説明

骨材の微粒分量推定方法

【課題】骨材の微粒分量を測定する者の技量等による人的誤差を極力少なくし、簡単であり、かつ短時間で骨材の微粒分量を正確に推定する方法を提供する。
【解決手段】骨材の微粒分量を推定する方法は、骨材のうちの所定の粒度範囲に含まれる骨材を水洗し、水洗後の水の濁度に基づいて、骨材の微粒分量を推定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨材の微粒分量を推定する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンクリート、モルタル等の水硬性組成物の原料として使用される粗骨材、細骨材等の骨材は、その製造過程等において生成される粒径75μm未満の微粉末を含む。骨材中におけるこの微粉末の含有量(微粒分量)によっては、水硬性組成物における単位水量の増加、乾燥収縮量の増大等を引き起こすおそれがある。そのため、水硬性組成物の原料として使用される骨材の微粒分量を正確に測定する必要があり、JISにおいて、骨材の微粒分量を測定する方法が規定されている(非特許文献1)。
【0003】
しかし、上記非特許文献1に記載の方法は、骨材の洗い工程における個人差等によるバラツキの大きさやその洗いの回数の判断基準が曖昧であることが指摘されており、また対象岩種が多様であるために、正確に微粒分量を測定できない可能性が示唆されている。また、骨材の微粒分量を測定するために洗浄後の骨材を乾燥させる必要があるが、その乾燥に時間がかかるため、結果として骨材の微粒分量を測定するのに時間がかかってしまうという問題もある。
【0004】
これらの問題点を解決すべく、個人差が少なく、かつ正確に骨材の微粒分量を測定する方法として、従来、超音波を用いて骨材を水洗し、公称目開き0.075mmの篩を用いて水洗後の骨材のうちの篩通過分を除去し、この篩通過分が目視できなくなるまで水洗及び除去を繰り返し、水洗後の骨材を乾燥して微粒分量を算出する方法が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−38857号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】日本工業規格 骨材の微粒分量試験方法 JIS−A1103:2003 日本規格協会発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載の方法においては、公称目開き0.075mmの篩における篩通過分が目視できなくなるまで洗浄及び除去工程を何度も繰り返す必要があり、さらに洗浄後の骨材を乾燥させる必要があって、その乾燥に時間がかかってしまうため、結果として短期間に微粒分量を測定することができないという問題がある。
【0008】
このような問題点に鑑みて、本発明は、骨材の微粒分量を測定する者の技量等による人的誤差を極力少なくし、簡単であり、かつ短時間で骨材の微粒分量を正確に推定する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、骨材の微粒分量を推定する方法であって、前記骨材のうちの所定の粒度範囲に含まれる骨材を水洗し、水洗後の水の濁度に基づいて、前記骨材の微粒分量を推定することを特徴とする骨材の微粒分量推定方法を提供する(請求項1)。
【0010】
上記発明(請求項1)によれば、骨材の微粒分量を推定するにあたり、骨材を水洗した後の水の濁度を測定するだけでよいため、骨材の微粒分量を極めて短時間で推定することができる。また、水洗後の水の濁度と骨材の微粒分量との間には高い相関関係があるため、水の濁度を測定することだけで、正確に骨材の微粒分量を推定することが可能となる。
【0011】
上記発明(請求項1)においては、前記骨材のうちの2以上の異なる粒度範囲のそれぞれに含まれる骨材を水洗し、水洗後の各水の濁度に基づいて、前記骨材の微粒分量を推定するのが好ましい(請求項2)。
【0012】
上記発明(請求項2)によれば、2以上の粒度範囲のそれぞれに含まれる骨材の水洗後の水の濁度を指標とすることで、より正確に骨材の微粒分量を推定することができる。
【0013】
上記発明(請求項2)においては、前記骨材における前記各粒度範囲の頻度と前記各粒度範囲に含まれる骨材の水洗後の各水の濁度とを乗じた値の総和に基づいて、前記骨材の微粒分量を推定するのが好ましい(請求項3)。
【0014】
2以上の粒度範囲のそれぞれに含まれる骨材の水洗後の水の濁度に各粒度範囲の頻度を乗じた値の総和と、骨材の微粒分量との間には極めて高い相関関係があるため、上記発明(請求項3)によれば、より正確に骨材の微粒分量を推定することができる。
【0015】
上記発明(請求項2,3)においては、前記各粒度範囲において、前記骨材の水洗に使用する水量と、水洗処理に付される骨材量との比(質量基準)を一定にするのが好ましい(請求項4)。
【0016】
上記発明(請求項4)のように前記骨材の水洗に使用する水量と、水洗処理に付される骨材量との比(質量基準)を一定にすることで、より正確に骨材の微粒分量を推定することができる。
【0017】
上記発明(請求項1〜4)においては、超音波洗浄器を用いて前記骨材を水洗するのが好ましい(請求項5)。かかる発明(請求項5)によれば、骨材に付着した微粒子を確実に洗い落とすことができるため、骨材の微粒分量を正確に推定することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、骨材の微粒分量を測定する者の技量等による人的誤差を極力少なくし、簡単であり、かつ短時間で骨材の微粒分量を正確に推定する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例における各骨材試料(試料1〜7)の各粒度範囲での濁度と頻度とを乗じた値の総和と各骨材試料(試料1〜7)の微粒分量との関係を示すグラフである。
【図2】実施例における各骨材試料(試料1〜5)の各粒度範囲における濁度と各骨材試料(試料1〜5)における微粒分量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本実施形態においては、まず、微粒分量を推定する対象としての骨材を、所定の粒度範囲に応じて分級する。
【0021】
本実施形態における微粒分量推定対象骨材は、コンクリート、モルタル等の水硬性組成物の原料として使用され得る骨材であれば特に制限はなく、粗骨材であってもよいし、細骨材であってもよい。このような骨材としては、砕石、砕砂、スラグ骨材、人工軽量骨材、砂利、砂等を例示することができる。
【0022】
上記粒度範囲は、上記骨材を少なくとも2以上に分級するように設定すればよい。例えば、当該微粒分量推定対象骨材が粗骨材である場合、粒径2.5mm以上5mm未満、5mm以上10mm未満、10mm以上20mm未満及び20mm以上に分級することができる。以下、本実施形態においては、粗骨材を上記4つの粒度範囲に応じて分級した例を挙げて説明することとする。
【0023】
骨材を分級する方法は、所定の粒度範囲ごとに骨材を分級し得る限り特に限定されるものではなく、所定の目開きの篩を使用してもよいし、公知の分級機を使用してもよい。
【0024】
上述のようにして骨材を分級した後、上記4つの粒度範囲の中から選択される少なくとも1の粒度範囲に含まれる骨材の一部を分取し、当該分取した一部の骨材を水洗する。この水洗方法としては、骨材に付着している微粒子の略全てを洗い落とすことができる限り特に制限されないが、超音波洗浄器を用いて水洗するのが好ましい。
【0025】
水洗処理に供せられる骨材量は、特に制限されるものではないが、骨材量が多すぎると、濁度計の性能等によっては後述する濁度の測定が不可能となるおそれがあり、また骨材量が少なすぎると、上記のようにして設定した粒度範囲のうち粒径の大きい粒度範囲に含まれる骨材を分取し得ないおそれがある。このような問題が生じ得ない骨材量としては、例えば、洗浄水1Lに対して20〜100g程度である。
【0026】
なお、上記4つの粒度範囲のうち、粒径5mm以上10mm未満、10mm以上20mm未満及び20mm以上の各粒度範囲のそれぞれに含まれる骨材を水洗した後の各水の濁度は、骨材の微粒分量との間で高い相関性を示し、特に粒径5mm以上10mm未満及び10mm以上20mm未満の粒度範囲に含まれる骨材の水洗後の水の濁度が、骨材の微粒分量との間で非常に高い相関性を示す。したがって、上記4つの粒度範囲の中から粒径5mm以上10mm未満及び10mm以上20mm未満の粒度範囲に含まれる骨材を、水洗処理に供せられる骨材として選択するのが好ましい。
【0027】
上記4つの粒度範囲の中から2以上の粒度範囲に含まれる骨材を、水洗処理に供せられる骨材として選択する場合、各粒度範囲における水洗処理に供せられる骨材量を一定とする必要がある。この骨材量が各粒度範囲において相違すると、微粒分量を正確に推定することが困難となる。
【0028】
続いて、各粒度範囲に含まれる骨材の水洗処理後、洗浄に用いた水(洗浄廃水)の濁度を測定する。濁度の測定は、公知の濁度計を用いることができるが、高濃度(例えば、2000mg/L以上)の濁質成分を含む液体の濁度を測定可能である高濃度濁度計を用いるのが好ましい。
【0029】
後述する実施例において明らかなように、骨材を水洗した後の洗浄廃水の濁度と骨材の微粒分量との間には極めて高い相関関係がある。したがって、可能な限り多くのロット及び種類(岩種)の骨材を対象として、洗浄条件(骨材量、洗浄水量、洗浄時間、超音波出力等の条件)を同一として水洗処理をした後の洗浄廃水の濁度と微粒分量(JIS−A1103に準拠して測定された微粒分量)との相関関係を予め求めて検量線を作成しておき、上記のようにして測定した濁度に基づいて、この相関関係から微粒分量推定対象骨材の微粒分量を算出する。これにより、微粒分量の不明な骨材について、その微粒分量を簡単に、かつ短期間に推定することができる。
【0030】
2以上の粒度範囲に含まれる骨材を水洗処理に供した場合、各粒度範囲に含まれる骨材の水洗処理後の洗浄廃水の濁度をそれぞれ測定する。濁度の測定は、上記と同様にして行えばよい。
【0031】
次に、このようにして測定された各濁度に、各粒度範囲の頻度を乗じた値を算出し、それらの算出値の総和を算出する。後述する実施例において明らかであるように、各濁度に各頻度を乗じた値の総和と、微粒分量とは、極めて高い相関性を示す。したがって、可能な限り多くのロット及び種類(岩種)の骨材を対象として、洗浄条件(骨材量、洗浄水量、洗浄時間、超音波出力等の条件)を同一として水洗処理をした後の洗浄廃水の各濁度に頻度を乗じた値の総和と微粒分量(JIS−A1103に準拠して測定された微粒分量)との相関関係を予め求めて検量線を作成しておき、上記のようにして測定した各濁度に頻度を乗じた値の総和を算出し、その算出値に基づいて、この相関関係から微粒分量推定対象骨材の微粒分量を算出する。これにより、微粒分量の不明な骨材について、その微粒分量を簡単に、かつ短期間に、さらには正確に推定することができる。
【0032】
上述したように、本実施形態に係る微粒分量推定方法によれば、かかる方法を実施する者の熟練度、技量等の人的誤差の影響を受けることがなく、極めて簡単に、かつ短期間に骨材の部粒分量を正確に推定することができる。特に、後述する実施例において明らかなように、微粒分量が3質量%以下の骨材であれば、極めて正確にその微粒分量を推定することができる。
【0033】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0034】
上記実施形態においては、微粒分量推定対象骨材を粒径2.5mm以上5mm未満、5mm以上10mm未満、10mm以上20mm未満及び20mm以上の4つの粒度範囲に分級したが、これに限定されるものではなく、例えば、10mm未満及び10mm以上の2つの粒度範囲に分級してもよい。また、微粒分量推定対象骨材が、すでに所定の粒度範囲に分級されている場合には、上述した分級の工程を省略してもよい。
【実施例】
【0035】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0036】
石灰石粗骨材を用意し、JIS−A1103に記載のようにして当該石灰石粗骨材を洗浄して微粒子を洗い流し、洗浄後の骨材の微粒分量が0.5%、1%、1.5%、2%、3%、5%及び8%となるように当該洗浄後の骨材に粒径75μm以下の微粒子を添加し、これを微粒分量推定対象の骨材試料とした(試料1〜7)。また、上記洗浄後の微粒子が添加されていない骨材の粒度分布を測定した。
当該骨材の粒度分布を表1に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
上記骨材試料(試料1〜7)を、粒径2.5mm以上5mm未満、5mm以上10mm未満、10mm以上20mm未満及び20mm以上の4つの粒度範囲に篩い分けた。
【0039】
各粒度範囲に含まれる骨材から20g程度ずつ測り取り(n=3)、骨材と水との質量比が1:50となるように水を収容した超音波洗浄器(製品名:USL−600,エスエヌディ社製)に骨材を添加し、出力360Wの超音波(38kHz,BLT自励発振)を3分間印加した。
【0040】
超音波洗浄後の洗浄廃水の濁度を、濁度計(製品名:TB−25A,東亜ディーケーケー社製)を用いて測定した。各粒度範囲に含まれる骨材の濁度の測定値と、表1に示す各粒度範囲の頻度とを乗じた値を算出し、各骨材試料(試料1〜7)におけるそれらの値の総和を算出した。
【0041】
濁度の測定結果及び当該算出結果を表2に、上記のようにして算出した総和(各粒度範囲における濁度と頻度とを乗じた値の総和)と各骨材試料(試料1〜7)における微粒分量との関係を示すグラフを図1に、上記のようにして測定した各粒度範囲における濁度と各骨材試料(試料1〜5)における微粒分量との関係を示すグラフを図2に示す。なお、図1に示される理論データとは、超音波洗浄処理に供された骨材量、洗浄水の水量及び微粒分量から算出した濁度の理論値を表すものである。
【0042】
【表2】

【0043】
図1に示すように、微粒分量が3質量%以下である試料1〜5の骨材試料は、濁度及び頻度を乗じた値の総和と微粒分量との間に、極めて高い相関関係を有することが確認された。また、理論データともほぼ一致することが確認された。
【0044】
したがって、当該総和と微粒分量との相関関係を示す検量線を予め作成しておけば、微粒分量推定対象骨材を所定の粒度範囲ごとに分級し、分級された各粒度範囲に含まれる骨材の一部を分取して超音波洗浄器にて洗浄し、洗浄廃水の濁度と各粒度範囲の頻度とを乗じた値の総和を算出するだけで、当該骨材の微粒分量を簡単に、短期間に、かつ正確に推定し得ることが判明した。
【0045】
一方で、微粒分量が3質量%を超える試料6及び7の骨材試料においては、濁度及び頻度を乗じた値の総和と微粒分量との間に相関がみられなかったが、これは分級の際に微粒子が篩い落ちてしまったためであると推察される。
【0046】
また、図2に示すように、粒径5mm以上10mm未満、10mm以上20mm未満及び20mm以上の各粒度範囲における洗浄廃水の濁度と微粒分量とは、高い相関関係を有することが確認された。
【0047】
このことから、上記3つの粒度範囲のうちのいずれか1つの粒度範囲に含まれる骨材の一部を骨材試料として分取して、当該骨材試料を超音波洗浄器にて洗浄し、洗浄廃水の濁度を測定するだけで、当該骨材の微粒分量を簡単に、短期間に、かつ正確に推定し得ることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の骨材の微粒分量推定方法は、かかる方法を実施する者の熟練度、技量等に左右されることなく正確に微粒分量の推定が可能であるため、骨材のロット管理の方法として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨材の微粒分量を推定する方法であって、
前記骨材のうちの所定の粒度範囲に含まれる骨材を水洗し、水洗後の水の濁度に基づいて、前記骨材の微粒分量を推定することを特徴とする骨材の微粒分量推定方法。
【請求項2】
前記骨材のうち、2以上の粒度範囲のそれぞれに含まれる骨材を水洗し、水洗後の各水の濁度に基づいて、前記骨材の微粒分量を推定することを特徴とする請求項1に記載の骨材の微粒分量推定方法。
【請求項3】
前記骨材における前記各粒度範囲の頻度と前記各粒度範囲に含まれる骨材の水洗後の各水の濁度とを乗じた値の総和に基づいて、前記骨材の微粒分量を推定することを特徴とする請求項2に記載の骨材の微粒分量推定方法。
【請求項4】
前記各粒度範囲において、前記骨材の水洗に使用する水量と、水洗処理に付される骨材量との比を一定にすることを特徴とする請求項2又は3に記載の骨材の微粒分量推定方法。
【請求項5】
超音波洗浄器を用いて前記骨材を水洗することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の骨材の微粒分量推定方法。

【図1】
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【図2】
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