説明

駆虫用ブラシ

【課題】 ブラシ本体に含有させた薬剤を効率良く使用することができる、駆虫用ブラシを提供する。
【解決手段】 末端が固定された複数のブラシ毛10…を有するブラシ本体2を備えており、当該ブラシ本体2における、少なくともブラシ毛10…は樹脂および駆虫用薬剤を含有し、徐放性を有する樹脂組成物からなっている駆虫用ブラシにおいて、上記ブラシ毛10…の比表面積は、先端側が最も大きくなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆虫用ブラシに関するものである。より詳しくは、ブラッシングによって犬や猫などの動物に寄生するノミやダニなどの害虫を駆除する駆虫用ブラシに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、犬や猫などの動物に寄生するノミやダニなどの害虫を駆除するためのブラシ(駆虫用ブラシ)が用いられている。この駆虫用ブラシは、動物の毛並みを整える、ブラッシングと同時に、害虫の駆除も行うことができる。
【0003】
特許文献1に開示された駆虫用ブラシは、図9に示すように、複数のブラシ毛54…を有するブラシ本体50と、柄部51とからなっている。このブラシ本体50は、塩化ビニル樹脂などの熱可塑性樹脂から成形されている。また、ブラシ本体50には、揮散性のある殺虫剤が、保留剤と共に含有されている。
【0004】
そして、ブラシ本体50の両側縁部には、突起52・52が設けられている一方、柄部51の両側縁部には、溝53・53が設けられている。この突起52・52は、溝53・53に対して摺動自在に嵌め合わせることができる。つまり、ブラシ本体50は、柄部51に対して着脱可能である。
【0005】
上記駆虫用ブラシを用いて、犬や猫などの動物をブラッシングすると、ブラシ本体50に含有された殺虫剤が揮散して、動物に寄生するノミやダニなどの害虫を駆除することができる。また、殺虫剤が全て揮散した後でも、ブラシ本体50を取り替えることが可能である。
【特許文献1】実開平1−155353号公報(平成1年10月25日 公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、駆虫用ブラシは、ブラシとして毛並みを整えるという機能も有するため、この機能を損なわないような長さのブラシ毛を設ける必要がある。従って、特許文献1に記載の駆虫用ブラシもこのような長さのブラシ毛54…を有している。
【0007】
そして、特許文献1に記載の駆虫用ブラシでは、ブラシ本体50に含有させた殺虫剤の揮散が、上記のような長さを有するブラシ毛54…の至るところで起こる。このため、ブラッシングする際にブラシ毛54…における動物の毛に埋没しないところからも殺虫剤が揮散してしまい、殺虫剤の無駄な揮散が多くなり、ブラシ本体50に含有させた殺虫剤を効率良く使用することができないという問題があった。
【0008】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ブラシ本体に含有させた薬剤を効率良く使用できる、駆虫用ブラシを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の駆虫用ブラシは、上記課題を解決するために、末端が固定された複数の毛状突起部を有するブラシ本体を備えており、当該ブラシ本体における、少なくとも毛状突起部は樹脂および駆虫用薬剤を含有し、徐放性を有する樹脂組成物からなっている駆虫用ブラシにおいて、上記毛状突起部の比表面積は、先端側が最も大きくなっていることを特徴としている。
【0010】
ここで、比表面積とは、単位質量あたりの表面積のことをいう。上記構成によれば、毛状突起部の比表面積は、先端側が最も大きくなっている。そして、毛状突起部の比表面積と、駆虫用薬剤の残存率との関係は、毛状突起部の比表面積が大きくなるほど、駆虫用薬剤の残存率が小さくなることが分かっている。つまり、毛状突起部の先端側に含有された駆虫用薬剤の残存率が最も小さくなる。
【0011】
さらに、毛状突起部に含有させた駆虫用薬剤は、相対的に比表面積が大きいところにおいて徐放(ブリード)が起こることが、本発明者らの実験により明らかになった。従って、毛状突起部における駆虫用薬剤のブリードは、主に比表面積が大きい先端側において起こる一方、毛状突起部の先端側以外の部分では駆虫用薬剤のブリードは、ほとんど起こらない。それゆえ、毛状突起部に含有させた駆虫用薬剤を効率良く使用することができる。
【0012】
また、本発明の駆虫用ブラシでは、上記毛状突起部は、末端から先端に向かうにつれて比表面積が徐々に大きくなっていることが好ましい。
【0013】
通常、駆虫用ブラシを用いて動物をブラッシングするときには、毛状突起部の先端が動物の毛に埋没するため、先端からの駆虫用薬剤の徐放が多い方がよい。上記したように、毛状突起部の比表面積が大きくなるほど、駆虫用薬剤の残存率が小さい。上記構成によれば、末端から先端に向かうにつれて比表面積が徐々に大きくなっているので、先端に向かうにつれて駆虫用薬剤の徐放を多くすることができる。
【0014】
また、本発明の駆虫用ブラシでは、上記毛状突起部の比表面積は、当該毛状突起部の断面積の変化、当該毛状突起部の断面形状の変化、当該毛状突起部の表面に対する凹凸の形成、当該毛状突起部の部分的な形状の変化、の少なくとも何れかにより変化させることが好ましい。
【0015】
上記構成によれば、毛状突起部の比表面積は、当該毛状突起部の断面積の変化、当該毛状突起部の断面形状の変化、当該毛状突起部の表面に対する凹凸の形成、当該毛状突起部の部分的な形状の変化、の少なくとも何れかにより変化させている。このため、毛状突起部における断面積、断面形状、表面形状、部分形状に種々のバリエーションをもたせて、比表面積を変化させることができる。従って、動物の特性に合わせて毛状突起部の形状を使い分けることができる。
【0016】
また、本発明の駆虫用ブラシでは、上記駆虫用薬剤は、当該薬剤の樹脂に対する飽和溶解量の1.1倍以上10倍以下で、上記樹脂組成物中に含有されていることが好ましい。
【0017】
樹脂に対する駆虫用薬剤の含有量が1.1倍より少ないと、駆虫用薬剤のブリードが少なくなり、十分な駆虫効果を得ることができない。また、樹脂に対する駆虫用薬剤の含有量を10倍より多くすると、駆虫用薬剤を樹脂に保存することが難しくなる。これに対して、上記構成によれば、樹脂に対する駆虫用薬剤の含有量が1.1倍以上10倍以上となっている。従って、駆虫用薬剤に十分な駆虫効果を持たせた状態で、樹脂に保存することができる。
【0018】
また、本発明の駆虫用ブラシでは、上記樹脂組成物には、さらに、駆虫用薬剤の徐放を調整する蒸散性可塑剤が含有されていることが好ましい。
【0019】
上記構成では、樹脂組成物に駆虫用薬剤の徐放を調整する蒸散性可塑剤を含有させているので、駆虫用薬剤を樹脂組成物に保留させることができると共に、駆虫用薬剤の徐放の速度を調整することができる。
【0020】
また、本発明の駆虫用ブラシでは、上記蒸散性可塑剤は、液体エステル、液体アルコール、液体ケトン、香料、および動植物精油からなる群より選ばれる少なくとも一種である
ことが好ましい。
【0021】
また、本発明の駆虫用ブラシでは、上記蒸散性可塑剤は、樹脂100重量部に対して0.1重量部以上100重量部以下で上記樹脂組成物中に含有されていることが好ましい。
【0022】
上記構成によれば、蒸散性可塑剤の樹脂組成物への含有量が、樹脂100重量部に対して0.1重量部以上、100重量部以下であるので、駆虫用薬剤を樹脂組成物中に安定的に保持でき、かつ、蒸散性可塑剤を樹脂組成物中に安定的に保持することができる。
【0023】
また、本発明の駆虫用ブラシでは、上記蒸散性可塑剤の20℃における蒸気圧をP1とすると、当該蒸散性可塑剤では、次式、0.13Pa≦P1≦13000Paを満たすことが好ましい。
【0024】
上記構成によれば、蒸散性可塑剤の20℃における蒸気圧をP1とすると、0.13Pa≦P1を満たしている。従って、樹脂組成物からの駆虫用薬剤のブリードを促進することができる。また、上記P1は、P1≦13000Pa満たしている。従って、樹脂組成物の加工を容易に行うことができる。
【0025】
また、本発明の駆虫用ブラシでは、上記駆虫用薬剤の20℃における蒸気圧をP2とすると、当該駆虫用薬剤と蒸散性可塑剤においては、次式、2≦P1/P2≦1010を満たすことが好ましい。従って、蒸散性可塑剤の蒸気圧と駆虫用薬剤の蒸気圧との差が大きいため、開放条件下でも樹脂組成物からの駆虫用薬剤の放出挙動の効果を大きくすることができる。
【0026】
また、本発明の駆虫用ブラシでは、上記樹脂は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、合成ゴム、または熱可塑性エラストマーであることが好ましい。上記構成によれば、上記樹脂が、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、合成ゴム、または熱可塑性エラストマーであるため、容易に上記樹脂に薬剤を含有させることができる。
【0027】
また、本発明の駆虫用ブラシでは、さらに、把持部および上記ブラシ本体を担持する担持部を有する柄部を備えていることが好ましい。
【0028】
一般に、駆虫用薬剤を含有させた樹脂組成物からなる毛状突起部を有するブラシ本体は、直接手で触れると人体に悪影響を及ぼす虞がある。これに対して、上記構成によれば、担持部にブラシ本体を担持させて、把持部を掴むことができ、ブラシ本体の毛状突起部に直接触れることを防止することができる。
【0029】
また、本発明の駆虫用ブラシでは、上記ブラシ本体を覆って着脱自在に装着される被覆部材を備えていることが好ましい。
【0030】
上記構成によれば、駆虫用ブラシは、ブラシ本体を覆って着脱自在に装着される被覆部材を備えている。従って、不使用時に誤ってブラシ本体に手を触れることを防止することができる。
【0031】
また、本発明の駆虫用ブラシでは、上記被覆部材が開口部を有することが好ましい。
【0032】
上記構成によれば、上記被覆部材が開口部を有している。従って、不使用時に被覆部材を装着させておけば、開口部から新鮮な空気が送りこまれ、駆虫用薬剤のブリードを促進することができる。
【0033】
また、本発明の駆虫用ブラシでは、ガスおよび/または液状物の透過を抑制する性質を有する包装容器に収納されていることが好ましい。
【0034】
上記構成によれば、上記駆虫用ブラシは、ガスおよび/または液状物の透過を抑制する性質を有する包装容器に収納されている。上記構成によれば、駆虫用ブラシの少なくとも毛状突起部に含有された駆虫用薬剤の透過が抑制され、高い気密性を維持することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明に係る駆虫用ブラシは、以上のように、末端が固定された複数の毛状突起部を有するブラシ本体を備えており、当該ブラシ本体における、少なくとも毛状突起部は樹脂および駆虫用薬剤を含有し、徐放性を有する樹脂組成物からなっている駆虫用ブラシにおいて、上記毛状突起部の比表面積は、先端側が最も大きくなっている。これにより、ブラシ本体の少なくとも毛状突起部に含有された駆虫用薬剤を効率良く使用することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
本発明の実施の一形態について、図1ないし図8に基づいて説明すると、以下の通りである。
【0037】
本実施の形態の駆虫用ブラシは、犬や猫などの動物に対してブラッシングをすることによって、これらの動物の毛並みを美しく整えたり、毛の汚れを落としたりすると同時に、これらの動物に寄生するノミやダニなどの害虫を駆除するためのものである。
【0038】
上記駆虫用ブラシは、図1に示すように、柄部1と、ブラシ本体2とを有している。さらに、この駆虫用ブラシには、同図において破線で示されているように、透明のキャップ(被覆部材)11が取り付けられている。
【0039】
上記柄部1は、図2に示すように、駆虫用ブラシを掴むための把持部3と、ブラシ本体2を取り付けるためのブラシ取付部(担持部)4とから成っている。柄部1は、例えばプラスチックまたは金属などの材質から形成されているが、柄部1の材質は、これらに限定されない。また、把持部3およびブラシ取付部4は、同一の材質にて形成されていてもよく、異なる材質にて形成されていてもよい。
【0040】
上記把持部3は、掴み易さを考慮して、把持部3の長手方向の両端へ近づくにつれて幅が少しずつ小さくなるように、形状が湾曲している板状体である。すなわち、把持部3の形状は、上方から見ると、略楕円形をしている。しかしながら、把持部3の形状は、これに限らず、例えば幅が一定であるもの、または、上方から見て三角形をしているものなど、把持可能であるという機能が損なわれなければ、特に限定されない。
【0041】
また、把持部3の一方の面における上記ブラシ取付部4との境界付近には、窪部7が形成されてもよい。この窪部7に親指をあてることによって安定して把持部3を掴むことができる。
【0042】
上記ブラシ取付部4は、上記把持部3と一体に形成されている。そして、このブラシ取付部4は、ブラシ本体2を担持する役割を有している。ブラシ取付部4は、把持部3と同様に略楕円形をした板状体であるが、ブラシ取付部4の形状は、これに限らず、矩形状、円形状などでもよく、ブラシ本体2を担持することができるものであれば、特に形状は問わない。
【0043】
そして、ブラシ取付部4は、一方の面に、ブラシ本体2を取り付けるための凹部5を有している。そして、この凹部5にブラシ本体2を嵌め込むことができるようになっている。この凹部5は、ブラシ本体2の取り付け易さや省スペース化を図るために形成されていることが好ましいが、必ずしも設けられている必要はない。例えばブラシ取付部4に凹部5が設けられておらず、ブラシ取付部4の表面がフラットであっても、該表面にブラシ本体2を接着剤などで取り付けることも可能である。
【0044】
さらに、凹部5の側壁13の下端部には、この側壁13に沿って嵌合凹部12が設けられている。この嵌合凹部12は、後述する嵌合凸部15と嵌めあって、ブラシ本体2をブラシ取付部4に固定する役割を有している。なお、この嵌合凹部12は、必ずしも備えられている必要はない。なお、嵌合凹部12が備えられていない形態については、後述する。
【0045】
上記ブラシ本体2は、図1に示すように、上記ブラシ取付部4に取り付けられている。このブラシ本体2は、図3に示すように、板状のブラシ毛支持体(支持体)8と、この支持体8のブラシ毛支持面9から略垂直方向に突出して設けられた複数のブラシ毛(毛状突起部)10…とを有している。なお、本実施の形態では、支持体8とブラシ毛10…とが一体形成されているが、これに限らず、例えば支持体8に複数の小孔を設け、この小孔にブラシ毛10…を差し込んでもよい。
【0046】
支持体8の側面17の下端部には、側面17に沿うと共に、この側面17から略垂直に突出して形成された嵌合凸部15を有している。上記した通り、この嵌合凸部15を上記嵌合凹部12に嵌めあわせることによって、ブラシ本体2をブラシ取付部4にしっかりと固定することができる。さらに、ブラシ本体2に例えば樹脂組成物などの曲げることができる材質を用いることによって、容易に着脱可能である。なお、ブラシ本体2の材質については、後に詳述する。
【0047】
なお、嵌合凹部12および嵌合凸部15は、必ずしも設けられなくとも、ブラシ本体2をブラシ取付部4に取り付けることができる。例えばブラシ本体2を凹部5に接着剤で取り付けた場合や凹部5とブラシ本体2との対応する位置に穴(不図示)を設けて、この穴に紐などを通して両者を互いに結びつけることによってブラシ本体2をブラシ取付部4に取り付けることができる。
【0048】
次に、ブラシ本体2の材質および成分などについて、詳細に説明する。ブラシ本体2は樹脂組成物からなっている。そして、この樹脂組成物には、ノミやダニなどの害虫を駆除するための薬剤が含有されている。この樹脂組成物は、例えば熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、合成ゴム、または熱可塑性エラストマーなどである。なお、ここではブラシ本体2が樹脂組成物からなっているとしたが、これに限らず、少なくともブラシ毛10…が上記樹脂組成物からなっていればよい。
【0049】
熱可塑性樹脂としては、例えばポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスチレン、またはポリメチルメタクリレートなどを用いることができ、なかでもポリオレフィン系樹脂を用いることが好ましい。
【0050】
ポリオレフィン系樹脂としては、具体的には、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、エチレンと炭素数3以上のα−オレフィンとの共重合体などのポリエチレン樹脂、プロピレン単独重合体、プロピレンと炭素数4以上のα−オレフィンとのランダム共重合体やブロック共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル−メチルメタクリレート共重合体などのエチレン性不飽和結合を有するカルボン酸誘導体とエチレンとの共重合体、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニルなどの樹脂組成物、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体などのゴム、環状オレフィンからなる重合体、およびその水素添加物石油樹脂、ロジン樹脂、クマロン−インデン樹脂、テルペン樹脂などが挙げられる。
【0051】
熱硬化性樹脂としては、ポリウレタン、またはエポキシ樹脂などを挙げることができる。また、合成ゴムとしては、SBR、またはEPDMなどを挙げることができる。
【0052】
熱可塑性エラストマーとしては、オレフィン系熱可塑性エラストマー、またはスチレン系熱可塑性エラストマーなどを挙げることができる。より具体的には、オレフィン系熱可塑性エラストマーとして、エチレンまたはプロピレンを主成分とするエラストマーを挙げることができ、スチレン系熱可塑性エラストマーとして、スチレンまたはブタジエンを主成分とするエラストマーを挙げることができる。
【0053】
熱可塑性エラストマーは、合成ゴムとは架橋構造が異なり、例えば各成分が一部架橋した構造となっている。このため、加熱することによって流動性を示す。すなわち、加熱により熱可塑性樹脂としての挙動を示すため、取り扱い性が良好であるとともに、リサイクルも可能になる。
【0054】
これら熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、合成ゴム、または熱可塑性エラストマーとして例示した各化合物は、単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよく、使用する薬剤の種類に適したものを選択することができる。
【0055】
具体的には、これらの樹脂組成物のなかでも、これらの樹脂組成物に含有された薬剤の徐放(ブリード)速度を高めるという観点から、樹脂組成物の分子鎖の運動性が高く、ガラス転移温度が低い樹脂組成物がより好ましい。また、薬剤との間で化学反応などを起こさないものが好ましい。特に、熱可塑性樹脂は、賦形性、経済性に優れ、さらに、熱可塑性樹脂の種類や添加される添加剤の種類を適宜選択することによって、薬剤の溶解性や拡散性を広範囲で制御できることから、薬剤のブリードを制御する素材としてより好ましい。
【0056】
また、上記ブラシ本体2を成形加工するとき、薬剤の分解、環境への蒸散、冷却水への溶出などにより、薬剤の消失を制御する観点から、低い温度で成形加工が可能な樹脂組成物を、上記熱可塑性樹脂から選択することが好ましい。
【0057】
次に、上記樹脂組成物、すなわちブラシ本体2に含有させる薬剤(駆虫用薬剤)について、詳細に説明する。ここでは、ブラシ本体2に薬剤を含有させるとしたが、これに限定されず、少なくとも上記ブラシ毛10…に上記薬剤を含有させればよい。
このような薬剤としては、犬や猫などの動物に寄生するノミやダニなどの害虫を駆除する効果を有するものであれば、特に限定されるものではない。具体的には、ピレスロイド化合物、有機リン化合物、カーバメート化合物、ネオニコチノイド化合物、または昆虫成長制御化合物などを使用することができる。
【0058】
ピレスロイド化合物としては、例えばペルメトリン、アレスリン、プラレスリン、サイフェノトリン、フェノトリン、レスメトリン、エムペントリン、フェンバレレート、フェンプロパスリン、シハロトリン、サイフルトリン、エトフェンプロクス、トラロメスリン、エスビオスリン、トランスフルスリン、またはテラレスリンなどを挙げることができる。
【0059】
有機リン化合物としては、例えばフェニトロチオン、ナレド、フェンチオン、シアノホス、クロルピリホス、ダイアジノン、カルクロホス、またはサリチオンなどを挙げることができる。カーバメート化合物としては、例えばメトキサジアゾン、プロポクスル、カルバリル、またはフェノブカルブなどを挙げることができる。
【0060】
ネオニコチノイド化合物としては、例えばイミダクロプリド、アセタミプリド、またはニテンピラムなどを挙げることができる。昆虫成長制御化合物としては、例えばピリプロキシフェン、メソプレン、ヒドロプレン、ジフルベンズロン、シロマジン、フェノキシカーブ、またはルヌェヌロンなどを挙げることができる。
【0061】
なお、上記薬剤には、光学活性体を含む化合物があるが、これらも使用できることは言うまでもない。また、上記薬剤は、それぞれ単独で使用してもよいし、2種類以上を混合して使用することもできる。さらに、上記薬剤に加えて、薬剤の駆虫効果を高める効力増強剤を併用してもよい。効力増強剤としては、例えばピペロニルブトキサイド、サイネピリン−222、オクタクロロジプロピルエーテル、またはMGK−264などを用いることができる。
【0062】
また、防ダニ用の薬剤として、トリフルオロメタンスルホン酸アニリド系化合物などの防ダニ剤を使用することもできる。また、虫などを避ける効果を有する薬剤として、N,N−ジエチル−m−トリアミド、またはカラン−3,4−ジオールなどの忌避剤を使用することもできる。さらに、防菌・防黴、および防汚用の薬剤として、N−フェニルベンゾイソチアゾロン−3などのイソチアゾリン系化合物、4,6−ジメチル−2−(6−フェニルピリジン−2−イル)ピリミジンなどのピリジルピリミジン系化合物、オキソニック酸、バイナジンなどの防菌・防黴剤や防汚剤を使用することもできる。
【0063】
その他、市販の除草剤、植物成長調節剤を薬剤として使用することもできる。さらに、上記薬剤と共に防錆剤、滑剤、抗ブロッキング剤、界面活性剤、または帯電防止剤などのいわゆる副資材を含有させてもよい。
【0064】
本実施の形態において、これらの薬剤の上記樹脂組成物へ含有させる方法は、特に限定されるものではなく、樹脂組成物の原料を例えばバンバリーミキサー、スーパーミキサー、または押出機などの混合機を用いて混練した後に、粉末状あるいはペレット状の樹脂組成物としてから薬剤を含有することができる。なお、樹脂組成物を粉砕する方法についても特に限定するものではないが、例えば冷凍粉砕法が挙げられる。また、薬剤を含まないブラシ本体2を、予め成形し、得られたブラシ本体2を薬剤からなる液体に浸漬させる、または該液体を塗布することにより薬剤を含浸・吸収させるなどの方法により含有してもよい。
【0065】
なお、薬剤の量が、該薬剤の樹脂組成物への飽和溶解量(後述)の1.1倍より少ない場合、薬剤のブリード量が少なく、十分な駆虫効果が得られない。よって薬剤の配合量としては、該薬剤の樹脂組成物への飽和溶解量の1.1倍以上であり、好ましくは1.2倍以上、さらに好ましくは1.5倍以上である。樹脂組成物中に含有される薬剤の上限は、特にないが、必要以上にその量が多すぎても保存中に薬剤のブリードが起こりやすくなるため、通常は、該薬剤の樹脂組成物への飽和溶解量の10倍以下であることが好ましい。
【0066】
ここで、薬剤の樹脂組成物への飽和溶解量とは、以下のような方法で求められる。適宜の大きさ、例えば長さ5cm、幅5cm、厚さ500μmの樹脂シートの重量を測定し、次いで23℃の条件下で薬剤溶液に浸漬する。浸漬開始から数時間毎に樹脂シートを薬剤溶液から取り出して表面に付着した薬剤溶液を拭き取った後、樹脂シート重量を測定し、以下の手順でこの樹脂組成物に対する薬剤の飽和溶解度を決定する。
【0067】
浸漬前の樹脂シート重量をWとする。浸漬開始からt時間後(ただし、0<t≦12)に1回目の樹脂シート重量測定を行い、このときの樹脂シート重量をW、溶解度をDとする[D=100×(W−W)/W]。浸漬開始からt時間後(ただし、12<t)に2回目の樹脂シート重量測定を行う。
浸漬開始からt時間後のn回目(ただし、nは2以上の整数)の樹脂シート重量測定における樹脂シート重量をW、溶解度をDとすると、Dは以下の式(1)で求められる。
(%)=100×(W−W)/W・・・(1)
浸漬開始後tn−1時間経過した時から浸漬開始後t時間経過した時までの間の単位時間あたりの溶解度変化量をEとすると、Eは、以下の式(2)で表わされる。
=(D−Dn−1)/(t−tn−1)・・・(2)
が以下の式(3)を満たすこととなった時点での溶解度Dを、飽和溶解度と定義する。
100×E/E≦1・・・(3)
式(3)中、Eは、E=D/tで定義される。
【0068】
薬剤を2種類以上混合して使用する場合、当該薬剤の混合物が23℃において液体である場合には、薬剤混合溶液に樹脂シートを浸漬し、上記した方法と同様にして薬剤混合溶液の樹脂組成物に対する飽和溶解度を決定する。
【0069】
使用する薬剤が23℃で固体である場合には、23℃における飽和溶解度は、次のような方法で決定する。樹脂100重量部に対して、薬剤を例えば5重量部添加し、溶融混練した後、プレスしてシート状とする。該シートを23℃で一日放置した後、シート表面を拭き取り、拭き取り前後でのシート重量を比較する。拭き取りによってシート重量が減少した場合には、この樹脂組成物に対する薬剤の飽和溶解度は5重量%未満であると判断する。
【0070】
次に、薬剤添加量を5重量部未満、例えば4重量部として同様の操作を行う。シート表面の拭き取りによってシート重量が減少しなかった場合には、この樹脂組成物に対する薬剤の飽和溶解度は、4重量%以上5重量%未満である。さらに厳密な飽和溶解度を求める必要がある場合には、薬剤添加量を4重量部以上、例えば4.5重量部添加して同様の操作を行う。薬剤を4重量部添加したものが、拭き取りによってシート重量が減少した場合は、さらに薬剤添加量を減らして同様の操作を行う。
【0071】
このように薬剤添加量を調整しながら溶融混練、プレス、表面拭き取りの操作を繰り返す。拭き取りによってシート重量が減少しなくなったときの最大薬剤添加量と、拭き取りによってシート重量が減少するときの最小薬剤添加量とから、飽和溶解度を求めることができる。
【0072】
薬剤を2種類以上混合して使用し、かつ当該薬剤の混合物が23℃において固体である場合には、上述した方法と同様に、当該薬剤の混合物を樹脂組成物に溶融混練してシートを作製し、該シート表面を拭き取り、拭き取り前後のシート重量変化を調べる方法によって、飽和溶解度を求めることができる。
【0073】
ここで、特に注目すべきは、上記ブラシ本体2、すなわち樹脂組成物には、薬剤に加えて、さらに蒸散性を有する可塑剤(蒸散性可塑剤)を含有させていることである。
【0074】
樹脂組成物に、蒸散性可塑剤を含有させることにより、樹脂組成物中への薬剤の飽和溶解量が増加し、密封条件下では該樹脂組成物からの薬剤のブリードが抑制される。
【0075】
一方、開放条件下では、蒸散性可塑剤の蒸散に伴い、薬剤の樹脂組成物中への飽和溶解量が減少し、その結果、過飽和となった薬剤が、差額をキャンセルするために樹脂組成物からブリードするという特異な放出挙動が実現できる。
【0076】
なお、上記密封条件とは、ブラシ本体2からの蒸散性可塑剤の蒸散を抑制する環境が達成されるような条件であり、例えばガスバリヤー性を有する材料などでブラシ本体2を密封することにより達成できる。このガスバリヤー性を有する材料などについては、後に詳述する。
【0077】
ここで上記蒸散性可塑剤とは、例えば20℃における蒸気圧が0.13Pa(0.001mmHg)以上である有機化合物である。樹脂組成物中からの薬剤のブリードをより促進するという観点から、1.3Pa(0.01mmHg)以上の値を示す有機化合物がより好ましく、13Pa(0.1mmHg)以上の値を示す有機化合物が特に好ましい。
【0078】
蒸散性可塑剤の20℃における蒸気圧の上限値は、特に制限はないが、成形加工性の観点から、通常、その沸点が樹脂組成物の溶融成形温度以上であることが好ましい。また、成形加工性の観点から、蒸散性可塑剤の蒸気圧の上限値は、通常、13000Pa(100mmHg)以下であり、1300Pa(10mmHg)以下がより好ましく、130Pa(1mmHg)以下が特に好ましい。
【0079】
また、上述した、薬剤を樹脂組成物中により安定的に保持させるという効果の点から、蒸散性可塑剤は、樹脂組成物および薬剤に対する相溶性が良好である方がより好ましい。相溶性とは、溶解性あるいは混和性といった言葉でも表現することができ、(飽和)溶解度を決定する一つの重要な要因である。
【0080】
相溶性の程度または(飽和)溶解度は、溶解度パラメーターや誘電率から推定することができるが、実験的には、一般的に知られた、例えば以下の方法が挙げられる。ポリ塩化ビニルに対する溶解度は、蒸散性可塑剤が蒸散しない条件下で、樹脂組成物、蒸散性可塑剤、薬剤からなる試験シートによるブリードテストを繰り返すことにより決定できる(参考文献:ポリ塩化ビニル−その基礎と応用−(社)近畿化学協会ビニル部会編 p356−357 (1988)日刊工業新聞社)。また、ポリオレフィン系樹脂などの他の樹脂組成物に対する溶解度も同様な方法で決定できる。
【0081】
蒸散性可塑剤は、常温(23℃)で液体状(液体)のエステル、液体アルコール、液体ケトン、香料、または動植物精油などより選択することができる。液体エステルとしては、特に、フタル酸エステル類、直鎖二塩基酸エステル類、またはリン酸エステル類などが例示できる。本実施の形態において好適な蒸散性可塑剤の具体例としては、アジピン酸ジメチル、グルタル酸ジメチル、コハク酸ジメチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、リン酸トリエチル、リン酸トリブチル、ジメチルマレート、またはジメチルサクシネートなどが挙げられる。
【0082】
また、蒸散性可塑剤の配合量は、薬剤を樹脂組成物中に、より安定的に保持させる効果と、蒸散性可塑剤を樹脂組成物中に、より安定的に保持できるという観点から、樹脂100重量部に対して、0.1〜100重量部、より好ましくは1〜50重量部、さらに好ましくは、5〜30重量部である。
【0083】
また、上記蒸散性可塑剤と薬剤との組み合わせにおいて、以下の式(4)
P1/P2≧2・・・(4)
を満たすことが好ましい。なお、式(4)中、P1は蒸散性可塑剤の20℃における蒸気圧を示し、P2は薬剤の20℃における蒸気圧を示す。
【0084】
P1/P2<2の場合、蒸散性可塑剤の蒸気圧と薬剤の蒸気圧との差が小さいため、開放条件下でのブラシ本体2からの薬剤の放出挙動の効果が小さくなる。従って、放出挙動の効果をより大きくするという観点から、P1とP2の比は、P1/P2≧5がより好ましく、P1/P2≧10がさらに好ましく、P1/P2≧1000が特に好ましい。P1/P2の値は大きい程より好ましく、その上限値は特に制限はないが、通常は、1010以下である。
【0085】
また、蒸散性可塑剤の配合量と薬剤の配合量との比は、求められるブリード特性、使用目的に応じて適宜決定される。例えば薬剤のブリードが始まるタイミングの調節を実現するためには、以下のように配合量を決定すればよい。
【0086】
すなわち、使用開始からすぐに薬剤のブリードが始まるようにするためには、蒸散性可塑剤がわずかに蒸散しただけで、樹脂組成物中の薬剤の濃度が過飽和になるように薬剤の量に対する蒸散性可塑剤の量比を低く設定すればよい。
【0087】
また、使用開始からある時間が経過した後に薬剤のブリードが始まるようにするためには、ある一定割合の蒸散性可塑剤が蒸散しないと、樹脂組成物中の薬剤の濃度が過飽和にならないように蒸散性可塑剤の量比を高く設定すればよい。薬剤の樹脂組成物への飽和溶解度は、上記した蒸散性可塑剤の場合と同様の方法で求めることができる。また、蒸散による蒸散性可塑剤の減少量(蒸散量)は、予め、ブラシ本体2中の蒸散性可塑剤の残存量の経時変化を測定しておくなどの方法により求めることができる。
【0088】
また、薬剤のブリードが始まるタイミングの調節は、蒸散性可塑剤の配合量と薬剤の配合量との比を変化させる方法以外に、蒸散性可塑剤の蒸気圧を変えることによっても調節することができる。すなわち、薬剤のブリードが早く始まるようにするためには、蒸気圧のより高い蒸散性可塑剤を用いればよいし、逆に、遅くするためには、蒸気圧のより低い蒸散性可塑剤を用いればよい。
【0089】
また、動物の種類などによって異なるが、本実施の形態の駆虫用ブラシは、約1週間に1度の頻度で使用することが好ましい。本実施の形態では、蒸散性可塑剤における上述した配合量・蒸気圧などの条件を適切に設定することによって、約1週間で1回使用する分の薬剤をブリードさせることができる。
【0090】
ところで、ブラシ本体2を成形する方法は、例えば射出成形、押出成形、プレス成形、またはスラッシュ成形などの公知の成形方法を用いることができる。また、使用時の力学的物性の改善、薬剤のブラシ本体2表面における高濃度化、または加工樹脂の向上などの目的に応じて、適宜多層押出成形、多色射出成形、複合紡糸、または押出ラミネート成形の従来知られている種々の方法で加工することもできる。
【0091】
また、特に、上記ブラシ毛10…の形状は、図3に示すように、ブラシ毛支持面9から先端にいくにつれて断面の径が小さくなった、円錐形状である。本実施の形態のブラシ毛10…の形状は、これに限られず、四角錐、または多角錐など、先端にいくにつれて断面積が小さくなっているものでもよい。さらに、これに限定されず、ブラシ毛10…における先端側の断面の径が最も大きくなっていればよく、他の部分の径は、どのような大きさでもよい。
【0092】
ここで、ブラシ本体2中、すなわち樹脂組成物中の薬剤の残存率Z(t)〔%〕は、以下の式(5)により求めることができる。
Z(t)=100×(1−Na)t乗・・・(5)
但し、N:蒸散定数mg/mg・cm−1乗・day
a:比表面積(cm−1乗)
t:時間(day)
である。
【0093】
この式(5)から、樹脂組成物中の薬剤の残存率Z(t)は、比表面積aが大きいほど、小さくなることが分かる。ここで、比表面積とは、単位質量あたりの表面積のことである。本実施の形態では、上記したように、ブラシ毛10…は、先端にいくにつれて断面積が小さくなっている。すなわち、このブラシ毛10…は、先端にいくほど、比表面積が大きくなっている。ゆえに、ブラシ毛10…は、先端にいくほど薬剤の残存率が小さいことが分かる。
【0094】
なお、本実施の形態ではブラシ毛10…の断面積を変化させることでブラシ毛10…の比表面積の大きさを変化させているが、これに限定されず、例えばブラシ毛10…の断面形状を変化させたり、ブラシ毛10…の表面に対する凹凸を形成させたり、ブラシ毛10…に部分的な形状の変化を持たせたりしてもよい。例えば、ブラシ毛10…の表面に凹凸部分を設けることにより、比表面積を変化させることができる。また、ブラシ毛10…の内部に空洞部分を設けることによっても比表面積を変化させることができる。
【0095】
式(5)を裏付ける実験例について、図4・5におけるグラフを用いて説明する。これらのグラフにおける横軸は、経過日数(日)を示している一方、縦軸は、薬剤残存率(VEP残存率)を示している。例えば半径が1mm、5mm、10mm、20mmであるそれぞれの球状樹脂組成物に薬剤を含有させて、それぞれを室温開放状態にしておくと、薬剤残存率(%)と経過日数(日)との関係は、図4に示すグラフのように、半径が小さいもの、すなわち、比表面積が大きいものほど、薬剤残存率が小さくなっていることが分かる。つまり、半径が1mmの樹脂組成物の薬剤残存率が最も小さい一方、半径が20mmの樹脂組成物の薬剤残存率が最も大きくなる。
【0096】
また、例えば径が0.1mmφ、0.5mmφ、1mmφ、2mmφ、5mmφの棒状樹脂組成物に薬剤を含有させて、それぞれを室温開放状態にしておくと、薬剤残存率(%)と経過日数(日)との関係は、図5に示すグラフのように、径が小さいもの、すなわち、比表面積が大きいものほど、薬剤残存率が小さくなっていることが分かる。つまり、径が0.1mmφの樹脂組成物の薬剤残存率が最も小さい一方、径が5mmφの樹脂組成物の薬剤残存率が最も大きくなる。
【0097】
上記の実験例および上記式(5)を踏まえて、本発明者らは、さらに、図3に示すブラシ毛10…に蒸散性可塑剤を含有させて、室温開放状態にした場合にどのようになるかについて実験した。その結果、ブラシ毛10…の最も径の小さな部分、すなわち先端部分から薬剤のブリードが盛んに起こる一方、その他の部分からの薬剤のブリードは、ほとんど起こらないことを発見した。
【0098】
従って、ブラシ本体2の全体に薬剤を含有させた場合でも、従来のようにブラシ毛の至るところから薬剤がブリードすることを防止でき、薬剤のブリードの大半がブラシ毛10…の先端から起こるため、効率良く含有させた薬剤を使用することができる。なお、ブラシ毛10…の硬さは、特に限定されず、使用する動物によって変えることが可能である。
【0099】
また、上記したように、ブラシ本体2には薬剤が含有されているので、ブラシ本体2に直接手を触れると、人体に悪影響を及ぼす虞がある。そこで、特に、幼児がブラシ本体2に触れることを防止する必要がある。
【0100】
これに対して、本実施の形態の駆虫用ブラシでは、図1に示すように、ブラシ本体2を覆って透明なキャップ11が着脱自在に装着されている。ブラシ本体2をキャップ11で覆うことによって、直接ブラシ本体2に手が触れることを防止できる。すなわち、ここでいうキャップ11は、いわゆるチャイルドプルーフとしての役割を有している。
【0101】
キャップ11は、図6(a)(b)に示すように、ブラシ本体2を覆うことができるように、内部がブラシ本体2と略同形状の空洞となっている共に、上方から見ると、楕円形となっている。但し、形状は楕円形に限定されず、ブラシ本体2の形状に合わせて種々変形可能である。また、キャップ11の材質として、例えばプラスチック、金属などを用いることができる。
【0102】
なお、このキャップ11は、駆虫用ブラシに常に装着されている必要はなく、駆虫用ブラシの使用時には取り外されることは言うまでもない。また、キャップ11は、透明であるため図1では破線にて示されているが、図6(a)(b)では、便宜上、実線にて示されている。
【0103】
なお、図6(a)は、キャップ11を斜め上方から見た斜視図である一方、図6(b)は、斜め下方から見た斜視図である。また、キャップ11の上面には、これらの図に示すように、複数の円形の開口部21…が形成されている一方、キャップ11の側面には、複数の四角形の開口部22…が形成されている。
【0104】
なお、図6(a)(b)に示す開口部21…・22…の形状・数は、単なる一例にすぎず、これに限定されない。例えば開口部21…・22…は、両方ともが形成されている必要はなく、いずれか一方のみでもよい。また、開口部21…・22…は、必ずしも複数設けられる必要はなく、一つだけでもいいことは言うまでもない。また、キャップ11は、中身が確認できるように、透明なものが好ましいが、必ずしも透明なものに限られない。
【0105】
ブラシ本体2のブラシ毛10…からブリードした薬剤は、ブラッシングにより犬、猫などの動物の皮脂・体毛に移行して、一旦なくなる。このように一旦ブリードして薬剤がなくなった後に、ブラシ本体2にキャップ11を被せて放置すれば、キャップ11の開口部21…・22…を通してブラシ本体2へ新鮮な空気が送りこまれる。
【0106】
従って、ブラシ本体2に含有された蒸散性可塑剤が送りこまれた空気によって蒸散する。この蒸散性可塑剤の蒸散によって、薬剤のブラシ本体2中への飽和溶解度が減少し、過飽和となった薬剤が、差額をキャンセルするためにブラシ本体2からブリードする。適切な蒸散性可塑剤をブラシ本体2に含有させておくことにより、約1週間で1回使用分の薬剤をブリードさせることができる。つまり、使用後にキャップ11を被せてから約1週間で、ブラシ毛10…の先端に薬効が復元する。なお、1週間という期間は、単なる一例にすぎない。また、ブリードした有効成分は蒸気圧が低いため、ブラシ毛10…にとどまる。
【0107】
また、図6(a)(b)に示すように、キャップ11の外側面の長手方向の一端には、凹部23配設されている。この凹部23を設けることにより、キャップ11の取り外しが容易になると共に凹部23が目印となってキャップ11を駆虫用ブラシに取り付ける方向を間違うことを防止することができる。
【0108】
また、使用前、すなわち、販売段階に薬剤のブリードを止めるためには、駆虫用ブラシを密封状態にする必要がある。このため、駆虫用ブラシをバリヤー性を有するパッケージに収納する必要がある。
【0109】
このようなパッケージとしてのブリスター包装容器(包装容器)30は、図7に示すように、シール部材としての台紙31と、ブリスター部材34とを有している。具体的には、バリヤー性を有し、かつ光透過性を有する(曇価20以下)熱可塑性樹脂層が表面に形成されたシール部材としての台紙31と、バリヤー性を有し、かつ光透過性を有する熱可塑性樹脂からなり、被包装体である駆虫用ブラシを収納するためのブリスター部材34とが接着されている。すなわち、上記ブリスター包装容器30によれば、駆虫用ブラシが外部から見えるように包装された状態となっている。
【0110】
なお、ブリスター部材34は、中身である駆虫用ブラシを確認するために光透過性を有することが好ましいが、必ずしも光透過性を有している必要はない。また、上記台紙31も光透過性を有していなくてもよい。なお、図7では、キャップ11を外した駆虫用ブラシをブリスター包装容器に収納した状態を示しているが、駆虫用ブラシにキャップ11を被せてブリスター包装容器に収納してもよいことは言うまでもない。
【0111】
台紙31およびブリスター部材34のバリヤー性とは、ガスおよび/または液状物の透過を抑制する性質のことを示し、特にガスの透過を抑制する用途において好適に用いられるものである。このようなバリヤー性を有するブリスター包装容器30に、駆虫用ブラシを収納することによって、該駆虫用ブラシに含有された蒸散性可塑剤の蒸散が抑制され、薬剤のブリードを止めることができる。
【0112】
上記ブリスター部材34は、駆虫用ブラシを収納するために該駆虫用ブラシの形状に沿って形成された収容部34aと、この収容部34aの外周縁に沿って形成された平面状のつば部34bとで構成されている。このつば部34bは、台紙31に対する接着部となり、その一部は該台紙31と接着されておらず、接着されたブリスター部材34を台紙31から剥がすための把手部34cとなる。
【0113】
したがって、上記構成のブリスター包装容器30では、把手部34cを台紙31から離すよう持ち上げることによって、つば部34bを該台紙31から剥がし、収納された駆虫用ブラシを取り出すようになっている。
【0114】
ここで、上記台紙31とブリスター部材34のつば部34bとの接着機構について図8を参照しながら以下に説明する。なお、台紙31およびブリスター部材34における各層の層厚は、実際にはそれぞれ異なるが、図8では、説明の便宜上各層の層厚を略同一にしている。
【0115】
上記台紙31は、図8に示すように、紙基材35とガスバリヤー層36とポリオレフィン層37とをこの順に積層した3層構造となっている。これらの各膜厚は、紙基材35が約500μm、ガスバリヤー層36が約25μm、ポリオレフィン層37が約30μmとなっている。
【0116】
上記紙基材35は、例えばコートボール紙、カート紙、またはマニラボール紙により形成されている。上記ガスバリヤー層36は、アルミニウム、またはポリエチレンテレフタレート(PET)などからなり主に台紙31にガスバリヤー性を付与するための層である。上記ポリオレフィン層37は、例えばL−LDPEからなり、台紙31に対して、主にブリスター部材34との接着性を付与するための層である。
【0117】
上記紙基材35とガスバリヤー層36との間、およびガスバリヤー層36とポリオレフィン層37との間には、酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、またはアクリル系樹脂などの樹脂を介在させて、これらを接着させることにより、3層構造の台紙31が構成されている。
【0118】
また、上記ブリスター部材34は、図8に示すように、ガスバリヤー性を有し、かつ光透過性を有する熱可塑性樹脂からなり、台紙31の最上層に相当するポリオレフィン層37との接着面側から積層フィルム38と、PET層39とが積層された構造となっている。これら各層の層厚は、積層フィルム38が約25μm、PET層39が約350μmとなっている。なお、上記ガスバリヤー層36、ポリオレフィン層37、積層フィルム38およびPET層39は、熱可塑性樹脂を用いて形成されている。
【0119】
上記積層フィルム38は、主に上記ポリオレフィン層37に対するイージーピール性、すなわち剥がし易さを付与するための層である。このようなポリオレフィン層37に対するイージーピール性を有する素材としては、例えば東セロ株式会社製のTAF610Cが好適に用いられる。上記PET層39は、ブリスター部材34に対して、主にガスバリヤー性を付与する層である。このPET層39としては、例えばポリテック株式会社のPT−700が好適に用いられる。
【0120】
なお、ガスバリヤー性を付与する上記ガスバリヤー層36および上記PET層39は、上記で挙げたもの以外にも、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、未延伸ポリプロピレン(CPP)、延伸ポリプロピレン(OPP)、結晶性ポリエチレンテレフタレート(C−PET)、延伸ナイロン(ON)、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレンビニルアルコール共重合体積層(EVOH)、およびハイバリアーフィルムとして、ポリ塩化ビニリデン塗布延伸ポリプロピレン(KOP)、ポリ塩化ビニリデン塗布ポリエステル(KPET)、ポリ塩化ビニリデン塗布延伸ナイロン(KON)、ポリ塩化ビニリデン塗布セロファン(Kセロ)などが挙げられる。そして、とりわけPET系樹脂が好適に用いられる。
【0121】
以上のことから、ブリスター部材34のつば部34bが加熱されることにより、積層フィルム38とポリオレフィン層37とが熱接着され、図7に示すように、台紙31とブリスター部材34とが接着されたブリスター包装容器30となる。
【0122】
したがって、上記構成のブリスター包装容器30では、バリヤー性を有するブリスター部材34と台紙31とを用い、さらに、ブリスター部材34と台紙31とは、該ブリスター部材34の被包装体である駆虫用ブラシの収容部分である収容部34aの外側部近傍であるつば部34bで連続的に熱接着されているので、ブリスター包装容器30における気密性を高める構成となっている。
【0123】
このように気密性が高ければ、駆虫用ブラシとして、蒸散性物質を含むものを包装した場合、上記構成のブリスター包装容器30内で蒸散性物質が蒸散することがなくなるので、ブリスター包装容器30の開封まで駆虫用ブラシの品質を低下させることがなくなる。
【0124】
さらに、上記構成の台紙31では、気密性を高めるために、紙基材35上にブリスター部材34に対する接着層となるバリヤー性を有し、かつ光透過性を有する熱可塑性樹脂層であるガスバリヤー層36およびポリオレフィン層37を設けた構成となっているので、アルミニウム箔やアルミニウム蒸着膜を使用したものよりも安価なものとなる。したがって、ブリスター包装容器30自体を安価にすることができる。
【0125】
しかも、台紙31は、基材として紙からなる紙基材35を使用しているので、アルミニウム箔などとは異なり、被包装体の名称や説明などの印刷が容易に行える。
【0126】
なお、本実施の形態においては、上記ブリスター部材34のつば部34bと台紙31との接着には、瞬間的に接着部分の樹脂組成物を熱融着させる所謂インパルスシール方法が用いられる。
【0127】
なお、本実施の形態では、ブリスター包装について説明したが、これに限定されず、駆虫用ブラシを例えばバリヤー性のある袋(スタンディングパック)に入れたり、またはバリアシュリンクした駆虫用ブラシをクリアケースに入れたりしてもよい。
【0128】
ところで、上述した薬剤のブリードが始まるタイミングの調節は、蒸散性可塑剤に加えて、さらにブリード促進剤を添加することによっても調節することができる。ブリード速度の調整もこれらの方法で達成できる。Higuchi らの擬定常仮定( 参考文献:Higuchi ら、J.Pharm.Sci.,vol.50,874(1961))を本実施の形態に適用すると、本実施の形態における薬剤のブリード速度は、ブラシ本体2の表面積、薬剤の拡散係数の平方根および薬剤の過飽和分に比例する。
【0129】
この知見により、薬剤のブリード速度を制御する場合、例えばブリード速度を高めるためには、薬剤の過飽和分を高めればよい。また、蒸散速度の速い蒸散性可塑剤、例えば蒸気圧の高い蒸散性可塑剤を用いることにより、使用初期のブリード速度を高めることもできる。
【0130】
上記樹脂組成物には、さらに必要に応じて、ブリード促進剤、上述した蒸散性可塑剤以外の可塑剤(以下、単に可塑剤と略す場合がある)、安定剤、充填剤、着色剤、酸化防止剤などを上記蒸散性可塑剤に合わせて適宜配合することができる。このうち、ブリード促進剤、可塑剤は、薬剤のブリード性を向上、あるいはブリードした薬剤の展着効果を向上させるなど、より有効にその活性を得ることを目的として、好適に用いることができる。ブリード促進剤は、薬剤のブリード性を向上させるために用いることができるが、特に、樹脂組成物中での薬剤の拡散性が低い場合に、拡散性を高めるために好適に用いることができる。
【0131】
かかるブリード促進剤としては、樹脂組成物中での拡散性が高いほど、樹脂組成物への溶解性が低いほど、また、蒸散性可塑剤への溶解性が高いほど好ましい。特に、カルボン酸がブリード促進剤としては好ましく、その具体例としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸などの脂肪酸や、安息香酸などの芳香族カルボン酸、酒石酸、フマル酸、リンゴ酸などのジカルボン酸、クエン酸などのトリカルボン酸が挙げられる。また、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサンなどのシリコーン系化合物、フッ素系界面活性剤などもブリード促進剤として例示できる。
【0132】
ブリード促進剤の配合量は、前述したように、活性化合物のブリードが始まるタイミングにより、適宜設定できるが、通常、樹脂100重量部に対して0.1〜100重量部であり、1〜50重量部がより好ましく、5〜20重量部がさらに好ましい。
【0133】
また、本実施の形態の樹脂組成物として、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリビニルアルコールなどを用いる場合には、柔軟性や加工性などを付与するために通常用いられる可塑剤を配合することができる。また、ポリ塩化ビニルのように、薬剤の溶解性が大きい樹脂組成物を使用する場合には、蒸気圧が0.013Pa(0.0001mmHg)未満であり、樹脂組成物に対する相溶性が低い可塑剤を用いる方が好ましい。
【0134】
このような樹脂組成物に対する相溶性が低い可塑剤を用いることにより、薬剤の樹脂組成物に対する飽和溶解度を低下させ、薬剤のブリード性をより高める効果が期待できる。このような可塑剤としては、ポリ塩化ビニル樹脂に対する相溶性が低い可塑剤として知られているアジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジイソデシル、アゼライン酸ジ2−エチルヘキシル、セバシン酸2−エチルヘキシル、エポキシ化大豆油、または脂肪族系ポリエステルなどが挙げられる。これら可塑剤の配合量は、通常、樹脂100重量部に対して、0.1〜200重量部であり、好ましくは5〜100重量部、さらに好ましくは20〜60重量部である。
【0135】
また、上記樹脂組成物は、脂肪族炭化水素を含んでいてもよい。脂肪族炭化水素としては、直鎖状脂肪族炭化水素、分岐を有する脂肪族炭化水素、または不飽和結合を有する脂肪族炭化水素などが挙げられる。また、本実施の形態に使用される置換基を有する脂肪族炭化水素における置換基としては、クロロ、またはブロモなどのハロゲンが挙げられる。このようなハロゲン化炭化水素の典型的な例として、1−クロロオクタン、2−クロロオクタン、1−ブロモオクタン、1−ブロモデカン、または1−ブロモドデカンなどが挙げられる。
【0136】
上記脂肪族炭化水素としては、炭素数が7〜17である脂肪族飽和炭化水素を用いることが好ましく、さらに好ましくは炭素数が8〜12である脂肪族飽和炭化水素であり、直鎖状脂肪族飽和炭化水素であることがより好ましい。具体的には、n−ヘプタン、n−オクタン、n−デカン、またはn−ドデカンである。脂肪族炭化水素は単独で使用してもよいし、2種以上混合して使用してもよい。
【0137】
上記脂肪族炭化水素の含量は、該樹脂組成物中に含有される薬剤量の20重量%以上であることが好ましい。脂肪族炭化水素の含量が、薬剤量の20重量%よりも少ない場合、樹脂組成物に保存中に、薬剤のブリードを抑えることが困難となる。また、樹脂組成物中に含有される脂肪族炭化水素量の上限は特になく、その配合量によっても薬剤のブリード開始時期をコントロールすることができる。しかし樹脂組成物中に液体成分が多い場合は、成形が困難となるため、通常、薬剤と脂肪族炭化水素の液体成分とを合わせた含量が、樹脂組成物中の60重量%以下であることが好ましい。
【0138】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0139】
本発明に係る駆虫用ブラシは、犬や猫などの動物のブラシを製造する産業分野、駆虫用の薬剤を製造する産業分野、およびバリヤー性を有するパッケージに関する産業分野などに好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0140】
【図1】本発明の実施の一形態の駆虫用ブラシの概略構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示す駆虫用ブラシの柄部の概略構成を示す斜視図である。
【図3】図1に示す駆虫用ブラシのブラシ本体の概略構成を示す斜視図である。
【図4】球状樹脂組成物における薬剤残存率と、経過日数との関係を示すグラフである。
【図5】棒状樹脂組成物における薬剤残存率と、経過日数との関係を示すグラフである。
【図6】(a)は、図1に示す駆虫用ブラシを覆うキャップの概略構成を上方から見た斜視図であり、(b)は、図1に示す駆虫用ブラシを覆うキャップの概略構成を下方から見た斜視図である。
【図7】図1に示す駆虫用ブラシからキャップを外してブリスター包装容器に収納した状態の概略構成を示す斜視図である。
【図8】図7に示すブリスター包装体のブリスター包装容器のブリスター部材と台紙との接着部分の断面図である。
【図9】従来の駆虫用ブラシの構成を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0141】
1 柄部
2 ブラシ本体
3 把持部
4 ブラシ取付部(担持部)
10 ブラシ毛(毛状突起部)
11 キャップ(被覆部材)
21 開口部
22 開口部
30 ブリスター包装容器(包装容器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
末端が固定された複数の毛状突起部を有するブラシ本体を備えており、当該ブラシ本体における、少なくとも毛状突起部は樹脂および駆虫用薬剤を含有し、徐放性を有する樹脂組成物からなっている駆虫用ブラシにおいて、
上記毛状突起部の比表面積は、先端側が最も大きくなっていることを特徴とする駆虫用ブラシ。
【請求項2】
上記毛状突起部は、末端から先端に向かうにつれて比表面積が徐々に大きくなっていることを特徴とする請求項1に記載の駆虫用ブラシ。
【請求項3】
上記毛状突起部の比表面積は、当該毛状突起部の断面積の変化、当該毛状突起部の断面形状の変化、当該毛状突起部の表面に対する凹凸の形成、当該毛状突起部の部分的な形状の変化、の少なくとも何れかにより変化させることを特徴とする請求項1または2に記載の駆虫用ブラシ。
【請求項4】
上記駆虫用薬剤は、当該薬剤の樹脂に対する飽和溶解量の1.1倍以上10倍以下で、上記樹脂組成物中に含有されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の駆虫用ブラシ。
【請求項5】
上記樹脂組成物には、さらに、駆虫用薬剤の徐放を調整する蒸散性可塑剤が含有されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の駆虫用ブラシ。
【請求項6】
上記蒸散性可塑剤は、液体エステル、液体アルコール、液体ケトン、香料、および動植物精油からなる群より選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項5に記載の駆虫用ブラシ。
【請求項7】
上記蒸散性可塑剤は、樹脂100重量部に対して0.1重量部以上100重量部以下で上記樹脂組成物中に含有されていることを特徴とする請求項5または6に記載の駆虫用ブラシ。
【請求項8】
上記蒸散性可塑剤の20℃における蒸気圧をP1とすると、当該蒸散性可塑剤では、次式
0.13Pa≦P1≦13000Pa
を満たすことを特徴とする請求項5ないし7のいずれか1項に記載の駆虫用ブラシ。
【請求項9】
上記駆虫用薬剤の20℃における蒸気圧をP2とすると、当該駆虫用薬剤と蒸散性可塑剤においては、次式
2≦P1/P2≦1010
を満たすことを特徴とする請求項8に記載の駆虫用ブラシ。
【請求項10】
上記樹脂は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、合成ゴム、または熱可塑性エラストマーであることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項に記載の駆虫用ブラシ。
【請求項11】
さらに、把持部および上記ブラシ本体を担持する担持部を有する柄部を備えていることを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1項に記載の駆虫用ブラシ。
【請求項12】
上記ブラシ本体を覆って着脱自在に装着される被覆部材を備えていることを特徴とする請求項1ないし11のいずれか1項に記載の駆虫用ブラシ。
【請求項13】
上記被覆部材が開口部を有することを特徴とする請求項12に記載の駆虫用ブラシ。
【請求項14】
ガスおよび/または液状物の透過を抑制する性質を有する包装容器に収納されていることを特徴とする請求項1ないし13のいずれか1項に記載の駆虫用ブラシ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−191818(P2006−191818A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−4510(P2005−4510)
【出願日】平成17年1月11日(2005.1.11)
【出願人】(390000527)住化ライフテク株式会社 (54)
【出願人】(000250018)有恒薬品工業株式会社 (69)