では、飲料水の加熱および/または温水タンクの内圧上昇によって、加熱された温水が配管を伝って低温側の容器へ逆流する場合がある。そのため、低温側の飲料水の温度を安定させることが困難であるという不具合がある。
【0007】
一方、特許文献2によれば、高温側の温水タンクと低温側の貯水タンクとが、特許文献1と同様に給水管を介して連通しているが、給水管に開閉弁が設けられている。この開閉弁を閉めておけば、温水タンクと貯水タンクとの流通が阻止されるので、温水の逆流を阻止し得る。
しかし、開閉弁が閉じられている間は温水タンクに飲料水が供給されず、温水タンク内の温水に水圧がかけられないので、温水を供給することが困難である。一方、開閉弁を開け続けるのでは、上記したように、温水が給水管を伝って貯水タンクへ逆流する。したがって、温水の逆流を阻止しながら、温水を任意に供給することが困難である。
【0008】
本発明の目的は、低温水側への高温水の逆流を阻止することができながら、高温水を任意に汲み出すことができる、飲料供給装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の飲料水供給装置は、飲料水を収容する容器が設けられ、前記容器内の飲料水を相対的に低い温度の低温水として貯留する低温水貯留部と、前記容器から供給される飲料水を貯留するタンクと、前記タンクに貯留された飲料水を加熱するための加熱装置とを備え、飲料水を相対的に高い温度の高温水として貯留する高温水貯留部と、前記タンクに接続され、前記容器内の飲料水を前記タンクに供給するための供給管と、前記タンクに接続され、前記タンク内の高温水を汲み出すための高温水汲出管と、前記供給管の流路を開閉するための供給側開閉弁と、前記高温水汲出管の流路を開閉するための高温側開閉弁とを備え、前記供給側開閉弁は、前記高温側開閉弁の開閉動作に連動して、前記供給管を開閉することを特徴としている。
【0010】
この構成によれば、高温水が貯留される高温水貯留部のタンクと、低温水が貯留される低温水貯留部の容器とを接続する供給管に、その流路を開閉する供給側開閉弁が設けられている。そのため、供給側開閉弁を閉じることによって、タンクと容器との流通を阻止することができる。したがって、供給側開閉弁を閉じておけば、飲料水の加熱および/またはタンクの内圧上昇が生じても、容器(低温水側)への高温水の逆流を阻止することができる。その結果、高温水との接触による容器内の飲料水の温度上昇を防止することができる。したがって、容器内の飲料水を適切な温度に保持することができる。
【0011】
また、高温水を汲み出すときに高温側開閉弁を開けると、その動きに連動して供給側開閉弁が開く。そのため、高温水の汲み出しと、容器からタンクへの飲料水の供給とを並行して行なうことができる。したがって、タンクから汲み出される高温水の量と同じ量の飲料水をタンク内へ供給することができる。その結果、タンク内の水位を一定に保持することができ、供給される飲料水の圧力を高温水へかけて、高温水を任意に汲み出すことができる。
【0012】
また、本発明の飲料水供給装置では、前記供給管から分岐し、前記容器内の低温水を汲み出すための低温水汲出管と、前記低温水汲出管の流路を開閉するための低温側開閉弁とを備えることが好適である。
この構成では、供給管から低温水汲出管が分岐しているので、低温側開閉弁を開くことによって、高温水とは独立して低温水のみを汲み出すことができる。したがって、高温水と低温水とを用途に応じて使い分けることができる。
【0013】
また、本発明の飲料水供給装置では、前記高温水汲出管および前記供給管の開放時において、前記供給管が、前記高温水汲出管よりも先に開放されることが好適である。
この構成では、供給管が高温水汲出管よりも先に開放されるので、供給側開閉弁が開いてから高温側開閉弁が開くまでの間に、容器内の飲料水をタンク内へ供給して、その飲料水の水圧をタンクにかけることができる。その結果、高温側開閉弁の開放とともに、高温水を円滑に汲み出すことができる。
【0014】
また、本発明の飲料水供給装置では、前記高温側開閉弁を開閉動作させるための高温側開閉機構を備え、前記高温側開閉機構は、常時は前記高温側開閉弁が動作しないようにロックされており、前記高温水汲出管を開放させるときに、そのロックが解除される開放準備段階と、前記高温側開閉弁を動作させる開放動作段階との2段階で操作され、前記供給側開閉弁は、前記開放準備段階または前記開放動作段階のいずれかにおける前記高温側開閉機構の動きに連動して、前記供給管を開放することが好適である。
【0015】
この構成では、高温側開閉機構が、常時は動作しないようにロックされているので、高温側開閉弁が不用意に開放されることを防止することができる。その結果、より安全に使用することができる。
また、供給側開閉弁が、高温側開閉機構のロックが解除される開放準備段階で開放される場合には、上記と同様に、供給側開閉弁が開いてから高温側開閉弁が開くまでの間に、タンクに水圧をかけることができる。その結果、高温側開閉弁の開放とともに、高温水を円滑に汲み出すことができる。
【0016】
一方、供給側開閉弁が、高温側開閉弁を動作させる開放動作段階で開放される場合には、1つの高温側開閉機構によって、高温側開閉弁と供給側開閉弁とを同期させることができる。そのため、構成の簡素化を図ることができる。
また、本発明の飲料水供給装置では、前記低温水貯留部および前記高温水貯留部が、装置本体に設けられており、前記供給管、前記高温水汲出管、前記供給側開閉弁および前記高温側開閉弁が、前記装置本体に対して一体的に着脱自在に構成されていることが好適である。
【0017】
たとえば、加熱処理が施されない常温の飲料水などが低温水として貯留される場合、低温水が供給管などに長期間滞留すると、水中に雑菌などが発生するおそれがある。そのような雑菌の発生や繁殖を防止すべく、飲料水を貯留しておくような飲料水供給装置には、通常、定期的なメンテナンス(清掃作業)が施される。そのため、飲料水供給装置は、できるだけメンテナンスし易い構造であることが好ましい。
【0018】
上記の構成では、供給管、高温水汲出管、供給側開閉弁および高温側開閉弁が、装置本体に対して一体的に着脱自在なユニットとされている。そのため、このユニットを取り外すことによって、供給管、高温水汲出管および各開閉弁を洗浄することができる。その結果、ユニットを容易にメンテナンスすることができる。
また、本発明の飲料水供給装置では、前記タンクには、前記タンク内の圧力を調整するための圧力調整弁が設けられていることが好適である。
【0019】
この構成では、圧力調整弁の開閉動作によって、タンク内圧を適切な大きさに維持することができる。その結果、常時一定圧力で高温水を汲み出すことができる。
さらに、本発明の飲料水供給装置では、前記容器が、可撓性容器であり、前記供給側開閉弁を常時は前記供給管の上流側へ付勢し、前記高温側開閉弁の開閉動作に連動して、その付勢力が解除される付勢手段をさらに備え、前記供給側開閉弁は、前記付勢手段に付勢されているときに前記供給管の流路を閉塞し、前記付勢手段の付勢力が解除されたときに前記供給管の流路を開放することが好適である。
【0020】
この構成では、容器が可撓性容器であるので、飲料水の供給に際して、内部の飲料水の減少に伴って容器が収縮する。そのため、容器内に空気が混入することを抑制することができる。その結果、飲料水と空気との接触を抑制できるので、飲料水の衛生状態を良好に保持することができる。
しかも、供給管が、常時は上流側へ付勢される供給側開閉弁によって閉塞されている。そのため、容器に何らかの外力が加わって、供給管に大きな水圧がかかっても、タンク側への飲料水の流入を良好に抑制することができる。その結果、タンクにおける不用意な水位上昇を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係るウォータサーバの外観全体を示す斜視図である。
【図2】図1に示すウォータサーバの内部構成を示す拡大斜視図である。
【図3】タップユニットの正面図である。
【図4】タップユニットの背面図である。
【図5】タップユニットの左側面図である。
【図6】タップユニットの底面図である。
【図7】(a)温水側弁体収容部および(b)供給側弁体収容部の断面図であって、これらの開閉弁の動作(第1プロセス)を説明するための図である。
【図8】(a)温水側弁体収容部および(b)供給側弁体収容部の断面図であって、これらの開閉弁の動作(第2プロセス)を説明するための図である。
【図9】(a)温水側弁体収容部および(b)供給側弁体収容部の断面図であって、これらの開閉弁の動作(第3プロセス)を説明するための図である。
【図10】(a)温水側弁体収容部および(b)供給側弁体収容部の断面図であって、これらの開閉弁の動作(第4プロセス)を説明するための図である。
【図11】図1のウォータサーバの変形例に適用されるタップユニットの要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下では、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
1.ウォータサーバの全体構成
図1は、本発明の一実施形態に係るウォータサーバの外観を示す斜視図である。
ウォータサーバ1は、装置本体としてのサーバ筐体2を備えている。サーバ筐体2は、正面パネル3、背面パネル4、左側面パネル5、右側面パネル6、上面パネル7および底面パネル8によって構成された、上下方向に長手な中空の略直方体状であり、正面パネル3が前方へ断面弧状に膨出している。サーバ筐体2の内部には、たとえば、ウォータサーバ1を稼動させるための各種機器が収容されている。
【0023】
サーバ筐体2の上部は、正面パネル3の上端部と、正面パネル3の上端部から後方へ屈曲する上面パネル7とが一体な断面L形の開閉蓋9とされている。この開閉蓋9は、上面パネル7の後端と背面パネル4の上端とがヒンジ(図示せず)を用いて連結されることによって、背面パネル4に対して回転可能に取り付けられている。
ユーザは、開閉蓋9の前面を引き上げて、ヒンジを支点として開閉蓋9を上方へ跳ね上げることによって、サーバ筐体2の上部正面側を開放させることができる。
【0024】
サーバ筐体2の上下方向中央部には、ウォータサーバ1から飲料水を注出するための注出部10が設けられている。注出部10は、コップなどの容器を置くための載置皿11と、注出時にこぼれるなどした飲料水を受けるための水受け容器12とを備えている。
水受け容器12は、上側が開放された平面視紡錘状であり、正面パネル3に対して着脱自在に取り付けられている。
【0025】
載置皿11は、水受け皿と同じ平面視紡錘状であり、水受け容器12上に載置されている。載置皿11には、こぼれた飲料水を水受け容器12へ排出するための水抜き孔13が多数形成されている。
注出部10の上部には、後述するタップユニット19に備えられた、高温側開閉機構としての温水レバー14と、冷水レバー15とが、サーバ筐体2から露出している。正面パネル3における、上記2つのレバーよりも上側パネルは、着脱可能なメンテナンス用パネル16である。このメンテナンス用パネル16を取り外すことにより、タップユニット19(後述)を正面側に露出させることができる。
【0026】
そして、ユーザは、カップを載置皿11の所定位置に置き、温水レバー14もしくは冷水レバー15を操作することによって、容器内に飲料水を注ぐことができる。また、注出の際にこぼれて水受け容器12に溜まった水は、水受け容器12をサーバ筐体2から取り外すことによって捨てることができる。
2.ウォータサーバの内部構成
図2は、図1に示すウォータサーバの内部構成を示す拡大斜視図である。図2において、サーバ筐体は、開閉蓋が取り外された状態として表されている。
【0027】
ウォータサーバ1は、飲料水を冷水として貯留する低温水貯留部としての冷水貯留部17と、飲料水を温水として貯留する高温水貯留部としての温水貯留部18と、これらの貯留部から飲料水を注出するためのタップユニット19と、制御装置20とを、サーバ筐体2内に備えている。
冷水貯留部17は、飲料水容器21が収容される収容室22と、飲料水容器21内の飲料水を冷却するための冷却装置23とを備えている。
【0028】
収容室22は、タップユニット19よりも上方において区画されたスペースである。具体的には、収容室22は、背面パネル4、左側面パネル5および右側面パネル6と、正面インナパネル24と、底面インナパネル25とによって区画されている。
正面インナパネル24は、正面視略矩形状であり、左側面パネル5の前端と右側面パネル6の前端とを連結している。正面インナパネル24の左右方向中央には、上端から下端部に至るスリット26が形成されている。
【0029】
底面インナパネル25は、平面視矩形状である。底面インナパネル25は、正面インナパネル24の下端から背面側へ向かって上方へ傾斜し、背面パネル4、左側面パネル5および右側面パネル6のそれぞれに当接するように固定されている。
収容室22に収容される飲料水容器21は、飲料水が充填された容器本体27と、容器本体27に取り付けられた注出口28とを備えている。このような飲料水容器21としては、たとえば、容器本体27がバッグタイプの可撓性容器、容器本体27がボトルタイプの硬質性容器などが挙げられ、好ましくは、可撓性容器が挙げられる。
【0030】
飲料水容器21が可撓性であれば、飲料水の供給に際して、内部の飲料水の減少に伴って容器が収縮するので、容器内に空気が混入することを抑制することができる。その結果、飲料水と空気との接触を抑制できるので、飲料水の衛生状態を良好に保持することができる。
そして、飲料水容器21は、注出口28がスリット26に嵌め込まれた状態で、容器本体27が底面インナパネル25に載置されることによって、ウォータサーバ1にセットされる。
【0031】
冷却装置23は、冷却パネル29と、冷却素子30と、熱交換器31と、ラジエータ32と、冷媒循環パイプ33と、冷却ファン34とを備えている。
冷却パネル29は、底面インナパネル25よりも小さい相似形であり、熱伝導性の良好な金属板からなる。金属板としては、たとえば、アルミニウムパネル、銅パネルなどが用いられ、好ましくは、コスト、品質および重量などを考慮してアルミニウムパネルが用いられる。冷却パネル29は、底面インナパネル25上に設置されている。
【0032】
冷却素子30としては、たとえば、2つの金属電極の重ね合わせ構造のペルチェ素子が用いられ、各金属電極は制御装置20と電気的に接続されている。冷却素子30は、電流の供給によって相対的に低温となる金属電極が冷却パネル29の底面に貼り付けられている。図2では、冷却素子30を1つのみ表しているが、実際には、飲料水を効率よく冷却できるように、複数の冷却素子30が冷却パネル29の底面に複数配置される。
【0033】
熱交換器31は、冷却素子30における、電流の供給によって相対的に高温となる金属電極に貼り付けられている。熱交換器31内には、冷媒が通過可能な流路(図示せず)が形成されている。
ラジエータ32は、飲料水容器21(収容室22)の下方であって、サーバ筐体2内部の後側に配置されている。ラジエータ32としては、公知のものが用いられる。
【0034】
冷媒循環パイプ33は、ラジエータ32の上方のスペースにおいて引き回され、熱交換器31とラジエータ32とを接続している。冷媒循環パイプ33における熱交換器31よりも上流側には、循環ポンプ35が介装されている。
循環ポンプ35は、制御装置20と電気的に接続されている。この循環ポンプ35に電力を供給して駆動させることによって、熱交換器31に対して冷媒を循環させることができる。冷媒としては、たとえば、蒸留水が用いられる。
【0035】
冷却ファン34は、ラジエータ32を通過する冷媒を冷却するためのものであり、たとえば、ラジエータ32に対して所定の間隔を空けて対向配置されている。冷却ファン34は、制御装置20と電気的に接続されている。
そして、冷水貯留部17では、冷却素子30に電流を供給して、飲料水容器21内の飲料水の熱量を、冷却パネル29および冷却素子30の低温側電極を介して、冷却素子30の高温側電極に伝達させることによって、飲料水の冷却が行われる。また、冷却の際には、循環ポンプ35を駆動することによって、冷媒が熱交換器31に対して循環する。これにより、高温側電極の熱量を効率よく放散することができる。
【0036】
温水貯留部18は、飲料水容器21から供給される飲料水を貯留する温水タンク36と、温水タンク36に貯留された飲料水を加熱するための加熱装置37とを備えている。
温水タンク36は、上側および下側が気密に閉塞された有底円筒状である。温水タンク36は、ラジエータ32の前方であって、サーバ筐体2の注出部10の後方に、底面が水平となるように設置されている。
【0037】
温水タンク36の上壁には、タンク内の圧力を調整するための圧力調整弁38が設けられている。圧力調整弁38としては、たとえば、温水タンク36側の圧力に応じて自動的に開閉して、温水タンク36の内圧を一定に保持可能な、いわゆる自力式圧力調整弁が用いられる。
加熱装置37は、ヒータ39と、温度センサ40とを備えている。
【0038】
ヒータ39としては、たとえば、シーズヒータ、バンドヒータ、IHヒータなど公知のヒータが用いられ、温水タンク36に配置されている。ヒータ39は、制御装置20と電気的に接続されている。
温度センサ40は、温水タンク36の周壁に、たとえば、上下方向に互いに間隔を隔てて2つ設けられている。温度センサ40は、制御装置20と電気的に接続されている。
【0039】
そして、温水貯留部18では、加熱装置37に電流を供給して加熱装置37を稼動させることによって、タンク内の飲料水の加熱が行われる。
また、加熱の際には、温度センサ40によって常時飲料水の温度を検知し、加熱装置37へ供給する電流量をその検知結果に基づいて制御することによって、飲料水を沸騰しないように加熱することができる。これにより、加熱による気泡の発生を抑制することができる。したがって、気泡の発生による液面上方の空気溜まりの圧力上昇を抑制することができるので、圧力調整弁38の開閉動作によって、温水タンク36の内圧を一定に保持することができる。その結果、温水タンク36の内圧を適切な大きさに保持することができる。
【0040】
タップユニット19は、上下方向において冷水貯留部17の収容室22と温水貯留部18の温水タンク36との間に配置され、注出部10の上方に設けられている。
タップユニット19は、温水タンク36内の温水を汲み出すための高温水汲出管としての温水汲出管41と、飲料水容器21内の飲料水を温水タンク36に供給するための供給管42と、飲料水容器21内の飲料水(冷水)を汲み出すための低温水汲出管としての冷水汲出管43とを備えている。なお、タップユニット19の詳細な構成は、図3〜図6を参照して、後に詳述する。
【0041】
温水汲出管41は、排出用パイプ44を介して温水タンク36に接続されている。排出用パイプ44は、温水汲出管41に対して後側から接続されている。また、排出用パイプ44の温水タンク36側の端部は、温水タンク36の上壁から温水タンク36内へ突出する距離が、温水タンク36の高さに対して、たとえば、15〜20%となるように配置されている。具体的には、温水タンク36の高さが、たとえば、15〜17cmの場合には、上壁からの距離が、約2.5〜3.5cmとなるように配置されている。
【0042】
排出用パイプ44の突出量が上記した範囲であれば、その突出量分の空気溜まりを温水の液面上に設けることができる。したがって、液面上に適度な容積の圧縮代を設けることができる。そのため、温水タンク36内での沸騰により、気泡が発生して液面上に空気圧が生じても、その圧縮代によって圧力上昇を緩和することができる。その結果、圧力調整弁38の開閉動作時に、温水タンク36外に温水が吹き出ることを抑制することができる。
【0043】
供給管42は、給入用パイプ45を介して温水タンク36に接続されている。給入用パイプ45は、供給管42に対して後側から接続されている。また、給入用パイプ45の温水タンク36側の端部は、温水タンク36の底壁近傍に配置されている。
制御装置20は、たとえば、飲料水容器21および温水タンク36内の飲料水の温度制御、循環ポンプ35の駆動制御、冷却ファン34の出力制御などを実行するプログラムが組み込まれたマイクロコンピュータで構成されている。
3.タップユニットの詳細な構成
図3〜図6は、それぞれタップユニットの正面図、背面図、左側面図および底面図である。
【0044】
タップユニット19は、たとえば、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、フッ素樹脂などの硬質性樹脂からなるユニット筐体46を備えている。ユニット筐体46は、後側が開放された左右方向に長手な略直方体状である。
ユニット筐体46の前壁には、上下方向に延びる断面略半円状の配管用凹部47が複数(3つ)形成されている。複数の配管用凹部47は、左右方向に等間隔で、互いに平行に配置されている。
【0045】
ユニット筐体46の前壁の下縁には、各配管用凹部47の中心軸の延長線上に、ステム用スリット48が形成されている。
また、ユニット筐体46の前壁の上縁には、前方へ張り出した平面視略半円環状の配管用フランジ49が設けられている。
ユニット筐体46の左右側壁には、その後端部において左右方向外側へ張り出した取付用フランジ50が一体的に形成されている。取付用フランジ50には、ねじ締め用の貫通孔が複数形成されている。
【0046】
ユニット筐体46の底壁には、下方へ張り出した板状のレバー用フランジ51が複数(3つ)形成されている。複数のレバー用フランジ51は、互いに平行に左右方向に並べて配置されている。
各レバー用フランジ51には、隣接するレバー用フランジ51との対向面に、前後方向に長手なスライド溝52が形成されている。すなわち、左右端のレバー用フランジ51には、中央のレバー用フランジ51に対向する内側の面にスライド溝52が1つずつ形成されている。一方、中央のレバー用フランジ51には、左右端のレバー用フランジ51それぞれに対向する左右両側の面にスライド溝52が1つずつ合計2つ形成されている。
【0047】
また、各レバー用フランジ51におけるスライド溝52の前後方向中央よりもやや後ろよりには、その下面からスライド溝52に至るまで切り欠かれた切欠部53が形成されている。
また、ユニット筐体46の底壁には、その後端から前後方向略中央に至る配管用スリット54が複数(2つ)形成されている。複数の配管用スリット54のうち、左側の配管用スリット54は、左右方向において左端のステム用スリット48とほぼ同じ位置に配置されている。一方、右側の配管用スリット54は、左右方向において右端のステム用スリット48とほぼ同じ位置に配置されている。
【0048】
また、ユニット筐体46の底壁には、左側の配管用スリット54と右側の配管用スリット54との間において、その後端部が下方へ張り出した板状のばね用フランジ55が形成されている。
そして、上記のようなユニット筐体46に、温水汲出管41、供給管42および冷水汲出管43を含む配管部56と、温水レバー14および冷水レバー15を含む操作部57とが取り付けられている。
【0049】
温水汲出管41、供給管42および冷水汲出管43は、それぞれ弁体収容部を1つずつ備えている。すなわち、温水汲出管41は温水側弁体収容部58を備え、供給管42は供給側弁体収容部59を備え、冷水汲出管43は、冷水側弁体収容部60を備えている。
各弁体収容部58〜60は、たとえば、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)などの硬質性樹脂からなる。
【0050】
各弁体収容部58〜60は、下側が開放された有底円筒状であり、その下端部には、弁体収容部58〜60の径よりも径が大きく、上側が開放された有底円環状の閉塞蓋64〜66が螺合されている。
そして、温水側弁体収容部58、供給側弁体収容部59および冷水側弁体収容部60は、互いに隣接する収容部の軸同士の間隔が、上記複数の配管用凹部47の軸同士の間隔と同じとなるように、互いに平行に配置されている。このように配置される複数の弁体収容部58〜60は、左右方向左端が温水側弁体収容部58であり、右端が冷水側弁体収容部60であり、これらの間の中央が供給側弁体収容部59である。
【0051】
各弁体収容部58〜60の周壁には、径方向両側から外方へ矩形板状の連結用フランジ67が張り出している。これらの連結用フランジ67は、互いに隣接する収容部同士では共有のものとなっている。
具体的には、左端の温水側弁体収容部58と中央の供給側弁体収容部59とにより1つの連結用フランジ67が共有されている。また、中央の供給側弁体収容部59と右端の冷水側弁体収容部60とにより1つの連結用フランジ67が共有されている。さらに、温水側弁体収容部58は、左側方へ張り出した連結用フランジ67を単独で有し、冷水側弁体収容部60は、右側方へ張り出した連結用フランジ67を単独で有している。
【0052】
このように、隣接する収容部同士で連結用フランジ67が共有されることによって、温水側弁体収容部58、供給側弁体収容部59および冷水側弁体収容部60は、左右方向に一体的に連結されている。また、各連結用フランジ67には、ねじ締め用の貫通孔が複数形成されている。
各弁体収容部58〜60に収容される開閉弁61〜63は、弁体68〜70と、スプリング71〜73と、ステム74〜76とを備えている。以下では、各開閉弁61〜63の構成の一例として、温水側開閉弁61の構成を説明する。供給側開閉弁62および低温側開閉弁としての冷水側開閉弁63の構成については、特に言及のない限り、温水側開閉弁61と同じである。
【0053】
ただし、同名称の部位の参照符号については、温水側開閉弁61、供給側開閉弁62および冷水側開閉弁63の順で連続するものとする。たとえば、温水側開閉弁61の弁体を弁体68とする場合、供給側開閉弁62の弁体を弁体69とし、冷水側開閉弁63の弁体を弁体70とする。
弁体68は、たとえば、可撓性材料(たとえば、シリコンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴムなどの弾性材料)からなる。弁体68は、下側が開放された中空のキャップ状であり、先端を上方に向けた姿勢で温水側弁体収容部58に収容されている。弁体68の径は、温水側弁体収容部58の内径とほぼ同径の下端部から先端部へ向かって段階的に小さくなっている。
【0054】
弁体68の先端部には、弁体68に対してステム74を固定するための嵌合凹部77が形成されている。
スプリング71は、たとえば、SUSなどからなるコイル状である。スプリング71の巻き径は、軸方向一方側から他方側へ向かって段階的に小さくなっている。そして、スプリング71は、他方側端部が弁体68の先端部に内側から当接し、一方側端部が閉塞蓋64に当接するように、弁体68の中空部分に収容されている。
【0055】
ステム74は、たとえば、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリル樹脂などからなる。ステム74は、円柱状であり、第1フランジ80と、第2フランジ83とを有している。そして、ステム74は、第1フランジ80が弁体68の嵌合凹部77に嵌合されることによって、弁体68に対して固定されるとともに、第2フランジ83が閉塞蓋64の下方へスライド自在に突出している。
【0056】
温水側開閉弁61の弁体68に固定されるステム74は、供給側開閉弁62および冷水側開閉弁63の弁体68に固定されるステム75および76よりも長く、閉塞蓋64から突出する長さが大きくされている。
そして、このような温水側開閉弁61を組み立てるには、たとえば、まず、閉塞蓋64を温水側弁体収容部58から取り外し、ステム74が固定された弁体68を温水側弁体収容部58に収容する。次いで、ステム74がスプリング71内に挿入されるように、スプリング71を弁体68の中空部分に収容し、さらにステム74が閉塞蓋64に挿入されるように、閉塞蓋64を温水側弁体収容部58に対して螺合する。
【0057】
配管部56において、温水汲出管41は、さらに温水側上流配管86と、温水注出口87とを備えている。
温水側上流配管86は、一方側端部が、温水側弁体収容部58の上壁に接続されるとともに、他方側端部が、温水側弁体収容部58の軸線に対する垂直後方へ延びている。
温水注出口87は、L字状とされた、いわゆるエルボ管であり、一方側端部が、温水側弁体収容部58の周壁に接続されるとともに、他方側端部が、左側の配管用スリット54を通過して下方へ延びている。
【0058】
また、配管部56において、供給管42および冷水汲出管43は、さらに共通上流配管88を一体的に備え、冷水汲出管43は、さらに冷水注出口89を備えている。
共通上流配管88は、たとえば、シリコンなどの可撓性材料からなる。共通上流配管88は、供給側配管90と、供給側配管90の周壁から径方向に分岐したL字状の冷水側配管91とを備えている。
【0059】
冷水注出口89は、L字状とされた、いわゆるエルボ管であり、一方側端部が、冷水側弁体収容部60の周壁に接続されるとともに、他方側端部が、右側の配管用スリット54を通過して下方へ延びている。
そして、上記した配管部56をユニット筐体46に取り付けるには、たとえば、まず、弁体収容部58〜60に、各開閉弁61〜63を収容する。次いで、供給側弁体収容部59および冷水側弁体収容部60に、共通上流配管88を接続する。次いで、各ステム74〜76をステム用スリット48に対してスライドさせるとともに、各弁体収容部58〜60を各配管用凹部47に嵌めこみ、配管用フランジ49に対して供給側配管90を固定する。そして、連結用フランジ67をねじで固定する。
【0060】
こうして、配管部56をユニット筐体46に取り付けることができる。配管部56の取付後、温水注出口87を温水側弁体収容部58に取り付け、冷水注出口89を冷水側弁体収容部60に取り付ける。
そして、温水側上流配管86と排出用パイプ44とを、ジョイント管92を用いて接続することによって、温水汲出管41と温水タンク36とを連通させることができる。また、供給側弁体収容部と給入用パイプ45とを、ジョイント管93を用いて接続することによって、供給管42と温水タンク36とを連通させることができる。なお、ジョイント管92およびジョイント管93としては、たとえば、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、フッ素樹脂など、耐熱性の高いプラスチック材料からなるパイプが適用される。
【0061】
操作部57において、温水レバー14と、冷水レバー15とは、互いに独立して設けられている。
温水レバー14は、底面視で左右方向に長手な略矩形板状のベース部94と、ベース部94から前方へ延び、底面視で左右方向が高さ方向とされる略台形板状の把持部95とを一体的に備えている。
【0062】
ベース部94は、温水側開閉弁61のステム74および供給側開閉弁62のステム75を引っ掛けるための引掛部96と、温水レバー14をレバー用フランジ51に取り付けるためのヒンジ部97とを備えている。
引掛部96は、前後方向が長軸方向とされる楕円状であり、左右方向に空けて2つ設けられている。引掛部96には、引掛用開口98が形成されている。
【0063】
引掛用開口98は、相対的に大径な開口と相対的に小径な開口とが一体化された底面視略ひょうたん状であり、相対的に大径な開口が前側となるように形成されている。これにより、相対的に小径な開口が形成される後側には、底面視略半円状の引掛用フランジ99が形成されている。
ヒンジ部97は、ベース部94から左右両側へ突出するように延びる棒状である。
【0064】
把持部95は、その右端がベース部94の右端に対して左側へずれた位置となるように、かつ、左端がベース部94の左端よりも側方に張り出すように設けられている。
上記のような温水レバー14は、ヒンジ部97の両端を、切欠部53を介してスライド溝52にそれぞれ嵌め込むことによって、左端のレバー用フランジ51と中央のレバー用フランジ51との間にスライド自在かつ回転自在に配設されている。
【0065】
そして、ヒンジ部97とばね用フランジ55との間にばね100が架設されることによって、温水レバー14は、水平となるように、かつ、ヒンジ部97がスライド溝52の後端に位置するように付勢されている。
冷水レバー15は、底面視で左右方向にやや長手な略矩形板状のベース部101と、ベース部101から前方へ平行に延び、底面視で左右方向が高さ方向とされる略台形板状の把持部102とを一体的に備えている。
【0066】
ベース部101は、冷水側開閉弁63のステム76を引っ掛けるための引掛部103と、冷水レバー15をレバー用フランジ51に取り付けるためのヒンジ部104とを備えている。
引掛部103は、前後方向が長軸方向とされる楕円状である。引掛部103には、引掛用開口105が形成されている。
【0067】
引掛用開口105は、相対的に大径な開口と相対的に小径な開口とが一体化された底面視略ひょうたん状であり、相対的に大径な開口が前側となるように形成されている。これにより、相対的に小径な開口が形成される後側には、底面視略半円状の引掛用フランジ106が形成されている。
ヒンジ部104は、ベース部101から左右両側へ突出するように延びる棒状である。
【0068】
把持部102は、その左端がベース部101の左端に対して左右方向ほぼ同じ位置となるように、かつ、右端がベース部101の右端よりも側方に張り出すように設けられている。
上記のような冷水レバー15は、ヒンジ部104の両端を、切欠部53を介してスライド溝52にそれぞれ嵌め込むことによって、右端のレバー用フランジ51と中央のレバー用フランジ51との間にスライド自在かつ回転自在に配設されている。
【0069】
そして、ヒンジ部104とばね用フランジ55との間にばね107が架設されることによって、冷水レバー15は、水平となるように、かつ、ヒンジ部104がスライド溝の後端に位置するように付勢されている。
上記のような配管部56および操作部57を有するタップユニット19は、取付用フランジ50をねじ締めで固定することによって、サーバ筐体2に着脱自在に取り付けることができる。
4.開閉弁の動作およびウォータサーバによる温水および冷水の汲み出し
次に、タップユニット19における各開閉弁61〜63の動作とともに、ウォータサーバ1による温水および冷水の汲み出しについて説明する。なお、図7〜図10では、一例として(a)温水側開閉弁61(b)供給側開閉弁62を図示している。
【0070】
ウォータサーバ1において、飲料水の汲み出しを行なっていない待機状態では、図7(b)に示すように、供給側開閉弁62の弁体69が、スプリング72によって上方向へ付勢されて、供給側弁体収容部59の上壁に当接することとなるので、供給側配管90と給入用パイプ45との流通が阻止されている。そのため、飲料水容器21(図2参照)から自重によって供給側配管90に供給された飲料水は、弁体69上に滞留した状態となる。
【0071】
また、温水側開閉弁61についても、図7(a)に示すように、同様に温水側上流配管86と温水注出口87との流通が阻止されている。
また、この状態は、ステム74および75が引掛用開口98における相対的に大径な側に位置しており、温水レバー14を跳ね下げても、ステム74の第2フランジ83およびステム75の第2フランジ84に引掛用フランジ99を引っ掛けることが困難な、いわゆるロック状態である。したがって、供給側開閉弁62およびこれに同期する温水側開閉弁61が不用意に開放されることを防止することができる。その結果、ウォータサーバ1を、より安全に使用することができる。
【0072】
そして、ウォータサーバ1において、温水を汲み出すには、まず、図8に示すように、温水レバー14の把持部95を把持して手前に引き出す。これにより、ステム74および75が、温水レバー14に対して相対的に後方へスライドすることとなり、引掛用開口98における相対的に大径な前側から小径な後側へ移動する。すなわち、温水レバー14のロック状態が解除され、ステム74の第2フランジ83およびステム75の第2フランジ84に引掛用フランジ99を引っ掛けることが可能な開放準備段階となる。
【0073】
次いで、その状態から、図9に示すように、把持部95を、ヒンジ部97を支点として跳ね下げる。これにより、まず、弁体収容部からの突出量が相対的に短いステム75の第2フランジ84が、引掛用フランジ99に引っ掛かって、ステム75が下方に引っ張られる。その結果、ステム75が固定された弁体69の先端が、弁体69の中空部分に入り込むように変形し、それによって、弁体69と供給側弁体収容部59の上壁との間に隙間が生じる(開放動作段階)。
【0074】
このようして形成された隙間を介して、供給側配管90と給入用パイプ45とが連通するので、飲料水が給入用パイプ45に流入して温水タンク36に供給される。温水タンク36では、供給された飲料水の水圧がかかるので、タンク内で加熱された温水がその水圧によって押し上げられ、排出用パイプ44へ流入する。このとき、弁体収容部からの突出量が相対的に長いステム74の第2フランジ83は、引掛用フランジ99に引っ掛かっておらず、ステム74が待機状態なので、温水側開閉弁61は閉じたままである。
【0075】
次いで、図10に示すように、温水レバー14をさらに下げることにより、ステム74の第2フランジ83にも引掛用フランジ99が引っ掛かる。これにより、ステム74が下方に引っ張られて、供給側開閉弁62の場合と同様の機構により、温水側開閉弁61の弁体68と温水側弁体収容部58の上壁との間に隙間が生じる。
このようして形成された隙間を介して、排出用パイプ44に接続された温水側上流配管86と温水注出口87とが連通するので、温水を温水注出口87から汲み出すことができる。
【0076】
このように、このウォータサーバ1によれば、温水が貯留される温水タンク36と、冷水が貯留される飲料水容器21とを接続する配管(給入用パイプ45および供給側配管90)に、その流路を開閉する供給側開閉弁62が設けられている。
そのため、供給側開閉弁62を閉じることによって、温水タンク36と飲料水容器21との流通を阻止することができる。したがって、供給側開閉弁62を閉じておけば、飲料水の加熱および/または温水タンク36の内圧上昇が生じて、温水が給入用パイプ45を逆流しても、その温水を供給側開閉弁62の弁体69により塞き止めることができる。
【0077】
その結果、飲料水容器21への温水の逆流を阻止することができるので、温水との接触による飲料水容器21内の冷水の温度上昇を防止することができる。したがって、飲料水容器21内の冷水を効率よく冷却できるので、冷却するためのエネルギコストを低減することができる。
また、温水側開閉弁61を開けて温水を汲み出すときに供給側開閉弁62を開けるので、温水の汲み出しと、飲料水容器21から温水タンク36への飲料水の供給とを並行して行なうことができる。したがって、温水タンク36から汲み出される温水の量と同じ量の飲料水を温水タンク36内へ供給することができる。
【0078】
その結果、温水タンク36内の水位を一定に保持することができ、供給される飲料水の圧力を温水へかけて、温水を任意に汲み出すことができる。さらに、温水タンク36における空焚きを抑制することができる。
また、ステム74とステム75との関係において、弁体収容部からの突出量に差を設けることによって、供給側開閉弁62が温水側開閉弁61よりも先に開放されるので、供給側開閉弁62が開いてから温水側開閉弁61が開くまでの間に、飲料水容器21内の飲料水を温水タンク36内へ供給して、その飲料水の水圧をタンクにかけることができる。その結果、温水側開閉弁61の開放とともに、温水を円滑に汲み出すことができる。
【0079】
また、飲料水容器21を収容室22内で冷水として貯留しているので、温水とは独立して冷水のみを汲み出すことができる。その場合には、上記図7〜図10で示したプロセスに倣って冷水レバー15を操作することによって、冷水を汲み出すことができる。
すなわち、まず、図8に示したプロセスに準じて、冷水レバー15の把持部102を把持して手前に引き出す。これにより、冷水レバー15のロック状態が解除され、ステム76の第2フランジ85に引掛用フランジ106を引っ掛けることが可能な開放準備段階となる。
【0080】
次いで、その状態から、図9に示したプロセスに準じて、把持部102を、ヒンジ部104を支点として跳ね下げる。これにより、ステム76の第2フランジ85が、引掛用フランジ106に引っ掛かって、ステム76が下方に引っ張られる。その結果、ステム76が固定された弁体70の先端が、弁体70の中空部分に入り込むように変形し、それによって、弁体70と冷水側弁体収容部60の上壁との間に隙間が生じる(開放動作段階)。
【0081】
このようして形成された隙間を介して、供給側配管90から分岐した冷水側配管91と冷水注出口89とが連通するので、冷水を冷水注出口89から汲み出すことができる。
したがって、温水と冷水とを用途に応じて使い分けることができる。しかも、別途タンクを設けてそのタンク内で飲料水を冷却するのではなく、飲料水容器21内の飲料水を直接冷却するので、エネルギコストを低減することもできる。
【0082】
また、たとえば、加熱処理が施されない常温の飲料水などが使用される場合、その飲料水が汲出管などに長期間滞留すると、水中に雑菌などが発生するおそれがある。そのような雑菌の発生や繁殖を防止すべく、飲料水を貯留しておくようなウォータサーバには、通常、定期的なメンテナンス(清掃作業)が施される。そのため、ウォータサーバは、できるだけメンテナンスし易い構造であることが好ましい。
【0083】
そして、このウォータサーバ1では、温水汲出管41、供給管42、冷水汲出管43、温水側開閉弁61、供給側開閉弁62および冷水側開閉弁63が、サーバ筐体2に対して一体的に着脱自在なタップユニット19に設けられている。そのため、このタップユニット19を取り外すことによって、各汲出管および供給管を洗浄することができる。その結果、ユニットを容易にメンテナンスすることができるので、常温の飲料水を使用する場合でも、良好な衛生状態を保持することができる。
【0084】
また、温水タンク36に圧力調整弁38が設けられているので、温水タンク36の内圧が上昇しても、その上昇分の圧力によって圧力調整弁38が自動的に開いて、温水の液面上方の空気溜まり中の空気が開放される。このような圧力調整弁38の開閉動作によって温水タンク36の内圧を適切に維持できるので、常時一定圧力で温水を汲み出すことができる。
【0085】
さらに、供給側開閉弁62の弁体69が、待機状態においてスプリング72によって上方向へ付勢されているので、たとえ、飲料水容器21に何らかの外力が加わり、供給側配管90に大きな水圧がかかっても、温水タンク36側への飲料水の流入を良好に抑制することができる。そのため、温水タンク36における不用意な水位上昇を抑制できる。その結果、温水の液面上方の空気溜まりの圧力上昇を抑制することができるので、圧力調整弁38の開閉動作によって、温水タンク36の内圧を一定に保持することができる。
以上、本発明の複数の実施形態について説明したが、本発明はさらに他の形態で実施することもできる。 たとえば、温水レバーは、温水側開閉弁61と供給側開閉弁62とを連動して開放させることができれば、図11に示す構成であってもよい。
【0086】
たとえば、図11(a)は、ステム74およびステム75に対して、平面視鉤形の温水レバー108をヒンジによって連結した構成である。この場合、上記したような温水レバーのロック状態はなく、温水レバー108を押し下げることによって、ステム74とステム75とを同時に引き下げることができる。その結果、温水注出口87と供給側配管90とを同時に開放して、温水を汲み出すことができる。
【0087】
また、図11(b)は、ステム74およびステム75の引き上げによって開放する、温水側開閉弁61および供給側開閉弁62を備えた構成(ステム引き上げタイプ)であり、図11(a)と同様に、平面視鉤形の温水レバー109が、ステム74およびステム75に対して、ヒンジによって連結されている。この場合、温水レバー109を引き下げることによって、ステム74とステム75とを同時に引き下げることができる。その結果、温水注出口87と供給側配管90とを同時に開放して、温水を汲み出すことができる。
【0088】
さらに、図11(c)は、図11(b)と同様にステム引き上げタイプであり、温水レバーを別の構成としたものである。図11(c)では、温水レバー110は、ステム74およびステム75に対してヒンジによって連結されたベース部111と、ベース部111から温水注出口87に沿って下方に延びるハンドル部112とを備えており、ハンドル部112の下部がコップ側面に沿う形状とされている。この場合、コップを用いてハンドル部112に奥に押し込むことによって、ステム74とステム75とを同時に引き上げることができる。その結果、温水注出口87と供給側配管90とを同時に開放して、温水を汲み出すことができる。
【0089】
そして、図11に示したような、温水注出口87および供給側配管90を同時に開放する場合には、ヒンジのような簡単な機構で、ステム74とステム75とを同期させて温水側開閉弁61と供給側開閉弁62とを同期させることができる。そのため、構成の簡素化を図ることができる。
また、温水汲出管41、供給管42および冷水汲出管43を開閉するための弁として、スプリング71〜73の付勢力の増減によって開閉制御される各開閉弁61〜63に代えて、もしくは各開閉弁61〜63とともに、たとえば、電気的に開閉制御される電磁弁を適用することができ、上記した各管41〜43のいずれか1つまたは2つに対して適用されてもよいし、全てに対して適用されてもよい。
【0090】
そのような電磁弁を開閉する機構としては、たとえば、レバー式、ボタン式、赤外線式、静電容量式などが挙げられる。
そして、電磁弁の開閉動作を、供給側開閉弁62に代えて電磁弁が適用される場合を一例として説明すると、レバー式では、たとえば、温水レバー14に対してヒンジを用いて連結される解除用レバーを設ける。そして、ヒンジを支点として解除用レバーと温水レバー14とが近づく方向に、これらつまみながら温水レバー14を操作することによって電磁弁が開くので、当該電磁弁を、温水側開閉弁61の開閉動作に連動させることができる。
【0091】
また、ボタン式では、たとえば、電磁弁の開閉を操作するボタン(ロック解除ボタン)を正面パネル3に設ける。そして、温水レバー14を操作する直前にロック解除ボタンを押し、温水レバー14を操作することによって、当該電磁弁を、温水側開閉弁61の開閉動作に連動させることができる。
また、赤外線式では、たとえば、赤外線などにより人の所在を検知する人感センサを正面パネル3に設ける。そして、人がウォータサーバ1の正面に立って温水レバー14を操作するときに、人感センサが人の所在を検知して電磁弁が自動的に開くので、当該電磁弁を、温水側開閉弁61の開閉動作に連動させることができる。
【0092】
また、静電容量式では、たとえば、温水レバー14に静電容量式のタッチセンサを組み込む。そして、人が温水レバー14に触れて操作するときに、タッチセンサが人の接触を検知して電磁弁が自動的に開くので、当該電磁弁を、温水側開閉弁61の開閉動作に連動させることができる。
そして、上記した各方式では、ロック解除ボタンが押されていないときなどの待機状態において、温水タンク36と飲料水容器21との流通を阻止することができる。したがって、飲料水の加熱および/または温水タンク36の内圧上昇が生じて、温水が給入用パイプ45を逆流しても、その温水を電磁弁により塞き止めることができる。
【0093】
また、供給側開閉弁62に代えて電磁弁が単独で使用される場合において、温水を汲み出すには、たとえば、まず、ロック解除ボタンを押して温水タンク36への給水を開始することによって(開放準備段階)、温水タンク36内の温水に水圧をかけ、次いで、温水レバー14を操作することによって、温水側開閉弁61を開放させる(開放動作段階)。
また、前述の実施形態では、ウォータサーバ1への飲料水の供給形態として、収容室22に出し入れ自在な飲料水容器21が適用されたが、これに代えて、たとえば、収容室22にカートリッジ式の浄水器を設置し、その浄水器内に水道水を供給する形態を適用することもできる。また、収容室22の着脱自在もしくは固定式の容器を設置し、その容器内にフィルタでろ過された水道水を直接供給する形態を適用することもできる。
【0094】
また、前述の実施形態では、冷却装置23の一例として、冷却素子30としてのペルチェ素子と、冷媒が通過する熱交換器31との組み合わせからなるペルチェ水冷式冷却装置を示したが、冷却装置23としては、たとえば、ペルチェ素子と、ペルチェ素子に取り付けられた放熱器(ヒートシンク)との組み合わせからなるペルチェ空冷式冷却装置、たとえば、公知の冷却用コンプレッサなどを適用することもできる。
【0095】
なお、本発明の目的である、低温水側への高温水の逆流を阻止することができる飲料供給装置を提供することについて、下記の実施形態が検討されるが、いずれも目的を達成することは困難である。
第1に、たとえば、供給側配管90内に、ゴムなどの弾性体からなる断面傘状部分を有する逆止弁(ゴム傘弁)を設ける形態が考えられる。この形態では、供給側配管90の上流側からの流れに対しては、逆止弁の傘状部分が反転して供給側配管90が開放される。一方、下流側からの流れに対しては、傘状部分が元に戻って供給側配管90が閉塞される。しかし、このような逆止弁では、温水タンク36から逆流する下流側の圧力の大きさによっては、弁の周囲から温水が漏出るおそれがある。
【0096】
第2に、たとえば、供給側配管90の一部をS字管にして、逆流してくる温水のトラップスペースを設け、さらにそのS字管にリフト式などの逆止弁を設ける形態が考えられる。この形態では、供給側配管90の上流側からの流れに対しては、逆止弁が水圧によって持ち上げられて供給側配管90が開放される。一方、下流側からの流れに対しては、逆止弁が自重によりS字管を塞いで供給側配管90が閉塞される。しかし、供給側配管90をS字管にするには、S字管を設けるスペースを確保する必要があり、装置が大型化するおそれがある。
【0097】
さらに、これら2つの形態には、共通の不具合がある。たとえば、飲料水の汲み出しが行なわれていない待機状態において、第1の形態では、逆止弁を構成する材料の弾性力によって供給側配管90を閉塞しており、第2の形態では、逆止弁の自重によって供給側配管90を閉塞している。しかし、このような閉塞形態では、飲料水容器21に何らかの外力が加わって、供給側配管90の上流側から大きな水圧がかかった場合に、タンク側へ飲料水が流入し、タンク内の水位が意図せずに上昇するおそれがある。
【0098】
これに対し、上記したウォータサーバ1であれば、供給側開閉弁62の弁体69が、待機状態においてスプリング72によって上方向へ付勢されているので、たとえ、飲料水容器21に何らかの外力が加わり、供給側配管90に大きな水圧がかかっても、温水タンク36側への飲料水の流入を良好に抑制することができる。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0099】
1 ウォータサーバ
2 サーバ筐体
14 温水レバー
17 冷水貯留部
18 温水貯留部
19 タップユニット
21 飲料水容器
36 温水タンク
37 加熱装置
38 圧力調整弁
41 温水汲出管
42 供給管
43 冷水汲出管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲料水を収容する容器が設けられ、前記容器内の飲料水を相対的に低い温度の低温水として貯留する低温水貯留部と、
前記容器から供給される飲料水を貯留するタンクと、前記タンクに貯留された飲料水を加熱するための加熱装置とを備え、飲料水を相対的に高い温度の高温水として貯留する高温水貯留部と、
前記タンクに接続され、前記容器内の飲料水を前記タンクに供給するための供給管と、
前記タンクに接続され、前記タンク内の高温水を汲み出すための高温水汲出管と、
前記供給管の流路を開閉するための供給側開閉弁と、
前記高温水汲出管の流路を開閉するための高温側開閉弁とを備え、
前記供給側開閉弁は、前記高温側開閉弁の開閉動作に連動して、前記供給管を開閉することを特徴とする、飲料水供給装置。
【請求項2】
前記供給管から分岐し、前記容器内の低温水を汲み出すための低温水汲出管と、
前記低温水汲出管の流路を開閉するための低温側開閉弁と
を備えることを特徴とする、請求項1に記載の飲料水供給装置。
【請求項3】
前記高温水汲出管および前記供給管の開放時において、前記供給管が、前記高温水汲出管よりも先に開放されることを特徴とする、請求項1または2に記載の飲料水供給装置。
【請求項4】
前記高温側開閉弁を開閉動作させるための高温側開閉機構を備え、
前記高温側開閉機構は、常時は前記高温側開閉弁が動作しないようにロックされており、前記高温水汲出管を開放させるときに、そのロックが解除される開放準備段階と、前記高温側開閉弁を動作させる開放動作段階との2段階で操作され、
前記供給側開閉弁は、前記開放準備段階または前記開放動作段階のいずれかにおける前記高温側開閉機構の動きに連動して、前記供給管を開放することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の飲料水供給装置。
【請求項5】
前記低温水貯留部および前記高温水貯留部が、装置本体に設けられており、
前記供給管、前記高温水汲出管、前記供給側開閉弁および前記高温側開閉弁が、前記装置本体に対して一体的に着脱自在に構成されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の飲料水供給装置。
【請求項6】
前記タンクには、前記タンク内の圧力を調整するための圧力調整弁が設けられていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の飲料水供給装置。
【請求項7】
前記容器が、可撓性容器であり、
前記供給側開閉弁を常時は前記供給管の上流側へ付勢し、前記高温側開閉弁の開閉動作に連動して、その付勢力が解除される付勢手段をさらに備え、
前記供給側開閉弁は、前記付勢手段に付勢されているときに前記供給管の流路を閉塞し、前記付勢手段の付勢力が解除されたときに前記供給管の流路を開放することを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の飲料水供給装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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