説明

駆動装置

【課題】SMAアクチュエータを用いた駆動装置において、繰り返し動作によるSMAの金属疲労の進行速度を減速でき、SMA性能の劣化を抑制することを可能とする。
【解決手段】伸縮により被駆動体を移動させる駆動力を変位入力部に発生する線状のSMAワイヤ3Lと、ベース部材から突設され、SMAワイヤ3Lの一部を第1の方向AR1に沿って内部にて固定する保持部材33aと、SMAワイヤ3Lを伸縮させる駆動手段と、を備える駆動装置100において、第1の方向AR1を、該駆動手段によるSMAワイヤ3Lの伸縮時において変化する保持部材33aから変位入力部に至る駆動時保持部材力点間方向ARmのうち、一の方向である第2の方向AR2に一致させることにより、SMA性能の劣化を抑制に寄与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形状記憶合金アクチュエータを用いた駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カメラ付き携帯電話機等に搭載される撮像素子の画素数が増大する等、高画質化が飛躍的に進んでおり、これに伴い、画像撮影という基本機能に加えて、フォーカス機能やズーム機能等を付加することが求められている。
【0003】
これらの機能を付加するには、レンズを光軸方向に移動させるレンズ駆動装置が必要であり、最近では、形状記憶合金(Shape Memory Alloy:SMAと称する)アクチュエータを用いたレンズ駆動装置の適用が種々検討されている。この装置は、SMAを通電加熱する等して収縮力を発生させ、該収縮力をレンズ駆動力として利用するもので、小型化、軽量化が容易で、また、比較的大きな駆動力を得ることができるという利点がある。
【0004】
SMAアクチュエータを適用したレンズ駆動装置としては、例えば、特許文献1が開示する駆動装置の構成では、支点と摺動部材に当接する作用点とを有し、該支点を通過する軸線回りに揺動可能であって、該撮影レンズの光軸方向に見たときに、該軸線から該作用点までの距離が、該軸線から該撮影レンズの縁までの距離よりも大きいレバー部材と、該レバー部材を駆動する形状記憶合金とで構成されている。
【0005】
また、特許文献2が開示する駆動装置の構成では、レバー部材が、該レバー部と固定部とを一体成形することによって構成されているので、弾性変形によって該固定部に対して該レバー部を変位可能に支持できるため、一般的に嵩張る軸支部を用いることなく、該ワイヤ部材の変形量を拡大したストロークを創り出すことができる構成となっている。
【0006】
さらに、特許文献3が開示する駆動装置の構成では、SMAが、被駆動体の移動方向に対して非平行であり、且つ、第1の当接点と支軸の揺動軸線とを含む平面に対して非平行であるように配置されているので、SMAの変形力を、効率よくレバー部材の回動に変換できる構成となっている。
【0007】
すなわち、特許文献1〜3のいずれの構成においても、レバー機構によりSMAの動作方向を変更したり、動作量を拡大したりする構成がとられている。
【0008】
一方、SMAの保持、固定方法として、例えば、特許文献4が開示する駆動装置の構成では、駆動装置の土台となるベース部材を貫通し、該ベース部材に固定される金属からなる棒状部材を有し、棒状部材の一端側において、該棒状部材がかしめられて、SMAが挟持され、該棒状部材の他端側には、SMAに電流を供給する為の通電接続部を備える構成がとられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−58075号公報
【特許文献2】特開2007−58076号公報
【特許文献3】特開2007−60530号公報
【特許文献4】特開2008−291834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、カメラ付き携帯電話機等に高性能なフォーカス機能やズーム機能等を付加する場合には、レンズの位置を制御し、所定の位置で停止させる必要がある。当然ながら、携帯電話機等が使用される期間、カメラも機能しなければならないため、機器には繰り返し動作が可能である必要がある。
【0011】
しかしながら、SMAは金属材料であるため、繰り返し動作によって金属疲労が生じ、劣化が進む。一般的には、500MPa以上の応力を与えたSMAの金属疲労の進行は速く、数千回以内に破断に至る可能性がある。すなわち、カメラ機器として数千回の繰り返し動作で機器が機能しなくなることは致命的な欠陥と言える。
【0012】
これに対して、上記特許文献1〜4の構成については、SMAの繰り返し動作による金属疲労、延いては、SMA性能の劣化を抑制する構成ついては特に考慮されていない。
【0013】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、SMAアクチュエータを用いた駆動装置を連続使用した場合において、繰り返し動作によるSMAの金属疲労の進行速度を減速でき、SMA性能の劣化を抑制することが可能な駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、所定の方向に往復移動自在に駆動される被駆動体と、伸縮により前記被駆動体を移動させる駆動力を所定の力点に発生する線状の形状記憶合金と、前記形状記憶合金の一部を第1の方向に沿って内部にて固定する保持部材と、前記形状記憶合金を伸縮させる駆動手段と、を備える駆動装置において、前記第1の方向を、前記保持部材から前記所定の力点に至り、前記駆動手段による前記形状記憶合金の伸縮時において変化する駆動時保持部材力点間方向のうち、一の方向である第2の方向に一致させたことを特徴とする。
【0015】
また、請求項2の発明は、請求項1に記載の駆動装置であって、前記第2の方向は、前記駆動手段によって前記駆動時保持部材力点間方向が前記保持部材を中心として変動する範囲の角度を二等分する直線方向を含む。
【0016】
また、請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載の駆動装置であって、前記保持部材は、前記形状記憶合金を前記第1の方向に沿って内部で挟持するカシメ部を有することを特徴とする。
【0017】
また、請求項4の発明は、請求項1ないし請求項3の何れかに記載の駆動装置であって、前記被駆動体がレンズユニットであり、前記被駆動体が駆動される方向が光軸方向であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1ないし請求項4の発明によれば、第1の方向を、前記保持部材から前記所定の力点に至り、駆動手段による形状記憶合金の伸縮時において変化する駆動時保持部材力点方向のうち、一の方向である第2の方向に一致させたことを特徴とする駆動装置である。これにより、駆動時に時々刻々変化する駆動時保持部材力点間方向と第1の方向との間に生じる曲げ角度を上記駆動時保持部材力点間方向に第1の方向を一致させない場合に比べ小さくすることができる。このため、上記曲げ角度に正の相関を有する曲げ応力等の該形状記憶合金の内部に発生する最大応力を小さくすることができる。その結果、繰り返し動作による該形状記憶合金内部の金属疲労の進行速度を減速でき、該形状記憶合金の劣化を抑制することが可能となる。
【0019】
請求項2の発明によれば、第2の方向は、駆動手段によって駆動時保持部材力点間方向が保持部材を中心として変動する範囲の角度を二等分する直線方向を含む。これにより、駆動時に時々刻々変化する駆動時保持部材力点間方向と第1の方向(=第2の方向)との間に生じる曲げ角度の最大値を最小にすることができる。このため、形状記憶合金の内部に発生する最大応力をさらに小さくすることができ、繰り返し動作による該形状記憶合金内部の金属疲労の進行速度をより減速でき、該形状記憶合金の劣化をさらに抑制することが可能となる。
【0020】
請求項3の発明によれば、保持部材は、形状記憶合金を挟持するカシメ部を備えることにより、該形状記憶合金を安定して保持することが可能となる。
【0021】
請求項4の発明によれば、被駆動体がレンズユニットであり、被駆動体が駆動される方向が光軸方向であることにより、請求項1ないし請求項3の発明と同様の効果を奏するレンズ駆動装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係る駆動装置の構成例を概略的に示す平面図である。
【図2】図1の駆動装置の構成を概略的に示す側面図である。
【図3】図1の駆動装置の構成を概略的に示す側面図である。
【図4】SMAアクチュエータの製造装置の構成例を概略的に示す平面図である。
【図5】SMAワイヤの一般的な応力特性について模式的に説明する図である。
【図6】SMAワイヤの一般的な応力特性について模式的に説明する図である。
【図7】本発明の実施形態に係る駆動装置のSMAワイヤの保持部材の周辺を説明する図である。
【図8】本発明の実施形態に係る駆動装置のSMAワイヤの保持部材の周辺を説明する図である。
【図9】本発明の実施形態に係る駆動装置の製造方法における一工程を示す説明図である。
【図10】本発明の実施形態に係る駆動装置の製造方法における一工程を示す説明図である。
【図11】本発明の実施形態に係る駆動装置の製造方法における一工程を示す説明図である。
【図12】本発明の実施形態に係る駆動装置の製造方法における一工程を示す説明図である。
【図13】従来の駆動装置の製造方法における一工程を示す説明図である。
【図14】従来の駆動装置の製造方法における一工程を示す説明図である。
【図15】従来の駆動装置の製造方法における一工程を示す説明図である。
【図16】従来の駆動装置の製造方法における一工程を示す説明図である。
【図17】従来の駆動装置のSMAワイヤの保持部材の周辺を説明する図である。
【図18】従来の駆動装置のSMAワイヤの保持部材の周辺を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、図面においては同様な構成および機能を有する部分については同じ符号が付されており、下記説明では重複説明が省略される。また、図面は模式的に示されたものであり、各図における各種構造のサイズおよび位置関係等は正確に図示されたものではない。なお、説明の便宜上、図4及び図5には直交するXYZの3軸が付されている。また、図7、図8、図11、図14、図15及び図17に示された角度については、反時計回りに+とし、時計回りに−として示す。
【0024】
<1.駆動装置および駆動装置の製造方法の概要>
発明の実施形態の説明に先立って、SMAを用いたアクチュエータ(SMAアクチュエータ)の適用例の基本構成について図1〜図3を用いて説明し、SMAアクチュエータを駆動源とする駆動装置におけるSMAアクチュエータの製造方法について図4を用いて説明する。
【0025】
<1−1.駆動装置の全体構成>
図1〜図3は、SMAを用いたアクチュエータを駆動源とする駆動装置100の主要構成部分を概略的に示しており、図1は、レンズ側から見た平面図であり、図2および図3は、図1における矢示A1方向から見た側面図を示している。なお、図2は、駆動前の状態を、図3は、駆動後の状態を表している。
【0026】
この駆動装置100は、主に、被駆動体1(例えば、撮像レンズを備えるレンズユニット)をその軸線(例えば光軸)AX方向に移動する駆動装置であって、貫通孔部4aを有するベース部材4と、貫通孔部4aの軸線AXに沿う方向に往復移動自在に駆動される被駆動体1と、伸縮により被駆動体1を移動させる駆動力を所定の力点(後述の変位入力部2aに相当)に発生する線状の形状記憶合金3(SMAアクチュエータ)3と、該SMAアクチュエータ3から駆動力を受けて被駆動体1を移動させるレバー部材2と、を備えた構成とされている。また、天板5、平行板バネ6a,6bおよびバイアスバネ7等を備え、ベース部材4に対して被駆動体1等が組み付けられた構成となっている。天板5および平行板バネ6a,6bは、便宜上、図1では省略している。なお、駆動装置100は、バッテリー駆動の携帯機器等に搭載されるものである。
【0027】
ベース部材4は、駆動装置100の取り付け対象となる部材(例えば携帯電話機のフレームやマウント基板等)に固定されるものであり、駆動装置100の底辺を構成する不動の部材である。このベース部材4は、平面視正方形の板状に形成され、全体が樹脂材料等により構成されている。なお、ベース部材4には、撮像センサが取付けられるが、図示は省略している。
【0028】
被駆動体1は円筒形を有し、撮像レンズ10と、この撮像レンズ10を保持するレンズ駆動枠12と、該レンズ駆動枠12が収納される鏡筒14とから構成されている。撮像レンズ10は、対物レンズ、フォーカスレンズ、ズームレンズ等を有し、図外の撮像素子に対する被写体像の結像光学系を構成している。レンズ駆動枠12は、所謂玉枠(「キャリア」とも称される)であって、鏡筒14と共に軸線AX方向に移動する。レンズ駆動枠12の対物側先端の外周縁部には、周方向に180°の角度差を有して一対の支持部16が突設されている。
【0029】
被駆動体1は、天板5に形成される開口部分に挿入された状態でベース部材4上に配置されている。詳しくは、一対の支持部16がベース部材4の一対の対角の近傍に位置するように配置されている(図1参照)。
【0030】
ベース部材4および天板5には、それぞれ平行板バネ6a,6bが固定されており、これら平行板バネ6a,6bに被駆動体1が固定されている。これによって被駆動体1がベース部材4等に対して変位可能に支持されると共に、その変位自由度が、軸線AXに沿った方向に規制されている。なお、天板5は、ベース部材4に対して図示しない支柱等を介して固定しても良いし、ベース部材4と一体となる構造でも良い。
【0031】
レバー部材2は、支持部16を介して被駆動体1に係合することによって被駆動体1に軸線AX方向の駆動力を付与するものである。
【0032】
このレバー部材2は、被駆動体1の側方、具体的には、ベース部材4の角部であって被駆動体1の支持部16が位置する角部以外の一の角部に設置されている。このレバー部材2は、軸線AXと直交し、かつ一対の支持部16の並び方向(図1では上下方向)に延びる軸線回りに揺動可能に支持されている。
【0033】
図2に示すように、レバー部材2は、アーム部分21と、このアーム部分21の基端部分から軸線AX方向に延びる延設部分22とを有した側面視逆L字型の形状を有しており、アーム部分21と延設部分22との境界近傍領域に位置する延設部分22の屈曲部分が、ベース部材4に立設された支持脚8の先端で支持されることによってベース部材4上に支持されている。
【0034】
支持脚8の先端(以下、レバー支持部8aという)の形状は、軸線AX方向と直交する方向(図2の紙面と直交する方向)に延びる略円柱形状とされている。これにより、レバー部材2が、当該レバー支持部8aを支点として軸線AX方向と直交する軸線回りに揺動可能に支持されている。
【0035】
アーム部分21は平面視で円弧状に形成されている。詳しくは、図1に示すように、延設部分22からから被駆動体1の両側に二股に分かれて当該被駆動体1の外周面に近接してそれぞれ均等に延び、全体として被駆動体1の片側半分を包囲するように形成されている。アーム部分21の先端(両端)は、それぞれ被駆動体1の各支持部16の位置に達している。そして、延設部分22にSMAアクチュエータ3が架け渡され、この架け渡し位置(変位入力部2aという)に軸線AX方向と直交する方向の移動力F1(図3参照)が入力されることにより、レバー部材2が揺動する。この揺動に伴いアーム部分21の先端(変位出力部2bという)が軸線AX方向に変位し、当該変位出力部2bが各支持部16に係合して被駆動体1に軸線AX方向の駆動力が付与されることとなる。
【0036】
SMAアクチュエータ3は、レバー部材2に対して移動力F1(図3参照)を付与するもので、例えばNi−Ti合金等のSMAワイヤ3L(後述する図4参照)で構成される線状のアクチュエータである。このSMAアクチュエータ3は、低温で弾性係数が低い状態(マルテンサイト相)において所定の張力を与えられることで伸長し、この伸長状態において熱が与えられると相変態して弾性係数が高い状態(オーステナイト相:母相)に移行し、伸長状態から元の長さに戻る(形状回復する)という性質を有している。すなわち、SMAアクチュエータ3は、SMAワイヤ3Lの温度変化による形状復元力を利用して対象物の移動を行うアクチュエータである。
【0037】
形状記憶合金を伸縮させる駆動手段として本例では、SMAアクチュエータ3を通電加熱することで、上述の相変態を行わせる構成が採用されている。すなわち、SMAアクチュエータ3は所定の抵抗値を有する導体であることから、当該SMAアクチュエータ3自身に通電することでジュール熱を発生させ、該ジュール熱に基づく自己発熱によりマルテンサイト相からオーステナイト相へ変態させる構成とされている。このため、SMAワイヤ3Lの両端には、通電加熱用の第1電極30aおよび第2電極30bが固着されている。これら電極30a,30bはベース部材4から突設される所定の保持部材33a,33bにそれぞれ固定されている。この保持部材33a,33bは、SMAワイヤ3Lの一部を第1の方向AR1に沿って内部にて固定する(保持部材33aの周辺においては、後述する図17参照)。また、保持部材33a,33bは、SMAワイヤ3Lを第1の方向AR1に沿って内部で挟持するカシメ部SPを有する(保持部材33aの周辺においては、後述する図18参照)。これにより、SMAワイヤ3Lを安定して保持することが可能となる。
【0038】
SMAアクチュエータ3は、図1に示すように、レバー部材2の延設部分22に係合する部分を折り返し地点として、電極30aおよび30bの間に架け渡されている。かかる構成により、SMAアクチュエータ3が電極30a,30bを介して通電加熱され、作動(収縮)すると、レバー部材2に対して移動力F1(図3参照)が付与され、この移動力F1によりレバー部材2が揺動することとなる。
【0039】
なお、電極30a,30bは、ベース部材4のうち被駆動体1の支持部16の近傍にそれぞれ配置されている。SMAアクチュエータ3のうち各電極30a,30bから折り返し地点までのそれぞれの長さは等しく設定されており、これによって変位入力部2a両側のSMAアクチュエータ3の伸縮量が等しくなってSMAアクチュエータ3作動時のレバー部材2とSMAアクチュエータ3との擦れが防止される。また、延設部分22にはV溝21a(上記変位入力部2aに相当する)が形成されており、当該V溝21aに嵌り込むようにSMAアクチュエータ3が架け渡されることにより、レバー部材2に対してSMAアクチュエータ3が安定的に懸架されている。
【0040】
バイアスバネ7は、SMAアクチュエータ3の作動(収縮)により変位出力部2bが移動する向きとは逆向に、被駆動体1を軸線AX方向に付勢するものである。このバイアスバネ7は、レンズ駆動枠12の周縁サイズと略合致した径の圧縮コイルバネからなり、レンズ駆動枠12の頂面に一端側(下端側)が当接している。なお、内壁Nは、図示しない枠部材の面のうちベース部材4側の面であり、該枠部材は図示しない支柱等によりベース部材4に対して固定されている。該枠部材には、撮像レンズ10の径と略合致した径の開口部が設けられており、バイアスバネ7の他端側(上端側)は、内壁Nにおける該開口部の周縁部に当接される。
【0041】
なお、SMAアクチュエータ3は、作動していない状態では、被駆動体1(支持部16)およびレバー部材2を介して作用するバイアスバネ7の押圧力を受けて緊張するようにその線長が設定されている。つまり、その作動状態に拘わらず、常にレバー部材2(アーム部分21)を被駆動体1(支持部16)に当接(圧接)させるようにその線長が設定されている。この構成により、当実施形態では、支持脚8とレバー部材2とを直接連結することなく支持脚8の先端にレバー部材2を揺動可能に支持しており、また、SMAアクチュエータ3の作動時には、その変位を速やかに伝えて当該レバー部材2を揺動させる構成となっている。
【0042】
<1−2.駆動装置を製造するための製造装置>
図4は、本実施形態に係る駆動装置100(図1〜図3)を製造するために用いるSMAアクチュエータ3の製造装置300の主要構成部分の構成例を概略的に示している。図4は、製造装置300を撮像レンズ10の軸線方向から見た平面図である。
【0043】
製造装置300は、ポンチ51a、51b、変位計52、スライダ53a,53b、制御部55を主に備えて構成されている。製造装置300は、SMAワイヤ3Lが未だ張られていない半完状態の駆動装置100一式(「ワーク」とも称される)にSMAワイヤ3Lを張架することにより、ワークにおけるSMAアクチュエータ3を製造する装置である。なお、製造装置300によるSMAアクチュエータ3の製造は、ワークが調整台56に載置された状態で行われる。
【0044】
<1−2−1.制御部55>
制御部55は、製造装置300の各機能要素を統轄制御する制御処理装置である。制御部55は、例えば、汎用のコンピュータ、または専用のハードウエア回路などによって構成される。制御部55は、変位計52が取得するレンズ駆動枠12の変位を示す信号を処理し、該処理の結果に基づいてポンチ51aおよび51bと、スライダ53a,53bとを制御する。
【0045】
<1−2−2.スライダ53a,53b>
スライダ53a,53bは、保持部材33aおよび33bにそれぞれ設けられた電極30aおよび30bにSMAワイヤ3Lが固定される前に、SMAワイヤ3Lを張架状態に保持する張架部である。スライダ53a,53bは、SMAワイヤ3Lの一部をそれぞれ保持可能なSMA線保持部54aおよび54bを備えている。SMA線保持部54aに一部を保持されたSMAワイヤ3Lは、電極30a、延設部分22に設けられたV溝21a、および電極30bを順次に経由してSMA線保持部54bにその一部を保持される。スライダ53a,53bは、その底部に車輪を備えるとともに内部に該車輪の駆動機構を備え、調整台56上を、矢印Ya,Ybに沿って移動可能である。スライダ53a,53bは、V溝21aなどを経由してSMA線保持部54aおよび54bのそれぞれによってSMAワイヤ3Lが張架状態に保持された状態で、矢印Ya,Ybに沿って移動することにより、SMAワイヤ3Lに付与する張力を調整可能である。スライダ53a,53bの動作は、通信回線を介して制御部55により制御される。
【0046】
なお、図4では、実線で示されたスライダ53a,53bの位置がSMAワイヤ3Lの駆動前の状態を示し、破線で示されたスライダ53a,53bの位置がSMAワイヤ3Lの駆動中の状態を示している。
【0047】
<1−2−3.変位計52>
変位計52は、例えば、レーザ変位計などによって構成され、駆動装置100のレンズ駆動枠12上に不図示の支柱等を介して保持されている。変位計52は、レンズ駆動枠12と変位計52との距離、すなわち変位計52に対するレンズ駆動枠12の変位を測定し、測定した距離を示す信号を、通信回線を介して制御部55に供給する。制御部55は、当該距離と、予め取得されている変位計52とベース部材4との距離とに基づいて、ベース部材4に対するレンズ駆動枠12の変位を取得する。
【0048】
<1−2−4.ポンチ51aおよび51b>
ポンチ51aおよび51bは、スライダ53a,53bによりSMAワイヤ3Lが張架された状態において、形状記憶合金ワイヤを加熱する加熱部として機能するとともに、SMAワイヤ3Lを、保持部材33aおよび33bにそれぞれ設けられた電極30aおよび30bにそれぞれ固定する固定部としても機能する。
【0049】
ポンチ51aおよび51bの動作は、不図示の駆動装置を介して制御部55により制御される。ポンチ51aおよびポンチ51bの位置は、該駆動装置によってZ軸方向に沿って移動され得るとともに、その、移動力が該駆動装置により変更され得る。なお、駆動装置100の内壁(図2参照)に係る枠部材と、天板5(図2参照)とには、ポンチ51aおよび51bのそれぞれのZ軸方向に沿った各動線との交差部分にポンチ51aおよび51bがそれぞれ通過可能な貫通孔がそれぞれ設けられている。
【0050】
ポンチ51aおよび51bは、それぞれの先端部(不図示)が、電極30aおよび30bに接触した状態で、電極30aおよび30bに接触したSMAワイヤ3Lに対して通電を行うことにより、SMAワイヤ3Lを加熱可能に構成されている。また、該通電に係る電流は変更可能に構成されている。
【0051】
ポンチ51aおよび51bによるSMAワイヤ3Lの電極30aおよび30bへの固定処理においては、先ず、制御部55は、ポンチ51aおよび51bによるSMAワイヤ3Lの加熱状態が、予め設定された加熱状態となるようにポンチ51aおよび51bによるSMAワイヤ3Lへの通電電流を予め設定された値に制御する。さらに、制御部55は、該加熱状態のSMAワイヤ3Lによってレンズ駆動枠12が予め設定された位置に保持されるように、変位計52の出力信号に基づいてスライダ53a,53bがSMAワイヤ3Lに付与する張力を調整する。張力についての該調整が行われている状態で、ポンチ51aおよび51bは、制御部55の制御によって移動力を増加させて先端部にそれぞれ接触した保持部材33aおよび33bを、かしめることにより、SMAワイヤ3Lを、カシメ部SPにそれぞれ固定する。
【0052】
SMAワイヤ3Lがカシメ部SPに固定された状態で、制御部55が、不図示の切断部を制御して、SMAワイヤ3Lのうち電極30aおよび30bからそれぞれSMA線保持部54aおよび54b側へとはみ出ている各部を切断することにより駆動装置100におけるSMAアクチュエータ3が製造される。
【0053】
<1−3.SMAワイヤの一般的な応力特性と駆動装置への適用上における事情>
ここで、SMAワイヤ3Lの一般的な応力特性について図5及び図6を参照して説明する。図5はSMAワイヤ3Lの一部を曲げた際、SMAワイヤ3L自身に発生する応力状態の数値計算結果を模式的に説明する図であり、このうち、図5(a)はYZ平面の+X軸側のSMAワイヤ3Lの側面の応力状態を+X軸側に垂直投影した図であり、図5(b)はXY平面の+Z軸側(または−Z軸側)のSMAワイヤ3Lの側面の応力状態を+Z軸側(または−Z軸側)に垂直投影した図であり、図5(c)はYZ平面の−X軸側のSMAワイヤ3Lの側面の応力状態を−X軸側に垂直投影した図である。
【0054】
図5(a)及び図5(b)で示されるように、SMAワイヤ3Lが曲げられた箇所の内側のエリアRcでは圧縮応力が最大(引っ張り応力が最小)となり、逆に、図5(b)及び図5(c)で示されるように、SMAワイヤ3Lが曲げられた箇所の外側のエリアRtでは圧縮応力が最小(引っ張り応力が最大)となることがわかる。このように、SMAワイヤ3Lの一般的な応力特性として、SMAワイヤ3Lの曲げられた内側領域(図5のエリアRc)では圧縮応力が卓越し、逆にSMAワイヤ3Lの曲げられた外側領域(図5のエリアRt)では引っ張り応力が卓越することになる。
【0055】
以下、SMAワイヤ3Lの圧縮応力と引っ張り応力とを合わせたものが曲げ応力であり、圧縮応力の絶対値と引っ張り応力の絶対値との総和が相対的に最も大きくなる部分の応力を最大応力と定義すると、SMAワイヤ3L内部で働く曲げ応力は曲げ角度に正の相関を有し、曲げられた領域(図5のエリアRc,Rt周辺)の応力が最大応力となる。
【0056】
また、図6は、SMAワイヤ3Lを駆動装置に組み込んだ際にSMAワイヤ3Lへの負荷荷重に対する強度を概略的に説明するグラフであり、縦軸はSMAワイヤ3Lに与える負荷荷重であり、横軸はSMAワイヤ3Lが破断に至るまでの繰り返し動作回数を示している。
【0057】
図6のグラフで示されるように、SMAワイヤ3Lに負荷荷重を与えてゆくと、SMAワイヤ3Lが破断に至るまでの繰り返し動作回数が、減少してゆく傾向にあり、500MPa程度の負荷荷重が与えられると数千回程度の繰り返し動作回数で破断に至ることがわかる。これは、負荷荷重の増加に伴ってSMAワイヤ3L内部に発生する応力が増加してゆき、SMAワイヤ3Lの金属疲労の進行が促進されるためである。このように、SMAワイヤ3Lの一般的な応力特性として、500MPa以上の負荷荷重がSMAワイヤ3Lに与えられた場合、SMAワイヤ3Lの金属疲労の進行は速く、数千回以内の繰り返し動作回数で破断に至る可能性がある。
【0058】
続いて、SMAワイヤ3Lの駆動装置への適用上における事情を以下説明する。
【0059】
図13〜図16は、駆動装置におけるSMAワイヤ3Lの従来の機器組込方法を模式的に説明する図である。図13〜図16で示されるように、駆動装置において、SMAワイヤ3Lの従来の機器組込方法には、大別すると下記(i)〜(iv)の4つの工程に分けられる。
【0060】
(i)まず、図13で示されるように、片方の電極30aにSMAワイヤ3Lを通した状態で、この電極30aをカシメてSMAワイヤ3Lの片側を固定する(図14参照)。
【0061】
(ii)次に、図14で示されるように、SMAワイヤ3Lを、電極33aを中心として回転させながら、もう片一方の電極30bへと導き、この電極30bにSMAワイヤ3Lを通す。
【0062】
(iii)さらに、図15で示されるように、図14で示される状態でもう片一方の電極30bにカシメてSMAワイヤ3Lを固定する。
【0063】
(iv)最後に、図16で示されるように、固定されたSMAワイヤ3Lの両側の不要部分をカット除去してSMAワイヤ3Lの架設が完了する。
【0064】
図17はこのように架設されたSMAワイヤ3Lの電極30a及び保持部材33aの周辺を拡大して示した図であり、図18は図17の領域R1をさらに拡大して示した図である。以下、便宜上、SMAワイヤ3Lがカシメて固定された後は、保持部材33a(保持部材33b)内部を含み保持部材33a(保持部材33b)からベース部材4の外部にある製造装置300に伸びるSMAワイヤ3LをSMAワイヤ3L1と称し、保持部材33a(保持部材33b)から変位入力部2bに至るまでのSMAワイヤ3LをSMAワイヤ3L2と称するが、一般的にSMAワイヤを表現するときは、SMAワイヤ3Lと称する。
【0065】
図17及び図18で示されるように、駆動される前の初期状態(非駆動状態)における従来の駆動装置では、SMAワイヤ3L2の方向は、保持部材33aの内外の境界に位置する境界点BPを中心としてSMAワイヤ3L1の形成方向(第1の方向AR1)に対して角度+α1回転した方向に架設されている(図17参照)。これは、上記の工程(i)及び(iii)においてSMAワイヤ3Lが電極30a,30bにカシメられた状態に対応している。そして、駆動時におけるSMAワイヤ3L2は収縮することにより、境界点BPを中心として、非駆動状態よりさらに角度+α2分回転した方向にまで最大曲げられる。結果として、図18で示されるように、駆動時におけるSMAワイヤ3L2は、図5と同様に、曲げられた領域の境界点BP及びその近傍に対して、SMAワイヤ3Lの張力Ftにより曲げの外側エリアRtでは引っ張り応力が発生する一方、曲げの内側エリアRcでは圧縮応力が卓越することになる。すなわち、曲げ応力の最大応力が境界点BP及びその近傍において存在することになる。
【0066】
このように、従来の機器組込方法による駆動装置では、上記の工程(i)の状態(図13参照)から工程(ii)(図14参照)または上記の工程(ii)の状態(図14参照)から工程(iii)(図15参照)の状態に推移する際にSMAワイヤ3L2が角度+α1(保持部材33a側)または角度−α(保持部材33b側)だけ回転したことにより発生する曲げ応力が発生する。
【0067】
そして、非駆動状態から駆動状態に推移する際、SMAワイヤ3L2が可動する範囲としてさらに角度+α2まで最大曲げられるため、駆動時には、合計として角度+(α1+α2)または角度−(α1+α2)まで最大曲げられることになる。すなわち、SMAワイヤ3Lは駆動時にSMAワイヤ3L1とSMAワイヤ3L2との間に生じる角度が、角度+α2または角度−α2の範囲で変動する動作が行われるため、曲げ応力がさらに増加する結果となる。
【0068】
したがって、SMAワイヤ3Lへの張力とSMAワイヤ3Lの駆動により発生する張力とが、図6で示した負荷荷重により発生する応力に対応することになるため、駆動時における繰り返し動作においてSMAワイヤ3L内部の境界点BP及びその近傍で金属疲労が進行することになる。このため、上述したように、ある応力以上では数千回以内の繰り返し動作で破断に至り、カメラ機器としては致命的となる。
【0069】
このような背景の下、本発明では、曲げ応力のSMAワイヤ3Lの内部に発生する最大応力を小さくすることにより、繰り返し動作による該SMAワイヤ3L内部の金属疲労の進行速度を減速でき、該SMAワイヤ3Lの劣化を抑制する駆動装置を実現する。
【0070】
以下、実施形態の特徴部となる具体的構成を説明する。
【0071】
<2.実施形態の具体的構成>
そこで、本発明の実施形態に係る駆動装置100では、第1の方向AR1を、前述した駆動手段によるSMAワイヤ3Lの伸縮時において変化する保持部材33a(または保持部材33b)から変位入力部2b(所定の力点)に至る駆動時保持部材力点間方向のうち、一の方向である第2の方向に一致させる構成を採用することで、上述の課題を解消する。
【0072】
図7および図8は、本発明の実施形態に係る駆動装置100のSMAワイヤ3Lの電極30a及び保持部材33aの周辺を拡大して示した図である。このうち、図7は、駆動される前の初期状態(非駆動状態)におけるSMAワイヤ3Lの状態を示し、図8は、駆動装置100の駆動状態におけるSMAワイヤ3Lの状態を示す。
【0073】
図7で示されるように、SMAワイヤ3L1の第1方向AR1を駆動時におけるSMAワイヤ3L2の駆動時保持部材力点間方向ARmが境界点BPを中心として変動する範囲の角度を二等分する中心線方向、すなわち、SMAワイヤ3Lの駆動時における変動範囲の中心位置に合致する中心線方向AR2cに設定する。一方、非駆動状態においてSMAワイヤ3L2は最伸状態となるため、SMAワイヤ3L2の方向AR20は、保持部材33a内部で固定されているSMAワイヤ3L1の第1の方向AR1とは一致せず、境界点BPを中心としてSMAワイヤ3L1の第1の方向AR1(=中心線方向AR2c)に対して角度−θ1回転した方向に架設されている。
【0074】
これに対して、駆動状態におけるSMAワイヤ3L2の駆動時保持部材力点間方向ARmは、図8で示されるように、方向AR20に対して+(2×θ1)回転した方向AR22に至る可動範囲内で変動する。すなわち、中心線方向AR2cを中心としてSMAワイヤ3L1の第1の方向AR1に対して角度±θ1回転する方向となる。このように駆動時におけるSMAワイヤ3Lの伸縮によって、SMAワイヤ3Lの駆動時保持部材力点間方向ARmが方向AR20〜AR22間を変動する。駆動装置100において、本実施の形態は、第1の方向AR1を、駆動時保持部材力点間方向ARmのうち、一の方向である第2の方向AR2に一致させる構成を採用する。
【0075】
この際、図7及び図8で示されるように、第2の方向AR2は、駆動手段によって駆動時保持部材力点間方向ARmが境界点BPを中心として変動する範囲の角度(±θ1)を二等分する直線方向(中心線方向AR2c)に設定することが望ましい。
【0076】
なお、本発明の実施形態に係る駆動装置100のSMAワイヤ3Lの電極30b及び保持部材33bの周辺においても図7及び図8と同様であるが、この場合は、後述する図11で示されるように、SMAワイヤ3L1の第1の方向AR1(=中心線方向AR2c)に対して角度+θ1だけ回転した方向に架設されている。
【0077】
このように、本実施形態に係る駆動装置100では、第1の方向AR1を、駆動手段によるSMAワイヤ3Lの伸縮時において変化する保持部材33a(または保持部材33b)から変位入力部2bに至る駆動時保持部材力点方向ARmのうち、一の方向である第2の方向AR2に一致させたことを特徴とする。これにより、駆動時に時々刻々変化するSMAワイヤ3L2の駆動時保持部材力点間方向ARmと第1の方向AR1との間に生じる曲げ角度を上記駆動時保持部材力点間方向ARmの何れとも第1の方向AR1を一致させない従来構成(図17参照)に比べ小さくすることができる。このため、上記曲げ角度に正の相関を有する曲げ応力のSMAワイヤ3Lの内部に発生する最大応力を小さくすることができる。その結果、繰り返し動作による該SMAワイヤ3L内部の金属疲労の進行速度を減速でき、該SMAワイヤ3Lの劣化を抑制することが可能となる。
【0078】
また、第2の方向AR2として、駆動手段によって駆動時保持部材力点間方向ARmが境界点BPを中心として変動する範囲の角度を二等分する中心線の直線方向(図8の中心線方向AR2c)に設定することにより、駆動時に時々刻々変化する駆動時保持部材力点間方向ARmと第1の方向AR1(=中心線方向AR2c)との間に生じる曲げ角度の最大値(可動角度の1/2、図7及び図8の例では|θ1|)を最小にすることができる。このため、SMAワイヤ3Lの内部に発生する最大応力をさらに小さくすることができ、繰り返し動作による該SMAワイヤ3L内部の金属疲労の進行速度をより減速でき、該SMAワイヤ3Lの劣化をさらに抑制することが可能となる。
【0079】
以上のような本実施形態に係る駆動装置100に対して、被駆動体1をレンズユニットとし、軸線AX方向を光軸方向とすると、上述した効果と同様の効果を奏するレンズ駆動装置を得ることができる。これにより、繰り返し動作回数で破断に至るまでの回数が、10万回を超えるレンズ駆動装置を実現することが可能となる。
【0080】
<3.駆動装置100の製造方法>
続いて、本実施形態に係る駆動装置100におけるSMAワイヤ3Lの機器組込方法について以下説明する。
【0081】
図9〜図12は、本実施形態に係る駆動装置100におけるSMAワイヤ3Lの機器組込方法を模式的に説明する図である。図9〜図12で示されるように、本実施形態に係る駆動装置100におけるSMAワイヤ3Lの機器組込方法には、大別すると下記(I)〜(V)の5つの工程に分けられる。
【0082】
(I)まず、図9で示されるように、片方の電極30aにSMAワイヤ3Lを通す。このとき、この状態では電極30aをまだカシメない。
【0083】
(II)次に、図10で示されるように、SMAワイヤ3Lを、電極30aを中心として回転させながら、もう片一方の電極30bへと導き、この電極30bにSMAワイヤ3Lを通す。
【0084】
(III)図10で示される状態でSMAワイヤ3Lに通電を行い駆動状態とする。
【0085】
(IV)そして、図11で示されるように、SMAワイヤ3Lを駆動しながら、駆動時に変動するSMAワイヤ3Lの駆動時保持部材力点間方向ARmのうち、一方の方向にSMAワイヤ3L1の第1の方向AR1が一致するように電極30a,30bの2箇所をカシメてSMAワイヤ3Lを固定する。
【0086】
(V)最後に、図12で示されるように、固定されたSMAワイヤ3Lの両側の不要部分をカット除去してSMAワイヤ3Lの架設が完了する。
【0087】
ここで、図7及び図8に戻り説明する。図7で示されるように、駆動される前の初期状態(非駆動状態)では、境界点BPを中心としてSMAワイヤ3L1の第1の方向AR1に対して角度−θ1だけ回転した方向にSMAワイヤ3L2は架設されているが、これは、上記の工程(III)及び工程(IV)においてSMAワイヤ3Lに通電を行い駆動状態にして、SMAワイヤ3Lを電極30a,30bにカシメることにより、達成することができる(図10及び図11参照)。このように、工程(III)及び工程(IV)を経由することにより、駆動状態において、図8で示されるように、SMAワイヤ3L1の第1の方向AR1を、駆動時保持部材力点間方向ARmのうち、一の方向である第2の方向AR2に一致させる構成を実現する。
【0088】
また、前述したように、第2の方向AR2は、駆動時保持部材力点間方向ARmが図8の中心線方向AR2cを含むことがより好ましい。
【0089】
<3−1.製造装置300を用いた具体的な製造方法>
以下、製造装置300を用いた具体的なSMAワイヤの駆動装置100への機器組込方法について詳述する。
【0090】
<3−1−1.工程(I)および工程(II)について>
まず、SMAワイヤ3Lが張られていない未完成状態の駆動装置100(「ワーク」とも称される)とスライダ53a,53bとの調整台56への設置が行われる。そして、ワークおよびスライダ53a,53bの調整台56への設置が完了すると、ワークとスライダ53a,53bとの間にSMAワイヤ3Lを緩く張り架ける張架処理が施される(図10参照)。そして、スライダ53a,53bがワークに対して相対的に離れる方向に移動されてSMAワイヤ3Lには、より強い張力が付与される。
【0091】
<3−1−2.工程(III)および工程(IV)について>
ポンチ51aおよびポンチ51bから、SMAワイヤ3Lをオーステナイト相からマルテンサイト相に至る変態過程の途中の状態で安定化させ得る、SMAワイヤ3L1の第1の方向AR1設定用の所定の電流を供給することにより、駆動装置100を駆動状態にする。
【0092】
ここで、SMAワイヤ3L1の第1の方向AR1が、駆動時保持部材力点間方向ARmのうち、一の方向である第2の方向AR2に一致するように調整する。すなわち、図11で示されるように、SMAワイヤ3Lが予め設定された加熱状態となるようにSMAワイヤ3Lへの通電電流を制御して、駆動時保持部材力点間方向ARmが中心線方向AR2cになる位置でSMAワイヤ3Lを安定状態とした後、スライダ53a,53bを移動させる。つまり、図4の実線で示されたスライダ53a,53bの位置が、破線で示されたスライダ53a,53bの位置まで±θ1回転されることになる。このように、保持部材33a(または33b)内部でのSMAワイヤ3L1の第1の方向AR1を、中心線方向AR2cと一致するようにして以下で述べるかしめ処理を行い固定する。
【0093】
かしめ処理は、駆動時保持部材力点間方向ARmが安定した状態(駆動時保持部材力点間方向ARm=中心線方向AR2cのとき)で、ポンチ51aおよび51bのそれぞれの先端部によってSMAワイヤ3L1が通された電極30aおよび30bの溝部をそれぞれかしめる処理である。このように、かしめ処理を実行することによって、SMAワイヤ3L1の第1の方向AR1を中心線方向AR2cに一致させた状態で、保持部材33aおよび33bの電極30aおよび30bにカシメ部SPをかしめることによりSMAワイヤ3L1は固定される(図11参照)。
【0094】
<3−1−3.工程(V)について>
上述したかしめ処理により、SMAワイヤ3Lが電極固定部33aおよび33bのそれぞれに固定されると、制御部55が、不図示の切断部を制御して、SMAワイヤ3Lのうち電極30aおよび30bからそれぞれSMA線保持部54aおよび54b側へとはみ出ている各部を切断する処理が行われる(図12参照)。
【符号の説明】
【0095】
1 被駆動体
2 レバー部材
2a 変位入力部
2b 変位出力部
3 形状記憶合金(SMA)アクチュエータ
3L,3L1,3L2 SMAワイヤ
4 ベース部材
6a,6b 平行板バネ
8 支持脚
8a レバー支持部
10 撮像レンズ
30a,30b 電極
33a,33b 保持部材
53a,53b スライダ
54a,54b SMA線保持部
55 制御部
100 駆動装置
300 製造装置
SP カシメ部
AR1 第1の方向
AR2 第2の方向
AR2c 中心線方向
ARm 駆動時保持部材力点間方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の方向に往復移動自在に駆動される被駆動体と、
伸縮により前記被駆動体を移動させる駆動力を所定の力点に発生する線状の形状記憶合金と、
前記形状記憶合金の一部を第1の方向に沿って内部にて固定する保持部材と、
前記形状記憶合金を伸縮させる駆動手段と、
を備える駆動装置において、
前記第1の方向を、前記保持部材から前記所定の力点に至り、前記駆動手段による前記形状記憶合金の伸縮時において変化する駆動時保持部材力点間方向のうち、一の方向である第2の方向に一致させたことを特徴とする、
駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の駆動装置であって、
前記第2の方向は、
前記駆動手段によって前記駆動時保持部材力点間方向が前記保持部材を中心として変動する範囲の角度を二等分する直線方向を含む、
駆動装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の駆動装置であって、
前記保持部材は、前記形状記憶合金を前記第1の方向に沿って内部で挟持するカシメ部を有することを特徴とする、
駆動装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3の何れかに記載の駆動装置であって、
前記被駆動体がレンズユニットであり、
前記被駆動体が駆動される方向が光軸方向であることを特徴とする、
駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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