説明

骨密度増強剤

【課題】骨粗鬆症発症者および発症予備者に対して優れた骨密度増強効果を発揮する剤であって、安全性も高いも、骨粗鬆症の予防と治療に有効な薬剤を提供する。
【解決手段】化石サンゴを主成分として含有する骨粗鬆症発症者または発症予備者用骨密度増強剤。前記化石サンゴは、造礁サンゴを加熱、粉砕し、活性化して得られたものであり、結晶型はアラレ石(アラゴナイト)であり、平均粒子径が2.5〜4μmの範囲である粉末である。1.5〜5gを1日1回または2〜4回に分けて、少なくとも3カ月毎日経口服用するための骨密度増強剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は骨密度増強剤に関する。さらに詳しくは、本発明は、化石サンゴを主成分として含有する骨粗鬆症発症者または発症予備者用骨密度増強剤に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢者人口が急速に増加している我が国において、高齢者の健康生活を考える上で、歩行移動能力やバランス能力などの運動機能を健全に保つことの重要性が指摘されている。高齢者の運動機能関連疾患の中で、骨粗鬆症は大きな位置を占めている(非特許文献1、非特許文献2)。すなわち、骨粗鬆症は骨密度の低下を特徴とし、骨折のリスクが増大しやすくなる骨格疾患であり、長年の食習慣・運動習慣などの生活習慣が骨粗鬆症の発症に大きな影響を及ぼすことが報告されている。したがって、骨粗鬆症の予防と治療において最も基本となるのは食や運動に関する生活指導であるといわれる。生活指導の一環として、カルシウムなどの栄養素を積極的に摂取することが勧められている。(非特許文献2、非特許文献3)。
【0003】
ところで、炭酸カルシウムを主成分とする陸上の造礁サンゴを原料とする健康増進剤が知られている(特許文献1)。健康増進剤は、炭酸カルシウムを主成分とする陸上のサンゴを水洗いする工程と、この水洗いされたサンゴを加熱、粉砕し、活性化する工程とを備える方法で製造される。このようにして製造された健康増進剤は、水等に溶かして飲用されることで、カルシウム、マンガン等の微量無機ミネラルの補給を可能にする、と記載されている(段落0012)。
【0004】
さらに、上記健康増進剤が有する吸収不良の問題点を解消するために、粉砕してサンゴ化石粉をクエン酸等の有機酸と混合して前記酸のカルシウム塩としたがカルシウム製剤が知られている(特許文献2)。このカルシウム製剤には、炭酸カルシウムより水に対して溶解度の高いカルシウム塩が含まれた状態となる。
【0005】
同様のカルシウム等のミネラルを高濃度で含む健康増進飲料が提案されている(特許文献3)。この健康増進飲料は、そのクエン酸含有量(mg/100g)が少なくとも500mg以上の黒麹もろみ酢が75乃至85重量%に、その全糖値(mg/100g)が3.2乃至4.8mgで且酸値(mg/10g)が少なくとも55mg以上のパッションフルーツ搾汁が7.5乃至12.5重量%混合され、更に天然化石サンゴをクエン酸水溶液中で過飽和に溶解させたクエン酸カルシウム塩及びクエン酸ミネラル塩溶液が7.5乃至12.5重量割合で混合された構成からなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−170939号公報
【特許文献2】特開2006−345720号公報
【特許文献3】特開2007−6876号公報
【特許文献4】特開2007−174926号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】折原肇 (2001): 原発性骨粗鬆症の診断基準−2000年度改訂版(概要) −Osteoporosis Jpn,9(1), 9-14.
【非特許文献2】NIH consensus developmental panel on osteoporosis prevention, di agnosis, and therapy. (2001): Osteoporosis prevention, diagnosis, and therapy. JAMA, 285(6), 785-79 .
【非特許文献3】楊鴻生 (2007): 骨粗鬆症の生活指導. 日医雑誌、136(2), 287-290.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2および3に記載のカルシウム製剤や健康増進飲料は、クエン酸回路における代謝機能の促進と、摂取栄養素を有効に消化吸収せしめて健康増進を図る目的には適したものである。しかし、あくまでも健康増進飲料であって、骨粗鬆症の予防と治療に有効な薬剤を提供するものではない。
【0009】
一方、特許文献1に記載の固形の健康増進剤も、あくまでも健康増進剤であり、水等に溶かして飲用されることを目的としたものであった。固形のカルシウム製剤を直接飲食することは意図されず、特許文献2および3に記載のように、カルシウム等のミネラルの吸収に適した有機酸塩水溶液としての飲用が提案されていた。
【0010】
一般に、カルシウム製剤を固形のままで摂取すると、主成分である炭酸カルシウムは酸性の胃液(胃酸)に溶解する。炭酸カルシウムは、水に対する溶解度は低くいが、塩酸などの酸には炭酸ガスを発生しながら溶解し、溶液中ではCa2+イオンとなる。しかしながら、胃液の分泌量は、例えば、子供,成人,老人などの年齢により差があるし、カルシウム製剤がどの程度、胃液(胃酸)により溶解するかは厳密には解明されていない。このため、特許文献1に記載の固形のカルシウム製剤については、カルシウムの吸収に差が生じることを回避するために、水等に溶かして飲用されるか、引用文献2および3に記載のように、有機酸塩水溶液としての飲用が提案されている。
【0011】
ところで、化石サンゴを主成分として含有するマイコトキシン除去用飼料添加剤が知られている(特許文献4)。この飼料添加剤を添加した飼料を乳牛に与えることで、前記乳牛から採取される牛乳に含まれるマイコトキシン量を低減することができる。ここで、飼料添加剤の主成分として用いられる化石サンゴは、特許文献1に記載のものと同成分であり、固形として乳牛に与えられる。但し、上記目的を考慮して、平均粒子径を特許文献1の記載より大きめの0.1〜0.6mmに調整している。固形の飼料添加剤は、乳牛の胃の中に長時間滞留するにもかかわらず、マイコトキシンを吸着して、牛乳に含まれるマイコトキシン量を低減するものであり、この結果は、化石サンゴが胃酸によって溶解しにくいをこと示唆するのも記載であった。
【0012】
本発明者らは、骨粗鬆症発症者および発症予備者に対して優れた骨密度増強効果を発揮する剤であって、安全性も高いも、骨粗鬆症の予防と治療に有効な薬剤を提供することを目的として、種々検討した。
【課題を解決するための手段】
【0013】
その結果、本発明者らは、種々の検討の結果、造礁サンゴを加熱、粉砕し、活性化して得られた結晶型はアラレ石(アラゴナイト)である化石サンゴであって平均粒子径が2.5〜4μmの範囲である化石サンゴ粉末を、1.5〜5gの範囲で1日1回または2〜4回に分けて、少なくとも3カ月毎日服用することで、骨粗鬆症発症者または発症予備者の骨密度を増強できることを見出して本発明を完成させた。
【0014】
本発明は、化石サンゴを主成分として含有する骨粗鬆症発症者または発症予備者用骨密度増強剤であって、前記化石サンゴが、造礁サンゴを加熱、粉砕し、活性化して得られた結晶型はアラレ石(アラゴナイト)であるものであり、平均粒子径が2.5〜4μmの範囲である粉末であり、かつ1.5〜5gを1日1回または2〜4回に分けて、少なくとも3カ月毎日経口服用するための前記骨密度増強剤に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、骨粗鬆症発症者または発症予備者用の骨密度増強剤を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】骨密度(BMD)の測定結果を示す。
【図2】骨代謝の指標であるBAPの測定結果を示す。
【図3】PTHとカルシトニンの測定結果を示す。
【図4】血清電解質であるカルシウム、マグネシウム、無機リン、ナトリウム、カリウム、塩素への影響の測定結果を示す。
【図5】血中AST、ALT、γ-GTPの測定結果を示す。
【図6】血中BUNとクレアチニンの測定結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、化石サンゴを主成分として含有する骨粗鬆症発症者または発症予備者用骨密度増強剤であって、前記化石サンゴが、造礁サンゴを加熱、粉砕し、活性化して得られたものであり、結晶型はアラレ石(アラゴナイト)であり、平均粒子径が2.5〜4μmの範囲である粉末であり、かつ1.5〜5gを1日1回または2〜4回に分けて、少なくとも3カ月毎日服用するためのものである。
【0018】
本発明で用いられる化石サンゴは、造礁サンゴを加熱、粉砕し、活性化して得られたものであり、具体的には、特許文献1に記載されている。より具体的には、造礁サンゴを採取して水洗いし、しかる後、この水洗いされた造礁サンゴを加熱、粉砕し、活性化することにより、得られたものである。陸上の造礁サンゴは、サンゴ礁が隆起してできた石灰岩塊で、海中のサンゴと異なり塩分を含んでおらず、健康増進剤の原料として最適である。成分は産地によって多少異なるが、鉱物組成はカルシウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、マンガン、鉄等各種成分を含んでおり、その大部分はカルシウムである。カルシウムは全体の約40%占めている。造礁サンゴの色は白色より黄褐色のものまである。このような造礁サンゴの産地としては、沖縄、八重山諸島海域の島が挙げられる。
【0019】
製造に際しては、鉱山から採掘した造礁サンゴの生骨格および半化石群より上質のもののみを選別して取り出す。この造礁サンゴには魚の骨、ウニの刺、死貝等は混入しておらず、したがって、その選別は不要である。次に、自生粉砕ミルにかけるのに最も効率のより大きさ(5mm〜70mm、但しミルの大きさによりサイズは異なる)に砕いたサンゴを真水で洗う。
【0020】
水洗い後、原料サンゴを乾燥機に送り、ある程度乾燥させて付着している水分を除去した後、自生粉砕ミルに供給する。自生粉砕ミルは、大小様々な原料サンゴ同士が互いにぶつかり合い、砕け易いところから徐々に砕いていくものである。また、粉砕効率を上げるためにミル内に大小様々なスチールボールを入れておくとよい。この粉砕工程において、熱風をミル内に送り込んで乾燥、殺菌、活性化する。陸上の造礁サンゴの結晶型はアラレ石(アラゴナイト)であり、ある一定温度を越えると方解石(カルサイト)に変わる性質をもっているので、熱風温度はこの造礁サンゴの結晶型を変えない範囲でかつ一般細菌および人体に有害な細菌を殺し得る温度であることが望ましく、例えば熱風温度としては、最大上限温度350℃程度で、製品の出口温度を70℃程度に管理する。こうすることにより、多孔質のそれぞれの穴も綺麗になり、殺菌、活性化される。ミルによって粉砕されたサンゴは、コンプレッサによってエア吸引されて大きさ、重さにより、選別する。
【0021】
本発明の骨密度増強剤に使用する化石サンゴは、結晶型はアラレ石(アラゴナイト)である。結晶型はアラレ石(アラゴナイト)であり、かつ平均粒子径が2.5〜4μmの粉末であることで、骨粗鬆症発症者および発症予備者に対して優れた骨密度増強効果を発揮するとともに、服用による副作用もなく安全性が高いという観点から好ましい。平均粒子径は、好ましくは2.5〜3.5μmである。特許文献1〜3の記載によれば、固形状の化石サンゴ粉末では、カルシウム等の吸収が不良であるとされてきた。しかし、本発明においては、結晶型がアラレ石(アラゴナイト)であり、かつ上記平均粒子径を有する化石サンゴ粉末の所定量(1.5〜5g)を、少なくとも3カ月毎日服用することで、骨粗鬆症発症者および発症予備者に対して優れた骨密度増強効果が得られることを見出した。
【0022】
このようにして製造された化石サンゴの主要成分は、例えば、100g当たり38〜40gのカルシウム、250〜420mgのマグネシウム、10〜50mgの鉄、8〜25mgのナトリウム、1〜6mgのカリウム、0.5〜4mgのマンガンを含有するものである。これらの成分を含有することが、優れた骨密度増強剤が得られるという観点から好ましい。
【0023】
本発明の骨密度増強剤は、骨粗鬆症発症者または発症予備者用である。本発明において、骨粗鬆症発症者とは、若年成人の平均骨密度の70%未満の骨密度を有する者をさす。また、骨粗鬆症発症予備者とは、若年成人の平均骨密度の70%以上80%未満の骨密度を有する者をさす。但し、いずれの場合も、骨密度はCXD(computed X-ray densitometry)法で測定された第2中手骨の骨密度である。
【0024】
本発明の骨密度増強剤は、1.5〜5gを1日1回または2〜4回に分けて、少なくとも3カ月毎日服用するためのものである。好ましくは1.5〜3gを1日2〜3回に分けて、少なくとも3カ月毎日経口服用するためのものである。より好ましくは、2〜3gを1日2回に分けて3カ月〜6カ月毎日経口服用するためのものである。服用量が多いほど効果は大きい。服用回数が、2回または3回であることが、服用が容易で、服用忘れもなく好ましい。服用期間は長いほど効果が顕著になるので、少なくとも3カ月、好ましくは3カ月〜6カ月毎日服用する。尚、6カ月を超えての服用も増強された骨密度を維持するという観点から好ましく、本発明の骨密度増強剤は、天然素材である化石サンゴを原料としており、実質的な副作用は無く、長期の服用に適している。
【実施例】
【0025】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
【0026】
1)被験者
被験者は43才から76才(平均年齢59才)の15名の女性であった。そのうち、検査開始時の骨密度が、若年成人平均値(YAM, young adult mean)の80%以上であった健常者群に属する者が11名(平均年齢69才)、800%未満70%以上であった骨量減少域群に属する者が1名(年齢62才)、70%未満の骨粗鬆症域群に属する者が3名(平均年齢72才)であった(折原、2001)。被験者に対しては、ヘルシンキ宣言の精神に基づいて、担当医師から被験者に本研究で使用する骨密度増強剤の成分および効果判定検査方法などについて説明してインフォームドコンセントを得た。さらに、効果判定試験に必要な量を毎日摂取すること、検査開始時、毎月1回および3ヶ月に1回の割合で行われる効果判定検査を受診すること、および検査結果を個人が特定されない条件で学会や学術論文に発表することを同意する旨の書類を提出していただいた。さらに、毎月1回の割合で、体調の変化などについて医師が被験者に対する問診を行った。
【0027】
2)試験剤および摂取方法
骨密度増強剤は以下の表に示す組成を有するものであった。骨密度増強剤の摂取方法は、粉末状の骨密度増強剤1 gを朝夕2回、1日 2 gを摂取することとした。
【0028】
【表1】

【0029】
3)効果判定に関する検査方法
試験開始前と3ヶ月後に、第2中手骨の骨密度(bone mineral density, BMD)をcomputed X-ray densitometry (CXD)法で測定した(Sanada et al., 1994; 山崎薫、 2004、曽根、2004)。さらに、試験開始前と開始後1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月に次の検査を行った。まず、血中骨型アルカリフォスファターゼ(bone alkaline phosphatase, BAP)はEIA法を用いて検査した(Hanson et al., 1992; Clemens et al., 1997; Kaplanet et al., 2003)。血中パラソルモン(parathormone, PTH)とカルシトニンはRIA法で測定した。また、肝機能検査のうち、血中aspartate:2-oxoglutarate aminotransferase (AST)、alanine:2-oxoglutarate aminotransferase (ALT)、γ-glutamyltransferase(γ-GTP)をJSCC対応法で測定した。腎機能については、尿素窒素(blood urea nitrogen. BUN)をウレアーゼGLDH法、クレアチニンを酵素法を用いて測った。血中電解質のうち、ナトリウム、カリウム、塩素はイオン選択電極法、カルシウムはアルセナゾIII法、マグネシウムはキシリジルブルー法、無機リンは酵素法を用いて測定した。(金井正光ら、2005)。さらに、身長、血圧の測定に加え、体重、体脂肪率、筋肉量をマルチ周波数体組成計(タニタMC-190)で測定した。これは、4種類の周波数電流を生体組織に通電して生体インピーダンスを測定して体脂肪率や筋肉量を測る計器である。その測定値は、体組成測定の基準として用いられる二重X線吸収法(dual energy X-ray absorptiometry法、DXA法)による測定と非常に高い相関関係があることが報告されている(仲、2005;曽根、2006)。
【0030】
4)統計学的方法
検査開始時と3ヶ月後の骨密度の検査データは、対応のあるt検定を用いて調べ、p<0.05を有意と判定した。また、対応のある3群以上の掲示測定データの有意性の判定には、BonferroniおよびDunnettの多重比較検定検査で調べ、p<0.05を有意と判定した。これらの検定は、すべてSPSS 13.0 for Windowsを用いて行った。
【0031】
結果
全被験者群の骨密度(BMD)は、試験開始前は2.31±0.37 mmAI(mean±SEM、n=15)であったが、3ヵ月後には2.45±0.27 mmAIと有意(p<0.05、n=15)に増加した。そこで、試験開始時の骨密度(BMD)がYAM値の70%未満の骨粗鬆症域群と80%以上の健常者群の骨密度の変化を比較した。骨粗鬆症域群の骨密度は、試験開始時は1.767±0.047 mmAIであったが、3ヵ月後には2.19±0.096 mmAIと有意(p<0.05, n=3)に増加した。一方、健常者群の骨密度は、試験開始時は2.471±0.083 mmAIであり、3ヵ月後には2.505±0.078 mmAI (n=11)と増加傾向を示したが、統計的には有意差はなかった(図1)。
【0032】
次に、骨代謝の指標であるBAPを調べた(図2)。骨形成の指標である血中BAPは、全被験者群では、試験前、1ヵ月後、2ヵ月後にそれぞれ19.9±1.84 U/L、20.3±1.79 U/L、19.8±1.93 U/Lと変化がなかったが、3ヵ月後には25.0±2.36 U/Lと有意(p<0.05, n=15)に増加した。 骨粗鬆症域群では、試験前、1ヶ月、2ヵ月後にそれぞれ21.2±3.7 U/L、21.5±3.8 U/L、20.1±3.0 U/Lと変化がなかったが、3ヶ月後には26.4±4.4 U/Lと有意(p<0.05, n=3)に増加した。さらに、健常者群のBAPも、試験前、1ヶ月後、2ヵ月後にそれぞれ20.0±1.99 U/L、20.6±1.91 U/L、20.4±2.10 U/Lと変化がなかったが、3ヵ月後には25.6±2.47 U/Lと有意(p<0.05, n=11)に増加した。
【0033】
さらに、骨代謝や血中カルシウム濃度に影響を与えるホルモンであるPTHとカルシトニンについて調べた(図 3)。血中カルシウム濃度を上昇させるPTHは、全被験者群において、試験前、1ヵ月後、2ヵ月後、3ヵ月後にそれぞれ291.8±30.3 pg/mL、279.6±28.9 pg/mL、327.1±29.7 pg/mL、325.7±31.0 pg/mL(n=15)であり、各時期のPTH値は有意な変動を示さなかった。さらに、骨粗鬆症域群および健常者群のPTH値も有意な変動を示さなかった。血中カルシウム濃度を低下させるカルシトニンは、全被験者群において、試験前、1ヵ月後、2ヵ月後、3ヵ月後にそれぞれ25.8±3.0 pg/mL、28.4±2.6 pg/mL、27.3±2.6 pg/mL、26.3±3.1 pg/mL(n=15)であり、有意な変動を示さなかった。さらに、骨粗鬆症域群および健常者群のカルシトニン値も有意な変動を示さなかった(図3)。
【0034】
さらに、血清電解質であるカルシウム、マグネシウム、無機リン、ナトリウム、カリウム、塩素への影響を調べた。全被験者群において、電解質の血中濃度は試験期間を通じて正常範囲内にあり、かつ各時期の値は有意な変動を示さなかった(図4)。さらに骨密度増強剤摂取が肝機能に与える影響を調べるために、全被験者群の血中AST、ALT、γ-GTPを測った。ASTとALTの値は正常範囲内で一定しており、有意な変化を認めなかった。γ-GTPは、検査前に25.87±6.56 IU/L、3ヵ月後に21.33±3.80 IU/Lと低下・改善傾向を示したが有意差はなかった(図5)。また、腎機能への影響は血中BUNとクレアチニンで測定したが、両者ともに正常範囲内で一定しており、有意な変化を認めなかった(図6)。さらに、全被験者群の体重、筋肉量、体脂肪率、および収縮期と拡張期血圧についても調べたが、試験期間を通じて変化を認めなかった(表2)。なお、3ヶ月に亘る骨密度増強剤摂取期間中に体調に変化があったという報告はなかった。
【0035】
【表2】

【0036】
以上の結果から以下のことが分かった。
(1)上記臨床試験研究は、CXD法で測定した第2中手骨の骨密度が3ヶ月間の骨密度増強剤摂取試験によって試験前より有意に増加することを明らかにした。
【0037】
(2)本臨床試験研究では、3ヶ月の骨密度増強剤摂取により血中BAP濃度が有意に上昇することを示した。
【0038】
(3)本研究は、3ヶ月間の骨密度増強剤摂取により、被験者の骨型アルカリフォスファターゼと骨塩量が増加することを明らかにした。この事実は、骨密度増強剤摂取によって、骨芽細胞の骨基質合成・分泌が高まり、その結果としてX線で観察される骨量が上昇したと考えられる。
【0039】
(4)カルシウム代謝に関係するパラソルモンとカルシトニンとも全試験期間を通じて正常域でほぼ一定していた。また、骨代謝に関係するカルシウム、マグネシウム、無機リンの血中濃度にも変化がなかった。さらに、ナトリウム、カリウム、塩素濃度にも変化がなかった。さらに、骨密度増強剤摂取は肝機能、腎機能、体重、筋肉量、体脂肪率、血圧にも変化を及ぼさなかった。また、骨密度増強剤摂取期間に体調不良を訴えた被験者はいなかった。以上の事実は本発明の骨密度増強剤が健康を害することがない安全なものであることを示している。
【0040】
実施例中の引用文献
1) Clemens, J.D., Herrick, M.V., Singer, F.R., and Eyre, D.R.(1997): Evidence th at serum
NTx(collegen-type 1 N-telopeptides) can act as an immunochemical marker of bon e
resorption, Clinical Chem 43(11), 2058-2063.
2) Hanson, D.A., Weis, M.A.E., Bollen, A-M., Maslan, S.L., Singer, F.R., Eyre,D. R.(1992):
A specific immunoassay for monitoring human bone resorption: Quantitation of t ype
I collagen cross-liked N-telopeptides in urine, J Bone Miner Res,7(11), 1251-1
258.
3) 金井正光、奥村伸生編 (2005): 臨床検査提要. pp461-651、金原出版、東京.
4) Kaplan, L.A., Pesce, A.J., Kazmierczak, S.C.(2003): Clinical chemistry; theory,
analysis, correlation 4th ed., pp 1-427, Mosby, St.Louis.
5) 仲立貴、韓一栄、慶伊孝亮、笠原靖弘、西澤美幸、三好努、佐藤等、大野隆(2005): 部位別生体電気インピーダンス法による身体組成分析−健常人に対する検討−、慈恵医 大誌、120, 35-44.
6) 折原肇 (2001): 原発性骨粗鬆症の診断基準−2000年度改訂版(概要)−。Osteopor osis Jpn,9(1), 9-14.
7) Sanada, T., Tomomitsu, T., Otsuka, N., Fukunaga, M., Togawa, H. (1994): A fun damental study of a computed X-ray densitometry system for bone mineral
measurement in the second metacarpal bone. Radiation Med, 12(3), 143-146.
8) 曽根照喜 ((2004): VIII. 骨密度・骨量測定 MD法、CXD法、DIP法. 日本臨床、 62 (Suppl2), 312-315.
9) 曽根幸喜 (2006):体脂肪率測定法(空気置換法、多周波数インピーダンス法)の信頼性の検討. 理学療法科学, 21 (2), 157-161
10) 山崎薫 (2004): VIII. 骨密度・骨量測定 測定機器の互換性に関する検討。日本臨床、62 (Suppl 2), 309-315.
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、骨密度増強剤に関する分野に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化石サンゴを主成分として含有する骨粗鬆症発症者または発症予備者用骨密度増強剤であって、
前記化石サンゴが、造礁サンゴを加熱、粉砕し、活性化して得られたものであり、結晶型はアラレ石(アラゴナイト)であり、平均粒子径が2.5〜4μmの範囲である粉末であり、
かつ1.5〜5gを1日1回または2〜4回に分けて、少なくとも3カ月毎日経口服用するための前記骨密度増強剤。
【請求項2】
骨粗鬆症発症予備者用骨密度増強剤であり、骨粗鬆症発症予備者は、若年成人の平均骨密度の70%以上80%未満の骨密度を有する、但し、骨密度はCXD(computed X-ray densitometry)法で測定された第2中手骨の骨密度である請求項1に記載の骨密度増強剤。
【請求項3】
骨粗鬆症発症者用骨密度増強剤であり、骨粗鬆症発症者は、若年成人の平均骨密度の70%未満の骨密度を有する、但し、骨密度はCXD(computed X-ray densitometry)法で測定された第2中手骨の骨密度である請求項1に記載の骨密度増強剤。
【請求項4】
1.5〜3gを1日2〜3回に分けて、少なくとも3カ月毎日経口服用するための、請求項1〜3のいずれかに記載の骨密度増強剤。
【請求項5】
2〜3gを1日2回に分けて3カ月〜6カ月毎日経口服用するための請求項1〜3のいずれに記載の骨密度増強剤。
【請求項6】
前記化石サンゴが、100g当たり100g当たり38〜40gのカルシウム、250〜420mgのマグネシウム、10〜50 mgの鉄、8〜25 mgのナトリウム、1〜6 mgのカリウム、0.5〜4 mgのマンガンを含有する請求項1〜5のいずれかに記載の骨密度増強剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−73999(P2011−73999A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−225790(P2009−225790)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.WINDOWS
【出願人】(397024720)コーラルインターナショナル株式会社 (2)
【Fターム(参考)】