説明

飲食物の搬送トレー及び注文飲食物搬送装置

【課題】飲食物を載せた皿の速やかな取り出しが可能な飲食物の搬送トレー及び注文飲食物搬送装置を提供することを課題とする。
【解決手段】飲食店の厨房と客席との間に設けた搬送路を、前記搬送路に沿って動く駆動部の動きに従って走行する飲食物の搬送トレーであって、前記搬送トレーの少なくとも一部を光らせる発光手段、及び音声を出力するスピーカの少なくとも何れかを有し、前記搬送トレーの存在を光あるいは音によって報知する報知手段と、前記搬送トレーの走行を検知するセンサと、前記駆動部の動きに従って前記搬送トレーが走行する際に前記センサが出力する信号に基づいて前記報知手段を制御する制御手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲食物の搬送トレー及び注文飲食物搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、飲食店においては、注文を受けて用意した飲食物の皿を搬送トレーに載せて自動的に搬送する装置が使われている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−92500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
注文を受けて用意した飲食物の皿を載せて走行する搬送トレーは、特定の客が注文した飲食物の皿を載せて特定のテーブルへ移動するものであるため、搬送を終えたら速やかに厨房に戻らないと、次に注文を受けて用意した他の飲食物の皿を載せて搬送することができない。よって、店側の視点に立つと、搬送トレーが特定のテーブルへ到着した際は、飲食物の皿を客が搬送トレーから速やかに取り出すことが望まれる。
【0005】
しかし、飲食店で食事をする客は、家族や友人との会話に気を取られて搬送トレーの到着に気が付かない場合がある。そこで、テーブルに設けたタッチパネルやスピーカにより、搬送トレーが到着した旨を画面や音で報知したり、搬送トレーの停車を演出する効果音を再生したりすることにより、搬送トレーの到着を客に認知させることが行なわれている。
【0006】
しかしながら、搬送トレーの到着を報知する場合であっても、客は、搬送トレーの到着後あるいはその直前に搬送トレーの存在を認知することになるため、搬送トレーが到着してから皿の取り出しが開始されるまでの間に多少の時間を要する。そこで、本願は、飲食物を載せた皿の速やかな取り出しが可能な飲食物の搬送トレー及び注文飲食物搬送装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、搬送トレーの存在を光あるいは音によって報知する報知手段を搬送トレーに設けることにした。これにより、客は、搬送トレーが接近していることを報知手段によって速やかに認知することができるため、皿を取り出す準備を早めに行なうことが可能であり、この結果、飲食物を載せた皿の速やかな取り出しが実現可能である。
【0008】
詳細には、本発明は、飲食店の厨房と客席との間に設けた搬送路を、前記搬送路に沿って動く駆動部の動きに従って走行する飲食物の搬送トレーであって、前記搬送トレーの少なくとも一部を光らせる発光手段、及び音声を出力するスピーカの少なくとも何れかを有し、前記搬送トレーの存在を光あるいは音によって報知する報知手段と、前記搬送トレーの走行を検知するセンサと、前記駆動部の動きに従って前記搬送トレーが走行する際に前記センサが出力する信号に基づいて前記報知手段を制御する制御手段と、を備える。
【0009】
ここで、報知手段を制御する制御手段が、駆動部を制御する装置類からの信号に依らず、搬送トレーに設けたセンサが出力する信号に依ることにしているのは、設備の簡略化や
既存設備の容易な改修を図るためである。すなわち、搬送トレーに設けた報知手段を制御するための信号を、駆動部を制御する装置類からの信号に依ることとする場合、搬送路上を走行する搬送トレーに対して信号を送るための各種通信手段が必要となり、設備が複雑になる。しかしながら、搬送トレーの走行を検知するセンサで読み取らせることにすれば、各種通信手段が不要であり、また、既存設備の改修も搬送トレーの交換で済むため、設備の簡略化や既存設備の容易な改修を図ることができる。なお、発光手段は、搬送トレーの内部に設置して搬送トレーの少なくとも一部を光らせるようにしてもよいし、外装表面の透明部分より直接外装表面の外へ光を放つことで搬送トレーの少なくとも一部を光らせるようにしてもよいし、或いは、外装表面に設置して搬送トレーの少なくとも一部を光らせるようにしてもよい。また、搬送トレーの走行を検知するセンサとしては、例えば、搬送トレーの走行に応じてパルス波を出力する光学式センサを適用することができる。
【0010】
ここで、前記制御手段は、前記搬送路に設けられた接触部へのスイッチの接触状態に基づいて前記搬送トレーの位置を特定し、前記センサが出力する信号によって検知した前記搬送トレーの走行状態と前記搬送トレーの位置とに基づく前記報知手段の制御を行うものであってもよいし、或いは、前記センサは、前記搬送路に沿って設けられ、位置に応じてパターンが変えられている縞状の模様を読み取って前記搬送トレーの走行を検知する光学式センサであり、前記制御手段は、前記センサが出力する信号に基づいて前記搬送トレーの位置を特定し、前記センサが出力する信号によって検知した前記搬送トレーの走行状態と前記搬送トレーの位置とに基づく前記報知手段の制御を行うものであってもよい。上記搬送トレーがこのように構成されていれば、搬送トレーの位置に応じた発光手段による発光やスピーカの音声出力を実現できるため、例えば、搬送トレーが厨房に止まっている際に報知手段を停止させるといったきめ細かい制御が実現可能である。
【0011】
また、前記制御手段は、前記センサの出力、前記搬送トレーに設けた加速度センサの出力の少なくとも何れかに基づいて特定した前記搬送トレーの進行方向に応じて、前記報知手段の制御を行うものであってもよい。上記搬送トレーがこのように構成されていれば、搬送トレーの進行方向に応じた発光手段による発光やスピーカの音声出力を実現できるため、例えば、搬送トレーが客席に向かっている時の報知手段の動作パターンと、搬送トレーが厨房に向かっている時の報知手段の動作パターンとを変えて、きめ細かい制御が実現可能である。
【0012】
また、本発明は、飲食店の厨房と客席との間に設けた搬送路を搬送トレーが走行する注文飲食物搬送装置であって、前記搬送路のうち前記客席のテーブル側に設けた台と、前記厨房で用意された飲食物の皿を載せた前記搬送トレーが前記台の横に停車すると、前記搬送路を挟んで前記台と反対側から、前記搬送トレーに載っている前記飲食物の皿を前記台の側へ押し出し、前記飲食物の皿を前記台の上に載せる押し出し手段と、を備えるものであってもよい。
【0013】
客席のテーブル側に台を設けておき、飲食物の皿を載せた搬送トレーが台の横に停車した場合に皿をこの台に自動的に載るようにすれば、客による搬送トレーが到着したことの認知が遅くなっても、飲食物を載せた皿が搬送トレーから自動的に取り出されるので、飲食物を載せた皿の速やかな取り出しが実現される。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る飲食物の搬送トレー及び注文飲食物搬送装置であれば、飲食物を載せた皿の速やかな取り出しが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第一実施形態の注文飲食物搬送装置を示した図である。
【図2】第一実施形態の注文飲食物搬送装置の構造図である。
【図3】第一実施形態の搬送トレーの内部構造を示した斜視図である。
【図4】第一実施形態のトレー台車の上面図である。
【図5】第一実施形態の制御装置が実行する処理フロー図である。
【図6】第二実施形態のトレー台車の上面図である。
【図7】パルス波の例を示した図である。
【図8A】第二実施形態の制御装置が実行する処理フロー図である。
【図8B】位置検出スイッチと接触部との接触状態を示した図である。
【図9】第三実施形態の注文飲食物搬送装置を示した図である。
【図10】押し出し装置によって実現される動作を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本願発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態は、本願発明の一態様であり、本願発明の技術的範囲を限定するものではない。下記に示す各実施形態や変形例は、例えば、寿司や飲料物、そばやうどんといった丼物、から揚げや天ぷらといった各種の飲食物を提供する飲食店に好適である。
【0017】
<第一実施形態のシステム構成>
図1は、第一実施形態の注文飲食物搬送装置10を示した図である。注文飲食物搬送装置10は、図1に示すように、客が飲食するテーブル1に隣接して配置された循環型飲食物搬送装置2のチェーンコンベア3の上に配置されており、湯呑みや調味料、お品書き等を載せる棚板5を支える支柱4に支持されている。各支柱4の間には、客や店員の視線を遮る仕切板6が取り付けられている。なお、図1では、注文飲食物搬送装置10が支柱4の手前側にのみ図示されているが、注文飲食物搬送装置10は支柱4の手前側と奥側の両方に設けられていてもよい。
【0018】
注文飲食物搬送装置10は、客の注文を受けて用意された飲食物を、厨房から各テーブル1へ搬送する装置であり、各テーブル1に沿って設けた搬送路13や、搬送路13上を走行可能な搬送トレー20を備える。注文飲食物搬送装置10は、棚板5に固定されたタッチパネル11を介して注文を受け付け、厨房で用意された飲食物を、注文を受け付けたタッチパネル11が設置されているテーブル1の位置まで搬送トレー20で搬送し、押しボタンスイッチ12の表示灯を点滅させる。注文飲食物搬送装置10は、押しボタンスイッチ12が押されると、テーブル1の位置に停止している搬送トレー20を走行させて厨房へ戻す。また、注文飲食物搬送装置10は、タッチパネル11による注文の受付等に応じてスピーカ19から各種の音声案内を行なう。なお、図1では、搬送路13が直線状に描かれているが、本発明に係る飲食物の搬送トレーは、このような直線状の搬送路13を備えた注文飲食物搬送装置10のみならず、例えば、カーブを有する搬送路を備えた注文飲食物搬送装置に対しても適用可能である。
【0019】
図2は、注文飲食物搬送装置10の構造図である。注文飲食物搬送装置10は、図2に示すように、搬送トレー20のマグネット22Aが、ボルト15によってコンベアベルト16(本発明でいう駆動部の一態様である)に固定されている締結部材14のマグネット14Aに磁力で引きつけられて密着しており、図示しないモータが回転してコンベアベルト16が動くと、搬送トレー20に設けられている走行ローラ21F及び締結部材14に設けられている走行ローラ21Rが転がりながら、搬送トレー20がコンベアベルト16の動きに従って走行する。搬送トレー20に結合されているコンベアベルト16は、搬送路13に沿って延在するケース部材17で覆われており、客に見えないようになっている。なお、仕切板6やケース部材17には、搬送トレー20の走行を演出する風景画が描かれていてもよい。
【0020】
搬送トレー20は、樹脂製のトレー台車22や、トレー台車22の上側を覆うように載置されるトレーカバー23を備えている。図3は、搬送トレー20の内部構造を示した斜視図である。搬送トレー20のトレー台車22は、図3に示すように、略長方形状に形成されている。トレー台車22には、角を構成する四隅のうちテーブル1側(客から見て正面側)の二隅に、車輪の周面を下側へ向けた既述の走行ローラ(本発明でいう車輪に相当する)21Fがそれぞれ設けられており、また、コンベアベルト16側(客席から見て背面側)の中央に既述のマグネット22Aが設けられている。これにより、搬送トレー20は、コンベアベルト16に固定された締結部材14の途中に設けられている既述の走行ローラ21Rと、トレー台車22に設けられている走行ローラ21Fとに支持されて姿勢が保たれることになる。コンベアベルト16の駆動や、タッチパネル11を介した飲食物の注文受付に関わる制御については、既に公知になっているものと同様なので、その詳細な説明は省略する。
【0021】
トレーカバー23は、特急列車を模擬した流線型の列車の形をしており、飲食物を載せた皿を載置可能な円形で凹状の載置部24を4つ備えている。なお、トレーカバー23は、列車の形に限定されるものでなく、店の客を楽しませる娯楽性のあるものであれば如何なる形であってもよい。また、トレーカバー23は、載置部24を4つ備えるものに限定されるものでなく、例えば、載置部24を3つ以下或いは5つ以上備えるものであってもよい。また、トレーカバー23は、皿の載置状態を検知する検知手段等を備えるものであってもよい。皿の載置状態を検知する検知手段としては、例えば、載置部24の底部に設けた太陽電池の出力電圧に基づいて皿の有無を検知するものを挙げることができる。
【0022】
図4は、トレー台車22の上面図である。トレー台車22には、制御装置25、発光体26を多数設けた基板26A、スピーカ27、回転センサ28、バッテリ29A、DC(Direct Current)ジャック29Bが取り付けられている。制御装置25は、CPU(Central Processing Unit)やメモリ、入出力インターフェースを内蔵しており、バッテリ2
9Aから電力の供給を受けて、回転センサ28(本発明でいうセンサの一態様である)から送られる信号に基づいて発光体26を発光させたり、スピーカ27から音声を出力させたりする。バッテリ29Aは、DCジャック29Bにケーブルを繋いで充電可能であり、例えば、店の営業時間外等に充電を行なって使用する。なお、トレー台車22は、発光体26とスピーカ27の何れか一方が省略されていてもよい。また、基板26Aは、トレー台車22の進行方向に対し前方側、側方側、後方側に合計4つ取り付けられているが、取り付け位置や個数はこれらに限定されるものでなく、適宜変更してもよい。また、バッテリ29Aは、例えば、充電式に限らず、例えば、交換式の乾電池であってもよい。
【0023】
発光体26は、トレーカバー23のテーブル側および搬送トレー20の進行方向に対し前方側や後方側に多数設けた各孔29の位置に対応するように多数設置されている。各発光体26は、制御装置25からの信号を受けて点灯あるいは点滅する。発光体26は、消費電力の小さいLED(Light Emitting Diode)であることが好ましいが、フィラメントが発熱して発光する白熱電球等であってもよい。なお、発光体26は、必ずしも客席側から直接見える位置に設置されている必要は無く、例えば、トレーカバー23のコンベアベルト16側(すなわち、テーブル1側から見て裏側)に設置してもよい。この場合、発光体26の光は、仕切板6においてテーブル1側等へ反射し、搬送トレー20の走行を演出することになる。また、発光体26は、孔29を通過した光でトレーカバー23を光らせる態様に限定されるものでなく、例えば、孔29の部位を透光性の部材で構成し、この部材を通過した光がトレーカバー23を光らせるようにしてもよいし、発光体26をトレーカバー23の表面に設置してトレーカバー23を光らせるようにしてもよい。透光性の部材とは、例えば、透明の部材や半透明の部材、赤や青といった各種の色を出すように着色された透光性の部材を挙げることができる。
【0024】
回転センサ28は、投光部と受光部とを有するフォトマイクロセンサ28Pと、溝(スリット)を設けた円盤状のフォトセンサ用カム28Cとを備えている。回転センサ28は、フォトマイクロセンサ28Pの投光部が照射した光が、2つある走行ローラ21Fのうち何れか一方の走行ローラ21Fの回転軸に直結されたフォトセンサ用カム28Cの溝を通過したか否かを受光部で捉えることにより、走行ローラ21Fの回転数に応じたパルス波を出力する。なお、回転センサ28は、このような光学式のセンサに限るものでなく、例えば、磁極の回転を検知するセンサや、その他の各種回転センサを用いることが可能である。
【0025】
なお、パルス波は、フォトセンサ用カム28Cの溝をフォトマイクロセンサ28Pに検知させて生成したもののみならず、例えば、搬送路13に沿って設けた縞状の模様を各種の光学式センサに検知させて生成したものであってもよい。
【0026】
制御装置25は、メモリに格納されているコンピュータプログラムをCPUが実行することにより、以下のような処理を実行する。
【0027】
<第一実施形態において実行される処理フロー>
図5は、上記制御装置25が実行する処理フローを示した図である。制御装置25は、回転センサ28の出力を監視する(S101)。制御装置25は、回転センサ28がパルス波を出力していることを検知すると、搬送トレー20が走行中の場合に実行する処理、すなわち、メモリに予め格納された既定のパターンに従って各発光体26を発光させ、メモリに予め格納された既定の音声をスピーカ27から出力させる処理を開始する(S102)。
【0028】
ここで、搬送トレー20が走行中の場合に、各発光体26が発光するパターンや、スピーカ27から出力される音声は、走行中の搬送トレー20の接近を演出して客に搬送トレー20の接近を報知するものであり、例えば、搬送トレー20のスピード感を演出する発光パターンや、列車の走行音や警笛、客がリクエストした音楽や店のテーマ曲、流行の曲等の各種音声を挙げることができる。
【0029】
制御装置25は、回転センサ28がパルス波を出力して上記S102の処理を実行した後、回転センサ28の出力を再び監視する(S103)。ここで、制御装置25は、回転センサ28がパルス波を出力していないことを検知すると、搬送トレー20が停車中の場合に実行する処理を開始する(S104)。
【0030】
ここで、搬送トレー20が停車中の場合に実行する処理は、例えば、全ての発光体26を消灯し、スピーカ27の音声も停止する処理であってもよいし、各発光体26は既定のパターンに従って発光させたままの状態で、スピーカ27の音声のみを停止する処理であってもよいし、各発光体26を上記のパターンと異なる既定のパターンに従って発光させ、スピーカ27から上記の音声と異なる既定の音声を出力させるものであってもよい。搬送トレー20が停車中の場合に、各発光体26が発光するパターンや、スピーカ27から出力される音声は、停車中の搬送トレー20を演出するものであり、例えば、搬送トレー20が停車していることを演出する発光パターンや、列車の停止音、ドアの開閉音、列車が停止したことを知らせる駅員ガイダンス等の音声を挙げることができる。
【0031】
制御装置25がこのような処理フローを実行することにより、注文飲食物搬送装置10では、以下のような動作が実現される。
【0032】
例えば、テーブル1に座っている客がタッチパネル11を介して特定の飲食物の注文を行なうことにより、注文された飲食物が厨房で用意され、この飲食物を載せた皿Dが搬送
トレー20の載置部24に載ると、搬送トレー20がコンベアベルト16の動きに従って走行を開始する。搬送トレー20が走行を開始すると、回転センサ28がパルス波を出力するので、制御装置25が上記S102の処理を実行することにより、搬送トレー20が光や音を使った走行状態の演出を開始する。搬送トレー20が光や音を出しながら接近してくることにより、この搬送トレー20が走行する搬送路13沿いにある各テーブル1の客は、搬送トレー20が走行しながら通過していくのを見て楽しむことができる。また、飲食物を注文した客は、注文した飲食物を載せた搬送トレー20が接近していることを早期に認知することができる。
【0033】
飲食物を注文した客のテーブル1に搬送トレー20が到着するとコンベアベルト16が停止し、搬送トレー20が停車する。搬送トレー20が停車すると、回転センサ28から出力されていたパルス波が停止するので、制御装置25が上記S104の処理を実行することにより、光や音を使った走行状態の演出が停止する。飲食物を注文した客は、搬送トレー20が光や音を出しながら接近してくることにより、注文した飲食物を載せた搬送トレー20が接近していることを早期に認知しているため、搬送トレー20に載っている飲食物の皿Dを速やかに取り出すことができる。
【0034】
なお、上記第一実施形態の搬送トレー20は、回転センサ28から出力されるパルス波の波長の増減に応じて光や音のパターンを変化させてもよい。
【0035】
<第二実施形態のシステム構成>
以下、本願発明の第二実施形態について説明する。第一実施形態の搬送トレー20は、停車位置に関係なく、搬送トレー20が走行中の場合と停車中の場合のそれぞれに既定されているパターンに従った動作を行っていた。しかしながら、搬送トレー20が厨房に停車している時に、発光体26が発光したりスピーカ27から音声が出力されたりすると、厨房が騒々しくなり、また、制御装置25のバッテリが無駄に消耗する。そこで、本第二実施形態では、搬送トレーの停車位置に応じて制御装置の動作を変えるものとし、具体的には、厨房で停車した場合には光や音を止めながらも、搬送トレーがテーブル1の横で停車した場合には光や音が出る態様にする。
【0036】
図6は、本第二実施形態のトレー台車32の上面図である。トレー台車32は、第一実施形態のトレー台車22と基本的に同様であるため、以下、相違点のみ説明する。本第二実施形態のトレー台車32は、2つの回転センサ38A,38Bが備わっている。回転センサ38A,38Bは、第一実施形態の回転センサ28と同様、フォトマイクロセンサ38Pとフォトセンサ用カム38Cとをそれぞれ備えている。制御装置35は、搬送トレー30が走行しているか否かを各回転センサ38A,38Bから送られる信号に基づいて検知するのみならず、各回転センサ38A,38Bから送られる各パルス波を解析することにより、搬送トレーの走行方向を検知する。各回転センサ38A,38Bのフォトセンサ用カム38Cの溝(スリット)は、例えば、何れか一方の回転センサによって検出されるパルス波が、何れか他方の回転センサによって検出されるパルス波の波長よりも4分の1波長程度ずれて検出されるように、溝の角度を4分の1回転分だけ角度をずらした状態で走行ローラ31Fの回転軸に固定されている。
【0037】
各回転センサ38A,38Bのフォトセンサ用カム38Cをこのようにずらして走行ローラ31Fの回転軸に固定することにより検出されるパルス波の例を図7に示す。各回転センサ38A,38Bのフォトセンサ用カム38Cがこのように設置されており、搬送トレーを何れか一方の方向へ走行させた場合に検出される各パルス波が図7(A)のように示されたものとする。図7(A)の例では、回転センサ38Aのパルス波が立ち上がってから4分の1波長後に回転センサ38Bのパルス波が立ち上がっている。
【0038】
各回転センサ38A,38Bのフォトセンサ用カム38Cがこのように設けられている搬送トレーを反対方向へ走行させた場合に検出される各パルス波は、図7(B)のように示されることになる。すなわち、搬送トレーを反対方向へ走行させた場合、回転センサ38Bのパルス波が立ち上がってから4分の1波長後に回転センサ38Aのパルス波が立ち上がることになる。
【0039】
本第二実施形態の搬送トレーに搭載される制御装置35は、このように、各回転センサ38A,38Bから送られる各パルス波が立ち上がるタイミングを解析することにより、搬送トレーの走行方向を特定する。なお、搬送トレーの走行方向は、このようなフォトマイクロセンサのパルス波の位相を解析するもののみならず、例えば、磁極の回転を検知するセンサの出力や、その他、回転方向を判別可能な各種の回転センサの出力に基づいて特定してもよい。
【0040】
<第二実施形態において実行される処理フロー>
図8Aは、上記制御装置35が実行する処理フローを示した図である。制御装置35は、各回転センサ38A,38Bの出力を監視する(S201)。制御装置35は、各回転センサ38A,38Bがパルス波を出力していることを検知すると、各回転センサ38A,38Bから送られる各パルス波が立ち上がるタイミングを解析することにより、搬送トレーの走行方向を特定する(S202)。制御装置35は、搬送トレーの走行方向を特定した後、既述したS102と同様の処理を実行する(S203)。これにより、発光体36やスピーカ37による走行中の搬送トレーの演出が行なわれる。なお、S203の処理では、発光体36やスピーカ37の演出が搬送トレーの走行方向に関わらず同じであってもよいし、あるいは、搬送トレーの先頭側に前照灯(白色灯)が点灯し、最後尾側に後尾灯(赤色灯)が点灯するなど、発光体36やスピーカ37による演出が搬送トレーの走行方向に応じて変化してもよい。
【0041】
制御装置35は、上記S203の処理を実行した後、回転センサ38A,38Bの出力を再び監視する(S204)。ここで、制御装置35は、各回転センサ38A,38Bがパルス波を出力していないことを検知すると、搬送トレーが厨房に停車したか否かを判定する(S205)。搬送トレーは、1つの注文を受けると、厨房と客席とを一往復するように走行するものであるため、上記S202の処理で搬送トレーの走行方向が厨房側である旨を特定していた場合、制御装置35は、本ステップS205の処理で搬送トレーが厨房に停車していると判定する。また、上記S202の処理で搬送トレーの走行方向が客席側である旨を特定していた場合、制御装置35は、本ステップS205の処理で搬送トレーが客席に停車していると判定する。なお、制御装置35は、搬送トレーの何れの方向が厨房側であるか否かについて、制御装置35に設けた図示しないスイッチによって切り替え可能なように設定してもよいし、厨房と客席との位置関係に応じて予め用意した2種類の制御装置を使い分けるようにしてもよい。
【0042】
制御装置35は、上記S205の処理において、搬送トレーの停車位置が厨房でないと判定すると、既述したS104と同様の処理を実行する(S206)。一方、制御装置35は、上記S205の処理において、搬送トレーの停車位置が厨房であると判定すると、発光体36を消灯し、スピーカ37の音声を切る。
【0043】
制御装置35がこのような処理フローを実行することにより、搬送トレーが走行する搬送路13沿いにある各テーブル1の客は、第一実施形態と同様、搬送トレーが走行しながら通過していくのを見て楽しむことができる。また、飲食物を注文した客は、注文した飲食物を載せた搬送トレーが接近していることを早期に認知し、皿を速やかに取り出すことができる。更に、搬送トレーが厨房に停車している時に騒々しくなく、また、制御装置35のバッテリが無駄に消耗することも無くなる。
【0044】
なお、搬送トレーがテーブルの横で停車した場合には光や音を出しながらも、厨房で停車した場合には光や音を止める態様を実現するためのハードウェア構成としては、このような2つの回転センサを用いたものに限定されるものでなく、例えば、図8Bに示すように、制御装置に繋げた位置検出スイッチ53が、搬送路13に設けられた接触部54に接触したか否かによって搬送トレー30の停車位置を特定してもよいし、搬送路13に沿って設けた縞状の模様を光学式センサに検出させる場合には、厨房の部分の模様のパターンを客席の部分の模様のパターンと変えておき、光学式センサのパルス波のパターンの変化に基づいて搬送トレーの停車位置を特定してもよい。
【0045】
また、搬送トレーの進行方向は、2つの回転センサを用いて特定する態様に限定されるものでなく、例えば、搬送トレーに設けた加速度センサの出力を用いて特定するものであってもよい。
【0046】
<第三実施形態のシステム構成>
図9は、第三実施形態の注文飲食物搬送装置100を示した図である。本第三実施形態の注文飲食物搬送装置100は、図9に示すように、テーブル1に沿って設けた搬送路113や、搬送路113上を走行可能な搬送トレー40の他、搬送トレー40に載っている皿Dをテーブル1側へ押し出してスライドさせ、搬送路113のテーブル1側に設けた台(以下、プラットホームという)50に皿Dを載せる押し出し装置51を備える。搬送トレー40や搬送路113、その他の構成については、上述した第一実施形態や第二実施形態と同様である。
【0047】
プラットホーム50は、列車が停車する駅のホームを模擬した台であり、搬送路113上に停車した搬送トレー40に載っている皿Dが載る。プラットホーム50は、搬送路113のテーブル1側に設けられているため、テーブル1の客はプラットホーム50に載っている皿Dを容易に取ることができる。プラットホーム50は、客が駅のホームを連想できるよう、アスファルトやブロック、コンクリートのような色彩が施されていてもよいし、プラットホーム50の横に停車した搬送トレー40の発光体の光が客に見えるよう、透明の素材で構成されていてもよい。また、プラットホーム50の上面には、客が駅のホームを連想できるよう、駅のホームを模擬した白線や黄色い線が刻印されていてもよい。
【0048】
押し出し装置51は、搬送トレー40に載っている皿Dに接触して皿Dを押し出す押し出し部材を動かして皿Dを押し出す。押し出し装置51は、センサ、リミットスイッチ、その他の機械式や電子式の各種検出手段、或いは、注文飲食物搬送装置100を制御する制御装置等から送られる信号によって、搬送トレー40がプラットホーム50に停車したことを検知すると作動し、押し出し部材をテーブル1側へ動かした後、搬送路113側へ戻すという動作を実行する。
【0049】
なお、本第三実施形態の注文飲食物搬送装置100では、皿Dを載せる搬送トレー40の載置部が第一実施形態のように凹状に窪んでいるのではなく、皿Dがスライド容易なように、平面あるいはすり鉢状に形成されていることが好ましい。
【0050】
押し出し装置51によって実現される動作を図10に示す。例えば、テーブル1に座っている客がタッチパネル111を介して特定の飲食物を注文すると、この飲食物を載せた皿Dを搬送する搬送トレー40が厨房を発車し、プラットホーム50に停車する(図10(A))。搬送トレー40がプラットホーム50に停車すると、押し出し装置51が皿Dをテーブル1側へ動かす(図10(B))。これにより、搬送トレー40に載っていた皿Dがプラットホーム50に載る。押し出し装置51は、皿Dをテーブル1側へ動かした後、押し出し部材52を搬送路113側へ戻す(図10(C))。
【0051】
なお、注文飲食物搬送装置100は、押し出し部材52が搬送路113側へ戻った後、搬送トレー40を適当なタイミングで発車させて厨房へ戻す。注文飲食物搬送装置100が搬送トレー40を発車させるタイミングは、押し出し装置51から通知される動作完了の信号を検知した時であってもよいし、搬送トレー40がプラットホーム50に停車してから規定の時間が経過した時であってもよいし、押し出し部材52が搬送路113側へ戻ったことを検知する各種検出手段から通知される検出信号を検知した時であってもよい。
【0052】
注文飲食物搬送装置100がこのように構成されていれば、飲食物を注文した客は、注文した飲食物を載せた搬送トレー40の皿Dが搬送トレー40を自動的に降車し、プラットホーム50に載る様子を見て楽しむことができる。また、搬送トレー40の皿Dがプラットホーム50に自動的に載るため、客が搬送トレー40の到着に気付かない場合でも、搬送トレー40を速やかに厨房へ戻すことができる。
【0053】
なお、注文飲食物搬送装置100は、搬送トレー40がプラットホーム50に停車すると、タッチパネル111に駅名やその他、列車が駅に到着したことを演出する画面を表示させるようにしてもよい。タッチパネル111に表示される駅名は、テーブル1毎に予め規定されている駅名であってもよいし、空席待ちのため入店時に店舗の受付端末に入力した客の名前の駅名であってもよい。また、注文飲食物搬送装置100は、搬送トレー40がプラットホーム50に停車すると、列車が駅に到着したことを演出する音声をスピーカ119から出力させるようにしてもよい。タッチパネル111に駅名やその他の画面が表示されることにより、テーブル1の客は、プラットホーム50に停車する搬送トレー40の動きを見て更に楽しむことができる。
【符号の説明】
【0054】
1・・テーブル;2・・循環型飲食物搬送装置;3・・チェーンコンベア;4・・支柱;5・・棚板;6・・仕切板;10,100・・注文飲食物搬送装置;11,111・・タッチパネル;12・・押しボタンスイッチ;13,113・・搬送路;14・・締結部材;15・・ボルト;16・・コンベアベルト;17・・ケース部材;19,119・・スピーカ;20・・搬送トレー;21F,21R,31F・・走行ローラ;22,32・・トレー台車;23・・トレーカバー;24・・載置部;25,35・・制御装置;26,36・・発光体;26A・・基板;27,37・・スピーカ;28,38A,38B・・回転センサ;28P,38P・・フォトマイクロセンサ;28C,38C・・フォトセンサ用カム;29・・孔;29A・・バッテリ;29B・・DCジャック;50・・プラットホーム;51・・押し出し装置;52・・押し出し部材;53・・位置検出スイッチ;54・・接触部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲食店の厨房と客席との間に設けた搬送路を、前記搬送路に沿って動く駆動部の動きに従って走行する飲食物の搬送トレーであって、
前記搬送トレーの少なくとも一部を光らせる発光手段、及び音声を出力するスピーカの少なくとも何れかを有し、前記搬送トレーの存在を光あるいは音によって報知する報知手段と、
前記搬送トレーの走行を検知するセンサと、
前記駆動部の動きに従って前記搬送トレーが走行する際に前記センサが出力する信号に基づいて前記報知手段を制御する制御手段と、を備える、
飲食物の搬送トレー。
【請求項2】
前記センサは、前記搬送トレーの走行に応じてパルス波を出力する光学式センサである、
請求項1に記載の飲食物の搬送トレー。
【請求項3】
前記制御手段は、前記搬送路に設けられた接触部へのスイッチの接触状態に基づいて前記搬送トレーの位置を特定し、前記センサが出力する信号によって検知した前記搬送トレーの走行状態と前記搬送トレーの位置とに基づく前記報知手段の制御を行う、
請求項1または2に記載の飲食物の搬送トレー。
【請求項4】
前記センサは、前記搬送路に沿って設けられ、位置に応じてパターンが変えられている縞状の模様を読み取って前記搬送トレーの走行を検知する光学式センサであり、
前記制御手段は、前記センサが出力する信号に基づいて前記搬送トレーの位置を特定し、前記センサが出力する信号によって検知した前記搬送トレーの走行状態と前記搬送トレーの位置とに基づく前記報知手段の制御を行う、
請求項1から3の何れか一項に記載の飲食物の搬送トレー。
【請求項5】
前記制御手段は、前記センサの出力、前記搬送トレーに設けた加速度センサの出力の少なくとも何れかに基づいて特定した前記搬送トレーの進行方向に応じて、前記報知手段の制御を行う、
請求項1から4の何れか一項に記載の飲食物の搬送トレー。
【請求項6】
飲食店の厨房と客席との間に設けた搬送路を搬送トレーが走行する注文飲食物搬送装置であって、
前記搬送路のうち前記客席のテーブル側に設けた台と、
前記厨房で用意された飲食物の皿を載せた前記搬送トレーが前記台の横に停車すると、前記搬送路を挟んで前記台と反対側から、前記搬送トレーに載っている前記飲食物の皿を前記台の側へ押し出し、前記飲食物の皿を前記台の上に載せる押し出し手段と、を備える、
注文飲食物搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−66603(P2013−66603A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207579(P2011−207579)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(390010319)株式会社石野製作所 (85)
【Fターム(参考)】