説明

香気剤の気化装置および気化方法

【課題】 安全で且つ加熱温度の調整も容易に香気剤を気化させ、しかも汎用性の高い気化装置を提供する。
【解決手段】 平坦面に載置するに適する台座部11のほぼ中心部の上方に、上下方向の位置を可変として燃料を支持して燃焼させる燃焼台12aを設ける。燃焼台12aの上方に配設された天蓋部13には、燃焼台12aの位置に対応して開口を形成する。台座部11と天蓋部13との間に燃焼台12aを囲繞して、多数の通気口が分布形成されるとともに、その一部に燃焼台12aに燃料を補給するに足る開口が形成されたカバー部材15を配設する。天蓋部13の開口に嵌装して、香気剤を収容する香気剤容器17を設ける。カバー部材15の燃料補給用の開口に当該開口を開閉可能とする扉部材16を配設する。燃焼台12a上にキャンドル12hを載置し燃焼中のキャンドル12hにより香気剤容器17を加熱し、効率的に香気剤を気化させる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば乳香等の芳香剤および抗菌剤のような香気剤を加温気化させるための香気剤の気化装置および気化方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、香りを精神的および肉体的不調の改善または治療に用いようとする、いわゆるアロマセラピー(アロマテラピー)や森林浴が、注目されている。このようなアロマセラピー等の発達と相俟って、木材中の揮発性の油分である精油等の抽出物の含有成分およびそれによる臨床的効果についての研究も進んでいる。例えば、ヒノキやヒバの精油の含有成分における芳香性や効能、そしてカンラン科の木材の精油である乳香や没薬の芳香性や効能等が知られている。この種の芳香剤および抗菌剤等の香気剤を利用する際に、これら香気剤の有効成分を気化させて、室内に香りを漂わせることが行われる。このような、乳香等の香気剤を気化させるにあたっては、従来は、例えば図6に示すような構造の気化装置が用いられている。
【0003】図6の気化装置は、バーナ1およびキャンドル2を有している。バーナ1は、皿受け部1a、脚部1b,1c,1dおよび台板1eを備えている。皿受け部1aは、香気剤、例えば乳香および所要の水を投入するための皿(図示せず)を支持するための環状の部分であり、3つの脚部1b、1cおよび1dは、皿受け部1aに各先端が固定され下方に延びており、平坦面等に載置するのに適するように形成されている。台板1eは、脚部1b、1cおよび1dの中間部に水平に固着され、この台板1e上に固形燃料、例えばキャンドル(蝋燭)2、を載置する。図6のような気化装置を使用する場合には、バーナ1の台板1e上にキャンドル2を載置する。一方、皿に乳香を投入し、所要の水を加える。バーナ1の台板1e上のキャンドル2に点火してから、乳香および水を収容した皿をバーナ1の皿受け部1a上に載置する。このようにして、水を加えた乳香をキャンドル2によって加熱することにより、乳香の成分を気化させる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】図6に示した従来の気化装置を用いれば、乳香等の香気剤を一応気化させることができる。しかしながら、図6の従来の気化装置には、次のような問題がある。
(1) バーナ1の皿受け部1aまたは台板1eの高さを調整できないため、キャンドル2の消耗に従って、キャンドル2の炎と乳香を投入した皿との間隔が開いていくため、皿の加熱温度が次第に低下する。
【0005】(2) バーナ1の形態が単純で、皿もキャンドル2もそれぞれ皿受け部1aおよび台板1eに載置されているだけであるので、持ち運びも容易ではない。持ち運び時その他における傾斜、振動またはショック等により、キャンドル2が滑落したり、バーナ1が転倒するおそれがある。万一、使用中にキャンドル2が脱落したり、バーナ1が転倒すると、火のついたキャンドル2が転げだし、火災を招くおそれがある。また、部屋の中の移動も不自由であり、キャンドル2をつけたまま、外出したり、就寝することができない、という不都合もある。
(3) したがって、バーナ1は、香気剤の気化以外の用途に利用することはできない。
【0006】本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、安全で且つ加熱温度の調整も容易で、しかも汎用性が高い香気剤の気化装置およびその装置を用いる適切な気化方法を提供することにある。本発明に係る請求項1の目的は、特に、火災等に対する安全性が高く、加熱温度の調整も容易で、香気剤の気化以外にも流用可能な香気剤の気化装置を提供することにある。本発明に係る請求項2の目的は、特に、火災等に対する安全性を配慮し、燃料の燃焼中でも安全に持ち運びができると共に就寝中でも安全に使用し得る香気剤の気化装置を提供することにある。
【0007】本発明に係る請求項3の目的は、特に、燃焼中の燃料を簡易確実に消火し得ると共に消火後の嫌な臭いを発生し難い香気剤の気化装置を提供することにある。本発明に係る請求項4の目的は、特に、携帯の利便性および火災等に対する安全性を向上し得る香気剤の気化装置を提供することにある。本発明に係る請求項5の目的は、特に、火災等に対する安全性をさらに向上し得る香気剤の気化装置を提供することにある。本発明に係る請求項6の目的は、特に、香気剤の加熱気化以外の加熱用途に対する利用可能性を向上し得る香気剤の気化装置を提供することにある。
【0008】本発明に係る請求項7の目的は、特に、火災等に対する安全性を向上し、しかも香気剤の加熱気化以外の照明に対する利用可能性を向上し得る香気剤の気化装置を提供することにある。本発明に係る請求項8の目的は、特に、火災等に対する安全性を一層向上し、さらに照明に対する利用可能をさらに向上し得る香気剤の気化装置を提供することにある。本発明に係る請求項9の目的は、特に、火災等に対する安全性が高く、加熱温度の調整も容易で、香気剤の気化以外にも流用可能な香気剤の気化装置を用いる適正な香気剤の気化方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載した本発明に係る香気剤の気化装置は、上述した目的を達成するために、平坦面に載置するに適する台座部と、燃焼させるべき燃料を前記台座部のほぼ中心部の上方に上下方向の位置を可変として支持する燃焼台と、前記燃焼台の上方に、前記台座部と対峙して配設され、前記燃焼台位置に対応して開口が形成された天蓋部と、前記台座部と天蓋部との間に前記燃焼台を囲繞して配設され、多数の通気口が分布形成されるとともに、その一部に前記燃焼台に燃料を補給するに足る開口が形成されてなるカバー部材と、前記燃焼台の上方に前記天蓋部の開口に嵌装され、香気剤を収容する香気剤容器と、前記カバー部材の燃料補給用の開口に配設され、当該開口を開閉可能とする扉部材と、を有し、前記香気剤容器に香気剤および所要の水を投入した状態で、前記燃焼台にて前記燃料を燃焼させて、前記香気剤容器を加温することによって、前記香気剤を気化させる構成としたことを特徴としている。
【0010】請求項2に記載した本発明に係る香気剤の気化装置は、前記燃焼台は、前記台座部およびカバー部材の少なくとも一方に、案内部材に沿って高さ調節部材により高さ位置を変化させ得るように保持され、固形燃料を収容する燃料容器を、横揺れに対し脱落しないように保持する構成としたことを特徴としている。請求項3に記載した本発明に係る香気剤の気化装置は、燃焼中の前記燃料容器の上面開口を閉塞して、燃料を消火するための火消し蓋をさらに含むことを特徴としている。
【0011】請求項4に記載した本発明に係る香気剤の気化装置は、前記台座部、天蓋部およびカバー部材の少なくともいずれかに、吊下げ用の把手をさらに設けたことを特徴としている。請求項5に記載した本発明に係る香気剤の気化装置は、前記台座部、燃焼台、天蓋部、カバー部材、香気剤容器、および扉部材の各部を、不燃性材料により構成したことを特徴としている。請求項6に記載した本発明に係る香気剤の気化装置は、前記天蓋部を、前記香気剤容器に代えて、加熱用容器を載置し得る構成としたことを特徴としている。請求項7に記載した本発明に係る香気剤の気化装置は、前記カバー部材を、多数のパンチ孔が形成されたパンチングメタルにより構成したことを特徴としている。請求項8に記載した本発明に係る香気剤の気化装置は、前記カバー部材および扉部材の少なくとも一方に、光を透過する透明材料からなる透光窓を形成したことを特徴としている。
【0012】請求項9に記載した本発明に係る香気剤の気化方法は、平坦面に載置するに適する台座部、前記台座部のほぼ中心部の上方に配置され、上下方向の位置を可変として支持されて、燃料を保持して燃焼させる燃焼台、前記燃焼台の上方に、前記台座部と対峙して配設され、前記燃焼台位置に対応して開口が形成された天蓋部、前記台座部と天蓋部との間に前記燃焼台を囲繞して配設され、多数の通気口が分布形成されるとともに、その一部に前記燃焼台に燃料を補給するに足る開口が形成されてなるカバー部材、前記燃焼台の上方に前記天蓋部の開口に嵌装され、香気剤を収容する香気剤容器、および前記カバー部材の燃料補給用の開口に配設され、当該開口を開閉可能とする扉部材を備えた香気剤の気化装置を用いる香気剤の気化方法であって、前記香気剤容器に香気剤および所要の水を投入し、前記燃焼台にて前記燃料を燃焼させ前記燃料の減少に応じて前記燃焼台の高さを上昇させつつ、前記香気剤容器を加温することによって、前記香気剤を効率よく気化させることを特徴としている。
【0013】
【作用】すなわち、本発明の請求項1による香気剤の気化装置は、平坦面に載置するに適する台座部のほぼ中心部の上方に、上下方向の位置を可変として燃料を支持して燃焼させる燃焼台を設け、該燃焼台の上方に、前記台座部と対峙して天蓋部を配設し、該天蓋部には前記燃焼台位置に対応して開口を形成し、前記台座部と天蓋部との間に前記燃焼台を囲繞して、多数の通気口が分布形成されるとともに、その一部に前記燃焼台に燃料を補給するに足る開口が形成されたカバー部材を配設し、且つ前記燃焼台の上方に前記天蓋部の開口に嵌装して、香気剤を収容する香気剤容器を設けるとともに、前記カバー部材の燃料補給用の開口に当該開口を開閉可能とする扉部材を配設して、前記香気剤容器に香気剤および所要の水を投入した状態で、前記燃焼台にて前記燃料を燃焼させて、前記香気剤容器を加温することによって、前記香気剤を気化させるように構成してある。このような構成により、燃焼台部分が台座部、カバー部材および天蓋部で覆われ、高さ調整も可能であることから、火災等に対する安全性が高く、加熱温度の調整も容易で、香気剤の気化以外にも流用可能となる。
【0014】また、本発明の請求項2による香気剤の気化装置は、前記燃焼台を、前記台座部およびカバー部材の少なくとも一方に支持された案内部材によって上下方向に案内され且つ上下位置を調整可能に保持され、固形燃料を収容する燃焼燃料容器を、横揺れに対し脱落しないように保持する構成としてある。このような構成により、特に、燃料容器を上下位置調整可能な燃焼台上に安定的に載置させるなど、火災等に対する安全性を向上させ得る。
【0015】本発明の請求項3による香気剤の気化装置は、燃焼中の前記燃料容器の上面開口を閉塞して、燃料を消火するための火消し蓋をさらに含む。このような構成により、特に、燃料容器における燃料の消火を随時且つ確実にしかも不快な臭いを発生し難くし、火災等に対する安全性を一層向上させ得る。本発明の請求項4による香気剤の気化装置は、前記台座部、天蓋部およびカバー部材の少なくともいずれかに、吊下げ用の把手をさらに設ける。このような構成により、特に、持ち運び時における落下および転倒等を未然に防止し、携帯の利便性および火災等に対する安全性を確保し得る。
【0016】本発明の請求項5による香気剤の気化装置は、前記台座部、燃焼台、天蓋部、カバー部材、香気剤容器、および扉部材の各部を、不燃性材料により構成する。このような構成により、特に、燃料以外に可燃物を使用せず、転倒時等にも燃料の火が他の構成物に燃え移ることもなく、火災等に対するさらなる安全性を確保し得る。本発明の請求項6による香気剤の気化装置は、前記天蓋部を、前記香気剤容器に代えて、鍋等の加熱用容器を載置し得る構成とする。このような構成により、特に、香気剤の加熱気化以外に緊急時等におけるミルク等の加熱用途に利用することが可能となる。
【0017】本発明の請求項7による香気剤の気化装置は、前記カバー部材を、多数のパンチ孔が形成されたパンチングメタルにより構成する。このような構成により、特に、火災等に対する安全性を向上し、しかも香気剤の加熱気化以外に緊急時における照明等に利用することが可能となる。本発明の請求項8による香気剤の気化装置は、前記カバー部材および扉部材の少なくとも一方に、光を透過する透明材料からなる透光窓を形成する。このような構成により、特に、火災等に対する安全性を一層向上し、さらに緊急時等における照明等に容易に利用することが可能となる。
【0018】本発明の請求項9による香気剤の気化方法は、平坦面に載置するに適する台座部、前記台座部のほぼ中心部の上方に配置され、上下方向の位置を可変として支持されて、燃料を保持して燃焼させる燃焼台、前記燃焼台の上方に、前記台座部と対峙して配設され、前記燃焼台位置に対応して開口が形成された天蓋部、前記台座部と天蓋部との間に前記燃焼台を囲繞して配設され、多数の通気口が分布形成されるとともに、その一部に前記燃焼台に燃料を補給するに足る開口が形成されてなるカバー部材、前記燃焼台の上方に前記天蓋部の開口に嵌装され、香気剤を収容する香気剤容器、および前記カバー部材の燃料補給用の開口に配設され、当該開口を開閉可能とする扉部材を備えた香気剤の気化装置を用いる香気剤の気化方法において、前記香気剤容器に香気剤および所要の水を投入し、前記燃焼台にて前記燃料を燃焼させつつ燃料の減少に応じて燃焼台の上下位置を上方に移動させ、前記香気剤容器を加温することによって、前記香気剤を効率よく気化させる。このようにすることにより、特に、火災等に対する安全性が高く、加熱温度の調整も容易で、香気剤の気化以外にも流用可能な香気剤の気化装置を用いて適正に且つ効率的に香気剤を気化させることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】以下、実施の形態に基づき、図面を参照して本発明の香気剤の気化装置を詳細に説明する。図1は、本発明の一つの実施の形態に係る香気剤の気化装置の構成を示している。図1に示す香気剤の気化装置は、台座部11、燃焼台機構12、天蓋部13、支柱14、カバー部材15、扉部材16、香気剤容器17および把手18を備えている。台座部11は、平坦面に載置するに適するように、底面をほぼ平面としてフランジ状に構成してある。燃焼台12aは、台座部11のほぼ中心部の上方に上下方向の位置を可変として燃料を支持する。
【0020】燃焼台機構12は、上記燃焼台12aを含み、テーブル12b、脚部12c、案内部材12d、摺動軸12e、チェーン12fから構成されている。即ち、台座部11上に立設された3本の脚部12cの上端には、平板状のテーブル12bが固着されており、このテーブル12bの下面には、案内部材12dのフランジ部が溶接などの手段により固着されている。燃焼台12aの下面には垂下するように摺動軸12eが固着され、この摺動軸12eは、テーブル12bと案内部材12dの中心部に穿設されたガイド孔を貫通しており、この摺動軸12eと案内部材12dとによって燃焼台12aが上下方向にのみ移動可能に案内されるようになっている。
【0021】燃焼台12aは、短寸の有底角筒状(有底円筒状であってもよい)に形成され、等角度間隔位置(この場合180゜位置)にはチェーン12f取付用の孔が穿設されている。燃焼台12aの上側には、中心部に芯が立てられたキャンドル12hが燃料容器12gに収容された状態で載置されているが、燃焼台12aの上端が開口された筒状となっているため燃焼台12aに横揺れが与えられてもキャンドル12hは、滑落しないようになっている。天蓋部13は、図1に示すように、ほぼ同一円周上の所定位置に配設された複数本の支柱14により、燃焼台12aの上方に、前記台座部11と対峙して配設支持されている。該天蓋部13には、燃焼台12aの位置に対応して開口が形成されている。
【0022】カバー部材15は、台座部11と天蓋部13との間に燃焼台12aを囲繞して、支柱14の内側に配設されている。該カバー部材15は、多数の通気口が分布形成された、例えばパンチングメタルからなり、その一部に燃焼台12aにキャンドル12h等の燃料を補給するに足る開口が形成されている。このカバー部材15の燃料補給用の開口には、扉部材16が開閉可能に設けられている。扉部材16は、カバー部材15の燃料補給用の開口の縁部に、例えば蝶番16a等により支持されて回動操作により、開閉し得ると共に、閉鎖した状態で係止レバー16bを回動操作することにより閉鎖状態を保持し得る構造としている。
【0023】なお、燃焼台12aの孔には、複数本のチェーン12fの各一端が結合され、該チェーン12fの各他端は、カバー部材15に設けた鍵穴状の係止孔15aを通して外部に導出されている。図4の(a)に係止孔15aの詳細な正面図をそして図4の(b)に該係止孔15aの詳細な縦断面図を示している。高さ調整部材としてのチェーン12fは、図示のように、多数の球状部が小径部を介して連結されてなり、図4の(a)に示すように、鍵穴状の係止部15aのスリット部15bに、所定箇所の小径部を挿通させることにより、球状部を係止させ、所定長さで燃焼台12aを吊架する。キャンドル12hが消耗して、燃焼位置が低下したら、チェーン12fをさらに引き出し、チェーン12fの係合箇所を変更することにより、燃焼台12a、つまり燃料容器12gの高さを変化させて、キャンドル12hの高さ位置を調整することができる。
【0024】天蓋部13の上述した開口には、香気剤容器17が嵌装されている。香気剤容器17は、図3に示すように形成され、乳香に代表される精油等の香気剤および必要に応じて適宜料の水を収容し、燃焼台12aのキャンドル12h等の燃料の上方に位置する。香気剤容器17は、図3の(a)に斜視図を、同図の(b)にその縦断面図をそれぞれ示すように、短寸の有底円筒状をなし、乳香等底面の中央部を球面状に湾曲させて下方に突出させ乳香等の気化と昇温効率を高めている。香気剤および必要に応じて適宜料の水を収容した香気剤容器17は、加熱されることにより香気剤の有効成分を気化させる。
【0025】天蓋部13は、上下を反転させて支柱14およびカバー部材15に取付け可能としており、上下を反転させた場合には、香気剤容器17に代えて小鍋等の加熱容器を載置し得るように構成されている。さらに天蓋部13には、湾曲形成された把手18を設けており、この把手18は、天蓋部13が上下を反転した場合にも把手として使用可能となるように、天蓋部13に対して180°以上回動し得るように取着されている。この把手18は、天蓋部13でなくカバー部材15に取着する構成としてもよい。
【0026】また、別途に図5に示すような火消し蓋19を用意する。図5の(a)は、火消し蓋19の正面図、図5の(b)は、平面図、そして図5の(c)は、縦断面図を示す。火消し蓋19は、燃料容器12gの上端開口を閉塞し得るように、燃料容器12gの外径よりも若干大径とした円盤状の蓋部19aとそれに固着された摘み部19bとからなり、摘み部19bを摘んで操作して、燃料容器12gに載置し、蓋部19aにより燃料容器12gの上端開口を10〜20秒間程度閉塞することにより、燃料容器12gに収容された燃焼中のキャンドル12hを確実に消火し且つ不快な臭いや、すすの発生を抑止することができる。なお、上述の台座部11、燃焼台12a、天蓋部13、支柱14、カバー部材15、扉部材16、香気剤容器17、および把手18の各部は、例えばステンレス等の金属により構成している。
【0027】次に、上述したように構成された香気剤の気化装置の使用時の動作について説明する。まず、燃料容器12gに充填固化されたキャンドル12hを燃焼台12aにセットしておく。キャンドル12hが新しいときは、チェーン12fを充分にゆるめておき、燃焼台12aをテーブル12b上に直接載置する。そして、天蓋部13にセットされた香気剤容器17に香気剤および所要の水を投入する。次に、キャンドル12hに点火して燃焼させる。
【0028】このキャンドル12hの燃焼により、香気剤容器17を加温することによって、乳香のような精油等からなる香気剤を気化させる。燃焼により、キャンドル12hが消耗し、香気剤容器17から燃料容器12gのキャンドル12hの燃焼位置が離れてしまったときには、チェーン12fのスリット部15bに対する係合位置を変更して、燃焼位置、つまり燃焼台12aの位置を香気剤容器17に近接させる。上述したように図1〜図5R>5に示すような構成の香気剤の気化装置は、乳香のような精油等からなる香気剤を安全に、確実に、且つ適切に気化させることができ、しかも搬送も容易である。また、当該気化装置を、ステンレス等の重量のある金属によって形成した場合には、充分な重量もあり、充分に重心を低く構成することもできるので、不用意に転倒するおそれもない。
【0029】なお、上述においては、台座部11、燃焼台12a、天蓋部13、支柱14、カバー部材15、扉部材16、香気剤容器17、および把手18の各部は、例えばステンレス等により形成したが、これら各部は、他の金属または金属以外の材料を用いて構成しても良いが、火災/事故防止の観点から不燃性材料により構成することが望ましい。また、カバー部材15および扉部材16の少なくとも一方に、ガラス、好ましくは耐熱ガラス等の光を透過する透明材料からなる透光窓を形成しておけば、災害時等の緊急時において、キャンドル12hの炎の光を携帯用照明装置としても一層有効に流用することもできる。
【0030】なお、本発明は、上述した実施の形態にのみ限定されるものではなく、その要旨に含まれる範囲内において、種々変形して実施することができる。例えば、上述の実施の形態においては、高さ調節部材として、チェーン12fを用いた例を示したが、チェーン12fを無くし、摺動軸12eの外周に雄ねじを形成し、テーブル12bと案内部材12dの中心部に上記雄ねじに適合する雌ねじ部を形成しておき、摺動軸12eの雄ねじ部をテーブル12bと案内部材12dの雌ねじに螺合した構成としてもよい。このように構成した場合には、摺動軸12eを燃焼台12aによって、時計方向回りまたは反時計方向回りに回動操作することにより、燃焼台12aの高さ位置を調節することができるので、これらの機構部分は、燃焼台12aの高さ調節機能と上下方向案内機構とを、併せて付与されたことになる。
【0031】また、香気剤容器17の中には、乳香等共に適量の水(例えば水深にして1mm〜5mm位)を入れた状態でキャンドル12hの燃焼熱で加温するわけであるが、水分が徐々に蒸発するため、時折、水分を補給する必要がある。そのため、水タンクを香気剤容器17より高い位置に配設し、水タンクを香気剤容器17との間をチューブにより連結し、チューブの途中に流量調節バルブ(いわゆる薬剤点滴用の流量調節バルブと同様のもの)を介挿させて適当量の水を香気剤容器17に滴下するようにしてもよい。
【0032】尚、香気剤としては、中国、エチオピア、イラン、レバノン等に分布するボスウェリア・カルテリという木から採取される芳香性樹脂である乳香が最適である。乳香の化学的組成は、カジネン(セスキテルペン)、カンフェン、ジペンテン、ピネン、フェランドレン(テルペン類)オリバノール(アルコール)からなり、強壮作用、駆風作用、細胞成長促進作用、子宮強壮作用、収斂作用、消化促進作用、消毒作用、鎮静作用、瘢痕形成作用、利尿作用等の治療上の特性があるとされている。乳香油は、心に対する働きとしては、平静な感情を起こさせ、心を和ませる効果をもたらし、身体に対する働きとしては、粘膜に著しい効果があり、肺を浄化し、息切れを改善するほか、咳、気管支炎、などに効き目があるとされている。
【0033】また、最近乳香またはその抽出物は、その成分中ボスウェリン酸がアルツハイマー病の予防および治療にも効果的であることに着目してなされた発明が提供されている(特表平10−510276号)。さらに、香気剤としては、没薬(ミルテ)が適しておりこの没薬は、カンラン科に属する低木で、アフリカ、アラビアに存在し、樹皮の傷から滲出した樹液を原料とし、水蒸気蒸留して得られるもので、強壮作用、去痰作用、駆風作用、健胃作用、抗微生物作用、殺菌作用、収斂作用、消炎作用、デオドラント作用、利尿作用等の特性があるとされている。
【0034】
【発明の効果】以上述べたように、本発明の請求項1によれば、平坦面に載置するに適する台座部のほぼ中心部の上方に、上下方向の位置を可変として燃料を支持して燃焼させる燃焼台を設け、該燃焼台の上方に、前記台座部と対峙して天蓋部を配設し、該天蓋部には前記燃焼台位置に対応して開口を形成し、前記台座部と天蓋部との間に前記燃焼台を囲繞して、多数の通気口が分布形成されるとともに、その一部に前記燃焼台に燃料を補給するに足る開口が形成されたカバー部材を配設し、且つ前記燃焼台の上方に前記天蓋部の開口に嵌装して、香気剤を収容する香気剤容器を設けるとともに、前記カバー部材の燃料補給用の開口に当該開口を開閉可能とする扉部材を配設して、前記香気剤容器に香気剤および所要の水を投入した状態で、前記燃焼台にて前記燃料を燃焼させて、前記香気剤容器を加温することによって、前記香気剤を気化させることにより、燃焼台部分が台座部、カバー部材および天蓋部で覆われ、高さ調整も可能であることから、火災等に対する安全性が高く、加熱温度の調整も容易で、香気剤の気化以外にも流用可能な香気剤の気化装置を提供することができる。
【0035】また、本発明の請求項2の香気剤の気化装置によれば、前記燃焼台を、前記台座部およびカバー部材の少なくとも一方に案内部材に沿って高さ調節部材により上下位置を変化させ得るように保持され、固形燃料を収容する燃料容器を、横揺れに対し脱落しないように保持する構成としたので、上下移動が可能でありながら、燃焼台上に載置した燃料が滑落することが確実に防止され、火災等に対する安全性を向上させ得る。
【0036】本発明の請求項3の香気剤の気化装置によれば、燃焼中の前記燃料容器の上面開口を閉塞して、燃料を消火するための火消し蓋をさらに含む構成により、特に、燃料容器における燃料の消火を随時且つ確実に行えるようにして、火災等に対する安全性を一層向上させ得ると共に、消火後の不快な臭いの発生を抑え得る。本発明の請求項4の香気剤の気化装置によれば、前記台座部、天蓋部およびカバー部材の少なくともいずれかに、吊下げ用の把手をさらに設けることにより、特に、持ち運び時における落下および転倒等を未然に防止し、携帯の利便性および火災等に対する安全性を確保し得る。
【0037】本発明の請求項5の香気剤の気化装置によれば、前記台座部、燃焼台、天蓋部、カバー部材、香気剤容器、および扉部材の各部を、不燃性材料により構成することにより、特に、燃料以外に可燃物を使用せず、転倒時等にも燃料の火が他の構成物に燃え移ることもなく、火災等に対するさらなる安全性を確保し得る。本発明の請求項6の香気剤の気化装置によれば、前記天蓋部を、前記香気剤容器に代えて、鍋等の加熱用容器を載置し得る構成とすることにより、特に、香気剤の加熱気化以外に緊急時等におけるミルク等の加熱用途に利用することが可能となる。
【0038】本発明の請求項7の香気剤の気化装置によれば、前記カバー部材を、多数のパンチ孔が形成されたパンチングメタルにより構成することにより、特に、火災等に対する安全性が向上し、しかも香気剤の加熱気化以外に緊急時における照明等に利用することが可能となる。本発明の請求項8の香気剤の気化装置によれば、前記カバー部材および扉部材の少なくとも一方に、光を透過する透明材料からなる透光窓を形成することにより、特に、火災等に対する安全性を一層向上し、さらに緊急時等における照明等に容易に利用することが可能となる。
【0039】さらに、本発明の請求項9の香気剤の気化方法によれば、平坦面に載置するに適する台座部、前記台座部のほぼ中心部の上方に配置され、上下方向の位置を可変として支持されて、燃料を保持して燃焼させる燃焼台、前記燃焼台の上方に、前記台座部と対峙して配設され、前記燃焼台位置に対応して開口が形成された天蓋部、前記台座部と天蓋部との間に前記燃焼台を囲繞して配設され、多数の通気口が分布形成されるとともに、その一部に前記燃焼台に燃料を補給するに足る開口が形成されてなるカバー部材、前記燃焼台の上方に前記天蓋部の開口に嵌装され、香気剤を収容する香気剤容器、および前記カバー部材の燃料補給用の開口に配設され、当該開口を開閉可能とする扉部材を備えた香気剤の気化装置を用いる香気剤の気化方法において、前記香気剤容器に香気剤および所要の水を投入し、前記燃焼台にて前記燃料を燃焼させ、前記香気剤容器を加温することによって、前記香気剤を気化させることにより、特に、火災等に対する安全性が高く、加熱温度の調整も容易で、香気剤の気化以外にも流用可能な香気剤の気化装置を用いて適正且つ効率的に香気剤を気化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一つの実施の形態に係る香気剤の気化装置の構成を模式的に示す斜視図である。
【図2】図1の香気剤の気化装置の構成を模式的に示す縦断面図である。
【図3】図1の香気剤の気化装置の構成における香気剤容器の構成を詳細に示す(a)斜視図および(b)縦断面図である。
【図4】図1の香気剤の気化装置の構成における係止孔およびチェーンの係止構成を詳細に示す、係止孔部分の(a)正面図および(b)縦断面図である。
【図5】図1の香気剤の気化装置の構成における火消し蓋の構成を詳細に示す、(a)正面図、(b)平面図および(c)縦断面図である。
【図6】従来の香気剤の気化装置の一例の構成を模式的に示す斜視図である。
【符号の説明】
11 台座部
12 燃焼台機構
12a 燃焼台
12b テーブル
12c 脚部
12d 案内部材
12e 摺動軸
12f チェーン
12g 燃料容器
12h キャンドル
13 天蓋部
14 支柱
15 カバー部材
15a 係止孔
15b スリット部
16 扉部材
16a 蝶番
16b 係止レバー
17 香気剤容器
18 把手
19 火消し蓋
19a 蓋部
19b 摘み部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 平坦面に載置するに適する台座部と、燃焼させるべき燃料を前記台座部のほぼ中心部の上方に上下方向の位置を可変として支持する燃焼台と、前記燃焼台の上方に、前記台座部と対峙して配設され、前記燃焼台位置に対応して開口が形成された天蓋部と、前記台座部と天蓋部との間に前記燃焼台を囲繞して配設され、多数の通気口が分布形成されるとともに、その一部に前記燃焼台に燃料を補給するに足る開口が形成されてなるカバー部材と、前記燃焼台の上方に前記天蓋部の開口に嵌装され、香気剤を収容する香気剤容器と、前記カバー部材の燃料補給用の開口に配設され、当該開口を開閉可能とする扉部材と、を有し、前記香気剤容器に香気剤および所要の水を投入した状態で、前記燃焼台にて前記燃料を燃焼させて、前記香気剤容器を加温することによって、前記香気剤を気化させる構成としたことを特徴とする香気剤の気化装置。
【請求項2】 前記燃焼台は、前記台座部およびカバー部材の少なくとも一方に、案内部材に沿って高さ調節部材により高さ位置を変化させ得るように保持され、固形燃料を収容する燃料容器を、横揺れに対し脱落しないように保持する構成としたことを特徴とする請求項1に記載の香気剤の気化装置。
【請求項3】 燃焼中の前記燃料容器の上面開口を閉塞して、燃料を消火するための火消し蓋をさらに含むことを特徴とする請求項2に記載の香気剤の気化装置。
【請求項4】 前記台座部、天蓋部およびカバー部材の少なくともいずれかに、吊下げ用の把手をさらに設けたことを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか1項に記載の香気剤の気化装置。
【請求項5】 前記台座部、燃焼台、天蓋部、カバー部材、香気剤容器、および扉部材の各部は、不燃性材料により構成したことを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか1項に記載の香気剤の気化装置。
【請求項6】 前記天蓋部は、前記香気剤容器に代えて、加熱用容器を載置し得る構成としたことを特徴とする請求項1〜5のうちのいずれか1項に記載の香気剤の気化装置。
【請求項7】 前記カバー部材は、多数のパンチ孔が形成されたパンチングメタルにより構成したことを特徴とする請求項1〜6のうちのいずれか1項に記載の香気剤の気化装置。
【請求項8】 前記カバー部材および扉部材の少なくとも一方に、光を透過する透明材料からなる透光窓を形成したことを特徴とする請求項1〜7のうちのいずれか1項に記載の香気剤の気化装置。
【請求項9】 平坦面に載置するに適する台座部、前記台座部のほぼ中心部の上方に配置され、上下方向の位置を可変として支持されて、燃料を保持して燃焼させる燃焼台、前記燃焼台の上方に、前記台座部と対峙して配設され、前記燃焼台位置に対応して開口が形成された天蓋部、前記台座部と天蓋部との間に前記燃焼台を囲繞して配設され、多数の通気口が分布形成されるとともに、その一部に前記燃焼台に燃料を補給するに足る開口が形成されてなるカバー部材、前記燃焼台の上方に前記天蓋部の開口に嵌装され、香気剤を収容する香気剤容器、および前記カバー部材の燃料補給用の開口に配設され、当該開口を開閉可能とする扉部材を備えた香気剤の気化装置を用いる香気剤の気化方法であって、前記香気剤容器に香気剤および所要の水を投入し、前記燃焼台にて前記燃料を燃焼させ前記香気剤容器を加温することによって、前記香気剤を効率よく気化させ、前記燃料の減少に応じて前記燃焼台の高さを上昇させることを特徴とする香気剤の気化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2000−316960(P2000−316960A)
【公開日】平成12年11月21日(2000.11.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−130683
【出願日】平成11年5月11日(1999.5.11)
【出願人】(398062921)有限会社井田工業 (1)
【Fターム(参考)】