説明

香料含有マイクロカプセル担持体並びにこれを接着させた枕カバー及びシーツ

【課題】マイクロカプセルの内部構造を変更することなく香料の徐放期間を大幅に変更することのできる、香料含有マイクロカプセル担持体を提供する。
【解決手段】香料含有マイクロカプセル1と接着剤2の混合物からなり被接着物Aに接着されるマイクロカプセル混合層S0と、接着剤3からなる接着剤層S1〜Snとを備えた。マイクロカプセル混合層S0上に接着剤層S1〜Snを形成したことにより、マイクロカプセルの内部構造を変更することなく香料の徐放期間を大幅に拡大することができ、接着剤層の厚さを調整することにより香料の徐放期間を制御することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、香料含有マイクロカプセル担持体並びにこれを接着させた枕カバー及びシーツに関する。
【背景技術】
【0002】
繊維分野において、フレグランス成分として各種の香料を包含したマイクロカプセルが利用されている。このマイクロカプセルは、直接又はバインダーにより間接的に繊維に付着され、フレグランス成分を徐放するようになっている。
【0003】
また、履物用中敷きにおいて、表面材と裏面材の間に、香料を内包した徐放性のマイクロカプセルを接着剤に混合させて介在させたものが開示されている(特許文献1)。
【0004】
しかし、従来の香料を含有したマイクロカプセルは、マイクロカプセルの内部構造により香料の徐放期間が制御されるようになっている。したがって、徐放期間の大幅な変更を行うためには、マイクロカプセルの内部構造を変更する必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−236911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、マイクロカプセルの内部構造を変更することなく香料の徐放期間を大幅に変更することのできる、香料含有マイクロカプセル担持体を提供することを目的とする。また、この香料含有マイクロカプセル担持体を接着させた枕カバー及びシーツを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1記載の香料含有マイクロカプセル担持体は、香料含有マイクロカプセルと接着剤の混合物からなり被接着物に接着されるマイクロカプセル混合層と、接着剤からなる接着剤層とを備え、前記マイクロカプセル混合層上に前記接着剤層が形成されたことを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項2記載の香料含有マイクロカプセル担持体は、請求項1において、前記接着剤層は、層状化合物を含有することを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項3記載の香料含有マイクロカプセル担持体は、請求項1又は2において、前記香料含有マイクロカプセル混合層及び前記接着剤層に用いられる接着剤は、乾燥後に柔軟性を有するポリマー系接着剤であることを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項4記載の香料含有マイクロカプセル担持体は、請求項1又は2において、前記マイクロカプセル混合層及び前記接着剤層に用いられる接着剤は、剥離可能で再接着可能なポリマー系接着剤であることを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項5記載の枕カバーは、請求項1〜4のいずれか1項記載の香料含有マイクロカプセル担持体を接着させたものである。
【0012】
本発明の請求項6記載のシーツは、請求項1〜4のいずれか1項記載の香料含有マイクロカプセル担持体を接着させたものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の請求項1記載の香料含有マイクロカプセル担持体によれば、マイクロカプセル混合層上に接着剤層が形成されたことにより、マイクロカプセルの内部構造を変更することなく香料の徐放期間を大幅に拡大することができ、接着剤層の厚さを調整することにより香料の徐放期間を制御することができる。
【0014】
本発明の請求項2記載の香料含有マイクロカプセル担持体によれば、層状化合物を含有することにより、香料の徐放期間を拡大することができる。
【0015】
本発明の請求項3記載の香料含有マイクロカプセル担持体によれば、乾燥後に柔軟性を有するポリマー系接着剤を用いることにより、香料含有マイクロカプセル担持体を接着させた被接着物を折り曲げることより香料の放出を促進させることができる。
【0016】
本発明の請求項4記載の香料含有マイクロカプセル担持体によれば、剥離可能で再接着可能なポリマー系接着剤を用いることにより、香料含有マイクロカプセル担持体を被接着物から剥離し、再接着することができる。
【0017】
本発明の請求項5記載の枕カバーによれば、本発明の香料含有マイクロカプセル担持体を接着させた枕カバーを提供することができる。
【0018】
本発明の請求項6記載のシーツによれば、本発明の香料含有マイクロカプセル担持体を接着させたシーツを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例1の香料含有マイクロカプセル担持体を示す模式図である。
【図2】実施例1の香料含有マイクロカプセル担持体を接着させた非接着体を折り曲げた様子を示す模式図である。
【図3】実施例1の香料含有マイクロカプセル担持体を被接着物から剥離し、再接着する様子を示す模式図である。
【図4】実施例2の香料含有マイクロカプセル担持体を別の実施例を示す模式図である。
【図5】実施例3の香料含有マイクロカプセル担持体の接着剤層の厚さと徐放時間の関係を示すグラフである。
【図6】実施例4の香料含有マイクロカプセル担持体に含まれる精油の種類別に行った官能評価試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の香料含有マイクロカプセル担持体について、添付した図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0021】
本実施例の香料含有マイクロカプセル担持体を示す図1〜図3において、S0はマイクロカプセル混合層であり、マイクロカプセル混合層S0は、香料含有マイクロカプセル1と接着剤2の混合物からなる。香料含有マイクロカプセル1に含有される香料としては、各種の精油、固体香料などが挙げられる。マイクロカプセル混合層S0は、布や紙などの被接着物Aに接着される。また、S1〜Snは、接着剤3からなる接着剤層であり、接着剤層S1〜Snは、マイクロカプセル混合層S0上に形成されている。マイクロカプセル混合層S0上に接着剤層S1〜Snを形成することにより香料含有マイクロカプセル1からの香料の放出が抑えられるため、香料含有マイクロカプセル1の内部構造を変更することなく香料の徐放期間を大幅に拡大することができる。また、接着剤層S1〜Snの層の数、すなわち、接着剤層の厚さを調整することにより香料の徐放期間を制御することができ、香料の徐放期間は、例えば1ヶ月から1年の間で制御することができる。
【0022】
マイクロカプセル混合層S0に用いられる接着剤2と接着剤層S1〜Snに用いられる接着剤3は、好ましくは乾燥後に柔軟性を有するポリマー系接着剤であるが、特定の種類に限定されない。接着剤2,3として乾燥後に柔軟性を有するポリマー系接着剤を用いた場合は、図2に示すように伸曲自在となり、担持体を接着させた被接着物Aを折り曲げることより、香料の放出を促進させることができる。なお、図2は、接着剤層S1が1層である場合を示している。
【0023】
また、接着剤2,3として、剥離可能で再接着可能なポリマー系接着剤を用いることができる。剥離可能で再接着可能なポリマー系接着剤を用いた場合は、図3に示すように、香料含有マイクロカプセル担持体を布、紙や板などの被接着物Aから剥離し、再接着することができる。なお、図3は、接着剤層S1が1層である場合を示している。このようなポリマー系接着剤としては、例えばアクリルゴム性接着剤、アクリル酸エステルモノマーを改質し剥離後の再接着性を持たせた接着剤などを用いることができる。
【実施例2】
【0024】
本実施例の香料含有マイクロカプセル担持体を図4に示す。本実施例においては、2層の接着剤層S1〜S2中にそれぞれ層状化合物4が分散して含まれている。層状化合物4としては、マイカ(雲母)やマイカを含む粘土を用いることができる。層状化合物4を含有することにより、香料の徐放期間を拡大することができる。
【実施例3】
【0025】
綿製布(10cm×10cm)に剥離後の再接着性を有するアクリルゴム性接着剤(住友スリーエム社製スプレーのり)を吹き付け、その上にユーカリ精油、グレープフルーツ精油、ジャスミン精油のそれぞれを包含したポリウレアマイクロカプセル、及びシダ精油を包含したメラミン樹脂マイクロカプセルの一定量を塗布し、マイクロカプセル混合層S0を形成してサンプルとした。また、マイクロカプセル混合層S0の上から剥離後の再接着性を有するアクリルゴム性接着剤を吹き付けて、接着剤層S1(1層)、接着剤層S1〜S2(2層)、接着剤層S1〜S3(3層)、接着剤層S1〜S4(4層)をそれぞれ形成してサンプルとした。そして、それぞれのサンプルからの精油成分の徐放時間をガスクロマトグラフィーにより測定した。
【0026】
また、上記サンプルのそれぞれについて、マイクロカプセル混合層S0と接着剤層S1の間、接着剤層S1と接着剤層S2の間、接着剤層S2と接着剤層S3の間、接着剤層S3と接着剤層S4の間にそれぞれ層状化合物4としてマイカを添加したサンプルを作成して、それぞれのサンプルからの精油成分の徐放時間を測定した。
【0027】
図5に香料含有マイクロカプセル担持体の接着剤層の厚さと徐放時間の関係を示す。接着剤層S1〜S4に層状化合物4を添加した場合と添加しない場合のいずれにおいても、接着剤層が厚くなる(接着剤層数が多くなる)にしたがって、徐放時間が大幅に拡大された。また、接着剤層S1〜S4に層状化合物4を添加した場合は、添加しない場合と比較して徐放期間が約50%長くなった。
【実施例4】
【0028】
ラベンダー精油、グレープフルーツ精油、ユーカリ精油、シダ精油のそれぞれを含有するマイクロカプセルを布(5cm×5cm)に担持させてサンプルを作成した。なお、マイクロカプセルの担持量を1g/cmとしたもの、5g/cmとしたもの、10g/cmとしたものの3種類のサンプルをそれぞれ作成した。そして、それぞれのサンプルについて官能評価試験を実施した。また、それぞれのサンプルを手で揉んでマイクロカプセルの一部を破壊した後に官能評価試験を実施した。
【0029】
その結果を図6に示す。グレープフルーツ精油、ユーカリ精油、シダ精油は、マイクロカプセルから放出される成分により精神安定化効果(評価値が正の値)が見られ、サンプルを揉んだ後も精神安定化効果が維持された。一方、ラベンダー精油は、精神安定化効果が見られたが、サンプルを揉むと精油の放出量が増加し、精神高揚効果(評価値が負の値)へ移行した。
【実施例5】
【0030】
枕カバー及びシーツに剥離後の再接着性を有するアクリルゴム性接着剤(住友スリーエム社製スプレーのり)を吹き付け、その上に精油を包含したマイクロカプセルを塗布し、さらにその上から剥離後の再接着性を有するアクリルゴム性接着剤を吹き付けて、枕カバー及びシーツに香料含有マイクロカプセル担持体を接着させた。
【0031】
枕カバー及びシーツからは、香料含有マイクロカプセル担持体を剥離することができ、剥離と再接着を繰り返しても精油成分の徐放を継続することができた。
【実施例6】
【0032】
住居の内装及び家具に剥離後の再接着性を有するアクリルゴム性接着剤(住友スリーエム社製スプレーのり)を吹き付け、その上に精油を包含したマイクロカプセルを塗布し、さらにその上から剥離後の再接着性を有するアクリルゴム性接着剤を吹き付けて、住居の内装及び家具に香料含有マイクロカプセル担持体を接着させた。
【実施例7】
【0033】
ノートブックに剥離後の再接着性を有するアクリルゴム性接着剤(住友スリーエム社製スプレーのり)を吹き付け、その上に精油を包含したマイクロカプセルを塗布し、さらにその上から剥離後の再接着性を有するアクリルゴム性接着剤を吹き付けて、ノートブックに香料含有マイクロカプセル担持体を接着させた。
【産業上の利用可能性】
【0034】
精油などの香料は、精神安定化効果、精神高揚効果、覚醒効果、抗菌・殺菌効果などを呈することがあるため、介護施設や宿泊施設における枕カバーやシーツのほか、室内装飾用建築材料、自動車内装材料、抗菌機能下着、化粧品、寝具用品、衛生材料などの分野においても利用可能である。また、マイクロカプセルを粉体として取扱うことにより、塗料の分野においても利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
香料含有マイクロカプセルと接着剤の混合物からなり被接着物に接着されるマイクロカプセル混合層と、接着剤からなる接着剤層とを備え、前記マイクロカプセル混合層上に前記接着剤層が形成されたことを特徴とする香料含有マイクロカプセル担持体。
【請求項2】
前記接着剤層は、層状化合物を含有することを特徴とする請求項1記載の香料含有マイクロカプセル担持体。
【請求項3】
前記香料含有マイクロカプセル混合層及び前記接着剤層に用いられる接着剤は、乾燥後に柔軟性を有するポリマー系接着剤であることを特徴とする請求項1又は2記載の香料含有マイクロカプセル担持体。
【請求項4】
前記マイクロカプセル混合層及び前記接着剤層に用いられる接着剤は、剥離可能で再接着可能なポリマー系接着剤であることを特徴とする請求項1又は2記載の香料含有マイクロカプセル担持体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載の香料含有マイクロカプセル担持体を接着させた枕カバー。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項記載の香料含有マイクロカプセル担持体を接着させたシーツ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−223294(P2012−223294A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−92423(P2011−92423)
【出願日】平成23年4月18日(2011.4.18)
【出願人】(504401329)株式会社はあとふるあたご (1)
【出願人】(304027279)国立大学法人 新潟大学 (310)
【Fターム(参考)】