駐車支援装置
【課題】駐車支援時に車両の速度に対する運転者の違和感や、違和感解消のためのブレーキ操作の負担低減する。
【解決手段】車両と周囲に存在する物体との距離を測定する距離測定部、車両の運転者ごとに、車両と物体との距離、その距離に対応する車両の駐車支援時における速度との関係を、速度プロファイルとして記憶する速度プロファイル記憶部、運転者を特定する運転者特定部と、速度プロファイル記憶部に記憶されている、特定した運転者に対応する速度プロファイルを読み出して、駐車支援を制御する駐車支援制御部、運転者による、駐車支援中の車両の速度を変更したい意志を反映した車速変更意思を検出する車速変更意思検出部、車速変更意思を検出したときに、距離測定部が測定した車両と物体との距離と、該車速変更意思とに基づいて、速度プロファイルにおける、車両と物体との距離に対応する車両の速度を更新設定する速度プロファイル更新設定部、を備える。
【解決手段】車両と周囲に存在する物体との距離を測定する距離測定部、車両の運転者ごとに、車両と物体との距離、その距離に対応する車両の駐車支援時における速度との関係を、速度プロファイルとして記憶する速度プロファイル記憶部、運転者を特定する運転者特定部と、速度プロファイル記憶部に記憶されている、特定した運転者に対応する速度プロファイルを読み出して、駐車支援を制御する駐車支援制御部、運転者による、駐車支援中の車両の速度を変更したい意志を反映した車速変更意思を検出する車速変更意思検出部、車速変更意思を検出したときに、距離測定部が測定した車両と物体との距離と、該車速変更意思とに基づいて、速度プロファイルにおける、車両と物体との距離に対応する車両の速度を更新設定する速度プロファイル更新設定部、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動操舵や操舵支援によって設定した目標駐車位置までの移動を支援する駐車支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
運転者の駐車操作を支援する装置として、目標駐車位置を設定し、設定した駐車位置までの経路を設定し、この経路に沿った移動を行えるよう自動操舵や操舵支援を行う駐車支援装置が知られている。
【0003】
駐車時には、周囲の駐車車両や歩行者、電柱、ガードレール、さらには車庫や駐車ポール等の障害物に接近するケースが多くなるうえ、特に、後退駐車の場合には、運転者が状況を把握すべき範囲が通常走行時に比較して広くなる。この範囲は、操舵量や車速、周囲の状況に応じても変化するが、厳しい条件下でも運転者が適切に状況を把握できる車速を上限車速とすると、駐車操作に必要な時間が長くなってしまう。一方で上限車速を高く設定すると、特に不慣れな運転者にとっては、周囲の状況を確実に把握することができなくなる。
【0004】
そこで、上述の上限車速を、車両周囲の障害物の状況、および運転者のブレーキ操作に応じて可変とし、障害物までの距離が大きいほど上限車速を大きくすることで、目標駐車位置までの移動時間を短縮しつつ、車両が障害物に不用意に近付くことを抑制して安全性の確保を図るようにした駐車支援装置が考案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4506568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の構成では、検出した物体までの距離と上限車速との関係を予め記憶させておき、これらを組み合わせて上限車速を変更するため、この上限速度が速いと感じる運転者は毎回ブレーキ操作をしなければならず、運転者によっては煩わしさを感じるという問題がある。
【0007】
上記問題点を背景として、本発明の課題は、駐車支援時に車両の速度に対する運転者の違和感や、違和感解消のためのブレーキ操作の負担をより一層低減できるようにした駐車支援装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0008】
上記課題を解決するための駐車支援装置は、車両に搭載され、該車両を予め定められた目標駐車位置へ誘導制御する駐車支援を行う駐車支援装置において、車両と該車両の周囲に存在する物体との距離を測定する距離測定部と、車両の運転者ごとに、車両と物体との距離と、その距離に対応する車両の駐車支援時における速度との関係を、速度プロファイルとして記憶する速度プロファイル記憶部と、運転者を特定する運転者特定部と、速度プロファイル記憶部に記憶されている、特定した運転者に対応する速度プロファイルを読み出して、駐車支援を制御する駐車支援制御部と、運転者による、駐車支援中の車両の速度を変更したい意志を反映した車速変更意思を検出する車速変更意思検出部と、車速変更意思を検出したときに、距離測定部が測定した車両と物体との距離と、該車速変更意思とに基づいて、速度プロファイルにおける、車両と物体との距離に対応する車両の速度を更新設定する速度プロファイル更新設定部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明では、運転者のブレーキ操作あるいはアクセル操作に基づいて、検出した車両から物体までの距離と車両の速度(上述の「上限速度」に相当)との関係を学習していき、運転者ごとに最適な速度プロファイル(すなわち、物体までの距離と車両の速度との関係)を設定することで上記課題を解決する。運転者は駐車支援開始時に、運転者を特定するための情報を駐車支援装置に通知する。駐車支援装置は選択された運転者ごとに駐車支援時の運転者の運転行動(例えば、アクセルあるいはブレーキの操作)つまり車両の速度と物体までの距離との関係(すなわち、速度プロファイル)を記憶・学習し、随時更新・記憶していく。そして、次回以降の駐車支援時には、運転者ごとに記憶された速度プロファイルを読み出して駐車支援を行う。このように、運転者ごとの速度プロファイルに基づいて駐車支援を行うことで上限速度が設定値から変更されても精度のよい駐車支援が可能となる。また、個々の運転者の速度感覚あるいは車両感覚に応じた駐車支援を行うことで、運転者の自動駐車に対する違和感や負担をより一層低減できる。
【0010】
また、本発明の駐車支援装置における駐車支援制御部は、特定した運転者に対応した速度プロファイルが記憶されていないときには、予め定められたデフォルト速度プロファイルに基づいて駐車支援を行う。
【0011】
上記構成によって、初めて駐車支援装置を使用する運転者に対して、全く駐車支援を行うことができないという事態を回避できる。このときに、その運転者の運転操作に対応した速度プロファイルが作成・更新される。そして、以降の運転支援では、その運転者に対応した速度プロファイルに基づいて駐車支援が行われるので、運転者の負担を低減することができる。
【0012】
また、本発明の駐車支援装置は、車両の速度を検出する車速検出部を備え、車速変更意思検出部は、車速検出部の検出した車両の速度が、そのときの車両と物体との距離に対応して速度プロファイルから得られる車両の速度と異なるときに、車速変更意思を検出したと見なす。
【0013】
上記構成によって、駐車支援時に、運転者が減速あるいは加速したときに、車速変更意思を検出することができる。
【0014】
また、本発明の駐車支援装置は、運転者のブレーキ操作を検出するブレーキ操作検出部を備え、車速変更意思検出部は、運転者のブレーキ操作を検出したときに、車速変更意思を検出したと見なす。
【0015】
駐車支援時に運転者が速度を変更したいと思う状況は、車両の速度が速く感じるときが多く、この場合、当然減速操作(すなわち、ブレーキ操作)を行う。一方、車両の速度が遅く感じるときは、駐車時のことなので加速せずにそのままの速度を維持することが多い。上記構成によって、新規にセンサや部品を追加することなく、運転者の車速変更意思を検出することができる。
【0016】
また、本発明の駐車支援装置における速度プロファイル更新設定部は、少なくとも、車速変更意思を検出したときの車両の速度の履歴に基づいて、速度プロファイルを更新設定する。
【0017】
上記構成によって、運転者の車速変更意思を的確に反映した速度プロファイルに更新することができる。
【0018】
また、本発明の駐車支援装置における速度プロファイル更新設定部は、車両の速度の変化率が予め定められた値を超えないように速度プロファイルを更新設定する。
【0019】
上記構成によって、駐車支援に車両の速度が小刻みに変化して、乗り心地を損なうことを防止できる。また、駐車支援装置に対する運転手の信頼感も低下しない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の駐車支援装置の構成を示す図。
【図2】駐車支援制御処理を説明するフロー図。
【図3】駐車支援処理を説明するフロー図。
【図4】駐車支援の概要を示す図。
【図5】車速変更意思検出処理を説明するフロー図。
【図6】速度プロファイルの更新について説明する図。
【図7】速度変化最大点の算出方法について説明する図。
【図8】図6に続く、速度プロファイルの更新について説明する図。
【図9】図8に続く、速度プロファイルの更新について説明する図。
【図10】図9に続く、速度プロファイルの更新について説明する図。
【図11】速度プロファイル記憶部の記憶例について説明する図。
【図12】速度プロファイル更新処理を説明するフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の駐車支援装置について、図面を用いて説明する。図1に、駐車支援装置100の構成を示す。駐車支援装置100は、走行制御装置110と自動操舵装置120とを含み、制御装置である駐車支援ECU1により制御される。
【0022】
駐車支援ECU1は、CPU2と、CPU2が実行する駐車支援プログラムを記憶するROM3と、駐車支援プログラム実行中にデータを一時保存するRAM4と、メモリ5と、入力信号回路、出力信号回路、電源回路(いずれも図示せず)などを含む。さらに、走行制御装置110の制御を行う走行制御部10と自動操舵装置の制御を行う操舵制御部11とを有している。この走行制御部10と操舵制御部11とは、駐車支援ECU1内で、駐車支援ECU1とは別構成のハードウェアのように表記してあるが、ハードウェアを駐車支援ECU1と共用して、ソフトウェア機能モジュールとして区分するようにしてもよい。なお、CPU2が本発明の駐車支援制御部,速度プロファイル更新設定部,車速変更意思検出部に相当する。
【0023】
メモリ5は、フラッシュメモリ等の不揮発性記憶媒体により構成され、駐車支援装置100の動作に必要な情報を記憶する。また、後述の運転者特定スイッチに対応した速度プロファイルも記憶する。図11に、その記憶例を示す。図11の例では、運転者特定スイッチ(「スイッチ」と略記)が1〜4の4個あり、それぞれに速度プロファイルが関連付けて記憶されている。「未定義」は、速度プロファイルが記憶されていない、すなわち、その運転者特定スイッチが使用されていないことを示している。なお、メモリ5が本発明の速度プロファイル記憶部に相当する。また、駐車支援開始スイッチのみを備える構成のときには、メモリ5の速度プロファイル記憶領域は1つとなり、この記憶領域に、予めデフォルトの速度プロファイルが記憶され、駐車支援のたびに、この速度プロファイルが更新される。
【0024】
既に、速度プロファイルを設定している運転者は、対応する運転者特定スイッチ(図11の例では、運転者特定スイッチ1または2)を操作して、自分の速度プロファイルを読み出して駐車支援を実行させる。また、速度プロファイルを設定していない運転者は、使用されていない運転者特定スイッチ(図11の例では、運転者特定スイッチ3または4)を操作する。このときは、デフォルトの速度プロファイルを読み出して駐車支援を実行させる(詳細は後述)。
【0025】
なお、デフォルトの速度プロファイルは、一律に定めるものではなく、車両の種類,車両の仕向地(例えば、国あるいは地域)に応じて定めてもよい。また、駐車支援ECU1に周知のカレンダー機能を持たせて、季節に応じてデフォルトの速度プロファイルを定めるようにしてもよい。例えば、仕向地が寒冷地であれば、冬季は車両の速度(すなわち、上限速度)を他の季節よりも小さくする。また、このとき、車両の速度の減速率を小さくしてもよい。
【0026】
図1に戻り、走行制御装置110は、走行制御部10と制動系、駆動系により構成される。制動系は各車輪へ付与する制動力をブレーキECU31によって電子制御する電子制御ブレーキ(ECB:Electric Control Braking)システムであって、各車輪に配置された油圧ブレーキのホイルシリンダ38(各車輪のホイルシリンダの総称)へ印加されるブレーキ油圧をアクチュエータ34(各車輪のアクチュエータの総称)により調整することで各車輪に付与する制動力を独立して調整する機能を有している。
【0027】
ブレーキECU31には、各車輪に配置され、それぞれの車輪の回転速度である車輪速を検出する車輪速センサ32(各車輪の車輪速センサの総称)と、車両の加速度を検出する加速度センサ33、アクチュエータ34内に配置されており、内部およびホイルシリンダ38に印加される油圧を検出する油圧センサ群(図示せず)、ブレーキペダル37とアクチュエータ34との間に接続されているマスタシリンダ(M/C)35の油圧を検出する油圧センサ36の各出力信号が入力されている。なお、車輪速センサ32が本発明の車速検出部に相当する。また、油圧センサ36が本発明のブレーキ操作検出部に相当する。
【0028】
駆動系を構成するエンジン22はエンジンECU21によって制御され、エンジンECU21とブレーキECU31は走行制御部10と相互に情報を通信して協調制御を行う。ここで、エンジンECU21には、トランスミッションのシフト状態を検出するシフトセンサ12の出力が入力されている。また、エンジンECU21には、運転者のアクセルペダル(図示せず)の操作状態を検出するアクセルセンサ23の出力が入力されている。
【0029】
自動操舵装置120は、ステアリングホイール40とステアリングギヤ41との間に配置されたパワーステアリング装置を兼ねる駆動モータ42と、ステアリングの変位量を検出する変位センサ43とを備え、操舵制御部11は駆動モータ42の駆動を制御するとともに、変位センサ43の出力信号が入力されている。
【0030】
走行制御部10と操舵制御部11とを備える駐車支援ECU1には、車両後方の画像を取得するための後方カメラ15で取得した画像信号と、駐車支援にあたって運転者の操作入力を受け付ける操作入力部16の出力信号が入力されるとともに、運転者に対して画像により情報を表示するモニタ13と、音声により情報を提示するスピーカー14が接続されている。
【0031】
操作入力部16は、周知のメカニカルスイッチあるいはモニタ13の画面上に形成されたタッチパネルとして構成される。そして、操作入力部16には、駐車支援を行う運転者を特定するための運転者特定スイッチ、あるいは駐車支援を行うか否かの駐車支援開始スイッチが含まれている。運転者特定スイッチが駐車支援開始スイッチを兼用してもよい。なお、操作入力部16が本発明の運転者特定部に相当する。
【0032】
運転者特定スイッチは、速度プロファイルが設定されているか否かによって、表示形態(表示色,点灯パターン,濃淡等)を変えてもよい。
【0033】
さらに、車両の前部、後部および四隅(例えば、バンパーの角部)には車両周辺の物体を検出するソナー17が配置されており、ソナー17の出力(物体との距離)が駐車支援ECU1へ入力されている。ソナー17は、例えば、周期的に超音波を発信して、反射波を受信するまでの時間に基づいて、物体の存否の判定、あるいは当該物体までの距離を測定する。ソナー17に代えてレーダを用いてもよく、また、カメラで取得した画像を画像処理することで物体の存否と物体までの距離を測定するようにしてもよい。なお、ソナー17が本発明の距離測定部に相当する。
【0034】
図2を用いて、駐車支援制御処理について説明する。なお、本処理は、ROM3に記憶された駐車支援プログラムに含まれ、該プログラムに含まれる他の処理とともに、CPU2によって繰り返し実行される。
【0035】
まず、操作入力部16の状態(すなわち、操作入力情報)を取得する(S11)。そして、以下のうちのいずれかの方法で、駐車支援開始操作の有無を判定する。
・駐車支援開始スイッチのみを備える構成のときは、駐車支援開始スイッチの操作が行われたときに、駐車支援開始操作があったと判定する。
・駐車支援開始スイッチの有無によらず運転者特定スイッチを備える構成のときは、運転者特定スイッチの操作を優先し、運転者特定スイッチの操作が行われたときに、駐車支援開始操作があったと判定する。
【0036】
例えば図4の上段部の位置Aで、駐車支援開始操作があったと判定したとき(S12:Yes)、以下のうちのいずれかの方法で、運転者の特定があったか否かを判定する。
・駐車支援開始スイッチのみを備える構成のときは、運転者の特定はなかったと判定する。
・駐車支援開始スイッチの有無によらず運転者特定スイッチを備える構成のときは、運転者の特定があったと判定する。
【0037】
運転者の特定があったと判定したとき(S13:Yes)、メモリ5あるいはROM3を参照して操作された運転者特定スイッチに速度プロファイルが記憶されているか否かを判定する(S14)。速度プロファイルが記憶されているとき、図11の例では、運転者特定スイッチ1あるいは2が操作されたとき(S15:Yes)、操作された運転者特定スイッチに対応する速度プロファイルを読み出す(S16)。
【0038】
一方、運転者の特定がなかったと判定したとき(S13:No)、あるいは、速度プロファイルが記憶されていないとき、図11の例では、運転者特定スイッチ3あるいは4が操作されたとき(S15:No)、速度プロファイルが未定義であるので、デフォルトの速度プロファイルを読み出す(S18)。また、駐車支援開始スイッチのみを備える構成の場合は、該スイッチに対応する速度プロファイルが既に記憶されているときは、その速度プロファイルを読み出してもよい。
【0039】
そして、上述のそれぞれにおいて読み出した速度プロファイルに基づいて、駐車支援処理を実行する(S17,後述)。
【0040】
図3,図4を用いて、図2のステップS17に相当する駐車支援処理について説明する。なお、本処理は、特許文献1の図3,図4の処理と同様であるため、概略のみ説明する。
【0041】
まず、運転者は自車両51を、図4の上段部のように、位置Aから位置Bに移動する。このとき、ソナー17(カメラを搭載しているときにはカメラを用いてもよい)により、自車両51の周囲の状況(他車両52,53等の物体の有無、あるいは駐車可能スペースの有無)を探知する。そして、駐車可能スペースがあるとき、これを目標駐車位置とし、その重心位置をPt(xt,yt)で表す(例えば、図4の下段部の、点線枠で示される位置Dの重心位置に相当)。
【0042】
目標駐車位置Ptの設定が完了すると、駐車支援ECU1は、図3に示される処理を開始する。まず、ステップS1では、駐車位置への経路設定完了フラグXsetに初期値である0(経路設定未了)をセットする。ステップS2では、現在位置P(x,y)から目標駐車位置Pt(xt,yt)までの経路を求める。そして、経路を設定できた場合には、Xsetに1をセットし、設定できなかった場合は、Xsetに0を設定する。
【0043】
ステップS3でXsetの値をチェックし、1のときにのみ(S3:Yes)次のステップS4へと移行し、0のときには(S3:No)、舵角変更や初期位置変更時は、変更が終了するまで待機してからステップS2へと戻る。これにより目標駐車位置への到達経路を設定する。
【0044】
ステップS4では、運転者にブレーキペダル37を踏み込んで、シフトレバーを操作して後退にセットするよう指示し、条件が満たされるまで待機する。ステップS5では、駐車支援ECU1の走行制御部10が、エンジンECU21にエンジン22をトルクアップするよう指示し、自動操舵を開始する。
【0045】
ここで、運転者がブレーキペダル37を操作すると、そのペダル開度に応じてアクチュエータ34によってホイルシリンダ38に付与されるホイルシリンダ油圧(ブレーキ油圧)が調整され、各輪に付与される制動力を調整することで、制動力と駆動力のバランスを変更することで車速が調整される。
【0046】
ステップS6では、車輪速センサ32から得られる車輪速を基に求めた車速変化、加速度センサ33から得られる加速度を基に求めた加速度変化および変位センサ43から求められる操舵角変化を基に、現在位置を算出する。
【0047】
ステップS7では、操舵制御部11は変位センサ43の出力を監視しながら、駆動モータ42を制御してステアリングギヤ41を操作することにより、舵角が駐車支援ECU1で求めた位置に応じた舵角変位となるよう制御する。
【0048】
ステップS8では、現在位置Pが目標駐車位置Pt(図4の位置Dに相当)に到達しているか否かを判定する。この判定においては、現在位置Pが目標駐車位置Ptの近辺の所定のエリア内に到達しているか否かを判定すればよい。このエリアの広さは、後方カメラ15から取得された画像の画像認識の精度や、車速、加速度等から求められる現在位置の判定精度、自動操舵装置120の操舵精度等を基にして設定すればよい。
【0049】
目標駐車位置Ptへ到達していないと判定したとき(S8:No)、ステップS6へ戻って処理を繰り返す。
【0050】
一方、目標駐車位置Pt近傍へ到達したと判定したとき(S8:Yes)、ステップS9へと移行して走行制御部10は、エンジンECU21にエンジン22の回転数を下げるよう指示して、トルクダウンを行い、操舵制御部11は、自動操舵制御を終了する。そして、ステップS10では、モニタ13やスピーカー14を介して、運転者に目標駐車位置へ到達したことを報知するとともに、シフトレバーを駐車位置に設定して、エンジンを停止させるよう促し、本処理を終了する。
【0051】
図5を用いて、図3の駐車支援処理における車速の調整時の車速変更意思検出処理について具体的に説明する。なお、本処理は、図3のステップS6〜S8の処理と並行して所定のタイミングで繰り返し実行される。
【0052】
まず、ソナー17により、車両51の進行方向前方(進行方向の左右の前側方を含めてもよい)と物体との距離を測定する(S31)。
【0053】
次に、測定した物体との距離と、先に読み出した速度プロファイルとに基づいて、このときの車速を決定する(S32)。
【0054】
次に、運転者によりブレーキ操作を検出したか否かを判定する。ここでは、油圧センサ36の出力値が所定値以上となったとき、ブレーキ操作中と判定する。ブレーキ操作を検出したとき(S33:Yes)、車輪速センサ32の検出状態に基づいて車速を検出する(S34)。また、ブレーキ操作の状態(油圧センサ36の出力)から車速を推定してもよい。
【0055】
そして、車速履歴をメモリ5あるいはRAM4に記憶し(S35)、本処理を終了する。すなわち、検出あるいは推定した車速を、先に測定した物体との距離に関連づけて記憶する。
【0056】
一方、ブレーキ操作を検出しないとき(S33:No)、車輪速センサ32の検出状態に基づいて車速を検出し(S36)、前回の処理実行時から車速が変化したか否かを判定する。ブレーキ操作以外にも、シフトレバー位置の変更(いわゆる、「減速チェンジ」等)により、運転者が車両51を減速させることができる。逆に、アクセルセンサ23により検出したアクセルペダルの操作により、運転者が車両51を加速したときにも対応できる。
【0057】
車速が変化したとき、(S37:Yes)、車速履歴をメモリ5あるいはRAM4に記憶し(S35)、本処理を終了する。
【0058】
一方、ブレーキ操作を検出せず(S33:No)、車速も変化しないとき、(S37:No)、本処理を終了する。
【0059】
上述の処理では、ブレーキの操作状態と車輪速センサ32の検出状態とを用いて車速の変化を検出しているが、これらのうちの一方のみを用いる構成でもよい。
【0060】
図4を用いて、駐車支援の詳細について説明する。運転者は、上段部→中段部→下段部のように、自車両51を、既に駐車している他車両52,53の間に駐車させようとしている。
【0061】
まず、運転者は、図4の上段部のように、車両51を手前側の車両53の手前付近の位置Aで、駐車支援を開始する。すなわち、駐車支援開始スイッチあるいは運転者特定スイッチを操作する。このとき、車両は走行状態でも停止状態でもよい。このとき、図2の駐車支援制御処理において、対応する速度プロファイルを読み出して、図3の駐車支援処理を実行する。
【0062】
次に、運転者は、図4の中段部のように、自車両51を位置Bまで移動させる。この移動中に、図3の駐車支援処理において、ソナー17を用いて、他車両52,53の間に形成された駐車空間を検出し、現在位置P(位置B)および目標駐車位置Pt(位置D)を設定し、設定終了後、運転者に駐車(この場合は後退)の開始を促し、速度・操舵の制御を開始する。
【0063】
以降、位置Cを経て位置Dにまで自車両51を移動して、駐車支援を終了する(図4の中段部→下段部)。このとき、図4の中段部のように、接触あるいは衝突はしないものの、自車両51が他車両53に接近し、このとき運転者が近づき過ぎと感じてブレーキを操作して減速したとき、減速時の車速を、このときに測定した自車両51と他車両53(すなわち、車両周囲の物体)との距離に関連付けて、速度プロファイルを更新する。無論、駐車支援において、自車両51が他車両53に所定の距離を下回って接近したとき、あるいは接近が予測されるときには、切り返しを行うようにしてもよい。
【0064】
図6〜図10を用いて、速度プロファイルの更新の詳細について説明する。図6に、デフォルトの速度プロファイル(「デフォルト値」と表記:破線表示)と実際の車両速度(以下、「車速」と略記する:実線表示)の変化を示す。上述のように、運転者の速度プロファイルが未定義のときには、デフォルトの速度プロファイルが用いられて、測定した物体との距離(図6以降では、単に「距離」と表記)に基づいて車速が設定される。デフォルトの速度プロファイルでは、物体との距離が2m以上のときは車速が4km/hに設定され、物体との距離が2m以下のときは1mあたり2km/hの減速率で車速が設定されている。
【0065】
図6の例では、デフォルトの速度プロファイルに基づいて駐車支援を行ったところ、物体との距離が約5m〜1.5mの間では、車速がデフォルト値を下回っている。つまり、この運転者は、該当距離の間では、もう少し遅い速度で駐車位置に接近したいことが分かる。また、物体との距離が約2m〜1.5mの間では、若干(0.1km/h程度)ではあるが車速が速くなっている。これは、運転者がアクセルペダルを操作したか、車両の進行方向がやや下り斜面となっていたために増速したかのいずれかが考えられる。増速してもブレーキペダル37を操作していないので、運転者は増速を容認していると推定できる。
【0066】
車速がデフォルト値と異なるとき、すなわち、運転者の車速変更意思を検出したとき、まず、図7のように、2点間の速度変化最大点を特定する。物体との距離がゼロの地点の地点から予め定められた距離だけ離れた地点から、予め定められた距離L(例えば、1.6m)の区間を適宜設定し(図6の例では、4区間)、その区間での速度変化最大点を特定する。より具体的には、Lをさらに距離lで区切り、距離lの区間ごとの平均速度を算出し、その前後の区間での平均速度と比較し、その変化が最も大きい点を距離Lの区間の速度変化最大点とする。
【0067】
図8に、図6における速度変化最大点の特定結果を実際の車速(実線表示)とともに示す。図8の例では、P1,P2,P3,P4の4点が、速度変化最大点として特定されている。そして、これら速度変化最大点と物体との距離がゼロの地点の地点(距離0m,車速0km/h)を順次直線で結んだものを仮速度プロファイル(破線表示)とする。つまり、速度プロファイル更新設定部は、車両と物体との距離が予め定められた値となる点からゼロとなる点までを、予め定められた距離区間に分割し、それぞれの距離区間における車速の変化の最大の地点を速度変化最大点として特定し、これら速度変化最大点および物体との距離がゼロの点のうち隣接するものを直線で結んだものを新たな速度プロファイルとする構成である。
【0068】
P4からP3に至る区間では、仮速度プロファイルの直線の傾きが、実際の車両の速度の変化よりも急になっている。P3からP2に至る区間では、仮速度プロファイルの直線の傾きが、実際の車両の速度の変化よりもややなだらかになっている。P2からP1に至る区間では、仮速度プロファイルの直線の傾きが、実際の車両の速度の変化のほぼ半分になっている。P1から物体との距離がゼロの地点に至る区間では、実際の車両の速度の変化と(デフォルトの速度プロファイルとも)ほぼ同じになっている。
【0069】
図9の、P3とP4とを結ぶ直線、あるいはP2とP1とを結ぶ直線のように、仮速度プロファイル(破線表示)の直線のうち、その傾きの絶対値が予め定められた一定値以下のときには、その傾きをゼロに近似する。そして、ゼロに近似した直線と、P3からその直線に向けて延長したものとの交点を近似点P31とする。同様に、P2とP1とを結ぶ直線も近似して、近似点P11を得る。つまり、速度プロファイル更新設定部は、新たな速度プロファイルが形成する直線のうち、その傾きの絶対値が予め定められた値を下回るときには、その傾きをゼロにする構成である。
【0070】
そして、P4〜P31〜P2〜P11〜物体との距離がゼロの点(原点)を、それぞれ直線で結んだものを作成速度プロファイル(すなわち、運転者に対応する速度プロファイル:実線表示)として、運転者に関連づけてメモリ5に記憶する。上述のように、直線近似した方が、少なくとも、物体との距離がゼロの点(原点)、速度変化最大点、および駐車支援開始位置(例えば、原点から10mの地点)を記憶するだけでよいので、に比べて、メモリ5の記憶容量を低減することができる。
【0071】
図10に、作成速度プロファイル(太い実線)、速度プロファイルのデフォルト値(破線)、および実際の車速(細い実線)を示す。次の駐車支援では、運転者を特定したときに、この作成速度プロファイルが読み出されて駐車支援が行われる。そして、この作成速度プロファイルと実際の車速とが異なるときには、再度速度プロファイルの作成が行われる。
【0072】
図12を用いて、上述の図6〜図10に相当し、駐車支援プログラムに含まれ、該プログラムに含まれる他の処理とともに、CPU2によって、以下のうちのいずれかの所定のタイミングで実行される速度プロファイル更新処理について説明する。
・図5の車速変更意思検出処理におけるステップS35の後。
・図3の駐車支援処理におけるステップS10の後(すなわち駐車支援終了後)。
【0073】
まず、メモリ5あるいはRAM4に車速履歴が記憶されているか否かを調べる。車速履歴が記憶されていないとき(S51:No)、本処理を終了する。一方、図6の車両速度のような車速履歴が記憶されているとき(S51:Yes)、図7のように、速度変化最大点を特定する(S52)。
【0074】
次に、図8のように、特定した速度変化最大点、および物体との距離がゼロの点のうち、隣り合う点を直線で結ぶ仮速度プロファイルを作成する(S53)。次に、図9のように、仮速度プロファイルの直線のうち、その傾きの絶対値が予め定められた一定値以下のものがあるときには、その傾きをゼロに近似する(S54)。そして、近似したもの(近似する必要がなかったときには、仮速度プロファイル)を、作成速度プロファイルとして、運転者(すなわち、運転者特定スイッチ番号)に関連づけてメモリ5に記憶する(S55)。最後に、車速履歴を消去する(S56)。
【0075】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、これらはあくまで例示にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づく種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0076】
2 CPU(駐車支援制御部,速度プロファイル更新設定部,車速変更意思検出部)
5 メモリ(速度プロファイル記憶部)
16 操作入力部(運転者特定部)
17 ソナー(距離測定部)
32 車輪速センサ(車速検出部)
36 油圧センサ(ブレーキ操作検出部)
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動操舵や操舵支援によって設定した目標駐車位置までの移動を支援する駐車支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
運転者の駐車操作を支援する装置として、目標駐車位置を設定し、設定した駐車位置までの経路を設定し、この経路に沿った移動を行えるよう自動操舵や操舵支援を行う駐車支援装置が知られている。
【0003】
駐車時には、周囲の駐車車両や歩行者、電柱、ガードレール、さらには車庫や駐車ポール等の障害物に接近するケースが多くなるうえ、特に、後退駐車の場合には、運転者が状況を把握すべき範囲が通常走行時に比較して広くなる。この範囲は、操舵量や車速、周囲の状況に応じても変化するが、厳しい条件下でも運転者が適切に状況を把握できる車速を上限車速とすると、駐車操作に必要な時間が長くなってしまう。一方で上限車速を高く設定すると、特に不慣れな運転者にとっては、周囲の状況を確実に把握することができなくなる。
【0004】
そこで、上述の上限車速を、車両周囲の障害物の状況、および運転者のブレーキ操作に応じて可変とし、障害物までの距離が大きいほど上限車速を大きくすることで、目標駐車位置までの移動時間を短縮しつつ、車両が障害物に不用意に近付くことを抑制して安全性の確保を図るようにした駐車支援装置が考案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4506568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の構成では、検出した物体までの距離と上限車速との関係を予め記憶させておき、これらを組み合わせて上限車速を変更するため、この上限速度が速いと感じる運転者は毎回ブレーキ操作をしなければならず、運転者によっては煩わしさを感じるという問題がある。
【0007】
上記問題点を背景として、本発明の課題は、駐車支援時に車両の速度に対する運転者の違和感や、違和感解消のためのブレーキ操作の負担をより一層低減できるようにした駐車支援装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0008】
上記課題を解決するための駐車支援装置は、車両に搭載され、該車両を予め定められた目標駐車位置へ誘導制御する駐車支援を行う駐車支援装置において、車両と該車両の周囲に存在する物体との距離を測定する距離測定部と、車両の運転者ごとに、車両と物体との距離と、その距離に対応する車両の駐車支援時における速度との関係を、速度プロファイルとして記憶する速度プロファイル記憶部と、運転者を特定する運転者特定部と、速度プロファイル記憶部に記憶されている、特定した運転者に対応する速度プロファイルを読み出して、駐車支援を制御する駐車支援制御部と、運転者による、駐車支援中の車両の速度を変更したい意志を反映した車速変更意思を検出する車速変更意思検出部と、車速変更意思を検出したときに、距離測定部が測定した車両と物体との距離と、該車速変更意思とに基づいて、速度プロファイルにおける、車両と物体との距離に対応する車両の速度を更新設定する速度プロファイル更新設定部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明では、運転者のブレーキ操作あるいはアクセル操作に基づいて、検出した車両から物体までの距離と車両の速度(上述の「上限速度」に相当)との関係を学習していき、運転者ごとに最適な速度プロファイル(すなわち、物体までの距離と車両の速度との関係)を設定することで上記課題を解決する。運転者は駐車支援開始時に、運転者を特定するための情報を駐車支援装置に通知する。駐車支援装置は選択された運転者ごとに駐車支援時の運転者の運転行動(例えば、アクセルあるいはブレーキの操作)つまり車両の速度と物体までの距離との関係(すなわち、速度プロファイル)を記憶・学習し、随時更新・記憶していく。そして、次回以降の駐車支援時には、運転者ごとに記憶された速度プロファイルを読み出して駐車支援を行う。このように、運転者ごとの速度プロファイルに基づいて駐車支援を行うことで上限速度が設定値から変更されても精度のよい駐車支援が可能となる。また、個々の運転者の速度感覚あるいは車両感覚に応じた駐車支援を行うことで、運転者の自動駐車に対する違和感や負担をより一層低減できる。
【0010】
また、本発明の駐車支援装置における駐車支援制御部は、特定した運転者に対応した速度プロファイルが記憶されていないときには、予め定められたデフォルト速度プロファイルに基づいて駐車支援を行う。
【0011】
上記構成によって、初めて駐車支援装置を使用する運転者に対して、全く駐車支援を行うことができないという事態を回避できる。このときに、その運転者の運転操作に対応した速度プロファイルが作成・更新される。そして、以降の運転支援では、その運転者に対応した速度プロファイルに基づいて駐車支援が行われるので、運転者の負担を低減することができる。
【0012】
また、本発明の駐車支援装置は、車両の速度を検出する車速検出部を備え、車速変更意思検出部は、車速検出部の検出した車両の速度が、そのときの車両と物体との距離に対応して速度プロファイルから得られる車両の速度と異なるときに、車速変更意思を検出したと見なす。
【0013】
上記構成によって、駐車支援時に、運転者が減速あるいは加速したときに、車速変更意思を検出することができる。
【0014】
また、本発明の駐車支援装置は、運転者のブレーキ操作を検出するブレーキ操作検出部を備え、車速変更意思検出部は、運転者のブレーキ操作を検出したときに、車速変更意思を検出したと見なす。
【0015】
駐車支援時に運転者が速度を変更したいと思う状況は、車両の速度が速く感じるときが多く、この場合、当然減速操作(すなわち、ブレーキ操作)を行う。一方、車両の速度が遅く感じるときは、駐車時のことなので加速せずにそのままの速度を維持することが多い。上記構成によって、新規にセンサや部品を追加することなく、運転者の車速変更意思を検出することができる。
【0016】
また、本発明の駐車支援装置における速度プロファイル更新設定部は、少なくとも、車速変更意思を検出したときの車両の速度の履歴に基づいて、速度プロファイルを更新設定する。
【0017】
上記構成によって、運転者の車速変更意思を的確に反映した速度プロファイルに更新することができる。
【0018】
また、本発明の駐車支援装置における速度プロファイル更新設定部は、車両の速度の変化率が予め定められた値を超えないように速度プロファイルを更新設定する。
【0019】
上記構成によって、駐車支援に車両の速度が小刻みに変化して、乗り心地を損なうことを防止できる。また、駐車支援装置に対する運転手の信頼感も低下しない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の駐車支援装置の構成を示す図。
【図2】駐車支援制御処理を説明するフロー図。
【図3】駐車支援処理を説明するフロー図。
【図4】駐車支援の概要を示す図。
【図5】車速変更意思検出処理を説明するフロー図。
【図6】速度プロファイルの更新について説明する図。
【図7】速度変化最大点の算出方法について説明する図。
【図8】図6に続く、速度プロファイルの更新について説明する図。
【図9】図8に続く、速度プロファイルの更新について説明する図。
【図10】図9に続く、速度プロファイルの更新について説明する図。
【図11】速度プロファイル記憶部の記憶例について説明する図。
【図12】速度プロファイル更新処理を説明するフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の駐車支援装置について、図面を用いて説明する。図1に、駐車支援装置100の構成を示す。駐車支援装置100は、走行制御装置110と自動操舵装置120とを含み、制御装置である駐車支援ECU1により制御される。
【0022】
駐車支援ECU1は、CPU2と、CPU2が実行する駐車支援プログラムを記憶するROM3と、駐車支援プログラム実行中にデータを一時保存するRAM4と、メモリ5と、入力信号回路、出力信号回路、電源回路(いずれも図示せず)などを含む。さらに、走行制御装置110の制御を行う走行制御部10と自動操舵装置の制御を行う操舵制御部11とを有している。この走行制御部10と操舵制御部11とは、駐車支援ECU1内で、駐車支援ECU1とは別構成のハードウェアのように表記してあるが、ハードウェアを駐車支援ECU1と共用して、ソフトウェア機能モジュールとして区分するようにしてもよい。なお、CPU2が本発明の駐車支援制御部,速度プロファイル更新設定部,車速変更意思検出部に相当する。
【0023】
メモリ5は、フラッシュメモリ等の不揮発性記憶媒体により構成され、駐車支援装置100の動作に必要な情報を記憶する。また、後述の運転者特定スイッチに対応した速度プロファイルも記憶する。図11に、その記憶例を示す。図11の例では、運転者特定スイッチ(「スイッチ」と略記)が1〜4の4個あり、それぞれに速度プロファイルが関連付けて記憶されている。「未定義」は、速度プロファイルが記憶されていない、すなわち、その運転者特定スイッチが使用されていないことを示している。なお、メモリ5が本発明の速度プロファイル記憶部に相当する。また、駐車支援開始スイッチのみを備える構成のときには、メモリ5の速度プロファイル記憶領域は1つとなり、この記憶領域に、予めデフォルトの速度プロファイルが記憶され、駐車支援のたびに、この速度プロファイルが更新される。
【0024】
既に、速度プロファイルを設定している運転者は、対応する運転者特定スイッチ(図11の例では、運転者特定スイッチ1または2)を操作して、自分の速度プロファイルを読み出して駐車支援を実行させる。また、速度プロファイルを設定していない運転者は、使用されていない運転者特定スイッチ(図11の例では、運転者特定スイッチ3または4)を操作する。このときは、デフォルトの速度プロファイルを読み出して駐車支援を実行させる(詳細は後述)。
【0025】
なお、デフォルトの速度プロファイルは、一律に定めるものではなく、車両の種類,車両の仕向地(例えば、国あるいは地域)に応じて定めてもよい。また、駐車支援ECU1に周知のカレンダー機能を持たせて、季節に応じてデフォルトの速度プロファイルを定めるようにしてもよい。例えば、仕向地が寒冷地であれば、冬季は車両の速度(すなわち、上限速度)を他の季節よりも小さくする。また、このとき、車両の速度の減速率を小さくしてもよい。
【0026】
図1に戻り、走行制御装置110は、走行制御部10と制動系、駆動系により構成される。制動系は各車輪へ付与する制動力をブレーキECU31によって電子制御する電子制御ブレーキ(ECB:Electric Control Braking)システムであって、各車輪に配置された油圧ブレーキのホイルシリンダ38(各車輪のホイルシリンダの総称)へ印加されるブレーキ油圧をアクチュエータ34(各車輪のアクチュエータの総称)により調整することで各車輪に付与する制動力を独立して調整する機能を有している。
【0027】
ブレーキECU31には、各車輪に配置され、それぞれの車輪の回転速度である車輪速を検出する車輪速センサ32(各車輪の車輪速センサの総称)と、車両の加速度を検出する加速度センサ33、アクチュエータ34内に配置されており、内部およびホイルシリンダ38に印加される油圧を検出する油圧センサ群(図示せず)、ブレーキペダル37とアクチュエータ34との間に接続されているマスタシリンダ(M/C)35の油圧を検出する油圧センサ36の各出力信号が入力されている。なお、車輪速センサ32が本発明の車速検出部に相当する。また、油圧センサ36が本発明のブレーキ操作検出部に相当する。
【0028】
駆動系を構成するエンジン22はエンジンECU21によって制御され、エンジンECU21とブレーキECU31は走行制御部10と相互に情報を通信して協調制御を行う。ここで、エンジンECU21には、トランスミッションのシフト状態を検出するシフトセンサ12の出力が入力されている。また、エンジンECU21には、運転者のアクセルペダル(図示せず)の操作状態を検出するアクセルセンサ23の出力が入力されている。
【0029】
自動操舵装置120は、ステアリングホイール40とステアリングギヤ41との間に配置されたパワーステアリング装置を兼ねる駆動モータ42と、ステアリングの変位量を検出する変位センサ43とを備え、操舵制御部11は駆動モータ42の駆動を制御するとともに、変位センサ43の出力信号が入力されている。
【0030】
走行制御部10と操舵制御部11とを備える駐車支援ECU1には、車両後方の画像を取得するための後方カメラ15で取得した画像信号と、駐車支援にあたって運転者の操作入力を受け付ける操作入力部16の出力信号が入力されるとともに、運転者に対して画像により情報を表示するモニタ13と、音声により情報を提示するスピーカー14が接続されている。
【0031】
操作入力部16は、周知のメカニカルスイッチあるいはモニタ13の画面上に形成されたタッチパネルとして構成される。そして、操作入力部16には、駐車支援を行う運転者を特定するための運転者特定スイッチ、あるいは駐車支援を行うか否かの駐車支援開始スイッチが含まれている。運転者特定スイッチが駐車支援開始スイッチを兼用してもよい。なお、操作入力部16が本発明の運転者特定部に相当する。
【0032】
運転者特定スイッチは、速度プロファイルが設定されているか否かによって、表示形態(表示色,点灯パターン,濃淡等)を変えてもよい。
【0033】
さらに、車両の前部、後部および四隅(例えば、バンパーの角部)には車両周辺の物体を検出するソナー17が配置されており、ソナー17の出力(物体との距離)が駐車支援ECU1へ入力されている。ソナー17は、例えば、周期的に超音波を発信して、反射波を受信するまでの時間に基づいて、物体の存否の判定、あるいは当該物体までの距離を測定する。ソナー17に代えてレーダを用いてもよく、また、カメラで取得した画像を画像処理することで物体の存否と物体までの距離を測定するようにしてもよい。なお、ソナー17が本発明の距離測定部に相当する。
【0034】
図2を用いて、駐車支援制御処理について説明する。なお、本処理は、ROM3に記憶された駐車支援プログラムに含まれ、該プログラムに含まれる他の処理とともに、CPU2によって繰り返し実行される。
【0035】
まず、操作入力部16の状態(すなわち、操作入力情報)を取得する(S11)。そして、以下のうちのいずれかの方法で、駐車支援開始操作の有無を判定する。
・駐車支援開始スイッチのみを備える構成のときは、駐車支援開始スイッチの操作が行われたときに、駐車支援開始操作があったと判定する。
・駐車支援開始スイッチの有無によらず運転者特定スイッチを備える構成のときは、運転者特定スイッチの操作を優先し、運転者特定スイッチの操作が行われたときに、駐車支援開始操作があったと判定する。
【0036】
例えば図4の上段部の位置Aで、駐車支援開始操作があったと判定したとき(S12:Yes)、以下のうちのいずれかの方法で、運転者の特定があったか否かを判定する。
・駐車支援開始スイッチのみを備える構成のときは、運転者の特定はなかったと判定する。
・駐車支援開始スイッチの有無によらず運転者特定スイッチを備える構成のときは、運転者の特定があったと判定する。
【0037】
運転者の特定があったと判定したとき(S13:Yes)、メモリ5あるいはROM3を参照して操作された運転者特定スイッチに速度プロファイルが記憶されているか否かを判定する(S14)。速度プロファイルが記憶されているとき、図11の例では、運転者特定スイッチ1あるいは2が操作されたとき(S15:Yes)、操作された運転者特定スイッチに対応する速度プロファイルを読み出す(S16)。
【0038】
一方、運転者の特定がなかったと判定したとき(S13:No)、あるいは、速度プロファイルが記憶されていないとき、図11の例では、運転者特定スイッチ3あるいは4が操作されたとき(S15:No)、速度プロファイルが未定義であるので、デフォルトの速度プロファイルを読み出す(S18)。また、駐車支援開始スイッチのみを備える構成の場合は、該スイッチに対応する速度プロファイルが既に記憶されているときは、その速度プロファイルを読み出してもよい。
【0039】
そして、上述のそれぞれにおいて読み出した速度プロファイルに基づいて、駐車支援処理を実行する(S17,後述)。
【0040】
図3,図4を用いて、図2のステップS17に相当する駐車支援処理について説明する。なお、本処理は、特許文献1の図3,図4の処理と同様であるため、概略のみ説明する。
【0041】
まず、運転者は自車両51を、図4の上段部のように、位置Aから位置Bに移動する。このとき、ソナー17(カメラを搭載しているときにはカメラを用いてもよい)により、自車両51の周囲の状況(他車両52,53等の物体の有無、あるいは駐車可能スペースの有無)を探知する。そして、駐車可能スペースがあるとき、これを目標駐車位置とし、その重心位置をPt(xt,yt)で表す(例えば、図4の下段部の、点線枠で示される位置Dの重心位置に相当)。
【0042】
目標駐車位置Ptの設定が完了すると、駐車支援ECU1は、図3に示される処理を開始する。まず、ステップS1では、駐車位置への経路設定完了フラグXsetに初期値である0(経路設定未了)をセットする。ステップS2では、現在位置P(x,y)から目標駐車位置Pt(xt,yt)までの経路を求める。そして、経路を設定できた場合には、Xsetに1をセットし、設定できなかった場合は、Xsetに0を設定する。
【0043】
ステップS3でXsetの値をチェックし、1のときにのみ(S3:Yes)次のステップS4へと移行し、0のときには(S3:No)、舵角変更や初期位置変更時は、変更が終了するまで待機してからステップS2へと戻る。これにより目標駐車位置への到達経路を設定する。
【0044】
ステップS4では、運転者にブレーキペダル37を踏み込んで、シフトレバーを操作して後退にセットするよう指示し、条件が満たされるまで待機する。ステップS5では、駐車支援ECU1の走行制御部10が、エンジンECU21にエンジン22をトルクアップするよう指示し、自動操舵を開始する。
【0045】
ここで、運転者がブレーキペダル37を操作すると、そのペダル開度に応じてアクチュエータ34によってホイルシリンダ38に付与されるホイルシリンダ油圧(ブレーキ油圧)が調整され、各輪に付与される制動力を調整することで、制動力と駆動力のバランスを変更することで車速が調整される。
【0046】
ステップS6では、車輪速センサ32から得られる車輪速を基に求めた車速変化、加速度センサ33から得られる加速度を基に求めた加速度変化および変位センサ43から求められる操舵角変化を基に、現在位置を算出する。
【0047】
ステップS7では、操舵制御部11は変位センサ43の出力を監視しながら、駆動モータ42を制御してステアリングギヤ41を操作することにより、舵角が駐車支援ECU1で求めた位置に応じた舵角変位となるよう制御する。
【0048】
ステップS8では、現在位置Pが目標駐車位置Pt(図4の位置Dに相当)に到達しているか否かを判定する。この判定においては、現在位置Pが目標駐車位置Ptの近辺の所定のエリア内に到達しているか否かを判定すればよい。このエリアの広さは、後方カメラ15から取得された画像の画像認識の精度や、車速、加速度等から求められる現在位置の判定精度、自動操舵装置120の操舵精度等を基にして設定すればよい。
【0049】
目標駐車位置Ptへ到達していないと判定したとき(S8:No)、ステップS6へ戻って処理を繰り返す。
【0050】
一方、目標駐車位置Pt近傍へ到達したと判定したとき(S8:Yes)、ステップS9へと移行して走行制御部10は、エンジンECU21にエンジン22の回転数を下げるよう指示して、トルクダウンを行い、操舵制御部11は、自動操舵制御を終了する。そして、ステップS10では、モニタ13やスピーカー14を介して、運転者に目標駐車位置へ到達したことを報知するとともに、シフトレバーを駐車位置に設定して、エンジンを停止させるよう促し、本処理を終了する。
【0051】
図5を用いて、図3の駐車支援処理における車速の調整時の車速変更意思検出処理について具体的に説明する。なお、本処理は、図3のステップS6〜S8の処理と並行して所定のタイミングで繰り返し実行される。
【0052】
まず、ソナー17により、車両51の進行方向前方(進行方向の左右の前側方を含めてもよい)と物体との距離を測定する(S31)。
【0053】
次に、測定した物体との距離と、先に読み出した速度プロファイルとに基づいて、このときの車速を決定する(S32)。
【0054】
次に、運転者によりブレーキ操作を検出したか否かを判定する。ここでは、油圧センサ36の出力値が所定値以上となったとき、ブレーキ操作中と判定する。ブレーキ操作を検出したとき(S33:Yes)、車輪速センサ32の検出状態に基づいて車速を検出する(S34)。また、ブレーキ操作の状態(油圧センサ36の出力)から車速を推定してもよい。
【0055】
そして、車速履歴をメモリ5あるいはRAM4に記憶し(S35)、本処理を終了する。すなわち、検出あるいは推定した車速を、先に測定した物体との距離に関連づけて記憶する。
【0056】
一方、ブレーキ操作を検出しないとき(S33:No)、車輪速センサ32の検出状態に基づいて車速を検出し(S36)、前回の処理実行時から車速が変化したか否かを判定する。ブレーキ操作以外にも、シフトレバー位置の変更(いわゆる、「減速チェンジ」等)により、運転者が車両51を減速させることができる。逆に、アクセルセンサ23により検出したアクセルペダルの操作により、運転者が車両51を加速したときにも対応できる。
【0057】
車速が変化したとき、(S37:Yes)、車速履歴をメモリ5あるいはRAM4に記憶し(S35)、本処理を終了する。
【0058】
一方、ブレーキ操作を検出せず(S33:No)、車速も変化しないとき、(S37:No)、本処理を終了する。
【0059】
上述の処理では、ブレーキの操作状態と車輪速センサ32の検出状態とを用いて車速の変化を検出しているが、これらのうちの一方のみを用いる構成でもよい。
【0060】
図4を用いて、駐車支援の詳細について説明する。運転者は、上段部→中段部→下段部のように、自車両51を、既に駐車している他車両52,53の間に駐車させようとしている。
【0061】
まず、運転者は、図4の上段部のように、車両51を手前側の車両53の手前付近の位置Aで、駐車支援を開始する。すなわち、駐車支援開始スイッチあるいは運転者特定スイッチを操作する。このとき、車両は走行状態でも停止状態でもよい。このとき、図2の駐車支援制御処理において、対応する速度プロファイルを読み出して、図3の駐車支援処理を実行する。
【0062】
次に、運転者は、図4の中段部のように、自車両51を位置Bまで移動させる。この移動中に、図3の駐車支援処理において、ソナー17を用いて、他車両52,53の間に形成された駐車空間を検出し、現在位置P(位置B)および目標駐車位置Pt(位置D)を設定し、設定終了後、運転者に駐車(この場合は後退)の開始を促し、速度・操舵の制御を開始する。
【0063】
以降、位置Cを経て位置Dにまで自車両51を移動して、駐車支援を終了する(図4の中段部→下段部)。このとき、図4の中段部のように、接触あるいは衝突はしないものの、自車両51が他車両53に接近し、このとき運転者が近づき過ぎと感じてブレーキを操作して減速したとき、減速時の車速を、このときに測定した自車両51と他車両53(すなわち、車両周囲の物体)との距離に関連付けて、速度プロファイルを更新する。無論、駐車支援において、自車両51が他車両53に所定の距離を下回って接近したとき、あるいは接近が予測されるときには、切り返しを行うようにしてもよい。
【0064】
図6〜図10を用いて、速度プロファイルの更新の詳細について説明する。図6に、デフォルトの速度プロファイル(「デフォルト値」と表記:破線表示)と実際の車両速度(以下、「車速」と略記する:実線表示)の変化を示す。上述のように、運転者の速度プロファイルが未定義のときには、デフォルトの速度プロファイルが用いられて、測定した物体との距離(図6以降では、単に「距離」と表記)に基づいて車速が設定される。デフォルトの速度プロファイルでは、物体との距離が2m以上のときは車速が4km/hに設定され、物体との距離が2m以下のときは1mあたり2km/hの減速率で車速が設定されている。
【0065】
図6の例では、デフォルトの速度プロファイルに基づいて駐車支援を行ったところ、物体との距離が約5m〜1.5mの間では、車速がデフォルト値を下回っている。つまり、この運転者は、該当距離の間では、もう少し遅い速度で駐車位置に接近したいことが分かる。また、物体との距離が約2m〜1.5mの間では、若干(0.1km/h程度)ではあるが車速が速くなっている。これは、運転者がアクセルペダルを操作したか、車両の進行方向がやや下り斜面となっていたために増速したかのいずれかが考えられる。増速してもブレーキペダル37を操作していないので、運転者は増速を容認していると推定できる。
【0066】
車速がデフォルト値と異なるとき、すなわち、運転者の車速変更意思を検出したとき、まず、図7のように、2点間の速度変化最大点を特定する。物体との距離がゼロの地点の地点から予め定められた距離だけ離れた地点から、予め定められた距離L(例えば、1.6m)の区間を適宜設定し(図6の例では、4区間)、その区間での速度変化最大点を特定する。より具体的には、Lをさらに距離lで区切り、距離lの区間ごとの平均速度を算出し、その前後の区間での平均速度と比較し、その変化が最も大きい点を距離Lの区間の速度変化最大点とする。
【0067】
図8に、図6における速度変化最大点の特定結果を実際の車速(実線表示)とともに示す。図8の例では、P1,P2,P3,P4の4点が、速度変化最大点として特定されている。そして、これら速度変化最大点と物体との距離がゼロの地点の地点(距離0m,車速0km/h)を順次直線で結んだものを仮速度プロファイル(破線表示)とする。つまり、速度プロファイル更新設定部は、車両と物体との距離が予め定められた値となる点からゼロとなる点までを、予め定められた距離区間に分割し、それぞれの距離区間における車速の変化の最大の地点を速度変化最大点として特定し、これら速度変化最大点および物体との距離がゼロの点のうち隣接するものを直線で結んだものを新たな速度プロファイルとする構成である。
【0068】
P4からP3に至る区間では、仮速度プロファイルの直線の傾きが、実際の車両の速度の変化よりも急になっている。P3からP2に至る区間では、仮速度プロファイルの直線の傾きが、実際の車両の速度の変化よりもややなだらかになっている。P2からP1に至る区間では、仮速度プロファイルの直線の傾きが、実際の車両の速度の変化のほぼ半分になっている。P1から物体との距離がゼロの地点に至る区間では、実際の車両の速度の変化と(デフォルトの速度プロファイルとも)ほぼ同じになっている。
【0069】
図9の、P3とP4とを結ぶ直線、あるいはP2とP1とを結ぶ直線のように、仮速度プロファイル(破線表示)の直線のうち、その傾きの絶対値が予め定められた一定値以下のときには、その傾きをゼロに近似する。そして、ゼロに近似した直線と、P3からその直線に向けて延長したものとの交点を近似点P31とする。同様に、P2とP1とを結ぶ直線も近似して、近似点P11を得る。つまり、速度プロファイル更新設定部は、新たな速度プロファイルが形成する直線のうち、その傾きの絶対値が予め定められた値を下回るときには、その傾きをゼロにする構成である。
【0070】
そして、P4〜P31〜P2〜P11〜物体との距離がゼロの点(原点)を、それぞれ直線で結んだものを作成速度プロファイル(すなわち、運転者に対応する速度プロファイル:実線表示)として、運転者に関連づけてメモリ5に記憶する。上述のように、直線近似した方が、少なくとも、物体との距離がゼロの点(原点)、速度変化最大点、および駐車支援開始位置(例えば、原点から10mの地点)を記憶するだけでよいので、に比べて、メモリ5の記憶容量を低減することができる。
【0071】
図10に、作成速度プロファイル(太い実線)、速度プロファイルのデフォルト値(破線)、および実際の車速(細い実線)を示す。次の駐車支援では、運転者を特定したときに、この作成速度プロファイルが読み出されて駐車支援が行われる。そして、この作成速度プロファイルと実際の車速とが異なるときには、再度速度プロファイルの作成が行われる。
【0072】
図12を用いて、上述の図6〜図10に相当し、駐車支援プログラムに含まれ、該プログラムに含まれる他の処理とともに、CPU2によって、以下のうちのいずれかの所定のタイミングで実行される速度プロファイル更新処理について説明する。
・図5の車速変更意思検出処理におけるステップS35の後。
・図3の駐車支援処理におけるステップS10の後(すなわち駐車支援終了後)。
【0073】
まず、メモリ5あるいはRAM4に車速履歴が記憶されているか否かを調べる。車速履歴が記憶されていないとき(S51:No)、本処理を終了する。一方、図6の車両速度のような車速履歴が記憶されているとき(S51:Yes)、図7のように、速度変化最大点を特定する(S52)。
【0074】
次に、図8のように、特定した速度変化最大点、および物体との距離がゼロの点のうち、隣り合う点を直線で結ぶ仮速度プロファイルを作成する(S53)。次に、図9のように、仮速度プロファイルの直線のうち、その傾きの絶対値が予め定められた一定値以下のものがあるときには、その傾きをゼロに近似する(S54)。そして、近似したもの(近似する必要がなかったときには、仮速度プロファイル)を、作成速度プロファイルとして、運転者(すなわち、運転者特定スイッチ番号)に関連づけてメモリ5に記憶する(S55)。最後に、車速履歴を消去する(S56)。
【0075】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、これらはあくまで例示にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づく種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0076】
2 CPU(駐車支援制御部,速度プロファイル更新設定部,車速変更意思検出部)
5 メモリ(速度プロファイル記憶部)
16 操作入力部(運転者特定部)
17 ソナー(距離測定部)
32 車輪速センサ(車速検出部)
36 油圧センサ(ブレーキ操作検出部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、該車両を予め定められた目標駐車位置へ誘導制御する駐車支援を行う駐車支援装置において、
前記車両と該車両の周囲に存在する物体との距離を測定する距離測定部と、
前記車両の運転者ごとに、前記車両と前記物体との距離と、その距離に対応する前記車両の駐車支援時における速度との関係を、速度プロファイルとして記憶する速度プロファイル記憶部と、
前記運転者を特定する運転者特定部と、
前記速度プロファイル記憶部に記憶されている、特定した前記運転者に対応する速度プロファイルを読み出して、前記駐車支援を制御する駐車支援制御部と、
前記運転者による、駐車支援中の前記車両の速度を変更したい意志を反映した車速変更意思を検出する車速変更意思検出部と、
前記車速変更意思を検出したときに、前記距離測定部が測定した前記車両と前記物体との距離と、該車速変更意思とに基づいて、前記速度プロファイルにおける、前記車両と前記物体との距離に対応する前記車両の速度を更新設定する速度プロファイル更新設定部と、
を備えることを特徴とする駐車支援装置。
【請求項2】
前記駐車支援制御部は、前記速度プロファイル記憶部に、特定した前記運転者に対応した速度プロファイルが記憶されていないときには、予め定められたデフォルト速度プロファイルに基づいて前記駐車支援を行う請求項1に記載の駐車支援装置。
【請求項3】
前記車両の速度を検出する車速検出部を備え、
前記車速変更意思検出部は、車速検出部の検出した車両の速度が、そのときの前記車両と前記物体との距離に対応して前記速度プロファイルから得られる車両の速度と異なるときに、前記車速変更意思を検出したと見なす請求項1または請求項2に記載の駐車支援装置。
【請求項4】
前記運転者のブレーキ操作を検出するブレーキ操作検出部を備え、
前記車速変更意思検出部は、前記運転者のブレーキ操作を検出したときに、前記車速変更意思を検出したと見なす請求項3に記載の駐車支援装置。
【請求項5】
前記速度プロファイル更新設定部は、少なくとも、前記車速変更意思を検出したときの前記車両の速度の履歴に基づいて、前記速度プロファイルを更新設定する請求項3または請求項4に記載の駐車支援装置。
【請求項6】
前記速度プロファイル更新設定部は、前記車両の速度の変化率が予め定められた値を超えないように前記速度プロファイルを更新設定する請求項5に記載の駐車支援装置。
【請求項1】
車両に搭載され、該車両を予め定められた目標駐車位置へ誘導制御する駐車支援を行う駐車支援装置において、
前記車両と該車両の周囲に存在する物体との距離を測定する距離測定部と、
前記車両の運転者ごとに、前記車両と前記物体との距離と、その距離に対応する前記車両の駐車支援時における速度との関係を、速度プロファイルとして記憶する速度プロファイル記憶部と、
前記運転者を特定する運転者特定部と、
前記速度プロファイル記憶部に記憶されている、特定した前記運転者に対応する速度プロファイルを読み出して、前記駐車支援を制御する駐車支援制御部と、
前記運転者による、駐車支援中の前記車両の速度を変更したい意志を反映した車速変更意思を検出する車速変更意思検出部と、
前記車速変更意思を検出したときに、前記距離測定部が測定した前記車両と前記物体との距離と、該車速変更意思とに基づいて、前記速度プロファイルにおける、前記車両と前記物体との距離に対応する前記車両の速度を更新設定する速度プロファイル更新設定部と、
を備えることを特徴とする駐車支援装置。
【請求項2】
前記駐車支援制御部は、前記速度プロファイル記憶部に、特定した前記運転者に対応した速度プロファイルが記憶されていないときには、予め定められたデフォルト速度プロファイルに基づいて前記駐車支援を行う請求項1に記載の駐車支援装置。
【請求項3】
前記車両の速度を検出する車速検出部を備え、
前記車速変更意思検出部は、車速検出部の検出した車両の速度が、そのときの前記車両と前記物体との距離に対応して前記速度プロファイルから得られる車両の速度と異なるときに、前記車速変更意思を検出したと見なす請求項1または請求項2に記載の駐車支援装置。
【請求項4】
前記運転者のブレーキ操作を検出するブレーキ操作検出部を備え、
前記車速変更意思検出部は、前記運転者のブレーキ操作を検出したときに、前記車速変更意思を検出したと見なす請求項3に記載の駐車支援装置。
【請求項5】
前記速度プロファイル更新設定部は、少なくとも、前記車速変更意思を検出したときの前記車両の速度の履歴に基づいて、前記速度プロファイルを更新設定する請求項3または請求項4に記載の駐車支援装置。
【請求項6】
前記速度プロファイル更新設定部は、前記車両の速度の変化率が予め定められた値を超えないように前記速度プロファイルを更新設定する請求項5に記載の駐車支援装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−82376(P2013−82376A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224671(P2011−224671)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]