説明

養殖帆立貝の吊り具

【課題】帆立貝の耳孔径が小さい場合でも、この耳孔径に近い外径の棒軸を、これに折れ曲がりなどを発生させることなく、容易かつスムースにその耳孔内に挿通可能にする。
【解決手段】棒軸11が外周面に軸方向に沿って複数本の長溝16を有し、抜け止め片12が棒軸11の軸方向の片側半分を残して切り起こされた構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帆立貝の養殖に使用される養殖帆立貝の吊り具に係り、棒軸の先端部付近に帆立貝支持用の抜け止め片が一体に設けられた養殖帆立貝の吊り具に関する。
【背景技術】
【0002】
養殖帆立貝(以下、帆立貝という)の養殖方法として耳吊養殖が行なわれており、例えば、海中に張ったのりロープに予め帆立貝を取り付けた編みロープをつるす方法が知られている。この耳吊養殖方法では、帆立貝の耳部に1.2〜1.8mm程度の耳孔を開け、この耳孔にテグスと呼ばれるポリエステル、ナイロン等の合成樹脂製の紐を通して結び、この紐を海中に張ったロープの網目に差込んで結び付け、帆立貝が前記紐から抜け落ちないように海中に吊り下げて、養殖を行っている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、この方法は長尺(例えば、7〜8m)の一本のロープに100〜120本もの前記紐を一本一本手作業により結び、更に各紐に帆立貝を一個づつ手作業により取り付けなければならないため、作業に多くの人員と多大な時間を要するという難点がある。
【0004】
一方、かかる帆立貝の吊り作業を簡素化するために係止ピンと呼ばれる帆立貝の吊り具が実用されている。この帆立貝の吊り具は、細い棒状の軸部(棒軸)の両端部に帆立貝の耳穴に係止するための釣り針の返しのように起立した係止部を設けたものであり、前記軸部をロープに直交するようにロープの撚り目に貫通保持させることで、その軸部の多数本をロープの長さ方向に所定ピッチで固定される。そして、ロープに固定された各係止ピンの両端部の係止部を、帆立貝の耳片部に設けた支持孔(耳孔)に挿入して支持させ、前記同様にロープを海中に投入し、帆立貝を海中に臨ませて養殖を行っている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
ところで、帆立貝の耳片部に耳孔を開ける際に、この耳孔およびその周辺に、耳孔の穿設作業により生じた切削粉や帆立貝の表面に付着していたゴミなどが付着して、耳孔の実質開口面積が狭くなる場合がある。このような場合には、係止ピンの棒軸を耳孔に対しスムースに挿通することが困難または不可能となり、帆立貝の吊り下げの作業効率が悪くなるという問題があった。
【0006】
このような帆立貝の吊り下げの作業性を良くするために、前記係止ピンの棒軸の径より数パーセント大き目の耳穴を帆立貝の耳片に穿設することも行われている。しかし、帆立貝の二枚重ねの部分には外套膜が介在されているため、帆立貝の成長状態によっては、穿設される耳孔の径を大きくすることによって、この外套膜を大きく傷付け、帆立貝の生育に悪影響を与えるおそれがある。特に帆立貝が未熟である場合には、貝殻自体の厚みが薄く柔らかいため、その影響は大きい。このため、耳孔はできるだけ小さくすることが好ましい。さらに、前記棒軸の外径を耳孔の内径サイズに近づけることができれば、棒軸外周面と耳孔内周面間の相互の摩擦を減らして棒軸の耐久性を向上できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平6-75156号公報
【特許文献2】特開2002-171862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前述のように帆立貝の成長に悪影響を与えないようにし、また棒軸の耐久性を向上させるために、耳孔を狭く(内径を小さく)した場合に、係止ピンの耳孔への挿入時に耳孔内で棒軸の挿入方向が僅かでもずれたりすると、挿入がスムースにいかず、棒軸の先端部付近が耳孔内で屈曲してしまうことがある。このような場合、作業者は、棒軸を耳孔から一旦抜き取り、その屈曲を直した上で再挿入しなければならず、帆立貝の吊り下げのための作業効率を極めて悪くするという問題があった。
【0009】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、帆立貝の耳孔径が小さい場合でも、この耳孔径に近い外径の棒軸をその耳孔内ヘ容易かつスムースに、しかも折れ曲がることがないように挿通させることのできる養殖帆立貝の吊り具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述した目的を達成するために、本発明に係る養殖帆立貝の吊り具は、養殖帆立貝の耳片に穿設された耳孔の内径と同径又は僅かに小径に形成された棒軸の両先端部近傍に、前記棒軸の先端部側に向けて切込んで切込み片を引起こした形状の抜け止め片が、それぞれ一体に突設された養殖帆立貝の吊り具であって、
前記棒軸は、外周面に軸方向に沿って複数本の突条(リブ)が形成されるとともに、
前記切込み片の断面形状が、部分円の円弧の一部を弦に垂直な線分で切除した形状とされていることを特徴とする。
【0011】
この構成により、棒軸の外周に形成された複数本の突条は、その長手方向に対する垂直面内への棒軸の屈曲抵抗(腰の強さ)を高めることとなる。このため、棒軸をその先端から帆立貝の耳孔に挿通させる際に、その棒軸が前記垂直面内で折れ曲がったり、座屈したりすることを未然に回避でき、内径が小さい耳孔に対しても簡単かつスムースにその棒軸を挿通させることができる。
【0012】
また、前記棒軸の外径を、養殖帆立貝の耳片に形成された耳孔の内径に略等しいサイズとした場合には、前記棒軸の耳孔に対する挿入の際に、耳孔の内外にこの耳孔の穿設時に発生した切削粉や帆立貝の表面に付着していたゴミなどが付着することがあっても、前記棒軸外周の複数本の突条間に形成される長溝内にこれらの切削粉やゴミを取り込んだり、或いはその長溝を介して耳孔から排出したりするため、棒軸の耳孔内への挿通操作をスムースにかつ容易化することができる。従って、耳孔の内径が小さい場合でも、その棒軸の外径を耳孔のその内径に近づけることができ、相互の摩擦接触による棒軸の磨耗や損傷を効果的に抑えることができ、棒軸の耐久性を高めることができる。また、耳孔の内径を小さく抑えることで、耳孔の穿設時に帆立貝の外套膜の損傷を回避または最小限に抑えて、帆立貝の成育が阻害されるのを防ぐことができる。
【0013】
さらに、前記構成において、前記抜け止め片である切込み片の断面形状が、部分円の円弧の一部を弦に垂直な線分で切除した形状とされていることで、切り起こされないで抜け止め片に隣接して残された部分を、前記棒軸の長手方向に延びる補強リブとして機能させることができ、前記棒軸の長手方向に対する垂直面内への棒軸の折れ曲がりや挫屈を回避することができる。
【0014】
また、前記構成において、前記突条を、10〜25本の範囲で前記棒軸の外周に形成したことによって、棒軸の全周面における外方への屈曲抵抗を高め、折れ曲がりや屈曲に対する強度を適切に高めることができる。
【0015】
さらに、以上の構成において、前記抜け止め片を、棒軸の先端側に反り返って円弧状に湾曲させることにより、一旦この円弧状部を介して帆立貝の耳孔が棒軸に挿通された後は、この円弧状部が自身の反発力で再び外方に向けて円弧状に突出するように復元し、従って前記耳孔は棒軸から抜け出ることはなく、帆立貝はこの棒軸上に安定保持される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、帆立貝の耳孔径が小さい場合でも、この耳孔径に近い外径の棒軸を、これに屈曲や挫掘などを発生させることなく、容易かつスムースにその耳孔内に挿通させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態による養殖帆立貝の吊り具を示す正面図である。
【図2】図1に示す養殖帆立貝の吊り具の背面図である。
【図3】図1に示す養殖帆立貝の吊り具の平面図である。
【図4】図1に示す養殖帆立貝の吊り具の底面図である。
【図5】図1に示す養殖帆立貝の吊り具の左側面図である。
【図6】図1に示す養殖帆立貝の吊り具の右側面図である。
【図7】図1に示す養殖帆立貝の吊り具を拡大して示す要部の正面図である。
【図8】図7のA-A線における拡大断面図である。
【図9】図7のB-B線における拡大断面図である。
【図10】図7のC-C線における拡大断面図である。
【図11】図1に示す吊り具の使用状態の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施の形態にかかる養殖帆立貝の吊り具を、図1乃至図11を参照して説明する。
【0019】
本実施形態の養殖帆立貝の吊り具Aは、合成樹脂の成型品として得られた、所定長の細い棒軸11からなる。この棒軸11は全長に亘り円形断面をなし、所定長の軸部本体11aと、この軸部本体11aの両端に連続するテーパ部11bとを有する。各テーパ部11bは先端11cに向かって尖って、その先端11cの外径は軸部本体11aの外径に対し、例えば1/2以下とされている。また、軸部本体11aの外径は後述する帆立貝の耳片に穿設された耳孔に接して挿通可能な寸法とされている。
【0020】
棒軸11の各テーパ部11b付近の軸部本体11aには、軸方向の片側半分(先端方向の端部)を残して棒軸の先端部側に向けて所定長および所定幅の切り込みが入れられ、切込み片を引起こした形状の抜け止め片12が形成されている。
棒軸11の先端側に反り返って円弧状に湾曲するこの抜け止め片12を得るために、図5および図9に示すように、棒軸11を円形断面のうち右上部の1/4を、互いに交わる1つの垂直面、1つの水平面および1つの傾斜面で切り込んで、垂直切欠面13a、水平切欠面13bおよび傾斜切欠面13cを形成している。
これらの切欠面13a〜13cの形成によって、一端が軸部本体11aの一部に連続する前記抜け止め片12が形成される。同様にして、棒軸11のもう一方の端部にも前記同様の切欠面13a〜13cが形成されて、抜け止め片12が形成される。
【0021】
これらの抜け止め片12は切欠面13a〜13cで軸部本体11aから切り離された部分のうち、先端部が所定長に亘って切除されて短めのサイズとされ、その先端12aは滑らかな円弧面となっている。また、抜け止め片12は、棒軸11の中心線に垂直に加わる面内で、この棒軸11の外方へ略円弧状に反るような形態をなし、弾性が付与されている。従って、これらの抜け止め片12は、常時は棒軸11の外側に突出しているが、外力を受けた場合には、前記切欠面13a〜13c内に平伏し、外力を解くと起き上がり可能になっている。また、その円弧の中心は、棒軸11の中心線より上方(外方)に偏在している。なお、抜け止め片12は切欠面13a〜13cにおける前記切り込みによって作らずに、棒軸11の樹脂成形時に同時に形成することもできる。
このように、抜け止め片12の各部の断面形状は、部分円の円弧の一部を弦に垂直な線分で切除した形状、例えば先端の切込み端部を除き、ほぼ4分円状の扇形とされているので、養殖帆立貝の耳片に形成された耳孔に挿入される際には、この抜け目止め片12は、棒軸11の垂直切欠面13aに沿って水平切欠面13bに押付けられ、棒軸11の外形とほぼ同一の断面形状となる。
【0022】
棒軸11上には、この棒軸11の両端間における(全長に対する)中央線(仮想線)に対し対称(線対称)となる位置に、各一のロープ係止片14が突設されている。これらのロープ係止片14は棒軸11の外方に向かって対峙するように、互いに同等の角度で傾斜するように立ち上げられている。これらのロープ係止片14は、棒軸11に比べて断面積が小さい(細い)ものの、抜け止め片12に比べて太く、強度も大きい。なお、ロープ係止片14は棒軸11上に前記樹脂成形によって一体に設けることができるほか、前記抜け止め片12の場合と同様に、棒軸11に切り込みを入れて引き起こすように形成することもできる。
【0023】
また、棒軸11の外周面には、この棒軸11の先端部を除く全長またはその先端部を含む全長に亘って、棒軸11の長手方向に沿ってストレートに延びる断面円弧状の突条15が形成され、突条15間には複数本の長溝16が形成されている。これらの突条15は棒軸11の折れ曲がりを防止する補強用リブとして機能する。これらの長溝16は、本実施の形態では、図7〜図10に示すように、棒軸11の先端部としてのテーパ部11b付近の軸部本体11aから、軸部本体11aの中央部に亘ってそれぞれ連続するように設けてある。
【0024】
図8〜図10は棒軸11をその長手方向の3箇所で切断した端面図である。図8は、図7の棒軸11をA−A線で切断して示した断面図であり、傾斜切欠面13cを除く軸部本体11aの外周面に複数の長溝16が設けられている。また、図9は、図7の棒軸11をB−B線で切断して示した断面図であり、切欠面13a〜13cに対向する面を除く抜け止め片12の外周面(円弧面)および軸部本体11aの外周面に前記突条15と長溝16が等間隔で設けられている。さらに、図10は、棒軸11をC−C線で切断して示した断面図であり、軸部本体11aの全周面に前記突条15と長溝16が等間隔で設けられている。
【0025】
軸部本体11aの外径は、突条15の高さを含み、後述の帆立貝の耳片に穿設された耳孔の内径に略等しい。棒軸11の先端11c、つまりテーパ部11bの最小径部は前記耳孔の内径よりも十分に小径とされている。
【0026】
次に、かかる構成になる吊り具Aの使用方法を説明する。先ず、図1〜図6に示す吊り具Aを用意し、この吊り具Aにおける棒軸11の一方の先端11cを、ロープ21の撚り目に挿し込む。この挿し込み操作は、2本のロープ係止片14、14間にロープ21が位置するまで行う。このとき、その先端11c側にあるロープ係止片14および抜け止め片12は、編目への挿入に逆らう方向には起立していないので、編目に挟圧されて押し倒される。
【0027】
従って、そのロープ係止片14および抜け止め片12はその編目内をスムースに通過する。そしてロープ21を通過したロープ係止片14は再び起立復帰し、ロープ21を通過しないもう一方のロープ係止片14との間にロープ21を介在させることとなる。このため、両方のロープ係止片14は編目から抜け出る方向に逆らう向きに立ち上がった状態となり、軸部本体11aはこれをいずれの軸方向へ移動操作しても或いは外力を受けて軸方向移動しても編目から抜け出ることがない。従って、吊り具Aはロープ21から不用意に抜け出ることなく、安定支持される。
【0028】
そこでこのようにロープ21に支持された棒軸11の両端の各テーパ部11bの先端11cを、帆立貝22の二枚の殻のうち耳片23に予め穿設しておいた耳孔24に挿し通す。そして、この刺し通し操作を抜け止め片12が耳孔24を通過(貫通)するまで行う。この抜け止め片12の耳孔24通過時には、抜け止め片12は耳孔23の通過に逆らう方向には起立せずにスムースに通過し、この耳孔24が通過するときには倒れる。そしてこの耳孔24が通過した後は、倒れていた抜け止め片12は自身の反発力により、復元するように立ち上がる。このため、帆立貝22は抜け止め片12およびロープ係止片14、14間にあって、耳孔24の抜き操作に逆らう方向に起立した抜け止め片12によって抜け止めされる。図11はこの抜け止め状況を示す。
【0029】
ところで、かかる棒軸11の耳孔24に対する挿通操作時に、ドリル等を使った耳孔24の穿設によって殻の切削粉や帆立貝22の表面に付着していたゴミが、穿設後の耳孔24内に付着または残留することがある。この場合には、前述のように棒軸11の先端11cおよびその付近が耳孔24内にスムースに挿通しづらくなったり、挿通が不可能になったりする場合がある。
【0030】
本発明では、前述のように、棒軸11の外周面に、これの長手方向に沿って複数本の長溝16を設けることで、前記棒軸11の先端部を耳孔24に挿入する際に、その耳孔24内に残留する帆立貝22の切削粉や細かいゴミをその長溝16内に取り込んだり、その取り込んだ切削粉やゴミをその長溝16を通じて耳孔24内から外へ排出したりする。このため、棒軸11の先端部の耳孔24内への挿通を簡単かつスムースに実施することができる。かくして従来のように帆立貝22の耳片23に穿設された耳孔24を必要以上に大径にする(拡張する)必要がなくなる。
【0031】
また、前記構成により、耳孔24の穿設による帆立貝22内の外套膜の破損とこの破損による帆立貝22の生育障害を未然に回避することができるほか、耳孔24内で棒軸11が摺動摩擦することによって、耳孔24の磨耗や変形、さらには破損を回避することができる。また、長溝16は吊り具Aの金型による樹脂成形時に同時に得ることが可能であるところから、前記抜け止め片12の切り起こしのための治具や装置を別途用意する必要がなく、吊り具Aの製造コストを抑えることができる。
【0032】
前記突条15は、棒軸11全体の腰を強くする補強リブとして機能するため、耳孔24内への挿入操作を屈曲や挫屈を招かずに迅速かつ容易に実施できる。これにより、前記挿入作業の自動化にも対応可能になり、帆立貝22のロープ21に対する吊り作業をより迅速化することができる。また、かかる釣具Aの構成は極めてシンプルであり、これの複数個(例えば、10000個分)を纏めて樹脂の一体成形により迅速かつ安価に得ることができる。
【0033】
以上のように、本実施形態の養殖帆立貝の吊り具Aは、棒軸11の先端部付近に外方に向かって反るように湾曲する抜け止め片12が一体に設けられた構成であり、棒軸11の外周面うち前記先端部を除く全長またはその先端部を含む全長に亘って該棒軸11の長手方向に沿って複数本の突条15を設けたことで、長手方向に対する棒軸11の屈曲抵抗(腰の強さ)を高めることができる。この結果、棒軸11をその先端11cから帆立貝22の耳孔24に挿通させる際に、その棒軸11が前記垂直面内で折れ曲がったり、座屈したりすることを未然に回避でき、耳孔24に簡単かつスムースにその棒軸11を挿通させることができる。
【0034】
また、前記棒軸11の外径が、帆立貝22の耳片23に形成された耳孔24の内径に略等しいサイズとしたことで、棒軸11の耳孔24に対する挿入の際に、耳孔24の内外にこの耳孔24の穿設時に発生した切削粉や帆立貝22の表面に付着していたゴミなどが付着した場合にも、棒軸11外周の複数本の前記長溝16内に、これらの切削粉やゴミを取り込んだり、或いは耳孔24から外へ排出するように導いたりすることで、棒軸11の耳孔24内への挿通操作を容易化することができる。
【0035】
さらに、抜け止め片12が、棒軸11の軸方向の片側半分(先端方向の端部)を残して該棒軸11の外方に向かって切り起こされていることで、抜け止め片12を切り起こさないで棒軸11の両側に残った部分を、前記棒軸11の長手方向に延びる補強リブとして機能し、この棒軸11の屈曲抵抗を大きくすることができ、棒軸11の折れ曲がりや挫屈の回避に寄与できる。
【0036】
前記構成において、前記突条15を、10〜25本の範囲で棒軸11の外周に形成したことによって、棒軸11の全周面における外方への屈曲抵抗を高め、折れ曲がりや屈曲に対する強度を適切に高めることができる。
【0037】
そして、抜け止め片12を前記外方に向けて円弧状に湾曲させることにより、一旦この円弧状部を介して帆立貝22の耳孔24が棒軸11に挿通された後は、この円弧状部が自身の反発力で再び外方に向けて円弧状に突出するように復元し、従って耳孔24は棒軸11から抜け出ることはなく、帆立貝22はこの棒軸11上に安定保持(吊持)される。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、帆立貝の耳孔径が小さい場合でも、この耳孔径に近い外径の棒軸を、これに折れ曲がりなどを発生させることなく、容易かつスムースにその耳孔内に挿通させることができるという効果を有し、棒軸の先端部付近に抜け止め片が一体に設けられた養殖帆立貝の吊り具等に有用である。
【符号の説明】
【0039】
A 吊り具
11 棒軸
11a 軸部本体
11b テーパ部
11c 先端
12 抜け止め片
13a 垂直切欠面
13b 水平切欠面
13c 傾斜切欠面
14 ロープ係止片
15 突条
16 長溝
21 ロープ
22 帆立貝
23 耳片
24 耳孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
養殖帆立貝の耳片に穿設された耳孔の内径と同径又は僅かに小径に形成された棒軸の両先端部近傍に、前記棒軸の先端部側に向けて切込んで切込み片を引起こした形状の抜け止め片が、それぞれ一体に突設された養殖帆立貝の吊り具であって、
前記棒軸は、外周面に軸方向に沿って複数本の突条が形成されるとともに、
前記切込み片の断面形状が、部分円の円弧の一部を弦に垂直な線分で切除した形状とされていることを特徴とする養殖帆立貝の吊り具。
【請求項2】
前記切込み片の断面形状が、先端部を除き、ほぼ4分円状の扇形とされていることを特徴とする請求項1記載の養殖帆立貝の吊り具。
【請求項3】
前記突条は、10〜25本の範囲で前記棒軸の外周に形成されていることを特徴とする請求項1記載の養殖帆立貝の吊り具。
【請求項4】
前記抜け止め片は、棒軸の先端側に反り返って円弧状に湾曲していることを特徴とする請求項1記載の養殖帆立貝の吊り具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−130305(P2012−130305A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286081(P2010−286081)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(510337610)有限会社シンワ (1)
【Fターム(参考)】