説明

骨再生用コラーゲンゲル組成物の調製方法

【課題】従来の骨移植技術による骨再生の短所を克服する。骨充填材と骨再生用細胞を同時に付与できる注入可能な組成物の調製方法を提供する。
【解決手段】骨再生用コラーゲンゲル組成物の調製方法に関し、動物の組織から採取した骨髄から有核細胞を分離する段階;と、前記有核細胞と、I型コラーゲン及びアパタイトを含有する生体基質成分を混合する段階;と、からなる。産業的規模で大量生産できるコラーゲンを含む骨基質混合物を患者の骨髄由来有核細胞と混合し、次に混合物を骨再生が必要な患者に短時間内に使用できるよう準備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨再生用コラーゲンゲル組成物の調製方法に関する。特に、本発明は、骨髄由来の有核細胞とコラーゲンを基とした基質との組成物を患者の骨欠損損傷部に同時に注入することにより、骨伝導性、骨形成性、骨母細胞分化誘導能などを付与して骨形成を促進することを可能にする。
【0002】
さらに、本発明は、基質組成物を医療用として使用できる場所での処理及び品質管理を通じて生成物の高品質を保障できる。さらに加えて、本発明は、生成物の大量生産、生成物の単独又は必要であれば患者の骨髄由来の有核細胞と組み合わせた使用、従来の細胞治療剤に比べて短時間で使いやすく低コストな患者への生成物の適用、を可能にする。これにより、本発明は、生成物の非常に改善された品質と信頼性を達成し、よって、消費者の満足度を高めるのに大変有用である。
【背景技術】
【0003】
本発明は、本出願人の韓国特許出願番号第2006−0091325号(登録番号第0
834718号)であり、発明の名称が「骨再生を図る骨形成促進細胞組成物及びその製
造方法」に関する発明の改良である。
【0004】
周知のように、骨粗鬆症は、骨量と密度が徐々に減り、結果として骨に粗い孔の軽石やスポンジに見られると同様な、骨の中に小さい孔が多数できることに起因する、骨が折れやすくなる医学的状態である。すなわち、骨粗鬆症は、正常な骨に比べ、多数の小さな穴や細孔の形成、骨量の減少、骨の微細構造が薄くなりかつ弱くなること、それにより骨が脆くなり、ちょっとした衝撃にも骨が折れやすくなる進行性の骨喪失の病気である。
【0005】
骨粗鬆症は、自覚できる痛みや症状もなく静かに進行するので、人々は事故で転んだり衝撃を受けたりして簡単に折れるまで骨粗鬆症になっているのに気づかない。軽く転んだだけでも、骨粗鬆症の人々は手首や骨盤、脊椎骨が折れて、激しい痛みを伴う。特に、骨盤と脊椎骨折は痛みが非常に酷くて、手術を必要とし、患者は数ヶ月ベッドで病人として苦痛に堪えなければならない。手術から完全に回復した後も、手術の後遺症や骨粗鬆症の合併症により身体障害が残ることもある。
【0006】
骨は常に分解と再生を続ける。すなわち、全ての骨で常に骨量回復(remodeling)が起こる。骨量回復中、破骨細胞が古い骨を破壊、吸収して、造骨細胞が新しい骨を造る。もし、骨組織の生物恒常性のバランスが崩れて、骨の吸収速度が再生速度を超過すると、骨粗鬆症が発生するようになる。骨粗鬆症の発生の程度は、多様なリスク因子の組み合わせ、すなわち、性別が女性、やせ型及び/又は小柄な体格、加齢、骨粗鬆症の家族歴、閉経(子宮摘出術を含む)、月経不順(無月経)、神経衰弱、副腎皮質ホルモンや抗痙攣剤の使用、
男性における低男性ホルモン症の場合、運動不足、喫煙、飲み過ぎ、アジア人とコーカソイド(アフリカとヒスパニックアメリカ人はリスクが小さい)、早期閉経(45歳以前)の女性、カフェインとアルコールの過度なる摂取、そしてカルシウムの少ない食品、に関係することが知られている。
【0007】
骨粗鬆症の発生の程度は、アメリカ人よりアジア人において高い。骨粗鬆症は、2,899万人以上のアメリカ人(その中、80%が女性)が罹患していると推定される。米国では
、今日、1,000万人が既にこの疾患を有している。1,800万人以上は低骨量であって、骨粗鬆症のリスクが大きい。50歳以上のアメリカの白人は、女性の2人に1人が、男性の8人に1人が骨粗鬆症に関わる骨折を生涯に経験するであろう。50歳以上のア
フリカ系アメリカ人の10人に1人が骨粗鬆症であり、3人に1人は低骨密度であって、骨粗鬆症に進展するリスクがある。骨粗鬆症により、年間150万回以上の骨折(300,000回の骨盤骨折、700,000回の脊椎骨折、250,000回の手首骨折、300,000回のその他の骨折)を起こす。米国の場合、毎年12,000,000回の骨折が発生する。その中、骨盤骨折が147,000回〜250,000回を占めて、その中、80%が軽い衝撃によるものである。女性の約40%が80歳に至るまで少なくとも一回の脊椎骨折を経験する。80代後半になるまでに、女性の1/3と男性の1/6が骨盤骨折を経験する。骨盤骨折患者の25%〜50%は、骨盤治療手術後に他人の介助なしには歩くことができず、このような骨折は、死亡率と関連することが知られている。
【0008】
骨粗鬆症を治療するために開発された種々の治療方法の中、ビスホスホネート製剤や選択的エストロゲン受容体調節剤(SERMs)の使用によるもの等のように、既存の確立された
骨粗鬆症治療法は、主として骨の吸収を抑制することに関心が向けられており、骨量のさらなる減少を防止することにより骨粗鬆症の進行を抑制するためのものであることが知られている。また、骨移植や自己由来の骨細胞治療剤などを使用することによって、骨粗鬆症を含む種々の要因によって引き起こされる局所的骨折や骨再生が必要な標的サイトにおいて骨癒合や骨再生を図ることができる。
【0009】
しかしながら、前記の従来技術は、破骨細胞の活動を抑制することによって骨吸収を防止することにより骨粗鬆症のさらなる進行を阻止するので、実質的に骨再生を促進することはできないことに関連して問題がある。また、上記の骨移植や自己由来の骨細胞治療剤などの使用は、広範囲な部位の生物学的骨再生を得ることは難しい短所がある。
【0010】
なお、クラシックな骨移植術によって被る骨再生の短所を克服するために、細胞治療剤の開発は加速化されているにも関わらず、付着性細胞の全身的適用や血流を通じての付着性細胞の施術は難しい。これは、付着性細胞の場合、適切な基質に付着しないと死滅することがあるため、血流を通じての細胞注入を行うことが不可能であるからである。
【0011】
従来の技術のより詳細を調べてみると、局所部位に骨欠損や骨壊死が発生した場合、同種骨移植、自家骨移植、又は局所用自己由来の骨細胞治療剤移植は、骨欠損や骨壊死が局所で起きた時に使用されてきた。また、一方で、ビスホスホネート製剤などの骨吸収抑制剤を使用する治療方法は、骨粗鬆症のように骨欠損が広範囲の部位で起きてしまったときに使用されてきた。
【0012】
同種骨移植は、疾病の感染可能性、移植材の供給不足、移植拒絶反応のような望ましくない免疫反応の発生、及び患者の自己組織へのインプラントの完全な再生の難しさのような問題にいまだ苦しんでいる。自家骨移植は、同種骨移植で経験するこのような問題を解決し、軽減するものの、しかし、骨移植用の骨を提供する十分なドナーサイトを確保することの困難さ、ドナーサイトの罹患等の不利がある。
【0013】
自己由来の骨芽細胞を用いる細胞治療剤は、このような問題と従来の骨移植術の不利を解決するために開発された治療的アプローチであって、骨髄から分離された骨前駆細胞の大量増殖、骨前駆細胞の骨芽細胞への分化、及び骨再生が必要な標的サイトへの骨芽細胞の移植によって局所的骨再生を実現することができる技術として知られている。
【0014】
しかしながら、上記の従来の全ての技術は、いずれも局所的な骨再生にしか使用できず、骨の隙間を満たすような役割をするだけで、体全体に広範囲に広がった骨溶解現象、例えば、骨粗鬆症による全身的な骨溶解現象及び骨壊死症による広範囲な骨溶解症など、を治療することは難しい短所がある。さらに、骨粗鬆症を治療するために使用される骨吸収抑制剤は、骨再生促進能力がないので、骨粗鬆症による広範囲な骨損傷を治療するには多
くの制約がある。
【0015】
上記の問題及び従来の治療法の欠点を解決するために、本出願人に付与された韓国特許第0834718は、骨再生用の骨形成促進細胞組成物を開示している。しかしながら、本出願人の上記の従来の技術も、なお、長時間の細胞培養過程を経なければならないという大きな問題点がある。
【0016】
より具体的には、同種骨移植、自家骨移植、又は局所用自己由来の骨細胞治療剤の移植を利用した治療方法は、一部分だけの骨欠損や壊死の治療に使用されてきた。しかし、前述のとおり、同種骨移植は、疾病の感染可能性、移植材の供給不足、起こり得る免疫反応、そして自己組織への移植材の完全な再生の難しさなどの問題に苦しんでいる。
【0017】
自家骨移植は、同種骨移植で被るこのような問題を解消し、又は軽減するものの、しかし、ドナーサイトの確保困難、ドナーサイトの起こり得る病理学状の異常期間などの不利がある。
【0018】
自己由来の骨細胞治療剤は、このような骨移植の問題点を解決するために開発された治療法であり、骨髄から分離された骨形成前駆細胞の大量増殖、骨芽細胞への分化、及び骨再生が必要な標的サイトへの分化した骨芽細胞の移植により、局所的な骨再生を図ることができる技術として知られている。
【0019】
自己由来の骨細胞治療のアプローチは、患者に特効性の治療術であるとの見地から長所があるが、しかし、費用がかかること、治療剤の製造のための複雑な工程及び1ヶ月以上の長い期間、及び患者の骨損傷や骨折が診断されたその場での治療剤の即座の使用が必然的に困難であること、などの種々の短所がある。
【0020】
従来の骨移植技術による骨再生の短所を克服するために、細胞治療剤の開発は加速化されているが、このような細胞治療剤の製造には、一ヶ月以上の長時間が必要である。さらに、自家骨移植は不足しているドナーサイト、同種骨移植は起こり得る疾病感染に伴うリスクに苦しむ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
それ故に、本発明は、上記のような従来の骨移植技術に伴う問題を考慮してなされたものであり、第一の目的は、動物の組織から採取した骨髄から有核細胞を分離する有核細胞の分離段階;と、前記有核細胞とI型コラーゲン(collagen)及びアパタイト(apatite)を
含有する生体基質成分とを混合する段階;とからなる骨再生用のコラーゲンゲル組成物を調製する方法を提供することである。
【0022】
本発明の第二の目的は、コラーゲンを基にした基質混合物を使用することによって骨伝導性(osteoconductivity)及び骨前駆細胞や血管細胞に対する細胞親和力を高めることで
ある。
【0023】
本発明の第三の目的は、骨髄由来の有核細胞を分離し、有核細胞と基質混合物を骨再生が必要な標的サイトに同時移植(co-transplantation)することにより、骨再生を促進できる骨形成促進用組成物を提供することである。
【0024】
本発明の第四の目的は、骨充填材と骨再生用細胞を同時に付与できる注入可能な組成物及びその調製方法を提供することである。この目的のために、産業的規模で大量生産できるコラーゲンを含む骨基質混合物を患者の骨髄由来有核細胞と混合し、次に、混合物を骨
再生が必要な患者に短時間内に使用できるよう準備する。
【0025】
本発明の第五の目的は、本発明に従って調製された骨形成促進組成物を局所骨形成の必要な標的の損傷部に注入して、骨欠損損傷部の形状や構造に関係なく骨形成の必要な標的サイトに基質組成物と有核細胞を均一に運ぶようにすることである。それ故に、種々の骨折に関連した疾病を治療することができる。
【0026】
本発明の第六の目的は、生成物の品質と信頼性を大幅向上させて、消費者の満足度を高めるのに適した骨再生用コラーゲンゲル組成物の調製方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明により、動物の組織から採取した骨髄から有核細胞を分離する段階;と、前記有核細胞とI型コラーゲン及びアパタイトを含有する生体基質成分を混合する段階;と、からなる骨再生用コラーゲンゲル組成物を調製する方法の提供によって、上記及びその他の目的を達成できる。
【発明の効果】
【0028】
以上詳細に説明したように、本発明は、動物の組織から採取した骨髄から有核細胞を分離する段階;と、前記有核細胞とI型コラーゲン及びアパタイトを含有する生体基質成分を混合する段階;と、からなる骨再生用コラーゲンゲル組成物を調製する方法を提供する。
【0029】
また、本発明は、コラーゲンを基にした基質混合物を使用することによって骨伝導性及び骨前駆細胞や血管細胞に対する細胞親和力を高める。
【0030】
また、本発明は、骨髄由来の有核細胞を分離し、有核細胞と基質混合物を骨再生が必要な標的サイトに同時移植(co-transplantation)することにより、骨再生を促進できる骨形成促進用組成物を提供する。
【0031】
さらに、本発明は、骨充填材と骨再生用細胞を同時に付与できる注入可能な組成物及びその調製方法を提供する。この目的のために、大量生産できるコラーゲンを含む骨基質混合物を患者の骨髄由来有核細胞と混合し、次に混合物を骨再生が必要な患者に短時間内に使用できるよう準備する。
【0032】
さらに、本発明は、本発明に従って調製された骨形成促進組成物を局所骨形成の必要な標的の損傷部に注入して、骨欠損損傷部の形状や構造に関係なく骨形成の必要な標的サイトに基質組成物と有核細胞を均一に運ぶようにする。それ故に、種々の骨折に関連した疾病を治療することができる。
【0033】
最後に、本発明は、生成物の品質と信頼性を大幅向上させて、消費者の満足度を高めるのに非常に有益である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に適用される骨再生用コラーゲンゲル組成物の調製方法を示す工程のフローチャートである。
【図2】本発明に従い、骨再生用コラーゲンゲル組成物1mLを肩甲骨皮下注入したヌードマウスの図面代用写真である。
【図3】本発明に従い、骨再生用コラーゲンゲル組成物1mLを肩甲骨皮下注入した後9週目に撮影したヌードマウスの図面代用放射線写真である。
【図4】本発明に従い、骨再生用コラーゲンゲル組成物1mLを肩甲骨皮下注入した後9週目のヌードマウスの組織学的染色結果を示す図面代用写真である。
【図5】ウサギの前腕部に10mmの長さの骨折を起こした後、本発明に従い、骨再生用コラーゲンゲル組成物を注入後3週目、9週目に撮影した図面代用放射線写真である。
【図6】ウサギの前腕部に15mmの長さの骨折を起こした後、本発明に従い、骨再生用コラーゲンゲル組成物を注入後、3週目、9週目に撮影した図面代用放射線撮影写真である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、上記の目的及び効果を達成するための本発明の好ましい態様を、添付の図面を参照して詳細に説明する。本発明に適用される骨再生用コラーゲンゲル組成物の調製方法は、図1乃至図6に示されるように構成される。以下に本発明を説明する際に、本発明に関連する公知の機能や構成の説明が本発明の主題を不明瞭にする場合は、その詳細な説明は省く。なお、後述する用語は、本発明における機能を考慮して設定された用語であって、これは、生産者の意図または当業者の慣例によって変わり得る。それ故に、ここで使用する用語は、本発明の明細書の文脈に基づいて意味を明らかにすべきである。
【0036】
図1に示すように、まず、骨髄を動物の組織から採取して、次に有核細胞をそれから分離する(有核細胞の分離段階)。その後、前記分離した有核細胞をI型コラーゲン(collagen)及びアパタイト(apatite)を含有する生体基質成分と混合することによって骨再生用
コラーゲンゲル組成物を調製する。
【0037】
アパタイト、すなわち通常のリン酸カルシウム塩鉱物は、3価リンの主要源であり、多くの火成岩や平成岩に広範に分布している。この化合物は、人工的に合成もされる。アパタイトは、リン酸塩肥料、クリーム、歯磨き剤、人工骨の原料やそれらの材料に使用される。アパタイトが上記の用途のためにコラーゲンと混合されると、化学反応を起こし、長時間の細胞培養を回避可能にする。
【0038】
好ましくは、このようにして調製したゲル組成物は、コネクター(connector)又はそれ
に類似の手段が連結された注射器に装着して混合する。有核細胞の分離段階で得られた細胞は、自己由来の有核細胞のみからなる。このようにして分離された自己由来の有核細胞は、動物の骨髄から2〜5mmの大きさの骨髄を採取し、続いて洗浄して所望の有核細胞を分離することによって得られる。
【0039】
さらに、前記生体基質成分は、コラーゲン末端のテロペプチド(telopeptides)を除去したI型コラーゲンとアパタイトを使用する。そして、I型コラーゲン0.24mLとアパタイト26.93mgが1×106〜4×106個の骨形成能のある有核細胞の懸濁液0.106mL当り添加される。
【0040】
実施例
以下に、上記に構成したとおりの本発明に従う骨再生用コラーゲンゲルの調製を実例で説明する。本発明を以下の各実施例を参照してより詳細に説明する。これらの実施例は、本発明を実例で説明するためにのみ提示するものであり、本発明の範囲と要旨を限定するものとして解釈すべきではない。
【実施例1】
【0041】
ヌードマウスへの骨再生組成物の適用
マウスの組織から骨髄を採取した後、有核細胞を分離して細胞懸濁液を調製した。生体基質用の成分としてI型コラーゲンとアパタイトを用意した。
【0042】
細胞懸濁液と、I型コラーゲン及びアパタイトを混合して、骨再生用コラーゲンゲル組成物1mLを調製した。
【0043】
BALB/cヌードマウス(13匹、体重約23g、雄雌無関係)に、骨再生用コラーゲンゲル組成物1mLを肩甲骨に皮下注入した。
【0044】
骨再生用コラーゲンゲル組成物の注入後3週、6週、9週目に放射線撮影及び肉眼検査をした後、組織学的染色を行った。
【0045】
図2は、 骨再生用コラーゲンゲル組成物1mLを肩甲骨皮下に注入したヌードマウス
の写真を示す。骨再生用コラーゲンゲル組成物が所望の標的サイトに正常に注入されたことが分かる。
【0046】
図3は、 骨再生用コラーゲンゲル組成物1mLを肩甲骨皮下に注入後、9週目に撮影
したヌードマウスの放射線写真である。図3から分かるように、骨再生用コラーゲンゲル組成物に外部から流入した細胞によって血管生成が始まった。
【0047】
図4は、骨再生用コラーゲンゲル組成物1mLを肩甲骨皮下に注入後、9週目に撮影したヌードマウスの組織学的染色写真である。図4から分かるように、骨再生用コラーゲンゲル組成物に外部から流入した細胞によって血管生成及びコラーゲン生成が始まった。
【実施例2】
【0048】
10mmの長さの骨折を起こした動物モデルへの骨形成組成物の適用
ウサギの組織から骨髄を採取した後、有核細胞を分離して細胞懸濁液を調製した。生体基質用の成分としてI型コラーゲンとアパタイトを用意した。
【0049】
細胞懸濁液と、I型コラーゲン及びアパタイトを混合して、骨再生用コラーゲンゲル組成物0.2mLを調製した。
【0050】
この実験のためにニュージーランド白色ウサギ(7匹、体重約2.5kg、雄雌無関係)を、自家骨移植のための対照群(3匹)と骨髄由来の有核細胞を含むコラーゲンゲル組成物の移植のための実験群(4匹)に割り当てた。
【0051】
Henryアプローチ法によって、ウサギの前腕部を縦切開して、腰骨頚部を露出させた。
次いで、のこぎり(saw)を使用してウサギの腰骨頚部の長さ10mmの骨欠損を形成し、
骨欠損を起こした損傷部の骨膜を完全に除去した。
【0052】
対照群は、予め腸骨から海綿骨を採取した後、骨欠損損傷部に骨移植をして、皮膚及び皮下組織を縫合した。実験群は、骨欠損損傷部の隙間に、骨髄由来の有核細胞を含む細胞組成物を注入した。
【0053】
実験3週、6週、9週目に放射線撮影をした後、上部折骨部、下部折骨部、及び骨欠損損傷部の骨癒合程度に応じてそれぞれ点数を与えた。対応する数値の合計で骨折癒合度を評価した。
【0054】
図5は、ウサギの前腕部に長さ10mmの骨折を起こした後、骨再生用コラーゲンゲル組成物の注入後、3週目、9週目に撮影した放射線写真である。2種の動物群は類似した骨形成結果を示した。
【実施例3】
【0055】
長さ15mmの骨折を起こした動物モデルへの骨再生組成物の適用
ウサギの組織から骨髄を採取した後、有核細胞を分離して細胞懸濁液を調製した。生体基質用の成分としてI型コラーゲンとアパタイトを用意した。
【0056】
細胞懸濁液と、I型コラーゲン及びアパタイトを混合して、骨再生用コラーゲンゲル組成物0.2mLを調製した。
【0057】
この実験のためにニュージーランド白色ウサギ(18匹、体重約2.5kg、雄雌無関係)を、各9匹からなる二群;対照群と骨髄由来の有核細胞を含むコラーゲンゲル組成物の移植のための実験群、に分けた。
【0058】
Henryアプローチ法によって、ウサギの前腕部を縦切開して、腰骨頚部を露出させた。
次いで、のこぎりを使用してウサギの腰骨頚部の長さ15mmの骨欠損を形成し、骨欠損を起こした損傷部の骨膜を完全に除去した。
【0059】
対照群は、動物に骨欠損損傷部を形成した後、0.8%食塩水で洗浄した後、皮膚及び皮下組織を縫合した。実験群は、骨欠損損傷部の隙間に、骨髄由来の有核細胞を含む細胞組成物を注入した。
【0060】
実験3週、6週、9週目に放射線撮影をした後、上部折骨部、下部折骨部、及び骨欠損損傷部の骨癒合程度に応じてそれぞれ点数を与えた。対応する数値の合計で骨折癒合度を評価した。
【0061】
図6は、ウサギの前腕部に長さ15mmの骨折を起こした後、骨再生用コラーゲンゲル組成物の注入後、3週目、9週目に撮影した放射線写真である。実験群は、対照群に比べ、著しい骨形成を示すことが確証された。
【0062】
本発明の好ましい具体例を実例で説明するために開示したが、当業者は、添付の請求項の開示のとおりの本発明の範囲と要旨から離れることなく、種々の改良、追加及び置換が可能であることを十分に理解するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物の組織から採取した骨髄から有核細胞を分離する段階と、前記有核細胞と、I型コラーゲン及びアパタイトを含有する生体基質成分を混合する段階と、からなる骨再生用コラーゲンゲル組成物の調製方法。
【請求項2】
前記有核細胞は、自己由来の有核細胞であることを特徴とする、請求項1に記載の調製方法。
【請求項3】
前記分離された自己由来の有核細胞は、動物の骨髄から大きさ2〜5mmの骨髄を採取し、前記骨髄を洗浄して有核細胞を分離することによって得られることを特徴とする、請求項2に記載の調製方法。
【請求項4】
前記生体基質成分は、コラーゲン末端のテロペプチドを除去したI型コラーゲンとアパタイトを含有することを特徴とする、請求項1に記載の調製方法。
【請求項5】
前記I型コラーゲン0.24mLとアパタイト26.93mgが1×106〜4×106個の骨形成能のある有核細胞の懸濁液0.106mL当り添加されることを特徴とする、請求項4に記載の調製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−527673(P2011−527673A)
【公表日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−517326(P2011−517326)
【出願日】平成20年7月23日(2008.7.23)
【国際出願番号】PCT/KR2008/004287
【国際公開番号】WO2010/005133
【国際公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(506204243)セウォン セロンテック カンパニー リミテッド (15)
【氏名又は名称原語表記】SEWON CELLONTECH CO.,LTD.
【Fターム(参考)】