説明

香味油の製造方法および香味油

【課題】 香味性素材が有するところの特徴ある風味を忠実に再現した、高力価の香味油を効率よく製造することのできる製造方法、更にはこれを利用して製造した香味油を提供することである。
【解決手段】 香味性素材と油脂類を混合し、容器中で加熱抽出した後、香味油を取り出す香味油の製造方法において、加熱抽出の工程および固液分離の工程を密閉した状態に保つことにより、焦げた風味や異質な風味などを生じることなく、香味性素材が有する特徴ある風味が付与され、力価の点でも満足できる香味油が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、香味性素材および油脂類を原材料として得られる、香味性素材の特徴ある風味を有する香味油およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
香味油は、各種食品の加工工程で食品の味付け、香り付け、コク付けなどとして広く使用されており、例えばタマネギ、ニンニクなどの風味成分を油脂類に付与したものがあり、シーズニングオイル、風味油、調味油などとも呼ばれている。
【0003】
香味油の製造方法としてはこれまで種々の提案がなされ、例えば、植物性油脂類に、水分60%以上の野菜を細断または磨砕した物を加えて加熱した後、油相を採取する方法(特許文献1参照)、天然香辛料を、中鎖脂肪酸含有油脂に浸漬し、有効成分を抽出する方法(特許文献2参照)、油脂類に香味性素材又は香味性素材の常圧下加熱処理物を加え、約2−7kg/cm2の加圧下で加熱処理する方法(特許文献3参照)、可食性材料をジアシルグリセロール含有油脂で処理する方法(特許文献4参照)などが提案されている。
【特許文献1】特公昭59−4972号公報
【特許文献2】特公平1−15267号公報
【特許文献3】特公平5−81214号公報
【特許文献4】特開2005−212333号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記した従来提案されている香味油の製造方法は、香味性素材が有する風味、例えば、新鮮な香味性素材の有する生っぽさ、いわゆるフレッシュ感が損なわれるのみならず、焦げた風味、異質な風味などが生じるなどの欠点を有しており、香味性素材が有する特徴ある風味を再現できないなどの問題点があった。また、力価の点でも十分満足できるものではなく、香味性素材本来の特徴ある風味を付与した香味油を得ることはできなかった。
【0005】
従って、本発明の目的は、香味性素材が有するところの特徴ある風味をより忠実に再現した、高力価の香味油を、効率よく製造することのできる製造方法、更にはこれを利用して製造した香味油を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は前記の課題を解決すべく、鋭意研究を行った結果、香味性素材と油脂類を混合し、容器中で加熱抽出した後、香味油を取り出す香味油の製造方法において、加熱抽出の工程および固液分離の工程を密閉した状態に保つことにより、焦げた風味や異質な風味などを生じることなく、香味性素材が有する特徴ある風味が付与され、力価の点でも満足できる香味油が得られることを見出し本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち本発明の要旨の第1は、香味油の製造方法であって、(1)香味性素材と油脂類の混合を行う工程、(2)容器中で加熱抽出を行う工程、(3)固液分離を行う工程を実施するものであり、特に工程(2)および工程(3)を密閉された状態で実施することを特徴とする香味油の製造方法である。
【0008】
また本発明の要旨の第2は、前記製造方法で製造された、香味性素材が有する特徴ある風味が付与された香味油である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、焦げた風味や異質な風味などを生じることなく、香味性素材が有する特徴ある風味が付与され、力価の点でも満足できる香味油を、効率よく製造して提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明において、香味性素材と油脂類を混合し、容器中で加熱抽出した後、香味油を取り出す方法としては、特に制限されないが、(2)加熱抽出を行う工程および(3)固液分離を行う工程を密閉された状態で実施することにより、香味性素材が有する風味成分の飛散を抑制し、風味のより忠実な再現および力価向上を実現することができる。
【0011】
本発明の(1)香味性素材と油脂類の混合を行う工程(以下、工程(1)と言うことがある。)は、各種方法で行うことが可能であるが、香味性素材に油脂類を添加した後に、油脂類中で香味性素材を細断あるいは磨砕することにより混合することが、抽出効率の向上および香味性素材の風味成分の飛散を抑制する上で、特に好ましい。細断あるいは磨砕する際の方法としては、特に制限されず、フードプロセッサー、カッターミキサー、ミル、乳鉢などの公知の方法を用いることができる。また、風味成分の飛散を抑制するため、密閉状態で実施することが、より好ましい。
【0012】
本発明の(2)容器中で加熱抽出を行う工程(以下、工程(2)と言うことがある。)は、密閉された状態で実施することが必要である。また、工程(2)で密閉された状態を形成する容器は、香味性素材が水分を含む場合でも100℃以上での抽出を可能とし、風味の再現および抽出効率の向上を実現するため、耐圧性容器であることが好ましい。また、抽出効率の向上のため、撹拌機能を有する容器であることがより好ましい。
【0013】
工程(2)における加熱抽出の方法は特に限定されるものではなく、例えば、蒸気による加熱、電気による加熱などによる公知の加熱方法を利用することができる。また、加熱温度は特に限定されないが、50〜250℃の温度範囲が好ましい。250℃以上では焦げた風味などの好ましくない風味が発生する可能性がある。また、50℃以下では、抽出効率の低下、力価の低下を招くことがある。その中でも、60〜200℃が、風味、力価の面から好ましく、70〜150℃が風味、力価、経済性の面から特に好ましい。一方、加熱時間は特に限定されないが、前記加熱温度において、1〜120分間の加熱時間が好ましい。120分以上では、経済的に好ましくない。1分間以下では、抽出が十分行われず好ましくない。風味の面から、5分から90分間が好ましく、風味および経済性の面から10〜60分間の抽出が特に好ましい。加熱抽出時は、抽出を効率的に行うことから撹拌を行うことが好ましい。
【0014】
本発明の(3)固液分離を行う工程(以下、工程(3)と言うことがある。)は、抽出の完了した香味性素材を取り除き、液状物を取り出す工程で、密閉された状態で実施することが必要である。工程(3)は、例えば、遠心分離、フィルタープレス、スクリュープレスなどの公知の分離手段を好適に使用することができる。
【0015】
工程(2)と(3)が共に密閉された状態で実施されることにより、香味性素材の風味成分の飛散を抑制した上で高温での作業が可能となる。これによって油脂の粘度増加を抑制できることから、抽出効率および作業性を向上することが可能となる。即ち、風味成分の飛散抑制と工業化時に必要となる抽出効率、作業性の両立が可能となる。
【0016】
本発明においては、更に(3)固液分離を行う工程の後に、(4)液相から油層を分離する工程(以下、工程(4)と言うことがある。)を行うことが好ましい。工程(4)は油層と水層が存在する場合に実施して、油層を回収するもので、これにより微生物の汚染等を低減し長期間衛生的に保存することを容易にできる。更に、油脂の劣化を抑制することが可能となる。工程(4)は、例えば遠心分離、デカンテーション、ろ紙吸着などの公知の分離手段を用いることができる。
【0017】
本発明においては、更に(3)固液分離を行う工程、又は(4)液相から油層を分離する工程の後に、(5)油層中の水分を除去する工程(以下、工程(5)と言うことがある。)を行うことが好ましい。工程(5)は特に油層中に水分含量が多い場合(例えば0.1%を超える様な場合)に、工程(4)と同様の理由で実施することが好ましい。工程(5)は、例えば無水硫酸ソーダ、シリカゲルまたはろ紙による吸着、遠心分離などの公知の方法で除去することができる。
【0018】
尚、本発明においては、工程(3)、(4)、(5)のの工程は、必ずしも作業を別々に行う必要はなく、例えば遠心分離などを用い、これらの内の2或いは3工程を同時に実施することも可能である。
【0019】
尚、本発明においては工程(2)および工程(3)を、密閉された状態で実施する必要があるが、工程(1)から工程(5)までの各工程を含め、更には移送時を含めて密閉状態にすることが、より好ましい。また、得られた香味油は密閉状態を保ったまま、ポリ容器、ガラス容器および金属容器などの容器に充填することで、風味成分の飛散を防止するができるため、特に好ましい。ここで、密閉状態とは、開放大気系に直接接触しないことを意味する。
【0020】
本発明に用いる香味性素材は、特に制限されるものではなく、例えば、コショウ、わさびなどの香辛料類、レタス、タマネギなどの香味野菜類などの植物性香味性素材などが挙げられる。これらは、そのままでも使用できるが、細断物、ペースト状物、ジュース状物、乾燥処理物、冷凍加工物でも使用でき、さらにこれらから得られる精油あるいは抽出物、加水分解物を使用することもできる。一方、肉類、魚介類、それらの抽出物、加水分解物などの動物性香味性素材を香味性素材として使用することもできる。また、必要に応じ、上記の各香味性素材を混合して使用することもできる。
【0021】
前記香辛料類としては、例えばスパイス類およびハーブ類が挙げられる。スパイス類としては、例えば、アニス、フェンネル、カルダモン、キャラウェイ、クミン、けしの実、ごま、コリアンダー、しそ、セロリ、デイルおよびマスタードなどの種子類;ウコン、カンゾウ、生姜、ターメリック、ニンニクおよびわさびなどの根茎類;オールスパイス、カルダモン、コショウ、山椒、スターアニス、唐辛子、バニラ、メースおよびローズヒップなどの果実類;クローブ、サフラン、などの花蕾類;カシア、シナモンなどの樹皮類;オレンジ、みかん、ゆず、レモンなどの果皮類などが挙げられる。また、ハーブ類としては、例えば、オレガノ、ミント、セージ、タイム、タラゴン、ローズマリー、コリアンダー、しそ、セロリ、バジル、セイボリーおよびパセリなどの葉茎類などを挙げることができ、これらの香辛料類は1種または2種以上組み合わせて使用することができる。
【0022】
また、前記香味野菜類としては、例えば、レタス、シュンギク、小松菜、セリ、ニラなどの葉菜類;トマト、ブロッコリーなどの果菜類などを挙げることができ、これらの香味野菜類は1種または2種以上組み合わせて使用することができる。
【0023】
前記肉類としては、例えば、牛肉、豚肉、鶏肉、馬肉、羊肉、などが挙げられ、これらは生のまま、あるいは加工したものも利用でき、これらの肉類は1種または2種以上組み合わせて使用することができる。
【0024】
また、前記魚介類としては、例えば、あじ、さば、いか、あゆ、こい、さけなどの海水産および淡水産類が挙げられ、また、えび、かに、などの甲殻類、更には、あさり、はまぐり、しじみ、かき、ほたて、あわび、などの貝類が挙げられ、これらを生のまま、あるいは、加工したものも利用でき、これらの魚介類は1種または2種以上組み合わせて使用することができる。
【0025】
また、本発明の香味性素材としては前記したもの以外に、醤油、などの醸造物類、5’−イノシン酸、5’−グアニル酸などの核酸類、グルタミン酸、ロイシン、アスパラギン酸、プロリンなどのアミノ酸類、シュークロース、グルコースなどの糖類などを挙げることができ、これらの材料は1種または2種以上組み合わせて使用することができる。また、前記した動植物性香味性素材と組み合わせて使用することもできる。
【0026】
本発明に使用される油脂類としては特に限定されないが、例えば、オリーブ油、大豆油、サフラワー油、コーン油、菜種油、ヤシ油、パーム油、パーム核油などの植物性油脂類、牛脂、豚脂、鶏油などの動物性油脂類、中鎖脂肪酸含有油脂(MCT)、ジアシルグリセリド含有油脂(DG)などを挙げることができ、これらの油脂類は1種または2種以上組み合わせて使用することができる。前記の油脂類はそのまま、あるいは水素添加や他の油脂とのエステル交換などの加工を行っても使用できる。
【0027】
前記油脂類のなかで、パーティッションナンバー(PN)が42以下のアシルグリセリドを30%以上含む油脂類が、風味成分の再現および抽出効率が良いことより、好ましい。ここで、PNとはPN=総炭素数(TC)−(2×二重結合数(DB))で表される数値である。TCとは、アシルグリセリドを構成するアシル基の総炭素数であり、DBとは、アシルグリセリドを構成するアシル基に含まれる総二重結合数である。例えば、炭素数8の飽和脂肪酸(カプリル酸)から構成されるMCTの場合は、PN=8×3−(2×0)=24であり、ステアリルオレイルジグリセリドはPN=18×2−(2×1)=34となる。また酸化安定性を考えると、使用する油脂類を構成する脂肪酸が、飽和脂肪酸であることがより好ましい。
【0028】
油脂類に対する香味性素材の使用量は、目的とする香味油の力価によっても異なり、限定されないが、例えば、油脂類100重量部に対して、香味性素材を1〜200重量部の範囲を挙げることができる。経済性、力価の面から10〜100重量部が好ましく、15〜50重量部が特に好ましい。
【0029】
本発明によって得られる香味油は、例えば、ドレッシング、マヨネーズ、ソース類、たれ類、スープ類、スナック類などの広い分野において利用することができる。
【実施例】
【0030】
以下、実施例により本発明の実施様態を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってその技術範囲が限定されるものではない。
【0031】
(実施例1)
カッターミキサー(ステファン社製;UMC−5)に生のバジル400gを入れ、オリーブ油1600gを加えた後に、細断すると同時に混合を行った。得られた細断混合物をカッターミキサーから取り出し、耐圧容器(耐圧硝子工業株式会社製;TAS−2−9型)に移した。密閉状態で、撹拌しながら、130℃、20分間の加熱抽出を行った。加熱抽出後、密閉状態にしたフィルタープレス(アドバンテック東洋株式会社製;120S型)に移し、固形部を取り除き、液相部を回収した。ついで、開放形で液相部にろ紙粉末(アドバンテック東洋株式会社製;Dタイプ)30gを加え、油層を分離した。更にろ紙(アドバンテック東洋株式会社製;No.1)によるろ過を行うことで水分を除去し、バジルオイル1482gを得た。
【0032】
(比較例1)
実施例1と同様にして得られた細断混合物をステンレス製なべ(大気開放系)に移した。撹拌しながら、130℃、20分間の加熱抽出を行った(開放系、130℃での加熱抽出の為、水層部は残らなかった。)。加熱抽出後、開放状態にしたフィルタープレスに移し、固形部を取り除き、油層部を回収した。ついで、実施例1と同様にして水分を除去し、バジルオイル1508gを得た。
【0033】
(比較例2)
実施例1と同様にして、加熱抽出を行った。加熱抽出後、開放状態にしたフィルタープレス(アドバンテック東洋株式会社製;120S型)に移し、固形部を取り除き、液相部を回収した。ついで実施例1と同様にして、バジルオイル1470gを得た。尚、加熱抽出後の高温状態のまま開放状態でフィルタープレスによる固液分離を行うこととなった為、効率良く製造できたが(油脂の粘度増加が起こらない為、分離速度が速く、また固体への液相の付着も少なかった。)、香味性素材が有する風味成分の飛散を抑制することはできなかった。
【0034】
(官能評価)
実施例1、比較例1および比較例2で得られたバジルオイルについて、風味および力価についてパネラー5名により官能評価を行い、その結果を表1に示す。力価は比較例1を3点とし、1(弱い)〜3(比較品1と同等)〜5(強い)とした平均値で示した。
【0035】
【表1】

その結果、5名全員、実施例1のバジルオイルは生のバジルと同等の新鮮なバジル風味であるフレッシュ感を有していると評価した。また、5名全員、比較例1のバジルオイルは新鮮なバジル風味が乏しいと評価した。比較例2のバジルオイルは新鮮なバジル風味がやや低く、かつ、力価も低いと評価した。実施例1のバジルオイルが新鮮なバジル風味を有しており、かつ、力価が高いことは明らかであり、固液分離工程を密閉状態で実施することの効果は明らかである。
【0036】
さらに、風味成分をGC−MSで分析した。シネオール、オシメン、リナロールおよびオイゲノールについて、比較例1の含量を基準(1.0)とした相対比を表2に示した。
【0037】
【表2】

表2の結果からも実施例1の力価が高いことは明らかである。
【0038】
(実施例2)
香味性素材として、生のバジルの替わりに生の生姜を、油脂類として、オリーブ油の替わりにナタネ油を用い、加熱抽出を80℃、60分間で行った以外は、実施例1と同様にして、生姜オイル1318gを得た。
【0039】
(実施例3)
実施例2と同様に加熱抽出および固液分離を行い、液相部を回収した。ついで、液相部を密閉式ろ過器(アドバンテック東洋株式会社製;SF−145S型)に移し、ろ紙(アドバンテック東洋株式会社製;No.26)ろ過により油層の分離、及び油層中の水分の除去を同時に行い、生姜オイル1358gを得た。
【0040】
(比較例3)
香味性素材として、生のバジルの替わりに生の生姜を、油脂類として、オリーブ油の替わりにナタネ油を用い、加熱抽出を80℃、60分間で行った以外は、比較例1と同様にして加熱抽出及び固液分離を行い、液相部を回収した。ついで実施例1と同様にして油層の分離及び油層からの水分の除去を行い、生姜オイル1380gを得た。
【0041】
(官能評価)
実施例2、実施例3および比較例3で得られた生姜オイルについて、前記と同様にして官能評価を行い、その結果を表3に示す。
【0042】
【表3】

その結果、5名全員、実施例2および実施例3の生姜オイルは生の生姜と同等あるいは近い新鮮な生姜風味であるフレッシュ感を有していると評価した。また、5名全員、比較例3の生姜オイルは新鮮な生姜風味が乏しいと評価した。また、力価も実施例2および実施例3の生姜オイルが高いと評価した。実施例2および実施例3の生姜オイルが新鮮な生姜風味を有しており、かつ、力価が高いことは明らかである。さらに、実施例2に比較し、実施例3が風味、力価の点で優れており、工程(4)及び工程(5)を密閉状態で実施することの効果は明らかである。
【0043】
(実施例4)
香味性素材として、生の生姜の替わりに生の青ねぎを用い、加熱抽出を105℃、40分間で行った以外は、実施例3と同様にして、青ねぎオイル1470gを得た。
【0044】
(比較例4)
香味性素材として、生のバジルの替わりに生の青ねぎを、油脂類として、オリーブ油の替わりにナタネ油を用い、加熱抽出を105℃、40分間で行った以外は、比較例1と同様にして、青ねぎオイル1490gを得た。
【0045】
(官能評価)
実施例4および比較例4で得られた青ねぎオイルについて、風味および力価について、前記と同様にして官能評価を行い、その結果を表4に示す。
【0046】
【表4】

表4の結果より、実施例4の青ねぎオイルは比較例4の青ねぎオイルに比べ、新鮮な青ねぎ風味であるフレッシュ感を有しており、かつ、力価が高いことは明らかである。
【0047】
(実施例5)
ナタネ油50gを使用してスライスしたタマネギ400gをフライパンで炒め、ソテーオニオンを作った。香味性素材として、生の生姜の替わりにソテーオニオンを用いた以外は、実施例3と同様にしてソテーオニオン風味の香味油1404gを得た。
【0048】
(比較例5)
香味性素材として、生のバジルの替わりにソテーオニオンを、油脂類として、オリーブ油の替わりにナタネ油を用い、加熱抽出を105℃、40分間で行った以外は、比較例1と同様にして、ソテーオニオン風味の香味油1444gを得た。
【0049】
(官能評価)
実施例5および比較例5で得られた香味油について、前記と同様にして官能評価を行い、その結果を表5に示す。
【0050】
【表5】

表5の結果より、実施例5の香味油は比較例5の香味油に比べ、ソテーオニオンの風味を良く再現しており、かつ、力価が高いことは明らかである。なお、パネラー4名が比較例5に焦げた風味が感じられると評価した。
【0051】
(実施例6)
油脂類として、ナタネ油の替わりに中鎖脂肪酸含有油脂(理研ビタミン株式会社製;商品名「アクターM-2」)を用いた以外は実施例3と同様にして、生姜油1410gを得た。
【0052】
(実施例7)
油脂類として、ナタネ油の替わりにパーム核油を用いた以外は実施例3と同様にして、生姜油1364gを得た。
【0053】
(官能評価)
実施例6、実施例7および比較例3で得られた生姜オイルについて、前記と同様にして官能評価を行い、その結果を表6に示す。
【0054】
【表6】

表6の結果より、実施例6および実施例7の生姜オイルは比較例3の生姜オイルに比べ、新鮮な生姜風味であるフレッシュ感を有しており、かつ、力価が高いことは明らかである。なお、パネラー4名が実施例3より、フレッシュ感が強く感じられると評価した。
【0055】
(実施例8)
細断混合より脱水を終えるまで、各工程の移送を含めて密閉状態で、実施例3と同様にして生姜オイル1318gを得た。
【0056】
(官能評価)
実施例8および比較例3で得られた生姜オイルについて、前記と同様にして官能評価を行い、その結果を表7に示す。
【0057】
【表7】

表7の結果より、実施例8の生姜オイルは比較例3の生姜オイルに比べ、新鮮な生姜風味であるフレッシュ感を有しており、かつ、力価が高いことは明らかである。なお、パネラー5名が実施例3より、フレッシュ感が強く感じられると評価した。
【0058】
(実施例9)
オスターブレンダー(オスター社製;ST−1型)に黒コショウ(ホール)(株式会社カネカサンスパイス製)200gを入れ、ナタネ油800gを加えた後に、粉砕すると同時に混合を行った。得られた粉砕混合物をオスターブレンダーから取り出し、キャップ付き遠心チューブ(日立工機株式会社製;500−PA型)に移した。高圧蒸気滅菌器(アドバンテック東洋株式会社製;STH−427FA型)を用い、密閉状態で、120℃、15分間の加熱抽出を行った。加熱抽出後、遠心分離器(日立工機株式会社製;himac CR21GII型)を用い、固形部を取り除き、油層部を回収した(原料として用いた黒コショウの水分含量が低い為、水層部は認められなかった。)。ついで、油層部を密閉式ろ過器(アドバンテック東洋株式会社製;SF−145S型)に移し、ろ紙(アドバンテック東洋株式会社製;No.26)ろ過により油層中の水分の除去を行い、コショウオイル712gを得た。
【0059】
(比較例6)
オスターブレンダー(オスター社製;ST−1型)に黒コショウ(ホール)(株式会社カネカサンスパイス製)200gを入れ、実施例9と同様に粉砕を行った。得られた粉砕黒コショウをステンレス製なべに移し、ナタネ油800gを加えた。撹拌しながら、120℃、15分間の加熱抽出を行った。加熱抽出後、実施例9と同様にして、コショウオイル702gを得た。
【0060】
(官能評価)
実施例9および比較例6で得られたコショウオイルについて、前記と同様にして官能評価を行い、その結果を表8に示す。
【0061】
【表8】

表8の結果より、実施例9のコショウオイルは比較例6のコショウオイルに比べ、コショウの風味を良く表現しており、かつ、力価が高いことは明らかである。
【0062】
(実施例10)
黒コショウ(ホール)の替わりに、カレー粉(ヱスビー食品株式会社製;赤缶カレー粉)を用いた以外は、実施例9と同様にして、カレーオイル708gを得た。
【0063】
(比較例7)
黒コショウ(ホール)の替わりに、カレー粉(ヱスビー食品株式会社製;赤缶カレー粉)を用いた以外は、比較例6と同様にして、カレーオイル700gを得た。
【0064】
(官能評価)
実施例10および比較例7で得られたカレーオイルについて、前記と同様にして官能評価を行い、その結果を表9に示す。
【0065】
【表9】

表9の結果より、実施例10のカレーオイルは比較例7のカレーオイルに比べ、原料として用いたカレー粉の風味を良く表現しており、かつ、力価が高いことは明らかである。
【0066】
(実施例11)
生のバジル400gの替わりに、生のバジル100g、生のイタリアンパセリ100g、生のタイム100gおよび生のオレガノ100gを用いた以外は、実施例1と同様にして、ハーブオイル1490gを得た。
【0067】
(比較例8)
生のバジル400gの替わりに、生のバジル100g、生のイタリアンパセリ100g、生のタイム100gおよび生のオレガノ100gを用いた以外は、比較例1と同様にして、ハーブオイル1494gを得た。
【0068】
(官能評価)
実施例11および比較例8で得られたハーブオイルについて、前記と同様にして官能評価を行い、その結果を表10に示す。
【0069】
【表10】

表10の結果より、実施例11のハーブオイルは比較例8のハーブオイルに比べ、新鮮なハーブ風味であるフレッシュ感を有しており、かつ、力価が高いことは明らかである。
【0070】
(実施例12)
黒コショウ(ホール)の替わりに、ローストチキンを用いた以外は、実施例9と同様にして、ローストチキンオイル724gを得た。
【0071】
(比較例9)
黒コショウ(ホール)の替わりに、ローストチキンを用いた以外は、比較例6と同様にして、ローストチキンオイル716gを得た。
【0072】
(官能評価)
実施例12および比較例9で得られたローストチキンオイルについて、前記と同様にして官能評価を行い、その結果を表11に示す。
【0073】
【表11】

表11の結果より、実施例12のローストチキンオイルは比較例9のローストチキンオイルに比べ、原料として用いたローストチキンの風味を良く表現しており、かつ、力価が高いことは明らかである。さらに、比較例9にはこげ臭が感じられたが、実施例12には感じられなかった。
【0074】
(実施例13)
生の生姜の替わりに、生のわさびを用い、加熱抽出を80℃、40分間で行った以外は、実施例3と同様にして、わさびオイル1416gを得た。
【0075】
(比較例10)
生の生姜の替わりに、生のわさびを用い、加熱抽出を80℃、40分間で行った以外は、比較例3と同様にして、わさびオイル1396gを得た。
【0076】
(官能評価)
実施例13および比較例10で得られたわさびオイルについて、前記と同様にして官能評価を行い、その結果を表12に示す。
【0077】
【表12】

表12の結果より、実施例13のわさびオイルは比較例10のわさびオイルに比べ、新鮮なわさび風味であるフレッシュ感を有しており、かつ、力価が高いことは明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
香味油の製造方法であって、(1)香味性素材と油脂類の混合を行う工程、(2)容器中で加熱抽出を行う工程、(3)固液分離を行う工程を実施するものであり、特に工程(2)および工程(3)を密閉された状態で実施することを特徴とする香味油の製造方法。
【請求項2】
工程(2)が耐圧性容器中で実施されることを特徴とする請求項1記載の香味油の製造方法。
【請求項3】
(3)固液分離を行う工程の後に、(4)液相から油層を分離する工程を実施することを特徴とする請求項1から2の何れか1項に記載の香味油の製造方法。
【請求項4】
更に工程(4)を密閉された状態で実施することを特徴とする請求項3に記載の香味油の製造方法。
【請求項5】
(3)固液分離を行う工程、又は(4)液相から油層を分離する工程の後に、(5)油層中の水分を除去する工程を実施することを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の香味油の製造方法。
【請求項6】
請求項1から5の何れか1項に記載の香味油の製造方法によって得られる香味油。


【公開番号】特開2008−283894(P2008−283894A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−131074(P2007−131074)
【出願日】平成19年5月16日(2007.5.16)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】