説明

香辛料及びその製造方法

【課題】沖縄産の島唐辛子の辛味成分を酒類を用いて効果的に抽出し、アルコールや泡盛臭の苦手な人でも使用できる島唐辛子を用いた香辛料を提供することを課題とする。
【解決手段】生の唐辛子を破砕処理する破砕工程と、該破砕された唐辛子に酒類を混合し、攪拌する混合攪拌工程と、該混合液を煮沸する煮沸工程と、煮沸後に固形分を分離し、エキスを抽出するための分離処理工程とを有することを特徴とする香辛料の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、唐辛子を用いた香辛料に関し、特に酒類を用いて辛味成分を抽出したエキスによる香辛料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、唐辛子は、種子及び果皮にカプサイシンという辛味成分を含んでいるので、香辛料として広く使用されている。この唐辛子を使用した香辛料として七味唐辛子が広く用いられており、その成分は、赤唐辛子の粉に、山椒、麻の実、芥子の実、胡麻、陳皮(蜜柑の皮)、菜種等を混ぜ合わせたものからなっている。
【0003】
沖縄県では、島唐辛子を用いた香辛料として、「コーレーグス」が広く使用されている。これは、泡盛に沖縄産の生の島唐辛子を漬け込み、その抽出エキスを香辛料として使用するものであり、生の島唐辛子をそのまま、泡盛と一緒に容器に入れて3〜4週問漬け込んでおき、沖縄そば、ラーメン、刺身醤油などの薬味として沖縄では広く使用されている、沖縄の伝統的な調味料である。
【0004】
そして、該「コーレーグス」は、他の唐辛子を使った香辛料とは異なり、素材の味や風味を壊すことなく豊かな香りと辛みを調和させることができる香辛料と言われており、通常は熱い食べ物に適量を振りかける為(2〜3滴が目安)アルコール分はすぐに揮発して辛みと風味がしっかり残るものである。
【0005】
また、島とうがらしの中には、カプサイシンと呼ばれる辛味成分が含まれており、その他にも、良質のタンパク質やビタミンCが豊富に含まれている。
【0006】
カプサイシンは、唐辛子に含まれるアルカロイドと呼ばれる成分で辛味成分の一つであり、このカプサイシンは、脂溶性の無色の結晶で、アルコールには溶けやすいが、冷水にはほとんど溶けず、痛覚神経を刺激し、局所刺激作用、あるいは辛味を感じさせる。また、体内に吸収されたカプサイシンは、脳に運ばれて内臓感覚神経に働き、副腎のアドレナリンの分泌を活発にさせ、発汗を促進する。
【0007】
上記の「コーレーグス」は、香辛料として使用する容器に泡盛と島唐辛子がそのまま使用されているため、使用中に脱色して見栄えが悪くなってしまう問題があり、特開2006−191825号公報では、熟した島唐辛子を乾燥させて泡盛に漬け込むことで、使用中に脱色しないコーレーグスの製造方法が開示されており、また、泡盛に2回漬け込むことで辛味を増加できる技術が開示されている。
【特許文献1】特開2001-258499号公報
【特許文献2】特開2006-191825号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記に示すように、沖縄産の島唐辛子を用いた香辛料である「コーレーグス」は、従来の乾燥した唐辛子を用いた香辛料に対して、生の唐辛子を用いる点で大きく異なり、辛味も強く、使用しやすい液体状の香辛料として近年、特に注目されている。
【0009】
しかしながら、泡盛に漬け込むことから、その独特のきつい泡盛臭やアルコール分が含まれていることから、女性やアルコールに弱い人からは敬遠されがちであった。
【0010】
本発明は、このようなアルコールや泡盛臭の苦手な人でも、誰でも手軽に使用できる島唐辛子を用いた香辛料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の請求項1は、破砕された生の唐辛子と酒類を混合し、煮沸後、固形分を分離したエキスからなることを特徴とする香辛料である。
【0012】
本発明の請求項2は、前記の唐辛子が沖縄産の島唐辛子であることを特徴とする香辛料である。
【0013】
本発明の請求項3は、前記の酒類が日本酒であることを特徴とする香辛料である。該日本酒は、清酒、焼酎、泡盛などである。
【0014】
本発明の請求項4は、生の唐辛子を破砕処理する破砕工程と、該破砕された唐辛子に酒類を混合し、攪拌する混合攪拌工程と、該混合液を煮沸する煮沸工程と、煮沸後に固形分を分離し、エキスを抽出するための分離処理工程とを有することを特徴とする香辛料の製造方法である。
【0015】
本発明の請求項5は、前記の唐辛子が沖縄産の島唐辛子であることを特徴とする香辛料の製造方法である。
【0016】
本発明の請求項6は、前記の酒類が日本酒であることを特徴とする香辛料の製造方法である。
【0017】
本発明の請求項7は、前記の分離処理工程の後に、ペーパーフィルターなどでろ過処理することを特徴とする香辛料の製造方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、以下の効果を奏する。
【0019】
1)煮沸され、酒類に含まれるアルコール分が完全に除去でき、刺激臭も除去されるため、アルコールの苦手な人でも手軽に使用できる島唐辛子を用いた香辛料を提供できる。
【0020】
2)酒類として清酒を用いると、泡盛や焼酎の刺激臭がなく、コーレーグスのような辛味の強い液体香辛料を提供できる。
【0021】
3)沖縄産の島唐辛子を破砕処理するため、辛味成分が十分に溶出されるため、辛味の強い香辛料を提供できる。
【0022】
4)固形物を分離処理するため、辛味や色彩が変化することはなく、透明感のある見た目も良く、品質の高い液体香辛料を提供できる。
【0023】
5)辛味が強く、かつ、口の中に辛味が残らない、今までの香辛料にないさっぱりした辛味を実現できる。
【0024】
6)便秘の改善効果が得られる。
【0025】
7)空腹感を満たし、少ない食事量で満腹感が得られるという、ダイエット効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0027】
図1は、本発明による島唐辛子を用いた香辛料の製造方法を示すフロー図である。
【0028】
S−1)島唐辛子
生の島唐辛子を採取し、洗浄処理して、1kgを準備する。
【0029】
S−2)破砕工程
島唐辛子を高速回転するフードプロセッサー(ミキサー)で液状に磨り潰した状態となるまで破砕処理する。回転数は10,000〜30,000rpm程度が好ましい。
【0030】
S−3)清酒
清酒として、料理用の料理酒を5リットル準備する。料理酒に変えて市販の醸造酒を用いても良い。
【0031】
S−4)混合・攪拌工程
上記の破砕した島唐辛子と清酒とを混合し、攪拌装置で十分に攪拌処理する。
【0032】
S−5)煮沸工程
十分に攪拌した後、煮沸容器に移し、沸騰後、3分間煮沸する。
【0033】
S−6)分離処理工程
煮沸後、開放状態で30分間、自然冷却させた後、網で固形物を分離して分離液を得る。
【0034】
S−7)ろ過処理工程
前記の分離液をさらにペーパーフィルターでろ過する。
【0035】
S−8)液体香辛料
ろ過して固形分を完全に分離し、透明で淡黄色の液体香辛料を4リットル得た。辛味を強調する場合には、S−7)ろ過処理工程を省略することにより、辛味成分の強い皮部分の粉砕が含まれた赤色液状の香辛料となる。
【0036】
次に上記の実施例で得られた香辛料を、沖縄そばの香辛料として使用した。
【0037】
従来の島唐辛子による「コーレーグス」と同様に3適使用した。本液体香辛料は、「コーレーグス」のようなきつい泡盛の刺激臭はまったくなく、同様の強い辛味が得られ、かつ、パーッと広がる独特の鋭い辛味が得られた。
【0038】
また、粉末の香辛料のような辛味が口の中に残るようなことはまったくなく、食べ終わると、辛味が口の中にまったく残らない、今までにない、辛味が蓄積されないさっぱりした辛味であった。
【0039】
〔使用例1〕
本液体香辛料をカレー料理に使用した。
従来のカレーは、辛味がどんどん増してくるが、本液体香辛料を使用すると、辛さは強いが、口の中に辛味が残らないため、香辛料の添加料を増やすと辛さは増すが、水で口直しをすると、辛味がさっと消え、さっぱりする。従来のカレーのように、後まで辛さが後を引くことはない。
【0040】
また、淡い黄色の液体状であり、見た目も非常に良好であり、液体容器に入れて手軽に使用することができる。
【0041】
〔使用例2〕
日本そば、うどんなどの和風麺料理に、本液体香辛料を七味唐辛子の代わりに使用した。和風の味や香りを壊すことなく、和風の風味をそのまま残して、辛味のみを鋭く加えることができた。汁を口に含むと、とたんに口の中全体にパーッと鋭い辛味が広がり、独特の爽快で鋭い辛味となった。
【0042】
〔使用例3〕
寄せ鍋、水炊き、おでん、スープなどのだし汁関連の料理に、本液体香辛料を数滴使用した。だし汁を口に含むと、パーッと鋭い辛味が口の中に広がり喉の奥まで広がる、独特の鋭い辛味により、非常に相性の良い辛味となった。また、食べ終わった後の辛味が口の中にいつまでも残ることがなく、さっぱりとした辛味のだし汁料理となった。
〔使用例4〕
チャーハンに、本液体香辛料を使用した。おおむね、大さじ4〜5杯を添加して炒めた。チャーハンを口にすると、口の中で独特に鋭い辛味が口の中にパーッと広がった。かなり強い辛味であるが、食べ続けても、辛味が蓄積することはなく、独特の鋭い辛味が最後まで味わえるとともに、食べ終わった後に水を飲むと、辛味がスーッと消え、辛味が後を引かない、さっぱりした今までにない味わいであった。
【0043】
本実施例では、日本酒として清酒を用いたが、麦焼酎や芋焼酎あるいは泡盛などを使用しても良い。
【0044】
また、唐辛子は、沖縄産の島唐辛子の他に、ハバネロなど種々の唐辛子を使用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明による島唐辛子を用いた香辛料の製造方法を示すフロー図である。
【符号の説明】
【0046】
S−1 島唐辛子
S−2 破砕工程
S−3 清酒
S−4 混合・攪拌工程
S−5 煮沸工程
S−6 分離処理工程
S−7 ろ過処理工程
S−8 液体香辛料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
破砕された生の唐辛子と酒類を混合し、煮沸後、固形分を分離したエキスからなることを特徴とする香辛料。
【請求項2】
前記の唐辛子が沖縄産の島唐辛子であることを特徴とする請求項1に記載の香辛料。
【請求項3】
前記の酒類が日本酒であることを特徴とする請求項1又は請求項2の項に記載の香辛料。
【請求項4】
生の唐辛子を破砕処理する破砕工程と、該破砕された唐辛子に酒類を混合し、攪拌する混合攪拌工程と、該混合液を煮沸する煮沸工程と、煮沸後に固形分を分離し、エキスを抽出するための分離処理工程とを有することを特徴とする香辛料の製造方法。
【請求項5】
前記の唐辛子が沖縄産の島唐辛子であることを特徴とする請求項4に記載の香辛料の製造方法。
【請求項6】
前記の酒類が日本酒であることを特徴とする請求項4又は請求項5の項に記載の香辛料の製造方法。
【請求項7】
前記の分離処理工程の後に、ろ過処理することを特徴とする請求項4から請求項6までのいずれかの項に記載の香辛料の製造方法。

【図1】
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