説明

骨材粒子およびその製造方法

【課題】1900℃以上の溶解温度で鋳造される白色の電鋳耐火物にも適用可能な製品を着色させず、耐火温度が極めて高い骨材粒子を提供する。
【解決手段】化学成分としてAlおよびSiOを主成分とし、結晶相が基本的にコランダムであり、結晶相以外にSiOを主成分とした非晶質相を含む骨材粒子。ここで、AlおよびSiOを主成分とするとは、骨材粒子中にこれら成分を95%以上含むことをいい、それ以外の成分の含有量を低減させることで、耐熱性を向上させながら、Fe、TiO、ZrOの含有量が極端に少なくでき、白色の製品への着色を抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、AlおよびSiOを主成分としたセラミックス粒子からなる耐火性の骨材粒子およびその製造方法に係り、特に、耐火温度が極めて高い鋳型用に好適な骨材粒子およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋳物は一般的に金属類の溶融物を鋳型に流し込み製造され、その鋳造温度は750〜1650℃である。一方で、金属酸化物の溶融物を鋳型に流し込んで製造される電鋳耐火物が硝子窯用の炉材などとして販売されており、その鋳造温度は1700〜2500℃である。したがって、電鋳耐火物用の鋳型には耐熱性などが厳しく要求される。以下では、主に電鋳耐火物用の鋳型について説明する。鋳型には耐火粒子が用いられるが、耐火粒子は大別して天然砂と人工骨材がある。
【0003】
しかし、電鋳耐火物等で熔解温度が1850℃を超える場合には、耐火粒子では耐火度が不足して使用できないため、さらに耐熱温度の高い黒鉛板材料などが鋳型に用いられることがある。鋳造物と接する肌砂は、バインダー(フラン樹脂、アルカリフェノール樹脂等、水硝子、リン酸等)により結合されて溶湯の流れ込む空間を形成する。本明細書では、以下、肌砂を鋳型用骨材粒子という。ただし、鋳型用骨材粒子を裏砂としても使用することを排除するものではない。
【0004】
溶湯温度が高温であることから、鋳型用骨材粒子には充分な耐熱性が求められる。耐熱性が低いと、高温で鋳型用骨材粒子同士が焼結して強固に結合するため、鋳造物を鋳型内から取り出しにくくなる他、元の粒子サイズにまで簡単に戻すことができず、鋳型用骨材粒子の再利用も困難となる。
【0005】
耐熱性以外には、鋳型用骨材粒子の熱膨張率が小さいほど鋳造物の精度が良く、また、鋳型用骨材粒子の熱伝導率が高いほど鋳造物を充分に冷却できる。鋳型用骨材粒子自体が簡単に破壊されると、再利用が困難になるので、鋳型用骨材粒子が破壊されないことも重要である。
【0006】
さらに、鋳型用骨材粒子の濡れ性がわるいと、バインダー(例えば、フラン樹脂、アルカリフェノール樹脂)使用量を低減でき製造コストの低減に有効である。特に、フラン樹脂は、アルカリフェノール樹脂に比べて粘性が低く、鋳型用骨材粒子表面が平滑でない場合には、添加量を多くしないと、充分なバインダー強度が発揮できず、却って鋳型全体としては製造コストが高くなってしまう。
【0007】
一般的な鋳型用骨材としては、シリカ砂が肌砂として広く使用されていた。しかしシリカ砂は、熱膨張が大きく、鋳物の精度が悪いほか、熱により結晶構造が変化して容易に破壊され、1回使用しただけで5〜10%程度が廃棄物となる問題があった。一方、シリカ砂の代替として、熱膨張が小さく、冷却能力の高いジルコンサンドや、クロマイト砂がある。しかし、需要が増大し、価格の高騰、供給不足の問題以外に、クロマイト砂ではCrを含むことから廃棄には環境面からの強い規制もある。
【0008】
特許文献1では、合成ムライトを球状顆粒とし、約1600℃で焼成した骨材粒子が提案されている。この骨材粒子は、アルカリフェノール樹脂で比較的強度の高い安定した鋳型を製作できるものの、耐熱性が不充分で再利用しにくいほか、焼成で製造されるため、骨材粒子の表面が平滑でなく、粘性の低いフラン樹脂では充分なバインダー強度が得られにくいという問題もある。
【0009】
特許文献2には、溶融物から粒子化した、電融合成ムライト砂が提案されている。この場合には、SiO含有量が20質量%以上と高いため溶解、細粒化時には繊維状になりやすく、骨材粒子の製造歩留が低下する問題がある。また、Fe、CaO、MgO、KO、TiO等が多いと、耐熱性が不充分で、骨材粒子同士が焼結しやすくなり、再利用しにくい、という問題もある。
【0010】
特許文献3には、SiO含有量をムライト組成より低減しコランダム結晶相を主要結晶相としたAl−SiO系砂が提案されている。しかしながら、この骨材粒子には、Feなどの遷移金属類、アルカリ成分等が酸化物で10質量%程度含まれて、耐熱性が低く、再利用が困難であるという問題もある。
【0011】
さらに、特許文献4には、水溶性中子用鋳物砂として、上記以外に、ジルコン砂、オリビン砂なども記載されている。ジルコンは、約1500℃付近から分解し始め、鋳造中にシリカと鋳造物とで反応が生じたりするため、再利用が難しいという問題がある。オリビン砂なども同様にして耐熱性が充分ではない。
【0012】
耐熱性のある材料としてはジルコニア系材料があり、特許文献5にはガラス相を含まないジルコニア系骨材粒子が提案されている。しかし、この骨材粒子は、ガラス相を含まず相転移に伴う体積変化で粒子自身が崩壊するため、使用目的である鋳型からの鋳造物の取り出し性は向上するものの、再利用はできない。
【0013】
さらに、特許文献6には、アルミナとジルコニアを主成分とした高耐火度の電融鋳物ビーズが提案されているが、1900℃を超えるアルミナ系電鋳耐火物の鋳型骨材としてはやはり耐熱性が足らず、またジルコニアが含まれているため、白色のアルミナ系電鋳煉瓦を着色する問題があり適用できなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特公平3−47943号公報
【特許文献2】特開2003−251434号公報
【特許文献3】特開2005−193267号公報
【特許文献4】特開2004−174598号公報
【特許文献5】特開平6−15404号公報
【特許文献6】特開2010−260782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
そこで、本発明は、上記した問題を解決すべくなされたものであり、1900℃以上の溶解温度で鋳造される電鋳耐火物にも適用可能な、耐火温度が極めて高い鋳型用に特に好適な骨材粒子の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の骨材粒子は、化学成分としてAlおよびSiOを主成分とした骨材粒子であって、該骨材粒子の結晶相が基本的にコランダムであり、結晶相以外にSiOを主成分とした非晶質相を含むことを特徴とする。
【0017】
このとき、質量%で、上記Alを90〜99%、SiOを1〜9%を含み、両成分の合量が96%以上であることが好ましい。また、白色製品への着色を防止する観点からはFe、TiO、ZrOの含有量が極端に少ないものとすることが好ましい。
【0018】
また、本発明の骨材粒子の製造方法は、アルミナ質原料及びシリカ質原料を混合した骨材用原料を溶融し、該溶融物を粒子化して、上記本発明の骨材粒子とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の骨材粒子は、耐火度が極めて高いため、金属等の一般的な鋳型に好適であることは勿論のこと、溶融温度が1900℃を超えるアルミナ系電鋳耐火物の鋳型骨材として特に好適である。この骨材粒子は、耐熱性が高く、使用環境下で実質的に焼結することがないため鋳型用、特に電鋳耐火物の製造に使用される鋳型用の、骨材粒子として好適であって、鋳型に用いた場合には、注湯・冷却後にバインダーによるバインダー力を失って容易にバラバラになり元の骨材粒子に戻るため、鋳型からの鋳造物の取出しが極めて容易である。したがって、本骨材粒子によれば、元の骨材粒子の回収、再利用を簡便かつ効率的にでき、廃棄物を著しく低減できる。また、本骨材粒子は、耐火度・耐熱性が高いことから、耐火物の原料骨材や耐火物の保護材料、敷き砂にも好適である。また、それ以外のブラスト材などの粉砕メディアやフィルターのメディアとしても好適である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の骨材粒子の顕微鏡写真である。
【図2】市販の焼結法ムライト系骨材粒子の顕微鏡写真である。
【図3】市販の電融法ムライト系骨材粒子の顕微鏡写真である。
【図4】溶融法による骨材粒子の製造方法の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の骨材粒子は、化学成分としてAlおよびSiOを主成分とした骨材粒子であって、結晶相がコランダムであり、結晶相以外に非晶質相を含んでいる。ここで、骨材粒子中の化学成分における「主成分」とは骨材粒子中に上記2成分が合量で95質量%以上含んでいることをいう(以下、本明細書において、質量%を単に%と略して示す)。すなわち、本発明の骨材粒子は、AlおよびSiOの両成分の合量が95質量%以上である。
【0022】
本発明の骨材粒子におけるAlは、骨材粒子中に90〜99%、SiOを1〜9%含み、両成分の合量が96%以上であると、上記したように極めて耐火度の高い骨材粒子となり、鋳型用の骨材粒子として好適であり、その合量が96.5%以上であると好ましく、97%以上であるとより好ましい。
【0023】
本骨材粒子において、Al含有量が90%未満であると、耐熱性が不充分となるおそれがあり好ましくない。本骨材粒子においてAl含有量が95%以上であると耐熱性の点で好ましく、Al含有量が97%以上であると特に好ましい。
【0024】
一方、本骨材粒子において、Al含有量が99%を超えると、その分、SiOを含有する効果がなくなるおそれがあり好ましくない。すなわち、SiO含有量が1%未満であると、組織を構成している非晶質相の量が減少し骨材粒子の強度が低下するおそれがあり好ましくない。
【0025】
本骨材粒子において、ZrOは煉瓦に着色を生じさせるものであり、用途によっては好ましいものではない。そのため、骨材粒子中にZrO含有量が1%以下であると、アルミナ系電鋳煉瓦に黄色い着色が少なくなるため好ましく、0.3%以下であると特に好ましい。
【0026】
本発明の骨材粒子は、結晶相としては、基本的にアルミナからなるコランダムであって、実質的にムライト結晶(アルミナシリケート化合物)を含まないことが好ましい。ムライト結晶を含まないと、充分な耐熱性および熱伝導性が得られるため、1900℃を超える電鋳煉瓦の鋳型骨材としても使用が可能となる。
【0027】
本明細書において、結晶相が基本的にコランダムである(実質的にムライト結晶を含まない)とは、X線回折測定により、明瞭なムライト結晶のピークが観察されないか、仮にピークが観察されたとしても主ピークの強度を100としたときの相対強度が5以下であることを意味する。
【0028】
また、本骨材粒子は、コランダム結晶相以外に非晶質相を含む。非晶質相の存在は、X線回折装置により、非晶質特有なブロードな反射が見られることにより確認される。また、組織的にはSiOを1〜9%含有しているにもかかわらず、SiOを含む結晶鉱物が確認されないことによってもSiOが非晶質相として存在していることが推測される。
【0029】
この非晶質相は高温における温度変動によるコランダムの熱膨張を伴う体積変化を吸収する役目を負っている。この非晶質相の量は、多いほど繰り返しの熱履歴を受けても粒子が亀裂で破壊せず、鋳型の肌砂として安定的に繰り返し利用するのには有利であるが、多すぎると今度は耐火度が低下してしまい目的の耐火骨材として使用できなくなるか、または、望ましくないムライト結晶相が生成されてしまう。
【0030】
1900℃を超える電鋳耐火物などにも適用するためには、本骨材粒子中の非晶質相比率は10%以下であることが必要であり、理想的には5%以下、さらには3%以下が望ましい。3%まで非晶質相が減少してくると、使用後の粒子に亀裂が入ることがあるが、目的の耐火度を得る場合にはやむを得ない場合もあり、再利用性を犠牲にすることもあり得る。
【0031】
再利用性維持のためには、本骨材粒子中、非晶質相が3%以上であると好ましく5%以上がさらに好ましい。なお、本明細書において非晶質相の総量および化学組成は、鉱物としてコランダム単独、又は、コランダムおよびバデライトのみが観察される組成系においては、粒子全体の化学組成から、Al分、又は、Al分およびZrO分を除き、残りが全て非晶質相になるものとして算出する。なお、ムライトが観察される場合、および大部分が非晶質相の場合には、この方法では非晶質量は特定できない。
【0032】
本発明の骨材粒子は、(R1)O(式中、R1はアルカリ金属元素を表わす)および(R2)O(式中、R2はアルカリ土類金属元素を表わす)を含んでいてもよく、このとき、これら合量とSiO成分との質量比(〔(R1)O+(R2)O〕/SiO)が5〜80(%)であると非晶質相の特性が安定し、さらに耐熱性を確保できるため好ましく、10〜60(%)であるとより好ましい。なお、上記R1としては、Na、KおよびLiが、R2としては、Ca、Mg、SrおよびBaが、それぞれ挙げられる。
【0033】
本骨材粒子において、TiOおよびFe成分はアルミナ系電鋳煉瓦に着色を生じさせる成分である。これらの成分は、骨材粒子中にできるだけ含まない方がよく、TiO成分とFe成分の合量(TiO+Fe;以下、TF合量と略す)が0〜0.5%であると、TiO成分およびFe成分が、SiO成分およびAl成分との間で低融点の化合物をほとんど生成せず、骨材粒子の耐熱性の低下および、使用時の骨材粒子同士の焼結などの問題点が発生しないため好ましい。本骨材粒子において、TF合量が0.3%以下であるとより好ましく、TF合量が0.1%以下であるとさらに好ましい。
【0034】
本発明の骨材粒子において、着色成分となるFe、TiO、ZrOの含有量を極端に少なくすると、白色であるアルミナ系電鋳煉瓦用の鋳型に用いた場合、煉瓦への着色、汚染を効果的に抑制できる。
【0035】
本骨材粒子において、遷移金属元素の酸化物は、煉瓦に着色を生じさせる成分であり、これら全ての遷移金属元素の酸化物の含有量の合量(TiO成分およびFe成分を含む)が1.0%以下であるとさらに好ましく、全ての遷移金属酸化物の含有量の合量(TiO成分およびFe成分を含む)が0.5%以下であると特に好ましい。TiO、Fe以外の遷移金属元素の酸化物としては、MnO、Co、NiO、CuO、ZnOが具体的なものとして挙げられる。
【0036】
本骨材粒子の粒子直径(以下、粒径という)は、2000μm以下であると、鋳型を構成した時に溶湯と接する鋳型表面が滑らかになり、鋳物の表面精度を高めるので好ましく、本骨材粒子の粒径が、1200μm以下であるとさらに好ましい。本骨材粒子の70%以上が、粒径60〜1200μmであると流動性も良好となる点で好ましく、本骨材粒子の95%以上が粒径60〜1200μmであるとより好ましく、95%以上が60〜850μmであると特に好ましい。
【0037】
なお、本明細書では、粒径とはJISフルイの目開きでいうものとする。例えば、JISフルイで振り分けして、粒子が通過するものの内、最小の目開きを粒径とする。
【0038】
本骨材粒子の熱膨張率を直接測定することは困難であるので、骨材粒子を有機バインダー(フラン樹脂)を使用してブロック形状(直径3.175mm×高さ50mm)とし、所定の熱処理条件(窒素ガス雰囲気下、1150℃×180秒保持)後の寸法変化率で代替する。骨材粒子の熱膨張率が小さいほど寸法変化率が小さい。上記寸法変化率は0.7%以下が好ましく、0.5%以下であるとさらに好ましい。なお、熱膨張率が大きいといわれるケイ砂は、寸法変化率が1.5%程度である。
【0039】
振動を与えず容器に充填した本骨材粒子の熱伝導率(常温)は、0.4〜1.2W/(m・K)であると鋳造後の溶湯を充分に冷却でき、しかも冷却時にボイドが発生しにくいため好ましい。本骨材粒子の熱伝導率(常温)が、0.8〜1.2W/(m・K)であるとさらに好ましい。本骨材粒子の耐熱性としては、1900℃付近でも使用できるように、耐火度(SK)が39以上が好ましく、40以上であるとより好ましい。
【0040】
本骨材粒子の嵩比重は、1.8〜2.2であると、本骨材粒子を肌砂として使用し裏砂にシリカ砂(嵩比重1.5)を使用した場合に、肌砂と裏砂との分離が容易で、再利用する場合に、肌砂と裏砂との区別を大雑把にして作業を進めても、作業終了後での分離が容易であるため作業性が向上し、生産性に優れる点で好ましい。本骨材粒子の嵩比重が、1.9〜2.2であるとさらに好ましい。
【0041】
本発明の骨材粒子の製造方法(以下、本製造方法という)としては、特に、制限されないが、アルミナ質原料及びシリカ質原料を混合して、化学成分が上記含有量となるように調合された原料をアーク電気炉などで溶解し出湯時に高速のエアー等で細粒化する方法(以下、単に溶融法と略す)や調整された原料を噴霧粒子化し、焼結する方法(以下、単に焼結法と略す)などが具体的な製造方法として挙げられる。中でも、溶融法は製造コストの面で有利であるため好ましい。
【0042】
また、溶融法で製造された本骨材粒子は、粒子表面に凹凸がほとんどなく、平滑であるため、低粘性のフラン樹脂でも少量添加することで充分なバインダー強度を発現させることができ、鋳型全体の製造コストの面でも有利である。溶融法で製造した本骨材粒子の顕微鏡写真の一例を図1に示す。また、比較のため、市販の焼結法で製造された合成ムライト粒子および溶融法で製造された合成ムライト粒子の顕微鏡写真の例を図2、図3に示す。どの人工骨材粒子も球形をしているが、溶融法で製造された粒子の特徴として本骨材粒子(図1)および合成ムライト粒子(図3)の粒子の表面が平滑であることが見て取れる。
【0043】
本製造方法として溶融法を採用する場合、調整済みの原料を溶解する溶融炉の形式としては、特に制限されないが、バーナー、電気抵抗、アーク、コークス等の加熱形式によるものが挙げられる。特に、アーク形式では、比較的容易に高温が得られ、溶融物の均質性も高く、しかも炉の設備が簡単で操作性に優れるなどの利点があるため好ましい。
【0044】
このような、溶融炉内の内張耐火物としては、特に、制限されるものではないが、本骨材粒子の組成に近い組成を有する耐火物が望ましく、本骨材粒子の不純物レベルより低い不純物を含有する耐火物でも良い。たとえばアルミナを95%以上含有するアルミナ系電鋳煉瓦が不純物レベルを増大しないため好ましい。
【0045】
本製造方法として溶融法を採用する場合、原料を溶融炉内で溶融する際の運転条件としては、一般的に電源として500kVA〜5000kVAのトランスを用いて溶融する場合、アーク時の電圧を80〜300(V)、電流で500〜12000(A)とするのが、電極と溶融物の距離を適正に保ち、電気炉内の耐火物を適切に保全し、安定溶解を実現するため好ましい。最終的な溶融温度としては、1950〜2100(℃)とするのが好ましい。
【0046】
本製造方法として溶融法を採用する場合、調整された原料は溶解された後、当該溶融物を溶融炉の外壁に取り付けた出湯口から出湯する。出湯する際には、溶融炉を傾動させると、出湯が容易になり好ましい。溶融物は出湯口から流れ出し、100mm程度落下した後、後方から圧縮空気を吹付けて細粒化する。細粒化する際に表面積が増大し空気に触れることで急冷され、鋳型用として良好な骨材粒子となる。
【0047】
この溶融法による骨材粒子製造の概念的な様子を図4に示す。図4中、1は溶融炉本体、2は溶融するための電極、3は溶融物、をそれぞれ示す。溶融電極2は図示しないが制御系統を通して電源に接続される。溶融物3は、排出口4より排出されるが、排出口4の後方に設置されたノズル5から圧縮空気または圧縮空気と水を吹付けることにより、粒子7となって浮遊し、捕集箱8で回収される。
【0048】
上記の場合、圧縮空気の圧力としては、1MPa以上の圧で吹き飛ばすのが好ましい。圧縮空気の圧力が2MPa以上であると、さらに好ましく、圧縮空気の圧力が3MPa以上であると特に好ましい。一方、圧縮空気の圧力が7MPaを超えると、通常の設備は対応できないため、圧縮空気の圧力を7MPa未満とするのが好ましい。
【0049】
圧縮空気の流速が、100m/秒以上であると70%以上の粒子が1.2mm以下となり、鋳型用骨材として適当な粒子径となるため好ましい。前記流速が130m/秒以上であるとさらに好ましい。なお本明細書において、圧縮空気の流速は溶融炉から出湯された溶融物と接触する位置における値をいうものとし、流速は一般に販売されている熱線式流速計で測定するものとする。
【0050】
圧縮空気と共に一定量の水をノズルに同時に流し込むことによって、高圧水を作り、圧縮エアーと同時に吹付けると、細粒化と同時に粒子の温度を低下し、その後の取り扱いを容易にするため好ましい。充分に粒子を冷却するために、冷却水量は1L/分以上が好ましく、2L/分以上が更に好ましい。また水量は多すぎると鋳型用骨材を濡らしてしまいその後乾燥工程が必要となるので好ましくなく4L/分以下が好ましい。
【実施例】
【0051】
以下に、本発明を実施例(例10〜22)および比較例(例1〜9)によって具体的に説明するが、本発明はこれらの記載によってなんら限定されるものではない。
【0052】
例1〜例3として、市販されているムライト系人工骨材を示した。例4〜22としては、表1の組成となるように原料を所定の化学成分に混合し溶融炉において溶解した。Al原料としては99.3%以上の純度のバイヤーアルミナ、SiO原料としては99%以上の純度のシリカ砂、ZrO原料としては99%以上の純度の電融ジルコニア原料を用いた。
【0053】
溶融炉は、炉内直径1.5m、高さ1.5m、炉内容積2.5mのアーク式溶融炉を使用し、電源としては1100KVAのトランスを準備した。なお、溶融炉の内張耐火物はアルミナ含有量95%の電鋳耐火物を使用した。電極には直径15cmの電極を三本使用した。
【0054】
溶融条件は電圧100V−250V、電力800KW〜1000KWで、1回の投入量600kgを三回に分割して10分〜15分間隔として炉内に分割して投入した。全体の原料投入時間は30分〜45分であった。溶解時間は80分から100分であった。
【0055】
次に、圧力4MPaの圧縮空気に2L/分の水を加えノズルから吹き出した。図4に示した如く、出湯された溶融物の下方から高速の圧縮エアーを湯に吹き付けて粒子化した。粒子は耐火物で保護された金属製の捕集容器にて回収し、骨材粒子とした。このときの圧縮空気の流速は100m/秒〜150m/秒であった。骨材粒子の粒度は85%以上が、0.1mm〜1.2mmの範囲であった。
【0056】
得られた骨材粒子の化学組成および特性を表1に示す。それぞれ表中でROとはNaO,KOのアルカリ金属酸化物、ROとはCaO、MgO、SrO等のアルカリ土類金属酸化物、T+FとはTiO、Feの合量を示す。化学成分は蛍光X線装置(リガク社製、商品名:RIX−2000)を用いて測定した。
【0057】
【表1】

【0058】
[評価1]
各骨材粒子の結晶相をX線回折装置(リガク社製、商品名:RINT−2200VK)で特定した。表中では観察された鉱物を以下の符号で表現した。
M:ムライト、C:コランダム、B:バデライト。
【0059】
例1,2,3は上記のとおり市販されているムライト系人工骨材であり、例1では鉱物組成はムライトのみが観察され、例2ではコランダムおよび少量のムライトおよびガラス相、例3では僅かにムライトが観察されたのみで、殆どがガラスを示すブロードな回折が観察された。また例4〜6ではコランダムとバデライトが観察され、例7〜22ではコランダムが殆どであるが、一部ではジルコニア含有量に比例し、僅かなバデライトが観察された。なお、例4〜22では、ムライト相が観察されず、また、大部分が非晶質相でもなかったので、前述した算出法により非晶質相を算出した。
【0060】
例10〜例17の骨材粒子については、樹脂に埋め込んで鏡面研磨して、断面を金属顕微鏡で組織観察した。その結果、目視ではコランダム相のみが観察され、非晶質相は明確に確認できなかった。
【0061】
骨材粒子の耐熱性をJIS R2204にもとづき耐火度として評価した。たとえば表中、36とは1790℃でゼーゲルコーン倒壊したことを示し、40とは1920℃でもゼーゲルコーンが倒れず1920℃以上の耐火度であること示す。例4,5,6よりこの組成系範囲においてZrO含有量の増加とともに、徐々に耐火度(耐熱性)が減少することが分かる。
【0062】
[評価2]
また上記例1〜22の各骨材粒子に7%のリン酸アルミを添加し、成型し、一晩放置した後に300℃で2時間乾燥し鋳型として十分な強度を発現させた。この板を組み合わせ箱状の鋳型を構成し、アルミナ質電融耐火物を鋳造して各耐火骨材の鋳型としての性能を確認した。鋳込まれた電鋳耐火物の大きさは200×230×230mmである。このアルミナ質電鋳煉瓦とはアルミナ含有量95%であり、溶解温度は約2000℃、表面色調は純白である。表中で例1〜9は比較例、例10〜22は実施例である。
【0063】
鋳型骨材の評価としては、鋳込み製品を冷却し取出し時の鋳込み外観の状況から判定した。その結果を表2に示した。判定項目は、鋳型の焼付き状況、表面着色状況、製品形状安定性とし、その基準は各々以下に示したとおりとした。また表面色度は色彩色度計(CONIKA MINOLTA製、商品名:CR−310)を用いて測定した。Cとは彩度であり数値が小さいほど色味が少ないことを表し、Lとは明度であり数値が大きいほど明るい色味であることを表している。
【0064】
次に、例8、11、14及び20のサンプルについて常温(20℃)、500℃、1000℃の熱伝導率(W/(m・K))を測定した。熱伝導率の測定に用いた粒子は、0.1mm〜1.0mmの粒径を有するもので篩により分級したものを使用した。熱伝導率の測定には高温熱伝導率自動測定装置(スペインラボ社製、商品名:HWM−15)を用いた。
その結果、例8、11、14及び20の骨材の熱伝導率(常温)が、0.8〜1.2W/(m・K)であることを確認した。
【0065】
嵩比重は、体積既知の容器に0.1〜1.0mm粒子を軽く三回タップし充填し、擦りきり後の質量を測定して算出した。粒子の粒径を揃えた理由は、変動要素を軽減するためである。その結果、シリカの多い例1〜例3では1.7g/cm前後、ジルコニアを含有した例4〜例6では2.1〜2.2g/cm、例7〜例22では1.9〜2.1g/cmの範囲であった。
【0066】
【表2】

【0067】
〔鋳型の焼付き評価基準〕:
×:鋳型は完全に焼結し、一部は溶解し崩れた。
△:多くの部位の鋳型が焼結し除去出来なかった。
○:僅か一部の鋳型が焼結し除去出来なかった。
◎:全ての鋳型が容易に除去出来た。
【0068】
〔表面着色評価基準〕:
×:色を評価出来なかった。
△:目視で茶色、黒、赤などの色が観察された。色度計で測定出来なかった。
○:目視でグレーもしくはクリーム色が観察され色度はC=3〜10 L=85〜90の範囲であった。
◎:目視で白く、C=1〜6 L=88〜94の範囲。
【0069】
〔製品形状安定性評価基準〕:
×:形が崩れ、目的の形状を得られなかった。
△:形はほぼ目的の形状だが激しい変形が見られた。
○:形は目的の形状であったが僅かに凹凸の変形が見られた。
◎:形は完全に目的の形状であった。
【0070】
以上のとおり、本発明の骨材粒子は、耐熱性が高く、使用環境下で実質的に焼結しない。したがって、たとえば鋳物用の鋳型骨材粒子としてバインダーにより鋳型を構成しても、注湯・冷却後にバインダー力を失して簡単にバラバラになり元の骨材粒子に戻るため、鋳型から鋳造物を容易に取り出せる。使用後に、鋳型から元の骨材粒子として簡単に回収できるため、再利用が非常に効率的にでき、鋳型からの廃棄物を著しく低減できる。
【0071】
また、本骨材の耐火度は極めて高く、1900℃を超えるアルミナ系電鋳煉瓦の鋳型骨材としても使用可能である。このとき不純物である、Fe、TiOの含有量が極端に少ない場合には、白色のアルミナ系電鋳煉瓦を着色、汚染することがない。
【0072】
本骨材粒子は、熱膨張率も小さいため鋳造物の寸法精度がよく精密鋳造に適するほか、鋳造物を充分に冷却できるだけの熱伝導率がある。さらに、本骨材粒子は、再利用が可能で、廃棄物の削減ができる。また、粉塵の発生量を抑えることができ、鋳造の作業環境改善にも効果的である。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明により、寸法精度、冷却速度に優れ、鋳造品が取り出しやすい鋳型として好適な骨材粒子を提供できる。特に、溶解温度が1900℃を超え、要求される耐火度が極めて高い電鋳耐火物製造用鋳型に本骨材粒子を適用すると、他材料の鋳型で発生するような製造物である電鋳耐火物の着色がなく、高品質の電鋳耐火物が製造できる。また、本骨材粒子は、耐火度・耐熱性が高いことから、耐火物の原料骨材や耐火物の保護材料、敷き砂にも好適である。また、それ以外のブラスト材などの粉砕メディアやフィルターのメディアとしても好適である。
【符号の説明】
【0074】
1…溶融炉本体、2…溶融電極、3…溶融物、4…出湯口、5…ノズル、6…圧縮空気、7…粒子、8…捕集箱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学成分としてAlおよびSiOを主成分とした骨材粒子であって、質量%で、前記Alを90〜99%、SiOを1〜9%含み、該骨材粒子の結晶相が基本的にコランダムであり、結晶相以外にSiOを主成分とした非晶質相を含むことを特徴とする骨材粒子。
【請求項2】
前記AlおよびSiOの合量が96%以上である請求項1記載の骨材粒子。
【請求項3】
前記主成分に加え、(R1)O(式中、R1はアルカリ金属元素を表わす)および(R2)O(式中、R2はアルカリ土類金属元素を表わす)の少なくとも1種を含み、これらの合量とSiO成分との質量比〔((R1)O+(R2)O)/SiO〕が5〜80(%)である請求項1または2記載の骨材粒子。
【請求項4】
前記主成分に加え、TiOおよびFeの少なくとも1種を含み、その合量が質量%で0.02〜0.25%である、請求項1〜3のいずれか1項記載の骨材粒子。
【請求項5】
ZrO含有量が質量%で1.0%以下である請求項1〜4のいずれか1項記載の骨材粒子。
【請求項6】
前記骨材粒子が鋳型用である請求項1〜5のいずれか1項記載の骨材粒子。
【請求項7】
アルミナ質原料及びシリカ質原料を混合した骨材用原料を溶融し、該溶融物を粒子化して、請求項1〜6のいずれか1項に記載の骨材粒子とすることを特徴とする骨材粒子の製造方法。
【請求項8】
前記骨材用原料が、化学成分として質量%で、Alを90〜99%、SiOを1〜9%含んでいる請求項7記載の骨材粒子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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