説明

高い乾燥強度を有する紙、板紙及び厚紙の製造方法

ナノセルロースと、アニオン性ポリマー及び水溶性カチオン性ポリマーの群から選択される少なくとも1のポリマーとからの水性組成物を添加し、この紙料を脱水し、そして、この紙製品を乾燥することによる、高い乾燥強度を有する紙、板紙及び厚紙を製造する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の詳細な説明
本発明は、ナノセルロースと、アニオン性ポリマー及び水溶性カチオン性ポリマーの群から選択される少なくとも1のポリマーとからの水性組成物を添加し、この紙料を脱水し、そして、この紙製品を乾燥することによる、高い乾燥強度を有する紙、板紙及び厚紙を製造する方法に関する。
【0002】
紙の乾燥強度を高めるためには、乾燥増強剤を既に乾燥した紙の表面に設けるか、又は紙葉形成前に紙料に添加することができる。乾燥増強剤は通常は、1〜10%の水溶液の形で適用される。乾燥増強剤のこのような溶液を紙の表面に設けると、引き続く乾燥プロセスでは水の少なからぬ量を蒸発しなくてはならない。この乾燥工程は極めてエネルギー消費的であり、かつ、製紙機械での通常の乾燥装置の能力は大抵は、この製紙機械の最大限可能な製造速度で運転できるほど大きくないので、この製紙機械の製造速度は、乾燥強度仕上げ加工された紙が十分な規模で乾燥されるように低められなくてはならない。
【0003】
これに対して、この乾燥増強剤を紙葉形成前に紙料に添加すると、この仕上げ加工された紙は1回しか乾燥させてはならない。ドイツ連邦共和国特許出願公開第3506832号から、高い乾燥強度を有する紙を製造する方法は知られており、この場合には、紙料にまず水溶性カチオン性ポリマーを添加し、引き続き水溶性アニオンポリマーを添加する。水溶性カチオン性ポリマーとしては、実施例において、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド及びエピクロロヒドリンで架橋された、アジピン酸とジエチレントリアミンとからの縮合生成物が記載される。水溶性アニオン性ポリマーとしては、例えばエチレン系不飽和C3〜C5−カルボン酸のホモポリマー又はコポリマーが考慮される。このコポリマーは例えば、エチレン性不飽和C3〜C5カルボン酸、例えばアクリル酸35〜99質量%を含む。
【0004】
WO 04/061235 A1からは、特に高い湿潤強度及び/又は乾燥強度を有する紙、特に薄葉紙を製造する方法が知られており、この場合、紙料にまず、ポリマー1g当たり少なくとも1.5ミリ当量(meq)の第一級アミノ官能基を含有し、かつ少なくとも10000ダルトンの分子量を有する水溶性カチオン性ポリマーを添加する。この場合、N−ビニルホルムアミドの部分加水分解されたホモポリマー及び完全加水分解されたホモポリマーが特に強調される。引き続き、アニオン基及び/又はアルデヒド基を含有する水溶性アニオン性ポリマーが添加される。前記方法の利点としてはとりわけ、種々の紙特性、中でも湿潤強度及び乾燥強度に関連する記載された2成分系の可変性が強調されている。
【0005】
WO 06/056381 A1からは、ビニルアミン単位含有水溶性ポリマー及び水溶性ポリマー状アニオン性化合物を別々に紙料に添加し、この紙料を脱水し、紙製品を乾燥させることによって高い乾燥強度を有する紙、板紙及び厚紙を製造する方法が知られており、その際、ポリマー状アニオン性化合物として、式(I)
【化1】

[式中、R1、R2=H又はC1〜C6−アルキルを意味する]
の少なくとも1つのN−ビニルカルボン酸アミド、
少なくとも1つの酸基含有モノエチレン性不飽和モノマー及び/又はそのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩又はアンモニウム塩、及び場合により
他のモノエチレン性不飽和モノマー、及び場合により
少なくとも2個のエチレン性不飽和二重結合を分子中に有する化合物
の共重合により得られる少なくとも1の水溶性コポリマーが使用される。
【0006】
番号EP 09 150 237.7を有する先のヨーロッパ出願からは、水溶性カチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーを紙料に別々に添加することによって高い乾燥強度を有する紙を製造する方法が知られており、その際、アニオン性ポリマーは、最高10mol%の酸基に関する含有量を有する水不溶性ポリマーの水性分散液又は非イオン性ポリマーのアニオン性に調整された水性分散液である。引き続き、紙料の脱水及び紙製品の乾燥が行われる。
【0007】
番号EP 09 152 163.3を有する先のヨーロッパ出願では、高い乾燥強度を有する紙、厚紙及び板紙を製造する方法が開示され、これは同様に水溶性カチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーを紙料に添加し、この紙料を脱水し、この紙製品を乾燥させることに特徴がある。この場合に、アニオン性ポリマーとして、少なくとも1のアニオン性ラテックス及び少なくとも1の分解デンプンの水性分散液が使用される。
【0008】
本発明の基礎となる課題は、高い乾燥強度及び可能な限り低い湿潤強度を有する紙の更なる製造方法であって、この紙製品の乾燥強度が、先行技術に対して可能な限り更に改善されている方法を提供することである。
【0009】
前記課題は、本発明により、ナノセルロースと、アニオン性ポリマー及び水溶性カチオン性ポリマーの群から選択される少なくとも1のポリマーとからの水性組成物を添加し、この紙料を脱水し、そして、この紙製品を乾燥することによる、高い乾燥強度を有する紙、板紙及び厚紙を製造する方法により解決される。
【0010】
ナノセルロースとは、この公報において、プロセス工程によって、通常のサイズ(長さ約2000〜3000μm、厚さ約60μm)を有する天然繊維の状態から、特にこの厚さサイズが極めて減少される形に移行されるセルロース形態が理解される。
【0011】
ナノセルロースの製造は、文献で公知である。例えば、WO 2007/091942 A1には、酵素の使用下で実施できる粉砕方法が開示される。さらに、セルロースを適した溶媒中でまず溶解させ、引き続きナノセルロースとして水性媒体中で沈殿させる方法が知られている(例えばWO 2003/029329 A2に記載)。
【0012】
さらに、ナノセルロースは市販されており、例えばJ. Rettenmeier & Soehne GmbH & Co. KG社から商品名Handelsprodukt Arbocel(R)で販売されている製品である。
【0013】
本発明で使用されるナノセルロースは、全ての適した溶媒中で溶解されかつ使用でき、例えば、水、有機溶媒又はこの任意の混合物中である。この種の溶媒は更に、なお更なる成分、例えば任意の量にあるイオン性液体を含有できる。
【0014】
イオン性液体を含有するナノセルロースは、例えば、天然繊維の形にある、イオン性液体中に存在するセルロースを上記したプロセスの1つにおいて微細化することにより製造される。イオン性液体中に存在する、天然繊維の形にあるセルロースは、特にUS 6,824,599 B2から知られている。このUS特許公報の内容は、ここで明示的に引用することにより取り込まれる。
【0015】
特にこの刊行物ではナノセルロースとは、その長さ寸法が1000μm未満、好ましくは500μm未満、しかし100nm超であるセルロースが理解されるものである。好ましくは、これに応じて、この長さ寸法は100nm〜500μm、特に好ましくは100nm〜100μm、特にとりわけ好ましくは100nm〜50μm、とりわけ100nm〜10μmである。このセルロースの厚さは例えば50μm〜3nmの範囲内にある。好ましくはこの厚さは1μm〜5nmである。厚さ及び長さ寸法についてここで挙げた値は無論平均値であり、例えば、セルロース繊維の少なくとも50%がこの挙げた範囲内に、好ましくはセルロース繊維の少なくとも80%がこの挙げた範囲内にある。
【0016】
本発明の方法の他の一実施態様において、セルロース繊維の少なくとも80%の繊維厚さが50μm〜3nm、好ましくは1μm〜5nmにあり、かつ5ppm〜2質量%、好ましくは10ppm〜1質量%のイオン性液体を含有するナノセルロースが好ましい。
【0017】
従って、本発明の主題は、セルロース繊維の少なくとも80%の繊維厚さが50μm〜3nm、好ましくは1μm〜5nmにあり、かつ5ppm〜2質量%、好ましくは10ppm〜1質量%のイオン性液体を含有するナノセルロースでもある。
【0018】
このセルロース繊維の長さ寸法並びに厚さは例えばCryo−TEM撮影に基づいて決定されることができる。前述のように、本発明の方法において使用可能なナノセルロースは5nmまでの繊維厚さ及び10mmまでの長さ寸法(Laengenausdehnung)を有する。このナノセルロース繊維はフィブリルとも呼ばれることができ、この最小規則構造はセルロースベース物質中(植物種に広く依存して5〜30nm;重合度10000までのアンヒドログリコース単位)である。前記物質は典型的には数百GPaまでの高い弾性率(Elastizitaetsmodule)を有し、かつこの種のフィブリルの強度はGPa範囲内にある。この高い剛性は、この結晶構造の結果であり、この結晶構造中では長い平行な多糖鎖が水素架橋によって一緒に維持される。Cryo−TEM法は当業者に知られている。Cryo−TEMはこの関連において、セルロースの水性分散液が凍結され、かつ電子透過を用いて測定されることを意味する。このナノセルロース繊維は水性媒体中で典型的には複数の繊維の相互にもつれた網状構造中に存在する。これは巨視的なレベルでゲルを生じる。このゲルはレオロジー的に測定でき、その際、この貯蔵弾性率は、この損失弾性率よりも全体としてより大きいことが示された。典型的にはこのゲル挙動は既に水中のナノセルロース0.1質量パーセントの濃度で存在する。
【0019】
本発明の方法では好ましくは、水性スラリーの全質量に対して0.1〜25質量%のナノセルロースを含有するナノセルロースの水性スラリーが使用される。好ましくはこの水性スラリーはナノセルロース1〜20質量%、特に好ましくは1〜10質量%、特に1〜5質量%を含有する。
【0020】
本発明の方法で使用可能な水性組成物は、前記ナノセルロースの他に、アニオン性ポリマー及び水溶性カチオン性ポリマーの群から選択されている少なくとも1のポリマーを含有する。
【0021】
本発明の方法の好ましい一実施態様において、この水性組成物は、前記ナノセルロースの他に、少なくとも1のアニオン性ポリマーを含有する。同様に、この水性組成物は、前記ナノセルロース及び前記アニオン性ポリマーの他に、なお、少なくとも1の水溶性カチオン性ポリマーを含有することができる。
【0022】
本発明の方法の別の一実施態様において、この水性組成物は、前記ナノセルロースの他に、水溶性カチオン性ポリマーを含有する。
【0023】
本発明の意味合いにおいてアニオン性ポリマーは水中で実質的に不溶性である。したがって、例えばpH値7.0で標準条件(20℃、1013mbar)下で最高で2.5gのポリマー/水 1リットル、大抵は最高で0.5gのポリマー/水 1リットル、有利には0.1gのポリマー/水 1リットルを越えないで溶解する。この分散液は、ポリマー中の酸基の含有量のためにアニオン性である。この水不溶性ポリマーは例えば、0.1〜10mol%、大抵は0.5〜9mol%、有利には0.5〜6mol%、特に2〜6mol%の酸基に関する含有量を有する。アニオン性ポリマー中の酸基に関する含有量は大抵は2〜4mol%である。
【0024】
このアニオン性ポリマーの酸基は例えば、カルボキシル基、スルホン酸基及びホスホン酸基から選択されている。特に有利にはこの場合にカルボキシル基である。
【0025】
このアニオン性ポリマーは例えば次のものを重合導入して含有している:
(a)C1〜C20−アルキルアクリレート、C1〜C20−アルキルメタクリレート、C原子20個までを含有する飽和カルボン酸のビニルエステル、C原子20個までを有するビニル芳香族化合物、エチレン性不飽和ニトリル、C原子1〜10個を含有する飽和の一価アルコールのビニルエーテル、ビニルハロゲン化物及びC原子2〜8個及び二重結合1個又は2個を有する脂肪族炭化水素の群からの少なくとも1種のモノマー、
(b)エチレン性不飽和C3〜C8−カルボン酸、ビニルスルホン酸、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニルホスホン酸並びにその塩の群からの少なくとも1種のアニオン性モノマー、
(c)任意に、C1〜C10−ヒドロキシアルキルアクリラート、C1〜C10−ヒドロキシアルキルメタクリラート、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−C1〜C20−アルキルアクリルアミド及びN−C1〜C20−アルキルメタクリルアミドの群からの少なくとも1種のモノマー、及び
(d)任意に、分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和二重結合を有するモノマー少なくとも1種。
【0026】
このアニオン性ポリマーは例えば少なくとも40mol%、有利には少なくとも60mol%、特に少なくとも80mol%の、(a)群のモノマー少なくとも1種を重合導入して含有する。このモノマーは実質的に水不溶性であるか又はこのモノマーを用いて実施される単独重合の場合に水不溶性ポリマーを生じる。
【0027】
このアニオン性ポリマーは有利には(a)群のモノマーとして(i)C1〜C20−アルキルアクリラート及び/又はC1〜C20−アルキルメタクリラート及び(ii)スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−ブチルスチレン、4−n−ブチルスチレン、ブタジエン及び/又はイソプレンからなる質量比10:90〜90:10の混合物を重合導入して含有する。
【0028】
アニオン性ポリマーの(a)群の個々のモノマーについての例は、飽和した一価のC1〜C20−アルコールのアクリル酸エステル及びメタクリル酸エステル、例えばメチルアクリラート、メチルメタクリラート、エチルアクリラート、エチルメタクリラート、n−プロピルアクリラート、n−プロピルメタクリラート、イソプロピルアクリラート、n−ブチルアクリラート、sec−ブチルアクリラート、tert−ブチルアクリラート、n−ブチルメタクリラート、sec−ブチルメタクリラート、tert−ブチルメタクリラート、n−ペンチルアクリラート、n−ペンチルメタクリラート、n−ヘキシルアクリラート、n−ヘキシルメタクリラート、シクロヘキシルアクリラート、シクロヘキシルメタクリラート、2−エチルヘキシルアクリラート、2−エチルヘキシルメタクリラート、n−オクチルアクリラート、n−オクチルメタクリラート、n−デシルアクリラート、n−デシルメタクリラート、2−プロピルヘプチルアクリラート、2−プロピルへプチルメタクリラート、ドデシルアクリラート、ドデシルメタクリラート、ラウリルアクリラート、ラウリルメタクリラート、パルミチルアクリラート、パルミチルメタクリラート、ステアリルアクリラート及びステアリルメタクリラートである。有利にはこのモノマーのうち、アクリル酸及びメタクリル酸と飽和した一価のC1〜C10−アルコールとのエステルが使用される。このモノマーの混合物もアニオン性重合体の製造の際に使用され、これは例えばn−ブチルアクリラート及びエチルアクリラートからの混合物又はn−ブチルアクリラート及び少なくとも1種のプロピルアクリラートからの混合物である。
【0029】
アニオン性ポリマーの(a)群の更なるモノマーは次のものである:
C原子1〜20個を有する飽和カルボン酸のビニルエステル、例えばラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニルエステル及び酢酸ビニル、
ビニル芳香族化合物、例えばスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−ブチルスチレン、4−n−ブチルスチレン及び4−n−デシルスチレン、
エチレン性不飽和ニトリル、例えばアクリルニトリル及びメタクリルニトリル、
1〜10個のC原子を含む飽和アルコールのビニルエーテル、好ましくは1〜4個のC原子を含む飽和アルコールのビニルエーテル、例えばビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニル−n−プロピルエーテル、ビニルイソプロピルエーテル、ビニル−n−ブチルエーテル又はビニルイソブチルエーテル、
ビニルハロゲン化物、例えば塩素、フッ素又は臭素で置換されたエチレン系不飽和化合物、好ましくは塩化ビニル及び塩化ビニリデン、並びに
1又は2個のオレフィン性二重結合を有する、2〜8個のC原子を有する脂肪族炭化水素、例えばエチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン及びクロロプレン。
【0030】
(a)群の有利なモノマーは、C1〜C20−アルキル(メタ)アクリラート及びこのアルキル(メタ)アクリラートとビニル芳香族化合物、特にスチレン及び/又は2個の二重結合を有する炭化水素、特にブタジエンとの混合物、又はこの種の炭化水素とビニル芳香族化合物、特にスチレンとの混合物である。アニオン性ポリマーの(a)群の特に有利なモノマーは、n−ブチルアクリラート、スチレン及びアクリルニトリルであり、これらはそれぞれ単独で又は混合して使用できる。モノマー混合物の場合には、アルキルアクリラート又はアルキルメタクリラートのビニル芳香族化合物及び/又は2個の二重結合を有する炭化水素、例えばブタジエンに対する質量比は、例えば10:90〜90:10、有利には20:80〜80:20であってよい。
【0031】
アニオン性ポリマーの(b)群のアニオン性モノマーについての例は、エチレン性不飽和C3〜C8−カルボン酸、例えばアクリル酸、メタクリル酸、ジメタクリル酸、エタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、メチレンマロン酸、アリル酢酸、ビニル酢酸及びクロトン酸である。更に、(b)群のモノマーとして、スルホン基含有モノマー、例えばビニルスルホン酸、アクリルアミド−2−メチル−プロパンスルホン酸及びスチレンスルホン酸並びにビニルホスホン酸が適している。前記群のモノマーは、単独で又は相互に混合して、部分的にか又は完全に中和した形で共重合の際に使用できる。中和のために、例えばアルカリ金属塩基又はアルカリ土類金属塩基、アンモニア、アミン及び/又はアルカノールアミンが使用される。このための例は、苛性ソーダ、苛性カリ、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、トリエタノールアミン、エタノールアミン、モルホリン、ジエチレントリアミン又はテトラエチレンペンタミンである。
【0032】
この水不溶性アニオン性ポリマーは、場合により更なるモノマー(c)としてC1〜C10−ヒドロキシアルキルアクリラート、C1〜C10−ヒドロキシアルキルメタクリラート、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−C1〜C20−アルキルアクリルアミド及びN−C1〜C20−アルキルメタクリルアミドの群からの少なくとも1種のモノマーを含有できる。これらモノマーがアニオン性ポリマーの修飾のために使用される場合には、有利にはアクリルアミド又はメタクリルアミドを使用する。アニオン性ポリマー中の重合導入されるモノマー(c)の量は、例えば20mol%まで、有利には10mol%までであり、このモノマーが重合の際に使用される場合には1〜5mol%の範囲内である。
【0033】
さらに、アニオン性ポリマーは場合により(d)群のモノマーを含有できる。(d)群のモノマーとして、少なくとも2個のエチレン性不飽和二重結合を分子中に有する化合物が考慮される。このような化合物は、架橋剤とも呼ばれる。これらは例えば2〜6個、有利には2〜4個、大抵は2又は3個のラジカル重合可能な二重結合を分子中に含有する。二重結合とは、例えば以下の基であることができる:アクリル−、メタクリル−、ビニルエーテル−、ビニルエステル−、アリルエーテル−及びアリルエステル基。架橋剤についての例は、1,2−エタンジオールジ(メタ)アクリラート(「・・・(メタ)アクリラート」又は「(メタ)アクリル酸」との書き方はここで並びに以下の文章において、「・・・アクリラート」と同様に「・・・メタクリラート」も、又は、アクリル酸と同様にメタクリル酸も意味する)、1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリラート、1,2−プロパンジオールジ(メタ)アクリラート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリラート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリラート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリラート、トリメチロールプロパントリオールジ(メタ)アクリラート、ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリラート、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、1,6−へキサンジオールジビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、ジビニルベンゼン、アリルアクリラート、アリルメタクリラート、メタリルアクリラート、メタリルメタクリラート、(メタ)アクリル酸ブタ−3−エン−2−イルエステル、(メタ)アクリル酸ブタ−2−エン−1−イルエステル、(メタ)アクリル酸3−メチル−ブタ−2−エン−1−イルエステル、(メタ)アクリル酸と次のもののエステル、ゲラニオール、シトロネロール、ケイ皮アルコール、グリセリンモノ−又はジアリルエーテル、トリメチロールプロパンモノ−又は−ジアリルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノアリルエーテル、プロピレングリコールモノアリルエーテル、ジプロピレングリコールモノアリルエーテル、1,3−プロパンジオールモノアリルエーテル、1,4−ブタンジオールモノアリルエーテル、並びに更にイタコン酸ジアリルエステルである。有利にはアリルアクリラート、ジビニルベンゼン、1,4−ブタンジオールジアクリラート及び1,6−ヘキサンジオールジアクリラートである。アニオン性ポリマーの修飾のために架橋剤が使用される場合には、この重合導入される量は2mol%までである。これは例えば0.001〜2、有利には0.01〜1mol%の範囲内にある。
【0034】
水不溶性アニオン性ポリマーは、有利にはモノマー(a)として、スチレン20〜50mol%及び少なくとも1種のアルキルメタクリラート及び/又は少なくとも1種のアルキルアクリラート30〜80mol%から構成される混合物を重合導入して含有する。これらは場合により更にメタクリルニトリル又はアクリルニトリルを30mol%まで重合導入して含有することができる。このようなポリマーは場合により更に上述の(c)群のモノマーで挙げた量のメタクリルアミド及び/又はアクリルアミドで修飾されていることができる。
【0035】
有利には考慮されるアニオン性ポリマーは次のものを重合導入して含有する:
(a)C1〜C20−アルキルアクリラート、C1〜C20−アルキルメタクリラート、ビニルアセタート、ビニルプロピオナート、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−ブチルスチレン、4−n−ブチルスチレン、4−n−デシルスチレン、アクリルニトリル、メタクリルニトリル、ブタジエン及びイソプレンからなる群からの少なくとも1種のモノマー少なくとも60mol%、及び
(b)エチレン性不飽和C3〜C5−カルボン酸の群からの少なくとも1種のアニオン性モノマー0.5〜9mol%。
【0036】
特に有利には、(a)群のモノマー少なくとも1種を少なくとも80mol%重合導入して含有するアニオン性ポリマーである。 前記アニオン性ポリマーは大抵は(a)群のモノマーとして、質量比10:90〜90:10にある(i)C1〜C20−アルキルアクリラート及び/又はC1〜C20−アルキルメタクリラート及び(ii)スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−ブチルスチレン、4−n−ブチルスチレン、ブタジエン及び/又はイソプレンからの混合物を重合導入して含有する。
【0037】
アニオン性ポリマーの製造は、通常はエマルション重合により行われる。したがって、アニオン性ポリマーとはエマルションポリマーである。ラジカルエマルション重合の方法による水性ポリマー分散液の製造は自体公知である(Houben-Weyl, Methoden der organischen Chemie,第XIV巻, Makromolekulare Stoffe, Georg Thieme Verlag, Stuttgart 1961 , 133頁〜を参照のこと)。
【0038】
アニオン性ポリマーの製造のためのエマルション重合の場合、イオン性及び/又は非イオン性の乳化剤及び/又は保護コロイド若しくは安定化剤が、界面活性化合物として使用される。界面活性物質は通常は、この重合すべきモノマーに対して0.1〜10質量%、特に0.2〜3質量%の量で使用される。
【0039】
慣用の乳化剤は、例えば、高級脂肪アルコールスルファートのアンモニウム塩又はアルカリ金属塩、例えば、Na−n−ラウリルスルファート、脂肪アルコールホスファート、エトキシル化C8〜C10−アルキルフェノールであってエトキシル化度3〜30を有するもの並びにエトキシル化C8〜C25−脂肪アルコールであってエトキシル化度5〜50を有するものである。非イオン性乳化剤及びイオン性乳化剤から構成される混合物も考えられる。更に適してるのは、ホスファート基又はスルファート基含有の、エトキシル化及び/又はプロポキシル化アルキルフェノール及び/又は脂肪アルコールである。更なる適した乳化剤は、Houben-Weyl, Methoden der organischen Chemie、第XIV巻、Makromolekulare Stoffe, Georg Thieme Verlag, Stuttgart 1961 、第192〜209頁に詳説されている。
【0040】
アニオン性ポリマーの製造のためのエマルション重合のための水溶性開始剤は、例えばペルオキシ二硫酸のアンモニウム塩及びアルカリ金属塩、例えばペルオキソ二硫酸ナトリウム、過酸化水素又は有機過酸化物、例えばt−ブチルヒドロペルオキシドである。
【0041】
いわゆる還元−酸化(レドックス)開始剤系、例えばペルオキシド、ヒドロペルオキシド又は過酸化水素と、還元剤、例えばアスコルビン酸又は重亜硫酸ナトリウムとの組み合わせも適している。この開始剤系は更に付加的に金属イオン、例えば鉄(II)イオンを含有できる。
【0042】
開始剤の量は一般的に、この重合すべきモノマーに対して0.1〜10質量%、好ましくは0.5〜5質量%である。複数の異なる開始剤もエマルション重合で使用できる。
【0043】
エマルション重合に際して場合によって調節剤が、重合されるべきモノマー100質量部に対して例えば0〜3質量部の量で使用されることができる。これによって、生じるポリマーのモル質量が減少される。適している調節剤は、例えば、チオール基を有する化合物、例えばt−ブチルメルカプタン、チオグリコール酸エチルアクリルエステル、メルカプトエタノール、メルカプトプロピルトリメトキシシラン又はt−ドデシルメルカプタン又はチオール基を有さない調節剤、殊に、例えばテルピノールである。
【0044】
アニオン性ポリマーの製造のためのエマルション重合は通常は30〜130℃、好ましくは50〜100℃で行われる。この重合媒体は水のみからなるか、又は水と、水と混合可能な液体、例えばメタノールとからの混合物からなることもできる。好ましくは水のみが使用される。エマルション重合は、バッチプロセスのみならず、段階方式又は勾配方式を含めた供給法の形でも実施することができる。重合バッチの一部を装入し、重合温度に加熱し、重合し、引き続きこの重合バッチの残部を、通常、その1つ又は複数がモノマーを純粋な形で又は乳化された形で含有する、複数の空間的に分離された供給を介して、連続的に、段階的に又は濃度勾配の重ね合わせ下で、重合の維持下で重合区域に供給する供給法が好ましい。重合の際に、例えば粒径をより良好に調整するためにも、ポリマーシードを装入してもよい。
【0045】
開始剤をラジカル水性エマルション重合の過程で重合容器に添加する手法は、平均的な当業者に知られている。それは完全に重合容器中へと装入してもよいし、ラジカル水性エマルション重合の過程におけるその消費の程度に応じて連続的に又は段階的に使用してもよい。詳しくは、これは開始剤系の化学的性質にも重合温度にも依存する。有利には、一部を装入し、残部は重合区域の消費の程度に応じて供給する。
【0046】
残留モノマーの除去のために、通常はこの本来のエマルション重合の終了後にも、すなわち、少なくとも95%のモノマーの変換率の後に、新たに少なくとも1種の開始剤を添加し、この反応混合物を所定の期間重合温度又はそれより高い温度に加熱する。
【0047】
個々の成分は、供給法の場合には、上部から、側方で、又は反応器の底部を通って下部から反応器に添加することができる。
【0048】
この(共)重合に引き続き、アニオン性ポリマー中に含有される酸基は更に少なくとも部分的に又は完全に中和されていることができる。これは例えば、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の酸化物、水酸化物、カーボナート又はヒドロゲンカーボナートを用いて、好ましくは水酸化物を用いて行われることができ、これには1以上の任意の対イオン、例えばLi+、Na+、K+、Cs+、Mg2+、Ca2+又はBa2+が会合していることができる。さらに中和のために適しているのは、アンモニア又はアミンである。好ましくは、水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムの水溶液である。
【0049】
エマルション重合の際に、アニオン性ポリマーの水性分散液は通常、15〜75質量%、有利には40〜75質量%の固形物質含有率で得られる。アニオン性ポリマーのモル質量Mwは、例えば100000〜100万ダルトンの範囲内にある。このポリマーがゲル相を有する場合には、モル質量測定は容易には可能でない。さらにこのモル質量は前述の範囲を上回る。
【0050】
アニオン性ポリマーのガラス転移温度Tgは、例えば−30〜100℃の範囲内、有利には−5〜70℃の範囲内、特に有利には0〜40℃の範囲内にある(DIN EN ISO11357に応じたDSC法により測定)。
【0051】
この分散したアニオン性ポリマーの粒径は有利には10〜1000nmの範囲内、特に有利には50〜300nmの範囲内にある(Malvern(R) Autosizer 2 Cを用いて測定)。
【0052】
このアニオン性ポリマーは場合により少量のカチオン性モノマー単位を重合導入して含有してよく、この結果両性ポリマーが存在し、しかしこの際このポリマーの総荷電はアニオン性でなくてはならない。アニオン性ポリマーとしては更に、非イオン性モノマーのポリマー分散液が適し、これはアニオン性界面活性剤又は乳化剤(このような化合物は上記でアニオン性ポリマーの製造のためのエマルション重合で記載してある)を用いて乳化されている。この界面活性剤又は乳化剤はこの適用のためにこの全分散液に対して例えば1〜15質量%の量で使用される。
【0053】
前記したように、この水性組成物はナノセルロースの他に、アニオン性ポリマーに加えて又はこれに代えて、水溶性カチオン性ポリマーも含有できる。
【0054】
カチオン性ポリマーとして冒頭部で引用された技術水準において挙げられた全ての水溶性カチオン性ポリマーが考慮される。この場合に、これは例えばアミノ基又はアンモニウム基を有する化合物である。アミノ基は、第一級、第二級、第三級又は第四級基であることができる。前記ポリマーについては、実質的に重合体、重付加化合物又は重縮合物が考慮され、その際、このポリマーは直鎖状又は分枝鎖状の構造から、超分枝状又は樹状の構造まで有することができる。さらに、グラフトポリマーも適用可能である。このカチオン性重合体は本出願の関連において、その水中への溶解性が標準条件(20℃、1013mbar)及びpH7.0で例えば少なくとも10質量%である場合には水溶性と呼ばれる。
【0055】
このカチオン性ポリマーのモル質量Mwは例えば少なくとも1000g/molである。これは例えば大抵は5000〜500万g/molの範囲内にある。カチオン性ポリマーの電荷密度は、例えば0.5〜23meq/g ポリマー、好ましくは3〜22meq/g ポリマー、大抵6〜20meq/g ポリマーである。
【0056】
カチオン性ポリマーの製造のための適したモノマーは例えば次のものである:
α,β−エチレン性不飽和モノ−及びジカルボン酸とアミノアルコール、好ましくはC2〜C12アミノアルコールのエステル。これらはアミン窒素でC1〜C8−モノアルキル化又はジアルキル化されていてもよい。このエステルの酸成分として、例えばアクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、モノブチルマレアート及びこれらの混合物が適している。好ましくはアクリル酸、メタクリル酸及びその混合物が使用される。これには例えば、N−メチルアミノメチル(メタ)アクリラート、N−メチルアミノエチル(メタ)アクリラート、N,N−ジメチルアミノメチル(メタ)アクリラート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリラート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリラート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリラート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリラート及びN,N−ジメチルアミノシクロヘキシル(メタ)アクリラートが挙げられる。
【0057】
同様に適しているのは、前述の化合物と、C1〜C8−アルキルクロリド、C1〜C8−ジアルキルスルファート、C1〜C16−エポキシド又はベンジルクロリドの四級化生成物である。
【0058】
さらに、更なるモノマーとして、N−[2−(ジメチルアミノ)エチル]アクリルアミド、N−[2−(ジメチルアミノ)エチル]メタクリルアミド、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]アクリルアミド、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミド、N−[4−(ジメチルアミノ)ブチル]アクリルアミド、N−[4−(ジメチルアミノ)ブチル]メタクリルアミド、N−[2−(ジエチルアミノ)エチル]アクリルアミド、N−[2−(ジエチルアミノ)エチル]メタクリルアミド及びその混合物が適している。
【0059】
同様に適しているのは、前述の化合物と、C1〜C8−アルキルクロリド、C1〜C8−ジアルキルスルファート、C1〜C16−エポキシド又はベンジルクロリドの四級化生成物である。
【0060】
適したモノマーは、さらに、N−ビニルイミダゾール、アルキルビニルイミダゾール、特にメチルビニルイミダゾール、例えば1−ビニル−2−メチルイミダゾール、3−ビニルイミダゾール−N−オキシド、2−及び4−ビニルピリジン、2−及び4−ビニルピリジン−N−オキシド並びにこれらのモノマーのベタイン性の誘導体及び四級化生成物である。
【0061】
更なる適したモノマーは、アリルアミン、ジアルキルジアリルアンモニウムクロリド、特にジメチルジアリルアンモニウムクロリド及びジエチルジアリルアンモニウムクロリド並びにWO 01/36500 A1から知られている式(II)
【化2】

[式中、
Rは水素又はC1〜C4−アルキルである、
−[Al−]mは、m個のアルキレンイミン単位を有する直鎖状又は分枝鎖状のオリゴアルキレンイミン鎖を意味する、
mは1〜20の範囲内の整数であり、mの数平均はこのオリゴアルキレンイミン鎖中で少なくとも1.5である、
Yは鉱酸のアニオン当量を意味する、及び
nは1≦n≦mの数である]
のアルキレンイミン単位含有モノマーである。
【0062】
前述の式(II)中でmの数平均が少なくとも2.1、大抵は2.1〜8であるモノマー又はモノマー混合物が好ましい。これらは、エチレン性不飽和カルボン酸とオリゴアルキレンイミン、有利にはオリゴマー混合物の形にあるもの、を反応させることにより得られる。この場合に生じる生成物は、場合により、鉱酸HYを用いて、酸付加塩に移行されることができる。このようなモノマーは水性媒体中でラジカル重合を開始させる開始剤の存在下で、カチオン性のホモポリマー及びコポリマーへと重合されることができる。
【0063】
更なる適したカチオン性モノマーはWO 2009/043860 A1から知られている。この化合物はこの場合に式(III)
【化3】

[式中、
−[Al−]nは、n個のアルキレンイミン単位を有する直鎖状又は分枝鎖状のオリゴアルキレンイミン鎖である、
nは少なくとも1の数を意味する、そして
Xは、直鎖状又は分枝鎖状のC2〜C6−アルキレン基である]のアルキレンイミン単位含有アミノアルキルビニルエーテル、並びに、
モノマー(III)と鉱酸又は有機酸の塩及びモノマー(III)とアルキルハロゲン化物又はジアルキルスルファートとの四級化生成物である。これら化合物は、アルキレンアミンをアミノ−C2〜C6−アルキルビニルエーテルへ付加させることにより入手できる。
【0064】
前述のモノマーは、単独で水溶性カチオン性ホモポリマーへと、又は少なくとも1の他の中性モノマーと一緒になって水溶性カチオン性コポリマーへと、又は少なくとも1の酸基を有するモノマーを用いて両性コポリマー(これは、モル過剰量の重合導入したカチオン性モノマーでは、カチオン性の総荷電を有する)へと重合されることができる。
【0065】
前述のカチオン性モノマーを用いて、カチオン性ポリマーの製造のために共重合される中性モノマーとして、例えば、次のもののエステル:α,β−エチレン性不飽和モノ−及びジカルボン酸とC1〜C30−アルカノール、C2〜C30−アルカンジオール、アミドα,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸及びそのN−アルキル−及びN,N−ジアルキル誘導体、次のもののエステル:ビニルアルコール及びアリルアルコールと飽和C1〜C30−モノカルボン酸、ビニル芳香族化合物、ビニルハロゲン化物、ビニリデンハロゲン化物、C2〜C8−モノオレフィン及びその混合物が適している。
【0066】
更なる適したコモノマーは、例えばメチル(メタ)アクリラート、メチルエタクリラート、エチル(メタ)アクリラート、エチルエタクリラート、n−ブチル(メタ)アクリラート、イソブチル(メタ)アクリラート、tert−ブチル(メタ)アクリラート、tert−ブチルエタクリラート、n−オクチル(メタ)アクリラート、1,1,3,3−テトラメチルブチル(メタ)アクリラート、エチルヘキシル(メタ)アクリラート及びこれらの混合物である。
【0067】
適しているのは、更に、アクリルアミド、置換アクリルアミド、メタクリルアミド、置換メタクリルアミド、例えばアクリル酸アミド、メタクリル酸アミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−(n−ブチル)(メタ)アクリルアミド、tert−ブチル(メタ)アクリルアミド、n−オクチル(メタ)アクリルアミド、1,1,3,3−テトラメチルブチル(メタ)アクリルアミド及びエチルヘキシル(メタ)アクリルアミド並びにアクリルニトリル及びメタクリルニトリル及び前述のモノマーの混合物である。
【0068】
カチオン性ポリマーの修飾のための更なるモノマーは、2−ヒドロキシルエチル(メタ)アクリラート、2−ヒドロキシエチルエタクリラート、2−ヒドロキシルプロピル(メタ)アクリラート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリラート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリラート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリラート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリラートその他及びその混合物である。
【0069】
上述のカチオン性モノマーとの共重合のための更なる適したモノマーは、N−ビニルラクタム及びその誘導体であり、これは例えば1以上のC1〜C6−アルキル置換基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチルその他を有することができる。これには、例えばN−ビニルピロリドン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニル−5−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−5−エチル−2−ピロリドン、N−ビニル−6−メチル−2−ピペリドン、N−ビニル−6−エチル−2−ピペリドン、N−ビニル−7−メチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−7−エチル−2−カプロラクタム等が挙げられる。
【0070】
前述のカチオン性モノマーとの共重合のために適したコモノマーは、更にエチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、スチレン、α−メチルスチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン及びこれらの混合物である。
【0071】
コモノマーの更なる一群は、重合類似反応においてアミノ基を形成することができる原子団(Gruppierung)を有するエチレン性不飽和化合物である。これには例えば、N−ビニルホルムアミド、N−ビニル−N−メチルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、N−ビニル−N−エチルアセトアミド、N−ビニルプロピオンアミド、N−ビニル−N−メチルプロピオンアミド及びN−ビニルブチルアミド及びその混合物が挙げられる。ここから形成されるポリマーは、例えばEP 0 438 744 A1に記載のとおり、酸性又は塩基性加水分解により、ビニルアミン単位及びアミド単位(式IV〜VII)含有ポリマーに移行されることができる
【化4】

[式IV〜VIIでは、置換基R1、R2はH、C1〜C6−アルキル及びX-は酸、有利には鉱酸のアニオン当量である]。
【0072】
この加水分解の際に、例えばポリビニルアミン、ポリビニルメチルアミン又はポリビニルエチルアミンが発生する。この群のモノマーは、任意の方式で、カチオン性モノマー及び/又は前述のコモノマーと重合されることができる。
【0073】
カチオン性ポリマーとは、本発明の意味合いにおいて、カチオン性の総荷電を有する、両性ポリマーも理解されるものである。両性ポリマーでは、このカチオン性基の含有量が例えば少なくとも5mol%だけポリマー中のアニオン性基の含有量を超える。このようなポリマーは例えば、カチオン性モノマー、例えばN,N−ジメチルアミノエチルアクリルアミドを遊離塩基の形で、部分的に酸と中和したか又は四級化した形で、少なくとも1種の酸基を含有するモノマーと共重合することにより入手され、その際このカチオン性モノマーはモル過剰量で使用され、これにより生じるポリマーはカチオン性の総荷電を有する。
【0074】
両性ポリマーは、
(i)式(I)
【化5】

[式中、R1、R2=H又はC1〜C6−アルキルを意味する]
のN−ビニルカルボン酸アミド少なくとも1つ
(ii)少なくとも1種の、分子内に3〜8個のC原子を有するモノエチレン性不飽和カルボン酸及び/又はそのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩又はアンモニウム塩、及び場合により
(iii)別のモノエチレン性不飽和モノマー、及び場合により
(iv)分子内に少なくとも2個のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物
を共重合し、引き続き、アミノ基の形成下にこのコポリマー中に重合導入される式(I)のモノマーから基−CO−R1を部分的に又は完全に分離することによっても得られ、この場合、コポリマー中のカチオン性基、例えばアミノ基の含有量は、重合導入された酸基含有モノマー(ii)の含有量を少なくとも5モル%超えている。N−ビニルカルボン酸アミドポリマーの加水分解では、ビニルアミン単位と隣接したビニルホルムアミド単位とが反応することにより、二次反応においてアミジン単位が生じる。以下、ビニルアミン単位との記載は、両性共重合体中で常にビニルアミン単位とアミジン単位との総和を意味する。
【0075】
このように得られた両性化合物は、例えば
(i1)場合によって加水分解されていない式(I)の単位
(i2)ビニルアミン単位及びアミジン単位、その際、アミノ基+アミジン基の含有量はコポリマー中で少なくとも5mol%、重合導入された酸基含有モノマーの含有量を超えている、
(ii)酸基含有モノエチレン性不飽和モノマーの単位及び/又はそのアルカリ金属−、アルカリ土類金属−又はアンモニウム塩、
(iii)少なくとも1の他のモノエチレン性不飽和モノマーの単位0〜30mol%、及び
(iv)少なくとも2個のエチレン性不飽和二重結合を分子中に有する、少なくとも1の化合物0〜2mol%を含有する。
【0076】
このコポリマーの加水分解は、酸又は塩基の存在下で実施されてもよいし、酵素により実施されてもよい。酸を用いる加水分解の場合、ビニルカルボン酸アミド単位から生じるビニルアミン基は塩の形で存在する。ビニルカルボン酸アミドコポリマーの加水分解は、欧州特許出願公開第0438744号、第8頁第20行〜第10頁第3行に詳細に記載されている。この刊行物に記載された説明は、本発明により使用すべき、カチオン性の総荷電を有する両性ポリマーの製造に相応して当てはまる。
【0077】
前記ポリマーは、例えば20〜250、好ましくは50〜150の範囲内のK値(pH7、0.5質量%のポリマー濃度及び25℃の温度で5%の食塩水溶液中でH. Fikentscherにより測定)を有する。
【0078】
カチオン性のホモポリマー及びコポリマーの製造は、溶液重合、沈殿重合、懸濁重合又はエマルション重合によって行うことができる。好ましくは水性媒体中での溶液重合である。適当な水性媒体は水及び水と少なくとも1種の水と混合可能な溶媒、例えばアルコール、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール等との混合物である。
【0079】
この重合温度は好ましくは約30〜200℃、特に好ましくは40〜110℃の範囲内にある。この重合は通常は雰囲気圧力下で行われ、しかし、減圧又は高められた圧力下でも進行できる。適した圧力範囲は0.1〜5barである。
【0080】
カチオン性ポリマーの製造のために、モノマーを、ラジカルを生成する開始剤を用いて重合させることができる。
【0081】
ラジカル重合のための開始剤として、このために常用のペルオキソ化合物及び/又はアゾ化合物、例えばアルカリ金属又は−アンモニウムペルオキシ二硫酸塩、ジアセチルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、スクシニルペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、tert−ブチルペルベンゾアート、tert−ブチルペルピバラート、tert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノアート、tert−ブチルペルマレイナート、クメンヒドロペルオキシド、ジイソプロピルペルオキシジカルバマート、ビス−(o−トルオイル)−ペルオキシド、ジデカノイルペルオキシド、ジオクタノイルペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、tert−ブチルペルイソブチラート、tert−ブチルペルアセタート、ジ−tert−アミルペルオキシド、tert−ブチルヒドロペルオキシド、アゾ−ビス−イソブチロニトリル、アゾ−ビス−(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド又は2−2′−アゾ−ビス−(2−メチル−ブチロニトリル)を使用することができる。適しているのは、開始剤混合物又はレドックス開始剤系、例えばアスコルビン酸/硫酸鉄(II)/ペルオキソ二硫酸ナトリウム、t−ブチルヒドロペルオキシド/二亜硫酸ナトリウム、t−ブチルヒドロペルオキシド/ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム、H22/Cu−(I)又は鉄−(II)−化合物でもある。
【0082】
分子量の調節のために、重合を少なくとも1種の調節剤の存在で行うことができる。調節剤として当業者に公知の慣用の化合物、例えば硫黄化合物、例えばメルカプトエタノール、2−エチルヘキシルチオグリコラート、チオグリコール酸、次亜リン酸ナトリウム、ギ酸又はドデシルメルカプタン並びにトリブロモクロロメタン又は得られるポリマーの分子量を調節する作用を有する他の化合物を使用することができる。
【0083】
カチオン性重合体、例えばポリビニルアミン及びその共重合体は、ポリアクリルアミド又はポリメタクリルアミド及びその共重合体のホフマン分解によっても製造されることができ、これについてはH. Tanaka, Journal of Polymer Science: Polymer Chemistry Edition 17,1239-1245 (1979)及びEl Achari, X. Coqueret, A. Lablache-Combier, C. Loucheux, Makromol. Chem., Vol. 194, 1879-1891 (1993)を参照のこと。
【0084】
前述の全てのカチオン性ポリマーは、カチオン性モノマー及び場合によりカチオン性モノマーとコモノマーからの混合物の重合を少なくとも1種の架橋剤の存在下で実施することにより修飾されることができる。架橋剤とは、少なくとも2個の二重結合を分子中に含むモノマー、例えばメチレンビスアクリルアミド、グリコールジアクリラート、グリコールジメタクリラート、グリセリントリアクリラート、ペンタエリトリトールトリアリルエーテル、少なくとも2回アクリル酸及び/又はメタクリル酸でエステル化したポリアルキレングリコール又はポリオール、例えばペンタエリトリトール、ソルビトール又はグルコースが理解される。共重合の際に、少なくとも1つの架橋剤を使用する場合には、この使用量は例えば2mol%まで、例えば0.001〜1mol%である。
【0085】
さらに、このカチオン性ポリマーは、架橋剤の事後の添加によって修飾されることができ、すなわち、アミノ基に対して反応性の基少なくとも2つを有する化合物の添加によって修飾されることができ、この例は次のものである:
−ジ−及びポリグリシジル化合物、
−ジ−及びポリハロゲン化合物、
−2個以上のイソシアナート基を有する化合物、場合によってブロック化した炭酸誘導体、
−2個以上の二重結合を有し、ミカエル付加に適した化合物、
−ジ−及びポリアルデヒド、
−モノエチレン性不飽和カルボン酸、そのエステル及び無水物。
【0086】
カチオン性化合物としてさらに、重付加反応により生じさせることができるポリマー、例えば特に、アジリジンを基礎とするポリマーが考慮される。この場合に、単独重合体もまた同様にアジリジンの他のポリマーへのグラフトにより生じさせられるグラフトポリマーも発生することができる。ここでも、重付加の間又は後に、アジリジン又は形成されるアミノ基と反応できる少なくとも2の基を有するもの、例えばエピクロロヒドリン又はジハロゲンアルカンを添加することが有利であることができる。架橋剤(Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, VCH, Weinheim, 1992, アジリジンに関する章を参照のこと)。
【0087】
この種の有利なポリマーは、エチレンイミンを基礎とし、例えばエチレンイミンの重合により製造されたエチレンイミンのホモポリマー又はエチレンイミンがグラフトした重合体、例えばポリアミドアミンである。
【0088】
更なる適したカチオン性ポリマーは、ジアルキルアミンとエピクロロヒドリンとの又は二官能性又は多官能性エポキシドとの反応生成物、例えばジメチルアミンとエピクロロヒドリンとの反応生成物である。
【0089】
カチオン性ポリマーとして、重縮合体、例えばリシン、アルギニン及びヒスチジンの単独重合体又は共重合体も適する。これは、ホモポリマーとして又は他の天然の又は合成のアミノ酸又はラクタムと一緒のコポリマーとして使用されることができる。例えば共重合のためには、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、フェニルアラニン、トリプトファン、プロリン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン又はカプロラクタムも適する。
【0090】
カチオン性重合として更に、二官能性カルボン酸と多官能性アミンとの縮合物が使用されることができ、その際、この多官能性アミンは第一級アミノ基少なくとも2及び反応性の少ない、すなわち、第二級、第三級又は第四級の更なるアミノ基少なくとも1を有する。例えば、ジエチレントリアミン又はトリエチレンテトラミンとアジピン−、マロン−、グルタル−、シュウ酸−又はコハク酸との重縮合生成物である。
【0091】
アミノ基を有する多糖、例えばキトサンもカチオン性ポリマーとして適する。
【0092】
更に、第一級又は第二級のアミノ基を有する前述の全てのポリマーが、反応性オリゴエチレンイミンを用いて修飾されることができ、これは例えばWO 2009/080613 A1に記載のとおりである。この出願においては、そのグラフト基盤が、ビニルアミン単位を有する重合体、ポリアミン、ポリアミドアミン及びエチレン性不飽和酸のポリマーの群から選択されており、かつ、側鎖としてオリゴアルキレンイミン側鎖だけを有するグラフト重合体が記載されている。オリゴアルキレンイミン側鎖を有するグラフト重合体の製造は、前述のグラフト基盤に対して末端のアジリジン基を有する少なくとも1のオリゴアルキレンイミンをグラフトすることにより生じるようである。
【0093】
本発明の方法の好ましい一実施態様において、水溶性カチオン性ポリマーとして、ビニルアミン単位を有するポリマーが使用される。
【0094】
本発明の主題は同様に、ナノセルロースと、アニオン性ポリマー及び水溶性カチオン性ポリマーの群から選択された少なくとも1のポリマーとからの水性組成物であり、これは前記した本発明の方法において使用可能である。
【0095】
パルプを製造するための繊維材料として、このために一般に使用されている全ての品質、例えば木材パルプ、さらしパルプ及び未ざらしパルプ並びに全ての一年生植物からの紙料が挙げられる。木材パルプには、例えば砕木パルプ、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモ・メカニカルパルプ(CTMP)、加圧式砕木パルプ、半成紙料(Halbzellstoff)、高収率パルプ及びリファイナー・メカニカル・パルプ(RMP)が属する。ケミカルパルプとして、例えば硫酸塩パルプ、亜硫酸塩パルプ及びソーダパルプが考慮に値する。有利には、漂白されていないクラフトパルプとも呼称される漂白されていないパルプが使用される。紙料を製造するために適した一年生植物は、例えばコメ、コムギ、サトウキビ及びケナフである。パルプの製造のために大抵、単独でか又は別の繊維材料との混合物で使用されるか、或いは一次材料と返送された塗被切落紙との繊維混合物、例えば返送された塗被切落紙との混合物の漂白された松硫酸塩から出発する古紙が使用される。
【0096】
本発明による方法は、古紙からの紙及び板紙の製造のために特別な技術的興味がもたれており、というのもこれは返送される繊維の強度特性を顕著に向上させるからであり、かつ、グラフィック用紙(graphische Papier)及び包装紙の強度特性の改善のために特別な意味合いを有する。本発明による方法により得られる紙は意外なことに、WO 2006/056381 A1の方法により製造された紙に比較してより高い乾燥強度を有する。
【0097】
この原質懸濁液のpH値は、例えば4.5〜8、大抵6〜7.5の範囲内である。pH値を調節するために、例えば酸、例えば硫酸又は硫酸アルミニウムが使用されてよい。
【0098】
本発明の方法ではまず、ナノセルロースと少なくとも1のポリマーからの水性組成物が製造される。この場合に、まずナノセルロースが装入され、少なくとも1のポリマーがナノセルロースへと添加されるか、又はこの逆であるか、は重要でない。アニオン性ポリマーも水溶性カチオン性ポリマーも添加される場合には、この順番は同様に重要でない。
【0099】
本発明の方法の好ましい一実施態様においてまずナノセルロースの水性スラリーが例えば60℃にまで、好ましくは50℃にまで、特にとりわけ好ましくは30℃〜50℃の範囲に加熱される。引き続き、水性分散液に少なくとも1のアニオン性ポリマーが計量供給される。同様に可能であるのは、この水性組成物に場合によってなお少なくとも1のカチオン性ポリマーを添加することである。
【0100】
本発明の方法の別の好ましい一実施態様において、この水性組成物には少なくとも1のカチオン性ポリマーが添加され、その際、この少なくとも1のカチオン性ポリマーは好ましくは前記の加熱したナノセルロース水性スラリーへと添加される。引き続き、場合によってアニオン性ポリマーが添加される。
【0101】
前述の実施態様とは独立して、この水性組成物の添加は本発明の方法において濃厚材料(繊維濃度>15g/l、例えば25〜40g/lから60g/lまでの範囲内)又は好ましくは希薄材料(繊維濃度<15g/l、例えば5〜12g/lの範囲内)へと行われる。この添加位置は、有利に漉網の前であるが、しかしながら、剪断段階とスクリーンとの間又はその後であってもよい。
【0102】
この水不溶性アニオン性ポリマーは、例えば、乾燥紙料に対して0.1〜10質量%、有利には0.3〜6質量%、特に0.5〜5.5質量%の量で使用される。場合によって使用されるカチオン性ポリマーは例えば、乾燥紙料に対して0.03〜2.0質量%、好ましくは0.1〜0.5質量%の量で使用される。
【0103】
場合によって使用される水溶性カチオン性ポリマーと水不溶性アニオン性ポリマーとの質量比は、この固形物質含有量に対して、例えば1:5〜1:20、有利には1:10〜1:15の範囲内、特に有利には1:10〜1:12の範囲内にある。
【0104】
本発明の方法では、通常紙製造の際に使用されるプロセス化学薬品は通常の量で使用されることができ、これは例えば歩留向上剤、脱水剤、他の乾燥増強剤、例えばデンプン、顔料、充填剤、光学的増白剤、脱泡剤、殺生剤及び紙着色剤である。
【0105】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明がこれにより制限されることはない。
【0106】
実施例
実施例におけるパーセントの記載は、他のことが記載されていない場合には質量パーセントである。
【0107】
ポリマーのK値は、Fikentscher, Cellulose-Chemie, 第13巻, 58〜64及び71〜74(1932)の記載に応じて、20℃の温度で5質量%の食塩水溶液中でpH値7及び0.5%のポリマー濃度で測定された。この場合、Kは、k・1000を意味する。
【0108】
この記載の平均粒径はISO 13321に応じて準弾性光散乱によりMalvern(R) Autosizer 2 Cを用いて0.01質量%の試料に対して測定された。
【0109】
実施例及び比較例において、以下ポリマーを試験した:
カチオン性ポリマーA
このポリマーを、ポリ−N−ビニルホルムアミドの塩酸を用いた加水分解により製造した。このポリマーの加水分解度は50mol%であり、すなわち、この重合体は50mol%のN−ビニルホルムアミド単位と50mol%のビニルアミン単位を塩の形で含有した。この水溶性カチオン性ポリマーのK値は90であった。
【0110】
アニオン性ポリマーB
アニオン性ポリマーBは固形物質含有量50%を有するアニオン性アクリラート樹脂として存在し、かつ、68mol%のn−ブチルアクリラート、14mol%のスチレン、14mol%のアクリルニトリル及び4mol%のアクリル酸の懸濁重合によって得られた。この分散されたポリマー粒子の平均粒径は192nmであった。
【0111】
アニオン性ポリマーC
アニオン性ポリマーCは固形物質含有量50%を有するアニオン性アクリラート樹脂として存在し、かつ、87mol%のn−ブチルアクリラート、5mol%のスチレン、5mol%のアクリルニトリル及び3mol%のアクリル酸の懸濁重合によって得られた。この分散されたポリマー粒子の平均粒径は184nmであった。
【0112】
ナノセルロース
ナノセルロースの製造には、セルロース溶液のための1つの供給及び水のための4つの供給を備えるSpinnig-Disk反応器を使用した。このセルロース溶液のための供給を中心にこのディスクの軸上1mmこのディスク表面から離れて配置した。この水供給を等間隔で、相互にそのつど5cm軸から離れて及び1mmディスク表面から離れて配置した。Spinning-Disc反応器のディスク表面並びにジャケットを95℃に加熱した。この反応器を窒素で充填した。1分間に2500回転のディスク回転速度では5分間のうちにイオン性液体中の80℃の加熱したセルロース溶液(Weyerhaeuser社のセルロース、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムアセタート中1質量%、計量供給2barの窒素圧で50g/分)をこのディスク上に計量供給した。同時に、この4つの水供給を介して80℃に加熱した水を1000ml/分の計量供給で添加した。この得られた生成物懸濁液を冷却後に折り畳みフィルターを介して濾過し、少しずつ全部で1000mlの水で洗浄した。引き続きこのセルロース繊維を約200mlのイソプロパノールで洗浄し、イソプロパノール湿分を移した。このナノセルロースはなお0.4質量%の1−エチル−3−メチルイミダゾリウムアセタートを含有し、約95%のセルロース繊維は繊維厚さ5〜200nmを有した。
【0113】
実施例1
200mlの10%ナノセルロース懸濁液を50℃に加熱した。これに0.25質量%のカチオン性ポリマーAを添加した(ポリマー固形、乾燥ナノセルロースに対して)。他の容器中でアニオン性ポリマーBを水で10倍希釈した。引き続きこのアニオン性ポリマーBの希釈分散液を軽い撹拌下で加熱したナノセルロース懸濁液へと計量供給した。この使用したアクリラート樹脂量は25%であった(ポリマー固形、乾燥ナノセルロースに対して)。
【0114】
100%混合古紙から0.5質量%の水性原質懸濁液を製造した。この懸濁液のpH値は7.1であり、原質の粉砕度はショッパー・リグラー度50゜(゜SR)であった。
【0115】
この処理したナノセルロース懸濁液を撹拌下でこの古紙紙料に添加した。処理したナノセルロース(固形)の計量供給量は古紙紙料(固形)に対して5%であった。引き続き、この処理した古紙紙料からRapid-Koethen紙葉形成機でISO 5269/2に応じて坪量120g/m2でもって紙葉を製造した。紙葉を蒸気加熱した金属シリンダーへの片側接触により7分間90℃で乾燥させた。
【0116】
実施例2
200mlの10%ナノセルロース懸濁液を30℃に加熱した。他の容器中でアニオン性ポリマーCを水で10倍希釈した。引き続き、この希釈した分散液を軽い撹拌下で加熱したナノセルロース懸濁液へと計量供給した。この使用したアクリラート樹脂量は25%であった(ポリマー固形、乾燥ナノセルロースに対して)。
【0117】
100%混合古紙から0.5質量%の水性原質懸濁液を製造した。この懸濁液のpH値は7.1であり、原質の粉砕度はショッパー・リグラー度50゜(゜SR)であった。
【0118】
この処理したナノセルロース懸濁液を撹拌下でこの古紙紙料に添加した。処理したナノセルロース(固形)の計量供給量は古紙紙料(固形)に対して5%であった。引き続き、この処理した古紙紙料からRapid-Koethen紙葉形成機でISO 5269/2に応じて坪量120g/m2でもって紙葉を製造した。紙葉を蒸気加熱した金属シリンダーへの片側接触により7分間90℃で乾燥させた。
【0119】
実施例3
200mlの10%ナノセルロース懸濁液を室温で装入した。これに0.5質量%のカチオン性ポリマーAを添加した(ポリマー固形、乾燥ナノセルロースに対して)。
【0120】
100%混合古紙から0.5質量%の水性原質懸濁液を製造した。この懸濁液のpH値は7.1であり、原質の粉砕度はショッパー・リグラー度50゜(゜SR)であった。
【0121】
この処理したナノセルロース懸濁液を撹拌下でこの古紙紙料に添加した。処理したナノセルロース(固形)の計量供給量は古紙紙料(固形)に対して5%であった。引き続き、この処理した古紙紙料からRapid-Koethen紙葉形成機でISO 5269/2に応じて坪量120g/m2でもって紙葉を製造した。紙葉を蒸気加熱した金属シリンダーへの片側接触により7分間90℃で乾燥させた。
【0122】
比較例1
100%混合古紙から0.5質量%の水性原質懸濁液を製造した。この懸濁液のpH値は7.1であり、原質の粉砕度はショッパー・リグラー度50゜(゜SR)であった。この未処理の古紙紙料からRapid-Koethen紙葉形成機でISO 5269/2に応じて坪量120g/m2でもって紙葉を製造した。紙葉を蒸気加熱した金属シリンダーへの片側での接触により7分間90℃で乾燥させた。
【0123】
比較例2、番号EP 09 150 237.7を有する先のヨーロッパ出願に相応して
100%混合古紙から0.5質量%の水性原質懸濁液を製造した。この懸濁液のpH値は7.1であり、原質の粉砕度はショッパー・リグラー度50゜(゜SR)であった。
【0124】
カチオン性ポリマーAを希釈しないでこの繊維材料懸濁液に添加した。この使用したポリマー量はこの繊維材料含有量に対して0.3質量%(ポリマー、固形)であった。カチオン性ポリマーで前処置した原質を約30秒間軽く撹拌した。他の容器中でアニオン性ポリマーBの分散液を水で10倍希釈した。引き続き軽い撹拌下でこの希釈した分散液を繊維材料懸濁液に添加した。この使用したアクリラート樹脂量は5%であった(ポリマー、固形、繊維材料含有量に対して)。
【0125】
この前処置した繊維材料からRapid-Koethen紙葉形成機でISO 5269/2に応じて坪量80g/m2でもって紙葉を製造した。紙葉を蒸気加熱した金属シリンダーへの片側での接触により7分間90℃で乾燥させた。
【0126】
紙葉の試験
実施例及び比較例により製造された紙葉の、常に23℃及び50%の空気湿分の気候室中での12時間の貯蔵時間後に、それぞれこの紙葉の乾燥裂け長さ(Trockenreisslaenge)をDIN 54 540に応じて算出した。この気候調節した紙葉のCMT値の測定はDIN 53 143に応じて行われ、この紙葉の乾式破裂圧はDIN 53 141に応じて算出した。結果は、第1表に記載されている。
【0127】
第1表
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノセルロースと、アニオン性ポリマー及び水溶性カチオン性ポリマーの群から選択される少なくとも1のポリマーとからの水性組成物を紙料に計量供給し、前記紙料を脱水し、そして、紙製品を乾燥することを特徴とする、高い乾燥強度を有する紙、板紙及び厚紙を製造する方法。
【請求項2】
前記ナノセルロースが1000μm未満の長さ寸法を有し、かつ、この繊維厚さが50μm〜3nmの範囲内にあることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ナノセルロースのセルロース繊維の少なくとも80%が50μm〜3nmの範囲内にある繊維厚さを有することを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記ナノセルロースのセルロース繊維の少なくとも80%が1μm〜5nmの範囲内にある繊維厚さを有することを特徴とする請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記ナノセルロースが長さ寸法1000μm未満を有し、繊維厚さが50μm〜3nmの範囲内にあり、かつ、前記ナノセルロースが5ppm〜2質量%のイオン性液体を含むことを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
【請求項6】
前記ナノセルロースのセルロース繊維の少なくとも80%が50μm〜3nmの繊維厚さを有し、かつ、5ppm〜2質量%のイオン性液体を含有することを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記アニオン性ポリマーが、
(a)C1〜C20−アルキルアクリラート、C1〜C20−アルキルメタクリラート、C原子20個までを含有する飽和カルボン酸のビニルエステル、C原子20個までを有するビニル芳香族化合物、エチレン性不飽和ニトリル、C原子1〜10個を含有する飽和一価アルコールのビニルエーテル、ビニルハロゲン化物及びC原子2〜8個及び二重結合1個又は2個を有する脂肪族炭化水素の群からの少なくとも1種のモノマー、
(b)エチレン性不飽和C3〜C8−カルボン酸、ビニルスルホン酸、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニルホスホン酸並びにその塩の群からの少なくとも1種のアニオン性モノマー、
(c)任意に、C1〜C10−ヒドロキシアルキルアクリラート、C1〜C10−ヒドロキシアルキルメタクリラート、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−C1〜C20−アルキルアクリルアミド及びN−C1〜C20−アルキルメタクリルアミドの群からの少なくとも1種のモノマー、及び
(d)任意に、分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和二重結合を有するモノマー少なくとも1種
を重合導入して含有することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記アニオン性ポリマーが、
(a)C1〜C20−アルキルアクリラート、C1〜C20−アルキルメタクリラート、ビニルアセタート、ビニルプロピオナート、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−ブチルスチレン、4−n−ブチルスチレン、4−n−デシルスチレン、アクリルニトリル、メタクリルニトリル、ブタジエン及びイソプレンからなる群からの少なくとも1種のモノマー少なくとも60mol%、及び
(b)エチレン性不飽和C3〜C5−カルボン酸の群からの少なくとも1種のアニオン性モノマー0.5〜9mol%
を重合導入して含有することを特徴とする請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記アニオン性ポリマーが、(a)群の少なくとも1種のモノマー少なくとも80mol%を重合導入して含有することを特徴とする請求項7又は8記載の方法。
【請求項10】
前記アニオン性ポリマーが(a)群のモノマーとして質量比10:90〜90:10で(i)C1〜C20−アルキルアクリラート及び/又はC1〜C20−アルキルメタクリラート及び(ii)スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−ブチルスチレン、4−n−ブチルスチレン、ブタジエン及び/又はイソプレンからの混合物を重合導入して含有することを特徴とする請求項7から9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記カチオン性ポリマーのモル質量Mwが、5000〜500万g/molの範囲内にあることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記カチオン性ポリマーの電荷密度が0.5〜23meq/gの範囲内にあることを特徴とする請求項1から11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
水溶性カチオン性ポリマーとしてビニルアミン単位含有ポリマーを使用することを特徴とする請求項1から12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
セルロース繊維の少なくとも80%が繊維厚さ50μm〜3nmを有し、かつ、5ppm〜2質量%のイオン性液体を含有するナノセルロース。
【請求項15】
1000μm未満の長さ寸法及び50μm〜3nmの範囲内の繊維厚さを有し、かつ、5ppm〜2質量%のイオン性液体を含有するナノセルロース。
【請求項16】
請求項1から13のいずれか1項記載の方法において使用可能な、ナノセルロースと、アニオン性ポリマー及び水溶性カチオン性ポリマーの群から選択された少なくとも1のポリマーとからの水性組成物。

【公表番号】特表2013−508568(P2013−508568A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−534627(P2012−534627)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際出願番号】PCT/EP2010/065375
【国際公開番号】WO2011/048000
【国際公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】