駆動モジュールおよびそれを備える電子機器
【課題】 駆動モジュールおよびそれを備えた電子機器において、高温環境下でも良好な駆動を行うことができ、小型化が可能となるようにする。
【解決手段】 駆動モジュール1は、ガイド突起4Dが設けられたレンズ枠4と、これを基準位置に位置決めするモジュール下板8と、レンズ枠4を移動自在に収容するモジュール枠5とを有する支持体と、レンズ枠4とこの支持体との間で駆動方向に直交する方向に延ばして取り付けられ、無負荷状態で互いに平行となるように対向して配置された上板ばね6、下板ばね7と、モジュール枠5の筒外周部に張架されるとともに、中間部がガイド突起4Dに係止された形状記憶合金ワイヤ10と、ガイド突起4Dに一端で形状記憶合金ワイヤ10を伸長させる方向にばね力が付勢可能に設けられ、温度上昇に伴ってばね力が増大するように形状記憶された圧縮コイルばね40と、その他端を支持するカバー11とを備える。
【解決手段】 駆動モジュール1は、ガイド突起4Dが設けられたレンズ枠4と、これを基準位置に位置決めするモジュール下板8と、レンズ枠4を移動自在に収容するモジュール枠5とを有する支持体と、レンズ枠4とこの支持体との間で駆動方向に直交する方向に延ばして取り付けられ、無負荷状態で互いに平行となるように対向して配置された上板ばね6、下板ばね7と、モジュール枠5の筒外周部に張架されるとともに、中間部がガイド突起4Dに係止された形状記憶合金ワイヤ10と、ガイド突起4Dに一端で形状記憶合金ワイヤ10を伸長させる方向にばね力が付勢可能に設けられ、温度上昇に伴ってばね力が増大するように形状記憶された圧縮コイルばね40と、その他端を支持するカバー11とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動モジュールおよびそれを備える電子機器に関する。例えば、光学系や可動部材を駆動して、焦点位置調整を行ったり、アクチュエータとして用いたりするのに好適となる駆動モジュールおよびそれを備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、カメラ機能付き携帯電話などの小型の電子機器においては、撮影レンズユニットなどの被駆動体を形状記憶合金ワイヤによって駆動する駆動モジュールを用いた装置が知られている。
このような駆動モジュールおよび電子機器として、特許文献1には、レンズ群を組み付けた第1の鏡枠と、第1の鏡枠を固定するとともに駆動方向に沿うガイド軸に移動自在に取り付けられた第2の鏡枠と、第2の鏡枠に係止され電流が通電されると収縮して第2の鏡枠を駆動方向に付勢する形状記憶合金ワイヤと、第2の鏡枠を形状記憶合金ワイヤに押し付けるためにガイド軸に沿って付勢する圧縮コイルばねとを備えるレンズ駆動装置、およびそれを備える撮像装置が記載されている。
【特許文献1】特開2007―57581号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記のような従来の駆動モジュールには、以下のような問題があった。
特許文献1に記載のレンズ駆動装置では、ガイド軸を用いて第2の鏡枠を駆動するため、摺動負荷が発生する。例えば、合焦速度を高めるなど良好な駆動特性を得るには形状記憶合金ワイヤの駆動負荷の増大につながる圧縮コイルばねによる付勢力を低減する必要がある。そのため、特許文献1では、形状記憶合金ワイヤの無通電状態で、圧縮コイルばねによる付勢力により形状記憶合金ワイヤが若干量伸長された状態、もしくは形状記憶合金ワイヤが若干の弛みを有する状態とし、第2の鏡枠の突起部が、ネジの頭部に当接して静止するようにしている。これにより、通電開始時には、形状記憶合金ワイヤからの付勢力が非常に小さいか、付勢力が作用しない状態となっており、ガイド軸の負荷がある程度あっても円滑な駆動が行えるようになっている。
ところで、形状記憶合金は、温度に対する歪み量に関してヒステリシス特性を有するため、正確な駆動を行うためには、1回の駆動を行うごとに変態開始温度以下に冷却して駆動の基準位置に戻してから、一方向に駆動する必要がある。
特許文献1のような従来のレンズ駆動装置では、環境温度が形状記憶合金の変態開始温度以下では、問題なく動作するものの、環境温度が形状記憶合金の変態領域内の温度になると、自然放熱では変態開始温度以下にならない。このため、通電を停止しても形状記憶合金ワイヤが駆動開始時の長さまで伸長しなくなる。形状記憶合金ワイヤは、ある程度、圧縮コイルばねの付勢力によって、伸長されるが、駆動の基準位置近傍では圧縮コイルばねの付勢力が非常に小さくなるため、完全に伸長させることができなくなる。したがって、高温環境下では、駆動の基準位置の位置誤差が発生するため正確な駆動が行えなくなるという問題がある。
【0004】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであって、高温環境下でも良好な駆動を行うことができ、小型化が可能となる駆動モジュールおよびそれを備えた電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明では、軸線が駆動方向に沿うように配置された柱状体からなり、該柱状体の側方に突出する突起部が設けられた被駆動体と、
該被駆動体を前記駆動方向の基準位置に位置決めする突き当て支持部と、前記被駆動体を前記駆動方向に沿って移動自在に収容する筒状部とを有する支持体と、前記被駆動体と前記支持体との間で前記駆動方向に直交する方向に延ばして取り付けられ、無負荷状態で互いに平行となるように対向して配置された平行板ばね対と、前記支持体の筒外周部に張架されるとともに、中間部が前記被駆動体の前記突起部に係止された形状記憶合金ワイヤと、環境温度の上昇に伴って、一端側で前記被駆動体の前記突起部を付勢するように変形して、該突起部に係止された無通電時の前記形状記憶合金ワイヤに抗して前記被駆動体を前記基準位置に移動させるように形状記憶された形状記憶合金アクチュエータと、該形状記憶合金アクチュエータの他端を支持する支持部とを備える構成とする。
この発明によれば、被駆動体が、支持体に対して、無負荷状態で互いに平行となるように対向して配置された平行板ばね対によって弾性支持されるので、摺動ガイドなどの摺動負荷を発生させる手段を用いることなく、駆動方向に沿って移動可能に支持される。
また、被駆動体の突起部の一端には、環境温度の上昇に伴って突起部を付勢するように変形して、突起部に係止された無通電時の形状記憶合金ワイヤに抗して被駆動体を基準位置に移動させるように形状記憶された形状記憶合金アクチュエータが設けられているので、環境温度が形状記憶合金ワイヤの温度下降時の変態終了温度以上になり、形状記憶合金ワイヤの通電を停止しても形状記憶合金ワイヤが伸長しきらない場合に、突起部に作用する形状記憶合金アクチュエータの付勢力が増大して形状記憶合金ワイヤを伸長させるため、被駆動体を基準位置に戻すことができる。
これにより、環境温度が上昇したときのみ、形状記憶合金ワイヤを伸長させる付勢力を作用させることができ、被駆動体を平行板ばね対等によって予め予圧しておく必要がなくなるため、駆動負荷が軽くなるとともに、装置の駆動方向の厚さを低減することができる。また、平行板ばね対の製造や組み立てを容易化することができる。
なお、被駆動体の柱状体は、外形が略柱状であるすべての形態を含む広義の意味で用いている。したがって、中実の柱状体とは限らず、例えば、中心に貫通孔などが設けられた筒状体なども含まれる。また、外形が略柱状である限り、レンズ組立体などの組立体なども含まれる。
【0006】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の駆動モジュールにおいて、前記形状記憶合金アクチュエータおよび前記形状記憶合金ワイヤは、前記形状記憶合金アクチュエータの温度上昇時の変態開始温度、変態終了温度をそれぞれTss、Tse(ただし、Tss<Tse)とし、前記形状記憶合金ワイヤの温度下降時における変態終了温度、変態開始温度をそれぞれTwe、Tws(ただし、Twe<Tws)とし、前記形状記憶合金ワイヤの温度下降時の変態領域内の温度から選ばれた一定温度をTw0(ただし、Twe<Tw0≦Tws)、前記形状記憶合金アクチュエータの温度上昇時の変態の歪み量が前記一定温度Tw0で前記形状記憶合金ワイヤの温度下降時の変態の歪み量に等しくなる温度をTs0とするとき、次式を満足する構成とする。
Tss≦Twe<Tse ・・・(a)
Ts0≦Tw0 ・・・(b)
この発明によれば、無通電時の温度下降時の形状記憶合金ワイヤ、および形状記憶合金アクチュエータの温度を決める環境温度Tが、温度Tw0より低い温度から温度Tw0に上昇した場合、環境温度Tに応じた変態の歪み量に応じて、形状記憶合金ワイヤ、形状記憶合金アクチュエータの変形量が決まる。条件式(a)、(b)によれば、温度Tw0以下では、形状記憶合金アクチュエータの変態の歪み量が、形状記憶合金ワイヤの変態の歪み量を上回るため、これらの歪み量に比例して作用する力関係によって、形状記憶合金が伸長され、被駆動体が確実に基準位置に移動される。
【0007】
請求項3に記載の発明では、請求項2に記載の駆動モジュールにおいて、前記形状記憶合金アクチュエータの温度上昇時における変態の線形領域の上限温度は、前記形状記憶合金ワイヤの温度下降時における変態の線形領域の下限温度以下である構成とする。
この発明によれば、形状記憶合金アクチュエータの温度上昇時における変態の線形領域の上限温度が、形状記憶合金ワイヤの温度下降時における変態の線形領域の下限温度より大きい場合に比べて、Tw0以下の温度範囲における形状記憶合金アクチュエータの温度上昇時の変態の歪み量と形状記憶合金ワイヤの温度下降時の変態の歪み量との差が少なくなるため、形状記憶合金アクチュエータの付勢力が相対的に減少する。したがって、形状記憶合金ワイヤに通電して被駆動体を駆動する場合の駆動負荷を相対的に低減することができる。
【0008】
請求項4に記載の発明では、請求項3に記載の駆動モジュールにおいて、前記一定温度Tw0での、前記形状記憶合金アクチュエータに発生する温度上昇時の変態の歪み量と、前記形状記憶合金ワイヤの温度下降時の変態の歪み量とが等しく、かつ、前記形状記憶合金アクチュエータの温度上昇時における変態の線形領域の下限温度と、前記形状記憶合金ワイヤの温度下降時における変態の線形領域の下限温度とが等しい構成とする。
この発明によれば、一定温度Tw0以下の変態の線形領域において、形状記憶合金ワイヤの温度下降時の変態の歪み量と、形状記憶合金アクチュエータの温度上昇時の変態の歪み量とが一致するので、形状記憶合金アクチュエータの温度上昇時の変態の歪み量が上回る場合に比べて、形状記憶合金アクチュエータの突起部に対する付勢力をさらに低減し、過不足なく発生することができる。したがって、形状記憶合金ワイヤに通電して被駆動体を駆動する場合の駆動負荷をより低減することができる。
【0009】
請求項5に記載の発明では、請求項1〜4のいずれかに記載の駆動モジュールにおいて、前記形状記憶合金アクチュエータは、前記駆動方向に沿って圧縮して取り付けられた圧縮コイルばねからなり、前記一端が、前記突起部において前記形状記憶合金ワイヤの係止位置に対向する位置に当接された構成とする。
この発明によれば、形状記憶合金アクチュエータが形状記憶合金ワイヤの係止位置に対向する位置に当接されるので、形状記憶合金ワイヤの合力と形状記憶合金アクチュエータからの付勢力とが、略一直線上に作用しあうため、形状記憶合金ワイヤの駆動力による被駆動体へのモーメントを低減することができるので、安定した駆動を行うことができる。
また、形状記憶合金アクチュエータとして、引っ張り形状記憶合金ばねを用いる場合に比べて、形状記憶合金アクチュエータの配置が容易となり、小型化しやすくなる。
【0010】
請求項6に記載の発明では、請求項1〜5のいずれかに記載の駆動モジュールにおいて、前記形状記憶合金アクチュエータは、前記駆動方向において、前記平行板ばね対の間に配置された構成とする。
この発明によれば、形状記憶合金アクチュエータが、駆動方向において平行板ばね対の間に配置されるので、形状記憶合金アクチュエータが駆動方向において突出しないため、コンパクトな装置を構成することができる。
【0011】
請求項7に記載の発明では、電子機器において、請求項1〜6のいずれかに記載の駆動モジュールを備える構成とする。
この発明によれば、駆動モジュールを備えるので、請求項1〜6のいずれかに記載の発明と同様の作用を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明の駆動モジュールおよびそれを備える電子機器によれば、平行板ばね対によって被駆動体を駆動方向に沿って支持することができ、環境温度の上昇に伴って付勢力が増大する形状記憶合金アクチュエータによって形状記憶合金ワイヤを伸長させることができるため、高温環境下でも良好な駆動を行うことができ、小型化が可能となるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下では、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。すべての図面において、実施形態が異なる場合であっても、同一または相当する部材には同一の符号を付し、共通する説明は省略する。
【0014】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係る駆動モジュールについて説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る駆動モジュールの基板への取り付け状態を説明するための模式的な斜視分解図である。図2は、本発明の第1の実施形態に係る駆動モジュールの概略構成を示す模式的な斜視分解図である。図3(a)は、図1のA視平面図である。図3(b)は、図3(a)の模式的なB−B断面図である。図4は、本発明の第1の実施形態に係る駆動モジュールの組立状態の内部構成を示す模式的な斜視図である。図5は、図4におけるC−C線に沿う断面図である。図6は、本発明の第1の実施形態に係る駆動モジュールに用いる被駆動体の一部を示す模式的な斜視図である。図7(a)、(b)は、それぞれ、図6におけるD視の平面図、およびE視の裏面図である。図8(a)は、本発明の第1の実施形態に係る駆動モジュールに用いるモジュール枠の模式的な斜視図である。図8(b)は、図8(a)におけるF視の裏面図である。図9は、本発明の第1の実施形態に係る駆動モジュールに用いる板ばね部材の平面図である。図10は、本発明の第1の実施形態に係る駆動モジュールに用いるモジュール下板の模式的な斜視図である。図11は、本発明の第1の実施形態に係る駆動モジュールに用いる給電部材の平面図である。図12は、本発明の第1の実施形態に係る駆動モジュールに用いるカバーの裏面図である。図13は、本発明の第1の実施形態に係る駆動モジュールに用いる形状記憶合金ワイヤ、形状記憶合金アクチュエータの温度歪み特性を示す模式的なグラフである。横軸は形状記憶合金の温度T、縦軸は歪みを表す(図15、16も同じ)。
なお、一部の図面では見易さのため、例えば、レンズユニット12などの構成部材を適宜省略して図示している。
【0015】
本実施形態の駆動モジュール1は、図1に示すように、全体として箱型に形成されている。この駆動モジュール1は、組み立てて完成されたものが、電子機器などに設けられ、駆動モジュール1に制御信号や電力を供給する基板2上に嵌め込んだり、接着したりして固定することができる。
基板2の上面には、後述する駆動モジュール1の給電部材と接続されて電力を供給する一対のランド部3、および撮像素子30が設けられている。
【0016】
駆動モジュール1は、図1、2に示すように、レンズ枠4(被駆動体)、レンズユニット12(被駆動体、図1参照)、モジュール枠5(支持体)、平行板ばね対をなす上板ばね6および下板ばね7、モジュール下板8(支持体)、給電部材9、形状記憶合金(Shape Memory Alloy、以下、SMAと略称する)ワイヤ10、カバー11、および圧縮コイルばね40(形状記憶合金アクチュエータ)を主な構成部材とするものであって、これら構成部材が一体に積層されることで1つのアクチュエータを構成する。
これらの構成部材の組立状態では、図3(b)に示すように、レンズユニット12が螺合されたレンズ枠4は、モジュール枠5の内方に挿入され、上板ばね6、下板ばね7は、これらレンズ枠4とモジュール枠5とを図示上下方向から挟持した状態で、かしめにより固定され、これらの図示下方側からモジュール下板8、給電部材9が、この順に積層されて、モジュール枠5の下方から、かしめによりそれぞれ共に固定され、これらの積層体を上方側から覆うカバー11が、モジュール下板8に固定されてなる。
また、圧縮コイルばね40は、カバー11とレンズ枠4との間に圧縮状態で保持されている。
【0017】
なお、図中の符号Mは、レンズユニット12の光軸に一致する駆動モジュール1の仮想的な軸線であり、レンズ枠4の駆動方向を示している。以下では、説明の簡単のため、分解された各構成部材の説明においても、組立時の軸線Mとの位置関係に基づいて、位置や方向を参照する場合がある。例えば、構成部材に明確な円、円筒面が存在しない場合でも、誤解のおそれのない限り、軸線Mに沿う方向を、単に軸方向、軸線Mを中心とする円の径方向、周方向を、単に径方向、周方向、あるいは軸線Mに対する径方向、周方向と称する場合がある。
また、上下方向は、特に断らない限り、軸線Mを鉛直方向に配置し、駆動モジュール1の取付面が鉛直下方となる場合の配置における上下方向を指すものとする。
【0018】
これら構成部材の中で、レンズ枠4は、図2、図6に示すように全体として筒状に形成されたものであって、その中央を貫通し、軸線Mに同軸に形成された筒状の収容部4Aの内周面4Fに雌ネジが形成されている。そして、収容部4Aには、適宜のレンズまたはレンズ群を、外周部に雄ネジが形成された鏡筒に保持したレンズユニット12(図3(b)、図5参照)を螺合して固定できるようになっている。
レンズユニット12がレンズ枠4に固定された状態で、レンズユニット12およびレンズ枠4は、柱状体の被駆動体を構成している。
レンズ枠4の外壁面4Bには周方向に90度の角度をあけて径方向外方に向けて突出する突出部4Cが、軸方向に延ばして設けられ、これら各突出部4Cの上端部、下端部およびその近傍において、軸線Mに直交する平面からなる端面4a、4bが形成されている。端面4a、4b上には、軸線Mに沿う上方および下方に向けてそれぞれ突出する上側固定ピン13A、下側固定ピン13Bが、それぞれ4本ずつ設けられている。
上側固定ピン13Aは上板ばね6を、下側固定ピン13Bは下板ばね7を、それぞれ保持するためのものである。
【0019】
上側固定ピン13Aおよび下側固定ピン13Bの平面視の位置は、それぞれ異なっていてもよいが、本実施形態では、軸線Mに平行な4本の軸線にそれぞれ同軸となる位置関係に配置されている。このため、上板ばね6、下板ばね7における、上側固定ピン13A、下側固定ピン13Bの挿通位置は、それぞれ共通化されている。
また、上側固定ピン13Aおよび下側固定ピン13Bの径方向の各中心位置は、軸線Mからの距離が異なっていてもよいが、本実施形態では、同一円周上に配置されている。このため、それぞれの中心位置は正方格子状に配置されている(図7(a)、(b)参照)。
【0020】
レンズ枠4の径方向外側には、1つの突出部4Cの近傍の下端側から、径方向外方に突出するようにガイド突起4D(突起部)が設けられている。ガイド突起4Dの突出方向は、各上側固定ピン13Aおよび各下側固定ピン13Bの軸線Mを中心とする周方向の角度位置とは、90度の整数倍から角度θ(ただし、θは鋭角)だけずらされた位置関係に設定される。すなわち、ガイド突起4Dが、正方形の対角線に沿うように配置されたとき、各上側固定ピン13Aおよび各下側固定ピン13Bは、すべて正方形の対角線から一定角度θだけずれた位置に配置されるようになっている。
【0021】
ガイド突起4Dの先端には、平面視で直角二等辺三角形状の先端鍵部4D1が設けられ、後述するカバー11の内側の角部に沿って上下移動可能に配置されている。図3(b)、図4に示すように、組立状態では、ガイド突起4Dの下面には、SMAワイヤ10が下方から係止されている。
また、図3(b)に示すように、ガイド突起4Dの上面である突起上面4dの先端側には、係止突起4fが設けられている。係止突起4fの位置は、SMAワイヤ10の係止位置に対して軸線Mに対する径方向にずれていてもよいが、本実施形態では、SMAワイヤ10の係止位置と略一致されている。
係止突起4fの外径は、圧縮コイルばね40の内周部に挿入可能であり、基端部では圧縮コイルばね40の内周部に略内接するような大きさとされる。これにより、係止突起4fに、圧縮コイルばね40を上方から挿入することで、圧縮コイルばね40の端部を突起上面4d上に当接させた状態で、圧縮コイルばね40を軸線Mに対する周方向に位置決めすることが可能となっている。
【0022】
また、図6、図7(a)、(b)に示すように、レンズ枠4の外壁面4Bの下部に沿って、各突出部4Cの側部から周方向に延ばされた突片状の度当り部4Eが設けられている。ただし、ガイド突起4Dを近傍に有する突出部4Cの度当り部4Eは、ガイド突起4Dの基端部を兼ねている。
各度当り部4Eはその上面に平滑な度当り面4eを有し、度当り面4eの軸方向の位置は、レンズ枠4が軸線Mに沿って、上方(図3(b)および図5の矢印(イ)方向)に一定距離以上に移動しようとした際に、後述するモジュール枠5の度当り受け部5E(図8(b)参照)に当接する位置に設定される。
また、レンズ枠4は、本実施形態では、熱かしめまたは超音波かしめが可能な熱可塑性樹脂、例えばポリカーボネート(PC)、液晶ポリマー(LCP)樹脂などにより一体成形されている。
【0023】
モジュール枠5は、図2、図8(a)、(b)に示すように、平面視の外形が全体として略矩形状に形成され、かつその中央部に、軸線Mに同軸に形成された貫通孔からなる収容部5A(筒状部)が形成された、筒状の部材であって、この収容部5A内にレンズ枠4が収容される。
モジュール枠5の上部および下部の四隅には、軸線Mに直交する平面からなる端面5a、5bが形成され、端面5aから上方に向けて上側固定ピン14Aが、また端面5bから下方に向けて下側固定ピン14Bが、それぞれ4本ずつ設けられている。
上側固定ピン14Aは上板ばね6を、下側固定ピン14Bは下板ばね7、モジュール下板8、給電部材9を、それぞれ保持するためのものである。
端面5a、5bの間の距離は、レンズ枠4の端面4a、4bの間の距離と同一距離に設定されている。
【0024】
モジュール枠5の一隅の下部には平面視の溝幅がレンズ枠4のガイド突起4Dに軸方向に移動可能に嵌合する大きさを有する切欠き5Bが形成されている。この切欠き5Bは、レンズ枠4をモジュール枠5内に下方から挿入して収容した状態で、レンズ枠4のガイド突起4Dを貫通させ、ガイド突起4Dの先端鍵部4D1をモジュール枠5の径方向外部に突出させるとともに、レンズ枠4の周方向の位置決めを行うためのものである。
【0025】
本実施形態では、このような位置に切欠き5Bを設けているため、図8(b)に示すように、切欠き5B近傍の下側固定ピン14Bは、切欠き5Bを避けて軸線Mと外形の隅部の交点である点Q1とを結ぶ線から離れた位置に形成されている。これに対して、他の3本の下側固定ピン14Bは、それぞれ軸線Mと外形の隅部の交点とを結ぶ線上、もしくはこの線により近接して設けられ、モジュール枠5の外形に沿うL字状をなして配置されている。したがって、4本の下側固定ピン14Bは、平面視で非対称な位置に配置されている。
一方、上側固定ピン14Aの平面視の位置は、下側固定ピン14Bの配置と異なっていてもよいが、本実施形態では、それぞれ軸線Mに平行な4本の軸線にそれぞれ同軸となる位置関係に配置されている。このため、上板ばね6、下板ばね7における、上側固定ピン14A、下側固定ピン14Bの挿通位置は、それぞれ共通化されている。
【0026】
そして、図8(b)に示すように、平面視において、モジュール枠5の側面の交点をQ1、Q2、Q3、Q4とすると、各上側固定ピン14A、各下側固定ピン14Bの軸中心は、それぞれ点Q1、Q2、Q3、Q4の近傍にあって、かつ、点Q1、Q2、Q3、Q4と軸線Mとを結ぶ線分K1,K2、K3、K4の線上または近傍に配置されている。すなわち、各上側固定ピン14A、各下側固定ピン14Bの軸中心と軸線Mとを結ぶ線分k1、k2、k3、k4は、線分K1,K2、K3、K4と重なるか、30度以下程度の浅い角度で交差されている。
【0027】
また、図8(a)に示すように、モジュール枠5の切欠き5Bに隣接する2つの隅部には、切欠き5Bが設けられた隅部と同方向側の側面において、SMAワイヤ10を保持するワイヤ保持部材15A、15B(図2、4参照)を取り付けるための一対の係止溝5Cが設けられている。本実施形態では、ワイヤ保持部材15Aは、駆動モジュール1から給電部材9の一対の端子部9Cが突出される側の側面に設けられ、ワイヤ保持部材15Bは、駆動モジュール1から給電部材9の一対の端子部9Cが突出されない側の側面に設けられている。
ワイヤ保持部材15A、15Bは、端部にSMAワイヤ10の端部をかしめてなる鍵状に形成された金属板などの導電性部材であり、係止溝5Cに側方から嵌合させることで、SMAワイヤ10の端部を位置決めして保持するものである。
ワイヤ保持部材15A、15Bは、図4に示すように、SMAワイヤ10のかしめ位置と反対側に片状の端子部15aを備え、モジュール枠5に対する取付状態において、端子部15aがモジュール枠5の下方に積層されたモジュール下板8の下方にわずかに突出されるようになっている。
また、一対のワイヤ保持部材15A、15Bによって両端が保持されたSMAワイヤ10は、モジュール枠の切欠き5Bから突出されたレンズ枠4のガイド突起4Dの先端鍵部4D1に下方から係止され、SMAワイヤ10の張力により、先端鍵部4D1を介して、レンズ枠4を上方に付勢している。
【0028】
モジュール枠5の収容部5A内には、図8(a)、(b)に示すように、内壁面5Dから径方向外側に向かい、軸方向には下端側から上端側の中間部まで形成された凹部である度当り受け部5Eが、レンズ枠4の各度当り部4Eを下方から挿入できるような形状に設けられている。ただし、ガイド突起4Dを兼ねる度当り部4Eに対する度当り受け部5Eは、切欠き5Bの溝底部によって兼用されている。
度当り受け部5Eは、軸方向の下方側に、度当り部4Eの度当り面4eを当接可能な受け面5E1を有している。これにより、レンズ枠4がその軸線Mに沿い上方に所定距離だけ移動すると、各度当り受け部5Eの受け面5E1が、それぞれ各度当り部4Eの度当り面4eと当接されるため、レンズ枠4の上方への移動が規制される。すなわち、度当り受け部5Eは、レンズ枠4の上方への移動範囲を規制する位置規制部を構成し、度当り部4Eは、モジュール枠5の位置規制部に当接可能に設けられた被位置規制部を構成する。
なお、本実施形態では、度当り受け部5Eの平面視の形成位置は、図8(b)に示すように、収容部5Aの中心(軸線M)から、モジュール枠5の矩形状外形の隅部に向かう線分K1、K2、K3、K4を含む位置に設けられている。
【0029】
このような構成により、例えば、駆動モジュールを落下させるなどして、外部から大きな衝撃が加えられたとしても、レンズ枠4は、度当り受け部5Eの受け面5E1の位置を超える上方には移動できないようになっている。
このような規制位置は、本実施形態では、レンズ枠4がカバー11に衝突せず、かつ、上板ばね6、下板ばね7、圧縮コイルばね40の変形が、例えば、弾性限界や巻線の密着長さなどの変形限界より小さくなるように設定している。
また、度当り受け部5Eが、収容部5Aの中心から、モジュール枠5の矩形状外形の隅部に向かう線分K1、K2、K3、K4を含む位置に設けられているため、モジュール枠5において、収容部5Aから矩形状外形の隅部までの径方向の領域を有効利用することができる。
そのため、度当り受け部5Eをモジュール枠5の内側に設けても、モジュール枠5の外形を増大させないようにすることができるので、小型化、軽量化が可能となる。
【0030】
また、モジュール枠5は、本実施形態ではレンズ枠4と同様に、熱かしめまたは超音波かしめが可能な熱可塑性樹脂、例えばポリカーボネート(PC)、液晶ポリマー(LCP)樹脂などにより一体成形されている。
【0031】
モジュール枠5およびモジュール枠5内に挿入されたレンズ枠4のそれぞれの上部と下部には、図5に示すように、モジュール枠5の端面5a、レンズ枠4の端面4aには、上板ばね6が、モジュール枠5の端面5b、レンズ枠4の端面4bには、下板ばね7が、それぞれ積層されている。
本実施形態では、図9に示すように、上板ばね6および下板ばね7は同一形状に打ち抜かれた平板状の板ばね部材であり、例えば、ステンレス(SUS)鋼板などのばね性を有する金属板からなる。
【0032】
上板ばね6(下板ばね7)の形状は、図9に示すように、平面視の外形が、モジュール枠5の上側(下側)の端部と同様な略矩形状とされ、中央部に軸線Mと同軸で、レンズ枠4の内周面4Fよりわずかに大きな円状の開口6C(7C)が形成され、全体としてリング状とされている。
上板ばね6(下板ばね7)の3つの隅部および1つの隅部近傍には、モジュール枠5の隅部および1つの隅部近傍に形成された上側固定ピン14A(下側固定ピン14B)の配置位置に対応して、各上側固定ピン14A(下側固定ピン14B)にそれぞれ挿通可能な4つの貫通孔6B(7B)が設けられている。本実施形態では、図8(b)における点Q2、Q4に対応する隅部に形成された上側固定ピン14A(下側固定ピン14B)を挿通する貫通孔6B(7B)のうち、一方が基準円孔、他方が小判孔とされ、モジュール枠5に対する軸線Mに直交する平面内の位置決めが可能となっている。
【0033】
また、上板ばね6(下板ばね7)には、レンズ枠4に形成された上側固定ピン13A(下側固定ピン13B)の配置位置に対応して、各上側固定ピン13A(下側固定ピン13B)にそれぞれ挿通可能な4つの貫通孔6A(7A)が設けられている。
すなわち、本実施形態では、各貫通孔6A(7A)は、図8(b)における線分K1に対応する直線L1に対して、90度の整数倍から角度θだけずれた位置に形成されている。そして、これら貫通孔6A(7A)が設けられた部分は、開口6C(7C)に沿う円環部6F(7F)によって、周方向に連結されている。
本実施形態では、このような配置として角度θを適切な値に設定することで、貫通孔6A(7A)が位置する軸線Mを中心とした円の円径と、貫通孔6B(7B)が配置される軸線Mを中心とした円の円径との径の差が、角度θが0度となるように配置する場合に比べて、小さくなるようにそれぞれの配置位置を設定することができる。
【0034】
また、開口6C(7C)の径方向外側には、軸線Mを挟んで互いに対角方向に対向する貫通孔6A(7A)の近傍位置から、周方向に略半円弧状に延びる4つのスリット6D(7D)が円環部6F(7F)の径方向外側で、それぞれ、略四分円弧ずつ径方向に重なった状態に形成されている。
これにより、上板ばね6(下板ばね7)の外側の矩形状枠体から、略四分円弧状に延ばされた4つのばね部6E(7E)が、それぞれ1つずつ貫通孔6A(7A)近傍に延ばされた板ばね部材が形成されている。すなわち、矩形状の枠体に対して、円環部6F(7F)が、4本のばね部6E(7F)によって、4箇所で均等に弾性支持される板ばね部材が形成されている。
【0035】
モジュール下板8は、図2に示すように、モジュール枠5の各下側固定ピン14Bを下板ばね7の貫通孔7Bに貫通させるとともに、モジュール枠5内に収容したレンズ枠4の各下側固定ピン13Bを下板ばね7の貫通孔7Aに貫通させた状態で、モジュール枠5との間で、下板ばね7を下方側から挟んで積層し、下板ばね7の矩形状の外形枠をモジュール枠5の端面5bに対して密着状態に固定するものである。
モジュール下板8の形状は、図10に示すように、モジュール枠5の外形と略同様の矩形状外形を有する板状部材であり、中央部に軸線Mを中心とする略円形状の開口8Aが厚さ方向に貫通して形成されている。
そして、開口8Aには、レンズ枠4の各下側固定ピン13Bの配置位置に対応する位置に、径方向外側に向かって延ばされ、下板ばね7を積層させる上面8aから裏面側に厚さ方向に貫通された4つのU字状の逃げ部8dが形成されている。これにより、後述するレンズ枠4のかしめ部との干渉を避けることができるようになっている。
開口8Aの円形部の内径は、下板ばね7の開口7Cの内径と同等もしくはより小さい径とされ、上面8aは、下板ばね7のばね部7E、円環部7Fも突き当て可能な平面を構成している。このため、ガイド突起4Dが、下板ばね7を介して、突き当てられるようになっている。このように、モジュール下板8は突き当て支持部を構成しており、筒状部を構成するモジュール枠5とともに支持体を構成している。
また、モジュール下板8の周縁に位置する各隅部にはモジュール枠5の各下側固定ピン14Bの配置位置に対応して、これら下側固定ピン14Bをそれぞれ挿通させる貫通孔8Cが形成されている。
【0036】
また、モジュール下板8の下面8bには、開口8Aに沿って下方に突出された凸部8Dが形成されている。凸部8Dの端面8cは、基板2に当接させる取付面を構成しており、基板2に対する軸線M方向、すなわち光軸方向に位置決めする位置決めスペーサの機能を有している。凸部8Dの端面8cと下面8bとの間の段差は、下面8bに給電部材9をかしめて組み立てたときに、このかしめ部よりも下方側に突出されるような高さに設定される。
【0037】
モジュール下板8の材質は、本実施形態では、電気絶縁性を有する合成樹脂を採用している。
このため、モジュール下板8は、給電部材9を下板ばね7に対して電気的絶縁状態で固定する絶縁部材となっている。また、端面8cが当接する基板2に対して電気的絶縁状態を保つ絶縁部材ともなっている。
【0038】
給電部材9は、図11に示すように、本実施形態では、それぞれ板状の金属板からなる一対の電極9a、9bからなる。
電極9a、9bは、いずれも、モジュール下板8の外形に沿う略L字状の配線部9Bと、配線部の端部からモジュール下板8の外形の外側に突出する端子部9Cとを備える折れ線状の金属板からなる。そして、それぞれの配線部9Bには、モジュール下板8の下面8bから下方に突出されるモジュール枠5の下側固定ピン14Bのうち、モジュール下板8の外形に沿って隣り合う2つの下側固定ピン14Bを、それぞれ挿通させて、電極9a、9bをモジュール枠5に対して位置決めを行う2つの貫通孔9Aが設けられている。
本実施形態では、図1、図3(a)に示すように、電極9a、9bの端子部9Cは、モジュール枠5において、ワイヤ保持部材15Aが取り付けられた側の側面から径方向外方に並列して突出するように設けられている。
このため、電極9aには、貫通孔9Aと端子部9Cとの間の配線部9B上の側面に、ワイヤ保持部材15Aの端子部15aを電気的に接続するために凹状に切り欠かれた導電接続部9Dが設けられている。
また、電極9bには、2つの貫通孔9A間の配線部9B上の側面に、ワイヤ保持部材15Bの端子部15aを電気的に接続するために凹状に切り欠かれた導電接続部9Dが設けられている。
それぞれの導電接続部9Dを、端子部15aと電気的に接続する手段としては、例えば、半田付けまたは導電性接着剤による接着を採用することができる。
【0039】
カバー11は、図1、図12に示すように、上面11Eの外縁部から下方側に、モジュール枠5を外嵌可能に覆う側壁部11Dが延ばされ、下方側に矩形状の開口11Cが形成された部材であり、上面11Eの中央部に軸線Mを中心とした円状の開口11Aが設けられている。開口11Aの大きさは、レンズユニット12を出し入れ可能な大きさとされる。
また、上面11Eの裏面側には、図12に示すように、開口11Aの周方向においてレンズ枠4の各上側固定ピン13Aの配置位置に対応する位置に、後述するかしめ部16との干渉を避けるための4つのU字状の凹部11Bが形成されている。
凹部11Bの深さは、度当り面4eと受け面5E1とが、当接した位置でも、かしめ部16とカバー11とが接触しない深さに設定する。凹部11Bは、上面11Eの上方に張り出す凹部としてもよいが、本実施形態では、凹部11Bの肉厚を薄肉として、上面11Eの外表面を平面としている。
【0040】
上面11Eの裏面側の1つの隅部には、組立状態で、図3(b)に示すように、モジュール枠5に取り付けられた上板ばね6の表面と同じ高さとなる位置に、圧縮コイルばね40の端部を支持する台状のコイルばね支持部11a(支持部)が形成されている。
そして、端面11a上において、組立状態でレンズ枠4の係止突起4fに対応する位置に、開口11C側に突出された係止突起11bが形成されている。
係止突起11bの外径は、圧縮コイルばね40の内周部に挿入可能であり、基端部では圧縮コイルばね40の内周部に略内接するような大きさとされる。これにより、係止突起11bに、圧縮コイルばね40を下方から挿入することで、圧縮コイルばね40の端部をコイルばね支持部11aに当接させた状態で、圧縮コイルばね40を軸線Mに対する周方向に位置決めすることが可能となっている。
【0041】
圧縮コイルばね40は、SMAからなる素線をコイル状に加工して熱処理することにより、高温側でばね長が伸長した形状が記憶されたSMAアクチュエータである。
ここで、図13を参照して、圧縮コイルばね40に用いるSMAの温度歪み特性について、SMAワイヤ10に用いるSMAの温度歪み特性とともに説明する。
駆動モジュール1の動作を保証する使用温度範囲tmin〜tmaxの間で環境温度が変化したときの、無通電時のSMAワイヤ10、および圧縮コイルばね40の温度がTminからTmax(ただし、Tmin<Tmax)とする。ここで、温度Tmaxは、駆動モジュール1に対する最大使用温度がtmaxのとき、駆動モジュール1内部での熱伝導や発熱などによる温度上昇を考慮したSMAワイヤ10、圧縮コイルばね40に対する実質的な使用時の最大環境温度であり、一般に、Tmax≧tmaxである。以下の説明では、簡単のため、誤解のおそれのない限り、Tmaxを単に最大使用温度と称する。また、Tminについても同様に単に最小使用温度と称する。
最大使用温度Tmaxは、形状記憶合金ワイヤの温度下降時の変態領域内の温度から選ばれた一定温度Tw0となっている。最大使用温度Tmaxとしては、例えば、80℃を採用することができる。
【0042】
SMAワイヤ10の温度歪み特性は、温度上昇時には、曲線αABCDβで表される変化を示す。各点の温度Tα、TA、TB、TC、TD、Tβの大きさは、この順に増大している。
歪みの大きさは、低温側で変態開始前の状態では直線αAのように一定の傾きで微増し、温度上昇時の変態開始温度TAからより大きな変化率で温度TBまで増大し、温度TBからTCまでの間では温度TBでの傾きを保持する線形の変化を示し、温度TCからTDの間で、変化率が徐々に減少し、温度TDからTβで一定の傾きで微増する変化を示す。ここで、TAは、次式を満足するものとする。
【0043】
TA≧Tmax ・・・(1)
【0044】
このため、SMAワイヤ10を通電してSMAワイヤ10の温度が温度TAを越えると、変態が開始され収縮していく。したがって、図13の曲線ABCDβのような動作は、SMAワイヤ10に通電して、発熱させることによって実現される。
TA<Tmaxであると、SMAワイヤ10に通電する前にSMAワイヤ10が収縮するため正常な動作を保証できなくなる。
【0045】
また、SMAワイヤ10の温度下降時の温度歪み特性は、曲線βDdcibaαで表される変化を示す。各点の温度Tβ、TD、Td、Tc、Ti、Tb、Ta、Tαの大きさは、この順に減少している。ここで、次式の関係を満足する。
【0046】
Ti=Tmax ・・・(2)
Ta≦TA ・・・(3)
【0047】
歪みの大きさは、高温側で温度Tβから温度Tdの間では、直線βDと同一の傾きで微減し、温度下降時の変態開始温度Td(Tws)からより大きな変化率で温度Tcまで減少し、温度TcからTbまでの間では温度Tcでの傾きを保持する線形の変化を示し、温度Tbから温度下降時の変態終了温度Ta(Twe)の間で、変化率が徐々に減少し、温度TaからTαで直線Aαと同一の傾きで微減する変化を示す。
このようなSMAワイヤ10は、例えば、NiとTiとをおよそ1:1の割合で含むNi−Ti合金などによって製作することができる。
【0048】
本実施形態の圧縮コイルばね40は、SMAワイヤ10と同様のSMAを用いて、変態開始温度を低温側にずらした材料から構成される。例えば、Ni−Ti合金を用いる場合、Niの含有率を増大させることで、変態開始温度を低温側にずらすことができる。
本実施形態では、圧縮コイルばね40の温度上昇時の温度歪み特性は、曲線αefjghdβで表される変化を示す。各点の温度Tα、Te、Tf、Tj、Tg、Th、Td、Tβの大きさは、この順に増大している。ここで、温度Tjは、SMAワイヤ10の温度Ti(Tw0)における歪み量と同じ歪み量が得られる温度である。
歪みの大きさは、低温側で変態開始前の状態では直線αeのように直線αAと同じ傾きで微増し、温度上昇時の変態開始温度Te(Tss)からより大きな変化率で温度Tfまで増大し、温度TfからTgまでの間では温度Tfでの傾きを保持する線形の変化を示し、温度Tgから温度上昇時の変態終了温度Th(Tse)の間で、変化率が徐々に減少し、温度ThからTβまで、直線Dβと同じ傾きで微増する変化を示す。
ここで、温度上昇時の変態開始温度Teは、SMAワイヤ10の温度下降時の変態終了温度Taよりも低い温度としている。また、温度上昇時の変態終了温度Thは、SMAワイヤ10の温度下降時の変態開始温度Tdよりも低い温度としている。
したがって、次式を満足する。
【0049】
Te<Ta ・・・(4a)
Th<Td ・・・(4b)
【0050】
また、本実施形態では、曲線abcdは、曲線efghに対して、全体として高温側に離間させている。このため、次式を満足する。
【0051】
Tj<Ti ・・・(4c)
Ta<Th ・・・(4d)
【0052】
ここで、式(4a)、(4d)は、Te、Ta、Thが、それぞれTss、Twe、Tseに対応するため、上記条件式(a)の等号を除いた関係に対応する。また、式(4c)は、Tj、Tiが、それぞれTs0、Tw0に対応するため、上記条件式(b)の等号を除いた関係に対応する。
なお、図13では、一例として、Th=Tmaxとなるように描いているが、Th≧Tmax、あるいは、Tg≧Tmaxなどの条件が好ましい。
例えば、Th<Tmaxとすると、Tmaxの近傍では歪みの変化率が格段に小さくなり、圧縮コイルばね40のばね長の伸びがほとんどなくなって、圧縮コイルばね40のばね力をあまり増大させられなくなり、この領域では効率よくSMAワイヤ10を伸長させることができなくなる。
【0053】
また、SMAワイヤ10、圧縮コイルばね40は、いずれも温度上昇時、温度下降時に変態の線形領域を有している。すなわち、温度Tb、Tcは、それぞれSMAワイヤ10の温度下降時の線形領域の下限温度および上限温度になっており、温度Tf、Tgは、それぞれ圧縮コイルばね40の温度上昇時の線形領域の下限温度および上限温度になっている。本実施形態では、次式の関係を満足する。
【0054】
Tg≦Tb ・・・(5)
【0055】
また、圧縮コイルばね40の温度下降時の温度歪み特性は、曲線βhHGFEαで表される変化を示す。各点の温度Tβ、Th、TH、TG、TF、TE、Tαの大きさは、この順に減少している。ここで、次式の関係を満足する。
【0056】
TH<Th ・・・(6)
TE<Te ・・・(7)
【0057】
歪みの大きさは、高温側で温度Tβから温度THの間では、直線βhと同一の傾きで微減し、温度下降時の変態開始温度THからより大きな変化率で温度TGまで減少し、温度TGからTFまでの間では温度TGでの傾きを保持する線形の変化を示し、温度TFから温度下降時の変態終了温度TEの間で、変化率が徐々に減少し、温度TEからTαで直線eαと同一の傾きで微減する変化を示す。
【0058】
圧縮コイルばね40は、ガイド突起4Dの係止突起4f、カバー11の係止突起11bをそれぞれ内周部に挿入可能な内径を有しており、係止突起4f、11bが両端部に挿入された状態で、ガイド突起4Dの突起上面4dと、カバー11のコイルばね支持部11aとの間に配置されている。
本実施形態の圧縮コイルばね40の自然長は、圧縮コイルばね40の温度が温度上昇時の変態開始温度Te以下の低温側の場合、組み付け状態でのコイルばね支持部11a、突起上面4dの間の距離の最大値Hmax(図3(b)参照)以下の寸法とされる。
この場合、圧縮コイルばね40の自然長は、最小使用温度Tminのとき、係止突起4f、11bから外れない長さであれば、Hmaxよりいくら短くてもよいが、ガタが大きすぎて組み付け状態が不安定にならない程度の長さにすることが好ましい。
また、このような低温側の温度では、SMAが例えばNi−Ti合金の場合、マルテンサイト相になり、弾性係数が著しく低下し、仮に、取付後に圧縮を受けてもほとんどばね力は発生しないため、Hmaxより長い設定としてもよい。
一方、高温側の自然長は、最大使用温度Tmaxのとき、伸長してHmax以上となり、組み付け状態において、突起上面4d、コイルばね支持部11aの間で圧縮され、これにより、レンズ枠4の端面4bが上面8aに当接するまでSMAワイヤ10を伸長せしめるようなばね力が発生する長さに形状記憶させておく。
係止突起4fは、SMAワイヤ10の係止位置に重なる位置に設けられているため、圧縮コイルばね40からの付勢力の作用点は、SMAワイヤ10からの付勢力の作用点に対して、軸線Mに平行な略同一直線上に位置している。
【0059】
このような構成の駆動モジュール1は、以下の手順で組み立てられる。
まず、モジュール枠5の収容部5A内に下方からレンズ枠4を挿入し、モジュール枠5の各端面5aと、レンズ枠4の端面4aとを同一高さに揃える。そして、モジュール枠5の各上側固定ピン14Aとレンズ枠4の各上側固定ピン13Aとに、上板ばね6の各貫通孔6A、6Bをそれぞれ挿通する。
その後、上板ばね6の各貫通孔6A、6Bを貫通して上方に突き出された各上側固定ピン13A、14Aの先端部を、図示しないヒータチップにより熱かしめして、それぞれかしめ部16、17(図3(b)、図4、図5参照)を形成する。なお、超音波かしめを用いる場合には、ヒータチップに代えて超音波振動子を用いる(以下の熱かしめも同様)。
次に、レンズ枠4の各下側固定ピン13Bに、下板ばね7の各貫通孔7Aをそれぞれ挿通する。この際、同時にモジュール枠5の各下側固定ピン14Bに、下板ばね7の各貫通孔7B、モジュール下板8の各貫通孔8C、給電部材9の各貫通孔9Aを挿通する。その後、下板ばね7の各貫通孔7Aを貫通して下方に突き出された各下側固定ピン13Bの先端部を、ヒータチップにより熱かしめして、かしめ部18(図5参照)を形成する。モジュール下板8には、逃げ部8dが形成されているため、かしめ部18は、モジュール下板8とは接触しない。
次に、これら貫通孔7B、8C、9Aを貫通して下方に突き出された各下側固定ピン14Bの下端部を、ヒータチップにより熱かしめして、かしめ部19(図3(b)参照)を形成する。
【0060】
このようにして、レンズ枠4とモジュール枠5の両端部に、上板ばね6、下板ばね7、モジュール下板8、給電部材9が積層固定される。このとき、無負荷状態では、互いに対向する上板ばね6、下板ばね7の各ばね部6E、7Eは、変形を起こさないため、互いに平行になっている。そして、端面4bに密着された下板ばね7の円環部7Fは、モジュール下板8の上面8aに密着して支持されている。
【0061】
次に、SMAワイヤ10が先端に取り付けられた一対のワイヤ保持部材15A、15Bを、モジュール枠5の2箇所の係止溝5Cにそれぞれ係止させ、例えば、嵌合や接着などの手段によりモジュール枠5に保持、固定する。その際、SMAワイヤ10の中央部を、ガイド突起4Dの先端鍵部4D1に係止させ、かつこの先端鍵部4D1を下側から支持するように掛け渡す。
このとき、ワイヤ保持部材15A、15Bの各端子部15aは、モジュール下板8の下方に突出され、それぞれ、モジュール下板8に固定された給電部材9である電極9a、9bの導電接続部9Dに係止されるか、もしくは近接して配置されている。
そこで、例えば、半田付けや導電性接着剤などを用いて、各端子部15aを、それぞれ導電接続部9Dに対して電気的に接続させる。
【0062】
次に、突起上面4dに、圧縮コイルばね40を外挿し、圧縮コイルばね40の一端を突起上面4dに当接させる。この状態で、モジュール枠5の上方から、カバー11を被せる。これにより、圧縮コイルばね40の他端の内周部に係止突起11bが挿入され、圧縮コイルばね40は、突起上面4dとコイルばね支持部11aとの間に配置される。したがって、本実施形態では、圧縮コイルばね40は、上板ばね6と下板ばね7との間に配置されている。
次に、側壁部11Dとモジュール下板8とを接合する。例えば、側壁部11Dに係合爪などを設けてはめ込みによって接合したり、側壁部11Dとモジュール下板8とを接着、または溶着して接合したりする。
これにより、本実施形態の圧縮コイルばね40は、温度上昇時の変態開始温度Te以下では圧縮されずに組み付けられており、ばね力がガイド突起4Dに付勢されない状態となっている。また、自然長をより長めに設定することで圧縮して組み付ける場合でも、弾性係数が著しく低いため、ほとんどばね力が発生しない状態で組み付けられることになる。
このため、圧縮コイルばね40をばね力がより大きい状態で、圧縮して組み付ける場合に比べて組み立てが容易となっている。
このとき、かしめ部16、17は、それぞれカバー11の上面11Eの裏面に対して、離間された状態にある。
以上で、駆動モジュール1の組み立てが完了する。
【0063】
次に、必要に応じて、駆動モジュール1の端子部9Cを、基板2上のランド部3(図1参照)に位置合わせして、駆動モジュール1を基板2上に取り付ける。そして、半田付けまたは導電性接着材などの手段によって、端子部9Cをランド部3に対して電気的に接続する。基板2には予め、各かしめ部19の位置に対応して4箇所の逃げ孔2aが設けられており、このため各かしめ部19は、基板2と干渉しないようになっている。
駆動モジュール1の基板2上への取り付けは、接着、嵌め込みなどの固定手段が採用することができる。
基板2は、駆動モジュール1に付属する独立した部材であってもよいし、電子機器等に接続、配置された部材であってもよい。
【0064】
次に、カバー11の開口11Aを通じてレンズ枠4内にレンズユニット12を螺合して取り付ける。
このように、レンズユニット12を最後に取り付けているのは、組立作業により、レンズユニット12のレンズが汚れたり、ゴミなどが付着したりしないためであるが、例えば、駆動モジュール1をレンズユニット12が取り付けられた製品状態で出荷する場合や、カバー11の開口11Aをレンズユニット12の外形より小さくしたい場合、例えば開口絞りを兼用するような場合などには、あらかじめレンズ枠4に螺合しておいて、上記の組み立てを行うこともできる。
【0065】
次に、駆動モジュール1の動作について説明する。
図14は、本発明の第1の実施形態に係る駆動モジュールの動作を説明するための図3(a)のB−B線に沿う模式的な断面図である。
【0066】
駆動モジュール1は、端子部9Cに電力が供給されず、駆動方向への外力が作用しない状態では、環境温度に応じてSMAワイヤ10が伸長されている。すなわち、SMAワイヤ10、圧縮コイルばね40に対する環境温度が、それぞれ温度上昇時の変態開始温度TA、Teより低い場合には、レンズ枠4には外力が作用しないため、図3(b)に示すように、レンズユニット12が取り付けられたレンズ枠4の端面4bが、円環部7Fを介して、モジュール下板8の上面8aに突き当てられ、上板ばね6、下板ばね7が変形されない状態となっている。
これにより、レンズ枠4が、駆動の基準位置に位置づけられる。この基準位置は、本実施形態の場合、撮像素子30に対するレンズユニット12の焦点位置が無限遠となるように設定されている。
以下では、まず、駆動モジュール1内の環境温度が、この状態を保つ場合の動作を説明する。
【0067】
端子部9Cから給電部材9に電力を供給すると、電極9a、ワイヤ保持部材15A、SMAワイヤ10、ワイヤ保持部15b、電極9bは、それぞれ導通されているため、SMAワイヤ10に電流が流れる。これにより、SMAワイヤ10にジュール熱が発生して、SMAワイヤ10の温度が上昇し、SMAワイヤ10の温度上昇時の変態開始温度TAを超えると、SMAワイヤ10が温度上昇時の温度歪み特性に応じた長さに収縮する。
【0068】
これにより、レンズ枠4が、上方(図中の(イ)方向)に移動する。
すなわち、上板ばね6、下板ばね7のばね部6E、7Eが、それぞれ変形し、変形量に応じた弾性復元力が、円環部6F、7Fを介して、レンズ枠4に付勢される。このとき、上板ばね6、下板ばね7は、無負荷状態で互いに平行とされ、各ばね部6E、7Eが軸線M方向に等距離を保って変形するため、平行ばねを構成しており、レンズ枠4は、軸線Mに沿って平行移動することになる。
また、ガイド突起4Dの移動に伴って、圧縮コイルばね40が圧縮され、圧縮量に応じた弾性復元力が、ガイド突起4Dに付勢される。このとき、圧縮コイルばね40からの付勢力の作用点と、SMAワイヤ10からの付勢力の作用点は、軸線Mに平行な略同一直線上に位置するので、レンズ枠4に対する力のモーメントがほとんど発生しないため、上板ばね6、下板ばね7による力に比べて大きな力が作用しても、レンズ枠4の移動姿勢にはほとんど影響しない。ただし、駆動モジュール1内の環境温度は、圧縮コイルばね40の変態開始温度Teより低いため、圧縮コイルばね40が圧縮されても、上板ばね6、下板ばね7の弾性復元力に比べて格段に小さなばね力しか発生しない。
このようにして、レンズ枠4が、軸線Mに沿って平行移動し、これらの弾性復元力がSMAワイヤ10の張力とつり合う位置で、レンズ枠4が停止する。
【0069】
このように、本実施形態では、上板ばね6、下板ばね7によって、摺動負荷が発生する軸方向のガイド部材などを用いることなく、レンズ枠4を正確に軸線M上に沿って移動させることができる。このため、部品点数を削減し、小型化することが可能となっている。
【0070】
また、電力の供給を停止すると、SMAワイヤ10からの放熱により、SMAの冷却時の温度歪み特性にしたがって、伸長変形してゆき、レンズ枠4は、下方(図中の(ロ)方向)のつり合い位置まで移動する。本実施形態では、図3(b)に示すような基準位置に戻る。
このようにして、電力供給量を制御することで、レンズ枠4を軸線M方向に駆動することができる。また、異なる位置に駆動する場合、電力供給を停止し、レンズ枠4を基準位置に戻してから、再度、駆動量に応じた電力を供給することで、SMAワイヤ10が加熱時と冷却時とでヒステリシス特性を有するにも関わらず、異なる位置に正確に駆動させることができる。
【0071】
ところで、駆動モジュール1が、SMAワイヤ10の温度下降時の変態終了温度Ta以上の環境温度Tの下で使用される場合、通電を停止しても、SMAワイヤ10の温度は温度Tより低くならないため、SMAワイヤ10の伸長が停止し、自然放熱では、レンズ枠4を基準位置に戻すことができなくなる。このため、繰り返して駆動を行う場合に、正確な駆動を行うことができなくなる。
例えば、最悪の場合として、T=Tmaxの場合を考える。この場合、図13に示すように、SMAワイヤ10は、より高温側から自然放熱するにつれて、例えば、点D、d、c、iを通る曲線上をこの順に移動するように歪みが変化し、これに応じて温度Tmax時の長さにまで収縮して、停止する。
このとき、圧縮コイルばね40は、点hに示されるように、歪みが最大となり、予め形状記憶された最大のばね長に伸長しているので、圧縮コイルばね40のばね力がガイド突起4Dを介してSMAワイヤ10を伸長させる方向に作用し、SMAワイヤ10の張力と圧縮コイルばね40のばね力とがつり合う位置、すなわち、レンズ枠4を基準位置に移動するまでSMAワイヤ10が伸長される。これにより、環境温度Tが、最大使用温度Tmaxとなっても、SMAワイヤ10の通電停止後に、レンズ枠4を基準位置に復帰させることができる。
このような作用が得られるのは、SMAワイヤ10、圧縮コイルばね40のSMAの温度歪み特性が、式(4a)、(4d)、(4c)の関係を満足することにより、温度Tmax以下の環境温度Tで、SMAワイヤ10の温度下降時の変態の歪み量に比べて、圧縮コイルばね40の温度上昇時の変態の歪み量が大きくなる関係が満足されるためである。
【0072】
レンズ枠4が基準位置に復帰した状態から、さらにSMAワイヤ10に通電すれば、SMAワイヤ10の温度は、Tmax以上に加熱され、温度上昇時の変態開始温度TAを越えると、図13の温度歪み特性に従ってSMAワイヤ10が収縮し、SMAワイヤ10に流れる電流値に応じて、レンズ枠4の駆動を行うことができる。
このとき、圧縮コイルばね40は、環境温度Tmaxにおけるばね長を保持しようとするため、レンズ枠4には圧縮量に応じたばね力が作用し駆動負荷となるが、通電による加熱が継続されることで、SMAワイヤ10の収縮による張力が上回り、レンズ枠4を電流値に応じた位置に駆動することができる。したがって、上記と同様に、駆動を行うことができる。
【0073】
環境温度Tが、Tmaxより小さい場合には、環境温度Tに応じて、圧縮コイルばね40のばね力が、図13の温度歪み特性によって減少する。この場合、SMAワイヤ10の相状態も環境温度Tの変化に比例して低温側の相状態にずれるため、より低荷重で基準位置まで戻すことが可能となり、上記と同様にして、レンズ枠4を基準位置に戻すことができる。
本実施形態では、SMAワイヤ10、圧縮コイルばね40を構成するSMAが変態の線形領域において略同じ傾きを有するため、環境温度が変化しても、圧縮コイルばね40とSMAワイヤ10との間には、相似的な力関係が成り立つ。このため、いずれの温度領域でも、円滑にレンズ枠4を基準位置に戻すことができる。
【0074】
このように、本実施形態によれば、圧縮コイルばね40をSMAで製作し、温度上昇に伴ってばね力が増大する構成とし、圧縮コイルばね40、SMAワイヤ10の温度歪み特性が、条件式(4a)、(4d)、(4c)を満足するため、環境温度がSMAワイヤ10の温度下降時の変態終了温度Taよりも高い場合でも、圧縮コイルばね40のばね力によって、SMAワイヤ10を伸長させ、レンズ枠4を基準位置に戻すことが可能となる。このため、ある程度高温の環境下で、駆動モジュール1を用いたとしても、良好な位置精度を保って、駆動することができる。
【0075】
また、本実施形態では、上板ばね6、下板ばね7は、レンズ枠4の移動方向、移動姿勢を保持するための部材として機能しており、圧縮コイルばね40のみが、環境温度によって基準位置に戻りきらないレンズ枠4を環境温度の上昇に応じて基準位置に戻す機能を備えている。
例えば、圧縮コイルばね40を省略して、上板ばね6、下板ばね7に、レンズ枠4を基準位置に戻す予圧機能を持たせることも考えられるが、この場合、基準位置で、上板ばね6、下板ばね7のいずれかをたわませておく必要があるので、軸線M方向に変形させておくためのスペースが必要になり、駆動モジュール1の厚さが増大してしまう。また、板厚やばね長さはコイルばねに比べて変更の自由度が少ないため、予圧荷重やばね定数をバラツキなく設定することは、困難である。
一方、本実施形態では、圧縮コイルばね40のSMAの温度歪み特性に基づいて、形状記憶させる変形状態の条件を適宜設定することで、圧縮コイルばね40を上板ばね6と下板ばね7との間のスペースに配置しても、圧縮コイルばね40の変形量を容易に設定することができるので、駆動モジュール1をコンパクトに構成することができる。
【0076】
次に、本実施形態の第1変形例について説明する。
図15は、本発明の第1の実施形態の第1変形例に係る駆動モジュールに用いる形状記憶合金ワイヤ、形状記憶合金アクチュエータの温度歪み特性を示す模式的なグラフである。
【0077】
本変形例は、上記第1の実施形態の圧縮コイルばね40に用いるSMAの温度歪み特性のみを図15に示すように変更したものであり、各構成部品の形状や配置は、上記第1の実施形態と同様である。また、図15において図13と共通の符号は、それらを添字とする温度などの量とともに上記第1の実施形態と同様の意味を表すため説明を省略する。以下、上記第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0078】
本変形例の圧縮コイルばね40は、図15に示すように、SMAワイヤ10の温度歪み特性に対して、温度上昇時の変態開始温度Teを低温側にずらし、変態の線形領域の傾きがより小さくなるようなSMAから構成される。
すなわち、本変形例の圧縮コイルばね40の温度上昇時の温度歪み特性は、曲線αef1j1g1h1Dβで表される変化を示す。各点の温度Tα、Te、Tf1、Tj1、Tg1、Th1、TD、Tβの大きさは、この順に増大している。ここで、温度Tj1は、SMAワイヤ10の温度Tiにおける歪み量と同じ歪み量が得られる温度である。
歪みの大きさは、低温側で変態開始前の状態では直線αeのように直線αAと同じ傾きで微増し、温度上昇時の変態開始温度Teからより大きな変化率で温度Tf1まで増大し、温度Tf1からTg1までの間では温度Tf1での傾きを保持する線形の変化を示し、温度Tg1から温度上昇時の変態終了温度Th1(Tse)の間で、変化率が徐々に減少し、変態終了温度Th1からTβまで、直線Dβと同じ傾きで微増する変化を示す。
ここで、変態の線形領域を示す直線f1j1g1の傾きは、SMAワイヤ10の温度上昇時の変態の線形領域を示す直線BCの傾きよりも小さくなっている。そして、次式を満足する。
【0079】
Ta<Th1 ・・・(8)
Tf1<Tb ・・・(9)
Td<Th1 ・・・(10)
Tj1≦Ti=Tmax ・・・(11)
【0080】
ここで、Te、Ta、Th1が、それぞれTss、Twe、Tseに対応するため、上記第1の実施形態と同様に成立する式(4a)と、式(8)とは、上記条件式(a)の等号を除いた関係に対応する。また、式(11)は、Tj1、Tiが、それぞれTs0、Tw0に対応するため、上記条件式(b)に対応する。
【0081】
このため、温度TeからTmaxの間で、圧縮コイルばね40の温度上昇時の歪みの大きさは、SMAワイヤ10の温度下降時の歪み量以上になっており、圧縮コイルばね40によって、SMAワイヤ10を伸長させるばね力を発生させることができるようになっている。
直線f1g1と直線bcとが交差する点xを越える温度領域では、歪み量が、上記とは逆の関係となるため、圧縮コイルばね40は、SMAワイヤ10を伸長させるばね力を発生させることができないが、Tx>Tmaxなので実使用上は問題ない。
【0082】
また、本変形例の圧縮コイルばね40の温度下降時の温度歪み特性は、曲線βh1H1G1F1Eαで表される変化を示す。各点の温度Tβ、Th1、TH1、TG1、TF1、TE、Tαの大きさは、この順に減少している。ここで、次式の関係を満足する。
【0083】
TH1<Th1 ・・・(12)
【0084】
歪みの大きさは、高温側で温度Tβから温度TH1の間では、直線βh1と同一の傾きで微減し、温度下降時の変態開始温度TH1からより大きな変化率で温度TG1まで減少し、温度TG1からTF1までの間では温度TG1での傾きを保持する線形の変化を示し、温度TF1から温度下降時の変態終了温度TEの間で、変化率が徐々に減少し、温度TEからTαで直線eαと同一の傾きで微減する変化を示す。
【0085】
本変形例によれば、圧縮コイルばね40、SMAワイヤ10の温度歪み特性が、条件式(8)〜(11)を満足するので、上記第1の実施形態と同様にして、環境温度がSMAワイヤ10の温度下降時の変態終了温度Taよりも高い場合でも、使用温度範囲において、圧縮コイルばね40のばね力によって、SMAワイヤ10を伸長させ、レンズ枠4を基準位置に戻すことが可能となる。
そして、圧縮コイルばね40の温度上昇時の温度歪み特性の線形領域の傾きが、SMAワイヤ10の同様の傾きに比べて小さいため、それぞれの傾きが同じ場合に比べて、環境温度の高温側での駆動負荷を低減することができる。
【0086】
次に、本実施形態の第2変形例について説明する。
図15は、本発明の第1の実施形態の第2変形例に係る駆動モジュールに用いる形状記憶合金ワイヤ、形状記憶合金アクチュエータの温度歪み特性を示す模式的なグラフである。
【0087】
本変形例は、上記第1の実施形態の圧縮コイルばね40に用いるSMAの温度歪み特性のみを図16に示すように変更したものであり、各構成部品の形状や配置は、上記第1の実施形態と同様である。また、図16において図13と共通の符号は、それらを添字とする温度などの量とともに上記第1の実施形態と同様の意味を表すため説明を省略する。以下、上記第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0088】
本変形例の圧縮コイルばね40は、図16に示すように、温度上昇時の温度歪み特性が、SMAワイヤ10の温度下降時の温度歪み特性と同一となるようにしたSMAから構成される。
すなわち、本変形例の圧縮コイルばね40の温度上昇時の温度歪み特性は、曲線αe2f2j2g2h2Dβで表される変化を示す。この曲線は、SMAワイヤ10の温度下降時の温度歪み特性を示す曲線βDdcibaαと重なっており、点e2、f2、j2、g2、h2は、それぞれ、点a、b、i、c、dにグラフ上で重なっている。
すなわち、圧縮コイルばね40の温度上昇時の変態開始温度Te2、温度上昇時の変態終了温度Th2が、それぞれ、SMAワイヤ10の温度下降時の変態終了温度Ta、変態開始温度Tdと一致しており、次式の関係を満足する。
【0089】
Te2=Ta ・・・(13a)
Ta<Th2 ・・・(13b)
Tj2=Ti ・・・(13c)
【0090】
ここで、式(13a)、(13d)は、Te2、Ta、Th2が、それぞれTss、Twe、Tseに対応するため、上記条件式(a)の等号を含む関係に対応する。また、式(13c)は、Tj2、Tiが、それぞれTs0、Tw0に対応するため、上記条件式(b)の等号の関係に対応する。
【0091】
本変形例によれば、圧縮コイルばね40の温度上昇時の歪みの大きさは、SMAワイヤ10の温度下降時の歪みと常に同一となっており、圧縮コイルばね40によって、SMAワイヤ10を伸長させるばね力を過不足無く発生させることができるようになっている。
このため、圧縮コイルばね40のばね力による駆動負荷を全使用温度範囲において、必要最小限の値に設定することが可能となる。
【0092】
次に、本実施形態の第3変形例について説明する。
図17は、本発明の第1の実施形態の第3変形例に係る駆動モジュールの組立状態の内部構成を示す模式的な斜視図である。
【0093】
本変形例は、SMAアクチュエータとして、上記第1の実施形態の圧縮コイルばね40に代えて、引っ張りコイルばねを用いたものである。
本変形例の駆動モジュールは、図17に示すように、上記第1の実施形態の圧縮コイルばね40に代えて、先端側に可撓性を有する引っ張りワイヤ41aが設けられた引っ張りコイルばね41(SMAアクチュエータ)を備える。また、レンズ枠4の係止突起4fに代えて、引っ張りワイヤ41aの先端を係止するワイヤ係止部42aを設けている。そして、組立時にガイド突起4Dと重なる位置のモジュール下板8の側面に、側方に突出された係止突起80を設けている。この係止突起80は、引っ張りワイヤ41aを摺動可能に掛け回し、引っ張りワイヤ41aの引っ張り方向を変えるためのものである。モジュール枠5に代えて、モジュール枠5の側面にSMAワイヤ10が張架された側面にばね収納溝50a(支持部)を設けたモジュール枠50(支持体)を備えている。
引っ張りコイルばね41は、引っ張りワイヤ41aの先端をワイヤ係止部42aに係止し、この引っ張りワイヤ41aがガイド突起4Dの側面のガイド溝に案内されて、係止突起80に掛け回されてモジュール枠5の側面側に引っ張り方向が変更された状態で、モジュール枠50のばね収納溝50aに伸縮可能に収納され、引っ張りワイヤ41aと反対側の端部において、モジュール枠50と固定されている。
引っ張りコイルばね41は、SMAからなる素線をコイル状に加工して熱処理することにより、高温側でばね長が収縮した形状が記憶され、変態の低温側でばね長が伸長するようにしたSMAアクチュエータである。
【0094】
本変形例の構成では、引っ張りコイルばね41は、モジュール枠50の側方のばね収納溝50aにコンパクトに収納された状態で、環境温度の上昇による収縮に伴って、引っ張りワイヤ41aを介して、ガイド突起4Dを、モジュール下板8側(図示下方側)に引っ張ることが可能に設けられている。
引っ張りコイルばね41の温度歪み特性は、圧縮コイルばね40に用いるSMAと同様の特性を有する設定とする。
【0095】
本変形例によれば、ガイド突起4Dに作用するばね力が、引っ張りコイルばね41の引っ張り力であり、作用方向が異なるだけで、本質的に、上記第1の実施形態と同様の作用効果を備える。
【0096】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態に係る電子機器について説明する。
図18(a)、(b)は、本発明の第2の実施形態に係る電子機器の表面、裏面の斜視外観図である。図18(c)は、図18(b)におけるG−G断面図である。
【0097】
図18(a)、(b)に示す本実施形態のカメラ付き携帯電話20は、上記第1の実施形態の駆動モジュール1を備えた電子機器の一例である。
カメラ付き携帯電話20は、受話部22a、送話部22b、操作部22c、液晶表示部22d、アンテナ部22e、不図示の制御回路部などの周知の携帯電話の装置構成をカバー22内外に備えている。
そして、図18(b)に示すように、液晶表示部22dが設けられた側の裏面側のカバー22に、外光を透過させる窓22Aが設けられ、図18(c)に示すように、駆動モジュール1の開口11Aがカバー22の窓22Aを臨み、窓22Aの法線方向に軸線Mが沿うように、上記第1の実施形態の駆動モジュール1が設置されている。
そして、駆動モジュール1は、基板2に機械的、電気的に接続されている。
基板2は、不図示の制御回路部に接続され、駆動モジュール1に電力を供給できるようになっている。
【0098】
このような構成によれば、窓22Aを透過した光を駆動モジュール1の不図示のレンズユニット12で集光し、撮像素子30上に結像することができる。そして、駆動モジュール1に制御回路部から適宜の電力を供給することで、レンズユニット12を軸線M方向に駆動し、焦点位置調整を行って、撮影を行うことができる。
このようなカメラ付き携帯電話20によれば、上記第1の実施形態の駆動モジュール1を備えるため、小型化が可能で、製造が容易な装置となるとともに、高温環境で使用しても、正確な合焦を行うことができる。
【0099】
なお、上記の説明では、モジュール下板8、給電部材9を備える場合の例で説明したが、これらは場合によっては削除した構成としてもよい。
例えば、モジュール枠5に突き当て支持部を一体形成することができる場合には、モジュール下板8は削除してもよい。
また、ワイヤ保持部材15A、15Bに直接配線したり、適宜の給電部材をモジュール枠5の側面に設けたりするような場合には、給電部材9は省略することができる。
また、例えば、給電部材9をモジュール下板8に積層させない場合など、電気絶縁性が求められない場合には、モジュール下板8は、電気絶縁体でなくてもよい。
【0100】
また、上記の説明では、組み立てに熱かしめまたは超音波かしめを用いる場合の例で説明したが、上側固定ピン13A、14A、下側固定ピン13B、14Bなどを、ネジ部に置き換えてネジ止めしたり、接着剤などを用いたりして組み立ててもよい。この場合、被駆動体、支持体の材質は、かしめが可能な熱可塑性樹脂に限定されない。
【0101】
また、上記の説明では、モジュール枠5は、全体として略矩形状の部材として説明したが、略矩形状には限定されず、多角形状であってもよい。この場合、矩形状の隅部は、多角形状の隅部に置き換えることができる。
【0102】
また、上記の説明では、給電部材は、電極9a、9bからなる場合の例で説明したが、給電部材は、2系統の配線が形成された、1枚のプリント基板などを採用してもよい。
【0103】
また、上記の説明では、駆動モジュールをレンズユニットの焦点位置調整機構に用いる場合の例で説明したが、駆動モジュールの用途はこれに限定されない。例えば、被駆動体を目標位置に移動させる適宜のアクチュエータとして他の部分に用いてもよい。例えば、レンズユニット12に代えて、ロッド部材などを螺合したり、レンズ枠4を他の形状に変えたりして、適宜のアクチュエータとして用いることができる。
【0104】
また、上記の説明では、駆動モジュールを用いた電子機器として、カメラ付き携帯電話の例で説明したが、電子機器の種類はこれに限定されない。例えば、デジタルカメラ、パソコン内蔵のカメラなどの光学機器に用いてもよいし、情報読取記憶装置やプリンタなどの電子機器において、被駆動体を目標位置に移動させるアクチュエータとしても用いることができる。
【0105】
また、上記に説明した各実施形態の構成要素は、技術的に可能であれば、本発明の技術的思想の範囲で適宜組み合わせて実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る駆動モジュールの基板への取り付け状態を説明するための模式的な斜視分解図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る駆動モジュールの概略構成を示す模式的な斜視分解図である。
【図3】図1のA視平面図、およびその模式的なB−B断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る駆動モジュールの組立状態の内部構成を示す模式的な斜視図である。
【図5】図4におけるC−C線に沿う断面図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る駆動モジュールに用いる被駆動体の一部を示す模式的な斜視図である。
【図7】図6におけるD視の平面図、およびE視の裏面図である。
【図8】本発明の第1の実施形態に係る駆動モジュールに用いるモジュール枠の模式的な斜視図、およびそのF視の裏面図である。
【図9】本発明の第1の実施形態に係る駆動モジュールに用いる板ばね部材の平面図である。
【図10】本発明の第1の実施形態に係る駆動モジュールに用いるモジュール下板の模式的な斜視図である。
【図11】本発明の第1の実施形態に係る駆動モジュールに用いる給電部材の平面図である。
【図12】本発明の第1の実施形態に係る駆動モジュールに用いるカバーの裏面図である。
【図13】本発明の第1の実施形態に係る駆動モジュールに用いる形状記憶合金ワイヤ、形状記憶合金アクチュエータの温度歪み特性を示す模式的なグラフである。
【図14】本発明の第1の実施形態に係る駆動モジュールの動作を説明するための図3(a)のB−B線に沿う模式的な断面図である。
【図15】本発明の第1の実施形態の第1変形例に係る駆動モジュールに用いる形状記憶合金ワイヤ、形状記憶合金アクチュエータの温度歪み特性を示す模式的なグラフである。
【図16】本発明の第1の実施形態の第2変形例に係る駆動モジュールに用いる形状記憶合金ワイヤ、形状記憶合金アクチュエータの温度歪み特性を示す模式的なグラフである。
【図17】本発明の第1の実施形態の第3変形例に係る駆動モジュールの組立状態の内部構成を示す模式的な斜視図である。
【図18】本発明の第2の実施形態に係る電子機器の表面、裏面の斜視外観図、およびそのG−G断面図である。
【符号の説明】
【0107】
1 駆動モジュール
2 基板
3 端子
4 レンズ枠(被駆動体)
4D ガイド突起(突起部)
4d 突起上面
5、50 モジュール枠(支持体)
5A 収容部(筒状部)
6 上板ばね(平行板ばね対)
7 下板ばね(平行板ばね対)
8 モジュール下板(支持体)
8a 上面(突き当て支持部)
9 給電部材
10 形状記憶合金(SMA)ワイヤ
11 カバー
11a コイルばね支持部(支持部)
12 レンズユニット(被駆動体)
20 カメラ付き携帯電話(電子機器)
40 圧縮コイルばね(形状記憶合金アクチュエータ)
41 引っ張りコイルばね(形状記憶合金アクチュエータ)
50a ばね収納溝50a(支持部)
M 軸線
Tmax 最高使用温度(形状記憶合金ワイヤの温度下降時の変態領域内の温度から選ばれた一定温度Tw0)
Td 変態開始温度(形状記憶合金ワイヤの温度下降時の変態開始温度Tws)
Ta 変態開始温度(形状記憶合金ワイヤの温度下降時の変態終了温度Twe)
Te、Te2 変態開始温度(形状記憶合金アクチュエータの温度上昇時の変態開始温度Tss)
Th、Th1、Th2 変態開始温度(形状記憶合金アクチュエータの温度上昇時の変態終了温度Tse)
Tj、Tj2 温度(形状記憶合金アクチュエータの温度上昇時の変態の歪み量が一定温度Tw0で形状記憶合金ワイヤの温度下降時の変態の歪み量に等しくなる温度Ts0)
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動モジュールおよびそれを備える電子機器に関する。例えば、光学系や可動部材を駆動して、焦点位置調整を行ったり、アクチュエータとして用いたりするのに好適となる駆動モジュールおよびそれを備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、カメラ機能付き携帯電話などの小型の電子機器においては、撮影レンズユニットなどの被駆動体を形状記憶合金ワイヤによって駆動する駆動モジュールを用いた装置が知られている。
このような駆動モジュールおよび電子機器として、特許文献1には、レンズ群を組み付けた第1の鏡枠と、第1の鏡枠を固定するとともに駆動方向に沿うガイド軸に移動自在に取り付けられた第2の鏡枠と、第2の鏡枠に係止され電流が通電されると収縮して第2の鏡枠を駆動方向に付勢する形状記憶合金ワイヤと、第2の鏡枠を形状記憶合金ワイヤに押し付けるためにガイド軸に沿って付勢する圧縮コイルばねとを備えるレンズ駆動装置、およびそれを備える撮像装置が記載されている。
【特許文献1】特開2007―57581号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記のような従来の駆動モジュールには、以下のような問題があった。
特許文献1に記載のレンズ駆動装置では、ガイド軸を用いて第2の鏡枠を駆動するため、摺動負荷が発生する。例えば、合焦速度を高めるなど良好な駆動特性を得るには形状記憶合金ワイヤの駆動負荷の増大につながる圧縮コイルばねによる付勢力を低減する必要がある。そのため、特許文献1では、形状記憶合金ワイヤの無通電状態で、圧縮コイルばねによる付勢力により形状記憶合金ワイヤが若干量伸長された状態、もしくは形状記憶合金ワイヤが若干の弛みを有する状態とし、第2の鏡枠の突起部が、ネジの頭部に当接して静止するようにしている。これにより、通電開始時には、形状記憶合金ワイヤからの付勢力が非常に小さいか、付勢力が作用しない状態となっており、ガイド軸の負荷がある程度あっても円滑な駆動が行えるようになっている。
ところで、形状記憶合金は、温度に対する歪み量に関してヒステリシス特性を有するため、正確な駆動を行うためには、1回の駆動を行うごとに変態開始温度以下に冷却して駆動の基準位置に戻してから、一方向に駆動する必要がある。
特許文献1のような従来のレンズ駆動装置では、環境温度が形状記憶合金の変態開始温度以下では、問題なく動作するものの、環境温度が形状記憶合金の変態領域内の温度になると、自然放熱では変態開始温度以下にならない。このため、通電を停止しても形状記憶合金ワイヤが駆動開始時の長さまで伸長しなくなる。形状記憶合金ワイヤは、ある程度、圧縮コイルばねの付勢力によって、伸長されるが、駆動の基準位置近傍では圧縮コイルばねの付勢力が非常に小さくなるため、完全に伸長させることができなくなる。したがって、高温環境下では、駆動の基準位置の位置誤差が発生するため正確な駆動が行えなくなるという問題がある。
【0004】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであって、高温環境下でも良好な駆動を行うことができ、小型化が可能となる駆動モジュールおよびそれを備えた電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明では、軸線が駆動方向に沿うように配置された柱状体からなり、該柱状体の側方に突出する突起部が設けられた被駆動体と、
該被駆動体を前記駆動方向の基準位置に位置決めする突き当て支持部と、前記被駆動体を前記駆動方向に沿って移動自在に収容する筒状部とを有する支持体と、前記被駆動体と前記支持体との間で前記駆動方向に直交する方向に延ばして取り付けられ、無負荷状態で互いに平行となるように対向して配置された平行板ばね対と、前記支持体の筒外周部に張架されるとともに、中間部が前記被駆動体の前記突起部に係止された形状記憶合金ワイヤと、環境温度の上昇に伴って、一端側で前記被駆動体の前記突起部を付勢するように変形して、該突起部に係止された無通電時の前記形状記憶合金ワイヤに抗して前記被駆動体を前記基準位置に移動させるように形状記憶された形状記憶合金アクチュエータと、該形状記憶合金アクチュエータの他端を支持する支持部とを備える構成とする。
この発明によれば、被駆動体が、支持体に対して、無負荷状態で互いに平行となるように対向して配置された平行板ばね対によって弾性支持されるので、摺動ガイドなどの摺動負荷を発生させる手段を用いることなく、駆動方向に沿って移動可能に支持される。
また、被駆動体の突起部の一端には、環境温度の上昇に伴って突起部を付勢するように変形して、突起部に係止された無通電時の形状記憶合金ワイヤに抗して被駆動体を基準位置に移動させるように形状記憶された形状記憶合金アクチュエータが設けられているので、環境温度が形状記憶合金ワイヤの温度下降時の変態終了温度以上になり、形状記憶合金ワイヤの通電を停止しても形状記憶合金ワイヤが伸長しきらない場合に、突起部に作用する形状記憶合金アクチュエータの付勢力が増大して形状記憶合金ワイヤを伸長させるため、被駆動体を基準位置に戻すことができる。
これにより、環境温度が上昇したときのみ、形状記憶合金ワイヤを伸長させる付勢力を作用させることができ、被駆動体を平行板ばね対等によって予め予圧しておく必要がなくなるため、駆動負荷が軽くなるとともに、装置の駆動方向の厚さを低減することができる。また、平行板ばね対の製造や組み立てを容易化することができる。
なお、被駆動体の柱状体は、外形が略柱状であるすべての形態を含む広義の意味で用いている。したがって、中実の柱状体とは限らず、例えば、中心に貫通孔などが設けられた筒状体なども含まれる。また、外形が略柱状である限り、レンズ組立体などの組立体なども含まれる。
【0006】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の駆動モジュールにおいて、前記形状記憶合金アクチュエータおよび前記形状記憶合金ワイヤは、前記形状記憶合金アクチュエータの温度上昇時の変態開始温度、変態終了温度をそれぞれTss、Tse(ただし、Tss<Tse)とし、前記形状記憶合金ワイヤの温度下降時における変態終了温度、変態開始温度をそれぞれTwe、Tws(ただし、Twe<Tws)とし、前記形状記憶合金ワイヤの温度下降時の変態領域内の温度から選ばれた一定温度をTw0(ただし、Twe<Tw0≦Tws)、前記形状記憶合金アクチュエータの温度上昇時の変態の歪み量が前記一定温度Tw0で前記形状記憶合金ワイヤの温度下降時の変態の歪み量に等しくなる温度をTs0とするとき、次式を満足する構成とする。
Tss≦Twe<Tse ・・・(a)
Ts0≦Tw0 ・・・(b)
この発明によれば、無通電時の温度下降時の形状記憶合金ワイヤ、および形状記憶合金アクチュエータの温度を決める環境温度Tが、温度Tw0より低い温度から温度Tw0に上昇した場合、環境温度Tに応じた変態の歪み量に応じて、形状記憶合金ワイヤ、形状記憶合金アクチュエータの変形量が決まる。条件式(a)、(b)によれば、温度Tw0以下では、形状記憶合金アクチュエータの変態の歪み量が、形状記憶合金ワイヤの変態の歪み量を上回るため、これらの歪み量に比例して作用する力関係によって、形状記憶合金が伸長され、被駆動体が確実に基準位置に移動される。
【0007】
請求項3に記載の発明では、請求項2に記載の駆動モジュールにおいて、前記形状記憶合金アクチュエータの温度上昇時における変態の線形領域の上限温度は、前記形状記憶合金ワイヤの温度下降時における変態の線形領域の下限温度以下である構成とする。
この発明によれば、形状記憶合金アクチュエータの温度上昇時における変態の線形領域の上限温度が、形状記憶合金ワイヤの温度下降時における変態の線形領域の下限温度より大きい場合に比べて、Tw0以下の温度範囲における形状記憶合金アクチュエータの温度上昇時の変態の歪み量と形状記憶合金ワイヤの温度下降時の変態の歪み量との差が少なくなるため、形状記憶合金アクチュエータの付勢力が相対的に減少する。したがって、形状記憶合金ワイヤに通電して被駆動体を駆動する場合の駆動負荷を相対的に低減することができる。
【0008】
請求項4に記載の発明では、請求項3に記載の駆動モジュールにおいて、前記一定温度Tw0での、前記形状記憶合金アクチュエータに発生する温度上昇時の変態の歪み量と、前記形状記憶合金ワイヤの温度下降時の変態の歪み量とが等しく、かつ、前記形状記憶合金アクチュエータの温度上昇時における変態の線形領域の下限温度と、前記形状記憶合金ワイヤの温度下降時における変態の線形領域の下限温度とが等しい構成とする。
この発明によれば、一定温度Tw0以下の変態の線形領域において、形状記憶合金ワイヤの温度下降時の変態の歪み量と、形状記憶合金アクチュエータの温度上昇時の変態の歪み量とが一致するので、形状記憶合金アクチュエータの温度上昇時の変態の歪み量が上回る場合に比べて、形状記憶合金アクチュエータの突起部に対する付勢力をさらに低減し、過不足なく発生することができる。したがって、形状記憶合金ワイヤに通電して被駆動体を駆動する場合の駆動負荷をより低減することができる。
【0009】
請求項5に記載の発明では、請求項1〜4のいずれかに記載の駆動モジュールにおいて、前記形状記憶合金アクチュエータは、前記駆動方向に沿って圧縮して取り付けられた圧縮コイルばねからなり、前記一端が、前記突起部において前記形状記憶合金ワイヤの係止位置に対向する位置に当接された構成とする。
この発明によれば、形状記憶合金アクチュエータが形状記憶合金ワイヤの係止位置に対向する位置に当接されるので、形状記憶合金ワイヤの合力と形状記憶合金アクチュエータからの付勢力とが、略一直線上に作用しあうため、形状記憶合金ワイヤの駆動力による被駆動体へのモーメントを低減することができるので、安定した駆動を行うことができる。
また、形状記憶合金アクチュエータとして、引っ張り形状記憶合金ばねを用いる場合に比べて、形状記憶合金アクチュエータの配置が容易となり、小型化しやすくなる。
【0010】
請求項6に記載の発明では、請求項1〜5のいずれかに記載の駆動モジュールにおいて、前記形状記憶合金アクチュエータは、前記駆動方向において、前記平行板ばね対の間に配置された構成とする。
この発明によれば、形状記憶合金アクチュエータが、駆動方向において平行板ばね対の間に配置されるので、形状記憶合金アクチュエータが駆動方向において突出しないため、コンパクトな装置を構成することができる。
【0011】
請求項7に記載の発明では、電子機器において、請求項1〜6のいずれかに記載の駆動モジュールを備える構成とする。
この発明によれば、駆動モジュールを備えるので、請求項1〜6のいずれかに記載の発明と同様の作用を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明の駆動モジュールおよびそれを備える電子機器によれば、平行板ばね対によって被駆動体を駆動方向に沿って支持することができ、環境温度の上昇に伴って付勢力が増大する形状記憶合金アクチュエータによって形状記憶合金ワイヤを伸長させることができるため、高温環境下でも良好な駆動を行うことができ、小型化が可能となるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下では、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。すべての図面において、実施形態が異なる場合であっても、同一または相当する部材には同一の符号を付し、共通する説明は省略する。
【0014】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係る駆動モジュールについて説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る駆動モジュールの基板への取り付け状態を説明するための模式的な斜視分解図である。図2は、本発明の第1の実施形態に係る駆動モジュールの概略構成を示す模式的な斜視分解図である。図3(a)は、図1のA視平面図である。図3(b)は、図3(a)の模式的なB−B断面図である。図4は、本発明の第1の実施形態に係る駆動モジュールの組立状態の内部構成を示す模式的な斜視図である。図5は、図4におけるC−C線に沿う断面図である。図6は、本発明の第1の実施形態に係る駆動モジュールに用いる被駆動体の一部を示す模式的な斜視図である。図7(a)、(b)は、それぞれ、図6におけるD視の平面図、およびE視の裏面図である。図8(a)は、本発明の第1の実施形態に係る駆動モジュールに用いるモジュール枠の模式的な斜視図である。図8(b)は、図8(a)におけるF視の裏面図である。図9は、本発明の第1の実施形態に係る駆動モジュールに用いる板ばね部材の平面図である。図10は、本発明の第1の実施形態に係る駆動モジュールに用いるモジュール下板の模式的な斜視図である。図11は、本発明の第1の実施形態に係る駆動モジュールに用いる給電部材の平面図である。図12は、本発明の第1の実施形態に係る駆動モジュールに用いるカバーの裏面図である。図13は、本発明の第1の実施形態に係る駆動モジュールに用いる形状記憶合金ワイヤ、形状記憶合金アクチュエータの温度歪み特性を示す模式的なグラフである。横軸は形状記憶合金の温度T、縦軸は歪みを表す(図15、16も同じ)。
なお、一部の図面では見易さのため、例えば、レンズユニット12などの構成部材を適宜省略して図示している。
【0015】
本実施形態の駆動モジュール1は、図1に示すように、全体として箱型に形成されている。この駆動モジュール1は、組み立てて完成されたものが、電子機器などに設けられ、駆動モジュール1に制御信号や電力を供給する基板2上に嵌め込んだり、接着したりして固定することができる。
基板2の上面には、後述する駆動モジュール1の給電部材と接続されて電力を供給する一対のランド部3、および撮像素子30が設けられている。
【0016】
駆動モジュール1は、図1、2に示すように、レンズ枠4(被駆動体)、レンズユニット12(被駆動体、図1参照)、モジュール枠5(支持体)、平行板ばね対をなす上板ばね6および下板ばね7、モジュール下板8(支持体)、給電部材9、形状記憶合金(Shape Memory Alloy、以下、SMAと略称する)ワイヤ10、カバー11、および圧縮コイルばね40(形状記憶合金アクチュエータ)を主な構成部材とするものであって、これら構成部材が一体に積層されることで1つのアクチュエータを構成する。
これらの構成部材の組立状態では、図3(b)に示すように、レンズユニット12が螺合されたレンズ枠4は、モジュール枠5の内方に挿入され、上板ばね6、下板ばね7は、これらレンズ枠4とモジュール枠5とを図示上下方向から挟持した状態で、かしめにより固定され、これらの図示下方側からモジュール下板8、給電部材9が、この順に積層されて、モジュール枠5の下方から、かしめによりそれぞれ共に固定され、これらの積層体を上方側から覆うカバー11が、モジュール下板8に固定されてなる。
また、圧縮コイルばね40は、カバー11とレンズ枠4との間に圧縮状態で保持されている。
【0017】
なお、図中の符号Mは、レンズユニット12の光軸に一致する駆動モジュール1の仮想的な軸線であり、レンズ枠4の駆動方向を示している。以下では、説明の簡単のため、分解された各構成部材の説明においても、組立時の軸線Mとの位置関係に基づいて、位置や方向を参照する場合がある。例えば、構成部材に明確な円、円筒面が存在しない場合でも、誤解のおそれのない限り、軸線Mに沿う方向を、単に軸方向、軸線Mを中心とする円の径方向、周方向を、単に径方向、周方向、あるいは軸線Mに対する径方向、周方向と称する場合がある。
また、上下方向は、特に断らない限り、軸線Mを鉛直方向に配置し、駆動モジュール1の取付面が鉛直下方となる場合の配置における上下方向を指すものとする。
【0018】
これら構成部材の中で、レンズ枠4は、図2、図6に示すように全体として筒状に形成されたものであって、その中央を貫通し、軸線Mに同軸に形成された筒状の収容部4Aの内周面4Fに雌ネジが形成されている。そして、収容部4Aには、適宜のレンズまたはレンズ群を、外周部に雄ネジが形成された鏡筒に保持したレンズユニット12(図3(b)、図5参照)を螺合して固定できるようになっている。
レンズユニット12がレンズ枠4に固定された状態で、レンズユニット12およびレンズ枠4は、柱状体の被駆動体を構成している。
レンズ枠4の外壁面4Bには周方向に90度の角度をあけて径方向外方に向けて突出する突出部4Cが、軸方向に延ばして設けられ、これら各突出部4Cの上端部、下端部およびその近傍において、軸線Mに直交する平面からなる端面4a、4bが形成されている。端面4a、4b上には、軸線Mに沿う上方および下方に向けてそれぞれ突出する上側固定ピン13A、下側固定ピン13Bが、それぞれ4本ずつ設けられている。
上側固定ピン13Aは上板ばね6を、下側固定ピン13Bは下板ばね7を、それぞれ保持するためのものである。
【0019】
上側固定ピン13Aおよび下側固定ピン13Bの平面視の位置は、それぞれ異なっていてもよいが、本実施形態では、軸線Mに平行な4本の軸線にそれぞれ同軸となる位置関係に配置されている。このため、上板ばね6、下板ばね7における、上側固定ピン13A、下側固定ピン13Bの挿通位置は、それぞれ共通化されている。
また、上側固定ピン13Aおよび下側固定ピン13Bの径方向の各中心位置は、軸線Mからの距離が異なっていてもよいが、本実施形態では、同一円周上に配置されている。このため、それぞれの中心位置は正方格子状に配置されている(図7(a)、(b)参照)。
【0020】
レンズ枠4の径方向外側には、1つの突出部4Cの近傍の下端側から、径方向外方に突出するようにガイド突起4D(突起部)が設けられている。ガイド突起4Dの突出方向は、各上側固定ピン13Aおよび各下側固定ピン13Bの軸線Mを中心とする周方向の角度位置とは、90度の整数倍から角度θ(ただし、θは鋭角)だけずらされた位置関係に設定される。すなわち、ガイド突起4Dが、正方形の対角線に沿うように配置されたとき、各上側固定ピン13Aおよび各下側固定ピン13Bは、すべて正方形の対角線から一定角度θだけずれた位置に配置されるようになっている。
【0021】
ガイド突起4Dの先端には、平面視で直角二等辺三角形状の先端鍵部4D1が設けられ、後述するカバー11の内側の角部に沿って上下移動可能に配置されている。図3(b)、図4に示すように、組立状態では、ガイド突起4Dの下面には、SMAワイヤ10が下方から係止されている。
また、図3(b)に示すように、ガイド突起4Dの上面である突起上面4dの先端側には、係止突起4fが設けられている。係止突起4fの位置は、SMAワイヤ10の係止位置に対して軸線Mに対する径方向にずれていてもよいが、本実施形態では、SMAワイヤ10の係止位置と略一致されている。
係止突起4fの外径は、圧縮コイルばね40の内周部に挿入可能であり、基端部では圧縮コイルばね40の内周部に略内接するような大きさとされる。これにより、係止突起4fに、圧縮コイルばね40を上方から挿入することで、圧縮コイルばね40の端部を突起上面4d上に当接させた状態で、圧縮コイルばね40を軸線Mに対する周方向に位置決めすることが可能となっている。
【0022】
また、図6、図7(a)、(b)に示すように、レンズ枠4の外壁面4Bの下部に沿って、各突出部4Cの側部から周方向に延ばされた突片状の度当り部4Eが設けられている。ただし、ガイド突起4Dを近傍に有する突出部4Cの度当り部4Eは、ガイド突起4Dの基端部を兼ねている。
各度当り部4Eはその上面に平滑な度当り面4eを有し、度当り面4eの軸方向の位置は、レンズ枠4が軸線Mに沿って、上方(図3(b)および図5の矢印(イ)方向)に一定距離以上に移動しようとした際に、後述するモジュール枠5の度当り受け部5E(図8(b)参照)に当接する位置に設定される。
また、レンズ枠4は、本実施形態では、熱かしめまたは超音波かしめが可能な熱可塑性樹脂、例えばポリカーボネート(PC)、液晶ポリマー(LCP)樹脂などにより一体成形されている。
【0023】
モジュール枠5は、図2、図8(a)、(b)に示すように、平面視の外形が全体として略矩形状に形成され、かつその中央部に、軸線Mに同軸に形成された貫通孔からなる収容部5A(筒状部)が形成された、筒状の部材であって、この収容部5A内にレンズ枠4が収容される。
モジュール枠5の上部および下部の四隅には、軸線Mに直交する平面からなる端面5a、5bが形成され、端面5aから上方に向けて上側固定ピン14Aが、また端面5bから下方に向けて下側固定ピン14Bが、それぞれ4本ずつ設けられている。
上側固定ピン14Aは上板ばね6を、下側固定ピン14Bは下板ばね7、モジュール下板8、給電部材9を、それぞれ保持するためのものである。
端面5a、5bの間の距離は、レンズ枠4の端面4a、4bの間の距離と同一距離に設定されている。
【0024】
モジュール枠5の一隅の下部には平面視の溝幅がレンズ枠4のガイド突起4Dに軸方向に移動可能に嵌合する大きさを有する切欠き5Bが形成されている。この切欠き5Bは、レンズ枠4をモジュール枠5内に下方から挿入して収容した状態で、レンズ枠4のガイド突起4Dを貫通させ、ガイド突起4Dの先端鍵部4D1をモジュール枠5の径方向外部に突出させるとともに、レンズ枠4の周方向の位置決めを行うためのものである。
【0025】
本実施形態では、このような位置に切欠き5Bを設けているため、図8(b)に示すように、切欠き5B近傍の下側固定ピン14Bは、切欠き5Bを避けて軸線Mと外形の隅部の交点である点Q1とを結ぶ線から離れた位置に形成されている。これに対して、他の3本の下側固定ピン14Bは、それぞれ軸線Mと外形の隅部の交点とを結ぶ線上、もしくはこの線により近接して設けられ、モジュール枠5の外形に沿うL字状をなして配置されている。したがって、4本の下側固定ピン14Bは、平面視で非対称な位置に配置されている。
一方、上側固定ピン14Aの平面視の位置は、下側固定ピン14Bの配置と異なっていてもよいが、本実施形態では、それぞれ軸線Mに平行な4本の軸線にそれぞれ同軸となる位置関係に配置されている。このため、上板ばね6、下板ばね7における、上側固定ピン14A、下側固定ピン14Bの挿通位置は、それぞれ共通化されている。
【0026】
そして、図8(b)に示すように、平面視において、モジュール枠5の側面の交点をQ1、Q2、Q3、Q4とすると、各上側固定ピン14A、各下側固定ピン14Bの軸中心は、それぞれ点Q1、Q2、Q3、Q4の近傍にあって、かつ、点Q1、Q2、Q3、Q4と軸線Mとを結ぶ線分K1,K2、K3、K4の線上または近傍に配置されている。すなわち、各上側固定ピン14A、各下側固定ピン14Bの軸中心と軸線Mとを結ぶ線分k1、k2、k3、k4は、線分K1,K2、K3、K4と重なるか、30度以下程度の浅い角度で交差されている。
【0027】
また、図8(a)に示すように、モジュール枠5の切欠き5Bに隣接する2つの隅部には、切欠き5Bが設けられた隅部と同方向側の側面において、SMAワイヤ10を保持するワイヤ保持部材15A、15B(図2、4参照)を取り付けるための一対の係止溝5Cが設けられている。本実施形態では、ワイヤ保持部材15Aは、駆動モジュール1から給電部材9の一対の端子部9Cが突出される側の側面に設けられ、ワイヤ保持部材15Bは、駆動モジュール1から給電部材9の一対の端子部9Cが突出されない側の側面に設けられている。
ワイヤ保持部材15A、15Bは、端部にSMAワイヤ10の端部をかしめてなる鍵状に形成された金属板などの導電性部材であり、係止溝5Cに側方から嵌合させることで、SMAワイヤ10の端部を位置決めして保持するものである。
ワイヤ保持部材15A、15Bは、図4に示すように、SMAワイヤ10のかしめ位置と反対側に片状の端子部15aを備え、モジュール枠5に対する取付状態において、端子部15aがモジュール枠5の下方に積層されたモジュール下板8の下方にわずかに突出されるようになっている。
また、一対のワイヤ保持部材15A、15Bによって両端が保持されたSMAワイヤ10は、モジュール枠の切欠き5Bから突出されたレンズ枠4のガイド突起4Dの先端鍵部4D1に下方から係止され、SMAワイヤ10の張力により、先端鍵部4D1を介して、レンズ枠4を上方に付勢している。
【0028】
モジュール枠5の収容部5A内には、図8(a)、(b)に示すように、内壁面5Dから径方向外側に向かい、軸方向には下端側から上端側の中間部まで形成された凹部である度当り受け部5Eが、レンズ枠4の各度当り部4Eを下方から挿入できるような形状に設けられている。ただし、ガイド突起4Dを兼ねる度当り部4Eに対する度当り受け部5Eは、切欠き5Bの溝底部によって兼用されている。
度当り受け部5Eは、軸方向の下方側に、度当り部4Eの度当り面4eを当接可能な受け面5E1を有している。これにより、レンズ枠4がその軸線Mに沿い上方に所定距離だけ移動すると、各度当り受け部5Eの受け面5E1が、それぞれ各度当り部4Eの度当り面4eと当接されるため、レンズ枠4の上方への移動が規制される。すなわち、度当り受け部5Eは、レンズ枠4の上方への移動範囲を規制する位置規制部を構成し、度当り部4Eは、モジュール枠5の位置規制部に当接可能に設けられた被位置規制部を構成する。
なお、本実施形態では、度当り受け部5Eの平面視の形成位置は、図8(b)に示すように、収容部5Aの中心(軸線M)から、モジュール枠5の矩形状外形の隅部に向かう線分K1、K2、K3、K4を含む位置に設けられている。
【0029】
このような構成により、例えば、駆動モジュールを落下させるなどして、外部から大きな衝撃が加えられたとしても、レンズ枠4は、度当り受け部5Eの受け面5E1の位置を超える上方には移動できないようになっている。
このような規制位置は、本実施形態では、レンズ枠4がカバー11に衝突せず、かつ、上板ばね6、下板ばね7、圧縮コイルばね40の変形が、例えば、弾性限界や巻線の密着長さなどの変形限界より小さくなるように設定している。
また、度当り受け部5Eが、収容部5Aの中心から、モジュール枠5の矩形状外形の隅部に向かう線分K1、K2、K3、K4を含む位置に設けられているため、モジュール枠5において、収容部5Aから矩形状外形の隅部までの径方向の領域を有効利用することができる。
そのため、度当り受け部5Eをモジュール枠5の内側に設けても、モジュール枠5の外形を増大させないようにすることができるので、小型化、軽量化が可能となる。
【0030】
また、モジュール枠5は、本実施形態ではレンズ枠4と同様に、熱かしめまたは超音波かしめが可能な熱可塑性樹脂、例えばポリカーボネート(PC)、液晶ポリマー(LCP)樹脂などにより一体成形されている。
【0031】
モジュール枠5およびモジュール枠5内に挿入されたレンズ枠4のそれぞれの上部と下部には、図5に示すように、モジュール枠5の端面5a、レンズ枠4の端面4aには、上板ばね6が、モジュール枠5の端面5b、レンズ枠4の端面4bには、下板ばね7が、それぞれ積層されている。
本実施形態では、図9に示すように、上板ばね6および下板ばね7は同一形状に打ち抜かれた平板状の板ばね部材であり、例えば、ステンレス(SUS)鋼板などのばね性を有する金属板からなる。
【0032】
上板ばね6(下板ばね7)の形状は、図9に示すように、平面視の外形が、モジュール枠5の上側(下側)の端部と同様な略矩形状とされ、中央部に軸線Mと同軸で、レンズ枠4の内周面4Fよりわずかに大きな円状の開口6C(7C)が形成され、全体としてリング状とされている。
上板ばね6(下板ばね7)の3つの隅部および1つの隅部近傍には、モジュール枠5の隅部および1つの隅部近傍に形成された上側固定ピン14A(下側固定ピン14B)の配置位置に対応して、各上側固定ピン14A(下側固定ピン14B)にそれぞれ挿通可能な4つの貫通孔6B(7B)が設けられている。本実施形態では、図8(b)における点Q2、Q4に対応する隅部に形成された上側固定ピン14A(下側固定ピン14B)を挿通する貫通孔6B(7B)のうち、一方が基準円孔、他方が小判孔とされ、モジュール枠5に対する軸線Mに直交する平面内の位置決めが可能となっている。
【0033】
また、上板ばね6(下板ばね7)には、レンズ枠4に形成された上側固定ピン13A(下側固定ピン13B)の配置位置に対応して、各上側固定ピン13A(下側固定ピン13B)にそれぞれ挿通可能な4つの貫通孔6A(7A)が設けられている。
すなわち、本実施形態では、各貫通孔6A(7A)は、図8(b)における線分K1に対応する直線L1に対して、90度の整数倍から角度θだけずれた位置に形成されている。そして、これら貫通孔6A(7A)が設けられた部分は、開口6C(7C)に沿う円環部6F(7F)によって、周方向に連結されている。
本実施形態では、このような配置として角度θを適切な値に設定することで、貫通孔6A(7A)が位置する軸線Mを中心とした円の円径と、貫通孔6B(7B)が配置される軸線Mを中心とした円の円径との径の差が、角度θが0度となるように配置する場合に比べて、小さくなるようにそれぞれの配置位置を設定することができる。
【0034】
また、開口6C(7C)の径方向外側には、軸線Mを挟んで互いに対角方向に対向する貫通孔6A(7A)の近傍位置から、周方向に略半円弧状に延びる4つのスリット6D(7D)が円環部6F(7F)の径方向外側で、それぞれ、略四分円弧ずつ径方向に重なった状態に形成されている。
これにより、上板ばね6(下板ばね7)の外側の矩形状枠体から、略四分円弧状に延ばされた4つのばね部6E(7E)が、それぞれ1つずつ貫通孔6A(7A)近傍に延ばされた板ばね部材が形成されている。すなわち、矩形状の枠体に対して、円環部6F(7F)が、4本のばね部6E(7F)によって、4箇所で均等に弾性支持される板ばね部材が形成されている。
【0035】
モジュール下板8は、図2に示すように、モジュール枠5の各下側固定ピン14Bを下板ばね7の貫通孔7Bに貫通させるとともに、モジュール枠5内に収容したレンズ枠4の各下側固定ピン13Bを下板ばね7の貫通孔7Aに貫通させた状態で、モジュール枠5との間で、下板ばね7を下方側から挟んで積層し、下板ばね7の矩形状の外形枠をモジュール枠5の端面5bに対して密着状態に固定するものである。
モジュール下板8の形状は、図10に示すように、モジュール枠5の外形と略同様の矩形状外形を有する板状部材であり、中央部に軸線Mを中心とする略円形状の開口8Aが厚さ方向に貫通して形成されている。
そして、開口8Aには、レンズ枠4の各下側固定ピン13Bの配置位置に対応する位置に、径方向外側に向かって延ばされ、下板ばね7を積層させる上面8aから裏面側に厚さ方向に貫通された4つのU字状の逃げ部8dが形成されている。これにより、後述するレンズ枠4のかしめ部との干渉を避けることができるようになっている。
開口8Aの円形部の内径は、下板ばね7の開口7Cの内径と同等もしくはより小さい径とされ、上面8aは、下板ばね7のばね部7E、円環部7Fも突き当て可能な平面を構成している。このため、ガイド突起4Dが、下板ばね7を介して、突き当てられるようになっている。このように、モジュール下板8は突き当て支持部を構成しており、筒状部を構成するモジュール枠5とともに支持体を構成している。
また、モジュール下板8の周縁に位置する各隅部にはモジュール枠5の各下側固定ピン14Bの配置位置に対応して、これら下側固定ピン14Bをそれぞれ挿通させる貫通孔8Cが形成されている。
【0036】
また、モジュール下板8の下面8bには、開口8Aに沿って下方に突出された凸部8Dが形成されている。凸部8Dの端面8cは、基板2に当接させる取付面を構成しており、基板2に対する軸線M方向、すなわち光軸方向に位置決めする位置決めスペーサの機能を有している。凸部8Dの端面8cと下面8bとの間の段差は、下面8bに給電部材9をかしめて組み立てたときに、このかしめ部よりも下方側に突出されるような高さに設定される。
【0037】
モジュール下板8の材質は、本実施形態では、電気絶縁性を有する合成樹脂を採用している。
このため、モジュール下板8は、給電部材9を下板ばね7に対して電気的絶縁状態で固定する絶縁部材となっている。また、端面8cが当接する基板2に対して電気的絶縁状態を保つ絶縁部材ともなっている。
【0038】
給電部材9は、図11に示すように、本実施形態では、それぞれ板状の金属板からなる一対の電極9a、9bからなる。
電極9a、9bは、いずれも、モジュール下板8の外形に沿う略L字状の配線部9Bと、配線部の端部からモジュール下板8の外形の外側に突出する端子部9Cとを備える折れ線状の金属板からなる。そして、それぞれの配線部9Bには、モジュール下板8の下面8bから下方に突出されるモジュール枠5の下側固定ピン14Bのうち、モジュール下板8の外形に沿って隣り合う2つの下側固定ピン14Bを、それぞれ挿通させて、電極9a、9bをモジュール枠5に対して位置決めを行う2つの貫通孔9Aが設けられている。
本実施形態では、図1、図3(a)に示すように、電極9a、9bの端子部9Cは、モジュール枠5において、ワイヤ保持部材15Aが取り付けられた側の側面から径方向外方に並列して突出するように設けられている。
このため、電極9aには、貫通孔9Aと端子部9Cとの間の配線部9B上の側面に、ワイヤ保持部材15Aの端子部15aを電気的に接続するために凹状に切り欠かれた導電接続部9Dが設けられている。
また、電極9bには、2つの貫通孔9A間の配線部9B上の側面に、ワイヤ保持部材15Bの端子部15aを電気的に接続するために凹状に切り欠かれた導電接続部9Dが設けられている。
それぞれの導電接続部9Dを、端子部15aと電気的に接続する手段としては、例えば、半田付けまたは導電性接着剤による接着を採用することができる。
【0039】
カバー11は、図1、図12に示すように、上面11Eの外縁部から下方側に、モジュール枠5を外嵌可能に覆う側壁部11Dが延ばされ、下方側に矩形状の開口11Cが形成された部材であり、上面11Eの中央部に軸線Mを中心とした円状の開口11Aが設けられている。開口11Aの大きさは、レンズユニット12を出し入れ可能な大きさとされる。
また、上面11Eの裏面側には、図12に示すように、開口11Aの周方向においてレンズ枠4の各上側固定ピン13Aの配置位置に対応する位置に、後述するかしめ部16との干渉を避けるための4つのU字状の凹部11Bが形成されている。
凹部11Bの深さは、度当り面4eと受け面5E1とが、当接した位置でも、かしめ部16とカバー11とが接触しない深さに設定する。凹部11Bは、上面11Eの上方に張り出す凹部としてもよいが、本実施形態では、凹部11Bの肉厚を薄肉として、上面11Eの外表面を平面としている。
【0040】
上面11Eの裏面側の1つの隅部には、組立状態で、図3(b)に示すように、モジュール枠5に取り付けられた上板ばね6の表面と同じ高さとなる位置に、圧縮コイルばね40の端部を支持する台状のコイルばね支持部11a(支持部)が形成されている。
そして、端面11a上において、組立状態でレンズ枠4の係止突起4fに対応する位置に、開口11C側に突出された係止突起11bが形成されている。
係止突起11bの外径は、圧縮コイルばね40の内周部に挿入可能であり、基端部では圧縮コイルばね40の内周部に略内接するような大きさとされる。これにより、係止突起11bに、圧縮コイルばね40を下方から挿入することで、圧縮コイルばね40の端部をコイルばね支持部11aに当接させた状態で、圧縮コイルばね40を軸線Mに対する周方向に位置決めすることが可能となっている。
【0041】
圧縮コイルばね40は、SMAからなる素線をコイル状に加工して熱処理することにより、高温側でばね長が伸長した形状が記憶されたSMAアクチュエータである。
ここで、図13を参照して、圧縮コイルばね40に用いるSMAの温度歪み特性について、SMAワイヤ10に用いるSMAの温度歪み特性とともに説明する。
駆動モジュール1の動作を保証する使用温度範囲tmin〜tmaxの間で環境温度が変化したときの、無通電時のSMAワイヤ10、および圧縮コイルばね40の温度がTminからTmax(ただし、Tmin<Tmax)とする。ここで、温度Tmaxは、駆動モジュール1に対する最大使用温度がtmaxのとき、駆動モジュール1内部での熱伝導や発熱などによる温度上昇を考慮したSMAワイヤ10、圧縮コイルばね40に対する実質的な使用時の最大環境温度であり、一般に、Tmax≧tmaxである。以下の説明では、簡単のため、誤解のおそれのない限り、Tmaxを単に最大使用温度と称する。また、Tminについても同様に単に最小使用温度と称する。
最大使用温度Tmaxは、形状記憶合金ワイヤの温度下降時の変態領域内の温度から選ばれた一定温度Tw0となっている。最大使用温度Tmaxとしては、例えば、80℃を採用することができる。
【0042】
SMAワイヤ10の温度歪み特性は、温度上昇時には、曲線αABCDβで表される変化を示す。各点の温度Tα、TA、TB、TC、TD、Tβの大きさは、この順に増大している。
歪みの大きさは、低温側で変態開始前の状態では直線αAのように一定の傾きで微増し、温度上昇時の変態開始温度TAからより大きな変化率で温度TBまで増大し、温度TBからTCまでの間では温度TBでの傾きを保持する線形の変化を示し、温度TCからTDの間で、変化率が徐々に減少し、温度TDからTβで一定の傾きで微増する変化を示す。ここで、TAは、次式を満足するものとする。
【0043】
TA≧Tmax ・・・(1)
【0044】
このため、SMAワイヤ10を通電してSMAワイヤ10の温度が温度TAを越えると、変態が開始され収縮していく。したがって、図13の曲線ABCDβのような動作は、SMAワイヤ10に通電して、発熱させることによって実現される。
TA<Tmaxであると、SMAワイヤ10に通電する前にSMAワイヤ10が収縮するため正常な動作を保証できなくなる。
【0045】
また、SMAワイヤ10の温度下降時の温度歪み特性は、曲線βDdcibaαで表される変化を示す。各点の温度Tβ、TD、Td、Tc、Ti、Tb、Ta、Tαの大きさは、この順に減少している。ここで、次式の関係を満足する。
【0046】
Ti=Tmax ・・・(2)
Ta≦TA ・・・(3)
【0047】
歪みの大きさは、高温側で温度Tβから温度Tdの間では、直線βDと同一の傾きで微減し、温度下降時の変態開始温度Td(Tws)からより大きな変化率で温度Tcまで減少し、温度TcからTbまでの間では温度Tcでの傾きを保持する線形の変化を示し、温度Tbから温度下降時の変態終了温度Ta(Twe)の間で、変化率が徐々に減少し、温度TaからTαで直線Aαと同一の傾きで微減する変化を示す。
このようなSMAワイヤ10は、例えば、NiとTiとをおよそ1:1の割合で含むNi−Ti合金などによって製作することができる。
【0048】
本実施形態の圧縮コイルばね40は、SMAワイヤ10と同様のSMAを用いて、変態開始温度を低温側にずらした材料から構成される。例えば、Ni−Ti合金を用いる場合、Niの含有率を増大させることで、変態開始温度を低温側にずらすことができる。
本実施形態では、圧縮コイルばね40の温度上昇時の温度歪み特性は、曲線αefjghdβで表される変化を示す。各点の温度Tα、Te、Tf、Tj、Tg、Th、Td、Tβの大きさは、この順に増大している。ここで、温度Tjは、SMAワイヤ10の温度Ti(Tw0)における歪み量と同じ歪み量が得られる温度である。
歪みの大きさは、低温側で変態開始前の状態では直線αeのように直線αAと同じ傾きで微増し、温度上昇時の変態開始温度Te(Tss)からより大きな変化率で温度Tfまで増大し、温度TfからTgまでの間では温度Tfでの傾きを保持する線形の変化を示し、温度Tgから温度上昇時の変態終了温度Th(Tse)の間で、変化率が徐々に減少し、温度ThからTβまで、直線Dβと同じ傾きで微増する変化を示す。
ここで、温度上昇時の変態開始温度Teは、SMAワイヤ10の温度下降時の変態終了温度Taよりも低い温度としている。また、温度上昇時の変態終了温度Thは、SMAワイヤ10の温度下降時の変態開始温度Tdよりも低い温度としている。
したがって、次式を満足する。
【0049】
Te<Ta ・・・(4a)
Th<Td ・・・(4b)
【0050】
また、本実施形態では、曲線abcdは、曲線efghに対して、全体として高温側に離間させている。このため、次式を満足する。
【0051】
Tj<Ti ・・・(4c)
Ta<Th ・・・(4d)
【0052】
ここで、式(4a)、(4d)は、Te、Ta、Thが、それぞれTss、Twe、Tseに対応するため、上記条件式(a)の等号を除いた関係に対応する。また、式(4c)は、Tj、Tiが、それぞれTs0、Tw0に対応するため、上記条件式(b)の等号を除いた関係に対応する。
なお、図13では、一例として、Th=Tmaxとなるように描いているが、Th≧Tmax、あるいは、Tg≧Tmaxなどの条件が好ましい。
例えば、Th<Tmaxとすると、Tmaxの近傍では歪みの変化率が格段に小さくなり、圧縮コイルばね40のばね長の伸びがほとんどなくなって、圧縮コイルばね40のばね力をあまり増大させられなくなり、この領域では効率よくSMAワイヤ10を伸長させることができなくなる。
【0053】
また、SMAワイヤ10、圧縮コイルばね40は、いずれも温度上昇時、温度下降時に変態の線形領域を有している。すなわち、温度Tb、Tcは、それぞれSMAワイヤ10の温度下降時の線形領域の下限温度および上限温度になっており、温度Tf、Tgは、それぞれ圧縮コイルばね40の温度上昇時の線形領域の下限温度および上限温度になっている。本実施形態では、次式の関係を満足する。
【0054】
Tg≦Tb ・・・(5)
【0055】
また、圧縮コイルばね40の温度下降時の温度歪み特性は、曲線βhHGFEαで表される変化を示す。各点の温度Tβ、Th、TH、TG、TF、TE、Tαの大きさは、この順に減少している。ここで、次式の関係を満足する。
【0056】
TH<Th ・・・(6)
TE<Te ・・・(7)
【0057】
歪みの大きさは、高温側で温度Tβから温度THの間では、直線βhと同一の傾きで微減し、温度下降時の変態開始温度THからより大きな変化率で温度TGまで減少し、温度TGからTFまでの間では温度TGでの傾きを保持する線形の変化を示し、温度TFから温度下降時の変態終了温度TEの間で、変化率が徐々に減少し、温度TEからTαで直線eαと同一の傾きで微減する変化を示す。
【0058】
圧縮コイルばね40は、ガイド突起4Dの係止突起4f、カバー11の係止突起11bをそれぞれ内周部に挿入可能な内径を有しており、係止突起4f、11bが両端部に挿入された状態で、ガイド突起4Dの突起上面4dと、カバー11のコイルばね支持部11aとの間に配置されている。
本実施形態の圧縮コイルばね40の自然長は、圧縮コイルばね40の温度が温度上昇時の変態開始温度Te以下の低温側の場合、組み付け状態でのコイルばね支持部11a、突起上面4dの間の距離の最大値Hmax(図3(b)参照)以下の寸法とされる。
この場合、圧縮コイルばね40の自然長は、最小使用温度Tminのとき、係止突起4f、11bから外れない長さであれば、Hmaxよりいくら短くてもよいが、ガタが大きすぎて組み付け状態が不安定にならない程度の長さにすることが好ましい。
また、このような低温側の温度では、SMAが例えばNi−Ti合金の場合、マルテンサイト相になり、弾性係数が著しく低下し、仮に、取付後に圧縮を受けてもほとんどばね力は発生しないため、Hmaxより長い設定としてもよい。
一方、高温側の自然長は、最大使用温度Tmaxのとき、伸長してHmax以上となり、組み付け状態において、突起上面4d、コイルばね支持部11aの間で圧縮され、これにより、レンズ枠4の端面4bが上面8aに当接するまでSMAワイヤ10を伸長せしめるようなばね力が発生する長さに形状記憶させておく。
係止突起4fは、SMAワイヤ10の係止位置に重なる位置に設けられているため、圧縮コイルばね40からの付勢力の作用点は、SMAワイヤ10からの付勢力の作用点に対して、軸線Mに平行な略同一直線上に位置している。
【0059】
このような構成の駆動モジュール1は、以下の手順で組み立てられる。
まず、モジュール枠5の収容部5A内に下方からレンズ枠4を挿入し、モジュール枠5の各端面5aと、レンズ枠4の端面4aとを同一高さに揃える。そして、モジュール枠5の各上側固定ピン14Aとレンズ枠4の各上側固定ピン13Aとに、上板ばね6の各貫通孔6A、6Bをそれぞれ挿通する。
その後、上板ばね6の各貫通孔6A、6Bを貫通して上方に突き出された各上側固定ピン13A、14Aの先端部を、図示しないヒータチップにより熱かしめして、それぞれかしめ部16、17(図3(b)、図4、図5参照)を形成する。なお、超音波かしめを用いる場合には、ヒータチップに代えて超音波振動子を用いる(以下の熱かしめも同様)。
次に、レンズ枠4の各下側固定ピン13Bに、下板ばね7の各貫通孔7Aをそれぞれ挿通する。この際、同時にモジュール枠5の各下側固定ピン14Bに、下板ばね7の各貫通孔7B、モジュール下板8の各貫通孔8C、給電部材9の各貫通孔9Aを挿通する。その後、下板ばね7の各貫通孔7Aを貫通して下方に突き出された各下側固定ピン13Bの先端部を、ヒータチップにより熱かしめして、かしめ部18(図5参照)を形成する。モジュール下板8には、逃げ部8dが形成されているため、かしめ部18は、モジュール下板8とは接触しない。
次に、これら貫通孔7B、8C、9Aを貫通して下方に突き出された各下側固定ピン14Bの下端部を、ヒータチップにより熱かしめして、かしめ部19(図3(b)参照)を形成する。
【0060】
このようにして、レンズ枠4とモジュール枠5の両端部に、上板ばね6、下板ばね7、モジュール下板8、給電部材9が積層固定される。このとき、無負荷状態では、互いに対向する上板ばね6、下板ばね7の各ばね部6E、7Eは、変形を起こさないため、互いに平行になっている。そして、端面4bに密着された下板ばね7の円環部7Fは、モジュール下板8の上面8aに密着して支持されている。
【0061】
次に、SMAワイヤ10が先端に取り付けられた一対のワイヤ保持部材15A、15Bを、モジュール枠5の2箇所の係止溝5Cにそれぞれ係止させ、例えば、嵌合や接着などの手段によりモジュール枠5に保持、固定する。その際、SMAワイヤ10の中央部を、ガイド突起4Dの先端鍵部4D1に係止させ、かつこの先端鍵部4D1を下側から支持するように掛け渡す。
このとき、ワイヤ保持部材15A、15Bの各端子部15aは、モジュール下板8の下方に突出され、それぞれ、モジュール下板8に固定された給電部材9である電極9a、9bの導電接続部9Dに係止されるか、もしくは近接して配置されている。
そこで、例えば、半田付けや導電性接着剤などを用いて、各端子部15aを、それぞれ導電接続部9Dに対して電気的に接続させる。
【0062】
次に、突起上面4dに、圧縮コイルばね40を外挿し、圧縮コイルばね40の一端を突起上面4dに当接させる。この状態で、モジュール枠5の上方から、カバー11を被せる。これにより、圧縮コイルばね40の他端の内周部に係止突起11bが挿入され、圧縮コイルばね40は、突起上面4dとコイルばね支持部11aとの間に配置される。したがって、本実施形態では、圧縮コイルばね40は、上板ばね6と下板ばね7との間に配置されている。
次に、側壁部11Dとモジュール下板8とを接合する。例えば、側壁部11Dに係合爪などを設けてはめ込みによって接合したり、側壁部11Dとモジュール下板8とを接着、または溶着して接合したりする。
これにより、本実施形態の圧縮コイルばね40は、温度上昇時の変態開始温度Te以下では圧縮されずに組み付けられており、ばね力がガイド突起4Dに付勢されない状態となっている。また、自然長をより長めに設定することで圧縮して組み付ける場合でも、弾性係数が著しく低いため、ほとんどばね力が発生しない状態で組み付けられることになる。
このため、圧縮コイルばね40をばね力がより大きい状態で、圧縮して組み付ける場合に比べて組み立てが容易となっている。
このとき、かしめ部16、17は、それぞれカバー11の上面11Eの裏面に対して、離間された状態にある。
以上で、駆動モジュール1の組み立てが完了する。
【0063】
次に、必要に応じて、駆動モジュール1の端子部9Cを、基板2上のランド部3(図1参照)に位置合わせして、駆動モジュール1を基板2上に取り付ける。そして、半田付けまたは導電性接着材などの手段によって、端子部9Cをランド部3に対して電気的に接続する。基板2には予め、各かしめ部19の位置に対応して4箇所の逃げ孔2aが設けられており、このため各かしめ部19は、基板2と干渉しないようになっている。
駆動モジュール1の基板2上への取り付けは、接着、嵌め込みなどの固定手段が採用することができる。
基板2は、駆動モジュール1に付属する独立した部材であってもよいし、電子機器等に接続、配置された部材であってもよい。
【0064】
次に、カバー11の開口11Aを通じてレンズ枠4内にレンズユニット12を螺合して取り付ける。
このように、レンズユニット12を最後に取り付けているのは、組立作業により、レンズユニット12のレンズが汚れたり、ゴミなどが付着したりしないためであるが、例えば、駆動モジュール1をレンズユニット12が取り付けられた製品状態で出荷する場合や、カバー11の開口11Aをレンズユニット12の外形より小さくしたい場合、例えば開口絞りを兼用するような場合などには、あらかじめレンズ枠4に螺合しておいて、上記の組み立てを行うこともできる。
【0065】
次に、駆動モジュール1の動作について説明する。
図14は、本発明の第1の実施形態に係る駆動モジュールの動作を説明するための図3(a)のB−B線に沿う模式的な断面図である。
【0066】
駆動モジュール1は、端子部9Cに電力が供給されず、駆動方向への外力が作用しない状態では、環境温度に応じてSMAワイヤ10が伸長されている。すなわち、SMAワイヤ10、圧縮コイルばね40に対する環境温度が、それぞれ温度上昇時の変態開始温度TA、Teより低い場合には、レンズ枠4には外力が作用しないため、図3(b)に示すように、レンズユニット12が取り付けられたレンズ枠4の端面4bが、円環部7Fを介して、モジュール下板8の上面8aに突き当てられ、上板ばね6、下板ばね7が変形されない状態となっている。
これにより、レンズ枠4が、駆動の基準位置に位置づけられる。この基準位置は、本実施形態の場合、撮像素子30に対するレンズユニット12の焦点位置が無限遠となるように設定されている。
以下では、まず、駆動モジュール1内の環境温度が、この状態を保つ場合の動作を説明する。
【0067】
端子部9Cから給電部材9に電力を供給すると、電極9a、ワイヤ保持部材15A、SMAワイヤ10、ワイヤ保持部15b、電極9bは、それぞれ導通されているため、SMAワイヤ10に電流が流れる。これにより、SMAワイヤ10にジュール熱が発生して、SMAワイヤ10の温度が上昇し、SMAワイヤ10の温度上昇時の変態開始温度TAを超えると、SMAワイヤ10が温度上昇時の温度歪み特性に応じた長さに収縮する。
【0068】
これにより、レンズ枠4が、上方(図中の(イ)方向)に移動する。
すなわち、上板ばね6、下板ばね7のばね部6E、7Eが、それぞれ変形し、変形量に応じた弾性復元力が、円環部6F、7Fを介して、レンズ枠4に付勢される。このとき、上板ばね6、下板ばね7は、無負荷状態で互いに平行とされ、各ばね部6E、7Eが軸線M方向に等距離を保って変形するため、平行ばねを構成しており、レンズ枠4は、軸線Mに沿って平行移動することになる。
また、ガイド突起4Dの移動に伴って、圧縮コイルばね40が圧縮され、圧縮量に応じた弾性復元力が、ガイド突起4Dに付勢される。このとき、圧縮コイルばね40からの付勢力の作用点と、SMAワイヤ10からの付勢力の作用点は、軸線Mに平行な略同一直線上に位置するので、レンズ枠4に対する力のモーメントがほとんど発生しないため、上板ばね6、下板ばね7による力に比べて大きな力が作用しても、レンズ枠4の移動姿勢にはほとんど影響しない。ただし、駆動モジュール1内の環境温度は、圧縮コイルばね40の変態開始温度Teより低いため、圧縮コイルばね40が圧縮されても、上板ばね6、下板ばね7の弾性復元力に比べて格段に小さなばね力しか発生しない。
このようにして、レンズ枠4が、軸線Mに沿って平行移動し、これらの弾性復元力がSMAワイヤ10の張力とつり合う位置で、レンズ枠4が停止する。
【0069】
このように、本実施形態では、上板ばね6、下板ばね7によって、摺動負荷が発生する軸方向のガイド部材などを用いることなく、レンズ枠4を正確に軸線M上に沿って移動させることができる。このため、部品点数を削減し、小型化することが可能となっている。
【0070】
また、電力の供給を停止すると、SMAワイヤ10からの放熱により、SMAの冷却時の温度歪み特性にしたがって、伸長変形してゆき、レンズ枠4は、下方(図中の(ロ)方向)のつり合い位置まで移動する。本実施形態では、図3(b)に示すような基準位置に戻る。
このようにして、電力供給量を制御することで、レンズ枠4を軸線M方向に駆動することができる。また、異なる位置に駆動する場合、電力供給を停止し、レンズ枠4を基準位置に戻してから、再度、駆動量に応じた電力を供給することで、SMAワイヤ10が加熱時と冷却時とでヒステリシス特性を有するにも関わらず、異なる位置に正確に駆動させることができる。
【0071】
ところで、駆動モジュール1が、SMAワイヤ10の温度下降時の変態終了温度Ta以上の環境温度Tの下で使用される場合、通電を停止しても、SMAワイヤ10の温度は温度Tより低くならないため、SMAワイヤ10の伸長が停止し、自然放熱では、レンズ枠4を基準位置に戻すことができなくなる。このため、繰り返して駆動を行う場合に、正確な駆動を行うことができなくなる。
例えば、最悪の場合として、T=Tmaxの場合を考える。この場合、図13に示すように、SMAワイヤ10は、より高温側から自然放熱するにつれて、例えば、点D、d、c、iを通る曲線上をこの順に移動するように歪みが変化し、これに応じて温度Tmax時の長さにまで収縮して、停止する。
このとき、圧縮コイルばね40は、点hに示されるように、歪みが最大となり、予め形状記憶された最大のばね長に伸長しているので、圧縮コイルばね40のばね力がガイド突起4Dを介してSMAワイヤ10を伸長させる方向に作用し、SMAワイヤ10の張力と圧縮コイルばね40のばね力とがつり合う位置、すなわち、レンズ枠4を基準位置に移動するまでSMAワイヤ10が伸長される。これにより、環境温度Tが、最大使用温度Tmaxとなっても、SMAワイヤ10の通電停止後に、レンズ枠4を基準位置に復帰させることができる。
このような作用が得られるのは、SMAワイヤ10、圧縮コイルばね40のSMAの温度歪み特性が、式(4a)、(4d)、(4c)の関係を満足することにより、温度Tmax以下の環境温度Tで、SMAワイヤ10の温度下降時の変態の歪み量に比べて、圧縮コイルばね40の温度上昇時の変態の歪み量が大きくなる関係が満足されるためである。
【0072】
レンズ枠4が基準位置に復帰した状態から、さらにSMAワイヤ10に通電すれば、SMAワイヤ10の温度は、Tmax以上に加熱され、温度上昇時の変態開始温度TAを越えると、図13の温度歪み特性に従ってSMAワイヤ10が収縮し、SMAワイヤ10に流れる電流値に応じて、レンズ枠4の駆動を行うことができる。
このとき、圧縮コイルばね40は、環境温度Tmaxにおけるばね長を保持しようとするため、レンズ枠4には圧縮量に応じたばね力が作用し駆動負荷となるが、通電による加熱が継続されることで、SMAワイヤ10の収縮による張力が上回り、レンズ枠4を電流値に応じた位置に駆動することができる。したがって、上記と同様に、駆動を行うことができる。
【0073】
環境温度Tが、Tmaxより小さい場合には、環境温度Tに応じて、圧縮コイルばね40のばね力が、図13の温度歪み特性によって減少する。この場合、SMAワイヤ10の相状態も環境温度Tの変化に比例して低温側の相状態にずれるため、より低荷重で基準位置まで戻すことが可能となり、上記と同様にして、レンズ枠4を基準位置に戻すことができる。
本実施形態では、SMAワイヤ10、圧縮コイルばね40を構成するSMAが変態の線形領域において略同じ傾きを有するため、環境温度が変化しても、圧縮コイルばね40とSMAワイヤ10との間には、相似的な力関係が成り立つ。このため、いずれの温度領域でも、円滑にレンズ枠4を基準位置に戻すことができる。
【0074】
このように、本実施形態によれば、圧縮コイルばね40をSMAで製作し、温度上昇に伴ってばね力が増大する構成とし、圧縮コイルばね40、SMAワイヤ10の温度歪み特性が、条件式(4a)、(4d)、(4c)を満足するため、環境温度がSMAワイヤ10の温度下降時の変態終了温度Taよりも高い場合でも、圧縮コイルばね40のばね力によって、SMAワイヤ10を伸長させ、レンズ枠4を基準位置に戻すことが可能となる。このため、ある程度高温の環境下で、駆動モジュール1を用いたとしても、良好な位置精度を保って、駆動することができる。
【0075】
また、本実施形態では、上板ばね6、下板ばね7は、レンズ枠4の移動方向、移動姿勢を保持するための部材として機能しており、圧縮コイルばね40のみが、環境温度によって基準位置に戻りきらないレンズ枠4を環境温度の上昇に応じて基準位置に戻す機能を備えている。
例えば、圧縮コイルばね40を省略して、上板ばね6、下板ばね7に、レンズ枠4を基準位置に戻す予圧機能を持たせることも考えられるが、この場合、基準位置で、上板ばね6、下板ばね7のいずれかをたわませておく必要があるので、軸線M方向に変形させておくためのスペースが必要になり、駆動モジュール1の厚さが増大してしまう。また、板厚やばね長さはコイルばねに比べて変更の自由度が少ないため、予圧荷重やばね定数をバラツキなく設定することは、困難である。
一方、本実施形態では、圧縮コイルばね40のSMAの温度歪み特性に基づいて、形状記憶させる変形状態の条件を適宜設定することで、圧縮コイルばね40を上板ばね6と下板ばね7との間のスペースに配置しても、圧縮コイルばね40の変形量を容易に設定することができるので、駆動モジュール1をコンパクトに構成することができる。
【0076】
次に、本実施形態の第1変形例について説明する。
図15は、本発明の第1の実施形態の第1変形例に係る駆動モジュールに用いる形状記憶合金ワイヤ、形状記憶合金アクチュエータの温度歪み特性を示す模式的なグラフである。
【0077】
本変形例は、上記第1の実施形態の圧縮コイルばね40に用いるSMAの温度歪み特性のみを図15に示すように変更したものであり、各構成部品の形状や配置は、上記第1の実施形態と同様である。また、図15において図13と共通の符号は、それらを添字とする温度などの量とともに上記第1の実施形態と同様の意味を表すため説明を省略する。以下、上記第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0078】
本変形例の圧縮コイルばね40は、図15に示すように、SMAワイヤ10の温度歪み特性に対して、温度上昇時の変態開始温度Teを低温側にずらし、変態の線形領域の傾きがより小さくなるようなSMAから構成される。
すなわち、本変形例の圧縮コイルばね40の温度上昇時の温度歪み特性は、曲線αef1j1g1h1Dβで表される変化を示す。各点の温度Tα、Te、Tf1、Tj1、Tg1、Th1、TD、Tβの大きさは、この順に増大している。ここで、温度Tj1は、SMAワイヤ10の温度Tiにおける歪み量と同じ歪み量が得られる温度である。
歪みの大きさは、低温側で変態開始前の状態では直線αeのように直線αAと同じ傾きで微増し、温度上昇時の変態開始温度Teからより大きな変化率で温度Tf1まで増大し、温度Tf1からTg1までの間では温度Tf1での傾きを保持する線形の変化を示し、温度Tg1から温度上昇時の変態終了温度Th1(Tse)の間で、変化率が徐々に減少し、変態終了温度Th1からTβまで、直線Dβと同じ傾きで微増する変化を示す。
ここで、変態の線形領域を示す直線f1j1g1の傾きは、SMAワイヤ10の温度上昇時の変態の線形領域を示す直線BCの傾きよりも小さくなっている。そして、次式を満足する。
【0079】
Ta<Th1 ・・・(8)
Tf1<Tb ・・・(9)
Td<Th1 ・・・(10)
Tj1≦Ti=Tmax ・・・(11)
【0080】
ここで、Te、Ta、Th1が、それぞれTss、Twe、Tseに対応するため、上記第1の実施形態と同様に成立する式(4a)と、式(8)とは、上記条件式(a)の等号を除いた関係に対応する。また、式(11)は、Tj1、Tiが、それぞれTs0、Tw0に対応するため、上記条件式(b)に対応する。
【0081】
このため、温度TeからTmaxの間で、圧縮コイルばね40の温度上昇時の歪みの大きさは、SMAワイヤ10の温度下降時の歪み量以上になっており、圧縮コイルばね40によって、SMAワイヤ10を伸長させるばね力を発生させることができるようになっている。
直線f1g1と直線bcとが交差する点xを越える温度領域では、歪み量が、上記とは逆の関係となるため、圧縮コイルばね40は、SMAワイヤ10を伸長させるばね力を発生させることができないが、Tx>Tmaxなので実使用上は問題ない。
【0082】
また、本変形例の圧縮コイルばね40の温度下降時の温度歪み特性は、曲線βh1H1G1F1Eαで表される変化を示す。各点の温度Tβ、Th1、TH1、TG1、TF1、TE、Tαの大きさは、この順に減少している。ここで、次式の関係を満足する。
【0083】
TH1<Th1 ・・・(12)
【0084】
歪みの大きさは、高温側で温度Tβから温度TH1の間では、直線βh1と同一の傾きで微減し、温度下降時の変態開始温度TH1からより大きな変化率で温度TG1まで減少し、温度TG1からTF1までの間では温度TG1での傾きを保持する線形の変化を示し、温度TF1から温度下降時の変態終了温度TEの間で、変化率が徐々に減少し、温度TEからTαで直線eαと同一の傾きで微減する変化を示す。
【0085】
本変形例によれば、圧縮コイルばね40、SMAワイヤ10の温度歪み特性が、条件式(8)〜(11)を満足するので、上記第1の実施形態と同様にして、環境温度がSMAワイヤ10の温度下降時の変態終了温度Taよりも高い場合でも、使用温度範囲において、圧縮コイルばね40のばね力によって、SMAワイヤ10を伸長させ、レンズ枠4を基準位置に戻すことが可能となる。
そして、圧縮コイルばね40の温度上昇時の温度歪み特性の線形領域の傾きが、SMAワイヤ10の同様の傾きに比べて小さいため、それぞれの傾きが同じ場合に比べて、環境温度の高温側での駆動負荷を低減することができる。
【0086】
次に、本実施形態の第2変形例について説明する。
図15は、本発明の第1の実施形態の第2変形例に係る駆動モジュールに用いる形状記憶合金ワイヤ、形状記憶合金アクチュエータの温度歪み特性を示す模式的なグラフである。
【0087】
本変形例は、上記第1の実施形態の圧縮コイルばね40に用いるSMAの温度歪み特性のみを図16に示すように変更したものであり、各構成部品の形状や配置は、上記第1の実施形態と同様である。また、図16において図13と共通の符号は、それらを添字とする温度などの量とともに上記第1の実施形態と同様の意味を表すため説明を省略する。以下、上記第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0088】
本変形例の圧縮コイルばね40は、図16に示すように、温度上昇時の温度歪み特性が、SMAワイヤ10の温度下降時の温度歪み特性と同一となるようにしたSMAから構成される。
すなわち、本変形例の圧縮コイルばね40の温度上昇時の温度歪み特性は、曲線αe2f2j2g2h2Dβで表される変化を示す。この曲線は、SMAワイヤ10の温度下降時の温度歪み特性を示す曲線βDdcibaαと重なっており、点e2、f2、j2、g2、h2は、それぞれ、点a、b、i、c、dにグラフ上で重なっている。
すなわち、圧縮コイルばね40の温度上昇時の変態開始温度Te2、温度上昇時の変態終了温度Th2が、それぞれ、SMAワイヤ10の温度下降時の変態終了温度Ta、変態開始温度Tdと一致しており、次式の関係を満足する。
【0089】
Te2=Ta ・・・(13a)
Ta<Th2 ・・・(13b)
Tj2=Ti ・・・(13c)
【0090】
ここで、式(13a)、(13d)は、Te2、Ta、Th2が、それぞれTss、Twe、Tseに対応するため、上記条件式(a)の等号を含む関係に対応する。また、式(13c)は、Tj2、Tiが、それぞれTs0、Tw0に対応するため、上記条件式(b)の等号の関係に対応する。
【0091】
本変形例によれば、圧縮コイルばね40の温度上昇時の歪みの大きさは、SMAワイヤ10の温度下降時の歪みと常に同一となっており、圧縮コイルばね40によって、SMAワイヤ10を伸長させるばね力を過不足無く発生させることができるようになっている。
このため、圧縮コイルばね40のばね力による駆動負荷を全使用温度範囲において、必要最小限の値に設定することが可能となる。
【0092】
次に、本実施形態の第3変形例について説明する。
図17は、本発明の第1の実施形態の第3変形例に係る駆動モジュールの組立状態の内部構成を示す模式的な斜視図である。
【0093】
本変形例は、SMAアクチュエータとして、上記第1の実施形態の圧縮コイルばね40に代えて、引っ張りコイルばねを用いたものである。
本変形例の駆動モジュールは、図17に示すように、上記第1の実施形態の圧縮コイルばね40に代えて、先端側に可撓性を有する引っ張りワイヤ41aが設けられた引っ張りコイルばね41(SMAアクチュエータ)を備える。また、レンズ枠4の係止突起4fに代えて、引っ張りワイヤ41aの先端を係止するワイヤ係止部42aを設けている。そして、組立時にガイド突起4Dと重なる位置のモジュール下板8の側面に、側方に突出された係止突起80を設けている。この係止突起80は、引っ張りワイヤ41aを摺動可能に掛け回し、引っ張りワイヤ41aの引っ張り方向を変えるためのものである。モジュール枠5に代えて、モジュール枠5の側面にSMAワイヤ10が張架された側面にばね収納溝50a(支持部)を設けたモジュール枠50(支持体)を備えている。
引っ張りコイルばね41は、引っ張りワイヤ41aの先端をワイヤ係止部42aに係止し、この引っ張りワイヤ41aがガイド突起4Dの側面のガイド溝に案内されて、係止突起80に掛け回されてモジュール枠5の側面側に引っ張り方向が変更された状態で、モジュール枠50のばね収納溝50aに伸縮可能に収納され、引っ張りワイヤ41aと反対側の端部において、モジュール枠50と固定されている。
引っ張りコイルばね41は、SMAからなる素線をコイル状に加工して熱処理することにより、高温側でばね長が収縮した形状が記憶され、変態の低温側でばね長が伸長するようにしたSMAアクチュエータである。
【0094】
本変形例の構成では、引っ張りコイルばね41は、モジュール枠50の側方のばね収納溝50aにコンパクトに収納された状態で、環境温度の上昇による収縮に伴って、引っ張りワイヤ41aを介して、ガイド突起4Dを、モジュール下板8側(図示下方側)に引っ張ることが可能に設けられている。
引っ張りコイルばね41の温度歪み特性は、圧縮コイルばね40に用いるSMAと同様の特性を有する設定とする。
【0095】
本変形例によれば、ガイド突起4Dに作用するばね力が、引っ張りコイルばね41の引っ張り力であり、作用方向が異なるだけで、本質的に、上記第1の実施形態と同様の作用効果を備える。
【0096】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態に係る電子機器について説明する。
図18(a)、(b)は、本発明の第2の実施形態に係る電子機器の表面、裏面の斜視外観図である。図18(c)は、図18(b)におけるG−G断面図である。
【0097】
図18(a)、(b)に示す本実施形態のカメラ付き携帯電話20は、上記第1の実施形態の駆動モジュール1を備えた電子機器の一例である。
カメラ付き携帯電話20は、受話部22a、送話部22b、操作部22c、液晶表示部22d、アンテナ部22e、不図示の制御回路部などの周知の携帯電話の装置構成をカバー22内外に備えている。
そして、図18(b)に示すように、液晶表示部22dが設けられた側の裏面側のカバー22に、外光を透過させる窓22Aが設けられ、図18(c)に示すように、駆動モジュール1の開口11Aがカバー22の窓22Aを臨み、窓22Aの法線方向に軸線Mが沿うように、上記第1の実施形態の駆動モジュール1が設置されている。
そして、駆動モジュール1は、基板2に機械的、電気的に接続されている。
基板2は、不図示の制御回路部に接続され、駆動モジュール1に電力を供給できるようになっている。
【0098】
このような構成によれば、窓22Aを透過した光を駆動モジュール1の不図示のレンズユニット12で集光し、撮像素子30上に結像することができる。そして、駆動モジュール1に制御回路部から適宜の電力を供給することで、レンズユニット12を軸線M方向に駆動し、焦点位置調整を行って、撮影を行うことができる。
このようなカメラ付き携帯電話20によれば、上記第1の実施形態の駆動モジュール1を備えるため、小型化が可能で、製造が容易な装置となるとともに、高温環境で使用しても、正確な合焦を行うことができる。
【0099】
なお、上記の説明では、モジュール下板8、給電部材9を備える場合の例で説明したが、これらは場合によっては削除した構成としてもよい。
例えば、モジュール枠5に突き当て支持部を一体形成することができる場合には、モジュール下板8は削除してもよい。
また、ワイヤ保持部材15A、15Bに直接配線したり、適宜の給電部材をモジュール枠5の側面に設けたりするような場合には、給電部材9は省略することができる。
また、例えば、給電部材9をモジュール下板8に積層させない場合など、電気絶縁性が求められない場合には、モジュール下板8は、電気絶縁体でなくてもよい。
【0100】
また、上記の説明では、組み立てに熱かしめまたは超音波かしめを用いる場合の例で説明したが、上側固定ピン13A、14A、下側固定ピン13B、14Bなどを、ネジ部に置き換えてネジ止めしたり、接着剤などを用いたりして組み立ててもよい。この場合、被駆動体、支持体の材質は、かしめが可能な熱可塑性樹脂に限定されない。
【0101】
また、上記の説明では、モジュール枠5は、全体として略矩形状の部材として説明したが、略矩形状には限定されず、多角形状であってもよい。この場合、矩形状の隅部は、多角形状の隅部に置き換えることができる。
【0102】
また、上記の説明では、給電部材は、電極9a、9bからなる場合の例で説明したが、給電部材は、2系統の配線が形成された、1枚のプリント基板などを採用してもよい。
【0103】
また、上記の説明では、駆動モジュールをレンズユニットの焦点位置調整機構に用いる場合の例で説明したが、駆動モジュールの用途はこれに限定されない。例えば、被駆動体を目標位置に移動させる適宜のアクチュエータとして他の部分に用いてもよい。例えば、レンズユニット12に代えて、ロッド部材などを螺合したり、レンズ枠4を他の形状に変えたりして、適宜のアクチュエータとして用いることができる。
【0104】
また、上記の説明では、駆動モジュールを用いた電子機器として、カメラ付き携帯電話の例で説明したが、電子機器の種類はこれに限定されない。例えば、デジタルカメラ、パソコン内蔵のカメラなどの光学機器に用いてもよいし、情報読取記憶装置やプリンタなどの電子機器において、被駆動体を目標位置に移動させるアクチュエータとしても用いることができる。
【0105】
また、上記に説明した各実施形態の構成要素は、技術的に可能であれば、本発明の技術的思想の範囲で適宜組み合わせて実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る駆動モジュールの基板への取り付け状態を説明するための模式的な斜視分解図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る駆動モジュールの概略構成を示す模式的な斜視分解図である。
【図3】図1のA視平面図、およびその模式的なB−B断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る駆動モジュールの組立状態の内部構成を示す模式的な斜視図である。
【図5】図4におけるC−C線に沿う断面図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る駆動モジュールに用いる被駆動体の一部を示す模式的な斜視図である。
【図7】図6におけるD視の平面図、およびE視の裏面図である。
【図8】本発明の第1の実施形態に係る駆動モジュールに用いるモジュール枠の模式的な斜視図、およびそのF視の裏面図である。
【図9】本発明の第1の実施形態に係る駆動モジュールに用いる板ばね部材の平面図である。
【図10】本発明の第1の実施形態に係る駆動モジュールに用いるモジュール下板の模式的な斜視図である。
【図11】本発明の第1の実施形態に係る駆動モジュールに用いる給電部材の平面図である。
【図12】本発明の第1の実施形態に係る駆動モジュールに用いるカバーの裏面図である。
【図13】本発明の第1の実施形態に係る駆動モジュールに用いる形状記憶合金ワイヤ、形状記憶合金アクチュエータの温度歪み特性を示す模式的なグラフである。
【図14】本発明の第1の実施形態に係る駆動モジュールの動作を説明するための図3(a)のB−B線に沿う模式的な断面図である。
【図15】本発明の第1の実施形態の第1変形例に係る駆動モジュールに用いる形状記憶合金ワイヤ、形状記憶合金アクチュエータの温度歪み特性を示す模式的なグラフである。
【図16】本発明の第1の実施形態の第2変形例に係る駆動モジュールに用いる形状記憶合金ワイヤ、形状記憶合金アクチュエータの温度歪み特性を示す模式的なグラフである。
【図17】本発明の第1の実施形態の第3変形例に係る駆動モジュールの組立状態の内部構成を示す模式的な斜視図である。
【図18】本発明の第2の実施形態に係る電子機器の表面、裏面の斜視外観図、およびそのG−G断面図である。
【符号の説明】
【0107】
1 駆動モジュール
2 基板
3 端子
4 レンズ枠(被駆動体)
4D ガイド突起(突起部)
4d 突起上面
5、50 モジュール枠(支持体)
5A 収容部(筒状部)
6 上板ばね(平行板ばね対)
7 下板ばね(平行板ばね対)
8 モジュール下板(支持体)
8a 上面(突き当て支持部)
9 給電部材
10 形状記憶合金(SMA)ワイヤ
11 カバー
11a コイルばね支持部(支持部)
12 レンズユニット(被駆動体)
20 カメラ付き携帯電話(電子機器)
40 圧縮コイルばね(形状記憶合金アクチュエータ)
41 引っ張りコイルばね(形状記憶合金アクチュエータ)
50a ばね収納溝50a(支持部)
M 軸線
Tmax 最高使用温度(形状記憶合金ワイヤの温度下降時の変態領域内の温度から選ばれた一定温度Tw0)
Td 変態開始温度(形状記憶合金ワイヤの温度下降時の変態開始温度Tws)
Ta 変態開始温度(形状記憶合金ワイヤの温度下降時の変態終了温度Twe)
Te、Te2 変態開始温度(形状記憶合金アクチュエータの温度上昇時の変態開始温度Tss)
Th、Th1、Th2 変態開始温度(形状記憶合金アクチュエータの温度上昇時の変態終了温度Tse)
Tj、Tj2 温度(形状記憶合金アクチュエータの温度上昇時の変態の歪み量が一定温度Tw0で形状記憶合金ワイヤの温度下降時の変態の歪み量に等しくなる温度Ts0)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線が駆動方向に沿うように配置された柱状体からなり、該柱状体の側方に突出する突起部が設けられた被駆動体と、
該被駆動体を前記駆動方向の基準位置に位置決めする突き当て支持部と、前記被駆動体を前記駆動方向に沿って移動自在に収容する筒状部とを有する支持体と、
前記被駆動体と前記支持体との間で前記駆動方向に直交する方向に延ばして取り付けられ、無負荷状態で互いに平行となるように対向して配置された平行板ばね対と、
前記支持体の筒外周部に張架されるとともに、中間部が前記被駆動体の前記突起部に係止された形状記憶合金ワイヤと、
環境温度の上昇に伴って、一端側で前記被駆動体の前記突起部を付勢するように変形して、該突起部に係止された無通電時の前記形状記憶合金ワイヤに抗して前記被駆動体を前記基準位置に移動させるように形状記憶された形状記憶合金アクチュエータと、
該形状記憶合金アクチュエータの他端を支持する支持部とを備えることを特徴とする駆動モジュール。
【請求項2】
前記形状記憶合金アクチュエータおよび前記形状記憶合金ワイヤは、
前記形状記憶合金アクチュエータの温度上昇時の変態開始温度、変態終了温度をそれぞれTss、Tse(ただし、Tss<Tse)とし、前記形状記憶合金ワイヤの温度下降時における変態終了温度、変態開始温度をそれぞれTwe、Tws(ただし、Twe<Tws)とし、前記形状記憶合金ワイヤの温度下降時の変態領域内の温度から選ばれた一定温度をTw0(ただし、Twe<Tw0≦Tws)、前記形状記憶合金アクチュエータの温度上昇時の変態の歪み量が前記一定温度Tw0で前記形状記憶合金ワイヤの温度下降時の変態の歪み量に等しくなる温度をTs0とするとき、
次式を満足することを特徴とする請求項1に記載の駆動モジュール。
Tss≦Twe<Tse ・・・(a)
Ts0≦Tw0 ・・・(b)
【請求項3】
前記形状記憶合金アクチュエータの温度上昇時における変態の線形領域の上限温度は、
前記形状記憶合金ワイヤの温度下降時における変態の線形領域の下限温度以下であることを特徴とする請求項2に記載の駆動モジュール。
【請求項4】
前記一定温度Tw0での、前記形状記憶合金アクチュエータに発生する温度上昇時の変態の歪み量と、前記形状記憶合金ワイヤの温度下降時の変態の歪み量とが等しく、
かつ、前記形状記憶合金アクチュエータの温度上昇時における変態の線形領域の下限温度と、前記形状記憶合金ワイヤの温度下降時における変態の線形領域の下限温度とが等しいことを特徴とする請求項3に記載の駆動モジュール。
【請求項5】
前記形状記憶合金アクチュエータは、
前記駆動方向に沿って圧縮して取り付けられた圧縮コイルばねからなり、
前記一端が、前記突起部において前記形状記憶合金ワイヤの係止位置に対向する位置に当接されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の駆動モジュール。
【請求項6】
前記形状記憶合金アクチュエータは、
前記駆動方向において、前記平行板ばね対の間に配置されたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の駆動モジュール。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の駆動モジュールを備えることを特徴とする電子機器。
【請求項1】
軸線が駆動方向に沿うように配置された柱状体からなり、該柱状体の側方に突出する突起部が設けられた被駆動体と、
該被駆動体を前記駆動方向の基準位置に位置決めする突き当て支持部と、前記被駆動体を前記駆動方向に沿って移動自在に収容する筒状部とを有する支持体と、
前記被駆動体と前記支持体との間で前記駆動方向に直交する方向に延ばして取り付けられ、無負荷状態で互いに平行となるように対向して配置された平行板ばね対と、
前記支持体の筒外周部に張架されるとともに、中間部が前記被駆動体の前記突起部に係止された形状記憶合金ワイヤと、
環境温度の上昇に伴って、一端側で前記被駆動体の前記突起部を付勢するように変形して、該突起部に係止された無通電時の前記形状記憶合金ワイヤに抗して前記被駆動体を前記基準位置に移動させるように形状記憶された形状記憶合金アクチュエータと、
該形状記憶合金アクチュエータの他端を支持する支持部とを備えることを特徴とする駆動モジュール。
【請求項2】
前記形状記憶合金アクチュエータおよび前記形状記憶合金ワイヤは、
前記形状記憶合金アクチュエータの温度上昇時の変態開始温度、変態終了温度をそれぞれTss、Tse(ただし、Tss<Tse)とし、前記形状記憶合金ワイヤの温度下降時における変態終了温度、変態開始温度をそれぞれTwe、Tws(ただし、Twe<Tws)とし、前記形状記憶合金ワイヤの温度下降時の変態領域内の温度から選ばれた一定温度をTw0(ただし、Twe<Tw0≦Tws)、前記形状記憶合金アクチュエータの温度上昇時の変態の歪み量が前記一定温度Tw0で前記形状記憶合金ワイヤの温度下降時の変態の歪み量に等しくなる温度をTs0とするとき、
次式を満足することを特徴とする請求項1に記載の駆動モジュール。
Tss≦Twe<Tse ・・・(a)
Ts0≦Tw0 ・・・(b)
【請求項3】
前記形状記憶合金アクチュエータの温度上昇時における変態の線形領域の上限温度は、
前記形状記憶合金ワイヤの温度下降時における変態の線形領域の下限温度以下であることを特徴とする請求項2に記載の駆動モジュール。
【請求項4】
前記一定温度Tw0での、前記形状記憶合金アクチュエータに発生する温度上昇時の変態の歪み量と、前記形状記憶合金ワイヤの温度下降時の変態の歪み量とが等しく、
かつ、前記形状記憶合金アクチュエータの温度上昇時における変態の線形領域の下限温度と、前記形状記憶合金ワイヤの温度下降時における変態の線形領域の下限温度とが等しいことを特徴とする請求項3に記載の駆動モジュール。
【請求項5】
前記形状記憶合金アクチュエータは、
前記駆動方向に沿って圧縮して取り付けられた圧縮コイルばねからなり、
前記一端が、前記突起部において前記形状記憶合金ワイヤの係止位置に対向する位置に当接されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の駆動モジュール。
【請求項6】
前記形状記憶合金アクチュエータは、
前記駆動方向において、前記平行板ばね対の間に配置されたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の駆動モジュール。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の駆動モジュールを備えることを特徴とする電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2009−198645(P2009−198645A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−38450(P2008−38450)
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】
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