説明

駆動装置、レンズモジュールおよび撮像装置

【課題】駆動対象物を精度良く移動させることが可能な駆動装置等を提供する。
【解決手段】駆動装置は、駆動対象物を保持するための保持部材と、駆動対象物の一方側に配設された単一のポリマーアクチュエータ素子と、駆動対象物の他方側に配設された1または複数の支持部材と、ポリマーアクチュエータ素子および支持部材の各一端を直接もしくは間接的に固定する固定用部材とを備えている。ポリマーアクチュエータ素子および支持部材の各他端と保持部材の端部とが、直接もしくは間接的に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリマーアクチュエータ素子を用いた駆動装置、ならびにそのような駆動装置を備えたレンズモジュールおよび撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば携帯電話やパーソナルコンピュータ(PC)、あるいはPDA(Personal Digital Assistant)などの携帯型電子機器の高機能化が著しく進んでおり、レンズモジュールを搭載することにより撮像機能を備えたものが一般的となっている。このような携帯型電子機器においては、レンズモジュール内のレンズをその光軸方向へ移動させることにより、フォーカシングやズーミングが行われる。
【0003】
従来、レンズモジュール内のレンズの移動は、ボイスコイルモータやステッピングモータなどを駆動部として行う方法が一般的であった。一方で、最近では、コンパクト化の観点から、所定のアクチュエータ素子を駆動部として利用したものが開発されている。そのようなアクチュエータ素子としては、例えば、ポリマーアクチュエータ素子(特許文献1,2参照)が挙げられる。ポリマーアクチュエータ素子は、例えば一対の電極間にイオン交換樹脂膜を挟むようにしたものである。このポリマーアクチュエータ素子では、一対の電極間に電位差が生じることにより、イオン交換樹脂膜が膜面に対して直交する方向へ変位するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−293006号公報
【特許文献2】特開2006−172635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このようなポリマーアクチュエータ素子を用いた駆動装置(例えばレンズ駆動装置)では、従来、駆動対象物(例えばレンズ)を精度良く移動させるのが困難であったため、改善する手法の提案が望まれる。
【0006】
本開示はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、駆動対象物を精度良く移動させることが可能な駆動装置、レンズモジュールおよび撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の駆動装置は、駆動対象物を保持するための保持部材と、駆動対象物の一方側に配設された単一のポリマーアクチュエータ素子と、駆動対象物の他方側に配設された1または複数の支持部材と、ポリマーアクチュエータ素子および支持部材の各一端を直接もしくは間接的に固定する固定用部材とを備えたものである。ポリマーアクチュエータ素子および支持部材の各他端と保持部材の端部とは、直接もしくは間接的に接続されている。
【0008】
本開示のレンズモジュールは、レンズと、このレンズを駆動する上記本開示の駆動装置とを備えたものである。
【0009】
本開示の撮像装置は、レンズと、このレンズにより結像されてなる撮像信号を取得する撮像素子と、レンズを駆動する上記本開示の駆動装置とを備えたものである。
【0010】
本開示の駆動装置、レンズモジュールおよび撮像装置では、ポリマーアクチュエータ素子の他端側(可動側)が変形するとともにそれに伴って支持部材の他端側も変形することにより、保持部材が駆動されて駆動対象物が移動可能(変位可能)となる。ここで、駆動対象物の一方側にのみ、単一のポリマーアクチュエータ素子が設けられている(駆動対象物の他方側にはポリマーアクチュエータ素子が設けられていない)。これにより、例えば複数のポリマーアクチュエータ素子を用いた場合のような、それら複数の素子間での特性ばらつき(変形量のばらつき等)が発生しないため、駆動対象物が平行状態を保ったまま移動し易くなる。
【発明の効果】
【0011】
本開示の駆動装置、レンズモジュールおよび撮像装置によれば、駆動対象物の一方側に単一のポリマーアクチュエータ素子を設けると共に、駆動対象物の他方側には支持部材を設けるようにしたので、駆動対象物が平行状態を保ったまま移動し易くなる。よって、駆動対象物を精度良く移動させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本開示の一実施の形態に係る撮像装置を備えた電子機器の構成例を表す斜視図である。
【図2】図1に示した電子機器を異なる方向から表した斜視図である。
【図3】図2に示した撮像装置の要部構成を表す斜視図である。
【図4】図3に示したレンズモジュールを表す分解斜視図である。
【図5】図3に示したレンズモジュールの側面構成および平面構成を表す模式図である。
【図6】固定用部材、ポリマーアクチュエータ素子および支持部材の一部分の詳細構成例を表す模式断面図である。
【図7】ポリマーアクチュエータ素子および支持部材における平面形状の他の例を表す模式図である。
【図8】ホール素子の配置構成の他の例を表す模式断面図である。
【図9】図3に示したポリマーアクチュエータ素子の詳細構成例を表す断面図である。
【図10】図3に示したポリマーアクチュエータ素子、支持部材、固定用部材および固定電極の一部分の詳細構成例を表す断面図である。
【図11】図3に示したポリマーアクチュエータ素子の基本動作について説明するための断面模式図である。
【図12】比較例1に係るレンズモジュールの構成および動作について説明するための模式図である。
【図13】比較例2に係るレンズモジュールの構成および動作について説明するための模式図である。
【図14】比較例3に係るレンズモジュールの構成および動作について説明するための模式図である。
【図15】図5に示した実施の形態に係るレンズモジュールの動作を表す側面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態(ポリマーアクチュエータ素子を用いたレンズ駆動装置の例)
2.変形例
【0014】
<実施の形態>
[撮像装置を備えた電子機器の概略構成]
図1および図2は、本開示の一実施の形態に係る撮像装置(後述する撮像装置2)を備えた電子機器の一例として、撮像機能付き携帯電話機(携帯電話機8)の概略構成を斜視図で表したものである。この携帯電話機8では、2つの筐体81A,81B同士が、図示しないヒンジ機構を介して折り畳み自在に連結されている。
【0015】
図1に示したように、筐体81Aの一方側の面には、各種の操作キー82が複数配設されると共に、その下端部にマイクロフォン83が配設されている。操作キー82は使用者(ユーザ)による所定の操作を受け付けて情報を入力するためのものである。マイクロフォン83は、通話時等における使用者の音声を入力するためのものである。
【0016】
筐体81Bの一方側の面には、図1に示したように、液晶表示パネル等を用いた表示部84が配設されると共に、その上端部には、スピーカー85が配設されている。表示部84には、例えば、電波の受信状況や電池残量、通話相手の電話番号、電話帳として登録されている内容(相手先の電話番号や氏名等)、発信履歴、着信履歴等の各種の情報が表示されるようになっている。スピーカー85は、通話時等における通話相手の音声等を出力するためのものである。
【0017】
図2に示したように、筐体81Aの他方側の面にはカバーガラス86が配設されていると共に、筐体81A内部のカバーバラス86に対応する位置に撮像装置2が設けられている。この撮像装置2は、物体側(カバーガラス86側)に配置されたレンズモジュール4と、像側(筐体81Aの内部側)に配置された撮像素子3とにより構成されている。撮像素子3は、レンズモジュール4内のレンズ(後述するレンズ40)により結像されてなる撮像信号を取得する素子である。この撮像素子3は、例えば電荷結合素子(CCD:Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)を搭載したイメージセンサからなる。
【0018】
[撮像装置2およびレンズモジュール4の構成]
図3は、撮像装置2の要部構成を斜視図で表したものであり、図4は、この撮像装置2におけるレンズモジュール4の構成を分解斜視図で表したものである。また、図5は、このレンズモジュール4の概略構成を、(A)側面図(Z−X側面図)および(B)平面図(X−Y平面図)で模式的に表したものである。
【0019】
レンズモジュール4は、光軸Z1に沿って像側(撮像素子3側)から物体側へと順に(Z軸上の正方向に沿って)、ベース部材11、支持部材18A,18B、レンズ保持部材14(保持部材)およびレンズ40(駆動対象物)、ならびにポリマーアクチュエータ素子13を備えている。すなわち、レンズ40の一方側(ここでは上側,Z軸の正方向側)に、1つ(単一)のポリマーアクチュエータ素子13が配設されると共に、レンズ40の他方側(ここでは下側,Z軸の負方向側)に、1または複数(ここでは2つ)の支持部材18A,18Bが配設されている。これにより、ポリマーアクチュエータ素子13の後述する駆動面(X−Y平面)と、支持部材18A,18Bの後述する支持面(X−Y平面)とが、レンズ40の光軸Z1に沿って互いに対向している。なお、図3では、レンズ40の図示を省略している。このレンズモジュール4はまた、固定用部材12、連結部材151A,151B,152、固定電極130A,130B、押え部材16、ホール素子17Aおよび磁石17Bを備えている。なお、これらのレンズモジュール4の部材のうちのレンズ40を除いたものが、本開示における「駆動装置(レンズ駆動装置)」の一具体例に対応している。
【0020】
ベース部材11は、レンズモジュール4全体を支持するための部材(基体)であり、例えば液晶ポリマー等の硬質な樹脂材料からなる。
【0021】
固定用部材12は、ポリマーアクチュエータ素子13の一端と一対の支持部材18A,18Bの各一端とをそれぞれ、直接固定するための部材であり、例えば液晶ポリマー等の硬質な樹脂材料からなる。この固定用部材12は、像側(図3および図4における下側)から物体側(上側)へと向けて配置された、下部固定用部材12D、中央(中部)固定用部材12Cおよび上部固定用部材12Uの3つの部材からなる。下部固定用部材12Dと中央固定用部材12Cとの間には、支持部材18A,18Bの各一端および固定電極130A,130Bの各一端がそれぞれ、挟み込まれて配置されている。一方、中央固定用部材12Cと上部固定用部材12Uとの間には、ポリマーアクチュエータ素子13の一端および固定電極130A,130Bの各他端がそれぞれ、挟み込まれて配置されている。また、これらのうちの中央固定用部材12Cには、レンズ保持部材14の一部(後述する保持部14Bの一部)を部分的に挟み込むための開口12C0(第2の開口)が形成されている。これにより、レンズ保持部材14の一部がこの開口12C0内を移動できるようになるため、スペースを有効活用することができ、レンズモジュール4の小型化を図ることが可能となる。
【0022】
なお、これらの下部固定用部材12D、中央固定用部材12Cおよび上部固定用部材12Uは、例えば図6に断面図(Z−X断面図)で模式的に示したような断面形状となっているのが望ましい。すなわち、ポリマーアクチュエータ素子13および支持部材18がそれぞれ後述するようにして変形(湾曲)する側(可動端側)の角部(エッジ部分)が、面取りされているようにするのが望ましい(図6中の符号P11,P12で示した部分参照)。これにより、ポリマーアクチュエータ素子13および支持部材18が湾曲する際に動き易くなると共に、角部による削れや摩耗等を少なくすることができ、ポリマーアクチュエータ素子13および支持部材18の耐久性が向上するからである。
【0023】
固定電極130A,130Bは、ポリマーアクチュエータ素子13における電極膜(後述する電極膜52A,52B)に対して、電圧印加手段(後述する電圧供給部19)からの駆動用電圧Vdを供給するための電極である。これらの固定電極130A,130Bはそれぞれ、例えば金(Au)もしくは金めっきされた金属等からなり、「コ」の字状となっている。これにより、固定電極130A,130Bはそれぞれ、中央固定用部材12Cの上下(Z軸に沿った両側面)を挟み込むようになっている。したがって、固定電極130A,130Bを例えば金めっきされた金属材料から構成した場合には、表面の酸化等による接触抵抗の劣化を防ぐことが可能となっている。
【0024】
レンズ保持部材14は、駆動対象物であるレンズ40を保持するための部材であり、例えば液晶ポリマー等の硬質な樹脂材料からなる。このレンズ保持部材14は、その中心が光軸Z1上になるようにして配置されており、レンズ40を保持する環状の保持部14Bと、この保持部14Bを支持すると共に保持部14Bと後述する連結部材151A,151B,152とを接続する接続部14Aとからなる。保持部14Bは、ポリマーアクチュエータ素子13における後述する駆動面(X−Y平面)と、一対の支持部18A,18Bにおける後述する支持面(X−Y平面)との間に配置されている。
【0025】
(ポリマーアクチュエータ素子13および支持部材18A,18B)
ポリマーアクチュエータ素子13は、レンズ40の光軸Z1と直交する駆動面(X−Y平面上の駆動面)を有しており、この駆動面が、光軸Z1に沿って後述する一対の支持部材18A,18Bにおける支持面と対向するように配置されている。このポリマーアクチュエータ素子13は、レンズ保持部材14(およびレンズ40)を、後述する連結部材151A,151B,152を介して光軸Z1に沿って駆動するためのものである。このポリマーアクチュエータ素子13は、上記した駆動面上に延在する平板状であり、ここでは図3,図4,図5(B)に示したように、レンズ40の光軸Z1がその中央付近に位置する円形状の開口130(第1の開口)を有している。すなわち、この開口130は、レンズ40の対向領域に形成されており、撮像光が通過するための孔となっている。なお、このポリマーアクチュエータ素子13の詳細構成については後述する(図9,図10)。
【0026】
支持部材18A,18Bはそれぞれ、レンズ保持部材14の他方側(接続部14Aの下端部側)を支持するための部材であり、レンズ40の光軸Z1と直交する支持面(X−Y平面上の支持面)を有している。これらの支持部材18A,18Bは、ここでは図4に示したように、X軸方向を長軸方向とすると共にY軸方向を短軸方向とする細長い矩形状となっている。また、支持部材18A,18Bは、ここでは、固定用部材12におけるY軸方向に沿った両端部に配置されている。そして、支持部材18Aは、後述する連結部材151Aを介して接続部14Aの下端部に接続され、支持部材18Bは、後述する連結部材151Bを介して接続部14Aの下端部に接続されている。
【0027】
このような支持部材18A,18Bは、例えば、ポリイミド等の材料からなり、支持部材18A,18Bにおける剛性(曲げ剛性)とポリマーアクチュエータ素子13における曲げ剛性とが、互いに略等しく(好ましくは等しく)なっていることが望ましい。具体的には、支持部材18A,18Bにおける縦弾性係数(ヤング率)が、ポリマーアクチュエータ素子13における縦弾性係数よりも大きくなっていると共に、ポリマーアクチュエータ素子13における上記駆動面の面積が、支持部材18A,18Bにおける上記支持面の面積よりも大きくなっていることが望ましい。支持部材18A,18Bとして相対的に縦弾性率の高い材料を用いることにより、例えば図4に示したように小さな支持面(細長い矩形状)であったとしても、十分な剛性(ポリマーアクチュエータ素子13と略同等の曲げ剛性)を得ることができるからである。また、例えば開口130の大きさを最小限として(撮像光が通過できる程度の微小開口として)、ポリマーアクチュエータ素子13における駆動面の面積を大きく取ることができるため、ポリマーアクチュエータ素子13における発生力(変形量)および曲げ剛性をより大きくすることができ、安定した動作が可能となるからである。
【0028】
ここで、上記した曲げ剛性としては、例えばバネ定数を用いることができる。このバネ定数は、以下の(1),(2)式により表わされる(JIS規格:JISB2713,規格名称:薄板ばねの設計計算式及び仕様の定め方を参照)。なお、これらの式において、Eは縦弾性係数(ヤング率)(kg/cm2)を、Iは断面2次モーメント(=(bh3/12)(cm4))を、bは幅(ここではY軸方向の長さ)(cm)を、hは厚み(ここではZ軸方向の長さ)(cm)を、Lは長さ(ここではX軸方向の長さ)(cm)を、それぞれ示す。
バネ定数K=(3EI/L3) ……(1)
曲げ剛性=EI(kg・cm2) ……(2)
【0029】
具体例を示すと、ポリマーアクチュエータ素子13において、長さL=6.5mm、幅b=7.5mm、厚みh=0.130mmのときのバネ定数Kは、上記(1)式により、3×5×103×0.75×(0.0130)3/12/(0.65)3≒7.5×103となる。また、この場合において、長さL=6.5mm、厚みh=0.125mmのポリイミドフィルムからなる支持部材18A,18Bにおいて、ポリマーアクチュエータ素子13と同程度のバネ定数Kにするための幅bは、上記(1)式を用いて以下のようにして求められる。すなわち、(ポリマーアクチュエータ素子13の幅b)×(ポリマーアクチュエータ素子13のヤング率E/ポリイミドフィルムのヤング率E)×(ポリマーアクチュエータ素子13の厚みh/ポリイミドフィルムの厚みh)3=0.75×((5×103)/(3×104))×(0.130/0.125)3≒0.14cm(1.4mm)となる。
【0030】
ここで、この支持部材18A,18Bと上記したポリマーアクチュエータ素子13とのうちの少なくとも一方における平面形状(X−Y平面の形状)は、例えば図7(A)〜(D)に模式的に示したようになっているのが望ましい。すなわち、例えば図7(A)〜(C)に示したように、単一の支持部18が、固定用部材12に固定された部分である固定部181と、この固定部181の両端(ここではY軸方向に沿った両端)に設けられると共に支持面を構成する一対の突出部182A,182Bとからなっているのが望ましい。また、例えば、単一のポリマーアクチュエータ素子13が、固定用部材12に固定された部分である固定部131と、この固定部131の両端に設けられると共に駆動面を構成する一対の突出部132A,132Bとからなっているのが望ましい。
【0031】
具体的には、例えば図7(A)に示したように、支持部18またはポリマーアクチュエータ素子13の平面形状が、「コ」の字状となっているのが望ましい。これにより、支持部18またはポリマーアクチュエータ素子13において、駆動面内の平行度のばらつきが低減もしくは回避されるからである。あるいは、例えば図7(B),(D)に示したように、レンズ保持部材14の形状に対応した開口(ここでは円形状の開口)が設けられているようにしてもよい。これにより、レンズ40およびレンズ保持部材14との隙間を有効に使用し、ポリマーアクチュエータ素子13によるトルク(駆動力)および変位量を最大限に大きくすることができるからである。なお、前述したポリマーアクチュエータ素子13における開口130は、できるだけ微小であることが望ましいが、支持部18における開口は、例えば図7(D)に示した開口180のように、大きなものであってもよい。また、例えば図7(C)に示したように、各突出部182A(132A),182B(132B)の幅が、固定部181(131)側(幅W21)から先端側(幅W22)へと向けて徐々に狭くなっているようにしてもよい(幅W21>幅W22)。換言すると、各突出部182A(132A),182B(132B)の根元側の幅W21が、先端側の幅W22と同程度以上となっているようにしてもよい。これにより、ポリマーアクチュエータ素子13の共振周波数を高く設定することができ、自動制御が可能な周波数範囲を拡大することができると共に、角のスペースを有効に使用することができる。このとき、ポリマーアクチュエータ素子13による駆動力の大きさは、主に根元側の幅W21によって決まるため、先端側の幅W22が小さくなっても駆動力はほとんど犠牲にならない。
【0032】
(連結部材151A,151B,152)
連結部材151A,151Bはそれぞれ、支持部材18A,18Bの各他端と接続部14Aの端部との間を互いに連結(接続)するための部材である。具体的には、連結部材151Aは、接続部14Aの下端部と支持部材18Aの他端との間を連結し、連結部材151Bは、接続部14Aの下端部と支持部材18Bの他端との間を連結するようになっている。一方、連結部材152は、ポリマーアクチュエータ素子13の他端と接続部14Aの端部との間を連結(接続)するための部材である。具体的には、この連結部材152は、接続部14Aの上端部とポリマーアクチュエータ素子13の他端との間を連結するようになっている。このようにして、ポリマーアクチュエータ素子13および支持部材18A,18Bの各他端と、レンズ保持部材14(接続部14A)の端部とが、間接的に接続されるようになっている。
【0033】
これらの連結部材151A,151B,152はそれぞれ、例えばポリイミドフィルム等のフレキシブルフィルムからなり、ポリマーアクチュエータ素子13と同等以下(好ましくは同一以下)の剛性(曲げ剛性)を有する柔軟な材料からなることが望ましい。連結部材151A,151B,152が、支持部材18A,18Bおよびポリマーアクチュエータ素子13の湾曲方向とは逆方向に湾曲する自由度が生まれるからである。これにより詳細は後述するが、ポリマーアクチュエータ13および支持部材18A,18Bと連結部材151A,151B,152とからなる片持ち梁における断面形状が、S字状の曲線を描くようになる。その結果、接続部14AがZ軸方向に沿って平行移動することが可能となり、保持部14B(およびレンズ40)がベース部材11に対して平行状態を保ったまま、Z軸方向に駆動されるようになる。なお、この場合における曲げ剛性としても、例えば上記(1),(2)式により表わされる、前述したバネ定数を用いることができる。また、連結部材151A,151B,152の耐熱温度は、例えば200℃程度以上であることが望ましい。これにより、例えばリフロー工程等の高温プロセスを通しても特性が変化しないようにすることができるからである。
【0034】
図3および図4に示したホール素子17Aおよび磁石17Bはそれぞれ、レンズ保持部材14の移動量(変位量)を検出するために用いられる素子である。具体的には、例えば図8に示したように、ホール素子17Aおよび磁石17Bの組み合わせのうち、磁石17Bを接続部14Aの内部に設けるようにしてもよい。この場合、図3および図4に示したような、磁石17Bを設けるためのスペースが不要となるため、小型化を図ることができると共に、感度を向上させることが可能となる。
【0035】
電圧供給部19は、図5(A)に示したように、ポリマーアクチュエータ素子13に対して駆動用電圧Vdを供給することにより、このポリマーアクチュエータ素子13を駆動する(変形させる)ためのものである。このような電圧供給部19は、例えば半導体素子等を用いた電気回路からなる。なお、電圧供給部19によるポリマーアクチュエータ素子13の駆動動作の詳細については、後述する(図11)。
【0036】
[ポリマーアクチュエータ素子13の詳細構成]
次に、図9および図10を参照して、ポリマーアクチュエータ素子13の詳細構成について説明する。図9は、ポリマーアクチュエータ素子13の断面構成(Z−X断面構成)を表したものである。
【0037】
ポリマーアクチュエータ素子13は、イオン導電性高分子化合物膜51(以下、単に高分子化合物膜51という。)の両面に、一対の電極膜52A,52Bが形成された断面構造を有している。換言すると、ポリマーアクチュエータ素子13は、一対の電極膜52A,52Bと、これらの電極膜52A,52Bの間に挿設された高分子化合物膜51とを有している。なお、ポリマーアクチュエータ素子13および電極膜52A,52Bは、それらの周囲が、高弾性を有する材料(例えばポリウレタンなど)からなる絶縁性の保護膜によって覆われていてもよい。
【0038】
ここで、図10に断面図(Z−X断面図)で示したように、ポリマーアクチュエータ素子13では、電極膜52Aが、中央固定用部材12C側の固定電極130Aと電気的に接続され、電極膜52Bが、上部固定用部材12U側の固定電極130Bと電気的に接続されている。一方、下部固定用部材12D側の固定電極130Bと中央固定用部材12C側の固定電極130ABとの間には、支持部材18A,18Bがそれぞれ挿設されている。なお、図10中に図示はしていないが、下部固定用部材12D側の固定電極130Bから上部固定用部材12U側の固定電極130Bまでの各部材・電極はそれぞれ、図4中に示した押え部材46(板ばね)によって一定の圧力で挟み込まれるようにして固定されている。これにより、大きな力を与えてもポリマーアクチュエータ素子13および支持部材18A,18Bを破壊することがなく、これらのポリマーアクチュエータ素子13および支持部材18A,18Bが変形した際も安定して電気的な接続が可能となる。
【0039】
高分子化合物膜51は、電極膜52A,52Bの間に所定の電位差が生じることにより湾曲を生じるようになっている。この高分子化合物膜51にはイオン物質が含浸されている。ここでの「イオン物質」とは、高分子化合物膜51内を伝導することが可能なイオン全般を指しており、具体的には、水素イオンや金属イオン単体、またはそれら陽イオンおよび/または陰イオンと極性溶媒とを含むもの、あるいはイミダゾリウム塩などのそれ自体が液状である陽イオンおよび/または陰イオンを含むものを意味する。前者としては、例えば、陽イオンおよび/または陰イオンに極性溶媒が溶媒和したものが挙げられ、後者としては、例えばイオン液体が挙げられる。
【0040】
高分子化合物膜51を構成する材料としては、例えばフッ素樹脂あるいは炭化水素系などを骨格としたイオン交換樹脂が挙げられる。このイオン交換樹脂としては、陽イオン物質が含浸される場合には陽イオン交換樹脂が好ましく、陰イオン物質が含浸される場合には陰イオン交換樹脂が好ましい。
【0041】
陽イオン交換樹脂としては、例えば、スルホン酸基あるいはカルボキシル基などの酸性基が導入されたものが挙げられる。具体的には、酸性基を有するポリエチレン、酸性基を有するポリスチレンあるいは酸性基を有するフッ素樹脂などである。中でも、陽イオン交換樹脂としては、スルホン酸基あるいはカルボン酸基を有するフッ素樹脂が好ましく、例えばナフィオン(デュポン株式会社製)が挙げられる。
【0042】
高分子化合物膜51に含浸されている陽イオン物質としては、有機や無機など、その種類を問わない。例えば、金属イオン単体、金属イオンと水とを含むもの、有機陽イオンと水とを含むもの、あるいはイオン液体など種々の形態が応用可能である。金属イオンとしては、例えば、ナトリウムイオン(Na+)、カリウムイオン(K+)、リチウムイオン(Li+)あるいはマグネシウムイオン(Mg2+)などの軽金属イオンが挙げられる。また、有機陽イオンとしては、例えば、アルキルアンモニウムイオンなどが挙げられる。これらの陽イオンは、高分子化合物膜51中において水和物として存在している。よって、陽イオンと水とを含む陽イオン物質が高分子化合物膜51中に含浸されている場合には、ポリマーアクチュエータ素子13では、水の揮発を抑制するために全体として封止されていることが好ましい。
【0043】
イオン液体とは、常温溶融塩とも言われるものであり、燃性および揮発性が低い陽イオンと陰イオンとを含んでいる。イオン液体としては、例えば、イミダゾリウム環系化合物、ピリジニウム環系化合物あるいは脂肪族系化合物などが挙げられる。
【0044】
高分子化合物膜51を挟んで互いに対向する電極膜52A,52Bは、それぞれ1種あるいは2種以上の導電性材料を含んでいる。電極膜52A,52Bは、導電性材料粉末同士がイオン導電性高分子により結着されたものが好ましい。電極膜52A,52Bの柔軟性が高まるからである。導電性材料粉末としてはカーボン粉末が好ましい。導電性が高く、比表面積が大きいため、より大きい変形量が得られるからである。カーボン粉末としては、ケッチェンブラックが好ましい。イオン導電性高分子としては、上記した高分子化合物膜51の構成材料と同様のものが好ましい。
【0045】
電極膜52A,52Bは、例えば、以下のようにして形成される。すなわち、分散媒に導電性材料粉末とイオン導電性高分子とを分散させた塗料を、高分子化合物膜51の両面に塗布したのち、乾燥させる。また、導電性材料粉末とイオン導電性高分子とを含むフィルム状のものを、高分子化合物膜51の両面に圧着するようにしてもよい。
【0046】
電極膜52A,52Bは、多層構造になっていてもよく、その場合、高分子化合物膜51の側から順に、導電性材料粉末同士がイオン導電性高分子により結着された層と金属層とが積層された構造を有していることが好ましい。これにより、電極膜52A,52Bの面内方向において電位がより均一な値に近づき、より優れた変形性能を得られるからである。金属層を構成する材料としては、金あるいは白金などの貴金属が挙げられる。金属層の厚さは任意であるが、電極膜52A,52Bに電位が均一になるように連続膜となっていることが好ましい。金属層を形成する方法としては、めっき法、蒸着法あるいはスパッタ法などが挙げられる。
【0047】
高分子化合物膜51の大きさ(幅および長さ)は、レンズ保持部材43やレンズ40等の大きさや重量、あるいは高分子化合物膜51において必要とされる変位量(変形量)に応じて、任意に設定可能である。高分子化合物膜51の変位量は、例えば、要求される駆動対象物の変位量(Z軸方向に沿った移動量)に応じて設定されるようになっている。
【0048】
[撮像装置2の作用・効果]
続いて、本実施の形態の撮像装置2の作用および効果について説明する。
【0049】
(1.ポリマーアクチュエータ素子13の動作)
最初に、図11を参照して、ポリマーアクチュエータ素子13の動作について説明する。図11は、このポリマーアクチュエータ素子13の動作を、断面図を用いて模式的に表したものである。
【0050】
まず、陽イオン物質として、陽イオンと極性溶媒とを含むものを用いた場合について説明する。
【0051】
この場合、電圧無印加状態におけるポリマーアクチュエータ素子13は、陽イオン物質が高分子化合物膜51中にほぼ均一に分散することから、湾曲することなく平面状となる(図11(A))。ここで、図11(B)中に示した電圧供給部19によって電圧印加状態とする(駆動用電圧Vdの印加を開始する)と、ポリマーアクチュエータ素子13は以下のような挙動を示す。すなわち、例えば電極膜52Aがマイナスの電位、電極膜52Bがプラスの電位となるように電極膜52A,52Bの間に所定の駆動用電圧Vdを印加すると、陽イオンが極性溶媒と溶媒和した状態で電極膜52A側に移動する。この際、高分子化合物膜51中では陰イオンがほとんど移動できないため、高分子化合物膜51では、電極膜52A側が膨潤し、電極膜52B側が収縮する。これにより、ポリマーアクチュエータ素子13は全体として、図11(B)に示したように電極膜52B側に湾曲する。こののち、電極膜52A,52Bの間の電位差を無くして電圧無印加状態とする(駆動用電圧Vdの印加を停止する)と、高分子化合物膜51中において電極膜52A側に偏っていた陽イオン物質(陽イオンおよび極性溶媒)が拡散し、図11(A)に示した状態に戻る。また、図11(A)に示した電圧無印加状態から、電極膜52Aがプラスの電位、電極膜52Bがマイナスの電位となるように、電極膜52A,52Bの間に所定の駆動電圧Vdを印加すると、陽イオンが極性溶媒と溶媒和した状態で電極膜52B側に移動する。この場合、高分子化合物膜51では、電極膜52A側が収縮し電極膜52B側が膨潤するので、ポリマーアクチュエータ素子13は全体として、電極膜52A側に湾曲する。
【0052】
次に、陽イオン物質として、液状の陽イオンを含むものであるイオン液体を用いた場合について説明する。
【0053】
この場合においても、電圧無印加状態では、イオン液体が高分子化合物膜51中にほぼ均一に分散しているので、ポリマーアクチュエータ素子13は、図11(A)に示した平面状となる。ここで、電圧供給部19によって電圧印加状態とする(駆動用電圧Vdの印加を開始する)と、ポリマーアクチュエータ素子13は以下のような挙動を示す。すなわち、例えば電極膜52Aがマイナスの電位、電極膜52Bがプラスの電位となるように電極膜52A,52Bの間に所定の駆動電圧Vdを印加すると、イオン液体のうちの陽イオンが電極膜52A側に移動し、陰イオンは陽イオン交換膜である高分子化合物膜51中を移動できない。このため高分子化合物膜51では、その電極膜52A側が膨潤し、電極膜52B側が収縮する。これにより、ポリマーアクチュエータ素子13は全体として、図11(B)に示したように電極膜52B側に湾曲する。こののち、電極膜52A,52Bの間の電位差を無くして電圧無印加状態とする(駆動用電圧Vdの印加を停止する)と、高分子化合物膜51中において電極膜52A側に偏っていた陽イオンが拡散し、図11(A)に示した状態に戻る。また、図11(A)に示した電圧無印加状態から、電極膜52Aがプラスの電位、電極膜52Bがマイナスの電位となるように、電極膜52A,52Bの間に所定の駆動電圧Vdを印加すると、イオン液体のうちの陽イオンが電極膜52B側に移動する。この場合、高分子化合物膜51では、電極膜52A側が収縮し電極膜52B側が膨潤するので、ポリマーアクチュエータ素子13は全体として、電極膜52A側に湾曲する。
【0054】
(2.レンズモジュール4の動作)
次に、図12〜図15を参照して、撮像装置2(レンズモジュール4)全体の動作について、比較例(比較例1〜3)と比較しつつ詳細に説明する。ここで、図12〜図14はそれぞれ、比較例1〜比較例3に係る撮像装置におけるレンズモジュール(レンズモジュール100〜300)の構成および動作を表したものである。一方、図15は、本実施の形態の撮像装置2におけるレンズモジュール4の動作を側面図(Z−X側面図)で表したものであり、(A)は動作前の状態を、(B)は動作後の状態をそれぞれ示す。
【0055】
(比較例1)
図12(A)に示した比較例1に係るレンズモジュール100では、ガイド部101A,101B,102A,102Bを利用して、レンズ保持部材103およびレンズ104をその光軸Z1に沿って(光軸Z1と平行に)移動させている。具体的には、平板状のポリマーアクチュエータ素子105によってレンズ保持部材103を駆動させるようになっている。
【0056】
ところが、このレンズモジュール100では、ポリマーアクチュエータ素子105のトルク(駆動力)が、ガイド部101A,101B,102A,102Bでの摩擦に対して十分に大きい値ではない。このため、この比較例1では、レンズ104の移動動作にばらつきが生じてしまう。具体的には、例えば図12(B)に示したように、駆動力がある値(閾値Tth)になるまではレンズがほとんど移動しない一方、その閾値Tthを超えた途端に急激に移動してしまったり、その後も駆動力の増加に対して不安定に(非線形に)移動してしまったりする。
【0057】
(比較例2)
一方、図13に示した比較例2に係るレンズモジュール200では、レンズ204の光軸Z1方向に沿って、一対の平板状のポリマーアクチュエータ素子205A,205Bを、レンズ保持部材203の上下において対向配置させている(平行平板方式)。
【0058】
ところが、このレンズモジュール200では、レンズ204を平行状態に保ちつつ、その光軸Z1に沿って移動させるのが困難である。すなわち、レンズ204がその光軸Z1に対して平行に動作しなくなる場合が生じてしまう。
【0059】
(比較例3)
他方、図14に示した比較例3に係るレンズモジュール300では、図中の示したように、印加電圧の極性を異ならせて湾曲方向が互いに異なるようにした1組のポリマーアクチュエータ素子305A,305Bを組み合わせている。これにより、レンズ保持部材303およびレンズ304をその光軸Z1方向に移動させるようにしている。
【0060】
ところが、このレンズモジュール300においても、1組のポリマーアクチュエータ素子305A,305B間において、特性ばらつき等に起因した動作ばらつき(変形量のばらつき)が生じた場合、レンズ304をその光軸Z1方向に移動させるのが困難になる。すなわち、レンズ304がその光軸Z1に対して平行に動作しなくなったり、レンズ304がその光軸Z1に対して傾いてしまう場合が生じる。
【0061】
このようにして、これらの比較例1〜3のレンズモジュール100〜300(比較例1〜3に係るポリマーアクチュエータ素子を用いたレンズ駆動装置)では、駆動対象物であるレンズ40を精度良く移動させる(ここでは、レンズの光軸Z1方向に沿って精度良く移動させる)のが困難である。
【0062】
(本実施の形態)
これに対して、本実施の形態の撮像装置2におけるレンズモジュール4では、図3、図4および図15(A),(B)に示したようにして、駆動対象物であるレンズ40が駆動される。すなわち、ポリマーアクチュエータ素子13の他端側(可動側)が変形(湾曲)するとともに、それに伴って支持部材18A,18(または支持部材18)の他端側も変形(湾曲)することにより、レンズ保持部材14が駆動される。その結果、レンズ40が移動可能(変位可能)となる。具体的には、ここでは、レンズ40がその光軸Z1に沿って移動可能となる。
【0063】
このとき、本実施の形態では、レンズ40の一方側(上方側)にのみ、単一のポリマーアクチュエータ素子13が設けられており、レンズ40の他方側(下方側)には支持部材18A,18Bが設けられている(ポリマーアクチュエータ素子が設けられていない)。これにより、例えば複数のポリマーアクチュエータ素子を用いた場合(上記比較例2,3に対応)のような、それら複数の素子間での特性ばらつき(変形量のばらつき等)が発生しなくなる。したがって、本実施の形態のレンズモジュール4では、上記比較例1〜3と比べ、駆動対象物であるレンズ40が、平行状態を保ったまま移動し易くなる。具体的には、保持部14B(およびレンズ40)が、ベース部材11に対して平行状態を保ったまま、Z軸方向に駆動し易くなる。すなわち、レンズ40がその光軸Z1に沿って移動し易くなる。
【0064】
この際、レンズ保持部材14は、連結部材151A,151B,152を介して駆動される。これにより、例えば図15(B)に示したように、保持部14B(およびレンズ40)がベース部材11に対して平行状態を保ったまま、Z軸方向に駆動し易くなる。すなわち、レンズ40がその光軸Z1に沿って移動し易くなる。
【0065】
また、本実施の形態では特に、レンズ保持部材14が連結部材151A,151B,152を介して駆動されると共に、これらの連結部材151A,151B,152がそれぞれ、ポリマーアクチュエータ素子13と同等以下の剛性を有している。そして、ポリマーアクチュエータ素子13と支持部材18A,18Bとが、同一の方向に変位する。これにより、連結部材151A,151B,152がポリマーアクチュエータ素子13の湾曲方向とは逆方向に湾曲する自由度が生まれる。そのため、ポリマーアクチュエータ素子13と連結部材151A,151B,152とからなる片持ち梁における断面形状が、S字状の曲線を描くようになる。その結果、接続部14AがZ軸方向に沿って平行移動することが可能となり、保持部14B(およびレンズ40)がベース部材11に対して平行状態を保ったまま、Z軸方向に駆動し易くなる(レンズ40がその光軸Z1に沿って更に移動し易くなる)。
【0066】
以上のように本実施の形態では、レンズ40の一方側に単一のポリマーアクチュエータ素子13を設けると共に、レンズ40の他方側には支持部材18A,18Bを設けるようにしたので、レンズ40が平行状態を保ったまま移動し易くなる。よって、レンズ40を精度良く移動させる(ここでは、レンズ40をその光軸Z1方向に精度良く移動させる)ことが可能となる。これにより、正確なフォーカシングやズーミングなどを行うことができ、十分な光学性能を得ることが可能となる。
【0067】
<変形例>
以上、実施の形態を挙げて本開示の技術を説明したが、本技術はこの実施の形態に限定されず、種々の変形が可能である。
【0068】
例えば、上記実施の形態で説明した接続部14Aおよび連結部材151A,151B,152はそれぞれ、場合によっては設けないようにしてもよい。すなわち、例えば、ポリマーアクチュエータ素子13および支持部18A,18B(または支持部18)の各他端と、レンズ保持部材14(または保持部14B)の端部とが、直接接続されているようにしてもよい。
【0069】
また、上記実施の形態では、ポリマーアクチュエータ素子13の一端側が固定用部材12によって直接固定されている場合について説明したが、この場合には限られない。すなわち、例えば、ポリマーアクチュエータ素子の一端側が、固定用部材によって間接的に(固定電極等を介して)固定されているようにしてもよい。
【0070】
更に、ポリマーアクチュエータ素子および支持部材の形状や材料等については、上記実施の形態に示したものには限定されず、またポリマーアクチュエータ素子の積層構造についても、上記実施の形態等で説明したものに限定されず、適宜変更可能である。例えば、場合によっては、連結部材が、各ポリマーアクチュエータ素子よりも大きな曲げ剛性を有する材料から構成されているようにしてもよい。また、レンズモジュール(駆動装置)における他の部材の形状や材料等についても、上記実施の形態で説明したものには限られない。
【0071】
加えて、上記実施の形態では、本開示の駆動装置の一例として、駆動対象物であるレンズをその光軸に沿って駆動するレンズ駆動装置を挙げて説明したが、その場合には限られず、例えば、レンズ駆動装置がレンズをその光軸と直交する方向に沿って駆動するようにしてもよい。また、本開示の駆動装置は、そのようなレンズ駆動装置以外にも、例えば絞り(特開2008−259381号公報等参照)等の他の駆動対象物を駆動する駆動装置等にも適用することが可能である。更に、本開示の駆動装置、レンズモジュールおよび撮像装置は、上記実施の形態で説明した携帯電話機以外にも、種々の電子機器に適用することが可能である。
【0072】
なお、本技術は以下のような構成を取ることも可能である。
(1)
駆動対象物を保持するための保持部材と、
前記駆動対象物の一方側に配設された単一のポリマーアクチュエータ素子と、
前記駆動対象物の他方側に配設された1または複数の支持部材と、
前記ポリマーアクチュエータ素子および前記支持部材の各一端を、直接もしくは間接的に固定する固定用部材と
を備え、
前記ポリマーアクチュエータ素子および前記支持部材の各他端と前記保持部材の端部とが、直接もしくは間接的に接続されている
駆動装置。
(2)
前記ポリマーアクチュエータ素子の曲げ剛性と前記支持部材の曲げ剛性とが、互いに略等しい
上記(1)に記載の駆動装置。
(3)
前記支持部材の縦弾性係数が、前記ポリマーアクチュエータ素子の縦弾性係数よりも大きい
上記(2)に記載の駆動装置。
(4)
前記ポリマーアクチュエータ素子における駆動面の面積が、前記支持部材における支持面の面積よりも大きい
上記(3)に記載の駆動装置。
(5)
前記ポリマーアクチュエータ素子は、前記駆動対象物に対向するように形成された第1の開口を有する
上記(4)に記載の駆動装置。
(6)
前記ポリマーアクチュエータ素子および前記支持部材の各他端と前記保持部材の端部とを連結する連結部材を備えた
上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の駆動装置。
(7)
前記保持部材が、
前記駆動対象物を保持する保持部と、
前記保持部を支持すると共に前記保持部と前記連結部材とを接続する接続部と
を有し、
前記ポリマーアクチュエータ素子の駆動面と前記支持部材の支持面との間に、前記保持部が配置されている
上記(6)に記載の駆動装置。
(8)
前記固定用部材に、前記保持部を部分的に挟む込むための第2の開口が形成されている
上記(7)に記載の駆動装置。
(9)
前記支持部材および前記ポリマーアクチュエータ素子のうちの少なくとも一方が、
前記固定用部材に固定された固定部と、
前記固定部の両端部に設けられ、前記ポリマーアクチュエータ素子の駆動面または前記支持部材の支持面を構成する一対の突出部と
を有する上記(6)ないし(8)のいずれかに記載の駆動装置。
(10)
各突出部の幅が、前記固定部側から先端側へと向けて徐々に狭くなっている
上記(9)に記載の駆動装置。
(11)
前記連結部材は、前記ポリマーアクチュエータ素子と同等以下の曲げ剛性を有する
上記(6)ないし(10)のいずれかに記載の駆動装置。
(12)
前記連結部材が、フレキシブルフィルムからなる
上記(11)に記載の駆動装置。
(13)
前記固定用部材において、前記ポリマーアクチュエータ素子および前記支持部材の可動端側の角部が面取りされている
上記(1)ないし(12)のいずれかに記載の駆動装置。
(14)
前記ポリマーアクチュエータ素子は、
一対の電極膜と、
前記一対の電極膜の間に挿設された高分子膜と
を有する上記(1)ないし(13)のいずれかに記載のレンズ駆動装置。
(15)
前記駆動対象物がレンズであり、
前記レンズを駆動するレンズ駆動装置として構成されている
上記(1)ないし(14)のいずれかに記載の駆動装置。
(16)
前記ポリマーアクチュエータ素子の駆動面と前記支持部材の支持面とが、前記レンズの光軸に沿って互いに対向している
上記(15)に記載の駆動装置。
(17)
レンズと、
前記レンズを駆動する駆動装置と
を備え、
前記駆動装置は、
前記レンズを保持するための保持部材と、
前記レンズの一方側に配設された単一のポリマーアクチュエータ素子と、
前記レンズの他方側に配設された1または複数の支持部材と、
前記ポリマーアクチュエータ素子および前記支持部材の各一端を、直接もしくは間接的に固定する固定用部材と
を有し、
前記ポリマーアクチュエータ素子および前記支持部材の各他端と前記保持部材の端部とが、直接もしくは間接的に接続されている
レンズモジュール。
(18)
レンズと、
前記レンズにより結像されてなる撮像信号を取得する撮像素子と、
前記レンズを駆動する駆動装置と
を備え、
前記駆動装置は、
前記レンズを保持するための保持部材と、
前記レンズの一方側に配設された単一のポリマーアクチュエータ素子と、
前記レンズの他方側に配設された1または複数の支持部材と、
前記ポリマーアクチュエータ素子および前記支持部材の各一端を、直接もしくは間接的に固定する固定用部材と
を有し、
前記ポリマーアクチュエータ素子および前記支持部材の各他端と前記保持部材の端部とが、直接もしくは間接的に接続されている
撮像装置。
【符号の説明】
【0073】
11…ベース部材、12…固定用部材、13…ポリマーアクチュエータ素子、14…レンズ保持部材、14A…接続部、14B…保持部、151A,151B,152…連結部材、16…押え部材、17A…ホール素子、17B…磁石、18,18A,18B…支持部材、19…電圧供給部、2…撮像装置、3…撮像素子、4…レンズモジュール、40…レンズ、51…高分子化合物膜、52A,52B…電極膜、8…携帯電話機、Z1…光軸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動対象物を保持するための保持部材と、
前記駆動対象物の一方側に配設された単一のポリマーアクチュエータ素子と、
前記駆動対象物の他方側に配設された1または複数の支持部材と、
前記ポリマーアクチュエータ素子および前記支持部材の各一端を、直接もしくは間接的に固定する固定用部材と
を備え、
前記ポリマーアクチュエータ素子および前記支持部材の各他端と前記保持部材の端部とが、直接もしくは間接的に接続されている
駆動装置。
【請求項2】
前記ポリマーアクチュエータ素子の曲げ剛性と前記支持部材の曲げ剛性とが、互いに略等しい
請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記支持部材の縦弾性係数が、前記ポリマーアクチュエータ素子の縦弾性係数よりも大きい
請求項2に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記ポリマーアクチュエータ素子における駆動面の面積が、前記支持部材における支持面の面積よりも大きい
請求項3に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記ポリマーアクチュエータ素子は、前記駆動対象物の対向領域に形成された第1の開口を有する
請求項4に記載の駆動装置。
【請求項6】
前記ポリマーアクチュエータ素子および前記支持部材の各他端と前記保持部材の端部とを連結する連結部材を備えた
請求項1に記載の駆動装置。
【請求項7】
前記保持部材が、
前記駆動対象物を保持する保持部と、
前記保持部を支持すると共に前記保持部と前記連結部材とを接続する接続部と
を有し、
前記ポリマーアクチュエータ素子の駆動面と前記支持部材の支持面との間に、前記保持部が配置されている
請求項6に記載の駆動装置。
【請求項8】
前記固定用部材に、前記保持部を部分的に挟む込むための第2の開口が形成されている
請求項7に記載の駆動装置。
【請求項9】
前記支持部材および前記ポリマーアクチュエータ素子のうちの少なくとも一方が、
前記固定用部材に固定された固定部と、
前記固定部の両端部に設けられ、前記ポリマーアクチュエータ素子の駆動面または前記支持部材の支持面を構成する一対の突出部と
を有する請求項6に記載の駆動装置。
【請求項10】
各突出部の幅が、前記固定部側から先端側へと向けて徐々に狭くなっている
請求項9に記載の駆動装置。
【請求項11】
前記連結部材は、前記ポリマーアクチュエータ素子と同等以下の曲げ剛性を有する
請求項6に記載の駆動装置。
【請求項12】
前記連結部材が、フレキシブルフィルムからなる
請求項11に記載の駆動装置。
【請求項13】
前記固定用部材において、前記ポリマーアクチュエータ素子および前記支持部材の可動端側の角部が面取りされている
請求項1に記載の駆動装置。
【請求項14】
前記ポリマーアクチュエータ素子は、
一対の電極膜と、
前記一対の電極膜の間に挿設された高分子膜と
を有する請求項1に記載のレンズ駆動装置。
【請求項15】
前記駆動対象物がレンズであり、
前記レンズを駆動するレンズ駆動装置として構成されている
請求項1に記載の駆動装置。
【請求項16】
前記ポリマーアクチュエータ素子の駆動面と前記支持部材の支持面とが、前記レンズの光軸に沿って互いに対向している
請求項15に記載の駆動装置。
【請求項17】
レンズと、
前記レンズを駆動する駆動装置と
を備え、
前記駆動装置は、
前記レンズを保持するための保持部材と、
前記レンズの一方側に配設された単一のポリマーアクチュエータ素子と、
前記レンズの他方側に配設された1または複数の支持部材と、
前記ポリマーアクチュエータ素子および前記支持部材の各一端を、直接もしくは間接的に固定する固定用部材と
を有し、
前記ポリマーアクチュエータ素子および前記支持部材の各他端と前記保持部材の端部とが、直接もしくは間接的に接続されている
レンズモジュール。
【請求項18】
レンズと、
前記レンズにより結像されてなる撮像信号を取得する撮像素子と、
前記レンズを駆動する駆動装置と
を備え、
前記駆動装置は、
前記レンズを保持するための保持部材と、
前記レンズの一方側に配設された単一のポリマーアクチュエータ素子と、
前記レンズの他方側に配設された1または複数の支持部材と、
前記ポリマーアクチュエータ素子および前記支持部材の各一端を、直接もしくは間接的に固定する固定用部材と
を有し、
前記ポリマーアクチュエータ素子および前記支持部材の各他端と前記保持部材の端部とが、直接もしくは間接的に接続されている
撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−48502(P2013−48502A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185529(P2011−185529)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】