説明

香り分配システム、香料モジュール、香り分配キット、及び加熱芯型香料組成物分配装置

【課題】異なる芳香剤を互いに関連して供給することを指示する放出パターン、又はプログラムを提供する。
【解決手段】使用者に対する香りの知覚を改善するシステム、装置20、方法、及び組成物。改善された香りの知覚は、装置20によって放出されている揮発性物質を変更するスイッチ機構によって交互の香り物質を与えること、及び香り物質の出力レベルを変化させること、並びに芯38の目詰まりを最小限に抑えることで、蒸発特性を改善する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、香り分配システム、香料モジュール、香り分配キット、及び加熱芯型香料組成物分配装置に関する。本発明は、長時間にわたり減衰が少ない香り体験を使用者に送達する。本発明はこうしてより長い期間にわたってより容易に気付くことができる香り体験を使用者に提供する。
【背景技術】
【0002】
香料及び/又は芳香剤組成物を空間、特に家庭内の空間、例えばリビングルームへ蒸発させて快い芳香を提供するために電気的な装置を使用することは、一般に公知である。例えばエアウィック(AIRWICK)(登録商標)拡散器アクティフ(Diffuser ACTIF)(登録商標)(レキット・ベンキーザー(Reckitt Benckiser)製造)又はアンビ・パー(AMBI-PUR)(登録商標)芳香剤拡散器(サラ・リー(Sara Lee)製造))を包含する種々のこうした装置が販売されている。一般に、これらの装置は香料又は芳香剤源、電気熱器、及び電源装置からなる。香料又は芳香剤源に熱を加えることにより、香料又は芳香がその装置が置かれている空間へと連続的に供給される。
【0003】
この配置の問題点は、空間を占有している人が香料又は芳香にすぐに慣れて、暫くすると、実際の強さほどには芳香の強さを知覚しなくなり、それに全く気付かないこともあるということである。これは慣れと呼ばれる周知の現象である。この問題への解決法が模索されてきた。
【0004】
この問題に対処するための1つの取り組みは、特許文献1(ウィットビーら)に記載されている。ウィットビー(Whitby)らの特許出願は、空間に2つ以上の芳香剤組成物を提供するようになされ、これらの芳香剤組成物のうちの少なくとも1つは周期的に提供される、方法及び装置を開示している。この方法及び装置は第1の芳香剤組成物の連続供給と第2の芳香剤組成物の周期的供給を提供し得る。この芳香剤組成物(類)は熱により揮発されてもよく、脱臭剤及び/又は殺虫剤化合物を包含してもよい。これらの芳香剤組成物は、2つの芳香剤組成物が互いに対照的であり、又は異なる香調(notes)を有するように選択されるのが好ましい。この芳香剤組成物は、一般に熱器を具備する装置から律動的に送られる。その芳香剤組成物を放出するための熱の周期的供給がこの装置、詳細には制御装置を有する熱器を提供することによって制御される。この制御装置は電気回路の形態である。この制御装置は、熱器が短い期間の間、好ましくは15秒〜15分、「それらの間に適当な時間間隔(intervals of time)を置いて」作動するようになされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2002/0159916号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、ウィットビー(Whitby)らの特許出願は、気付き得る芳香剤の変化を使用者に与えるというよりも、連続的に放出されている芳香剤組成物の嗅覚への影響を維持し又は持続することを主に指向していることは明白である。加えて、ウィットビー(Whitby)らの特許出願は2つ以上の芳香剤の周期的な供給に言及しているが、使用者が2つの組成物のブレンドである1つの芳香剤というよりも個別の芳香剤類を実際に体験するように、異なる芳香剤を互いに関連して供給することを指示する放出パターン、又はプログラムに関しては具体的に教示していない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の特徴及び利点)
本発明人らは、使用者の香りの知覚の減少は、よく報告されている慣れの現象だけに起因するのではなく、使用中に香り物質放出装置内で起こる物理的、機械的、及び/又は化学的変化にも起因するということを発見した。特に、使用中に、芯からの放出は、少なくとも部分的には芯の目詰まりが原因で、時間の関数として減衰することが見出された。芯の目詰まりは、揮発(又は蒸発)を減少させ、このため香料構成成分の知覚を減少させる。この目詰まりの現象は、例えば、香料組成物中の化学反応、及び目詰まりを起こさない香料構成成分の漸次の、しかし選択的な蒸発によって引き起こされ得る。本発明はこれらの問題に対処する。
【0008】
幾つかの実施形態では、本発明は使用者に、既存の製品と比較した場合に、より気付かれ易い、及び経時的に一定の香料体験を提供する。幾つかの実施形態では、本発明は香料を順に交代させることにより適応/慣れ効果を低減させる。他の実施形態では、本発明は1つ以上の香料のより効率的な香り物質放出特性を提供する。さらに他の実施形態では、本発明は適応/慣れの影響を低減させて、より効率的な香料放出特性を提供する。本発明は長時間持続して気付かれ得る香料体験を使用者に提供する。
【0009】
(課題を解決するための手段)
本発明は、香り組成物、殺虫剤、悪臭抑制組成物などを含有する揮発性組成物を放出させるための方法及び装置に関する。幾つかの実施形態では、本発明は1つ以上の揮発性組成物を放出させるための方法に関する。幾つかの実施形態では、本発明は2つ以上の揮発性組成物を放出させるための方法及び装置に関する。本明細書に記載される方法及び装置の多数の実施形態が存在し、それらのすべては非限定的な実施例であることが意図されている。
【0010】
本方法の幾つかの実施形態では、香料組成物(類)の放出を体験する人、又は香料組成物(類)を放出する装置(類)があるところに居る人にとって、いつでも快い香りを体験し及び/又は知覚することが望ましいことがある。他の場合には、このことはいつでもというわけではないが、香りを知覚したいと望むときである。本方法が2つ以上の揮発性香料組成物を放出するために用いられる幾つかの実施形態では、2つ以上の別個の及び異なる揮発性香料組成物のそれぞれの知覚性を最大限にすることが望ましいこともある。こうして、この方法は単に所与の放出された香りに対する慣れを防ぐことにとどまらないものであり得る。このような実施形態においては、それ故に、その2つ以上の揮発性香料組成物の放出のための時間は速く変化しすぎないことが望ましいことがあり、そうでないと、異なる香りが知覚されるのではなくむしろブレンドされた香りが知覚されることになる。しかしながら、他の実施形態ではまた、少なくともある一定期間の間、ブレンドされた香り体験を与えることが望ましいこともある。
【0011】
本方法の一実施形態では、揮発性組成物は、15分よりも長く24時間以下である別々の放出期間の間、交互に放出される。この装置は放出されている揮発性組成物を順に交代させるために自動的に切り替わることができる。他の実施形態では、装置は15分以下の期間の間揮発性組成物を放出してもよく、又は24時間よりも長い期間(例えば48時間)の間揮発性組成物を放出してもよい。多数のその他の実施形態が可能である。
【0012】
本方法は1つ以上の放出装置を利用することができる。揮発性香料組成物(類)を放出する一実施形態では、2種の香り物質を有する(dual scented)電気拡散器である単一の装置が使用され、この拡散器は2つ(又はそれより多く)の香り物質の間でスイッチが前後に切り替わり、又はトグルスイッチが切り替わる。香料組成物及び悪臭抑制組成物などの複数の揮発性組成物(類)を放出する別の実施形態では、組成物間でトグルスイッチが切り替わる単一の装置が使用される。このような実施形態では、放出装置はハウジングを有しており、このハウジングは少なくとも間接的にこのハウジングに接続されたプラグによって電気コンセントに支持されている。この装置は第1の揮発性組成物と第2の揮発性組成物とを含有する。第1の揮発性組成物は前記第2の揮発性組成物に関して交互の期間に放出される。多数の他のタイプの装置が可能である。例えば、他の実施形態では、本明細書に記載された方法は、2つ以上の放出装置によって実施することができる。このような分配装置は、エアゾール噴霧器が挙げられるがこれに限定されない、あらゆるタイプの放出装置を含む。
【0013】
本発明はまた、揮発性組成物を含有する貯蔵槽と流体連通する少なくとも1つの多孔質の芯を含む熱芯装置からの、揮発性組成物の放出を改善する方法に関する。一実施形態では、本方法は1つ以上の構成成分を有する香料組成物の加熱芯型香料組成物分配装置からの香料放出特性の平坦化を提供し、a)揮発性香料組成物の少なくとも1つの構成成分の揮発速度を増大させるのに十分な温度まで芯を温めるために、熱を加える工程と、b)前記香料組成物の前記少なくとも1つの構成成分の揮発速度を減少させるのに十分なだけ芯の温度を低下させるために、前記熱を弱める工程と、c)前記芯の内部で平衡濃度を達成するために、前記香料組成物のすべて若しくは一部の前記構成成分が前記芯を通って前記貯蔵槽に向かって逆に流れること、又は他の態様で拡散されること(「逆流」)を可能にするに十分な時間の間、前記弱められた熱を維持する工程と、工程a)を繰り返す工程とを含む。前記香料組成物の少なくとも1つの構成成分の揮発速度を増大させるのに十分である、芯に加えられる前記熱は、21℃より高く約80℃まで、又はそれより高い温度であり、その結果として約31℃から約80℃まで若しくはそれより高い、又は約40℃〜約80℃、又は約40℃〜約60℃、又は約60℃〜約80℃の芯の温度が達成される。一実施形態では、芯に加えられた熱により芯の温度は周囲温度を超えておよそ10℃単位で増加することになる。香料組成物の前記少なくとも1つの構成成分の揮発速度の減少を達成するのに十分な前記温度は、約60℃以下、40℃、若しくは20℃であり、又はそれより低くすることもできる。好ましくは、前記芯の温度は前記熱された温度から約10℃低下され、より好ましくは前記芯の温度は周囲温度まで低下される。繰り返される熱を加える工程においては、芯に加えられる熱はその前の熱を加える工程よりも高い芯温度とすることができる。
【0014】
本発明の方法に従い、香料組成物のすべて又は一部の前記構成成分の逆流を可能にするのに十分な前記時間は、約15分〜約48時間、又は約17分〜約72分、又は約20分〜約60分、又は約54分、又は約30分であることができる。
本発明の方法の幾つかの態様は、工程b)及びc)の繰り返し工程を包含する。場合によっては、工程a)、b)、及び工程c)はそれぞれ少なくとも2回、3回、又は4回繰り返され、工程a)、工程b)、及び工程c)は100回以上繰り返されることもある。
【0015】
本発明の幾つかの実施形態では、加熱芯型香料組成物分配装置は、少なくとも第1及び第2の香料組成物貯蔵槽からそれぞれ引き出される少なくとも第1及び第2の芯を含み、前記方法は、a1)前記第1の香料組成物の少なくとも1つの構成成分の揮発を増大させるために前記第1の芯に熱を加える工程と、b1)前記第1の香料組成物の前記少なくとも1つの構成成分の揮発を減少させるのに十分な温度まで前記第1の芯に加えられた前記熱を弱める工程と、c1)前記第1の香料組成物のすべて又は一部の前記構成成分の逆流を可能にするのに十分な時間の間、前記第1の芯に加えられた前記弱められた熱を維持する工程と、a2)前記第2の香料組成物の少なくとも1つの構成成分の揮発を増大させるために前記第2の芯に熱を加える工程と、b2)前記第2の香料組成物の前記少なくとも1つの構成成分の揮発を減少させるのに十分な温度まで前記第2の芯に加えられた前記熱を弱める工程と、c2)前記第2の香料組成物のすべて又は一部の前記構成成分の逆流を可能にするのに十分な時間の間、前記第2の芯に加えられた前記弱められた熱を維持する工程と、工程a1)を繰り返す工程と、工程a2)を繰り返す工程とを含む。幾つかの実施形態では、工程a1)及び工程a2)の動作は、少なくとも約0.1秒〜15分、又はそれより長い間重なり合う。他の実施形態では、工程a1)及び工程a2)の動作は重なり合わない。
【0016】
本発明はまた、香料組成物を含有する貯蔵槽と、前記香料組成物と流体連通する芯とを含む、少なくとも1つの香料モジュールを受け入れるようになっている加熱芯型香料組成物分配装置を含む香り分配システムであって、前記装置は、使用の際、前記香料組成物の少なくとも1つの構成成分の揮発を増大させるために前記芯に熱を加え、前記香料組成物の前記少なくとも1つの構成成分の揮発を減少させるのに十分な温度まで前記加えられた熱を弱め、前記香料組成物のすべて又は一部の前記構成成分の逆流を可能にするのに十分な時間の間前記弱められた熱を維持し、前記香料組成物の少なくとも1つの構成成分の揮発を増大させるために前記芯に熱を加える。幾つかの実施形態では、逆流を可能にするのに十分な前記時間は少なくとも約30分である。
【0017】
本発明の香り分配システムの幾つかの実施形態では、装置は、使用の際、自動的に熱を加え、自動的に熱を弱める。幾つかの実施形態では、この香り分配装置は手動調節可能な温度調節器を含む。
【0018】
本発明の香り分配システムの幾つかの実施形態では、少なくとも2つの区画であって、各区画又はチャンバは少なくとも2つの香料組成物のそれぞれによってそれぞれ占有されている区画と、少なくとも2つの通気穴を画定するキャップであって、各通気穴は前記少なくとも2つの区画のそれぞれを覆うように位置決めされているキャップを含み、前記キャップは移動可能なカバーを含み、このカバーは、使用の際、交互に前記通気穴のそれぞれのうちの1つ以上を覆って位置決めすることができる。
【0019】
本発明はまた、カバーを含む香り分配システムを用いて、少なくとも1つの香料又は他の揮発組成物の知覚を高めるように芳香剤を分配する方法を提供し、前記カバーの位置は交互の順序で自動的に移動する。幾つかの実施形態では、前記カバーの位置はランダムな順序で自動的に移動する。幾つかの実施形態では、前記通気穴はスリット若しくはルーバー又はそれら両方を含む。
【0020】
本発明はまた、加熱芯型香料組成物分配装置と共に使用するための香料モジュールを提供し、前記香料モジュールは、芯と流体連通する香料組成物を含有する少なくとも1つの貯蔵槽を含み、前記少なくとも1つの香料組成物の構成成分の約70%より多くが、約1800未満のガスクロマトグラフィーのコバッツ指数(kovats Index)(非極性シリコーン固定相として5%フェニル−メチルポリシロキサンで決定した場合)を有する。幾つかの実施形態では、前記少なくとも1つの香料組成物の構成成分の約85%より多く、約90%より多く、約95%より多く、約97%より多く、約99%より多くが、約1800未満のガスクロマトグラフィーのコバッツ指数(kovats Index)(非極性シリコーン固定相として5%フェニル−メチルポリシロキサンで決定した場合)を有する。幾つかの実施形態では、前記少なくとも1つの香料組成物の構成成分の約85%より多く、約90%より多く、約95%より多く、約97%より多く、約99%より多くが、約1600未満のガスクロマトグラフィーのコバッツ指数(kovats Index)(非極性シリコーン固定相として5%フェニル−メチルポリシロキサンで決定した場合)を有する。幾つかの実施形態では、前記少なくとも1つの香料組成物の構成成分の約80%より多くが、約1600未満、又は約1500未満、又は約1400未満のガスクロマトグラフィーのコバッツ指数(kovats Index)(非極性シリコーン固定相として5%フェニル−メチルポリシロキサンで決定した場合)を有する。幾つかの実施形態では、前記少なくとも1つの香料組成物の構成成分の約15%未満、約10%未満、約5%未満、又は約1%未満が、約1600より大きく約1800未満のガスクロマトグラフィーのコバッツ指数(kovats Index)(非極性シリコーン固定相として5%フェニル−メチルポリシロキサンで決定した場合)を有する。
【0021】
本発明の香料モジュールは1つ又は2つの貯蔵槽を含むことができる。2つ以上の貯蔵槽を含む実施形態では、各貯蔵槽が異なる香料組成物を含む。この異なる香料組成物は、異なる香り物質又は同じ香り物質を放出することができる。
【0022】
芯はあらゆる好適な材料で作製することができる。例えば、香料モジュールに包含される芯は、セルロース繊維類、金属、プラスチック、セラミック、グラファイト、及び布地から選択される材料で作製できる。幾つかの実施形態では、芯は高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、超高分子量ポリエテレン(polyethelene)(UHMW)、ナイロン6(N6)、ポリプロピレン(PP)、ポリビニリジンフッ化物(PVDF)、及びポリエーテルスルホン(PES)から選択されるプラスチック材料で作製される。製造材料にかかわらず、芯は約10ミクロン〜約500ミクロン、又は約50ミクロン〜約150ミクロンの平均細孔寸法、又は約70ミクロンの平均細孔寸法を示すことができる。芯の平均細孔容積は約15%〜約85%、又は約25%〜約50%である。良好な結果は約38%の平均細孔容積を有する芯で得られた。芯はまた、約1mm〜約100mm、又は約5mm〜約75mm、又は約10mm〜約50mmなどの、様々な長さを有することができる。
【0023】
本発明は、加熱芯型香料組成物分配装置と組み合わされた香料モジュールを含む芳香剤分配キットをさらに提供し、前記香料モジュール及び前記加熱芯型香料組成物分配装置は作動可能に連通している。幾つかの実施形態では、これらのキットはまた、加熱芯型香料組成物分配装置と作動可能に連通していない、少なくとも1つの詰め替え用香料モジュールを包含する。
【0024】
本発明はまた、少なくとも1つの香料組成物;及び加熱芯型香料組成物分配装置であって、この装置は、使用の際、芯の温度を上げてそれにより前記香料組成物の少なくとも1つの構成成分の揮発を増大させるように芯に熱を加え、前記少なくとも1つの構成成分の揮発を減少させるのに十分な温度まで前記熱を弱め、前記香料組成物のすべて又は一部の前記構成成分の逆流を可能にするのに十分な時間の間、前記弱められた熱を維持し、前記香料組成物の少なくとも1つの構成成分の揮発を増大させるように芯に熱を加える装置、を含む香り分配キットに関する。幾つかの実施形態では、各サイクル中の逆流を可能にする前記時間は少なくとも17分〜約72分であることができる。
【0025】
本発明に従う香り分配キットの幾つかの実施形態では、前記少なくとも1つの香料組成物の構成成分の約70重量%、75重量%、80重量%、85重量%、90重量%、95重量%、97重量%、又は99重量%より多くが、約1800未満のガスクロマトグラフィーのコバッツ指数(kovats Index)(非極性シリコーン固定相として5%フェニル−メチルポリシロキサンで決定した場合)を有する。幾つかの実施形態では、前記少なくとも1つの香料組成物の構成成分の約90重量%、又は95重量%より多くが、約1600、1500、又は1400未満のガスクロマトグラフィーのコバッツ指数(kovats Index)(非極性シリコーン固定相として5%フェニル−メチルポリシロキサンで決定した場合)を有する。
【0026】
本発明に従うキットでは、加熱芯型香料組成物分配装置は少なくとも2つの芯を含むことができ、このキットは少なくとも2つの異なる香料組成物を含むことができる。これらの異なる香料組成物は異なる芳香を示すことができる。
【0027】
本発明はまた、少なくとも第1及び第2の別個の香料組成物貯蔵槽と流体連通する少なくとも第1及び第2の芯を含む装置であって、a1)第1の香料組成物の少なくとも1つの構成成分の揮発を増大させるのに十分な芯の温度に達するように前記第1の芯に熱を加える工程と、b1)前記第1の香料組成物の前記少なくとも1つの構成成分の揮発を減少させるのに十分な芯の温度に達するように前記第1の芯に加えられた前記熱を弱める工程と、c1)前記第1の香料組成物のすべて又は一部の前記構成成分の逆流を可能にするのに十分な時間の間、前記第1の芯に加えられた前記弱められた熱を維持する工程と、a2)第2の香料組成物の少なくとも1つの構成成分の揮発を増大させるのに十分な芯の温度に達するように前記第2の芯に熱を加える工程と、b2)前記第2の香料組成物の前記少なくとも1つの構成成分の揮発を減少させるのに十分な芯の温度に達するように前記第2の芯に加えられた前記熱を弱める工程と、c2)すべて又は一部の前記構成成分の逆流を可能にするのに十分な時間の間、前記第2の芯に加えられた前記弱められた熱を維持する工程と、工程a1)を繰り返す工程と、工程a2)を繰り返す工程とによって芳香剤を分配する装置を準備する工程とを含む、加熱芯型香料組成物分配装置から分配される少なくとも1つの芳香の知覚を増大させるための方法に関する。
【0028】
本発明に従う幾つかの方法では、第1及び第2の香料組成物は同じであり、他の実施形態では、それらは異なっている。異なる香料組成物は異なる芳香を示すことができる。
本発明はまた、少なくとも第1及び第2の別個の香料組成物含有貯蔵槽を含む装置を準備することを含む、少なくとも1つの香料の知覚を高めるように芳香剤を分配するための方法に関し、この装置は、前記少なくとも第1及び第2の香料組成物それぞれの放出の交互の爆発(burst)を提供することにより芳香を分配し、爆発1回当たりに放出される香料の量は実質的に変化しない。
【0029】
本発明の方法では、この装置は、少なくとも第1及び第2の熱器と、頂端部及び底端部を有する少なくとも第1及び第2の芯を含むことができ、前記芯のそれぞれは、その底端部において前記少なくとも第1及び第2の別個の香料組成物含有貯蔵槽のそれぞれとそれぞれ流体連通しており、前記芯のそれぞれは、その頂端部において前記少なくとも第1及び第2の熱器のそれぞれとそれぞれ接触し、この装置は、a1)第1の香料組成物の少なくとも1つの構成成分の揮発を増大させるのに十分な芯の温度に達するように前記第1の芯に熱を加える工程と、b1)前記第1の香料組成物の前記少なくとも1つの構成成分の揮発を減少させるのに十分な芯の温度に達するように前記第1の芯に加えられた前記熱を弱める工程と、c1)前記第1の香料組成物のすべて又は一部の前記構成成分の逆流を可能にするのに十分な時間の間、前記第1の芯に加えられた前記弱められた熱を維持する工程と、a2)第2の香料組成物の少なくとも1つの構成成分の揮発を増大させるのに十分な芯の温度に達するように前記第2の芯に熱を加える工程と、b2)前記第2の香料組成物の前記少なくとも1つの構成成分の揮発を減少させるのに十分な芯の温度に達するように前記第2の芯に加えられた前記熱を弱める工程と、c2)前記第2の香料組成物のすべて又は一部の前記構成成分の逆流を可能にするのに十分な時間の間、前記第2の芯に加えられた前記弱められた熱を維持する工程と、工程a1)を繰り返す工程と、工程a2)を繰り返す工程とによって芳香剤を分配する。この装置は各芯の熱の適用及び熱の低減を自動的に繰り返すように設計されることができ、各サイクル中の逆流を可能にするための前記時間は少なくとも15分、好ましくは30分、より好ましくは45分である。
【0030】
本発明はまた、ある期間にわたる、加熱芯型香料組成物分配装置からの香料放出速度の減退を少なくするための方法に関し、この方法は、前記期間にわたり、前記装置の芯に加えられる熱を強めることを含み、その強められた熱は、前記期間の間、香料の放出速度の減退を少なくするのに十分である。
本発明はまた、ある期間にわたる、加熱芯型香料組成物分配装置からのほぼ一定の香料放出速度を達成するための方法に関し、この方法は、前記期間にわたり、前記装置の芯に加えられる熱を強めることを含み、その強められた熱はそれより弱い熱では揮発されない香料組成物の1つ以上の構成成分を揮発させるような芯の温度を達成するのに十分である。
【0031】
さらに、本発明は、香料組成物を含有する香料貯蔵槽と、前記香料組成物と流体連通する芯とを含む少なくとも1つの香料モジュールを受け入れるようになっている加熱芯型香料組成物分配装置を含む、香り分配装置を提供し、前記香り分配装置は、使用の際、前記芯への熱の適用及び中止(withdrawal)を自動的に繰り返し、前記香り分配装置は、設定された期間(time interval)の後少なくとも1回、芯に加えられる熱を自動的に強める。その設定された期間(time interval)は、約7〜約30日、又は約7〜約15日であることができる。芯に加えられる熱は2回以上強めることができる。
【0032】
本発明はまた、少なくとも1つの香料組成物を含有する加熱芯型香料組成物分配装置に関し、前記少なくとも1つの香料組成物の構成成分の約95%より多くが、約1800未満のガスクロマトグラフィーのコバッツ指数(kovats Index)(非極性シリコーン固定相として5%フェニル−メチルポリシロキサンで決定した場合)を有する。本発明の装置は芯を具備することができ、この芯は、セルロース繊維類、金属、プラスチック、セラミック、グラファイト、及び布地から選択される材料が挙げられ、数多くの材料から作製することができる。プラスチック材料としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、超高分子量ポリエテレン(polyethelene)(UHMW)、ナイロン6(N6)、ポリプロピレン(PP)、ポリビニリジンフッ化物(PVDF)、及びポリエーテルスルホン(PES)が挙げられるがこれらに限定されない。多孔質芯は約10ミクロン〜約500ミクロン、又は約50ミクロン〜約150ミクロンの平均細孔寸法を示すことができる。平均細孔容積は、約15%〜約75%、又は約25%〜約50%の範囲、又は約38%であることができる。芯の長さは、約1mm〜約100mm、又は約5mm〜約75mm、又は約10mm〜約50mmの範囲であることができる。
【0033】
本発明に従う香料組成物は表1〜9に列挙されたもののような種々の成分から選択される構成成分を含むことができる。
本発明の追加の特徴及び利点は、下記の説明において一部が記述され、一部はその説明から自明であり、又は本発明の実施によって学習され得る。本発明の特徴及び利点は、特に添付の特許請求の範囲において指摘される要素及び組み合わせによって理解され達成される。
【0034】
上記の全体的な説明及び下記の詳細説明の両方が、単に例示及び説明にすぎず、特許請求される場合に本発明を制限するものではないことを理解すべきである。
本明細書に組み込まれてその一部を構成する添付図面は、本発明の幾つかの実施形態を図示しており、本説明と共に、本発明の原理を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】2つの揮発性組成物を放出するための放出プログラムの非限定的な一実施形態を示している線図。
【図2】3つ(又はそれより多く)の揮発性組成物を放出するための放出プログラムの非限定的な一実施形態を示している線図。
【図3】揮発性組成物の放出の間に間隔が存在する、2つ(又はそれより多く)の揮発性組成物を放出するための放出プログラムの非限定的な一実施形態を示している線図。
【図4】揮発性組成物の放出の重なり合いが存在する、2つ(又はそれより多く)の揮発性組成物を放出するための放出プログラムの非限定的な一実施形態を示している線図。
【図5】1つの揮発性組成物の放出と他の2つの揮発性組成物の放出との重なり合いが存在する、3つ(又はそれより多く)の揮発性組成物を放出するための放出プログラムの非限定的な一実施形態を示している線図。
【図6】揮発性組成物を放出するための装置の非限定的な一実施形態を示している、一部が切り欠かれた概略的正面図。
【図7】図6に示されている装置の一部が切り欠かれた概略的側面図。
【図8】図6に示されている装置の概略的上面図であり、電気コンセントのカバープレートに隣接したその装置。
【図9】図6〜図8に示されている装置を制御するために使用できるプリント基板の斜視図であり、その基板に取り付けられた熱器及びプラグと共に示されている。
【図10】図9に示されている回路の配線図。
【図11】2つの通気穴と、グリップつまみを含む回動可能なカバーを画定するキャップ構造。
【図12】タイマーで作動する2つのエアゾール装置。
【図13】タイマーで作動する2つのエアゾール容器を含む単一の装置。
【図14】蒸発速度が経時的に減少する様子を線図式に示している。
【図15】連続的に使用された芯、又はトグル制御された芯の写真。
【図16】長期間の連続的な芯の使用に関して行う事柄を線図式に示している。
【図17】組成物構成成分の分布が時間と共に変化する様子を線図式に示している。
【図18】トグル制御の蒸発速度への効果を線図式に示している。
【図19】芯の細孔寸法を変化させる効果を線図式に示している。
【図20】芯の長さを変化させる効果を線図式に示している。
【図21a】サイクル時間を変えることでどのように全体の香り物質放出を改善できるかを線図式に示している。
【図21b】サイクル時間を変えることでどのように全体の香り物質放出を改善できるかを線図式に示している。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本明細書は、本発明を特定して指摘し明白に請求する請求項によって結論とするが、添付図面と共になされる以下の記述により、本発明はさらによく理解されると考えられる。
ここで本発明の本実施形態(代表的な実施形態)を詳細に参照するが、この実施形態の例が添付の図面に示されている。可能な場合は必ず、同一の又は類似の部分を参照するためには、同一の参照番号が図面全体を通して使用される。
【0037】
本発明は揮発性組成物、さらには新規の組成物を放出するための方法、装置、及びシステムに関する。幾つかの実施形態では、本発明は2つ以上の揮発性組成物を放出させるための方法及び装置に関する。幾つかの実施形態では、本発明は1つ以上の揮発性組成物を放出させることに関する。本明細書に記載される方法及び装置の多数の実施形態が存在し、それらのすべては非限定的な実施例であることが意図されている。
【0038】
揮発性組成物を放出するための本方法は、種々の異なる実施形態を含むことができる。揮発性組成物は芳香剤組成物、殺虫剤、エアフレッシュナー、防臭剤、アロマコロジー、アロマセラピー、殺虫剤として機能する組成物、あるいは雰囲気を調整する、変える、若しくは他の方法で満たす、又は環境を変える作用をする他のあらゆる物質であることができる。本方法の所与の実施形態において放出される揮発性物質は、同じ種類の物質(例えば、2つ以上の芳香剤組成物)であることができ、又はそれらは異なる種類の物質(例えば、芳香剤組成物とエアフレッシュナー)であることができる。脱臭剤又は悪臭抑制組成物は、臭気中和物質、臭気遮断物質、臭気マスキング物質、及びこれらの組み合わせから選択される物質を含んでいてよい。本方法は、異なる揮発性組成物の放出がそれらの異なる揮発性組成物の間で自動的に交代する手順で、揮発性組成物を放出することができる。
【0039】
組成物は揮発性組成物放出装置において使用するのに好適な構成成分を包含できる。構成成分は限定されないが、それらのコバッツ指数(kovats Index)(「KI」;非極性シリコーン固定相として5%フェニル−メチルポリシロキサンで決定した場合のもの)に基づいて選択することができる。コバッツ指数(kovats Index)は、被分析物(例えば、揮発性組成物の構成成分)の揮発的属性を、あるカラム上でのn−アルカンシリーズの揮発特性と関連させてそのカラム上に配置する。使用される典型的なカラムはDB−5及びDB−1である。この定義によると、ノルマルアルカンのKIは100nに設定される(式中、n=n−アルカンのC原子の数)。次に、炭素原子数が「n」及び「N」であり、補正された保持時間t'nとt'Nをそれぞれ有する2つのn−アルカンの間の時間t'で溶離する被分析物xのKIは、次式のように算出される:
【0040】
【数1】

非極性からわずかに極性のGC固定相上では、被分析物のKIはそれらの相対的揮発性と相関している。例えば、小さなKIを有する被分析物は、大きなKIを有するものよりもより揮発性である傾向がある。被分析物をそれらの対応するKI値で順位付けすることにより、液体−気体分配系における被分析物の蒸発速度の良好な比較が与えられる。本発明に従う揮発性組成物は、約1800、1750、1700、1650、1600、1550、1500、1450、1400、1350、1300、1250、1200、1150、1100、1050、1000以下、又はそれよりも小さいKIを有することができる。本組成物は、定義されたKIを有する前記構成成分を、約70重量%、80重量%、90重量%、91重量%、92重量%、93重量%、94重量%、95重量%、96重量%、97重量%、98重量%、99重量%以上、又はさらに高い割合で、含むことができる。
【0041】
揮発性組成物の放出は、芯温度を調節することにより制御し、最適化することができる。蒸発速度は芯温度に関連する。このことは以下に定義されるような気体−液体分配係数を用いて記述される:
【0042】
【数2】

式中、Cliは被分析物iの液相濃度であり、Cgiは被分析物iの気相濃度である。次いでKは次式として記述できる:
【0043】
【数3】

したがって、温度が高くなると、被分析物のGC保持は低下することになる。あるKI範囲内の揮発性組成物に適応するように芯の熱を調節するためには、100KI単位のKIの増加に対して10℃の芯温度の増加が得られるように、芯に熱を加える。
【0044】
幾つかの実施形態では、約60℃の芯温度で使用するための揮発性組成物は、構成成分の約80重量%が約1600未満のKIを有し、構成成分の約15重量%が1600より大きく1800未満のKIを有し、構成成分の5重量%未満が1800より大きいKIを有するような、構成成分を含む。こうした実施形態の例は、表2に示されているようなフローラル香料組成物であり、この場合は、構成成分の80.5重量%が約1600未満のKIを有し、構成成分の15.0重量%が1600より大きく1800未満のKIを有し、構成成分の4.5重量%が1800より大きいKIを有する。別の例は、表3に示されているようなフローラル香料組成物であり、この場合は、構成成分の81.5重量%が約1600未満のKIを有し、構成成分の14.5重量%が1600より大きく1800未満のKIを有し、構成成分の4.0重量%が1800より大きいKIを有する。別の例は、表5に示されているようなフルーティー香料組成物であり、この場合は、構成成分の82.5重量%が約1600未満のKIを有し、構成成分の14.0重量%が1600より大きく1800未満のKIを有し、構成成分の3.5重量%が1800より大きいKIを有する。別の例は、表6に示されているようなフルーティー香料組成物であり、この場合は、構成成分の80.0重量%が約1600未満のKIを有し、構成成分の17.0重量%が1600より大きく1800未満のKIを有し、構成成分の3.0重量%が1800より大きいKIを有する。別の例は、表8に示されているようなアウトドア香料組成物であり、この場合は、構成成分の80.5重量%が約1600未満のKIを有し、構成成分の15.0重量%が1600より大きく1800未満のKIを有し、構成成分の4.5重量%が1800より大きいKIを有する。別の例は、表9に示されているようなアウトドア香料組成物であり、この場合は、構成成分の82.8重量%が約1600未満のKIを有し、構成成分の13.2重量%が1600より大きく1800未満のKIを有し、構成成分の4.0重量%が1800より大きいKIを有する。別の例は、表1に示されているような美食(gourmande)香料組成物であり、この場合は、構成成分の84.0重量%が約1600未満のKIを有し、構成成分の13.0重量%が1600より大きく1800未満のKIを有し、構成成分の3.0重量%が1800より大きいKIを有する。
【0045】
幾つかの実施形態では、約40℃の芯温度で使用するための揮発性組成物は、構成成分の約80重量%が約1400未満のKIを有し、構成成分の約15重量%が1400より大きく1600未満のKIを有し、構成成分の5重量%未満が1600より大きいKIを有するように、構成成分を含む。このような実施形態の例は、表7に示されているようなフルーティー香料組成物であり、この場合は、構成成分の80.9重量%が約1400未満のKIを有し、構成成分の14.6重量%が1400より大きく1600未満のKIを有し、構成成分の4.5重量%が1600よりも大きいKIを有する。
【0046】
幾つかの実施形態では、約80℃の芯温度で使用するための揮発性組成物は、構成成分の約80重量%が約1800未満のKIを有し、構成成分の約15重量%が1800より大きく2000未満のKIを有し、構成成分の5重量%未満が2000より大きいKIを有するように、構成成分を含む。このような実施形態の例は、表4に示されているようなフローラル香料組成物であり、この場合は、構成成分の80.0重量%が約1800未満のKIを有し、構成成分の17.0重量%が1800より大きく2000未満のKIを有し、構成成分の3重量%が2000よりも大きいKIを有する。
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】

【0049】
【表3】

【0050】
【表4】

【0051】
【表5】

【0052】
【表6】

【0053】
【表7】

【0054】
【表8】

【0055】
【表9】

幾つかの実施形態では、揮発性組成物はある期間の間単一の供給源から放出され、その後のある期間の間放出が低減される。このように、本発明は、揮発性組成物の放出の「オン」と「オフ」の間で順に交代させる、又はトグルスイッチを切り替えるように企図されている。
【0056】
放出の期間は約15分程の短いものから約48時間程の長いものまでの範囲であることができる。放出の中間の期間(Intermediate periods)は、20、25、30、35、40、45、50、55、及び60分、及び2、3、4、5、6、12、18、及び24時間、並びに他のいかなる中間の時間であることもできる。もちろん、放出期間は任意の列挙された時間から任意の列挙された時間までの範囲であることができ、例えば、20分〜24時間、又は30分〜1時間の範囲であることができる。放出期間の1つの特定例は30分である。別の例は45分である。
【0057】
低減された放出の期間は同様に変更できる。それは約15分程の短いものから約48時間程の長いものまでの範囲であることができる。低減された放出の中間の期間(Intermediate periods)は、20、25、30、35、40、45、50、55、及び60分、及び2、3、4、5、6、12、18、及び24時間、並びにいかなる他の中間の時間であることもできる。もちろん、低減された放出の期間は任意の列挙された時間から任意の列挙された時間までの範囲であることもでき、例えば、20分〜24時間、又は30分〜1時間であることができる。低減された放出期間1つの特定例は30分である。別の例は45分である。
【0058】
低減された放出は、放出における何らかの減少によって特徴付けることができる。放出における減少は、例えば、単位時間当たりに周囲環境へと送達される揮発性組成物の重量(mg)の減少によって、定量的に測定することができ、又は、例えば、使用者の知覚によって、定性的に測定することができる。減少は小さくても大きくてもよく、結果として最小限の放出となることもあり、又は全く放出しないこともあり得る。すなわち、放出はその自然放散(ambient)レベル、すなわちシステムに加えられる故意に適用された外部エネルギー(例えば、熱の形態の電気)の存在なしで起こる放出のレベルまで減少されることができ、屋内環境に関する通常の周囲温度は約65°F〜約75°F(約18℃〜約24℃)である。
【0059】
本発明は2つ以上の揮発性組成物を放出できることを企図している。2つ以上の組成物は同じであることも可能であり、又は異なっていることも可能である。異なる組成物は、同じ芳香若しくは異なる芳香、又は芳香と悪臭抑制のように、同じ性質若しくは異なる性質を示してよい。
【0060】
2つ以上の揮発性組成物の放出は、その2つ以上の組成物が同じ時間に、又は異なる時間に放出されるように行うことができる。このように、幾つかの実施形態では、2つ以上の組成物の放出は全体が重なり合っていることが可能である。一方では、放出は全く重なり合うことがないように設計することもできる。そして放出はまた、放出時間における非常に少ない重なり合いから放出時間における非常に長い重なり合いまでが存在するように設計することもできる。例えば、放出時間の重なり合いは、0.1秒程の短いものから48時間程の長いものまでであることができる。放出は、1つの組成物が放出されたときに、第2の組成物が放出されておらず、第2の組成物が放出されているときに、第1の組成物が放出されていないように設計できる。このように、本発明は2つ以上の組成物の放出を順に交代させ、又はトグルスイッチで切り替えるように企図されている。
【0061】
上述したように、揮発性組成物の放出は、例えば15分程の短い期間から例えば48時間程の長い期間まで起こり得る。放出はその間のいずれの時間であることもでき、幾つかの実施形態では、揮発性組成物の放出は30分である。他の実施形態では、揮発性組成物の放出は45分である。2つ以上の組成物が放出される場合、第1の組成物を30分間送達し(「オン」)、その時間の間第2の組成物を送達しない(「オフ」)ようにできる。それに続く30分間は、第1の組成物がオフであり、第2の組成物がオンである。もちろん、オン及び/又はオフに向かって傾斜をつけて、傾斜相の間に、組成物の放出にいくらかの重なり合いがあるようにすることができる。
【0062】
言うまでもなく、2つ以上の揮発性組成物はいずれの好適な順序で放出されることもできる。揮発性組成物の放出の順序は、あるパターンをなすこともでき、又はランダムであることもできる。本明細書で使用するとき、「パターン」という用語は、反復する順序を指す。異なる揮発性組成物の放出の順序が反復可能である実施形態においては、そのパターンは最初の順序の後もう一度、又は何回でも繰り返すことができる。本明細書で使用するとき、「ランダム」という用語は、揮発性組成物の放出の順序が規則的な様式では繰り返されない順序を指す。放出の手順が、順序がパターンをなす一部の時間と、順序がランダムである一部の時間を含むこともまた可能である。
【0063】
幾つかの実施形態では、2つ以上の揮発性組成物が交互の順序で放出される。例えば、第1の揮発性組成物と第2の揮発性組成物が存在でき、第1の揮発性組成物が前記第2の揮発性組成物に関して交互の期間に放出される。つまり、第1の揮発性組成物を「1」で表し第2の揮発性組成物を「2」で表すとすれば、これらの揮発性組成物は、1、2、1、2、・・・等のような交互のパターンで放出され得る。図1は、こうした放出プログラムを図式的に示している。図1では、この線図は、これらの揮発性組成物がエネルギー源に曝されている(又は「活性化されている」)期間を表している(例えば、それらがその組成物を熱する熱器を有する装置内にあるならば、線図はその熱器がオン及びオフとなされる期間を表すことができる)。3つの揮発性組成物が存在する場合には、それらは図2に示されているように、1、2、3、1、2、3、・・・等のような交互のパターンで放出され得る。
【0064】
これらの図(及びそれに付随する線図)を見るにあたっては、これらが非限定的な実施形態であることを理解すべきである。他の実施形態では、各揮発性組成物に対して別個の揮発源(熱器など)を必要としない。揮発性組成物に対してあらゆる好適な数の揮発源があり得る。例えば、単一の揮発源を1つよりも多い揮発性組成物を揮発させるために使用することができる。このような揮発源は、例えば、異なる揮発性組成物を揮発するために移動が可能であるか、又は(その揮発源と所与の揮発性組成物の間のドア若しくはゲートを開いたり閉じたりすることによるなどして)エネルギー(例えば、熱)を異なる揮発性組成物に選択的に誘導することが可能であり得る。あるいは、(例えば、貯蔵槽が熱器の上で選択的に移動できるように)貯蔵槽が揮発源に関して移動可能であることもできる。
【0065】
本明細書で使用するとき、「区間(interval)」という用語は、放出手順における最も短い期間を指す。本明細書で使用するとき、「個々の放出期間」という用語は、所与の揮発性物質(又は揮発性物質の組み合わせ)が放出順序において放出される、個別の期間を指すことができる。これは一般に、例えば熱器が、所与の揮発性物質又は揮発性物質の組み合わせに対してオンにされる期間に相当し得る(但し、熱器の動作と揮発性物質の放出の間にわずかな時間差があることもある)。個々の放出期間はまた、本明細書において、第1の期間、第2の期間等(そのそれぞれが開始と終了を有する)を指すことができる。本明細書で使用するとき、「噴射」という用語は、揮発性組成物の少なくとも1つの構成成分の逆流を許容するために熱芯が低減された温度に維持された後の、揮発性組成物の初期の及びピーク時の放出を指す。異なる揮発性組成物が等しい期間にわたって放出される必要はないことを理解すべきである。例えば、1つの揮発性組成物が放出された後に、異なる揮発性組成物がもっと短い期間、あるいはもっと長い期間の間放出されることができる。別の例では、1つの揮発性組成物が放出された後、異なる揮発性組成物が放出される前に同じ揮発性組成物の別の区間(interval)が続くことができる。異なる揮発性組成物が等しい期間の間放出されない場合には、揮発性組成物がほぼ同時に空になるように、放出される累積時間がより長い組成物の量をより多くするのが望ましいこともある。可能な交互の放出順序は多数存在する。3つの揮発性組成物の場合、幾つかの他の可能な放出パターンの非限定例としては、(1、2 2、1、3 3);(1、2、3、3、2、1);及び(1、2 2 2 2、1 1、3 3 3 3、1)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0066】
本方法の幾つかの実施形態では、揮発性組成物は約15分以下である個々の放出期間の間放出されることができるが、各放出期間は15分よりも長いことがより望ましい場合もある。香り物質の場合には、もっと長い期間がより望ましい場合もある。本方法の一実施形態では、揮発性組成物は、それぞれ15分よりも長く約12時間以下、又は約24時間以下、又は約48時間以下である、又はそれより長い個々の期間の間、交互に放出される。本明細書全体にわたって記載されるあらゆる数値範囲は、より広い数値範囲内にあるあらゆるより狭い数値範囲も、すべて本明細書に明確に記載されたものとして包含する。したがって、別の非限定的な実施形態では、揮発性組成物は15分よりも長く又は約1時間以上で且つ2時間未満である期間の間交互に放出される。一実施形態では、各揮発性組成物は約72分の期間の間放出される。一実施形態では、各揮発性組成物は約30分間放出される。
【0067】
揮発性組成物は、1つのものが他のものの放出期間の終了のすぐ後に続くように放出されてもよい。他の実施形態では、揮発性組成物は、それらのうちの1つのものの放出期間の終了時と別の揮発性組成物の放出期間の開始時との間に間隔があるように放出されることができる。図3は、2つの揮発性組成物を放出するための放出プログラムの1つの非限定的な実施形態を示している線図であり、揮発性組成物の放出の間に間隔があり、ここで「g」は間隔を示している。他の実施形態では、揮発性組成物は、2つ又はそれより多い揮発性組成物の放出期間において重なり合いが存在するように放出されることができる。図4は、2つの揮発性組成物を放出するための放出プログラムの1つの非限定的な実施形態を示している線図であって、揮発性組成物の放出の重なり合いが存在し、ここで記号「&」は両方の揮発性組成物が放出されている放出期間を示している。図5は3つ(又はそれより多い)揮発性組成物を放出するための放出プログラムの1つの非限定的な実施形態を示しており、1つの揮発性組成物の放出と2つの他の揮発性組成物の放出との重なり合いが存在する。他の実施形態では、1つ以上の揮発性組成物が連続的に放出され、別の揮発性組成物は15分よりも長い期間の間放出されることが可能である。
【0068】
揮発性物質のうちの1つのものの放出時間の終了と別の揮発性物質の放出期間の開始との間に間隔を有するのが望ましい場合、その間隔はいかなる好適な持続期間であることもできる。揮発性物質の放出の間の間隔期間はその前の又はその後の放出期間の持続時間の0%よりも長く100%まで、又はそれより長くしてもよい。2つ、又はそれより多い揮発性物質の放出期間中に重なり合いを有することが望ましい場合には、その重なり合いはいかなる好適な持続期間であることもできる。後に続いて放出される揮発性物質の放出期間は、第1の揮発性物質が放出されている時間の0%よりも長く100%まで重なり合ってよい。ある特定の実施形態では、例えば、異なる揮発性物質の間に約25%の重なり合いがあることが望ましいこともある。例えば、香り物質「A」を60分間放出した後に香り物質「B」を60分間放出する代わりに、香り物質「A」を45分間放出し、この次に香り物質「A」と「B]の両方を30分間放出して、その次に香り物質「B]を45分間放出することができる。この場合、30分は、香り物質「A」及び「B」及びそれらの組み合わせの放出時間全体(すなわち120分)の25%である。
【0069】
間隔又は重なり合いの期間は自動的に制御できる。揮発性物質を放出するのに用いられる物品(類)又は装置(類)のある特定の実施形態では、その物品(類)又は装置(類)には、使用者が放出期間におけるあらゆる間隔及び/又は重なり合いの持続期間を制御できるようにするための制御装置を設けることができる。例えば、ある期間の間の個々の香り物質だけでなく、別の期間の間ブレンドされた香り物質を使用者に嗅がせることが望ましい場合など、重なり合いの手順はいずれの目的のために使用してもよい。
【0070】
ある特定の実施形態では、本方法が炎を用いない(例えば、ろうそくではない)物品(類)及び/又は装置(類)によって動作されるのが望ましい。ある特定の実施形態では、本方法が他の媒体(このような他の媒体としては、映画、テレビ等を挙げてよいがこれらに限定されない)から独立して動作されるのが望ましい場合がある。他の実施形態では、他の媒体と協調された様式でその方法を動作することが望ましい場合もある。
【0071】
揮発性組成物を放出するためのあらゆる好適な放出プログラム又はスキームが存在し得る。香り物質が放出されているある特定の実施形態では、装置が単一の香りの持続した印象よりもむしろ交互の香り体験を提供することが望ましい。一実施形態では、人を目覚めさせるために1つの香り物質が提供され、彼らが眠りにつこうとしている間の一定期間の間別の香り物質が提供される、昼/夜放出プログラムを提供するのが望ましい場合もある。このように、幾つかの実施形態では、同じ香り物質を毎日同じ時刻に送達するのが望ましい場合もある。他の実施形態では、型にはまった香り体験を回避することが望ましい場合もある。例えば、放出パターンが24時間にわたって同時性を持つのではなく、各24時間の期間の昼又は夜の間の所与の時刻において、使用者が異なる香り体験を有するようになされるのが望ましい場合もある。多数のその他の実施形態が可能である。
【0072】
全放出プログラム(又は単に「放出プログラム」)とは、開始から終了までの個々の放出期間の全体的な順序を指す。ある特定の実施形態では、放出プログラムは連続的であるのが望ましい。「連続的」という用語は、放出プログラムに関連して使用されるとき、一旦プログラムが開始されると、全期間にわたって計画された放出順序が存在するということを意味する。この放出プログラムは上述したような、放出における間隔が存在する期間を包含できる。揮発性組成物の連続した放出が必ずしも存在しないが、それでもなおこれは連続的放出プログラムであるとみなされる。しかしながら、放出プログラムは、所望ならば、使用者が中断する(例えば、スイッチを切る)ことが可能であることを理解すべきである。つまりは、本方法はユーザーインターフェースを提供でき、このユーザーインターフェースは使用者にその放出プログラムを中断する能力を提供できる。ある特定の実施形態では、放出プログラムは、揮発性組成物の少なくとも1つが実質的に空になるまで、連続的に又はほぼ連続的に動作されるように設計されてよい。ある特定の実施形態では、放出プログラムは、すべての揮発性組成物が実質的に空になるまで連続的に動作されることが望ましく、このことがほぼ同時に起こることが望ましい。放出プログラムは、30日、60日、又はより短い若しくはより長い期間、あるいは30〜60日の間のいずれかの期間を包含するがこれらに限定されない、いずれの好適な長さも有することもできる。
【0073】
本発明に従って使用され得る装置の1つの例は芯を具備するものである。こうした装置を使用する場合、芯は揮発性組成物を貯蔵槽から放出点まで運ぶための導管として作用する。芯は一般には多孔質であるか又は細孔を包含しており、この細孔が揮発性組成物の流れを与える。芯は、セルロース繊維類、金属、プラスチック、セラミック、グラファイト、及び布地が挙げられるがこれらに限定されない、種々の材料から作製できる。プラスチックなどの合成材料は、それらの性能が均一であるという理由で望ましいことがある。多孔質芯を形成するのに使用できるプラスチック材料としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、超高分子量ポリエチレン(UHMW)、ナイロン6(N6)、ポリプロピレン(PP)、ポリビニリジンフッ化物(PVDF)、及びポリエーテルスルホン(PES)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0074】
芯はそれらの平均細孔寸法に関連して記述することができる。芯はいずれの好適な細孔寸法を有していてもよい。米国特許出願2002/0136886A1、名称「液体蒸発器のための多孔質芯(Porous Wick for Liquid Vaporizers)」には、細孔寸法の標準測定法について記載されている。ある特定の実施形態では、本発明で有用な芯の平均細孔寸法は、約10ミクロン〜約500ミクロン、又は約50ミクロン〜約150ミクロン、又は約60〜約100の範囲、又は約70ミクロンである。芯は約15%〜約85%、又は約25%〜約50%の平均細孔容積を有することが可能である。同様に、芯は所望の用途のみによって決まり、長さを変更できる。ある特定の実施形態では、芯は1mm程と短いか若しくは100mm程まで長いか、又はそれより長いか、又はその間のいずれの長さであることもできる。芯は長さが約5mm〜約75mm、又は約10mm〜約50mmの範囲であることができる。
【0075】
図6〜図8は上述の方法に従う、揮発性組成物を放出するための装置20の1つの非限定的な実施形態を示している。装置は予め選択された放出プログラムを有することができ、このプログラムは、消費者が装置を購入したときには既にプログラムされており、又はこの装置は幾つかの放出プログラムの選択性を与えられていることができ、消費者はこれらのプログラムの間で選択できる。これらの又は他の実施形態においては、装置20は、コンパクトディスク(CD)プレイヤーに用いられている「ランダムプレイ」技術と類似の技術を用いて異なる揮発性物質の間でランダムに切り替わることができる。
【0076】
図6〜図8に示されているように、装置20はハウジング22を含み、ハウジング22は少なくとも間接的にはハウジング22に接続されているプラグ26によって電気コンセント24に支持されている。装置20は、少なくとも1つの容器又は貯蔵槽をさらに含む。図6〜図8に示されている実施形態では、装置20は2つの貯蔵槽28及び30を含んでいる。貯蔵槽28及び30は少なくとも第1の揮発性組成物32及び第2の揮発性組成物34を含有している。ハウジング22は貯蔵槽28及び30のためのホルダーとして機能してもよく、装置の他の構成要素のすべてについては下記で説明する。
【0077】
貯蔵槽28及び30はいずれの好適なタイプの容器をも含むことができ、いずれの好適な材料で作製されることもできる。貯蔵槽の好適な材料には、ガラス及びプラスチックが挙げられるがこれらに限定されない。貯蔵槽28及び30は、揮発性物質を保持するのに好適であるいずれのタイプの容器を含むこともできる。貯蔵槽28及び30はハウジング22の一部をなしていてもよく、又はそれらはハウジング22などの装置20の一部に着脱可能に接合された別個の構成要素であってもよい。単一の貯蔵槽が1種類よりも多い揮発性物質を保持することもまた可能である。このような貯蔵槽は、例えば、揮発性物質のための2つ以上の区画を有することが可能である。図6〜図8に示されている実施形態では、貯蔵槽28及び30は2つの別個のボトルを含む。
【0078】
図6〜図8における貯蔵槽28及び30は、香りの付いた香油の形態の揮発性組成物を含有している。貯蔵槽は、揮発性物質を封じ込めるための封36、及び揮発性物質を分配するための芯38をさらに含む。装置20及び/又は貯蔵槽28及び30は、1つ以上の揮発性物質の芯38をその揮発性物質が放出されていないときに覆うための追加の封をさらに含んでいてもよい。
【0079】
本明細書で使用するとき、「揮発性組成物」という用語は、蒸発可能である物質、又は蒸発可能である1つ以上の物質若しくは蒸発可能である物質を含む1つ以上の物質からなる個別のユニット、を指す。したがって、「揮発性組成物」という用語は、全体として単一の揮発性物質からなる組成物が挙げられる(がこれらに限定されない)。本明細書で使用するとき、「揮発性物質(volatile materials)」、「芳香物質(aroma)」、「芳香剤(fragrance)」、及び「香り物質(scents)」という用語は、心地良いにおい又は快いにおいが挙げられるがこれらに限定されず、ひいては殺虫剤、エアフレッシュナー、防臭剤、アロマコロジー、アロマセラピー、殺虫剤として機能する物質、あるいは雰囲気を調整する、変える、若しくは他の方法で満たす、又は環境を変える作用をする他のあらゆる物質をも包含する。香料、芳香物質、及び香り物質が挙げられるがこれらに限定されない特定の揮発性組成物は、1つ以上の揮発性物質を含むことが多いことを理解すべきである(これらは、揮発性物質の集合体からなる独特の及び/又は個別のユニットを形成することがある)。「揮発性組成物」という用語は、少なくとも1つの揮発性構成成分を有する組成物を指し、必ずしもその揮発性組成物のすべての構成成分物質が揮発性である必要はないということを理解すべきである。本明細書で記載される揮発性組成物は、従って、非揮発性の構成成分を有していてもよい。本明細書において揮発性組成物が「放出される」として記載されている場合、これはそれらの揮発性構成成分の蒸発を指し、それらの非揮発性構成成分が放出される必要はないことを理解すべきである。本明細書において重要な揮発性組成物は、固体、液体、ゲル、カプセル、芯、及び担体材料、例えば揮発性物質を含浸され又は含有する多孔質材料、並びにこれらの組み合わせが挙げられるがこれらに限定されない、あらゆる好適な形態であることができる。
【0080】
香り物質又は芳香剤の場合には、異なる香り物質は類似し、関連し、相補性であり、又は対照的であることができる。しかしながら、香り物質は、それらの異なる香り物質が香りへの慣れの問題を回避するために使用されている場合には、類似しすぎることは望ましくないこともあり、そうでないと、香りを体験している人々が異なる香りが放出されていることに気付かない場合がある。異なる香りは、共通の主題によって、又は何らかの他の態様で、互いに関連することができる。例えば、異なる香りはすべてがフローラルの香り、フルーツの香り等であることができる。異なっているが相補性である香り物質の例は、バニラの香りとフレンチバニラの香りであり得る。
【0081】
本発明はまた、消費者に対し、芳香剤組成物などの適合性の揮発性組成物の選択を提供する方法を含む。一実施形態では、このような方法は1つ以上の放出装置で使用するための芳香剤組成物を提供することを含む。より具体的には、一実施形態では、この方法は1つ以上の放出装置で使用するように構成された貯蔵槽における2つ以上の芳香剤組成物の選択性を消費者に提供すること、及びその2つ以上の芳香剤組成物のうちのどれが一緒に使用するのに適合性であるかということを消費者に伝える何らかの種類のしるしを提供することを含むことができる。他の実施形態では、貯蔵槽は放出装置(例えば、プラグイン装置、エアゾール缶等)として機能できる。ある特定の実施形態では、この方法は、消費者に対し相補性であり、しかも識別可能なように異なっている2つ以上の芳香剤組成物を予め選択できる。他の別の実施形態では、この方法はこのような異なる揮発性組成物を、(2つ、3つ、又はそれより多い)揮発性組成物類の束の包みなどで、一緒に販売することを含むことができる。前述のあらゆる実施形態を、それらの最初の製品(類)、並びにその詰め替え品を消費者に供給するのに使用してよい。ある特定の実施形態では、本方法は芳香剤組成物以外の、又はそれらに加えた揮発性組成物の種類(例えば、芳香剤組成物と悪臭低減組成物)を消費者に供給することを含んでもよい。幾つかの実施形態では、こうした方法は芳香剤分配キットを提供することを含み、各キットは1つ以上の貯蔵槽を含む香料モジュール、及び少なくとも1つの香料モジュールを受け入れるようになっている少なくとも1つの加熱芯型香料組成物分配装置を含む。幾つかの実施形態では、このキットはまた、前記加熱芯型香料組成物分配装置と作動可能に連通していない少なくとも1つの詰め替え用香料モジュールをも包含する。
【0082】
本発明に従う芯装置は、幾つかの実施形態では受動的な、又は自然放散型(ambient)の装置であってもよい。揮発性物質は熱の適用によらずに蒸発される。他の実施形態では、芯装置は本明細書でさらに説明するような熱芯装置である。
【0083】
図6〜図8に示されている装置20の実施形態は、揮発性物質をそれらの「休止している」状態から活性化された状態に活性化するための機構をさらに含む。このような構成要素としては、揮発性物質を蒸発させ又は熱する構成要素を挙げてよいが、これらに限定されない。装置20はまた、揮発性物質を環境又は大気中に拡散させる又は移送するための、ファンのような構成要素を含有してもよい。様々な実施形態において、装置20は、熱器、ファン、若しくはその両方、又は他のタイプの機構を含んでよい。
【0084】
図6〜図8に示されている実施形態では、装置20は熱器40及び42のような、少なくとも1つの熱装置又は熱器を含んでいる。熱器40及び42はあらゆる好適なタイプの熱器を含むことができ、装置20中の又は装置20と関連したあらゆる好適な場所に配置されることができる。図6〜図8に示されている実施形態では、熱器40及び42は、揮発性組成物のボトルから突出している芯38を少なくとも部分的に取り囲む円形リングの形態である熱要素を含む。
【0085】
図6〜図8に示されている装置20は、装置20によって放出されている揮発性物質を変更するスイッチ機構50をさらに含む。スイッチ機構50は、その装置に放出されている揮発性物質を変えさせる、あらゆる好適なタイプの機構を含むことができる。図示されている実施形態では、スイッチ機構は、放出されることが所望される揮発性物質に対して熱器を作動させるように熱器の起動を制御する。好適なスイッチ機構としては、アナログタイミング回路、デジタル回路、アナログ回路とデジタル回路の組み合わせ、マイクロプロセッサ、及び形状記憶合金(NiTiワイヤ)又はバイメタルスイッチなどの機械起動スイッチが挙げられるがこれらに限定されない。
【0086】
図9に示されているように、非限定的な一実施形態では、スイッチ機構50はプリント基板(すなわち「PCB」)の形態の、アナログ回路とデジタル回路の組み合わせを含む。この回路は、片面PCボード52;C1で示されるコンデンサ;一対のダイオードD1及びD2;3つのトランジスタQ1、Q2、及びQ3;5つのレジスタR1〜R5、3つのカウンタU1、U2、及びU3;第3のダイオードZ1を含む。抵抗熱器(幾つかのタイプのものが市販されている)が挙げられるがこれらに限定されない、あらゆる好適なタイプの熱器を熱器40及び42のために使用できる。熱器40及び42、並びに壁用電源プラグ26はまた、ワイヤ66によって回路基板52に接続される。回路のための好適な構成要素は次の表に記述される:
【0087】
【表10】

回路の構成要素は貫通孔又は表面実装型であってよい。図示されている実施形態では、貫通孔構成要素を有する38×66mm片面PCボード52が使用される。PCボード52を含む材料は、FR−4エポキシ系ファイバーグラスなどの標準的な材料であることができるが、あらゆるUL規格認定取得済みの材料が許容される。壁用電源プラグ26は、PCボード内へのおよそ100mmのピグテールを有する成形壁用プラグである。図10は回路の一例の配線図である。この回路は、各熱器に対して予め選択された時間、スイッチを入れたり切ったりしながら、数十時間の期間にわたって2つの経路の間で電流を切り替える、タイミング機能を提供する。
【0088】
他の実施形態では、スイッチ機構としては、(1)揮発性組成物(類)を分散させるために使用されるファンのモーターの回転数を数えて、特定の回転数の後、装置が1つの揮発性組成物から別の揮発性組成物へと切り替わるようになされた、ピックアップを有する磁気センサー;及び(2)二種の(dual)形状記憶合金、又は周囲温度で回路を完成させ、ある特定の温度に達すると回路を断つことができるバイメタルストリップ若しくはスイッチを含む装置、の代替タイプのスイッチ機構が挙げられるがこれらに限定されない。この材料は、温度が下げられると再び回路を完成させることができ、こうして熱器をオンの状態に保ち、次には熱器をオフにする温度調節器として作用できるので、2通りの効果が利用できる。形状記憶合金は、パルス発生器としてだけでなく熱器として機能してもよい。
【0089】
スイッチ機構の他の実施形態は、1つ以上の揮発性組成物の放出を制御するための移動可能なカバーを具備している。ある特定の実施形態では、揮発性組成物を分配するための装置は、1つ以上のチャンバを閉じるか、又は他の態様で揮発性組成物を分配するための2つ以上の別個のユニット若しくはモジュールによって占有される2つ以上の位置若しくは空間に関して位置決めする、キャップ又は他の構造を含む。他の実施形態では、揮発性組成物を分配するための装置は、揮発性組成物を分配するための2つ以上の別個のユニット又はモジュールを覆う、キャップ又は他の構造を含む。キャップ構造は2つ以上の通気穴又はオリフィスを画定し、任意で、通気孔、ルーバー又はこれらの組み合わせを含む。キャップ構造は、自動的に又は手動で移動して1つ以上の別々のチャンバ若しくは空間を覆い、揮発性組成物を分配するための2つ以上の別個のユニット若しくはモジュールを閉じたり露呈させたりすることができる移動可能なカバーを含む。一実施形態では、カバーは、使用の際、交互に少なくとも1つのチャンバを覆う一方で少なくとも1つのチャンバによって画定される空間を露出させるように移動される。任意で、キャップは揮発性組成物分配装置を家の建築構造へ、又は家具若しくは車の備品の部品へ固定し若しくは位置決めするのを容易にするクリップ構造を有してもよい。図11は、2つの通気穴を画定するキャップ構造、及び1つの若しくは他の通気穴を露出させるか、又はどちらの通気穴も露出させないことを選択的に行うために、つまみを回動させることによって手動で作動される回動可能なカバーを示している。幾つかの実施形態では、キャップ構造は自動的に作動されてもよい。幾つかの実施形態では、装置は、装置又はシステムの通気部分内若しくは通気部分群内からの揮発性組成物の揮発を促進するように、キャップ構造と動作可能に連通するファンをさらに含んでもよい。キャップ構造を有する装置と共に使用するための特に有用な揮発性組成物分配モジュール及び物質としては、受動的な、又は熱されない芯、液体、スラリー、ゲル、及び固体のビーズが挙げられる。
【0090】
装置20は多くの追加的な任意の特徴を含むことができる。装置には、放出されている揮発性物質が変わったことに人がさらに気付かされるような指示装置を設けることができる。こうした指示装置は視覚的及び/又は聴覚的であることができる。例えば、香り物質の場合、こうした指示装置は、所与の時刻にどの香り物質が放出されているのかが人に分かるようにしてもよい。図6〜図8に示されている実施形態では、指示装置はライト70及び72の形態である。別の例では、装置20の少なくとも一部(例えばハウジングの全部若しくは一部)又は貯蔵槽は熱されたときに色が変わる種類のプラスチックで作製されていてもよい。
【0091】
装置には追加の使用者制御装置を設けることができる。装置は「オン/オフ」スイッチを具備し、使用者が装置を電気ソケットから取り外すことなしに装置をオンにしたりオフにしたりすることが可能となるようにできる。装置には、使用者が、1つ以上の揮発性組成物の放出期間、及び/又は異なる揮発性組成物の放出の間の時間、又は揮発性物質が重なり合う期間の間放出される時間を制御できるようにする、制御装置を設けることができる。例えば、非限定的な一実施形態では、装置に15分よりも長く48時間以下の期間の間各揮発性物質を放出する能力が備えられている場合、装置には使用者が1つ以上の揮発性組成物のための放出期間を、例えば30分、45分、若しくは72分、又は1時間に設定できるようにする制御装置を設けることができる。
【0092】
本装置には追加的な使用者制御装置を設けることができる。装置には、使用者が熱源の温度設定を1つ以上の揮発性組成物に対して調節できるようにするための、温度調節器又は他のスイッチを含むことができる。設定は、特定の揮発性組成物に対して予め規定されてもよく、又は芯に適用されるべき選択された温度に基づいて調節されてもよい。
【0093】
本装置はまた、装置及び揮発性組成物の1つ以上の貯蔵槽を包含するキットの形態で販売されることもできる。この装置及び/又はキットはまた、特定の結果を生み出すために使用してよい特定の放出期間について使用者に指示する使用のための説明書、及び/又は所与の空間のどこにその装置を配置すべきかについての説明書を包含することができる。例えば、その説明書は、その装置が置かれる部屋、車両等の大きさを基準にして装置を設定するための指示を包含してもよい。こうした説明書はまた、より強く香りを認識するためには、香り物質の放出の間でのより頻繁な変更を選択するという、使用者への指示を包含してもよい。説明書はまた、他の装置と関連して、その装置をどのように操作するかを指定するために提供されてもよい。説明書は、あらゆる好適な形態、例えば、書面、音声、及び/又はビデオで提供できる。
【0094】
本装置は、電気コンセントにプラグ接続する必要がないように、電池で電力供給することもできる。装置はまた、電流源に接続して電力供給され、また電池によっても電力供給する、その両方ができるように構成することができる。装置にはまた、自動車のたばこ用ライターにプラグ接続することができるようなアダプターを設けることもできる。加えて、装置には、使用者が装置のいずれかの又はすべての放出の性質(放出されている揮発性物質の変更が挙げられるがこれらに限定されない)を装置に触れずに制御することを可能にする遠隔制御装置を設けることができる。
【0095】
本装置は、アナログ回路と比べると少ない構成部品を有し、ロット番号ごとの回路品質が改良されたマイクロプロセッサを含んでいてもよい。マイクロプロセッサは動作を変更するように調整することによって使用者が温度特性をプログラムして制御できるようにする。所望ならば、マイクロプロセッサはユーザーインターフェースに接続されてもよい。これはあらゆる好適なタイプのユーザーインターフェースであることができる。ユーザーインターフェースのタイプの例としては、LCDスクリーン及びLEDが挙げられるがこれらに限定されない。加えて、マイクロプロセッサは構成要素が複数の装置(部屋の異なる部分に配置されたもの、又は異なる部屋に配置されたものなど)を互いに連絡させることを可能にする。例えば、マイクロプロセッサは遠隔制御装置が赤外線ビームを介してデジタル信号を送り別の装置を「オン」又は「オフ」にすることを可能にできる。
【0096】
多数の他のタイプの装置が可能である。例えば、他の実施形態では、本明細書に記載された方法は、2つ以上の分配装置によって動作することができる。このような分配装置は、エアゾール噴霧器が挙げられるがこれらに限定されない、あらゆるタイプの分配装置を含む。図12はエアゾール噴霧器80及び82の配列の非限定的な一実施形態を示している。このような方法で使用されるエアゾール噴霧器はあらゆる好適な態様で機能できる。幾つかの実施形態では、エアゾール噴霧器はそれぞれ独立に作動してもよく、例えばそれらが所望される態様で揮発性物質の放出を切り替えるようにタイマー84で作動してもよい。分配装置は、電池86によるなどの、あらゆる好適な態様で電力供給されることができる。分配装置80及び82は互いに隣接して配置されてもよく、又はそれらはその揮発性物質を放出することが所望される空間の異なる部分に配置されてもよい。図13は分配装置88の別の非限定的な実施形態を示している。図13では、分散装置88は、エアゾール噴霧器90及び92のような2つ(又はそれより多くの)ディスペンサーを含む、単一の装置である。装置88は1つ以上のタイマー、又はセンサー96で作動してもよく、1つ以上の電池、又は他の電源により電力供給することができる。
【0097】
幾つかの実施形態では、装置は光、物音及び/又は動きに反応するセンサーによるなど、何らかの刺激に反応してオン・オフされるように構成することができる。例えば、装置の1つは光を感じたときにオンとされるように構成でき、別の装置は光を感じたときにオフにされるように設定できる。別の実施例では、マイクロプロセッサは動きセンサーと共に使用されて、装置(例えば、装置中の熱器、及び/又はファン)を作動させることができる。例えば、装置は動きセンサーの付近で人が動くまでずっとオフとなされていることができる。次いで、装置は、人が動きセンサーの付近で歩くとオンにされることができる。マイクロプロセッサの使用は、揮発性物質の放出の特徴の制御における柔軟性を提供する。これは、放出の特徴を変更することを望めばそのマイクロプロセッサを交換することが可能であるからである。マイクロプロセッサを交換することで、回路全体を改修する必要がなくなる。
【0098】
本記述全体にわたって言及したすべての特許、特許出願(及びそれに基づいて発行された特許及び関連して発行されたあらゆる外国特許出願)、並びに公開公告の開示内容を本明細書に参考として組み込む。但し、本明細書に参考として組み込まれる文献のいずれもが本発明を教示又は開示していないことを明言する。
【0099】
本明細書全体にわたって記載されるあらゆる最大数値限定は、それより小さいあらゆる数値限定も、本明細書に明確に記載されたものとして包含されると理解される必要がある。本明細書全体にわたって記載されるあらゆる最小数値限定は、それより大きいあらゆる数値限定も、本明細書に明確に記載されたものとして包含する。本明細書全体にわたって記載されるあらゆる数値範囲は、より広い数値範囲内にあるあらゆるより狭い数値範囲も、すべて本明細書に明確に記載されたものとして包含する。
【0100】
本発明の特定の実施形態について記載したが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく本発明の様々な変更及び修正を実施できることが当業者には明らかである。さらに、本発明をある特定の実施形態と関連して説明してきたが、これは説明を目的とするものであって、限定を目的とするものではなく、本発明の範囲は、添付の請求項によって定義され、これは従来技術が可能にするのと同様に幅広く考えられるべきである。
【実施例】
【0101】
実施例1:プラグイン装置の香料蒸発は経時的に減少する
香り物質への長期の曝露は慣れ効果を生じ、それにより人は同じ濃度の中にいても特定の香料の存在を認識しにくくなることは、当該技術分野で公知である。市販の香り物質放出装置の使用ではこの現象が起きる。
【0102】
しかしながら、慣れの現象に加えて、さらに市販の装置による香り物質出力の経時的な減少が、使用者が香りを認識しなくなることの原因となるものと、本出願人らは考える。この仮説を試すために、市販の製品グレード(GLADE)(登録商標)スカイブリーズ(Sky Breeze)(登録商標)をプラグ接続し(すなわち、オンにし)長期間にわたって香り物質を放出させた。装置の出発時の内容量を測定し、毎日測定を行って失われた量を決定することにより、蒸発速度(又は放出速度)を決定した。
【0103】
図14は研究の結果を示している。図から分かるように、蒸発速度は経時的に顕著に減少している。実際に、蒸発速度は一週間のみの使用後、50%近く落ち込んだ。加えて、連続的に使用された芯と、トグル制御された芯には視覚的な違いがある。(図15参照、この図は、21日間連続的に使用された芯の写真を、トグルスイッチで42日間オンオフされた芯の写真と比較して示している。
【0104】
実施例2:芯の目詰まりが蒸発速度の減少の原因となる
観察された蒸発速度の減少は、より揮発性の高い化合物の選択的蒸発及び芯の目詰まりを包含する、多くの因子により引き起こされた。蒸発速度の減少の背後にある機構的な理由を決定するために、さらなる研究が実施された。
【0105】
グレード(GLADE)(登録商標)バニラブリーズ(Vanilla Breeze)(登録商標)及びハワイアンブリーズ(Hawaiian Breeze)(登録商標)香料装置を連続して28日間オンにした。28日の終了時、芯を装置から取り外して液体窒素内で凍結させた。芯の頂部、中間部、及び底部からサンプルを採取した。それと同時に、貯蔵槽に残存している揮発性組成物をサンプリングした。サンプリングされた揮発性組成物をガスクロマトグラフィーで分析して、それらのコバッツ指数(kovats Indices)を決定した。図16及び図17はその結果を図式的に示している。
【0106】
図16から分かるように、芯は試験期間にわたって目に見えて変化する。芯の底部は色が最も薄く、芯は頂部に向かうにつれてより濃くなる。このことはまた、図15の写真でも明らかである。
【0107】
図17は芯が詰まる際に何が起こるのかを的確に示している。貯蔵槽の内容に、異なる構成成分間の差はほとんどなく、低い、中間の、及び高い揮発性の構成成分は対照とほとんど差がなく、また互いにほとんど差がなかった。同じことが芯の底部及び中間部についても観察された。
【0108】
ところが、芯の頂部は著しい違いを示した。高揮発性化合物はほとんど消耗されており、中間の揮発性の化合物は対照よりもわずかに高かった。最も顕著なことに、低揮発性化合物が対照よりも150%よりも多く芯の頂部に集められていた。芯の頂部(揮発の主要な場所)における揮発性化合物の構成要因(population)は極めて低揮発性構成成分よりに偏っていた。このように、これらの低揮発性構成成分が蒸発速度を事実上抑制し、実質的に「芯を目詰まりさせ」ていた。
【0109】
理論に束縛されるものではないが、起こっている事柄は芯の頂部における低い揮発性を有する物質の蓄積であり、それによってより揮発性の高い物質が芯の頂部に移動して蒸発するのが妨げられている。それと同時に、より揮発性の高い揮発性組成物中の化合物が選択的に蒸発し、芯の頂部ではより揮発性の低い化合物が濃縮され、目詰まりの現象がさらに悪化する。こうして、追加的、又は相乗的でさえあり得る多くの理由のために、揮発性物質の蒸発は、芯装置の長期間の使用の間に急速に減少する。芯への持続した熱の形態で装置に連続的に加えられるエネルギーにより、これらのより揮発性の低い化合物が濃度勾配に対抗して移動させられ、それらは芯の頂部で強制的に蓄積される。市販のプラグイン製品からの放出は、一週間のみの使用中に約50%の落ち込みを示した。(図14参照。)熱芯装置のトグルスイッチを「オフ」の状態に故意に切り替えることにより、又は単一の若しくは複数の芯装置の放出の間に間隔を導入することにより、揮発性構成成分は芯の内部で拡散し貯蔵槽内の揮発性構成成分混合物の組成物に近い平衡濃度に達する。こうして、トグルスイッチを「オフ」にすること、又は芯から熱を取り除くことによって放出中に間隔を与えることは、芯を「詰まらせる」濃度勾配を正常化する。
【0110】
実施例3:トグル切り替えは目詰まりを低減させ、蒸発速度を改善する
蒸発速度の減少が芯の目詰まりに起因していたことが発見された時点で、問題を解決するための段階が取られた。驚くべきことに、芯による蒸発装置に休止期間を許容する(一般には芯に加えられた熱を弱めることによる)ことにより、芯の内部で揮発性物質の逆流が起こり、それによってより揮発性の低い構成成分が濃度勾配により流動して平衡状態に戻ることが可能となることが発見された。休止時間が終わってより揮発性の低い構成成分の逆流が起こった時点で、限定された期間の間システムにエネルギーを再適用し、その期間に、組成物の揮発が再度起こる。このサイクルは何度でも繰り返すことができる。
【0111】
図18は、単一芯の装置をトグルスイッチでオンオフすることにより、蒸発速度を著しく改善できることを示している。簡単に言えば、図18は、市販の製品、グレード(GLADE)(登録商標)スカイブリーズ(Sky Breeze)(登録商標)に関する2つの蒸発曲線を示しており、これらは2つの異なる方法で作動された。1つの装置はおよそ4週間の間連続状態に保持された(「トグル制御なし」)。もう一方の装置は8週間にわたり72分の区間(interval)でオンオフ循環された(「トグル制御」)。(トグル制御された装置を試験するには2倍の時間を要したので、「日」の軸の値を2で割り、比較可能な曲線を達成するようにした。)
図18から分かるように、芯装置をオンオフ循環させることで、装置からの蒸発速度において顕著な増加が生じる。図15の写真はオン/オフ循環が芯の目詰まりを著しく低減させるという証拠を与えている。
【0112】
実施例4:より大きな細孔寸法は蒸発特性を改善する
芯の目詰まりが蒸発を減少させる原因であり、目詰まりを低減させることによって蒸発を増大させることができたということが発見された時点で、蒸発を改善するための方法を特定するためにさらなる段階が取られた。この実施例は、細孔寸法を増大させることにより蒸発が増大されることを示している。
【0113】
簡単に言えば、エアウィック(AIR WICK)(登録商標)カントリーベリーズ(登録商標)香料装置を、2つの芯:a)平均細孔寸法36ミクロン、及びb)平均細孔寸法73ミクロン、を用いて試験した。2つの芯は、装置を1ヶ月よりも長い間トグルスイッチでオンオフすることにより連続して作動させることによって試験された。図19はその結果を示している。
【0114】
図から分かるように、最初の1週間以内は、大きな細孔寸法の芯が小さな細孔寸法の芯よりも著しく良好に機能した。この差は第2週では減少し、第3週までに差はなくなった。性能の低い点でのこの収束は芯の目詰まりに起因すると考えられる。芯の目詰まりは大きな細孔寸法の芯よりも小さな細孔寸法の芯でかなり早く起こる。これらの実験から、大きな細孔寸法の芯が小さな細孔寸法の芯よりも良好な蒸発を生ずると結論づけることができる。
【0115】
実施例5:より短い芯がより良好に機能する
芯の他の特徴が蒸発特性を改善し得るかを判定するために、追加の研究が行われた。この実施例は芯の長さを減少させることによってどのように蒸発を改善できるかを示している。
【0116】
簡単に言えば、エアウィック(AIR WICK)(登録商標)カントリーベリーズ(Country Berries)(登録商標)香料装置を、2つの73ミクロン芯、a)長さ75mm、及びb)長さ85mm、を用いて試験した。2つの芯は、1ヶ月よりも長く連続して装置を作動させることによって試験された。装置は72分間ごと交互にオンオフされた。各サイクルの「オン」の部分の間、熱器の温度は70℃であった。図20はその結果を示している。
【0117】
図から分かるように、より短い芯がより安定した蒸発特性を生じた。3週間よりも長い使用の後、蒸発は約25%減少しただけであったが、長い芯からの蒸発は50%よりも多く減少した。
【0118】
実施例6:循環時間の決定
二芯型システムに対する最も望ましい香り物質放出を達成するサイクル時間を決定するために、追加の研究を行った。
【0119】
簡単に言えば、2つのエアウィック(AIR WICK)(登録商標)カントリーベリーズ(Country Berries)(登録商標)香料装置を試験した。第1回目は30分間ごと交互にオンオフされた。第2回目は72分間ごと交互にオンオフされた。放出は、光イオン化検出器(PID)、フォトバック(Photovac)2020型を用いて測定した。その結果を時間に対しプロットした。それぞれの場合、第2の同一の香り物質放出芯をシミュレートするために、記録された結果を追加的にそれぞれ30分及び72分ずつシフトさせた。プロットは図21(a)及び(b)に示されている。
【0120】
図から分かるように、二芯型システムに対する30分サイクル時間が最も望ましいレベル、すなわちシミュレートされた組み合わせカーブに関する、ピーク:谷の最も低い割合を達成した。但し、三芯型システムに対してはもっと長いサイクル時間が効果的であり得ることに留意すべきである。理論的な理想は無限大数の芯である。明らかに、実用性の点からはより少数の芯が要求され、2、3、4、又は5本の芯がより実用的であり得る。
【0121】
実施例7:サイクル時間の揮発への影響の決定
香料組成物の単一芯型システムからの揮発へのサイクル時間の影響を決定するために、追加の研究を行った。
【0122】
簡単に言えば、4つのエアウィック(AIR WICK)(登録商標)カントリーベリーズ(Country Berries)(登録商標)香料がこの試験で用いられた。芯は、73ミクロンの平均細孔寸法、38%の平均細孔容積を有する多孔質ポリエチレンで作製され、長さが85mmで直径が6.8mmであった。各サイクルの「オン」部分の間、熱器の温度は70℃であり、芯の頂部(熱部分)での温度測定に基づいて60℃の平均芯温度を得た(温度プローブを芯の頂部に配置した)。第1の装置は15分間ごと交互にオンオフされた。第2の装置は30分間ごと交互にオンオフされた。第3の装置は45分間ごと交互にオンオフされた。第4の装置は72分間ごと交互にオンオフされた。放出は、光イオン化検出器(PID)、フォトバック(Photovac)2020型を用いて測定された。試験場所は周囲温度及び周囲気流を有する10×10フィート(3×3m)の部屋であった。
【0123】
装置を2週間使用した後、また次に4週間使用した後、各芯に対して放出を試験した。PIDセンサーは各芯の頂部中央部分のおよそ5mm上に位置決めされた。放出は、ピークの放出(芯に熱が加えられた後の最初の放出)時、及び3回の完全なオン/オフサイクルを通して1分に1回サンプリングされた。例えば、第3の装置に関して2週間の時点で、270分間の全サンプル時間の間1分に1回放出がサンプリングされ;再び第1の装置に関して4週間の時点で、270分間の全サンプル時間の間1分に1回放出がサンプリングされた。PIDからの電気的な読みを捕獲して、測定期間の間の芯の頂部における香料の平均濃度を百万分の一分率で数値化した。こうした研究の1つの結果を表11に示す。
【0124】
【表11】

本明細書を検討し本明細書に開示された発明を動作することにより、本発明の他の実施形態が当業者には自明であろう。本明細書及び実施例は単なる例示とみなされ、本発明の真の範囲及び精神は添付の特許請求の範囲によって明示されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
香料組成物を含有する貯蔵槽、及び前記香料組成物と流体連通している芯を含む、少なくとも1つの香料モジュールを受け入れるようになっている加熱芯型香料組成物分配装置を備えた香り分配システムであって、
前記装置は、使用の際、
前記香料組成物の少なくとも1つの構成成分の揮発を増大させるように前記芯に熱を加え、
前記香料組成物の前記少なくとも1つの構成成分の揮発を減少させるのに十分な温度まで前記熱を弱め、
前記香料組成物のすべて又は一部の構成成分の逆流を可能にするのに十分な時間の間、前記弱められた熱を維持し、
前記香料組成物の少なくとも1つの構成成分の揮発を増大させるように前記芯に熱を加える、香り分配システム。
【請求項2】
加熱芯型香料組成物分配装置と共に使用するための香料モジュールであって、
前記香料モジュールは少なくとも1つの貯蔵槽を含み、
前記少なくとも1つの貯蔵槽は、芯と流体連通する香料組成物を含有しており、
前記少なくとも1つの香料組成物の構成成分の95重量%より多くが、1700未満のガスクロマトグラフィーのコバッツ指数(非極性シリコーン固定相として5%フェニル−メチルポリシロキサンで決定した場合)を有する、香料モジュール。
【請求項3】
前記芯は10ミクロン〜500ミクロン、好ましくは50ミクロン〜150ミクロン、より好ましくは70ミクロンの平均細孔寸法を示す、請求項2に記載の香料モジュール。
【請求項4】
前記芯は1mm〜100mm、好ましくは5mm〜75mm、より好ましくは10mm〜50mmの長さを有する、請求項2に記載の香料モジュール。
【請求項5】
前記芯は15%〜85%、好ましくは25%〜50%、より好ましくは38%の平均細孔容積を有する、請求項2に記載の香料モジュール。
【請求項6】
請求項2に記載の香りモジュールと、
少なくとも1つの香料モジュールを受け入れるようになっている加熱芯型香料組成物分配装置を含む加熱芯型香料組成物分配システムと
を備え、
前記装置は、使用の際、
前記香料組成物の少なくとも1つの構成成分の揮発を増大させるように前記芯に熱を加え、
前記香料組成物の前記少なくとも1つの構成成分の揮発を減少させるのに十分な温度まで前記熱を弱め、
前記香料組成物のすべて又は一部の前記構成成分の逆流を可能にするのに十分な時間の間、前記弱められた熱を維持し、
前記香料組成物の少なくとも1つの構成成分の揮発を増大させるように前記芯に熱を加える、香り分配キット。
【請求項7】
香り分配システムであって、
香料組成物を含有する香料貯蔵槽と、前記香料組成物と流体連通する芯とを含む少なくとも1つの香料モジュールを受け入れるようになっている加熱芯型香料組成物分配装置を備え、
前記香り分配装置は、使用の際、
前記芯への熱の適用及び中止を自動的に繰り返し、
ある期間の後、少なくとも1回、前記芯に加えられる前記熱を自動的に強める、香り分配システム。
【請求項8】
少なくとも1つの香料組成物を含有する加熱芯型香料組成物分配装置であって、
前記少なくとも1つの香料組成物の構成成分の95%より多くが、1700未満のガスクロマトグラフィーのコバッツ指数(非極性シリコーン固定相として5%フェニル−メチルポリシロキサンで決定した場合)を有する、加熱芯型香料組成物分配装置。
【請求項9】
香料組成物を放出するために作動することができる、少なくとも2つの香料組成物分配装置と、
香料組成物を含む、少なくとも2つの香料モジュールと
を備え、
前記少なくとも2つの香料組成物分配装置のそれぞれは、使用の際、
a1)前記少なくとも2つの香料組成物のうちの第1のものを放出するために作動され、
a2)前記少なくとも2つの香料組成物のうちの第2のものを放出するために作動される、香り分配システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21a】
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【図21b】
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【公開番号】特開2009−213901(P2009−213901A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−114696(P2009−114696)
【出願日】平成21年5月11日(2009.5.11)
【分割の表示】特願2006−501277(P2006−501277)の分割
【原出願日】平成16年4月16日(2004.4.16)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】