説明

駐輪装置

【課題】タイヤ幅が異なる前輪に対しても安定に支持し、自転車を起立状態に保持できる駐輪装置を提供する。
【解決手段】自転車Cの前輪Fを駐輪装置に導入する入口側から奥側に向かって斜めに立ち上がり、自転車の前輪を左右から支持するための2個の支持部材1と、前記支持部材1の入口側において支持部材間に設けられた入口側係止部2と、前記支持部材1の奥側において支持部材1間に設けられた奥側係止部3とを備えている。前記入口側係止部2及び奥側係止部3は、いずれもその上部に正面視V字状のガイド部21,31が形成されている。そして自転車Cの前輪Fが前記入口側係止部2のガイド部21を乗り越えて、支持部材1間に導かれると共に、支持部材1間に導かれた前記前輪Fの前下部が奥側係止部3のガイド部31に係止されて、前記前輪Fが支持部材1間に支持されるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自転車を起立状態に保持する駐輪装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自転車を駐輪させる装置としては、例えば、間隔を空けて2本の支柱を垂直方向と水平方向に設け、この支柱間に前輪の一部を挿入して前輪を支持することによって、自転車が倒れないように駐輪させるものが知られている。しかし支柱間の距離を広げると前輪を入れやすくなるが、前輪が一方の支柱側に寄りかかり、自転車が倒れてしまう場合がある、一方、支柱間の距離を前輪の幅に合わせると、前輪を比較的安定的に支持することができるが、支柱間からの前輪の出し入れが困難になる。このように、支柱間の距離の調整のみでは、前輪を安定的に支持するのは困難であった。
【0003】
例えば、特許文献1には、前輪1のタイヤ2を嵌合させて前後二個所を支持する前・後タイヤ受座3,4と、この前輪1の前周上部を左右に亘って該前・後タイヤ受座3,4の受幅Aよりも広い幅Bに開拡してタイヤ2側面を支持するタイヤ支柱5とを設けてなる駐輪装置が提案されている。この駐輪装置によれば、タイヤ受座3,4における受幅Aを、タイヤ2が嵌合されて左右方向へ移動し得ない程度の幅に設定したり、前・後各タイヤ受座3,4の形状を下方に窪ませて、タイヤ2を嵌合させると共に、この嵌合されたタイヤ2が左右方向へ移動しないように構成することができるので、前輪を安定的に支持できるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平5−1681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、一般に自転車は、JIS D9111(自転車−分類及び諸元)において、一般般用自転車、特殊自転車等に分類され、更にそれらは、スポーツ車、シティ車、コンパクト車、マウンテンバイク、キャンピング車等、様々に分類されている。これらの自転車に用いられるタイヤ(前輪)の外径は、その多くはいわゆる呼び径で20〜27インチサイズ程度であって大体共通しているが、前輪の幅は目的に応じてそれぞれ異なっているため、前記の駐輪装置では、前輪の幅寸法が異なる各種自転車を支持するには不向きであり、これら各種自転車に対して、その前輪を安定に支持できる駐輪装置が求められていた。
【0006】
本発明は、前記の如き問題点を解消し、タイヤ幅が異なる前輪に対しても安定に支持し、自転車を起立状態に保持できる駐輪装置を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は次のような構成としている。
すなわちこの発明に係る駐輪装置は、自転車の前輪を支持して前記自転車を起立状態で駐輪させる駐輪装置であって、自転車の前輪を駐輪装置に導入する入口側から奥側に向かって斜めに立ち上がり、自転車の前輪を左右から支持するための2個の支持部材と、前記支持部材の入口側において支持部材間に設けられた入口側係止部と、前記支持部材の奥側において支持部材間に設けられた奥側係止部とを備え、前記入口側係止部及び奥側係止部は、いずれもその上部に正面視V字状のガイド部が形成され、前記入口側係止部のガイド部を乗り越えて、自転車の前輪が支持部材間に導かれると共に、支持部材間に導かれた前記前輪の前下部が奥側係止部のガイド部に係止されて、前記前輪が支持部材間に支持されるようになされたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る駐輪装置によれば、自転車の前輪を支持して前記自転車を起立状態で駐輪させる駐輪装置であって、自転車の前輪を駐輪装置に導入する入口側から奥側に向かって斜めに立ち上がり、自転車の前輪を左右から支持するための2個の支持部材と、前記支持部材の入口側において支持部材間に設けられた入口側係止部と、前記支持部材の奥側において支持部材間に設けられた奥側係止部とを備え、前記入口側係止部及び奥側係止部は、いずれもその上部に正面視V字状のガイド部が形成され、前記入口側係止部のガイド部を乗り越えて、自転車の前輪が支持部材間に導かれると共に、支持部材間に導かれた前記前輪の前下部が奥側係止部のガイド部に係止されて、前記前輪が支持部材間に支持されるようになされているので、支持部材間に導入された自転車の車輪は、その車輪の幅寸法が異なる場合でも、奥側係止部のガイド部に係止させることが可能となって、自転車を起立状態で安定的に駐輪させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る駐輪装置の実施の一形態を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る駐輪装置の実施の一形態を示す他の斜視図である。
【図3】本発明に係る駐輪装置の実施の一形態を示す正面図である。
【図4】本発明に係る駐輪装置に自転車が駐輪した状態を示す側面図である。
【図5】図4において入口側係止部及び奥側係止部付近の部分拡大断面図である。
【図6】図5のA−A,B−Bの拡大端面図である。
【図7】本発明に係る駐輪装置の実施の他の形態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照し、具体的に説明する。
【0011】
図面において、1は自転車Cの前輪Fを左右から支持する支持部材、2は支持部材1において前輪Fが導入される入口側に設けられた入口側係止部、3は支持部材1において前輪Fが導入される奥側に設けられた奥側係止部であり、本発明に係る駐輪装置Pは、主にこれら支持部材1、入口側係止部2及び奥側係止部3から構成されており、自転車Cの前輪Fを支持して、自転車Cを起立状態で駐輪させるものである。
【0012】
図1〜6は、駐輪装置Pの実施の一形態を示すものであり、図1,2はそれぞれ見る方向が異なる斜視図、図3は正面図、図4は駐輪装置Pに自転車が駐輪した状態を示す側面図、図5は、図4の部分拡大断面図であり、(a)は入口側係止部付近、(b)は奥側係止部付近を示しており、図6は、図5の部分拡大端面図であり、(a)は入口側係止部付近のA−A端面、(b)は奥側係止部付近のB−B端面を示している。
【0013】
まず支持部材1は、本形態では、前輪Fが導入される入口側から奥側に向けて設けられた下辺部11と、該下辺部11の奥側から斜めに立ち上がる前辺部12とを備えた側面視「く」字状に形成された支持本体13と、該支持本体13の姿勢を維持するために設けられた脚部14とを備えている。そして図3に示すように2個の支持部材1が側面視において重なるように間隔を空けて設けられている。
【0014】
脚部14は、本形態では、両下辺部11の前端付近の下面から設置面に向かって設けられており、この脚部14の先端には水平方向に拡がる接地部14aが設けられている。そして接地部14aには、設置面に設けられたアンカーボルトA1が挿通する挿通孔(図示せず)が上下方向に貫通して形成され、ナットN1、ワッシャーW1、スプリングワッシャS1を介して設置面に固定される。なお本形態では、2個の脚部14の接地部14aが一体となされた正面視倒コ字状となされており、2個の支持部材1の間隔を保持している。
【0015】
脚部14は、本形態では、支持部材1の下辺部11の上端部の下面から設置面に向けて設けられているが、前辺部12に設けられてもよく、下辺部11と前辺部12との境界部付近に設けられたものでもよく、支持部材1の姿勢を保持することに適した位置であればよい。
【0016】
支持部材1は、一般には、強度的に安定しておりコストの安い鋼管を適宜長さに切断し、その中間部を折曲して側面視「く」字状に形成し、溶接等の接合手段により脚部14を接合し、更に耐食性や耐候性と高めるために金属めっきや塗装が施されたものである。なお図示しないが2個の鋼管を接合して「く」字状としたものを用いてもよく、図4に示すように、前輪Fの中心部のハブHと支持部材1とが干渉しなければよい。また、支持部材1として、ステンレス合金やアルミニウム合金等の他の金属からなる管材を用いてもよい。
【0017】
支持部材1の前辺部12の上部には、前辺部12同士を連結する連結部12aが設けられている。連結部12aは、本形態では、前辺部12の間に配置された縦板状であって、その両側端が溶接等の接合手段によって前辺部12に接合されて前辺部12の間隔を保持している。連結部12aは、単なる縦板状でもよいが、図7に示すように、例えば駐車の意味を表す「P」を標示12bを設けたものでもよい。図7に示された形態では、この標示は、打ち抜き加工により施されているが、連結部12a上に塗装等を塗布した形態でもよく、シールを貼着させた形態でもよい。
【0018】
支持部材1の下辺部11の後部には、下辺部11同士を連結すると共に、支持部材1を設置面に固定するための土台部15が接合されている。土台部15は、本形態では、支持部材1の入口側から出口側に向けて斜めに立ち上がる斜面部16と、該斜面部16の上端から下方に垂下する垂下部17と、該垂下部17の下端から水平方向に拡がる接地部18とを備えている。本形態では、斜面部16と垂下部17と接地部18とは、鋼板をプレス加工によって折曲して成型したものであるが、それぞれ別々の部材同士を接合したものでもよく、鋼板以外の他の金属を用いてもよい。
【0019】
接地部18には、設置面に設けられたアンカーボルトA2が挿通する挿通孔(図示せず)が上下方向に貫通して形成され、ナットN2、ワッシャーW2、スプリングワッシャS2を介して設置面に固定される。本形態では、アンカーボルトA2は左右に合わせて2個設けられているが、支持部材1を設置面に強固に固定できればよいので、設置面に必要となる数のアンカーボルトA2を設け、そのアンカーボルトA2と対応する位置に挿通孔を設けて、前記ナットN2等を介して接地部18を固定する形態でもよい。
【0020】
次に入口側係止部2は、本形態では、土台部15の垂下部17の前面に取付けられ、該入口側係止部2の上部に正面視V字状のガイド部21が設けられると共に、該ガイド部21の少なくとも一部は土台部15の斜面部16の上端より上方に突出している。なお、前輪Fの支持部材1間に導く際に、前輪Fの移動に問題が出ない範囲で、土台部15と入口側係止部2間に隙間が形成されていてもよい。また奥側係止部3は、本形態では、支持部材1の脚部14の間に設けられており、該奥側係止部3の上部には正面視V字状のガイド部31が設けられている。
【0021】
続いて、自転車Cの駐輪方法の一形態について、図4〜6を用いて詳しく説明する。先ず、自転車Cの前輪Fを支持部材1の間から土台部15の斜面部16に沿って前方に移動させて、更に入口側係止部2のガイド部21を乗り越えさせ、前輪Fを支持部材1間に導く。本形態では、図4に示すように、前輪Fの下端部が支持部材1の下辺部11の間に配置され、かつ前輪Fの前端部が支持部材1の前辺部12の間に配置されるので、前輪Fは支持部材1によって横方向の移動が規制される。
【0022】
更に入口側係止部2の前面は、急勾配に形成されているので、前輪Fは、ガイド部21を乗り越えた後、入口側係止部2の前面側に落ち込むので、容易には後退しない。また奥側係止部3が入口側係止部2より高い位置にあり、かつ奥側の方が入口側より高い位置となるように傾斜しているので、前輪Fは容易には奥側係止部3を超えず、これにより前輪Fは、前後方向の移動が規制される。
【0023】
そして、前輪Fを奥側係止部3の正面視V字状のガイド部31に向けて移動させると、前輪Fの幅寸法が異なっていても、該前輪Fがガイド部31の横方向中央側に誘導されて該ガイド部31に係止させることができる。これらの構成によって、前輪Fが支持部材1間で支持され、自転車Cを起立状態で駐輪させることができる。
【0024】
更に本形態では、前輪Fの後下部が入口側係止部2の正面視V字状のガイド部21に係止されるようになされている。すなわち、前輪Fを支持部材1間に導いた状態において、前輪Fの下端が設置面に接触しておらず、そして前輪Fの前下部がガイド部31に係止され、前輪Fの後下部がガイド部21に係止されている。
【0025】
これにより、前輪Fは、ガイド部21,ガイド部31のそれぞれ横方向中央側に誘導された状態で圧接されるので、前輪Fの下部をしっかり支持することができる。
【0026】
なお、自転車CのフレームFに軸支されたリムRの外周にタイヤTが取付けられているので、図示しないが、自転車Cから前輪Fにかかる荷重によって、タイヤTが幅方向に拡がる方向に潰される。したがって、前記ガイド部21,ガイド部31に支持された前輪Fは、そのタイヤTがガイド部21,ガイド部31に圧設されて、前輪Fの下部を更にしっかり支持することができる。
【0027】
一般に自転車において、その前輪の外径は、いわゆる呼び径6〜29インチサイズの範囲のものが用途に応じて用いられているが、本発明に係る駐輪装置Pにおいては、少なくともその中でも一般的に多く用いられている20〜27インチサイズの前輪Fを安定に支持できればよい。
【符号の説明】
【0028】
1 支持部材
11 下辺部
12 前辺部
12a 上連結部
13 支持本体
14 脚部
14a 接地部
15 土台部
16 斜面部
17 垂下部
18 接地部
2 入口側係止部
21 ガイド部
3 出口側係止部
31 ガイド部
C 自転車
F フレーム
H ハブ
P 駐輪装置
R リム
T タイヤ
A1、A2 アンカーボルト
N1、N2 ナット
S1、S2 スプリングワッシャ
W1、W2 ワッシャー


【特許請求の範囲】
【請求項1】
自転車の前輪を支持して前記自転車を起立状態で駐輪させる駐輪装置であって、自転車の前輪を駐輪装置に導入する入口側から奥側に向かって斜めに立ち上がり、自転車の前輪を左右から支持するための2個の支持部材と、前記支持部材の入口側において支持部材間に設けられた入口側係止部と、前記支持部材の奥側において支持部材間に設けられた奥側係止部とを備え、前記入口側係止部及び奥側係止部は、いずれもその上部に正面視V字状のガイド部が形成され、前記入口側係止部のガイド部を乗り越えて、自転車の前輪が支持部材間に導かれると共に、支持部材間に導かれた前記前輪の前下部が奥側係止部のガイド部に係止されて、前記前輪が支持部材間に支持されるようになされたことを特徴とする駐輪装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−224221(P2012−224221A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93872(P2011−93872)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(000002462)積水樹脂株式会社 (781)