説明

飲料等配合殺菌配管系のバランスタンク渇水解消装置及びこれを用いた渇水解消方法

【課題】 複数のストレージタンクの切替に伴って生じることがある,牛乳の配合殺菌配管系におけるバランスタンクの枯渇を解消する。
【解決手段】 配合殺菌配管系Aの後尾側のストレージタンク1とバランスタンク5間の配管に液送用の先行ポンプ3と,エア溜り吸引用の後続ポンプ4による一対のポンプ3,4を直列に配置し,ストレージタンク1の供給切替時に,先行ポンプ3の停止,後続ポンプ4の作動,後続ポンプ4の停止及び先行ポンプ3の作動を行うことによって,切替前のストレージタンク1から配合殺菌配管系Aに入ったエア溜りを後続ポンプ4によって吸引し,切替後のストレージタンク1からの牛乳が液送用の先行ポンプ3に至るようにして,先行ポンプ3のエア噛みによる液送不能とこれに起因するバランスタンク5の枯渇を解消する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,例えば牛乳,清涼飲料,ヨーグルト等の飲料等配合殺菌配管系のバランスタンク渇水解消装置及びこれを用いた渇水解消方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の牛乳,清涼飲料,ヨーグルト等の飲料等配合殺菌配管系は,相互又は順次に供給切替を自在とした複数のストレージタンクからバランスタンクを介して殺菌機に至るように配置したものとされ,例えば牛乳にあっては,該バランスタンクからUHT用のプレート殺菌機を経由した後にサージタンクを介して充填機に至って個別容器に充填を行うものとされており,このとき上記ストレージタンクとバランスタンク間には液送用ポンプ,例えば一般にはヒューガルポンプが配置され,ストレージタンクからの牛乳を吸引してバランスタンクに対して液送し,一時的に該バランスタンクに貯液し,その後に該バランスタンクと殺菌機間の同じく液送用のポンプによって殺菌機に対して液送するものとされ,またストレージタンクの近傍にはそれぞれ自動バルブと切替センサーが設置され,ストレージタンクの飲料等が枯渇して該ストレージタンクが空になってその供給が止ると切替センサーがこれを検知し,その検知信号によって他のストレージタンクからの液送が開始するように構成されている。
【0003】
【特許文献1】平成16年6月15日株式会社光琳発行 伊藤肇躬著 乳製品製造学 258〜259頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように構成された飲料等配合殺菌配管系には,特にストレージタンクの切替時に液送用のポンプに生じることがあるエア噛みに起因して,液送用ポンプが切替後のストレージタンクからの牛乳を吸引することができず,このためバランスタンクに対する牛乳の液送が停止し,該バランスタンクが渇水することがあり,該バランスタンクの渇水が生じると,殺菌機の殺菌温度の低下を招いてデバージョンバルブが作動する結果,殺菌機の再洗浄及び熱湯殺菌作業が必要となるために,生産効率が大きく阻害される。このため,一般にバランスタンクには液面センサーが付されており,作業者が該センサーと連動した渇水警報を受けるか,液面センサーを監視して異常があれば,液送ポンプの前後一方に設置されたブローバルブを開閉操作することによってそのエア抜きを行って該バランスタンクの渇水を防止する体制が採られているのが一般であり,この場合,作業者が該渇水警報や液面センサーのチェックを看過する可能性が残る上,渇水警報又は液面センサーによって作業者が異常を察知しても,更に作業者の通常の作業に加えて,上記ブローバルブの操作やこれによる液送の正常化を確認する必要が生じることによって,作業が煩雑化しており,その改善が求められている。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので,その解決課題とするところは,上記ストレージタンクの切替に伴って生じることがある液送停止とこれによるバランスタンクの渇水を可及的簡易且つ確実に防止し得るようにした飲料等配合殺菌配管系のバランスタンク渇水解消装置及びこれを用いた渇水解消方法を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記液送用のポンプにおけるエア噛みとこれによる飲料等の吸引不能の原因は,上記ストレージタンク切替に時間差が生じるために,切替前のストレージタンクから配管系にエアが入った後に切替後のストレージタンクから飲料等の供給が開始することにより,双方のストレージタンクから供給された飲料等間にエア溜りが発生し,該エア溜りが液送用のポンプに至って該ポンプが空転して飲料等の液送が阻害されることにあり,特にこの傾向は,例えばストレージタンクとバランスタンクを異なるフロアーに配置したときのように,配管系に比較的大きな高低差がある場合に顕著に見られ,これは切替後のストレージタンクの水圧が高低差によって相殺され,該水圧によってエア溜りを押圧移動し得なくなるからと見られる。従ってこのような場合には,該エア溜りが液送用ポンプを通過して切替後のストレージタンクからの飲料等が該液送用のポンプに至るように該エア溜りを配管系の後方に移動すれば,液送用のポンプのエア噛みを解消し,該液送用のポンプによる液送を再開することが可能となることから,本発明は,上記複数のストレージタンクとバランスタンクとの間,即ち液送方向後尾のストレージタンクとバランスタンクとの間に,先行側を液送用とし,後続側をエア溜り吸引用とする一対のポンプを直列に配置し,これら直列一対のポンプを交互作動させるようにして,エア溜りが先行側の液送用のポンプに至ったときに,該液送用のポンプを通過している切替前のストレージタンクの飲料等を,後続のエア溜り吸引用のポンプによって吸引することによって,上記液送用のポンプの前方にあるエア溜りをその後方に移動させ,該液送用ポンプが切替後のストレージタンクからの飲料等を吸引可能とするようにしたものであって,即ち請求項1に記載の発明は,これに用いるバランスタンク渇水解消装置を提供するように,これを,供給切替を自在とした複数のストレージタンクからバランスタンクを介して殺菌機に至る飲料等の配合殺菌配管系の上記ストレージタンクとバランスタンク間に先行ポンプを液送用,後続ポンプをエア溜り吸引用とした直列一対のポンプを配置し,上記ストレージタンクの供給切替時に該直列一対のポンプを交互作動自在としてなることを特徴とする飲料等配合殺菌配管系のバランスタンク渇水解消装置としたものである。
【0007】
請求項2に記載の発明は,上記に加えて,上記直列一対のポンプの交互作動を,ストレージタンクの切替時に自動的になし得るものとするように,これを,上記直列一対のポンプの交互作動を,上記ストレージタンク毎に設置の切替センサーの信号検知によって自動的に行うようにしてなることを特徴とする請求項1に記載の飲料等配合殺菌配管系のバランスタンク渇水解消装置としたものである。
【0008】
請求項3に記載の発明は,上記と同様に,エア溜りが先行側の液送用のポンプに至ったときに,該液送用のポンプを通過している切替前のストレージタンクの飲料等を,後続のエア溜り吸引用のポンプによって吸引することによって,上記液送用のポンプの前方にあるエア溜りをその後方に移動させ,該液送用ポンプが切替後のストレージタンクからの飲料等を吸引可能とするに用いるバランスタンク渇水解消方法を提供するように,これを,供給切替を自在とした複数のストレージタンクからバランスタンクを介して殺菌機に至る飲料等の配合殺菌配管系において,上記ストレージタンクとバランスタンク間に配置した先行ポンプを液送用,後続ポンプをエア溜り吸引用とする直列一対のポンプを用い,該直列一対のポンプを上記ストレージタンクの供給切替時に交互作動することによってバランスタンクの渇水を防止することを特徴とする飲料等配合殺菌配管系のバランスタンク渇水解消方法としたものである。
【0009】
請求項4に記載の発明は,上記に加えて,配管系内のエア溜りの状況に応じて確実にその液送用のポンプの通過と切替後のストレージタンクからの飲料等の吸引をなし得るものとするように,これを,上記直列一対のポンプの交互作動を,先行ポンプの停止,後続ポンプの作動,後続ポンプの停止及び先行ポンプの作動を作動単位として,1又は複数の作動単位によって行うことを特徴とする請求項3に記載の飲料等配合殺菌配管系のバランスタンク渇水解消方法としたものである。
【0010】
本発明はこれらをそれぞれ発明の要旨として上記課題解決の手段としたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明は以上のとおりに構成したから,請求項1に記載の発明は,複数のストレージタンクとバランスタンクとの間に,先行側を液送用とし,後続側をエア溜り吸引用とする一対のポンプを直列に配置し,これら直列一対のポンプを交互作動させるようにして,エア溜りが先行側の液送用のポンプに至ったときに,該液送用のポンプを通過している切替前のストレージタンクの飲料等を,後続のエア溜り吸引用のポンプによって吸引することによって,上記液送用のポンプの前方にあるエア溜りをその後方に移動させ,該液送用ポンプが切替後のストレージタンクからの飲料等を吸引可能として,上記ストレージタンクの切替に伴って生じることがある液送停止とこれによるバランスタンクの渇水を可及的簡易且つ確実に防止し得るようにした飲料等配合殺菌配管系のバランスタンク渇水解消装置を提供することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明は,上記に加えて,上記直列一対のポンプの交互作動を,ストレージタンクの切替時に自動的になし得るものとすることができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は,上記と同様に,エア溜りが先行側の液送用のポンプに至ったときに,該液送用のポンプを通過している切替前のストレージタンクの飲料等を,後続のエア溜り吸引用のポンプによって吸引することによって,上記液送用のポンプの前方にあるエア溜りをその後方に移動させ,該液送用ポンプが切替後のストレージタンクからの飲料等を吸引可能として,上記ストレージタンクの切替に伴って生じることがある液送停止とこれによるバランスタンクの渇水を可及的簡易且つ確実に防止し得るようにした飲料等配合殺菌配管系のバランスタンク渇水解消方法を提供することができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は,上記に加えて,配管系内のエア溜りの状況に応じて確実にその液送用のポンプの通過と切替後のストレージタンクからの飲料等の吸引をなし得るものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下図面の例に従って本発明を更に具体的に説明すれば,Aは,供給切替を自在とした複数のストレージタンク1からバランスタンク5を介して殺菌機に至る飲料等,例えば牛乳の配合殺菌配管系であり,図1は,該配管系Aのストレージタンク1から殺菌機6までの部分を示す。
【0016】
該配合殺菌配管系Aは,その上記ストレージタンク1とバランスタンク5間に先行ポンプ3を液送用,後続ポンプ4をエア溜り吸引用とした直列一対のポンプ3,4を配置し,上記ストレージタンク1の供給切替時に該直列一対のポンプ3,4を交互作動自在としたものとしてあり,これによって該配合殺菌配管系Aのバランスタンク枯渇防止装置を形成してあり,このとき本例にあって,上記直列一対のポンプ3,4の交互作動は,これを,上記ストレージタンク1毎に設置した切替センサー2の信号検知によって自動的に行うようにしたものとしてある。
【0017】
配合殺菌配管系Aは,常法のものを用いてこれを構成してあり,このとき上記直列一対のポンプ3,4は,この種飲料等に一般に用いられるサニタリーポンプ,例えばヒューガルポンプを用いて,好ましくは1〜2m程度以上の距離を離した位置に配置してあり,該ポンプ3,4は,各ストレージタンク1の切替センサー2との間に,該切替センサー2による各ストレージタンク1の空検知の信号,即ち供給停止検知の信号を受けて,その交互作動を制御する図示省略のポンプ作動制御回路によって,その作動を行うようにして,ストレージタンク1の切替時に自動的にその交互作動を行うようにしてある。
【0018】
このとき該直列一対のポンプ3,4の交互作動は,これを,例えば,先行ポンプ3の停止,後続ポンプ4の作動,後続ポンプ4の停止及び先行ポンプ3の作動を作動単位(作動サイクルといってもよい)として,1又は複数の作動単位によって行うようにその制御を行うものとしてあり,このとき上記後続ポンプ4の作動時間は,一般に10秒以下,例えば数秒とすることによって,該後続ポンプ4のエア溜り吸引を行うことが可能となり,必要に応じて上記作動単位を繰り返すようにすればよく,例えば2万リットル/時間程度の配合殺菌配管系Aにして,ストレージタンク1とバランスタンク5の高低差が,例えば10m程度以下の場合には,例えば直列一対のポンプ3,4の作動単位を2乃至3回程度繰り返すことによって上記エア溜りの吸引を確実に行うことができる。
【0019】
即ち上記のとおり,ストレージタンク1の切替による時間差によって配合殺菌配管系Aには切替前のストレージタンク1からのエアが入り,その後に切替後のストレージタンク1から飲料等の供給がなされるために切替前後のストレージタンク1から供給された飲料等の間にはエア溜りが形成されるに至り,該エア溜りが上記一対のうちの先行側,即ち前方の液送用のポンプ3に至るとエア噛みを生じて空転を開始するところ,上記一対のうちの後続側,即ち後方のエア溜り吸引用のポンプ4が作動することによって,エア溜りの後方に位置する切替前の飲料等を吸引することによってエア溜りを後方に移動させて上記先行側の液送用のポンプ3を通過させることによって該液送用のポンプ3による液送が再開される結果,配合殺菌配管系Aにはエア溜りによる液送の不能状態が生じることなく,ストレージタンク1の切替の影響を受けることなく切替前後のストレージタンク1から供給される飲料等の液送を継続的に行うことが可能となり,エア溜りが液送用のポンプ3に至ることによる液送不能とこれに起因するバランスタンク5が枯渇する可能性を完全に解消することができる。
【0020】
即ち上記配管系Aにおいて,上記直列一対のポンプ3,4を交互作動することによって,該バランスタンク5の枯渇を解消する解消方法とすればよく,このとき該直列一対のポンプ3,4の交互作動は,上記先行ポンプ3の停止,後続ポンプ4の作動,後続ポンプ4の停止及び先行ポンプ3の作動を作動単位として,上記ストレージタンク1の切替センサー2からの信号を検知して,1又は複数の作動単位によって自動的に行うようにすればよい。該交互作動は,各ポンプの作動を短時間,例えば10秒以下,特に5〜6秒行うようにすれば上記エア溜りの吸引を確実に行うことができる。
【0021】
図示した例は以上のとおりとしたが,ストレージタンクの供給切替時に,直列一対のポンプの交互作動を手動によって行うようにすることを含めて,本発明の実施に当って,ストレージタンク,バランスタンク,殺菌機,配合殺菌配管系,直列一対のポンプ,その交互作動,必要に応じて用いる供給切替センサー,ポンプ制御回路,作動単位等の各具体的構成,手段,種類,方法,これらの関係,これらに対する付加等は,上記発明の要旨に反しない限り様々の形態のものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】牛乳の配合殺菌配管系の一部を示す配管系統図である。
【符号の説明】
【0023】
A 配合殺菌配管系
1 ストレージタンク
2 供給切替センサー
3 液送用のポンプ
4 エア溜り吸引用のポンプ
5 バランスタンク
6 殺菌機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給切替を自在とした複数のストレージタンクからバランスタンクを介して殺菌機に至る飲料等の配合殺菌配管系の上記ストレージタンクとバランスタンク間に先行ポンプを液送用,後続ポンプをエア溜り吸引用とした直列一対のポンプを配置し,上記ストレージタンクの供給切替時に該直列一対のポンプを交互作動自在としてなることを特徴とする飲料等配合殺菌配管系のバランスタンク渇水解消装置。
【請求項2】
上記直列一対のポンプの交互作動を,上記ストレージタンク毎に設置の切替センサーの信号検知によって自動的に行うようにしてなることを特徴とする請求項1に記載の飲料等配合殺菌配管系のバランスタンク渇水解消装置。
【請求項3】
供給切替を自在とした複数のストレージタンクからバランスタンクを介して殺菌機に至る飲料等の配合殺菌配管系において,上記ストレージタンクとバランスタンク間に配置した先行ポンプを液送用,後続ポンプをエア溜り吸引用とする直列一対のポンプを用い,該直列一対のポンプを上記ストレージタンクの供給切替時に交互作動することによってバランスタンクの渇水を防止することを特徴とする飲料等配合殺菌配管系のバランスタンク渇水解消方法。
【請求項4】
上記直列一対のポンプの交互作動を,先行ポンプの停止,後続ポンプの作動,後続ポンプの停止及び先行ポンプの作動を作動単位として,1又は複数の作動単位によって行うことを特徴とする請求項3に記載の飲料等配合殺菌配管系のバランスタンク渇水解消方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−79511(P2008−79511A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−260595(P2006−260595)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【出願人】(390001270)グリコ乳業株式会社 (29)
【Fターム(参考)】