説明

髄膜炎菌ワクチン処方物

Neisseria meningitidis血清群B(「Men−B」)に対するワクチンのための二成分処方物は、(i)水中油エマルションアジュバントと、(ii)凍結乾燥した形態のMen−B免疫原性成分とを含む。凍結乾燥したMen−B抗原は、患者に投与するために使用する時点において、液状のアジュバント化された形態に再構成することができる。この処方物により、安定性および免疫原性の両方に関して素晴らしい結果が得られることが見出された。凍結乾燥した成分はさらに、血清群A、C、W135、および/またはYのN.meningitidisに由来する1種以上の複合糖も含み得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、髄膜炎菌ワクチンを処方する分野にある。
【背景技術】
【0002】
Neisseria meningitidisの血清群B(「Men−B」)に対する様々なワクチンが現在研究されているが、それらは1つの共通する特徴を有している。
【0003】
Novartis社(MENZB(商標))、Finlay研究所(VA−MENGOC−BC(商標))、ノルウェー国立公衆衛生院(MENBVAC(商標))、およびオランダワクチン研究所(HEXAMEN(商標)およびNONAMEN(商標))によって製造された外膜小胞(OMV:outer membrane vesicle)製品はすべて、水酸化アルミニウムアジュバントを含む。参考文献1(非特許文献1)においてNovartis社によって報告された「universal vaccine for serogroup B meningococcus(血清群B髄膜炎菌のための万能ワクチン)」も、最近、参考文献2(非特許文献2)において報告された二価のOMVワクチンと同様に、水酸化アルミニウムアジュバントを含む。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Giulianiら、Proc Natl Acad Sci USA(2006)103(29):10834−9
【非特許文献2】Boutriauら、Clin Vaccin Immunol(2007)14:65〜73
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
Novartis社のMen−Bワクチンの開発において、本発明者らは、最適な免疫原性はアジュバントの存在を必要とすることを見出した。さらに彼らは、水酸化アルミニウムへの吸着が、ワクチン抗原に対して良好な保存安定性を提供することを見出した。しかしながら、アルミニウム塩の使用の必要性を避けるために、代替手段が求められている。
【0006】
Men−Bワクチンのための非アルミニウムアジュバントの使用は既に公知である。例えば、参考文献3では、Men−B小胞のためのアジュバントとしてMF59水中油エマルションの使用が報告されており、参考文献4では、アジュバントとして免疫賦活オリゴヌクレオチドおよび/またはMF59の使用について記載されている。MF59による免疫原性の結果は素晴らしく、継続した調査により、このアジュバントが、水酸化アルミニウムと比較してMen−Bワクチンの菌株対象範囲を広げることが明らかにされたが、さらに調べると、予期せず、水中油エマルションによってアジュバント化されたMen−B免疫原の長期安定性が乏しいことが示された。したがって、本発明の目的は、水中油エマルションアジュバントを使用した場合の、Men−Bワクチンの保存安定性を改善する方法を提供することにある。
【0007】
水中油エマルションによってこれまで経験してきたことは、インフルエンザワクチンの分野で起きていることである。FLUAD(商標)製品は、MF59エマルションを含み、1つの容器において予め混合された液体の形式で配布される(「1バイアルアプローチ」)。この予め混合された処方物は、Men−Bワクチンの安定性を乏しくすることが現在わかっている処方物である。
【0008】
水中油エマルションワクチンによる「1バイアル」処方物の代替手段として、インフルエンザ(例えば、参考文献5を参照のこと)、HSV(例えば、参考文献6)、およびHIV(例えば、参考文献7)に対して「2バイアル」アプローチが用いられており、これらにおける当該ワクチンおよびエマルションは、使用の時点で即座に混合するために、両方とも液体の形式で一緒に配布される。
【0009】
本発明に従って、(i)水中油エマルションアジュバントと、(ii)凍結乾燥した形態のMen−B免疫原性成分との二成分処方物を用いた、Men−Bワクチンのための異なるアプローチが行われる。凍結乾燥したMen−B抗原は、患者に投与するために使用する時点において、液状のアジュバント化された形態へと再構成することができる。この処方物は、安定性および免疫原性の両方に関して、素晴らしい結果が得られることが見出された。
【0010】
本発明者らはさらに、血清群A、C、W135、および/またはYにおけるN.meningitidis(Men−A、Men−C、Men−W135、およびMen−Y)に由来する複合糖の1種以上が含まれる場合に、凍結乾燥した成分が効力を維持し得ることを見出した。単一の凍結乾燥した成分を使用した、血清群Bを含む多数の髄膜炎菌性血清群に対して免疫するための抗原の組み合わせは、特に有利である。
【0011】
したがって、本発明は、(i)水中油エマルションを含むアジュバントを収容した第1の容器と、(ii)N.meningitidis血清群Bに対する免疫反応を惹起するための免疫原を含む凍結乾燥された抗原性組成物を収容した第2の容器とを含むキットを提供する。当該凍結乾燥した抗原性組成物は、さらに、N.meningitidis血清群A、C、W135、および/またはYの1つ以上に由来する複合化莢膜糖を含み得る。
【0012】
本発明はさらに、(i)水中油エマルションを含むアジュバントと、(ii)N.meningitidis血清群Bに対する免疫反応を惹起するための免疫原を含む凍結乾燥された抗原性組成物とを混合する工程を含む、免疫原性組成物を調製する方法も提供する。当該凍結乾燥した抗原性組成物は、さらに、N.meningitidis血清群A、C、W135、および/またはYの1つ以上に由来する複合化莢膜糖を含み得る。
【0013】
本発明はさらに、(i)N.meningitidis血清群Bに対する免疫反応を惹起するための免疫原と、(ii)N.meningitidis血清群A、C、W135、および/またはYの1つ以上に由来する複合化莢膜糖とを含む、凍結乾燥された抗原性組成物を提供する。この凍結乾燥された組成物は、水中油エマルションを含むアジュバントによる再構成のために好適であり、かつ本発明のキット構成要素としての使用に好適である。
【0014】
凍結乾燥された抗原性組成物
本発明は、Men−Bに対する免疫反応を惹起するための免疫原を含む凍結乾燥された抗原性組成物を使用する。それは、必要に応じて、Men−A、Men−C、Men−W135、および/またはMen−Yの1つ以上に由来する複合化莢膜糖を含んでいてもよい。
【0015】
Men−B免疫原は、Men−B細菌および/またはMen−B組み換えタンパク質および/またはMen−Bリポオリゴ糖(LOS:lipo−oligosaccharide)に由来する膜小胞を含み得る。
【0016】
Men−BのOMVの凍結乾燥は、当技術分野において公知であるが[8]、これらのOMVは、その後に、アルミニウムホスフェートアジュバントと一緒に投与されている。したがって、水中油エマルションアジュバントと組み合わせた場合の抗原安定性の問題は報告されていない。同様に、MF59によるその後の再構成を含めて、髄膜炎菌性複合化抗原の凍結乾燥は公知であるが[9]、これはMen−B抗原との組み合わせにおいてではない。
【0017】
小胞を含むMen−B成分
Men−Bワクチン成分としての使用のための小胞としては、細菌外膜のタンパク質成分を含む小胞を形成するために当該外膜を破壊することによって得られる任意のプロテオリポソーム小胞が挙げられる。したがって、当該用語は、OMV(「ブレブ」と呼ばれる場合もある)、微小胞(MV[10])、および「天然OMV」(「NOMV」[11])を含む。
【0018】
MVおよびNOMVは、細菌増殖の際に自然に形成されて培地に放出される、天然に存在する膜小胞である。MVは、ブロス培地においてNeisseriaを培養し、(例えば、ろ過によって、または細胞のみをペレット化してより小さな小胞はペレット化しないような低速での遠心分離によって)ブロス培地中のより小さなMVから全細胞を分離して、次いで、(例えば、ろ過によって、MVの示差的沈降または凝集によって、MVをペレット化する高速遠心分離によって)細胞枯渇培地からMVを収集することによって得ることができる。MVの産生において使用される菌株は、一般的に、培養において産生されるMVの量に基づいて選択することができ、例えば、参考文献12および13には、高いMV産生を有するNeisseriaについて記載されている。
【0019】
OMVは、細菌から人工的に調製されるが、(例えば、デオキシコレートによる)洗浄剤処理を用いて調製してもよいし、または洗浄剤を用いない方法で調製してもよい(例えば、参考文献14を参照のこと)。好適なOMV調製物を得るための方法は、例えば、本明細書に引用する参考文献において開示されている。OMVを形成するための技術は、洗浄剤が沈殿しないような十分に高いpHにおいて、胆汁酸塩洗浄剤(例えば、リトコール酸、ケノデオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸、デオキシコール酸、コール酸、ウルソコール酸などの塩、デオキシコール酸ナトリウム[15および16]が、Neisseriaを処理するために好ましい)によって細菌を処理する工程を含む[17]。他の技術は、超音波処理、ホモジナイゼーション、微細流動化、キャビテーション、浸透圧ショック、摩砕、フレンチプレス、ブレンディングなどの技術を用いて、実質的に洗浄剤の不在下において[14]実施され得る。洗浄剤を使用しないか、または少量しか使用しない方法では、NspAなどの抗原の有用性を維持することができる[14]。したがって、約0.5%のデオキシコレート、またはより少ない、例えば、約0.2%、約0.1%、<0.05%、またはゼロ%のデオキシコレートを有するOMV抽出緩衝液を使用する方法であってもよい。
【0020】
OMV調製物のための有用なプロセスは、参考文献18に記載されており、高速遠心分離法ではなく粗OMVの限外ろ過を伴う。当該プロセスは、限外ろ過の後に超遠心分離の工程を伴っていてもよい。
【0021】
本発明の使用のために、任意のMen−B菌株から小胞を調製することができる。それらは、任意の血清型(例えば、1,2a、2b、4、14、15、16など)、任意の血清亜型、および任意の免疫型(例えば、L1、L2、L3,3,7、L10など)であってもよい。髄膜炎菌は、高侵襲性系統および高毒性系統、例えば以下の7つの高毒性系統:サブグループI、サブグループIII、サブグループIV−1、ET−5複合物、ET−37複合物、A4クラスター、系統3など、を含む任意の好適な系統に由来し得る。これら系統は、多座位酵素電気泳動(MLEE:multilocus enzyme electrophoresis)により規定されているが、多座位配列タイピング(MLST:multilocus sequence typing)もまた髄膜炎菌を分類するために使用されており[参考文献19]、例えばET−37複合物は、MLSTによりST−11複合物であり、ET−5複合物はST−32(ET−5)であり、系統3はST−41/44である。小胞は、以下の亜型:P1.2、P1.2,5、P1.4、P1.5、P1.5,2、P1.5,c、P1.5c,10、P1.7,16、P1.7,16b、P1.7h,4、P1.9、P1.15、P1.9,15、P1.12,13、P1.13、P1.14、P1.21,16、P1.22,14、の内の1つを有する菌株から調製することができる。
【0022】
本発明において使用される小胞は、野生型Men−B菌株または突然変異菌株から調製され得る。例えば、参考文献20では、修飾されたfur遺伝子を有するN.meningitidisから得られる小胞の調製について開示されている。参考文献27では、nspA発現が、porAおよびcpsの同時ノックアウトによりアップレギュレートされるはずであることが教示されている。特許文献27〜29では、OMV産生のためのN.meningitidisのさらなるノックアウト変異体について開示されている。参考文献21では、fHBPがアップレギュレートされる小胞について開示されている。参考文献22では、6つの異なるPorA亜型を発現するように修飾された菌株に由来する小胞の構築について開示されている。さらに、LPS生合成に関与する酵素のノックアウトによって達成された低内毒素レベルを有する変異体Neisseriaも使用することができる[23、24]。これらの変異体または他の変異体は、すべて本発明において使用することができる。
【0023】
したがって、本発明において使用されるMen−B菌株は、いくつかの実施形態において、2つ以上のPorA亜型を発現し得る。6価および9価のPorA菌株は、以前に構築されている。この菌株は、2、3、4、5、6、7、8、または9つのPorA亜型:P1.7,16、P1.5−1,2−2、P1.19,15−1、P1.5−2,10、P1.12−1,13、P1.7−2,4、P1.22,14、P1.7−1,1、および/またはP1.18−1,3,6を発現し得る。他の実施形態において、菌株は、PorAの発現に対してダウンレギュレートされていてもよく、その場合、例えば、PorAの量は、野生型レベルと比較して(参考文献30に開示されるように、菌株H44/76と比較して)、少なくとも20%(例えば、≧30%、≧40%、≧50%、≧60%、≧70%、≧80%、≧90%、≧95%など)減少しているか、さらにはノックアウトされている。
【0024】
いくつかの実施形態において、Men−B菌株は、(対応する野生型菌株と比較して)特定のタンパク質を過剰発現し得る。例えば、菌株は、NspA、タンパク質287[45]、fHBP[21]、TbpAおよび/またはTbpB[25]、Cu,Zn−スーパーオキシドジスムターゼ[25]などを過剰発現し得る。
【0025】
いくつかの実施形態において、Men−B菌株は、参考文献26〜29において開示されているノックアウトおよび/または過剰発現変異の1つ以上を含み得る。ダウンレギュレーションおよび/またはノックアウトのための好ましい遺伝子としては、
【数1】

【0026】
突然変異株が使用される場合、いくつかの実施形態において、それらは、以下の特性:(i)髄膜炎菌性LOSを切端するための、ダウンレギュレートまたはノックアウトされたLgtBおよび/またはGalE;(ii)アップレギュレートされたTbpA;(iii)アップレギュレートされたHsf;(iv)アップレギュレートされたOmp85;(v)アップレギュレートされたLbpA;(vi)アップレギュレートされたNspA;(vii)ノックアウトされたPorA;(viii)ダウンレギュレートまたはノックアウトされたFrpB;(ix)ダウンレギュレートまたはノックアウトされたOpa;(x)ダウンレギュレートまたはノックアウトされたOpc;(xii)欠損cps遺伝子複合体、の1つ以上またはすべてを有し得る。切端されたLOSは、シアリル−ラクト−N−ネオテトラオースエピトープを含んでいないものであり得、例えば、ガラクトース−欠損LOSであり得る。当該LOSは、α鎖を有し得ない。
【0027】
LOSが小胞に存在している場合、そのLOSとタンパク質成分とを結合するように小胞を処理することが可能である(「ブレブ内」結合[29])。
【0028】
本発明は、異なる菌株に由来する小胞の混合物を使用し得る。例えば、参考文献30では、使用国において流行している血清亜型を有する髄膜炎菌株由来の第1の小胞および使用国において流行している血清亜型を必ずしも有さない髄膜炎菌株由来の第2の小胞を含む、多価髄膜炎菌性小胞組成物を含むワクチンについて開示されている。参考文献31にも、異なる小胞の有用な組み合わせが開示されている。L2およびL3免疫型のそれぞれの菌株に由来する小胞の組み合わせが、いくつかの実施形態において使用され得る。
【0029】
小胞ベースの抗原は、Men−B以外の血清群から調製することができる(例えば、参考文献17に、Men−Aについてのプロセスが開示されている)。したがって、本発明は、Men−B以外の血清群(例えば、A、C、W135、および/またはY)から調製された小胞を使用してもよい。しかしながら、主な焦点は、Men−Bにある。
【0030】
組み換えタンパク質を含むMen−B成分
組み換えタンパク質も、Men−Bに対するワクチン免疫原としての使用が報告されている。例えば、様々な抗原が、参考文献32〜40において報告されている。そのような抗原は、単独で、または組み合わせて使用してもよい。多数の精製タンパク質を組み合わせる場合、10種以下(例えば、9、8、7、6、5、4、3、2種)の精製抗原の混合物を使用することが有用である。
【0031】
抗原の特に有用な組み合わせは、参考文献1および40において開示されており、したがって、本発明の組成物は、(1)「NadA」タンパク質、(2)以前には「741」として知られていた「fHBP」タンパク質、(3)「936」タンパク質、(4)「953」タンパク質、および(5)「287」タンパク質、の1、2、3、4、または5つを含み得る。他の可能な抗原の組み合わせは、トランスフェリン結合タンパク質(例えば、TbpAおよび/またはTbpB)およびHsf抗原を含み得る。他の可能な精製された抗原としては、以下のアミノ酸配列:参考文献32からの配列番号650、参考文献32からの配列番号878、参考文献32からの配列番号884、参考文献33からの配列番号4、参考文献34からの配列番号598、参考文献34からの配列番号818、参考文献34からの配列番号864、参考文献34からの配列番号866、参考文献34からの配列番号1196、参考文献34からの配列番号1272、参考文献34からの配列番号1274、参考文献34からの配列番号1640、参考文献34からの配列番号1788、参考文献34からの配列番号2288、参考文献34からの配列番号2466、参考文献34からの配列番号2554、参考文献34からの配列番号2576、参考文献34からの配列番号2606、参考文献34からの配列番号2608、参考文献34からの配列番号2616、参考文献34からの配列番号2668、参考文献34からの配列番号2780、参考文献34からの配列番号2932、参考文献34からの配列番号2958、参考文献34からの配列番号2970、参考文献34からの配列番号2988のうちの1つを含むタンパク質、あるいは、(a)上記配列に対して50%以上(例えば、60%、70%、80%、90%、95%、99%以上)の同一性を有し、および/または(b)上記配列に由来する少なくともn個の連続するアミノ酸の断片を含み、nが7以上(例えば、8、10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、またはそれ以上)であるアミノ酸配列を含むポリペプチドが挙げられる。(b)に対して好ましい断片は、関連配列に由来するエピトープを含む。これらのポリペプチドの2つ以上(例えば、2、3、4、5、6つ)が含まれ得る。
【0032】
fHBP抗原は、3種の異なる変異体へ分類される[39]。本発明のMen−B成分は、1種のfHBP変異体を含み得るが、有用には、2種または3種全部の変異体のそれぞれに由来するfHBPを含むであろう。したがって、これは、(a)配列番号1に対して少なくともa%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、および/または配列番号1に由来する少なくともx個の隣接するアミノ酸の断片から成るアミノ酸配列を含む、第1のタンパク質、(b)配列番号2に対して少なくともb%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、および/または配列番号2に由来する少なくともy個の隣接するアミノ酸の断片から成るアミノ酸配列を含む、第2のタンパク質、ならびに/あるいは(c)配列番号3に対して少なくともc%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、および/または配列番号3に由来する少なくともz個の隣接するアミノ酸の断片から成るアミノ酸配列を含む第3のタンパク質、から選択される、2種または3種の異なる精製fHBPの組み合わせを含み得る。
【0033】
aの値は、少なくとも85、例えば、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、99.5、またはそれ以上である。bの値は、少なくとも85、例えば、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、99.5、またはそれ以上である。cの値は、少なくとも85、例えば、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、99.5、またはそれ以上である。a、b、およびcの値は、本質的に、互いに関連しない。
【0034】
xの値は、少なくとも7、例えば、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、225、250)である。yの値は、少なくとも7、例えば、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、225、250)である。zの値は、少なくとも7、例えば、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、225、250)である。x、y、およびzの値は、本質的に、互いに関連しない。
【0035】
いくつかの実施形態おいて、fHBPタンパク質(単数または複数)は、例えば、N末端システインにおいて脂質化されるだろう。他の実施形態では、それらは脂質化されないだろう。
【0036】
精製タンパク質をベースとする有用な組成物は、(i)配列番号4のアミノ酸配列を有する第1のポリペプチド、(ii)配列番号5または配列番号7のアミノ酸配列を有する第1のポリペプチド、および(iii)配列番号6のアミノ酸配列を有する第1のポリペプチド、の混合物を含む。参考文献1および40を参照のこと。
【0037】
LOSを含むMen−B成分
リポオリゴ糖をベースとする髄膜炎菌ワクチンは、すでに報告されている。当該LOSは、単独で使用してもよいし、または担体に複合化させてもよい。複合化している場合、複合化は、LOSのリピドA部分を介してもよいし、他の好適な部分、例えば、そのKDO残基によってでもよい。LOSのリピドA部分が無い場合は、そのような代替の結合が不可欠である。
【0038】
当該LOSは、任意の免疫型、例えば、L2、L3、L7などに由来していてもよい。
【0039】
天然LOSを使用するよりもむしろ、修飾された形態を使用する方が好ましい。これらの修飾は、化学的に達成することができるが、特定の生合成付加を担う、Men−Bにおける酵素をノックアウトする方がより簡便である。例えば、LOSは、天然のラクト−N−ネオテトラオースユニットの少なくとも末端Galを除去するために修飾され得るが、この修飾は、1つ以上の関連する酵素をノックアウトすることによって達成することができる。天然LOSにおける2つの末端単糖(シアル酸およびガラクトース)の付加を担う酵素をノックアウトすることによって、末端Siaだけを除去することもできるし、またはSia−Galの二糖を除去することもできる。例えば、lgtB遺伝子をノックアウトすると、Sia−Galが除去される。galE遺伝子のノックアウトによっても、有用な修飾LOSが得られる。リピドAの脂肪トランスフェラーゼ遺伝子をノックアウトしてもよい[41]。
【0040】
少なくとも1つの第一級O−結合脂肪酸を、LOSから除去してもよい[42]。LOS1分子あたりの第二級アシル鎖の数を減らしたLOSも使用することができる[43]。当該LOSは、α鎖を有し得ない。
【0041】
当該LOSは、GlcNAc−Hepホスホエタノールアミン−KDO−リピドAを含み得る[44]。
【0042】
混合Men−B成分
本発明は、Men−B抗原として、小胞、精製ポリペプチド、またはLOSを使用し得る。本発明はさらに、これらの3つの抗原の組み合わせ、例えば、(i)小胞+精製ポリペプチド、(ii)小胞+LOS、(iii)精製ポリペプチド+LOS、または(iv)小胞+精製ポリペプチド+LOS、を使用してもよい。これらの組み合わせは、個々の成分を別々に調製し、次いでそれらを混合することによって作製してもよい。例えば、参考文献45では、より幅広い効力を組成物に提供するために、小胞に精製タンパク質を加えることが開示されている。
【0043】
血清群A、C、W135、およびY
血清群Cに対する複合化一価ワクチンは、ヒトへの使用が承認されており、MENJUGATE(商標)、MENINGITEC(商標)、およびNEISVAC−C(商標)が挙げられる。血清群A+Cに由来する複合体の混合物は公知であり[46、47]、血清群A+C+W135+Yに由来する複合体の混合物も報告されており[48〜51]、2005年に水性MENACTRA(商標)製品として承認されている。
【0044】
本発明で使用される凍結乾燥された成分は、髄膜炎菌性血清群A、C、W135、およびYの1、2、3、または4つ、例えば、A+C、A+W135、A+Y、C+W135、C+Y、W135+Y、A+C+W135、A+C+Y、A+W135+Y、A+C+W135+Yなど、に由来する莢膜糖の1つ以上の複合体を含み得る。血清群A、C、W135、およびYの4つすべてに由来する糖を含む成分が好ましい。
【0045】
血清群Aの髄膜炎菌の莢膜糖は、C3位およびC4位に部分的O−アセチル化を有する、(α1→6)−結合N−アセチル−D−マンノサミン−1−ホスフェートのホモポリマーである。C−3位でのアセチル化は、70〜95%であり得る。糖を精製するために使用される条件によっては、(例えば、塩基性条件下において)脱−O−アセチル化を生じ得るが、このC−3位にOAcを保持することは有用である。いくつかの実施形態において、血清群Aの糖におけるマンノサミン残基の少なくとも50%(例えば、少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、またはそれ以上)は、C−3位においてO−アセチル化される。アセチル基をブロッギング基で置き換えることで、加水分解を防ぐことが可能であり[52]、そのような修飾された糖は、依然として、本発明の意図する範囲内の血清群Aの糖である。
【0046】
血清群Cの莢膜糖は、(α2→9)−結合シアル酸(N−アセチルノイラミン酸、または「NeuNAc」)のホモポリマーである。糖構造は、→9)−NeupNAc7/8OAc−(α2→として記述される。大部分の血清群Cの菌株は、シアル酸残基のC−7位および/またはC−8位にO−アセチル基を有するが、臨床単離株の約15%は、これらのO−アセチル基が欠損している[53、54]。OAc基の存在または欠損により特有のエピトープが生じ、糖に対する抗体結合の特異性は、O−アセチル化(OAc+)菌株および脱−O−アセチル化(OAc−)菌株に対するその殺菌活性に影響を及ぼし得る[55〜57]。本発明で使用される血清群Cの糖は、OAc+またはOAc−菌株のいずれかから調製され得る。承認されているMen−C複合体ワクチンとしては、OAc−(NEISVAC−C(商標))およびOAc+(MENJUGATE(商標)およびMENINGITEC(商標))糖の両方が挙げられる。いくつかの実施形態において、血清群Cの複合体の産生のための菌株は、例えば、血清型16、血清亜型P1.7a,1などのOAc+菌株である。したがって、C:16:P1.7a,1のOAc+菌株が使用され得る。血清亜型P1.1におけるOAc+菌株、例えば、C11菌株なども有用である。
【0047】
血清群W135の糖は、シアル酸−ガラクトース二糖ユニットのポリマーである。血清群Cの糖のように、それらは、種々のO−アセチル化を有するが、ただし、シアル酸の7位および9位においてである[58]。当該構造は、→4)−D−Neup5Ac(7/9OAc)−α−(2→6)−D−Gal−α−(1→として記述される。
【0048】
血清群Yの糖は、二糖繰り返しユニットがガラクトースの代わりにグルコースを含むこと以外は、血清群W135の糖と同じである。血清群W135のように、それらは、シアル酸の7位および9位に種々のO−アセチル化を有する[58]。血清群Yの構造は、→4)−D−Neup5Ac(7/9OAc)−α−(2→6)−D−Glc−α−(1→として記述される。
【0049】
本発明に従って使用される糖は、上記において説明したように(例えば、天然莢膜糖に見られるような同じO−アセチル化パターンで)O−アセチル化されていてもよく、または、それらは、糖環の1つ以上の位置で、部分的にまたは全体的に脱−O−アセチル化されていてもよく、または、それらは、天然の莢膜糖と比較して、過剰にO−アセチル化されていてもよい。
【0050】
複合体の糖部分は、髄膜炎菌から調製されるような全長の糖を含んでいてもよく、および/または全長の糖の断片を含んでいてもよく、すなわち、当該糖は、細菌において見られる天然の莢膜糖より短い場合がある。したがって、当該糖は、糖の精製中あるいは精製後の、複合化の前に生じる脱重合反応により、脱重合され得る。脱重合は、糖の鎖長を減少させる。1つの脱重合方法は、過酸化水素の使用を伴う[48]。過酸化水素を、(例えば、1%の最終H濃度が得られるように)糖に添加し、次いで所望の鎖長の減少が達成されるまで、当該混合物を(例えば、約55℃で)インキュベートする。別の脱重合方法は、酸加水分解を伴う[49]。他の脱重合方法が、当技術分野において公知である。本発明による使用のための複合体を調製するために使用される糖は、これらの脱重合方法のいずれによって入手可能であり得る。脱重合は、免疫原性に対して最適な鎖長を与えるため、および/または物理的に扱いやすいように糖の鎖長を減少させるために用いることができる。いくつかの実施形態において、糖は、以下の範囲の平均重合度(Dp):A=10〜20、C=12〜22、W135=15〜25、Y=15〜25、を有する。Dpよりもむしろ分子量に関して、有用な範囲は、すべての血清群に対して、<100kDa、5kDa〜75kDa、7kDa〜50kDa、8kDa〜35kDa、12kDa〜25kDa、15kDa〜22kDaである。
【0051】
いくつかの実施形態において、髄膜炎菌性血清群A、C、W135、およびYのそれぞれに由来する糖の平均分子量は、特にMALLSによって特定される場合に、50kDa超、例えば、≧75kDa、≧100kDa、≧110kDa、≧120kDa、≧130kDaなど[59]、および1500kDaまでさえであり得る。例えば、Men−Aの糖は、50〜500kDa、例えば、60〜80kDaの範囲であり得、Men−Cの糖は、100〜210kDaの範囲であり得、Men−W135の糖は、60〜190kDa、例えば、120〜140kDaの範囲であり得、および/またはMen−Yの糖は、60〜190kDa、例えば、150〜160kDaの範囲であり得る。
【0052】
再構成されたワクチンにおける血清群あたりの髄膜炎菌性糖の質量は、通常、1μg〜20μgの間であり、例えば、血清群あたり2〜10μgの間、または約4μg、または約5μg、または約10μgであろう。二つ以上の血清群に由来する複合体が含まれる場合、それらは、実質的に等しい質量において存在し得、例えば、各血清群の糖の質量は、お互いの+10%内である。同じ比率の代わりに、2倍の質量の血清群Aの糖を使用してもよい。したがって、ワクチンは、10μgのMen−Aの糖と、それぞれ5μgのMen−C、Men−W135、およびMen−Yの糖を含み得る。
【0053】
好ましい担体タンパク質は、細菌毒素、例えば、ジフテリアまたは破傷風毒素など、またはトキソイド、あるいはそれらの変異体である。これらは、複合体ワクチンにおいて一般的に使用される。CRM197ジフテリア毒素変異体は、特に好ましい[60]。他の好適な担体タンパク質としては、N.meningitidis外膜タンパク質複合体[61]、合成ペプチド[62、63]、熱ショックタンパク質[64、65]、百日咳菌タンパク質[66、67]、サイトカイン[68]、リンホカイン[68]、ホルモン[68]、成長因子[68、]様々な病原菌誘導抗原に由来する複数のヒトCD4T細胞エピトープを含む人工タンパク質[69]、例えばN19[70]など、H.influenzae由来のタンパク質D[71〜73]、ニューモリシン[74]もしくはその無毒の誘導体[75]、肺炎球菌表面タンパク質PspA[76]、鉄取込タンパク質[77]、C.difficile由来の毒素AもしくはB[78]、組み換えPseudomonas aeruiginosaエキソプロテインA(rEPA)[79]、などが挙げられる。単一の担体タンパク質は、多数の異なる血清群に由来する糖を有し得るが[80]、このアレンジメントは好ましくない。凍結乾燥された成分が、2種以上の髄膜炎菌性血清群に由来する複合体を含む場合、様々な複合体は、異なる担体タンパク質を使用し得るか(例えば、一方はCRM197の血清群を使用し、他方は破傷風トキソイドを使用するなど)、あるいは同じ担体タンパク質を使用し得る(例えば、2つの血清群に由来する糖を別々にCRM197に複合化させ、次いで組み合わせる)。
【0054】
1:5(すなわち、過剰なタンパク質)〜5:1(すなわち、過剰な糖)の間の糖:タンパク質比(w/w)を有する複合体は、例えば、1:2〜5:1の間の比率および1:1.25〜1:2.5の間の比率などにおいて使用され得る。参考文献81に記載されているように、混合物における異なる髄膜炎菌性血清群の複合体は、異なる糖:タンパク質の比率を有し得、例えば、あるものは1:2〜1:5の間の比率を有し得、別のものは5:1〜1:1.99の間の比率を有する。
【0055】
参考文献82において開示されている特徴を有する糖および複合体が有用である。
【0056】
担体分子は、直接または結合基を介して、共有結合により髄膜炎菌性糖に複合化されていてもよい。例えばアジピン酸結合基などの様々な結合基が公知であり、これは、(例えば、アミノ化によって糖に導入された)遊離−NH基とアジピン酸とを(例えば、ジイミド活性化を用いて)カップリングさせ、次いで、結果として得られる糖−アジピン酸中間体にタンパク質をカップリングさせることによって形成され得る[83、84]。別の好ましいタイプの結合は、カルボニル結合基であり、これは、糖の遊離ヒドロキシル基とCDIとを反応させ[85、86]、次いでタンパク質と反応させてカルバメート結合を形成することによって形成され得る。他の結合基としては、β−プロピオンアミド[87]、ニトロフェニル−エチルアミン[88]、ハロアシルハライド[89]、グリコシド結合[90]、6−アミノカプロン酸[91]、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)−プロピオネート(SPDP:N−succinimidyl−3−(2−pyridyldithio)−propionate)[92]、アジピン酸ジヒドラジドADH[93]、C〜C12部分[94]、などが挙げられる。カルボジイミド縮合も使用することができる[95]。
【0057】
参考文献96に記載されているように、混合物は、一方として糖/タンパク質の直接の結合を有する複合体と、他方として結合基を介した結合を有する複合体とを含み得る。このアレンジメントは、異なる髄膜炎菌性血清群に由来する糖複合体を使用する場合に特に適用し、例えば、Men−Aの糖とMen−Cの糖を、結合基を介して結合してもよいし、あるいは、Men−W135の糖とMen−Yの糖を、担体タンパク質に直接結合してもよい。
【0058】
組成物は、Men−A複合体、Men−C複合体、Men−W複合体、および/またはMen−Y複合体の1つ以上を含んでおり、いくつかの実施形態において、有利には、さらにHib複合体をも含み得る(下記を参照のこと)。組成物が、2種以上の髄膜炎菌性血清群に由来する糖を含む場合、血清群あたりの糖質量は平均糖質量となる。それぞれ実質的に等しい質量の血清群が使用されている場合、平均質量は、それぞれの個々の質量と同じであろうが、等しくない質量が用いられる場合は、当該平均はそれぞれの個々の質量とは異なり、例えば、Men−ACWY混合物において10:5:5:5μgが使用される場合、平均質量は、血清群あたり6.25μgである。Hib糖も含まれる場合、いくつかの実施形態において、その質量は、血清群あたりの髄膜炎菌性糖の平均質量と実質的に同じであろう。いくつかの実施形態において、Hib糖の質量は、血清群あたりの髄膜炎菌性糖の平均質量よりも多いであろう(例えば、少なくとも1.5倍)。いくつかの実施形態において、Hib糖の質量は、血清群あたりの髄膜炎菌性糖の平均質量よりも少ないであろう(例えば、少なくとも1.5倍)[97]。
【0059】
水中油エマルションアジュバント
様々な水中油エマルションアジュバントが公知であり、それらは、通常、少なくとも1種の油と少なくとも1種の界面活性剤とを含み、当該油(単数または複数)および界面活性剤(単数または複数)は、生体分解性(代謝可能)であり、かつ生体適合性である。エマルション中の油滴は、一般的に、直径5μm未満であり、サブミクロン直径さえ有し得、これらの小さいサイズは、安定したエマルションを提供するために、微細流動化装置により達成される。濾過滅菌を実施できるように、220nmより小さいサイズの油滴が好ましい。
【0060】
本発明は、油、例えば、動物(例えば、魚)源または植物源に由来するもの、と一緒に使用され得る。植物油の源としては、ナッツ、種子、および穀物が挙げられる。ピーナッツ油、ダイズ油、ココナッツ油、およびオリーブ油が、最も一般的に入手可能で、代表的なナッツ油である。例えば、ホホバ豆から得られるホホバ油を使用することができる。種子油としては、ベニバナ油、綿実油、ヒマワリ種子油、ゴマ油などが挙げられる。穀物群において、トウモロコシ油が最も容易に入手可能であるが、他のシリアル穀物、例えば、小麦、オート麦、ライ麦、米、テフ、ライ小麦など、の油も使用することができる。グリセロールおよび1,2−プロパンジオールの、6〜10個の炭素の脂肪酸エステルは、種子油中には天然には存在しないが、ナッツ油および種子油から出発して適切な材料の加水分解、分離、およびエステル化により調製され得る。哺乳動物のミルクに由来する脂肪および油は代謝可能であり、したがって、本発明の実施において使用することができる。動物源から純粋な油を得るために必要な分離、精製、鹸化、および他の方法に関する手順は、当該分野において周知である。ほとんどの魚は、容易に回収することができる代謝可能な油を含有している。例えば、タラの肝油、サメの肝油、および鯨蝋などのクジラ油が、いくつかの代表的な魚油であり、これらは本明細書中において使用することができる。いくつかの分枝鎖油は、5−炭素イソプレンユニットにおいて生化学的に合成され、一般的に、テルペノイドと称される。サメの肝油は、スクワレンとして公知の分岐状の不飽和テルペノイドである2,6,10,15,19,23−ヘキサメチル−2,6,10,14,18,22−テトラコサヘキサンを含有するが、これは、本明細書において特に好ましい。スクワレンの飽和類似体であるスクワランも好ましい油である。スクワレンおよびスクワランなどの魚油は、市販の供給源から容易に入手可能であるか、または当該分野において公知の方法によって得ることができる。他の好ましい油は、トコフェロールである。油の混合物を使用することができる。
【0061】
組成物がトコフェロールを含んでいる場合、α、β、γ、δ、ε、またはζトコフェロールのいずれかを使用することができるが、α−トコフェロールが好ましい。当該トコフェロールは、例えば、様々な塩および/または異性体などのいくつかの形態をとり得る。塩としては、有機塩、例えば、コハク酸塩、酢酸塩、ニコチン酸塩などが挙げられる。D−α−トコフェロールおよびDL−α−トコフェロールは、両方とも使用することができる。好ましいα−トコフェロールは、DL−α−トコフェロールであり、このトコフェロールの好ましい塩は、コハク酸塩である。
【0062】
界面活性剤は、それらの「HLB」(親水性/親油性バランス)に応じて分類することができる。本発明の好ましい界面活性剤は、少なくとも10、好ましくは少なくとも15、より好ましくは少なくとも16のHLBを有する。本発明は、ポリオキシエチレンソルビタンエステル界面活性剤(一般的にTweenと称される)、特にポリソルベート20およびポリソルベート80;エチレンオキシド(EO:ethylene oxide)、プロピレンオキシド(PO:propylene oxide)、および/またはブチレンオキシド(BO:butylene oxide)のコポリマー、例えば、DOWFAX(商標)の商標名で販売される直鎖状EO/POブロックコポリマー;エトキシ(オキシ−1,2−エタンジイル)基の繰返し数が変動し得るオクトキシノール、特にオクトキシノール−9(Triton X−100、またはt−オクチルフェノキシポリエトキシエタノール)が興味深く;(オクチルフェノキシ)ポリエトキシエタノール(IGEPAL CA−630/NP−40);リン脂質、例えばホスファチジルコリン(レシチン)など;ラウリル、セチル、ステアリル、およびオレイルアルコールに由来するポリオキシエチレン脂肪エーテル(Brij界面活性剤として公知である)、例えば、トリエチレングリコールモノラウリルエーテル(Brij 30)など;並びにソルビタンエステル(一般的にSPANとして公知である)、例えば、ソルビタントリオレエート(Span 85)およびソルビタンモノラウレート、を含む界面活性剤を使用し得るが、これらに限定されるものではない。エマルション中に含まれる好ましい界面活性剤は、Tween80(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)、Span85(ソルビタントリオレエート)、レシチン、およびTriton X−100である。
【0063】
界面活性剤の混合物、例えば、Tween80/Span85混合物、を使用することができる。ポリオキシエチレンソルビタンエステル、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(Tween80))と、オクトキシノール、例えば、t−オクチルフェノキシポリエトキシエタノール(Triton X−100)との組合せも好適である。別の有用な組み合せは、ラウレス−9と、さらにポリオキシエチレンソルビタンエステルおよび/またはオクトキシノールとを含む。
【0064】
界面活性剤の好ましい量(重量%)は、ポリオキシエチレンソルビタンエステル(例えば、Tween80)0.01〜1%、特に約0.1%;オクチル−またはノニルフェノキシポリオキシエタノール(例えば、Triton X−100、またはTritonシリーズにおける他の洗浄剤)0.001〜0.1%、特に0.005〜0.02%;ポリオキシエチレンエーテル(例えば、ラウレス9)0.1〜20%、好ましくは0.1〜10%、特に0.1〜1%または約0.5%である。
【0065】
本発明に有用な特定の水中油エマルションアジュバントとしては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0066】
・スクワレン、Tween80、およびSpan85のサブミクロンエマルション。容量によるエマルションの組成は、約5%のスクワレン、約0.5%のポリソルベート80、および約0.5%のSpan85であり得る。重量では、これらの比率は、4.3%のスクワレン、0.5%のポリソルベート80、および0.48%のSpan85となる。このアジュバントは、参考文献101の第10章および参考文献102の第12章に、より詳細に記載されているように、「MF59」として公知である[98〜100]。当該MF59エマルションは、クエン酸イオン、例えば、10mMクエン酸ナトリウム緩衝剤、を含み得る。
【0067】
・スクワレン、トコフェロール、およびTween80のエマルション。当該エマルションは、リン酸緩衝生理食塩水を含み得る。さらにSpan85(例えば、1%で)および/またはレシチンも含み得る。これらのエマルションは、2〜10%のスクワレン、2〜10%のトコフェロール、および0.3〜3%のTween80を有し得、より安定なエマルションが得られるように、スクワレン:トコフェロールの重量比は、好ましくは≦1である。スクワレンおよびTween 80は、約5:2の容量比で存在し得る。そのようなエマルションの1つは、2%溶液を得るためにPBS中にTween80を溶解し、次いでこの溶液90mlを(5gのDL−α−トコフェロールおよび5mlのスクワレン)の混合物と混合し、次いで微細流動化することにより作製することができる。結果として得られたエマルションは、例えば、100〜250nmの間の平均直径、好ましくは約180nmの平均直径のサブミクロンの油滴を有し得る。
【0068】
・スクワレン、トコフェロール、およびTriton洗浄剤(例えば、Triton X−100)のエマルション。当該エマルションはさらに3d−MPLも含み得る。当該エマルションは、リン酸緩衝液を含有し得る。
【0069】
・ポリソルベート(例えば、ポリソルベート80)、Triton洗浄剤(例えば、Triton X−100)、およびトコフェロール(例えば、コハク酸α−トコフェロール)を含むエマルション。当該エマルションは、約75:11:10の質量比(例えば、750μg/mlのポリソルベート80、110μg/mlのTriton X−100、および100μg/mlのコハク酸α−トコフェロール)において、これら3つの成分を含み得、並びにこれらの濃度は、抗原に由来するこれらの成分による任意の寄与を含むべきである。当該エマルションはさらにスクワレンも含み得る。当該エマルションはさらに、3d−MPLも含み得る。当該水相はリン酸緩衝液を含有し得る。
【0070】
・スクワラン、ポリソルベート80、およびポロクサマー401(「Pluronic(商標)L121」)のエマルション。当該エマルションは、リン酸緩衝化生理食塩水において、pH7.4で処方され得る。このエマルションは、ムラミルジペプチドのために有用な送達ビヒクルであり、「SAF−1」アジュバントにおいてトレオニル−MDPと共に使用される[103](0.05〜1%のThr−MDP、5%のスクワラン、2.5%のPluronic L121、および0.2%のポリソルベート80)。「AF」アジュバントのように、Thr−MDPを含まずに使用され得る[104](5%のスクワラン、1.25%のPluronic L121、および0.2%のポリソルベート80)。なお、微細流動化が好ましい。
【0071】
・スクワレン、水性溶媒、ポリオキシエチレンアルキルエーテル親水性非イオン性界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレン(12)セトステアリルエーテル)、および疎水性非イオン性界面活性剤(例えば、ソルビタンモノオレエートまたは「Span80」などのソルビタンエステルまたはマンニドエステル)を含むエマルション。当該エマルションは、好ましくは、熱可逆性であり、および/または少なくとも90%(体積比)が200nm未満のサイズである油滴を有する[105]。当該エマルションはさらに、アルジトール、凍結保護剤(例えば、ドデシルマルトシドおよび/またはスクロースなどの糖)、および/またはアルキルポリグリコシドの1つ以上も含み得る。そのようなエマルションは、凍結乾燥され得る。
【0072】
・0.5〜50%の油、0.1〜10%のリン脂質、および0.05〜5%の非イオン界面活性剤を有するエマルション。参考文献106に記載されているように、好ましいリン脂質成分は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、スフィンゴミエリン、およびカルジオリピンである。サブミクロンの油滴サイズが有利である。
【0073】
・代謝不可能な油(例えば、軽油)および少なくとも1種の界面活性剤(例えば、レシチン、Tween80、またはSpan80)のサブミクロン水中油エマルション。添加物としては、QuilAサポニン、コレステロール、サポニン−親油性物複合体(例えば、参考文献107に記載される、グルクロン酸のカルボキシル基を介してデスアシルサポニンに脂肪族アミンを付加することにより生成されるGPI−0100)、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド、および/またはN,N−ジオクタデシル−N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)プロパンジアミンを挙げることができる。
【0074】
・鉱油、非イオン性親油性エトキシル化脂肪アルコール、および非イオン性親水性界面活性剤(例えば、エトキシル化脂肪アルコールおよび/またはポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー)を含むエマルション[108]。
【0075】
・鉱油、非イオン性親水性エトキシル化脂肪アルコール、および非イオン性親油性界面活性剤(例えば、エトキシル化脂肪アルコールおよび/またはポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー)を含むエマルション[108]。
【0076】
・サポニン(例えば、QuilAまたはQS21)およびステロール(例えば、コレステロール)が、螺旋状のミセルとして会合しているエマルション[109]。
【0077】
水中油エマルションは、それ自体アジュバントとして、またはさらなる免疫賦活化合物、例えば、免疫賦活オリゴヌクレオチド、3d−MPLなど、のための担体として使用することができる。
【0078】
3dMPL(3脱−O−アシル化モノホスホリル脂質Aまたは3−O−デスアシル−4’−モノホスホリル脂質Aとしても知られる)は、モノホスホリル脂質Aにおける還元末端グルコサミンの3の位置が脱アシル化されているアジュバントである。3dMPLは、Salmonella Minnesotaのヘプトース欠損変異体から調製されており、化学的に脂質Aと同様であるが、酸不安定ホスホリル基および塩基不安定アシル基が欠損している。3dMPLの調製は、元は参考文献110に記載されていた。
【0079】
再構成およびパッケージング
本発明の凍結乾燥された抗原成分は、最終的に、患者への投与に好適な材料を得るために、液体成分により再構成される。当該再構成は、通常、使用の時点において実施される。したがって、抗原および水中油エマルションアジュバントは、パッケージングされたワクチンキットまたは配布されたワクチンキットにおいて別々に保たれ、使用の時点で最終的な処方物へと再構成される状態にあり得る。
【0080】
2つの容器を有するキットにおいて、一方の容器は再構成のための液体を含み、第2の容器は凍結乾燥した材料を含む。第2の容器は、通常、密閉して封止されているであろう。当該液体は、通常、第1の針により第2の容器中に導入され、それにより、凍結乾燥した材料が液体形態へと再構成される。次いで、当該液体は、通常、患者への投与のために注射器へと回収されるであろう。この回収工程は、第1の針を介して行われてもよいが、多くの場合、第2の針を介して行われるであろう。回収のために使用される針は、次に患者への注射に使用される針と同一であってもよいし、または異なっていてもよい。
【0081】
第2の容器は、通常、バイアルであるだろう。凍結乾燥した材料を再構成するための水中油エマルションも、バイアル中に収容されていてもよいが、代替手段として、注射器中に収容されていてもよい。さらなるアレンジメントは、複室型注射器における別々の室として第1および第2の容器を有することにより、作動させる時に液体材料が第1の容器から第2の容器へと導入される。次いで、当該混合され再構成された材料は、液体形態において注射器から放出され得る。しかしながら、すべての場合において、当該凍結乾燥された材料および液体材料は、混合する準備が整うまで別々に保たれる。
【0082】
水中油エマルションは、通常、その液体形態において使用されるが、本発明のいくつかの実施形態においては、凍結乾燥した水中油エマルションアジュバントを使用することが可能である。この方法におけるエマルションアジュバントの凍結乾燥は、例えば、参考文献105および111において開示されている。これらの乾燥したエマルションは、依然として、使用時に、例えば水性担体を用いて、液体形態へと再構成されるであろう。凍結乾燥されたアジュバントおよび凍結乾燥された抗原成分は、別々のキット構成部分であり得るが、いくつかの実施形態においては、それらは凍結乾燥された形態で(凍結乾燥前または凍結乾燥後のいずれかにおいて)混合されていてもよい。したがって、いくつかの実施形態において、本発明は、凍結乾燥された水中油エマルションと、Neisseria meningitidis血清群Bに対して免疫反応を惹起するための免疫原を含む凍結乾燥された抗原性組成物との混合物を含む組成物を提供する。この混合された凍結乾燥組成物は、1つの再構成工程において水中油エマルションアジュバントを有するMen−B組成物を得るために水性担体と混合され得る。
【0083】
したがって、キットは、例えば、2つのバイアル、1つの充填済み注射器、および1つのバイアルなどを備えていてもよい。注射器は、一般的に、単回用量の組成物を含み、一方で、バイアルは、単回投用量または複数回用量を含み得る。したがって、複数回用量形態では、あらかじめ充填された注射器よりもバイアルの方が好ましい。
【0084】
患者に投与する前に、さらなる液体材料および/または凍結乾燥された材料を添加してもよい。
【0085】
凍結乾燥された成分のための容器は、キャップ(例えば、Luer lock)を有していてもよく、このキャップは、予め充填された注射器をキャップ中に差し込むことができ、当該注射器の内容物がバイアルの中に放出されてその中の凍結乾燥された材料を再構成することができ、当該バイアルの内容物が注射器に戻し入れられ得るように調整されたキャップである。バイアルから注射器を取り外した後、針を取り付けることができ、並びにワクチンを患者に投与することができる。当該キャップは、キャップを差し込む前にシールまたはカバーを除去しなければならないように、シールまたはカバーの内側に配置してもよい。
【0086】
成分がバイアル中にパッケージされる場合、当該バイアルは、好ましくは、ガラス製またはプラスチック材料製である。当該バイアルは、好ましくは、それに材料を添加する前に滅菌される。ラテックスに敏感な患者に伴う問題を回避するために、バイアルは、ラテックス不含ストッパーでシールすることができる。当該バイアルは、単回用量のワクチンを含んでいてもよく、あるいは、2回以上の用量、例えば10回用量、を含んでいてもよい(「多用量」バイアル)。好ましいバイアルは、無色のガラス製である。
【0087】
当該ワクチンが注射器中にパッケージされている場合、当該注射器は、それに取り付ける針を備えていてもよいし、または針を備えていなくもよい。組み立てて使用するために、注射器と共に別個の針を供給してもよい。針は安全針が好ましい。1インチ23ゲージ、1インチ25ゲージ、および5/8インチ25ゲージの針が一般的である。注射器は、記録の保持を容易にするために、ロット番号と内容物の有効限日をその上に印刷することができる剥離式のラベルを備えて提供してもよい。注射器のプランジャは、好ましくは、吸引の際に偶然にプランジャが外れてしまうことを防ぐためのストッパーを備えている。
【0088】
ガラス製の容器(例えば、注射器またはバイアル)が使用される場合、ソーダ石灰ガラス製の容器よりもむしろホウケイ酸ガラス製の容器を使用することが好ましい。
【0089】
ワクチンは、通常、0.5ml用量において患者に投与されるため、第1の容器中の液体の量は、再構成後に、消耗量にあたる少なくとも0.5ml、例えば0.6ml、の投薬容量を得るために好適な量であろう。
【0090】
安定性の理由から、本発明の凍結乾燥された成分は、安定化剤、例えば、ラクトース、スクロース、および/またはマンニトール、ならびにそれらの混合物、例えば、ラクトース/スクロース混合物、スクロース/マンニトール混合物など、を含んでいてもよい。スクロース/マンニトール混合物を使用することによって、乾燥プロセスを迅速化することができる。凍結乾燥した成分はさらに、塩化ナトリウムも含み得る。凍結乾燥された材料における可溶性成分は、再構成後も組成物中に保有されるであろうから、したがって、最終的な液体ワクチンは、ラクトースおよび/またはスクロースを含み得る。
【0091】
組成物は、参考文献112に記載されているように、温度保護剤を含んでいてもよい。例としては、グリセリン、プロピレングリコール、および/またはポリエチレングリコール(PEG:polyethylene glycol)が挙げられる。好適なPEGは、200〜20,000Daの範囲の平均分子量を有し得る。好ましい実施形態において、当該ポリエチレングリコールは、約300Daの平均分子量を有し得る(「PEG−300」)。
【0092】
医薬組成物
本発明の材料は、最終的に、患者に投与するための医薬組成物を調製するために使用されるであろう。これらは、通常、薬学的に許容される担体を含むであろう。薬学的に許容される担体についての詳細な説明は、参考文献113において入手可能である。
【0093】
効果的な投薬容量は、慣習的に確立され得るが、当該組成物の典型的なヒト用量は、例えば、筋肉内注射のために約0.5mlの容量を有する。RIVM OMVベースのワクチンは、大腿部または上腕部への筋肉内注射により、0.5ml容量において投与されている[114]。MeNZB(商標)は、大腿部の前外側または腕の三角筋部への筋肉内注射により、0.5mlにおいて投与される。同様の用量を、他の送達経路に使用してもよく、例えば、噴霧のための鼻腔内OMVベースのワクチンは、スプレーあたり約100μlまたは約130μlの容量を有し得るので、約0.5mlの全用量を与えるために4回のスプレーが投与される。
【0094】
再構成後の組成物のpHは、好ましくは6〜8の間であり、より好ましくは6.5〜7.5の間(例えば、約7)である。RIVM OMVベースのワクチンのpHは、7.4であり[115]、本発明の組成物にはpH<7.5が好ましい。RIVM OMVベースのワクチンは、10mM Tris/HCl緩衝液を使用することによってpHを維持し、本発明の組成物における安定したpHは、緩衝液、例えば、Tris緩衝液、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、またはヒスチジン緩衝液の使用により維持され得る。本発明の組成物は、一般的に、緩衝液を含むであろう。緩衝液成分は、所望するような、最終的な再構成後のアレンジメントを得るために、必要に応じて、液体成分中および/または凍結乾燥成分中に配置されるであろう。
【0095】
当該組成物は、滅菌および/または発熱物質不含であり得る。本発明の組成物は、ヒトに対して等張性であり得る。
【0096】
患者への投与のための本発明の組成物は、免疫原性であり、より好ましくはワクチン組成物である。本発明によるワクチンは、予防的(すなわち、感染を予防するため)または治療的(すなわち、感染を処置するため)のいずれかであり得るが、通常は、予防的である。ワクチンとして使用される免疫原性組成物は、免疫学的に有効な量の抗原(単数または複数)、並びに必要に応じて、任意の他の成分を含む。「免疫学的に有効な量」とは、単一用量または一連の用量の一部のいずれかにおいて個体に投与される量が、処置または予防のために有効であることを意味する。この量は、処置される個体の健康状態および身体的状態、年齢、処置される個体の分類群(例えば、非ヒト霊長類、霊長類など)、抗体を合成する個々の免疫システムの能力、所望される防御の度合い、ワクチンの処方、医学的状態に関する処置医の評価、および他の関連要因に応じて変わる。この量は、日常的な試験によって特定することができる比較的広い範囲に入ることが予測される。本発明の組成物の抗原含有量は、一般的に、1用量あたりのタンパク質の量を単位として表される。OMVベースの鼻腔内ワクチンの場合、1mlあたりタンパク質約0.9mgの用量が典型的である。
【0097】
髄膜炎菌は、身体の様々な領域に影響を与え、そのため、本発明の組成物は、様々な液体形態において調製され得る。例えば、当該組成物は、溶液または懸濁液のいずれかの注射可能物として調製され得る。当該組成物は、微細スプレーを使用して、例えば吸入器による肺投与のために調製され得る。当該組成物は、鼻内、耳内、または眼内投与のために、例えば、スプレーまたは液滴として調製され得る。筋肉内投与のためには、注射可能物が典型的である。
【0098】
本発明の組成物は、特に複数回用量方式においてパッケージングされる場合に、抗菌剤を含んでいてもよい。チオメルサールおよび2−フェノキシエタノールなどの抗菌薬が、一般的にワクチン中に見出されるが、水銀不含の防腐剤を使用するかまたは全く防腐剤を使用しないかのいずれかが好ましい。
【0099】
本発明の凍結乾燥した成分および/または同時パッケージされた水中油エマルションアジュバントは、実質的にアルミニウム塩を含み得ない。このアレンジメントにより、本発明の再構成された組成物がアルミニウム塩を実質的含まないことが可能となる。
【0100】
本発明の組成物は、洗浄剤、例えば、Tween80などのTween(ポリソルベート)を含み得る。洗浄剤は、一般的に、低濃度、例えば<0.01%で存在する。
【0101】
本発明の組成物は、OMV調製物に由来する残留洗浄剤(例えば、デオキシコーレート)を含み得る。残留洗浄剤の量は、Men−Bタンパク質1μgに対して、好ましくは0.4μg未満(より好ましくは、0.2μg未満)である。
【0102】
本発明の組成物は、髄膜炎菌に由来するLOSを含み得る。LOSの量は、タンパク質1μgに対して、好ましくは0.12μg未満(より好ましくは0.05μg未満)である。
【0103】
本発明の組成物は、張性を与えるためのナトリウム塩(例えば、塩化ナトリウム)を含み得る。NaClの10±2mg/ml濃度が典型的であり、例えば約9mg/mlである。
【0104】
処置方法
本発明はさらに、哺乳動物において免疫反応を惹起するための方法であって、本発明の液体医薬組成物を当該哺乳動物に投与する工程を含む方法も提供する。当該免疫反応は、好ましくは防御的であり、好ましくは抗体を伴う。当該方法は、既にN.meningitidisに対して初回免疫されている患者において、追加免疫反応を引き起こし得る。OMVに対する皮下および鼻内の初回免疫/追加免疫レジメンは、参考文献116に開示されている。
【0105】
当該哺乳動物は、好ましくはヒトである。ワクチンが予防的用途のためのものである場合、ヒトは、好ましくは小児(例えば、幼児または乳児)または十代の若者であり、当該ワクチンが治療用途のためのものである場合、ヒトは好ましくは成人である。小児を意図したワクチンはさらに、例えば、安全性、用量、免疫原性などを評価するために、成人にも投与され得る。
【0106】
本発明はさらに、医薬品としての使用のための本発明の組成物および混合物を提供する。当該医薬品は、好ましくは、哺乳動物において免疫反応を惹起することができ(すなわち、これは、免疫原性組成物である)、並びにより好ましくはワクチンである。
【0107】
本発明はさらに、哺乳動物において免疫反応を惹起するための医薬品の製造における、本発明の組成物および混合物の使用も提供する。本発明はさらに、哺乳動物において免疫反応を惹起するための医薬品の製造における、(i)水中油エマルションを含むアジュバント、および(ii)N.meningitidis血清群Bに対する免疫反応を惹起するための免疫原を含む凍結乾燥した抗原性組成物の使用を提供する。当該使用はさらに、(iii)N.meningitidis血清群A、C、W135、および/またはYの1つ以上に由来する複合化莢膜糖も伴い得る。
【0108】
これらの使用および方法は、好ましくは、N.meningitidisが原因の疾患、例えば細菌性(または、より詳細には髄膜炎菌性)髄膜炎、または敗血症の予防および/または処置のためである。
【0109】
治療処置の効力を確認する方法の1つは、本発明の組成物の投与後のナイセリア感染症のモニタリングを伴う。予防的処置の効力を確認する方法の1つは、組成物の投与後の抗原に対する免疫反応のモニタリングを伴う。本発明の組成物の免疫原性は、それらを試験対象(例えば、12〜16ヶ月齢の小児または動物モデル[117])に投与し、次いで血清細菌性抗体(SBA:serum bactericidal antibody)およびELISA力価(GMT)を含む標準的パラメータを測定することにより、特定することができる。これらの免疫反応は、一般的に、当該組成物の投与の約4週間後に特定され、当該組成物の投与前に測定された値と比較される。少なくとも4倍または8倍のSBA上昇が好ましい。1用量より多い組成物が投与される場合、1回より多くの投与後の特定が行われ得る。
【0110】
一般的に、本発明の組成物は、対象に投与された後、血清殺菌抗体反応を誘導することができる。これらの反応は、マウスにおいて簡便に測定されるものであり、ワクチン効力の標準的指標である。血清殺菌活性(SBA:serum bactericidal activity)は、補体によって媒介される細菌死滅を評価するものであり、ヒトの補体またはウサギ乳仔の補体を用いてアッセイすることができる。WHO基準は、ワクチンが、90%より多くの受容体において、少なくとも4倍のSBA上昇を誘導することを要求している。MeNZB(商標)は、第3の用量の投与の4〜6週間後に、SBAにおいて4倍の上昇を惹起する。
【0111】
好ましい組成物は、ヒト対象患者において、容認可能な割合の対象に対して血清防御の基準より優れた抗体力価を与え得る。その力価より上では宿主が抗原に対して血清変換されると考えられる関連抗体力価を有する抗原は周知であり、そのような力価は、WHOなどの組織により公開されている。好ましくは、被験体の統計学的に有意な試料の80%より多く、より好ましくは90%より多く、さらにより好ましくは93%より多く、並びに最も好ましくは96〜100%が血清変換される。
【0112】
本発明の組成物は、一般的に、患者に直接投与される。直接送達は、非経口注射(例えば、皮下、腹腔内、静脈内、筋肉内、または組織の間質腔へ)により、または他の好適な経路により達成され得る。本発明は、全身性免疫および/または粘膜性免疫を惹起するために使用され得る。大腿部または上腕への筋肉内投与が好ましい。注射は、針(例えば、皮下組織用針)を介し得るが、代わりに無針注射を用いてもよい。典型的な筋肉内用量は0.5mLである。
【0113】
投薬処置は、単回用量スケジュールまたは複数回用量スケジュールであり得る。複数回用量は、初回免疫スケジュールおよび/または追加免疫スケジュールにおいて用いられ得る。初回用量スケジュールに続いて、追加免疫用量スケジュールが行われ得る。初回免疫投薬の間(例えば、4〜16週間)、および初回免疫と追加免疫との間の好適なタイミングは、慣習的に決定され得る。OMVベースのRIVMワクチンは、0.2ヶ月、および8ヶ月あるいは0ヶ月、1ヶ月、2ヶ月、および8ヶ月でのワクチン接種による3回投薬または4回投薬の初回免疫スケジュールを用いて試験した。6週間の間隔で、3回投薬としてMeNZB(商標)を投与する。
【0114】
本発明の組成物は、髄膜炎菌の2種以上の高毒性系統に対する殺菌抗体反応を誘導するために使用され得る。特に、それらは、好ましくは、以下の3つの高毒性系統:(i)クラスターA4、(ii)ET5複合体、および(iii)系統3、のうちの2つまたは3つに対して殺菌反応を誘導することができる。加えて、それらは、高毒性系統のサブグループI、サブグループIII、サブグループIV−1、またはET−37複合体の1つ以上に対する殺菌抗体反応、並びに他の系統、例えば高侵襲性系統、に対する殺菌抗体反応を誘導し得る。これは、当該組成物がこれら高毒性系統内のそれぞれおよびすべての髄膜炎菌の菌株に対して殺菌抗体を誘導することができることを必ずしも意味するものではなく、当該組成物によって誘導される抗体は、例えば、特定の高毒性系統のうちの4つ以上の髄膜炎菌株の任意の所定の群に対し、当該群の少なくとも50%(例えば、60%、70%、80%、90%、またはそれ以上)に対して殺菌性である。好ましい菌株の群は、以下の国:GB、AU、CA、NO、IT、US、NZ、NL、BR、およびCUのうちの少なくとも4つにおいて単離された菌株を含むであろう。当該血清は、好ましくは、少なくとも1024の殺菌力価を有し(例えば、210、211、212、213、214、215、216、217、218、またはそれ以上、好ましくは少なくとも214)、例えば、当該血清は、1/1024に希釈された場合の特定の菌株の試験細菌の少なくとも50%を殺傷することができる。
【0115】
有用な組成物は、血清群Bの髄膜炎菌の以下の菌株:(i)クラスターA4由来の菌株961−5945(B:2b:P1.21,16)および/または菌株G2136(B:−);(ii)ET−5複合体由来の菌株MC58(B15:P1.7,16b)および/または菌株44/76(B:15:P1.7,16);(iii)系統3由来の菌株394/98(B:4:P1.4)および/または菌株BZ198(B:NT:−)、に対して殺菌反応を誘導することができる。より好ましい組成物は、菌株961−5945、菌株44/76、および菌株394/98に対する殺菌反応を誘導することができる。
【0116】
菌株961−5945および菌株G2136は、両方ともNeisseriaMLST参考株である[参考文献118のid638および1002]。菌株MC58は広く入手可能であり(例えば、ATCC BAA−335)、参考文献119において配列決定されている。菌株44/76は広く用いられ、特徴解析されており(例えば、参考文献120)、NeisseriaMLST参考株の1つである[参考文献118のid237;参考文献19の表2の32行]。菌株394/98は、元は1998年にニュージーランドにおいて単離されており、この菌株を使用していくつかの研究が発表されている(例えば、参考文献121および122)。菌株BZ198は、別のMLST参考株である(参考文献118のid409;参考文献19の表2の41行)。
【0117】
本発明のさらなる組成物
本発明は、N.meningitidis血清群Bに対して免疫反応を惹起するための免疫原を含む凍結乾燥した抗原性組成物であって、当該免疫原が上記において説明したようなMen−B外膜小胞を含み、ただし、当該組成物は、菌株F91;JB10124;またはHP10124のいずれかに由来する小胞を含まない、抗原性組成物を提供する。
【0118】
本発明は、N.meningitidis血清群Bに対して免疫反応を惹起するための免疫原を含む凍結乾燥した抗原性組成物であって、当該免疫原が上記において説明したようなMen−B外膜小胞を含み、当該小胞がL2またはL3免疫型の菌株に由来する、抗原性組成物を提供する。当該組成物は、L2およびL3菌株の両方に由来する小胞を含み得る。
【0119】
本発明は、N.meningitidis血清群Bに対して免疫反応を惹起するための免疫原を含む凍結乾燥した抗原性組成物であって、当該免疫原が上記において説明したようなMen−B外膜小胞を含み、当該小胞がシアリル−ラクト−N−ネオテトラオースエピトープを含まないLOSを含む、抗原性組成物を提供する。
【0120】
本発明は、N.meningitidis血清群Bに対して免疫反応を惹起するための免疫原を含む凍結乾燥した抗原性組成物であって、当該免疫原が精製されたfHBPタンパク質を含む、抗原性組成物を提供する。当該組成物は、上記において説明したような、fHBPの二つ以上の変異体を含み得る。
【0121】
これらの凍結乾燥された組成物は、水中油エマルションを含むアジュバントによる再構成に好適であり、したがって、それらは、本発明のキット構成要素としての使用のため、または本発明の方法における使用のため、などに好適である。エマルションアジュバントを含まずにそれらを販売または配布してもよいが、それでも、それらは本発明の独立した実施形態である。しかしながら、それらは、液体アジュバントを含む別の容器と組み合わせて、キット形態にパッケージングしてもよい。この液体アジュバントは、好ましくは水中油エマルションを含む。
【0122】
本発明はさらに、N.meningitidis血清群Bの膜小胞とサブミクロンの水中油エマルションとを含むアジュバント化された抗原性組成物を提供する。当該エマルションは、好ましくはスクワレンおよび/またはポリソルベート80を含む。当該エマルションの油滴の直径は、理想的には<500nmである。当該小胞は、上記において説明したような1種以上のタンパク質を過剰発現し得、および/または上記において説明したようなノックアウト変異体の1種以上、例えば、LOSを切端するためにダウンレギュレーションまたはノックアウトされたLgtBおよび/またはGalE、アップレギュレーションされたTbpAなど、を含み得る。「ブレブ内」複合化を用いてもよい。このアジュバント化された組成物は、上記において説明したように、凍結乾燥された抗原をエマルションと混合することによって調製してもよく、あるいは対照的に、水性小胞調製物を使用して調製してもよい。
【0123】
さらなる抗原性成分
N.meningitidisに由来する抗原に加えて、組成物は、さらなる病原菌に由来する抗原を含んでいてもよい。例えば、当該組成物は、以下のさらなる抗原:
−Streptococcus pneumoniaeに由来する抗原、例えば、(通常、複合化された)糖など、
−B型肝炎ウイルスに由来する抗原、例えば、表面抗原HBsAgなど、
−Bordetella pertussisに由来する抗原、例えば、百日咳ホロ毒素(PT:pertussis holotoxin)およびB.pertussisに由来する糸状性赤血球凝集素(FHA:filamentous haemagglutinin)、必要に応じて、ペルタクチンならびに/あるいは凝集原2および凝集原3との組み合わせにおいて、
−ジフテリア抗原、例えばジフテリアトキソイドなど、
−破傷風抗原、例えば、破傷風トキソイドなど、
−通常、複合化された、Haemophilus influenzae B(Hib:Haemophilus influenzae B)に由来する糖抗原、
−不活化されたポリオウイルス抗原
の1つ以上を含み得る。
これらのさらなる抗原は、水中油エマルションと同じ容器における液体形態において、凍結乾燥されたMen−B抗原と同じ容器における凍結乾燥した形態において、または第3の容器(凍結乾燥された形態、または、通常は液体形態のいずれかにおいて)に含まれ得る。
【0124】
ジフテリア抗原が当該組成物中に含まれる場合、破傷風抗原および百日咳抗原も含まれることが好ましい。同様に、百日咳抗原が含まれる場合、ジフテリア抗原および破傷風抗原も含まれることが好ましい。同様に、百日咳抗原が含まれる場合、ジフテリア抗原および破傷風抗原も含まれることが好ましい。したがって、DTPの組み合わせが好ましい。
【0125】
Hib糖が含まれる場合(通常、複合体として)、当該糖部分は、多糖(例えば、細菌から精製されるような全長ポリリボシルリビトールホスフェート(PRP:polyribosylribitol phosphate))であり得るが、オリゴ糖(例えば、MWは約1〜約5kDa)を作製するために、例えば加水分解によって、精製された糖を断片化することも可能である。再構成されたワクチンにおけるHib複合体の濃度は、通常、0.5μg〜50μg、例えば、1〜20μg、10〜15μg、12〜16μg、などの範囲であろう。当該量は、約15gであり得るか、またはいくつかの実施形態では約12.5μgであり得る。5μg未満の質量が、好適であり得、例えば、1〜5μgの範囲、2〜4μgの範囲、または約2.5μgであり得る[123]。上記において説明したように、Hib糖および髄膜炎菌性糖を含む組み合わせにおいて、前者の用量は、後者の用量に基づいて選択され得る(特に、多数の髄膜炎菌性血清群の場合、それらの平均質量により)。Hib複合体のさらなる特性は、担体タンパク質(例えば、CRM197または破傷風トキソイド)、結合、比率などの選択を含めて、髄膜炎菌性複合体に対して上記において説明した通りである。
【0126】
S.pneumoniae抗原が含まれる場合、これは、ポリペプチドまたは糖であってもよい。複合体莢膜糖は、肺炎球菌に対して免疫するために特に有用である。当該糖は、細菌からの当該糖の精製の際に生じるサイズを有する多糖であり得るか、または、そのような多糖の断片化により達成されたオリゴ糖であり得る。7価のPREVNAR(商標)製品において、例えば、6つの糖は完全な多糖として存在し、残りの1つ(18C血清型)は、オリゴ糖として存在する。組成物は、以下の肺炎球菌の血清型:1、2、3、4、5、6A、6B、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、15B、17F、18C、19A、19F、20、22F、23F、および/または33Fの1つ以上に由来する莢膜糖を含み得る。組成物は、多数の血清型、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、またはそれ以上の血清型を含み得る。7価、9価、10価、11価、および13価の複合体の組み合わせは、23価の複合化されていない組み合わせと同様に、当技術分野において既に公知である。例えば、10価の組み合わせは、血清型1、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19F、および23Fに由来する糖を含み得る。11価の組み合わせは、さらに、血清型3に由来する糖を含み得る。12価の組み合わせは、10価の混合物に、血清型6Aおよび19A、6Aおよび22F、19Aおよび22F、6Aおよび15B、19Aおよび15B、r22Fおよび15Bを加え得る。13価の組み合わせは、11価の混合物に、血清型19Aおよび22F、8および12F、8および15B、8および19A、8および22F、12Fおよび15B、12Fおよび19A、12Fおよび22F、15Bおよび19A、15Bおよび22F、などを加え得る。肺炎球菌複合体のさらなる特性は、担体タンパク質(例えば、CRM197または破傷風トキソイド)、結合、比率などの選択を含めて、髄膜炎菌性複合体に対して上記において説明した通りである。組成物が2種以上の複合体を含む場合、各複合体は、同じ担体タンパク質を使用してもよいし、または異なる担体タンパク質を使用してもよい。参考文献124に、多価性肺炎球菌複合体ワクチンにおいて異なる担体タンパク質を使用する場合の潜在的利点が記載されている。
【0127】
一般論
用語「〜を含む(comprising)」は、「〜を含む(including)」および「〜からなる」を包含し、例えば、Xを「含む」組成物は、排他的にXから成り得るか、または何かの追加、例えば、X+Y、を含み得る。
【0128】
数値xとの関連において、用語「約」は、例えば、x±10%を意味する。
【0129】
言葉「実質的に」は、「完全に」を排除するものではなく、例えば、Yを「実質的に含まない」組成物は、Yを完全に含まなくてもよい。必要に応じて、言葉「実質的に」は、本発明の定義から省略される場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】本発明の組成物に対する、重ね合わせた2つの分析トレースを示す。当該線は、凍結乾燥前および再構成後の組成物である。本質的に、これらは非常に似ているため、1本の線だけが視認できる。
【図2】4℃で保存された組成物および37℃で保存された組成物に対する、重ね合わせた2つの分析トレースを示す。図1とは異なり、2本の線が視認できる。
【図3】様々な処方物のSDS−PAGE分析を示す。10本のレーンは、左から右へ、(1):MWマーカー、(2)〜(4):100μg/ml、50μg/ml、および25μg/mlでの液体抗原、(5):凍結乾燥前の、2%のマンニトールおよび3%のスクロースの混合物中における抗原、(6):レーン(5)と同様であるが、ただし凍結乾燥およびwfiによる再構成後、(7):レーン(5)と同様であるが、ただし凍結乾燥およびMF59による再構成後、(8)〜(10):レーン(5)〜(7)と同様であるが、ただし5%スクロースにおいて、を示す。
【発明を実施するための形態】
【0131】
Men−Bワクチンにおけるアジュバントの含入
Novartis社のMen−Bワクチンの初期の前臨床評価は、最適な免疫反応は水酸化アルミニウムアジュバントの存在を必要とすることを示していた。しかしながら、このアジュバントの存在下でさえ、菌株適用範囲は不完全であった。例えば、試験したST32およびST8菌株の100%が、ワクチンによって惹起された血清によって死滅したが、ST11菌株では、この値は65%まで低下した。対照的に、アジュバントとしてMF59エマルションを使用すると、ST32、ST8、およびST11菌株のすべてに対して、100%の適用範囲が得られた。さらなる実験により、MF59の卓越性が確認された。
【0132】
同じ卓越性が、血清群A、C、W135、およびYに由来する複合化莢膜糖をMen−Bワクチンに加えた場合にも見られた。このA−B−C−W−Yワクチンによって達成された免疫原性は、抗細菌力価および菌株適用範囲に関して、水酸化アルミニウムを使用した場合よりMF59を使用する方がより良好であった。
【0133】
したがって、MF59は、水酸化アルミニウムアジュバントと比較した場合、増強された免疫原性効力を提供する。しかしながら、これの安定性を試験したところ、4℃で保存した場合でさえ、約12週間後に分解し始めた。より高い温度で保存した場合、分解は、早くも2週間後において明らかであり、6ヶ月後には完全に分解した。Agilent2100Bioanalyzerまたはサイズ排除クロマトグラフィーを使用した分析により、分解を確認した。対照的に、水酸化アルミニウムに吸着させた場合、当該抗原は、安定したままであった。
【0134】
MF59において、非B血清群に由来する複合化された莢膜糖に対する安定性の低下も見られた。遊離シアル酸(Men−C、Men−W135、およびMen−Yの莢膜糖における成分)のレベルは、4℃で保存したMF59−アジュバント化された処方物において、次第に上昇し、6ヶ月後には約15%に達した。しかしながら、より高い温度では、当該遊離シアル酸のレベルは、約10週間後に50%に達し、6ヶ月で100%に達した(すなわち、完全分解した)。
【0135】
したがって、MF59によって達成された増強された免疫原性は、保存安定性を犠牲にしている。MF59を使用し、および/または水酸化アルミニウムアジュバントへの吸着を必要としなくても、安定な処方物を達成することができるかどうかを見極めるために研究を実施した。
【0136】
Men−Bの凍結乾燥
安定性の目的を達成する試みにおいて、Men−B抗原を凍結乾燥した。再構成の後に、それらの効力が保持されていることを確認した。その上、Men−B抗原と、血清群A、C、W135、およびYのそれぞれに由来する複合化された莢膜糖との混合物に対しても安定性が確認された。
【0137】
例えば、図1は、Men−Bタンパク質の溶出位置に一致するピークを有する、重ねられた2本の分析トレースを示す。当該トレースはほとんど同じであり、実質的な物理化学的変化がないことを明らかにしている。対照的に、図2は、4℃または37℃のいずれかにおいて保存された同じ組成物の2本の重ねられたトレースを示しており、変化が容易に視認できる。他の解析技術により、凍結乾燥の前後にどのような検出可能な変化も存在しないことが確認された。個々のMen−B抗原の無欠陥性が、4℃で6ヶ月の凍結乾燥保存の後でさえ保持されることが明らかとなった。
【0138】
当該組成物は、4.5%のマンニトールおよび1.5%のスクロースの存在下で凍結乾燥してある。
【0139】
したがって、アルミニウム塩への吸着を必要とせずに、髄膜炎菌性抗原の長期安定性を達成することができる。したがって、凍結乾燥により、当該抗原を、水中油エマルションとの組み合わせにおいて使用することが可能となり、それにより、これらのアジュバントに対して実証された増強された効力および菌株適用範囲が得られる一方で、関連する安定性問題を避けていることが可能となる。
【0140】
さらなる処方物
Men−Bワクチンの凍結乾燥された提示のためのさらなる開発研究において、組み換えタンパク質ワクチンの2つの処方物を調製した。両方とも、凍結乾燥安定化剤としてスクロースを使用するが、一方にはさらにマンニトールも含まれている。浸透圧モル濃度は、300mOsmUであり、並びにpHは7.0である。各バイアル瓶は、40%過剰の1回ヒト用量に十分な材料を含み(70μgの各組み換えタンパク質、15mgのPBS、および14mgのマンニトールもしくは21mgのマンニトール+35mgのスクロースのいずれか)、MF59の700μlの水で(または、比較のため、wfiで)再構成される。
【0141】
湿気レベルは、凍結乾燥直後および低温および高温での1ヶ月後に測定した。湿気含有量は、約1.1%で一定のままであった。
【0142】
凍結乾燥前および再構成後のRP−HPLCトレースの比較は、両方の処方物におけるタンパク質が、凍結乾燥後、37℃で1ヶ月でも安定に維持されることを示していた。SDS−PAGE(図3)およびウェスタンブロットも、3つのタンパク質は、4℃および37℃の両方においてMF59またはwfiのいずれかによる再構成後に、分解または凝集の兆しが無く、凍結乾燥プロセス後に安定であることが示された。Experion分析からも同じ結果が得られた。サイズ排除クロマトグラフィーは、凍結乾燥により凝集の微増が生じるが、凝集の量は、その後、37℃で3ヶ月後または4℃で6ヶ月後でさえ増加しないことを示していた。
【0143】
免疫原性の研究
免疫原性の研究において、マウスを使用して、ワクチン有効性についての凍結乾燥の効果を評価した。凍結乾燥した処方物をMF59で再構成し、即座にMF59と混合した(「2バイアル」アプローチとして)液体形態における同じ抗原に対して力価を比較した。当該処方物は、同様の力価を誘導した。
【0144】
より長期間の安定性を研究するため、2つの凍結乾燥された抗原調製物(一方をスクロースと共に凍結乾燥し、もう一方はスクロース+マンニトールと共に凍結乾燥した)を4℃で保存し、それらの免疫原性を、3ヶ月および6ヶ月の保存の後に試験した。保存された抗原は、MF59で再構成し(さらに抗原は4℃で保存した)、免疫化のために即座に使用した。比較のため、並行して、調製したばかりの水性抗原とMF59とを混合して試験した。
【0145】
2つの別々の研究によるELISAの結果は、MF59で再構成された場合、凍結乾燥した処方物は、調製されたばかりの新鮮な処方物によって惹起される場合と同様の抗体力価(GMT)を誘導することを示していた。抗体反応をSBAによって評価した場合も同様のことが確認され、例えば、スクロース−凍結乾燥抗原により、ゼロ時間において確認された32768のSBA力価は、6ヶ月の保存後にも依然として確認された。したがって、Men−B抗原は、凍結乾燥および保存後も活性を維持する。
【0146】
さらなる研究において、凍結乾燥した調製物を4℃または37℃のいずれかで保存し、次いで免疫原性を評価した。37℃で1ヶ月保存した後でさえ、凍結乾燥された抗体は、SBA活性の喪失を示さなかった。
【0147】
凍結乾燥されたMen−B抗原と混合されるエマルションのサイズ安定性
MF59エマルションの油滴のサイズは、エマルションのみとして、または凍結乾燥されたMen−B抗体との混合物として、または対照抗原との混合物としてのいずれかにおいて、4℃および25℃で24時間後に測定した。液滴サイズ(nm)は、以下の通りであった。
【0148】
【表1】

したがって、凍結乾燥されたMen−B抗原の存在下でのエマルションの粒子サイズは、4℃または25℃で24時間安定であり、基本的にそのままのエマルションと同じである。
【0149】
本発明は、例示のみの目的で記載されており、本発明の範囲および精神の内に維持しつつ改変がなされ得ることが理解されるであろう。
【0150】
参考文献
【0151】
【化1】

【0152】
【化2】

【0153】
【化3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)水中油エマルションを含むアジュバントを収容した第1の容器と、(ii)Neisseria meningitidis血清群Bに対する免疫反応を惹起するための免疫原を含む凍結乾燥された抗原性組成物を収容した第2の容器とを含むキット。
【請求項2】
前記第2の容器における前記凍結乾燥された抗原性組成物が、さらに、N.meningitidis血清群A、C、W135、および/またはYの1つ以上に由来する複合化された莢膜糖を含む、請求項1に記載のキット。
【請求項3】
(i)Neisseria meningitidis血清群Bに対する免疫反応を惹起するための免疫原と、(ii)Neisseria meningitidis血清群A、C、W135、および/またはYの1つ以上に由来する複合化された莢膜糖とを含む、凍結乾燥された抗原性組成物。
【請求項4】
(i)水中油エマルションを含むアジュバントと、(ii)Neisseria meningitidis血清群Bに対する免疫反応を惹起するための免疫原を含む凍結乾燥された抗原性組成物とを混合する工程を含む、免疫原性組成物を調製するための方法。
【請求項5】
前記凍結乾燥された抗原性組成物が、さらに、N.meningitidis血清群A、C、W135、および/またはYの1つ以上に由来する複合化された莢膜糖を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記凍結乾燥された抗原性組成物が、請求項3に記載されたものである、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記凍結乾燥された抗原性組成物が、N.meningitidisの血清群B菌株に由来する膜小胞を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載のキット、組成物、または方法。
【請求項8】
前記凍結乾燥された抗原性組成物が、N.meningitidisの血清群B菌株の組み換えタンパク質を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載のキット、組成物、または方法。
【請求項9】
前記凍結乾燥された抗原性組成物が、N.meningitidisの血清群B菌株に由来するリポオリゴ糖を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載のキット、組成物、または方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−500662(P2011−500662A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−529472(P2010−529472)
【出願日】平成20年10月17日(2008.10.17)
【国際出願番号】PCT/IB2008/003283
【国際公開番号】WO2009/050586
【国際公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】