説明

骨量発育の予測を作成し提示する装置構成を用いたトランスデューサ・ユニット、装置構成および方法

本発明は、身体に影響を与える加速度によって引き起こされた骨量の変化を測定し提示するとともに、運動の量と強度を表す方法および装置構成(10)に関する。本発明による装置構成は、トランスデューサ・ユニット(11)と、データ転送媒体(13)と、サーバ(14)およびそれに接続するデータベース(16)とを備える。さらに、本発明は、この装置構成内で使用するトランスデューサ・ユニット(11)と、この装置構成を使用して運動の強度、量および効果を測定し分析する方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運動するヒトの運動実行によって引き起こされる骨量発育の予測を決定し提示する方法に関する。本発明はまた、運動するヒトの運動実行によって引き起こされる骨量の変化を予測および提示するために使用されるトランスデューサ・ユニットにも関する。本発明はまた、本方法の実施においてトランスデューサ・ユニットに用いられるプログラム製品にも関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトが実行する身体運動の量と質は、そのヒトの現在および将来の健康状態に甚大な影響を及ぼすことが知られている。運動は、特に西欧先進工業国で深刻な国家的疾病である骨粗しょう症に効果があることが判明している。骨粗しょう症は主に高齢者層で発生する。健康的な生活によって骨粗しょう症を予防したいならば、幼少時代から骨粗しょう症に気を付けなければならない。骨粗しょう症は、骨組織内に含まれるミネラル物質が多量に失われた状態である。骨は、5年から7年の期間にその質量の20%も失われることがある。骨粗しょう症がかなり進行すると、それによって脆化した骨は、ほんの少しの緊張からでも破砕して骨折する可能性がある。特に骨折しやすい部分は、大腿骨上部と手根骨上部であり、それらはそのヒトが骨粗しょう症である場合、軽い転倒によってさえも骨折することがある。
【0003】
健康的な生活、良好な食生活および維持臓器にストレスを与える十分な運動により、骨を強化し骨粗しょう症を予防することが可能である。維持臓器へストレスを与える適切な運動により、骨量を約3〜5%増量することができる。この程度の骨量の発育でも、骨粗しょう症によって引き起こされる骨折を20〜30%予防することができる。研究によれば、加速や減速などの、維持臓器への十分高い影響、または、四肢/骨への十分強いねじりストレスが運動中に発生する場合、実行される運動は骨にとって有益である。(「ランセット」(The Lancet、第348巻1996年11月16日、1343−1347ページ)。そのような形態の運動は、例えば、種々のジャンプ、ステップ、ウォーキング、ランニング、階段上昇、および手作業を含む。骨量の減少を防止するためには、ヒトは自分がどの種の運動をどの程度やるべきかを知っていなければならないとともに、何年もその運動を定期的に行わなければならない。
【0004】
公開された出願WO99/07280号は、ヒトの骨の現況を調査できる方法および装置を開示している。この方法では、検査されるヒトは測定中、特定の周波数の振動にさらされる。こうして検査されるヒトの筋骨格組織は振動させられる。この公報によれば、この筋骨格組織の振動は、骨の状態、すなわち、そのヒトが骨粗しょう症をわずらっているか否かをも明らかにすることができる。しかし、この公開された出願による骨密度の測定は常に一度限りのことであって、骨量の現況を明らかにするのみであり、測定を基にしただけでは、骨量の将来の状態に関する結論を一切引き出すことができない。
【0005】
同出願人により公開された出願WO03/055389号は、そのヒトが行っている運動によって引き起こされる加速度ピークを測定し追跡調査することによって、そのヒトの骨格構造の発育状態を予測できる方法および装置を開示している。図1は、引用WO03/055389号によるその方法を利用した装置構成を示す。ヒト19の日常的行動における、維持臓器への影響を与える加速度は装置構成10によってモニタリングされる。そのため、ヒト19は、そのヒトが常に身に着けているベルトまたは対応する装身具に固定されたパーソナル・トランスデューサ・ユニット11を携帯する。
【0006】
図1による解決策では、トランスデューサ・ユニット11は、ヒトの維持臓器に影響を与える加速度を、主にその最高値に関して測定する。トランスデューサ・ユニット11は、使用者19の要求に従って分析アルゴリズムを用いて第1の分析手段によって測定データを処理し、これら第1の分析の結果をトランスデューサ・ユニット11のメモリに保存する。第1の分析の保存された結果は、トランスデューサ・ユニット11からデータ転送接続12aによって実際のデータ転送装置13へと転送されることができる。図1に示したデータ転送装置13は、セルラー網で動作するように構成されたモバイル端末装置である。
【0007】
分析情報は、装置構成から得られる測定結果のより詳細な第2の分析において特殊化されるサーバ(SRV)14へネットワークにより送信されるべく、データ転送接続12bによってデータ転送装置13からさらに一般データ転送網9へ送信されうる。分析に際し、サーバ14は利用可能になっている第2の分析手段を用いる。サーバ14は、特定群の人々に関する測定データの第2のより詳細な分析に関連して必要な情報を含むデータベース(DB)16への接続15を含んでいる。
【0008】
データベース16は、上述した基準に基づき、性別、年齢、身長、体重、疾患への遺伝的感受性および研究により有益であると判明している単位時間あたりの維持臓器に影響を与える力の回数と強度などの、適切なクラス別に配列した情報を含む。それに加えて、データベース16は、研究に基づいて周知であるエネルギー消費の表などの他の情報/因果関係、および骨量の変化と維持臓器に影響を与える力の回数及び強度との間の関係をも含む。データベース16は、種々の使用目的に適した分析アルゴリズムをも含み、それは例えばデータ転送網9を介してトランスデューサ・ユニット11へと転送されることができる。そのような分析アルゴリズムの一例は、引用WO03/055389号に提示されている骨量の発育を監視するために用いられる分析アルゴリズムである。この分析アルゴリズムの基盤として、骨量の発育に関する研究を利用することができ、それは例えば以下の刊行物に示されている。(「ランセット」(The Lancet)、1196、第348巻、1343−1347ページ、「ジャーナル・オブ・ボーン・アンド・ミネラル・リサーチ」(Journal of Bone and Mineral research)、199、第14巻、125〜128ページ、および刊行物「メディシン&サイエンス・イン・スポーツ&エクササイズ」(Medicine & Science in Sports & Exercise)、2000年、第32巻、1051〜1057ページ)。
【0009】
骨量発育アルゴリズムは、そのヒトの基礎データ、測定された加速度の絶対値およびそれらの一定測定期間中の回数を勘案する。測定期間は一日程度であることが好ましく、その期間の最後に、そのヒトに対して、骨量発育に関する運動目標に達したかどうかに関する予測がアルゴリズムを用いて算出される。
【0010】
比較研究として、踵骨または大腿骨上部から骨量の密度が全体的に測定された。この測定は、そのヒトの骨の状態に関する概況を呈する。繰返した測定により、ヒトの骨の発育の方向をモニタリングすることができ、運動または投薬に関する指針を与えることができる。公開された出願WO03/055389号の方法も、この考えを原点としている。しかし、これは、全面的にうまくいくわけではない簡素化である。ヒトの骨の異なる部位の骨密度は、運動の種類とその強度次第で様々に相違し得る。したがって、特定種類の運動とその強度が如何に骨の異なる部位に影響を与えるかに関して、従来技術に比べよりよい予測のできる方法および装置構成への需要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の1つの目的は、運動実行を測定する方法と、ヒトによって実行される運動が如何に骨の異なる部位の骨量発育に影響を与えるかに関する予測を提供できる装置構成とを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の目的は、日々の運動においてヒトの維持臓器への影響を与える加速度の大きさに関する情報を連続的に収集する装置構成によって達成される。測定された加速度の瞬間最高値、それらの形状および一定の期間におけるそれらの回数が、測定データから保存される。骨の特定部位の骨量の発育予測は、測定データを分析することにより得られる。
【0013】
運動するヒトが携帯する加速度データを測定するトランスデューサ・ユニットが、人体の維持臓器によって経験される加速度最高値を連続的に測定する、運動によって引き起こされる骨量発育を測定し提示する本発明による方法は、その方法が、
加速度の分類された最高値を正規母集団から測定された参照データと比較するステップと、
加速度測定値の分類された結果が参照データよりも高いか低いかを調べるステップと、
比較に基づき、骨量発育の予測を運動するヒトに提示するステップと、
を含むことを特徴とする。
【0014】
処理ユニットと少なくとも1つの加速度トランスデューサを備え、運動するヒトの運動実行によって引き起こされる骨量の変化を予測するために使用されるべく構成されている、本発明によるトランスデューサ・ユニットは、処理ユニットが、運動するヒトに関する加速度トランスデューサの分類された測定データを、正規母集団から測定された参照データと比較するように構成され、処理ユニットは、比較の結果から骨量発育の予測を作成し、その予測が、運動するヒトに提示されるように構成されていることを特徴とする。
【0015】
本発明によるコンピュータ・プログラム製品は、そのコンピュータ・プログラム製品が、
運動するヒトから加速度トランスデューサによって測定された加速度最高値を、加速度のクラス別に分類するコンピュータ・プログラム手段と、
分類された加速度最高値データを正規母集団から測定された参照データと比較するコンピュータ・プログラム手段と、
運動するヒトと参照データとの比較を、運動するヒトの分類された加速度測定の結果が、使用される参照データよりも高いか低いかに関して実行するコンピュータ・プログラム手段と、
実行された比較に基づき、骨量発育予測を作成するコンピュータ・プログラム手段と、
作成された予測を運動するヒトに提示するコンピュータ・プログラム手段と、
を含むことを特徴とする。
【0016】
本発明のいくつかの好適な実施形態は、従属項に提示する。
【0017】
本発明の基本概念は次の通りである。ヒトは、維持臓器に影響を与える日々の運動または訓練運動においてそのヒトによって経験される加速度を測定し、記録する軽量なトランスデューサ・ユニットを携帯する。この関係において、加速度は、動作のスピードの加速またはその減衰のいずれかを意味し、その場合しばしば後者は減速度とも呼ばれる。瞬間最高値、加速度ピークの形状および一定の期間におけるそれらの回数が、加速度から測定される。一定の期間において測定された加速度データに基づき、骨格構造の特定部位における骨量発育に関する予測が作成される。そのヒトが骨格構造の特定部位で骨量を増やしたいと思うならば、その所望部位の骨格構造を最もよく表すパラメータによって分析を実行することができる。必要に応じて、トランスデューサ・ユニットは作成した第1の分析の結果を提示することができる。加速度測定データは、少なくとも一時的にトランスデューサ・ユニットの電子部分に保存される。本発明の方法および装置構成は、個人的な目的に鑑みて正しい種類の運動を実行するようにそのヒトを導くことを意図したものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明には、運動中にヒトが経験し、維持臓器に影響を与える加速度の測定データから、骨格構造の特定部位の骨量発育予測を作成することが可能であるという利点がある。
【0019】
加えて、本発明には、ヒトがそう望めば、最新情報を利用可能とすることができ、それに基づいて骨格構造の特定部位を考慮して運動の量と強度をモニタリングし制御することができるという利点がある。
【0020】
本発明にはさらに、ヒトが異なる種類の運動実行の量を常時利用でき、それを追加の運動に関する個人的な推奨を作成する際に使用できるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明をより詳細に説明する。この説明では添付する図面を参照する。
【0022】
図1は、従来技術の説明と関連して説明される。
【0023】
図2は、本発明によるトランスデューサ・ユニット11の好適な実施形態を示す。トランスデューサ・ユニット11は、好ましくはバッテリーまたは蓄電池などのエネルギー源24を含む。トランスデューサ・ユニット11に含まれる電子素子は、その動作に必要なエネルギーをこのエネルギー源24から得る。トランスデューサ・ユニット11には少なくとも1つの加速度トランスデューサ21がある。必要に応じて1を超えるトランスデューサ21を用いることにより、加速度を2次元または3次元で測定することができる。単一加速度トランスデューサの測定範囲は有利には±12gである。
【0024】
トランスデューサ・ユニット11で測定される加速度は異なる方式で分析されることができる。いくつかの例示的で有利な方式を、図3の説明に関連して示す。骨量発育を予測する一つの可能な方式は、適切な期間内で特定の加速度レベルで測定された加速度最高値の観測の回数(N)を用いることである。測定に使用される加速度レベルのクラスの幅は有利には0.3g程度である。期間が比較的短く、数秒である場合、トランスデューサ・ユニット11によって作成される加速度測定データから、そのヒトがどの種の運動を行ったかも判明され得る。この情報を、運動が骨格構造の異なる部位に如何に骨量を発育させたかを予測する際にも利用することができる。この情報に基づき、そのヒトは追加の運動に関する適切な推奨を受けることができる。
【0025】
加速度トランスデューサ21の測定データは、種々のプログラム・アプリケーションおよび本発明により実行された加速度測定の結果を保存するために処理ユニット22によって使用されるある量のメモリをも有利には含むトランスデューサ・ユニット11の中央処理ユニット(CPU)に送信される。処理ユニット22は有利には、特定の訓練に適した、そのメモリに保存された第1の分析手段によって測定された加速度データの分析を実行する。
【0026】
処理ユニット22は、データ転送構成要素23にも接続されている。このデータ転送構成要素により、データ転送接続が、セルラー網接続12aの端末装置13へと構成されることができる。データ転送構成要素23は有利には少なくとも一つのデータ転送方法をサポートする。データ転送に用いられる有利な方法は、赤外線(IR)、ブルートゥース、WLANおよびセルラー網に用いられる種々の時分割または符号分割データ転送技法を含む。
【0027】
トランスデューサ・ユニット11は有利には、例えば使用時に特定的な第1の分析結果を提示するインジケータ手段25をも含む。インジケータ手段により、トランスデューサ・ユニット11の使用者に対し、例えばオン/オフ式の単純なメッセージとして、特定の期間を想定して、実行した運動が、設定した目標に達したかどうかを伝えることが可能になる。インジケータ手段25は例えば、異なる色のLEDであってよい。運動実行の設定目標に達した場合、特定色のLEDが点灯する。別法として、インジケータ手段25は、設定目標に対する運動実行の結果をその長さまたは伸ばし具合で表示する、棒形状の表示を含んでいてもよい。インジケータ手段25に示された情報は、使用時に特定的なものであっても、特定期間から累積したものでもよい。使用者は有利には、そのヒトの個人的な運動を最も良く支援するため、情報提示の方法を変更することができる。
【0028】
本発明によるトランスデューサ・ユニット11は、モニタリングされるヒトが携帯する、何か他の装置の一部であってもよい。本発明によるトランスデューサ・ユニット11が組み込まれるそのような装置の例は、セルラー網に用いられる端末装置(13)である。その場合、本発明の方法ステップを実行する少なくとも一つの加速度トランスデューサとプログラム・アプリケーションが端末装置(13)にインストールされて、本発明による動作を提供する。
【0029】
必要に応じて、例えばトランスデューサ11からそのデータベース16へと転送されたデータに基づき、後の所望の時間に、サーバ14で実際のより精細な分析を行ってもよい。サーバ14で実行される分析は、サーバ14に以前に保存されているそのヒトの運動を記述した履歴データも分析作成に用いられるが故に、そのヒトによって設定された目的を達成するためのより詳細な構図を提供する。
【0030】
表1およびそれに関連する図3a〜図3fは、研究により存在することが判明した、測定された加速度と、骨格構造の特定部位における骨量発育との相関関係を、グラフによって示す。統計的有意性の限度p<0.05(統計的に有意である)およびp<0.01(統計的に非常に有意である)も、図3a〜図3fに描かれている。
【0031】
表1は、女性80人(年齢35〜40歳)に実行された12ヶ月の追跡調査に基づくものである。対象グループの半分は強化運動に導かれ、残りの半分は参照グループとして動作した。表1は、0.3−1.7g、1.9−3.3g、3.6g−5.7gおよび6.1−9.3gの4つの異なる加速度範囲に分けている。さらに、加速度の各範囲は約0.3gの測定クラスへと分けられた。運動動作と骨量発育の間の関係が線形回帰分析により算出された。
【0032】
【表1】

【0033】
表1中の「ns」という用語は、相関関係が見出されなかったことを意味し、*印は、統計的に有意である相関関係(p<0.05)を意味し、**印は、統計的に非常に有意である相関関係(p<0.01)を意味する。
【0034】
図3a〜図3fは、異なる部位の骨格構造からの同じ研究の情報から作成された相関関係グラフの例を示す。グラフは、検査されるヒトによって経験された異なる加速度レベルに含まれる加速度ピークの回数(N)を、対照グループから測定された平均値へと配分することによって得られている。
【0035】
図3aは、異なるレベルの加速度で測定された加速度パルスの相対数に対する大腿骨頚から測定された骨密度の発育の相関関係を示す。図3bは、大腿骨の所謂ワード領域(Ward’s area)から測定された対応するグラフを示し、図3cは腰椎L1の対応する相関関係グラフを示す。図3dは、脛骨上部の皮質骨の量の対応するグラフを示す。図3eおよび図3fは、2つの異なる測定法によって測定された踵骨の対応するグラフを示す。図3eでは、踵骨での超音波の減衰が利用され、図3fの測定方法では、踵骨での超音波の速度が利用されている。
【0036】
図1および図3a〜図3fに基づき、2g未満の低加速度の範囲では、加速度測定と骨量の発育の間に明らかな相関関係は見出せないと概説することができる。踵骨と脛骨では比較的低い加速度値(2g未満)でも既に骨量が発育するのに対し、大腿骨上部および腰椎では、所望の方向への発育を達成するためには、明らかに高い加速度最高値(3−9g)が必要とされるようである。
【0037】
加速度レベルが低い(2g未満)と分類され得る加速度は、ヒトの通常の日常の運動で生じる。それ故、強化運動を実行するヒトは、高い加速度レベルの加速度が達成されたか否かに関する情報を主に必要としている。その場合、加速度範囲3〜9g内で発生する測定値に関する情報が主に必要とされる。この測定結果を母集団の平均測定結果と比較すると、測定を実行したヒトの骨量の発育に関する予測がこの比較から算出できる。
【0038】
参照母集団に対するヒトの運動の比較は、例えば以下の方式で実行できる。一つの可能性は、そのヒトの測定結果、加速度レベルのクラスごとの加速度パルス回数(N)を、同じ性別および年齢の人々の対応する測定結果と直接比較することである。この参照グループは、強化運動を実行しない。
【0039】
測定された加速度ピークは、その形状を基に分析されてもよい。その場合、予測に利用される因子は、単なるピーク回数(N)に加えて或いはその代わりに、加速度ピークの幅、加速度ピークの面積、加速度ピーク面積の自乗、加速度ピークの上昇時間、または加速度ピークの上昇角度を含む。これらのパラメータを用いることによって骨量予測の精度を上げることができる。
【0040】
骨量発育予測をする別の可能な方法は、好ましくは3−9gの範囲での測定結果から作成された加速度レベルグラフによって画定される面積を算出することである。このグラフでは、変数は加速度最高値クラス(x軸)および、特定の加速度最高値クラスの発生相対数(y軸)である。そして、このグラフから算出される面積が、対応する正規母集団の測定から得られた面積と比較される。運動するヒトのグラフから算出された面積が特定のしきい値(正規母集団の結果)を超えた場合、実行された運動は骨量に増量効果をもたらす。
【0041】
予測の第3の可能な方法は、特定の加速度レベルクラスの測定された加速度ピークの回数(N)を対数(log(N))へと変換することであり、その場合直線y=ax+bは加速度レベルクラスのグラフとして数学的に適合される。定数aおよびbは同じ年齢および性別の正規母集団の測定結果から得られた直線と比較される。正規母集団は強化運動を実行していない。モニタリングされるヒトの定数aおよびbが、正規母集団に基づいて算出された特定のしきい値を超えれば、そのヒトによって実行された運動は骨量発育に好影響を与えたことになる。
【0042】
図4は、本発明による方法に含まれる主要ステップを、例示的フローチャートとして示す。図1〜図3fに関して説明された事実も本記述に関連して利用されうる。この方法により、骨量の発育の設定目標が、そのヒトの運動によって達成されたか否かの提示を作成することができる。
【0043】
加速度に関する測定情報の収集はステップ41で開始する。原則として、この後測定は連続的に運行する。このことは、測定されているヒト19が、本発明によるトランスデューサ・ユニット11を装備しているため可能となる。ステップ42では、そのヒトが運動中、トランスデューサ・ユニット11がそのヒトによって経験される加速度、その絶対値、加速度パルスの形状、発生頻度および回数を連続的に収集する。
【0044】
ステップ43では、測定された加速度データが分類される。本発明による加速度データの分類は、全体の測定中または一定の時間後に実行されることができる。加速度最高値の加速度データの分類は、例えば、最高値から測定された加速度レベルに基づき実行されることができる。その場合有利には、クラスの間隔として0.3gが用いられる。特定の加速度範囲内に発生する加速度最高値の回数(N)は、この手順により発見され、次いで骨量発育の予測を作成するために用いられる。
【0045】
上述した分類に加えて、あるいはそれに代わって、測定された加速度ピークの幅、加速度ピークの面積、加速度ピーク面積の自乗、加速度ピークの上昇時間、または加速度ピークの上昇角度は、必要に応じてその分類に利用されうる。
【0046】
ステップ43では、その例を図3a〜図3fに関連して示した、分類された加速度データが、適切な分析アルゴリズムで処理される。実行された分析の結果はステップ44において、正規母集団を調査して得られた適切な参照データと比較される。比較の結果、運動が十分であったことがわかれば、そのヒトはその旨通知される。その通知は単純なオン/オフ式のものであっても、あるいは、通信装置によって音響、テキストまたは画像の形で送信されるメッセージとして与えられてもよい。
【0047】
ステップ45の比較が芳しくない結果を与えれば、そのヒトの運動動作は十分でなかったということを意味する。するとそのヒトはステップ48において、運動を増やすように助言される。この助言48は有利には、どの種の運動およびどの程度の量が必要かの例をも含む。特定の形式の運動が骨に対して異なる影響を与えることが知られているため、このことが可能となる。
【0048】
ステップ45での比較の結果に拘らず、加速度測定データの収集はステップ47で続行する。実際には、プロセスはステップ42に回帰する。ステップ45の繰り返しの度合いは、測定されているヒトによって個人的に決定されることができる。それは数時間ごと、毎日、毎週または毎月起こることであってよい。
【0049】
この時間は、そのヒトが携帯するトランスデューサ・ユニット11のメモリ22のサイズに基づいて決められてよい。トランスデューサ・ユニット11のメモリ22が満杯になりつつあるとき、比較45は最後に実施されるべきである。この後、比較45の結果は適切なデータ転送接続12a,12bを介して、サーバ14やそのデータベース16などの、より高いデータ処理能力を有する装置に転送されてよく、そこに、この手順により個人的な運動情報が集結される。この情報に基づき、そのヒトのより長期間の骨量発育に関する、新たな、より正確な予測を打ち立てることが出来る。
【0050】
より詳細には、測定データの第2の分析はこのようにサーバ14内で第2の分析手段により実行されることが好ましい。それらは個人データと、データベース16に保存された特定グループの人々に関する一般データの両方を利用する。個人データは、以前に保存された運動データすべての分析結果を含む。このより詳細な分析が、そのヒトが自らの目標に到達するために特定の追加の運動をすると有利であろうことを示せば、このことに関する推奨がそのヒトのために作成される。
【0051】
上述した本発明による方法ステップは有利には、2つの独立したプログラム・アプリケーションによって実行される。第1のプログラム・アプリケーションはトランスデューサ・ユニット(11)に保存され、第2のプログラム・アプリケーションはサーバ(14)に保存される。トランスデューサ・ユニット(11)に保存された第1のプログラム・アプリケーションは、独立して利用されてもよい。運動するヒトの長期モニタリングを実行したい場合、サーバ(14)内の別のプログラム・アプリケーションも必要となる。
【0052】
本発明のいくつかの好適な実施形態を上記に説明してきた。本発明は上述した解決策に限定されない。説明に提示された加速度データの測定の目的は、本発明による方法を適用できる目的の例に過ぎない。本発明の概念は、添付の請求の範囲に規定される範囲内で数々の方式で適用されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】従来技術の骨量測定に用いられる装置構成の要素を例として示す。
【図2】ヒトによって携帯される、本発明による装置構成のトランスデューサ・ユニットを例として示す。
【図3a】加速度の測定結果と、骨格構造の異なる部位での骨量発育との関係を示す。
【図3b】加速度の測定結果と、骨格構造の異なる部位での骨量発育との関係を示す。
【図3c】加速度の測定結果と、骨格構造の異なる部位での骨量発育との関係を示す。
【図3d】加速度の測定結果と、骨格構造の異なる部位での骨量発育との関係を示す。
【図3e】加速度の測定結果と、骨格構造の異なる部位での骨量発育との関係を示す。
【図3f】加速度の測定結果と、骨格構造の異なる部位での骨量発育との関係を示す。
【図4】本発明による装置構成を利用した、維持臓器に影響を与える加速度を測定し分析する方法を例示的なフローチャートとして示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨格構造の一部位に関する運動するヒト(19)の運動実行によって引き起こされる骨量発育の予測を測定し提示する方法であって、
運動するヒト(19)によって携帯される加速度データを測定するトランスデューサ・ユニット(11)が、前記運動するヒトの体の維持臓器によって経験される加速度最高値を連続的に測定するステップ(42)と、
特定の時期から前記トランスデューサ・ユニット(11)によって測定された前記加速度最高値が、一加速度レベルクラスに属するように分類されるステップ(43)と、
を含む方法において、
前記骨格構造の一部位に関する予測を作成するために、前記方法はさらに、
前記分類された加速度最高値が、正規母集団から測定された参照データと比較されるステップ(44)と、
前記運動するヒト(19)の前記分類された加速度測定結果が、前記参照データよりも高いか低いかについて調査されるステップ(45)と、
前記比較に基づき、骨格構造の一部位に関する骨量発育予想値が、前記運動するヒト(19)に提示されるステップ(46,48)と、
をも含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
加速度最高値の測定範囲は+0.3gから+12gの間であり、そこに属する一加速度レベルクラスの幅は0.3g程度であり、各測定された加速度最高値は、それ自身のレベルクラスの発生回数(N)を1つ増やすことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
加速度レベルクラスに含まれる加速度最高値の発生回数(N)が、正規母集団から測定された対応する発生回数と比較され、前記運動するヒト(19)の骨格構造の一部位の骨量発育に関する予測が、前記比較の結果から算出されることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項4】
選択された加速度レベルクラスに含まれる発生回数(N)が、正規母集団から測定された対応する発生回数と比較され、前記運動するヒト(19)の骨格構造の一部位の骨量発育に関する予測が、前記比較の結果から算出されることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項5】
集計された発生回数(N)から、加速度クラスを引数とし、加速度レベルクラスの相対発生回数を関数としたグラフが形成され、前記関数のグラフによって規定される2つの加速度レベルの間の面積が求められ、前記求められた面積が、正規母集団の測定から得られる対応する面積と比較され、前記比較の結果が、運動するヒト(19)の骨格構造の一部位の骨量発育に関する予測を作成するために使用されることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項6】
異なる加速度レベルクラスに属する集計された発生回数(N)から、加速度レベルクラスを引数とし、加速度レベルクラスの発生回数の対数(logN)を関数としたグラフが形成され、その対数関数は直線y=ax+bに適合され、その関数の定数aおよびbが、正規母集団の測定から得られる対応する直線の対応する定数aおよびbと比較され、運動するヒト(19)の骨格構造の一部位の骨量発育に関する予測がその比較の結果から作成されることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項7】
運動するヒト(19)の運動実行によって、骨格構造の一部位に引き起こされる骨量の変化を予測するにあたって使用するトランスデューサ・ユニット(11)であって、
連続動作として前記ヒトによって経験される加速度最高値を測定する少なくとも1つの加速度トランスデューサ(21)と、
前記加速度最高値を加速度レベルクラスに分類し、それに基づき分析を実行し、前記分析析の結果を保存する処理ユニット(22)およびそれに接続されたメモリと、
を備えたトランスデューサ・ユニットにおいて、
前記処理ユニット(22)は、前記分析において、運動するヒト(19)に関する加速度トランスデューサ(21)の分類された測定データを正規母集団から測定された参照データと比較するように構成され、前記処理ユニット(22)は、運動するヒト(19)に提示される骨格構造の一部位に関する骨量の発育に関する予測を前記比較の結果から作成するように構成されていることを特徴とするトランスデューサ・ユニット。
【請求項8】
加速度最高値の測定範囲は+0.3gから+12gの間であり、そこに属する一加速度レベルクラスの幅は0.3g程度であり、トランスデューサ・ユニットにより測定された各加速度最高値は、それ自身の加速度レベルクラスの発生回数(N)を1つ増やすように構成されていることを特徴とする請求項7記載のトランスデューサ・ユニット。
【請求項9】
加速度レベルクラスに含まれる加速度最高値の発生回数(N)が、正規母集団から測定された対応する発生回数と比較されるように構成され、前記運動するヒト(19)の骨格構造の一部位の骨量発育に関する予測が、前記比較の結果から算出されるように構成されていることを特徴とする請求項8記載のトランスデューサ・ユニット。
【請求項10】
選択された加速度レベルクラスに含まれる加速度最高値の発生回数(N)が、正規母集団から測定された対応する発生回数と比較されるように構成され、前記運動するヒト(19)の骨格構造の一部位の骨量発育に関する予測が、前記比較の結果から算出されるように構成されることを特徴とする請求項8記載のトランスデューサ・ユニット。
【請求項11】
集計された発生回数(N)から、加速度クラスを引数とし、加速度レベルクラスの発生回数(N)を関数としたグラフが形成されるように構成され、前記関数のグラフによって規定される2つの加速度レベルの間の面積が決定されるように構成され、前記決定された面積が、正規母集団の測定から得られる対応する面積と比較されるように構成され、運動するヒト(19)の骨格構造の一部位の骨量発育に関する予測が、前記比較の結果から算出されるように構成されることを特徴とする請求項8記載のトランスデューサ・ユニット。
【請求項12】
異なる加速度レベルクラスに属する集計された発生回数(N)から、加速度レベルクラスを引数とし、加速度レベルクラスの発生回数の対数(logN)を関数としたグラフが形成されるように構成され、前記対数関数が直線y=ax+bに適合されるように構成され、その関数の定数aおよびbが、正規母集団の測定から得られる対応する定数aおよびbと比較されるように構成され、運動するヒト(19)の骨格構造の一部位の骨量発育に関する予測がその予測の結果から算出されるように構成されることを特徴とする請求項8記載のトランスデューサ・ユニット。
【請求項13】
骨格構造の一部位の骨量発育に関する予測が、トランスデューサ・ユニットに属するインジケータ手段(25)によって、使用時に特定的な予測または累計予測として提示されるように構成されていることを特徴とする請求項7から12に記載のトランスデューサ・ユニット。
【請求項14】
前記インジケータ手段はオン・オフ型のインジケータを備え、そのオン状態は使用時に特定的な目標値に到達したことを示し、オフ状態は運動実行の目標値に到達していないことを示すことを特徴とする請求項13記載のトランスデューサ・ユニット。
【請求項15】
インジケータ(25)は2つのLEDで実施され、そのうち一つは点灯時にオン状態を示し、もう一方は点灯時にオフ状態を示すことを特徴とする請求項14記載のトランスデューサ・ユニット。
【請求項16】
運動実行につれ増大するように構成されたポインタ装置が、インジケータ手段(25)として使用されるように構成されていることを特徴とする請求項13記載のトランスデューサ・ユニット。
【請求項17】
トランスデューサ・ユニット(11)はセルラー電話網の端末装置(13)の一部であることを特徴とする請求項7記載のトランスデューサ・ユニット。
【請求項18】
骨格構造の一部位に関する骨量発育の予測を作成し提示するデータ転送媒体上のコンピュータ・プログラム製品であって、前記コンピュータ・プログラム製品が、
加速度トランスデューサ(21)により測定された運動するヒト(19)からの加速度最高値を、加速度レベルクラスに分類するコンピュータ・プログラム手段と、
前記分類された加速度最高値データを正規母集団から測定される参照データと比較するコンピュータ・プログラム手段と、
運動するヒトと参照データとの比較を、運動するヒトの分類された加速度測定の結果が、使用される参照データよりも高いか低いかに関して実行するコンピュータ・プログラム手段と、
前記比較に基づき、骨格構造の一部位の骨量発育に関する予測を作成するコンピュータ・プログラム手段と、
前記予測を前記運動するヒトに提示するコンピュータ・プログラム手段と、
を備えることを特徴とするコンピュータ・プログラム製品。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図3d】
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【図3e】
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【図3f】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−501389(P2008−501389A)
【公表日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−513985(P2007−513985)
【出願日】平成17年5月25日(2005.5.25)
【国際出願番号】PCT/FI2005/050175
【国際公開番号】WO2005/117703
【国際公開日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(504232000)
【Fターム(参考)】