説明

馬鈴薯用圃場の不要物掘り上げ装置

【課題】 圃場の深い層及び浅い層に存在する不要物である野良芋や塊茎にかかわらず、これを掘上げて回収すると共に、深い層に存在する野良芋や塊茎と同時に掘り上げられる不要物である土塊も回収する。
【解決手段】 掘り取られた不要物を含む土砂の運搬中に、不要物と不要物でない土砂を分離するとともに、不要物でない土砂を圃場C上に戻し、不要物のみを収容部4へ収容する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、馬鈴薯用圃場の不要物を圃場の表層に掘り上げる装置に関し、詳しくは、播種される種芋の生育に悪影響を及ぼす不要物である野良芋や塊茎を圃場の表層に掘り上げるのに好適な馬鈴薯用圃場の不要物掘り上げ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
以前から、馬鈴薯の収穫後に圃場に掘り残された不要物である野良芋や塊茎が、商品価値を有する馬鈴薯の生育に対して悪影響を及ぼすため、この不要物の処理が生産者の大きな課題となっている。
すなわち、圃場に残った野良芋や塊茎が発芽能力を失わずに越冬すると、圃場の養分や水分を利用しながら発芽して生育するため、圃場に播種される種芋が必要とする養分や水分が不足して商品価値がある馬鈴薯の収穫量に大きく影響を与えるというものである。
更に、種芋の播種前に行われる圃場は、耕起やすき込み作業を行うことにより、種芋にとって圃場の状況を良好な状態にするが、種芋にとって良好な状態になるということは、野良芋や塊茎にとっても良好な状態となるため、野良芋や塊茎の発芽・生育を助長することになる。
そのため、地中の野良芋や塊茎を、スタブルカルチ(非特許文献1参照)を使用して圃場の表面へ掘上げて、これを手で拾って回収したり、圃場上に残して冬の低気温による霜や凍結により発芽能力が失われるのを待ったりしている。
【非特許文献1】スガノ農機株式会社の有効期限2006年6月1日〜2006年11月30日の総合カタログ、11ページ〜15ページ。
【0003】
しかしながら、非特許文献1に記載のスタブルカルチは、基本的には、有機物と土壌とを掻き混ぜながら粗混和し、有機物の腐植を促進するためのものであるため、このスタブルカルチを、野良芋や塊茎の表面に掘り上げるのに転用した場合、土壌と野良芋及び塊茎を掻き混ぜてしまい、野良芋及び塊茎が表層に掘り上げられず地中に埋まってしまう可能性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、野良芋や塊茎を確実に表面に掘り上げて、播種される種芋の生育に対する悪影響を低減することを課題とし、この課題を解決した馬鈴薯用圃場の不要物掘り上げ装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するため、本発明が採用した技術的手段は、自走又は牽引により圃場を走行する走行車に装備され、該走行車の走行に伴って該圃場の不要物を掘り上げる馬鈴薯用圃場の不要物掘り上げ装置であって、圃場の不要物を土砂ごと掘り上げる掘り上げ部と、掘り上げられた不要物を走行方向と反対側に運搬するコンベア部と、運搬される不要物と土砂とを分離しながら該不要物と土砂とを圃場の表面へ排除する排除部とを備えてなり、前記排除部は、走行方向とは反対側に駆動回転する回転軸と、該回転軸の外周面に突設された複数の排除板とを備えていることを特徴とする不要物掘り上げ装置にしたことである。
【0006】
本発明でいう不要物は、馬鈴薯の種芋の生育に対して悪影響を及ぼすもの全てを含み、特に、野良芋及び塊茎、更には土塊である。
ここでいう野良芋とは、馬鈴薯の収穫後に圃場に掘り残された商品価値がない小芋、又は該小芋や塊茎が発芽・生育した芋を意味する。
又、塊茎とは、地中にある茎にでんぷん等がたまって大きくなった状態のもの意味する。
又、土塊とは、耕起されて空気を十分に含み、さらさらな状態で柔らかく馬鈴薯の生育に適した土の表面側の層の下側に位置する層にあって、耕起されてないため、空気の含有量が少なく、しかも土の粒子同士がくっついて固まった、馬鈴薯の生育に不適な塊状の土を意味する。
【0007】
掘り上げられた土砂を細く砕いて、圃場において使用できる土砂を増やすという観点から、前記排除板の走行方向と対向する面を、網目状に形成したことを特徴とする不要物掘り上げ装置にしたことである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、野良芋や塊茎を確実に表面に掘り上げて、播種される種芋の生育に対する悪影響を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明に係る馬鈴薯用圃場の不要物掘り上げ装置を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
尚、本形態では、不要物掘り上げ装置をトラクター等の牽引車に牽引されて圃場上を走行する走行車に装備されたものを例示する。
又、本形態では、不要物掘り上げ装置を模式的に図示する。
【0010】
本形態の不要物掘り上げ装置1は、図1及び図2に示すように、車輪Aを有するフレームBに対して、その前方(走行車100側)から後方側に向けて、圃場Cの不要物である野良芋及び塊茎、更には土塊を含む土砂ごと掘り上げる掘り上げ部2、掘り上げられた不要物を後方側に運搬するコンベア部3、運搬される不要物と土砂とを分離しながら該不要物と土砂とを圃場の表面へ排除する排除部4を順次配設して構成されている。
【0011】
基本的には、走行車100の走行によって牽引されるフレームBの走行に伴って、掘り上げ部2が前記土砂を掘り上げ、掘り上げられた土砂をコンベア部3が排除部4へ運搬し、運搬された土砂が排除部4により、不要物と土砂とに分離され、且つ圃場の表面に排除されるようにしているものである。
【0012】
図中符号51はフレームBの左右側に突設された側壁、符号52は、側壁51の略後方側半部の上方を塞ぐカバーである。
前記側壁51は、前記掘り上げ部2、コンベア部3、排除部4に亘る範囲よりも後方へ延長させた範囲に立設され、掘り上げた不要物を含む土砂の装置外への落下を防ぐものである。
前記カバー52は、左右の側壁51に架渡すように設けられ、排除部4で排除される不要物が飛び散らないようにするものである。
又、図中符号53は、走行中に圃場中の長尺な不要物を切断することにより、装置のつまりを防止するためのコールタである。
【0013】
以下、不要物掘り上げ装置1の各構成要素を具体的に説明する。
前記掘り上げ部2は、走行方向に沿う長さよりも走行方向と交差する方向の長さが長い略長方形を呈する金属板である。
【0014】
尚、以下では、走行方向を「前方向」、走行方向と反対側を「後方向」、走行方向と水平方向に交差する方向を「左右方向」、走行方向に対して圃場方向に交差する方向を「下方向」、圃場とは反対側の方向を「上方向」という。
【0015】
前記掘り上げ部2は、後方向の端部から前方向の端部へ向けて低くなるように傾斜させた状態で圃場に刺し込まれるようにされている。
そしてこの傾斜により走行に伴って土砂を掘り上げ、該掘り上げられた土砂を連続して掘り上げられる土砂によってコンベア部3へと送り込むようにしている。
【0016】
コンベア部3は、図1及び図2に示すように、前記掘り上げ部2の傾斜と連続する同傾斜の傾斜とし、後方向に土砂を運搬するように動作するベルトコンベア状に構成されたものであり、コンベア部3におけるベルト部31の全面に多数の隙間32が設けられている。
前記ベルト部31は、左右方向の幅が前記掘り上げ部4と略同幅にされ、その前方端部が前記掘り上げ部4の後方端部と近接していて、掘り上げ部4の左右方向全域から送り込まれる土砂を全て受けるようにしている。
前記隙間32は、ベルト部31の左右方向の全域に亘る長さのものであって、この隙間32がベルト部31の前後方向全域に亘り設けられており、ベルト部31に送り込まれた土砂中の不要物ではない土砂を、ベルト部31の全域に亘って圃場上に落下させることができるようにしている。
【0017】
排除部4は、回転軸41と、該回転軸41の外周面に突設された複数の排除板42とから構成されている。
回転軸41は、軸線方向の長さをコンベア部3の左右方向の長さと略同じ長さとして、該軸線方向をコンベア部3の左右方向と平行とし、左右方向の両端部が前記左右の側壁51に対して、モーターやチェーン(図示せず)等により後方へ高速で駆動回転するように支持されている。
尚、前記回転軸の回転速度は、後述するように、運搬される不要物及び土砂を後方に飛ばすことができる速度以上であればよい。
【0018】
前記排除板42は、略長方形状を呈する金属製の板状体であり、この長手側を回転軸41の径方向に沿わせて突設している。
又、本形態の排除板42は、網状に形成した破砕排除板42Aと、前記網目421がない平状排除板42Bとの2種類のものからなり、これら破砕排除板42Aと、平状排除板42Bとを、回転軸41の周方向に沿って交互に突設している。
又、周方向に沿って交互に突設した破砕排除板42Aと平状排除板42Bの列を一列とし、この列と同列状の列を、回転軸41の軸線に沿ってその全域に配列している。
又、前記一列は、図1に示すように、破砕排除板42Aと平状排除板42Bとを夫々2枚ずつ備え、各板同士が回転軸41の周方向に沿って90度の角度をあけて、この一列が略十字状を呈するように放射方向に突設されている。
又、隣り合う各列は、図1に示すように、回転軸41の周方向に沿って交互に45度ずつずらして配列されている。
【0019】
前記破砕排除板42Aは、網目421が表裏面に亘って貫通している略網状を呈するエキスパンドメタルであり、回転軸41の回転により、網目421を構成する網状部422で土塊を破砕するようにしている。
又、破砕排除板42Aの網目は、不要物が通過しない程度の大きさにされている。
【0020】
すなわち、本形態の排除板4は、コンベア部3で運搬される不要物を、回転軸41の回転に伴って回転する排除板42が、その回転の勢いにより不要物と土砂に対して衝突しながら、装置の後方へ飛ばすことができる。
そして、衝突して後方へ飛ばす際に、不要物と土砂とを分離させることができるとともに、土塊を破砕することができ、更に、衝突した際に破砕排除板42Aにより土塊を破砕することができる。
【0021】
尚、本形態では、前記排除板の一部に破砕排除板を含めた形態で例示しているが、本発明は、例示した形態に限らず、排除板に破砕排除板を含めない形態、排除板を全部破砕排除板で構成した形態も含む。
【0022】
本形態の不要物掘り上げ装置1によれば、圃場Cに存在する不要物である野良芋や塊茎を、圃場Cの表面に確実に掘り上げて、播種される種芋の生育に対する悪影響を低減することができる。
又、掘り上げられた不要物である土塊を破砕することで、該土塊を圃場で使用できる土砂として圃場上に戻すことができる。
したがって、圃場の土を無駄にすることなく、圃場中の不要物を圃場Cの表面に掘り上げることができる。
【0023】
尚、本発明は、例示した実施の形態に限定するものでは無く、特許請求の範囲の各項に記載された内容から逸脱しない範囲の構成による実施が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明の馬鈴薯用圃場の不要物掘り上げ装置は、野良芋や塊茎に類する不要物が残るような農作物用の圃場の不要物掘り上げ装置においても利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る不要物掘り上げ装置を模式的に示す断面図。
【図2】同、平面図で、一部切欠して示す。
【符号の説明】
【0026】
1:不要物掘り上げ装置
2:掘り上げ部
3:コンベア部
4:排除部
41:回転軸
42:排除板
42A:破砕排除板
42B:平状排除板
421:網目
422:網状部
C:圃場

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走又は牽引により圃場を走行する走行車に装備され、該走行車の走行に伴って該圃場の不要物を掘り上げる馬鈴薯用圃場の不要物掘り上げ装置であって、圃場の不要物を土砂ごと掘り上げる掘り上げ部と、掘り上げられた不要物を走行方向と反対側に運搬するコンベア部と、運搬される不要物と土砂とを分離しながら該不要物と土砂とを圃場の表面へ排除する排除部とを備えてなり、前記排除部は、走行方向とは反対側に駆動回転する回転軸と、該回転軸の外周面に突設された複数の排除板とを備えていることを特徴とする不要物掘り上げ装置。
【請求項2】
前記排除板の走行方向と対向する面を、網目状に形成したことを特徴とする請求項1に記載の不要物掘り上げ装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−178302(P2008−178302A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−12434(P2007−12434)
【出願日】平成19年1月23日(2007.1.23)
【出願人】(000248314)有限会社工藤農機 (3)
【Fターム(参考)】