説明

香炉

【課題】香(薫香)を内部で燃焼するための香炉を提供する。
【解決手段】香炉1は、内部で香50を燃焼させるための燃焼室11と、燃焼室11から煙5を外界へ放出するための放出口56と、燃焼室11へ繋がる開口がガラス繊維の断熱材25により覆われた通気性の底壁19とを有し、カバー30を弾性的に変形することにより燃焼室11の内部圧力を変動させることができる。この香炉1は、カバー30を指などで叩くことにより、放出口56から煙の塊、例えば、リング状の煙を放出させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、お香を燃焼させる香炉に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、お香を焚いて香りを楽しむことが見直されている。お香は薫物とも呼ばれるが、燃焼させるお香の1つの典型的な形状は棒状の線香である。特許文献1には全体が横長で、上壁に複数の香煙用孔が配置され、その排気位置が時間的目盛的機能を果たして線香状のお香の燃焼時間を確認しながら香りを楽しむようにすることが記載されている。
【特許文献1】特開平10−137109号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このように、お香を燃焼させるタイプの香炉においても、香りのみならず煙を出すことに注目したものがあり、さらに、煙が出る状態を楽しむことができる香炉が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一つの態様は、内部で香を燃焼させるための燃焼室を有する香炉である。この香炉は、さらに、燃焼室から煙を外界へ放出するための放出口と、燃焼室へ繋がる開口が、耐熱性繊維を含む断熱材により覆われた通気性の壁体部分とを有し、燃焼室の内部圧力を変動させることができる。本明細書において、燃焼とは、香(薫香)を燃やすこと、すなわち、香が赤熱したりしながら煙を出して燃えることを含み、また、燻らすことを含むものである。
【0005】
この香炉においては、燃焼室の内部圧力を変動させることにより、放出口から放出される煙の量、速度などを変えることができる。このため、単に、放出口から煙が立ち昇るだけではなく、放出口から煙の塊を放出したり、さらに、条件が整えば、ドーナツ状の煙の塊を放出させることができる。
【0006】
燃焼室の内部圧力を変動する一つの形態は、燃焼室の壁体の一部を、外界からの力により弾性的に変形可能とすることである。例えば、ユーザが手で香炉の側面や上面を叩くことにより、内部圧力を変動させて、放出口から出る煙の状態の変動を楽しむことができる。内部圧力を変動させることにより、放出口から外気が燃焼室内に入る。このため、放出口のサイズ、圧力変動の幅などの条件によっては、香の燃焼に十分な燃焼用の空気を放出口から得ることができる可能性がある。機械的な方法により香炉の内部圧力を変動させることも可能である。
【0007】
ユーザが手動で燃焼室の内部圧力を変えようとした場合、香が燃えている間、継続して香炉の上面や側面を叩き続けることは無理があるかもしれない。燃焼を継続する最も簡単な方法は、燃焼用の空気が十分に燃焼室に入るように十分な開口面積を確保することである。しかしながら、開口面積が大きくなると燃焼室の内部圧力を変えることが難しくなり、香炉のどこかを叩いても煙の挙動に及ぼす影響は小さくなる。
【0008】
本発明の一態様の香炉は、燃焼室へ繋がる開口が、耐熱性繊維を含む断熱材により覆われた通気性の壁体部分を有する。この通気性の壁体部分は、耐熱性繊維を含む断熱材により主に構成されることにより通気性を得ているので、燃焼室の内部圧力が大きく変動しない場合、燃焼室内と外気の温度差、煙突効果などにより、外気を燃焼室内へと導く開口として機能とする。一方、香炉の上面を叩くなどの方法により、燃焼室内の圧力を変えようとすると、断熱材が気体の流通抵抗となり、室内の圧力変動が外界へ漏れ難く、燃焼室の内圧を変動させやすい。このため、叩くなどの方法により容易に燃焼室の内圧を変えて放出口から放出される煙の挙動に影響を与えることができる。
【0009】
通気用の壁体部分は、燃焼室の底壁の少なくとも一部であって、香を置くための支持台を兼ねていることが望ましい。通気用の壁体部分の近傍は、酸素濃度が高いので、香炉の中で香を燃焼させるのに適した位置の一つである。断熱材の好適なものは、耐熱性繊維を綿状にしたものをマット状に成形したものであり、例えば、ガラス繊維マットである。
【0010】
香炉は、燃焼室の壁体の一部を構成するための着脱可能な樹脂製のカバーであって、弾性的に変形可能な皿状のカバーを有することが望ましい。カバーを叩くことにより燃焼室の内部圧力を変動させることができる。さらに、このカバーに、リング状の複数の香を支持するための凹凸模様を付すことにより、香炉に入れて燃焼させるための複数の香を供給するためのコンテンナ(容器)として、香炉とともに代替品を供給できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1に、本発明の実施形態の香炉の外観を示している。図2に、展開図により、香炉の概略構成を示している。この香炉1は、全体が5角形で中空のボディー10を備えている。このボディー10は、ABS樹脂により成形されており、内部に筒状の燃焼室11を含んでいる。燃焼室11の上方は円形の開口12となり、下方(底)13は、複数の支持梁14が放射状に広がり、それらの支持梁14の間が開口になっている。また、ボディー10の底には5箇所に脚部15が設けられており、底13が若干浮いた状態になる。燃焼室11には、アルミニウム製で円筒状のシールド20が挿入され、燃焼室11の側壁を構成する。燃焼室11の底13には、ガラス繊維マット25が載せられ、通気性の底壁19を構成する。
【0012】
燃焼室11の上部開口12には、透明で薄い樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート)製のカバー30が載せられ、燃焼室11の上壁18を構成する。カバー30は、周囲が円形の薄い(高さの低い)ドーム状または皿状であり、中央に円形の開口39が形成されている。円形の開口39には、中央に円形の放出口56が形成された、アルミニウム製のホルダー55が装着され、燃焼室11からの煙5および香りの放出部分を構成する。ホルダー55の裏面にはリング状の香(薫香)50を装着するための金具57が取り付けられている。
【0013】
図3に、香炉1に香50を装着する様子を断面図により示している。香50は、外形がほぼ六角形のリング状となるように白檀を主成分とした薫香を成形したものである。香50は、そのままでも香りを楽しむことができるが、燃焼させることにより、煙が発生し、その煙と共に香りが周囲に広がるようになっている。香50を燃焼させる場合は、香炉1の上壁18を構成するカバー30の中央の開口39からホルダー55を取り外す。ホルダー55の裏面の金具57に香50を取り付けて着火する。その後、ホルダー55をカバー30の開口39に挿入する。
【0014】
図4に断面図により示すように、ホルダー55により、香50は、燃焼室11の内部に吊り下げられた状態にセットされる。燃焼用の空気6は、ホルダー55の中央の放出口56からも供給されるが、主には、燃焼室11の底壁20のガラス繊維マット25を介して供給される。香50の燃焼により発生した煙5は、燃焼室11に充満すると共に、放出口56から放出される。
【0015】
この樹脂製のカバー30は薄く、弾性があり、上方から指などにより叩くと弾性的に変形する。このため、カバー30に上方から指で叩くなどの方法により力7を加えると、カバー30は弾性的に歪み、燃焼室11の内圧を変動させることができる。カバー30は厚みの薄いドーム状なので変形し易く、適当な力で叩くことによりカバー30は撓み、その後、元の形状に戻り、燃焼室11の容積を大きく変動させることができる。その結果、燃焼室11の内圧を変動させることができる。
【0016】
燃焼室11の底壁19を構成するガラス繊維性マット25は、50〜75mm程度の長さのガラス短繊維あるいは長繊維を絡ませて綿状にしたものをマット状に成形したものであり、厚みが3〜10mm程度のものである。ガラス繊維の直径は数μmから10数μm程度であり、600℃程度の耐熱性がある。したがって、ガラス繊維をマット状にした部材25は、空気層を多く含むので断熱性がある。さらに、ガラス繊維マット25は、多孔質性の部材でもあるので、香50が燃焼室11において燃焼している通常の状態では燃焼空気6を提供する程度の十分な通気性もある。一方、ガラス繊維の絡み合いにより形成される個々の開口の大きさは、μmあるいは1mm程度のオーダであり、さらに、マット25においては、それらの開口が積層された複雑な構成になっている。このため、ガラス繊維マット25は、急激な圧力変動に伴う空気の流通に対しては抵抗となる。
【0017】
したがって、カバー30を叩くなどの方法により弾性的に変形させると、燃焼室11の内圧は上昇する。このため、燃焼室11の内部に充満していた煙5は、放出口56からいっきに放出され、条件が整うと、リング状の煙となって放出される。したがって、この香炉1は、通常は、燃焼室11の内部で香50を燃焼させて、その香りを楽しんだり、芳香口56から立ち上る煙5を楽しむことができる。また、カバー30を叩くことにより、芳香口56から煙5の塊を放出させることができ、叩き方によって煙5の塊をリング状にしたり、リング状の煙が拡散する様子を楽しむことができる。
【0018】
図5に、香炉1の異なる使い方を断面図により示している。この例では、香50を底壁19のガラス繊維マット25の上に置いて燃焼させている。すなわち、燃焼室11の底壁19を、香50を焚くための支持台として用いている。底壁19は通気性があるので、底壁19の上は燃焼用空気が得やすい位置の1つである。また、ガラス繊維マット25は断熱性(保温性)もあるので、燃焼を維持させることが容易である。
【0019】
香炉1の底壁19を構成するための通気性のある断熱材は、ガラス繊維マット25に限らない。通気性を得るためには、焼結金属あるいは他のポーラスなセラミック系の断熱材であっても良いが、開口率が高く、厚みなどを調整しやすい耐熱繊維を含む断熱材であることが望ましい。耐熱性の繊維としてはガラス繊維以外に、シリカ(シリコン)繊維、カーボン繊維を挙げることができる。アスベスト繊維は、耐熱性は高いが健康上、有害であるとされており、好ましくない。断熱材としては、ガラス繊維などの耐熱性繊維を用いた不織布、耐熱性繊維により織られたクロス(例えばガラスクロス)であっても良い。これらの素材も断熱性が高く、ある程度の通気性もあり、図4に示したような、香50を燃焼室11の内部に吊った状態で燃焼させる場合は、好適な材料の1つである。
【0020】
図5に示すように、香50を底壁19の上に置いて、支持台として用いる場合は、綿状のものを成形したマット25に比較して香50との接触面積が増えること、あるいは開口率が不足することが要因で、香50の燃焼を維持できないケースがある。この点、ガラス繊維マット25は、いずれのケースであっても香50を良好に燃焼できるので好ましい。ガラス繊維、シリカ繊維およびカーボン繊維は、綿状のものをマット状に成形したもの(ガラス繊維マット、シリカ繊維マットなど)が市販されており、香炉1の通気性の壁体部分を形成するために使用できる。また、香50の燃焼熱により断熱材の一部が溶けたり、変色した場合は、断熱材である耐熱性の繊維からなるマットの交換は容易である。
【0021】
燃焼室11の上壁18を構成するカバー30は、香炉1の上壁の一部を構成すると共に、着脱可能であり、取り替えることが可能である。燃焼室11の圧力変動を大きくするためには、カバー30は、適当な力で弾性的に比較的大きく変形することが望ましい。このため、PETなどの樹脂による厚みの小さな(膜あるいは薄板状)カバー30を採用することが望ましい。さらに、カバー30は、ドーム状あるいは皿状であることが好ましい。その一方で、燃焼室11の内部の熱あるいは煙などにより、変形したり、変色して透明感がなくなったりする可能性が高い。そのような場合は、カバー30を交換することが好ましい。
【0022】
図6に、カバー30に6つの香50を載せた例を示している。本例のカバー30は、凹凸により模様31が形成されており、リング状の香(薫香)50を6つ取り付けてユニット化するための部材(コンテナ、容器)として利用できる形状になっている。すなわち、カバー30の模様31は、複数の香50を搭載するのに適したデザインとなっており、香50と共に供給できる。このため、香50と共に、交換用のカバー30を供給することができる。
【0023】
なお、カバー30は燃焼室11の上部に限らず、前方あるいは側方に取り付けるようにしても良い。また、吹出口56も上方に限らず、前方あるいは側方に配置することができる。さらに、カバー30を弾性的に変形させることにより、燃焼室11の内圧を変動させる代わりに、燃焼室11の底壁あるいは側壁の一部を弾性的に変形できるようにしても良い。たとえば、ゴム製の板などにより燃焼室11の一部の壁を構成し、その板をモータなどにより振動あるいは脈動させることにより燃焼室11の内圧を変動させても煙5を放出する状態の変化を楽しむことができる。また、燃焼室11をピストンあるいはダイヤフラムなどの圧力を変動させることができる機能を備えた装置と接続して、燃焼室11の内圧を変動させても良い。
【0024】
また、断熱材により塞がれた通気用の壁体部分は、底壁19に限定されることはなく、燃焼室11の側壁であっても良い。しかしながら、ドラフト圧力によりフレッシュエアーを燃焼室11に導きやすく、また、香の支持台として使用できる点から、燃焼室11の底壁19を通気性のある断熱材により構成することは1つの好適な実施形態である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】香炉の外観を示す斜視図である。
【図2】香炉の構成を展開して示す図である。
【図3】香炉に香をセットする様子を示す断面図である。
【図4】香炉にセットされた香が燃えている状態を示す断面図である。
【図5】香炉に香をセットする異なる例を示す図である。
【図6】カバーに香をセットしてユニット化した状態を示す図である。
【符号の説明】
【0026】
1 香炉、 10 ボディー、 11 燃焼室
19 底壁、 25 ガラス繊維マット、 30 カバー
50 ホルダー、 56 放出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部で香を燃焼させるための燃焼室を有する香炉であって、
前記燃焼室から煙を外界へ放出するための放出口と、
前記燃焼室へ繋がる開口が、耐熱性繊維を含む断熱材により覆われた通気性の壁体部分とを有し、前記燃焼室の内部圧力を変動させることができる香炉。
【請求項2】
請求項1において、前記通気性の壁体部分は、前記燃焼室の底壁の少なくとも一部であって、前記香を置くための支持台を兼ねている、香炉。
【請求項3】
請求項1において、前記断熱材は、前記耐熱性繊維を綿状にしたものをマット状に成形した部材である、香炉。
【請求項4】
請求項1において、前記燃焼室の壁体の一部は、外界からの力により弾性的に変形し、前記燃焼室の内部圧力を変動させる、香炉。
【請求項5】
請求項1において、前記燃焼室の壁体の一部を構成するための着脱可能な樹脂製のカバーを有し、前記カバーは弾性的に変形可能な皿状であり、リング状の複数の香を支持するための凹凸模様が付されている、香炉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−49019(P2008−49019A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−230225(P2006−230225)
【出願日】平成18年8月28日(2006.8.28)
【出願人】(597103067)有限会社エフ・アンド・エフ (18)