説明

高い引裂き強さを有する材料のための液状シリコーンエラストマー組成物

本発明は、少なくとも2個の不飽和結合を有する不飽和ポリオルガノシロキサン、少なくとも2個のケイ素−水素結合を有するヒドロゲノポリオルガノシロキサン、ヒドロシリル化触媒及びシリカを含む液状シリコーンエラストマー組成物に関する。本発明は、前記組成物が少なくとも2個の不飽和結合を有する不飽和有機ポリマー及び該不飽和有機ポリマーに対して特異的な架橋剤をさらに含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い引裂き強さを有する材料の製造に用いるための、液状シリコーンエラストマーをベースとする架橋性(即ち架橋可能な)組成物に関する。
【0002】
本発明は、電力ケーブルの終端部品や接続部品のような電力付属品の分野において特に有利な(しかし非排他的な)用途がある。
【背景技術】
【0003】
液状シリコーンエラストマー(一般的に液状シリコーンゴム(LSR)と称される)は、少なくとも2個の不飽和結合を有するポリオルガノシロキサン、少なくとも2個のケイ素−水素結合を有するヒドロゲノポリオルガノシロキサン及びヒドロシリル化触媒から本質的に成る混合物である。このタイプの組成物には一般的に、最終材料にある程度の凝集力を付与するために、シリカも含有されており、架橋したシリコーンは本質的に多少ペースト状の粘稠度を示し、架橋していない通常の状態ほどに油状である粘稠度を示すことさえあると理解される。
【0004】
いずれにしても、シリコーンエラストマーは優れた高温耐性及び悪天候耐性を良好な絶縁特性と共に提供することが知られている。しかしながら、このタイプの材料には、特に大部分が炭素主鎖によって構成される天然ゴムや合成ゴムと比較して、引裂き強さが劣るという欠点もある。実際問題として、この引裂き特徴は、手を触れる可能性がある部品を作るためにシリコーンエラストマーを用いる場合に、真の問題を生じる。これは特に電力付属品タイプの用途に当てはまる。
【0005】
しかしながら、液状シリコーンエラストマーをベースとする材料の引裂き強さを高めるために、様々な技術上の解決策が存在する。
【0006】
第1のものは、多量のシリカ充填剤を使用することから成る。しかしながら、このタイプの化合物の増粘特性のために、組成物の粘度の望ましくない増大が起こることが多く、これは材料の硬化につながることさえある。かくして、液状シリコーンエラストマーが、このタイプの材料を利用するために採用される技術である低圧射出法に適合しないものになることがある。また、液状シリコーンエラストマー組成物中のシリカ含有率が増えると、架橋した材料のある種の電気特性、特に耐アーク性及び耐沿面漏れ性が損なわれるという結果にもつながる。
【0007】
また、長いポリシロキサン鎖を用いることによってシリコーンエラストマーの引裂き強さを高めることもできる。長いポリシロキサン鎖は、特に寸法が大きいことのためにより大きい官能性を提供し、かくしてより大きい架橋密度を提供することができる。しかしながら、第1の解決策についてと同様に、この解決策は粘度が有意に増大するという結果に迅速につながり、架橋した材料の硬度の増大にさえつながる。
【0008】
第3の既知の解決策は、これらの回帰性の欠点すべてを回避することを可能にする。この解決策は、液状シリコーンエラストマー組成物にポリアミド、ポリエチレン又はEPDMのようなポリマーを1種以上のカップリング剤と組み合わせて添加することから成る。このタイプの解決策は実際材料の引裂き強さを高めることを可能にするが、しかし従来技術における同等のものと比較してはるかに費用がかかるという欠点を示す。その理由は、用いられるそれぞれのカップリング剤の固有の費用価格、及びかかる添加剤の使用が製造方法をより一層複雑なものにすることに関連する費用の両方にある。
【特許文献1】米国特許第4701503号明細書
【特許文献2】米国特許第5656690号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
かくして、本発明の主題事項によって解決されるべき技術的課題は、少なくとも2個の不飽和結合を有する不飽和ポリオルガノシロキサン、少なくとも2個のケイ素−水素結合を有するヒドロゲノポリオルガノシロキサン、ヒドロシリル化触媒及びシリカを含む液状シリコーンエラストマー組成物であって、従来技術の射出成形法に完全に適合し、電気的特性を維持し且つ費用価格を低く保つという利点を示しながら、有意に改善された引裂き強さを提供することによって従来技術の問題点を解決することを可能にするものを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に従えば、提起された技術上の課題に対する解決策は、さらに少なくとも2個の不飽和結合を有する不飽和有機ポリマーを該不飽和有機ポリマーに対して特異的な架橋剤と共に含む液状シリコーンエラストマー組成物から成る。
【0011】
以上のことから、本発明に従う組成物は、上記の少なくとも1種の不飽和ポリオルガノシロキサン、少なくとも1種のヒドロゲノポリオルガノシロキサン、少なくとも1種のヒドロシリル化触媒、少なくとも1つのタイプのシリカ、少なくとも2個の不飽和結合を有する少なくとも1種の不飽和有機ポリマー及び該不飽和有機ポリマーに対して特異的な少なくとも1種の架橋剤を含有することを必要とする。しかしながら、これは、前記組成物が複数の不飽和ポリオルガノシロキサン及び/又は複数のヒドロゲノポリオルガノシロキサン及び/又は複数のヒドロシリル化触媒及び/又は複数の異なるタイプのシリカ及び/又は複数の不飽和有機ポリマー及び/又は複数の特異的架橋剤を含んでいてもよいということも暗に意味している。
【0012】
本明細書全体を通じて、用語「有機ポリマー」とは、主鎖が本質的に炭素原子から成る任意の炭化水素マクロ分子を意味するものとする。これは、炭素以外の原子をベースとする主鎖を有するポリマー、即ち無機ポリマーは関係ないことを暗に意味する。これは特に、ケイ素及び酸素原子の鎖が主鎖を構成するポリマーであるポリオルガノシロキサンの場合である。
【0013】
不飽和ポリオルガノシロキサン及び不飽和有機ポリマー中の各不飽和結合は、二重結合であっても三重結合であってもよく、どちらでも同等に好適である。また、各不飽和結合は、炭素−炭素、炭素−酸素、炭素−窒素、窒素−窒素又は窒素−酸素タイプのものであってよく、どれであっても同等に好適である。また、各不飽和結合は、側鎖タイプのものであってもよく、末端位置にあってもよく、鎖の中央に直接組み込まれていてもよく、どれであっても同等に好適である。
【発明の効果】
【0014】
いずれにしても、こうして規定される本発明は、ベース組成物に不飽和有機ポリマー及び特異的架橋剤を添加するだけで、シリコーン材料の引裂き強さを高めることができるという利点を示す。従来技術と違って、この特定タイプのポリマーを使用するという事実が、カップリング剤を添加することを回避することを可能にする。前記不飽和有機ポリマーは、補強用ポリマーと見なせるだろう。
【0015】
引裂き強さの改善は、本発明に従う組成物の架橋によって得られる材料の構造上の不均一性に由来するものである。材料の引裂き強さは、亀裂伝播に耐える能力に関連する。かくして、引裂き強さは、エネルギーを消散させる働きをする任意のファクターによって改善することができる。シリコーン材料内に充填剤を添加することは、エネルギーを消散させるために用いられる方法の1つである。
【0016】
具体的に本発明においては、不飽和有機ポリマーを特異的架橋剤と組み合わせてシリコーンマトリックス中に分散させることが、ノジュール(団塊)の形の不均一性を作り出す働きをする。これらのノジュールは架橋の後にマトリックス中において補強用充填剤の働きをする。このタイプの充填剤が存在することに関連する2つの主な現象が、材料補強に貢献する。第1のものは亀裂の先端部が鈍化する現象であり、その結果としてエネルギー密度の低減がもたらされる。そして、第2のものは亀裂の方向転換現象であり、充填剤は前記亀裂の伝播方向を変化させ、かくして有利なことに伝播のエネルギーを低減させることができるバリアーとして作用する。
【0017】
特異的架橋剤とは、補強用ポリマー(即ち不飽和有機ポリマー)とヒドロゲノポリオルガノシロキサン(即ち不飽和ポリオルガノシロキサンの架橋剤)との間の相互作用がどのようであろうと、この特異的架橋剤を存在させることによって補強用ポリマーがシリコーンマトリックス内で架橋することが保証されるという働きをするものである。当然、架橋剤の概念はこの用語の広い意味に及ぶものであり、即ち、この概念は特に任意のタイプの既知の架橋開始剤(例えばペルオキシド)を指し示す。
【0018】
本発明はまた、液状シリコーンエラストマー組成物の粘度レベルを維持し又は低下させて、射出成形技術(特に低圧射出成形法)に完全に適合するものであり続けるようにすることもできる。
【0019】
本発明はまた、シリコーン材料の機械的及び電気的特性を維持することも可能にする。
【0020】
最後に、本発明の実施には比較的安価な2つの追加の化合物を使用することが必要なだけなので、本発明は、従来技術の解決策と比較して過剰の費用を何らもたらさない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の特徴に従えば、前記組成物にはまた、前記不飽和有機ポリマーのその特異的架橋剤による架橋反応に対して特異的な触媒をも含ませることができる。
【0022】
特に有利な態様において、前記不飽和有機ポリマーは、少なくとも2個のペンダント(側基)タイプの不飽和結合を含み、これらは鎖に沿って及び/又は末端位置に配置される。このタイプの不飽和は実際、同等のマクロ分子であってしかし専ら主鎖の中に二重結合又は三重結合を有するものと比較して、ポリマーの官能性を最大にすることが可能である。
【0023】
前記不飽和有機ポリマーは、少なくとも1個のビニル基を有するのが好ましい。上記のように、それぞれのビニル二重結合は、鎖に沿ったペンダントであっても末端位置のペンダントであっても同等に好適であることができるということを理解すべきである。
【0024】
本発明の別の特徴に従えば、前記不飽和有機ポリマーは、0.5Pa・s〜1000Pa・sの範囲の粘度を示すものである。言い換えれば、このことは、組成物が架橋した後のシリコーン材料の引裂き強さを強化するためのポリマーは標準状態において液体の形にあるのが有利であるということを意味する。
【0025】
慣用の技術を用いて(より特定的には低圧射出成形法を用いて)操作することができるように、最終組成物の粘度が高すぎないことが必須である。
【0026】
ベースとなるシリコーン系と同様の粘稠度を有する系であり続けるために、一般的に50Pa・s〜1000Pa・sの範囲内の粘度の液体である不飽和有機ポリマーを用いて作業するのが望ましい。すべての状況下において、シリコーン系のものと同様の粘度又はそれより低い粘度を有する不飽和有機ポリマーを用いて作業するのが好ましい。ベースのLSR系より流動性が高い補強用ポリマーを用いることにより、有利なことに、組成物の全体粘度を調節すること、より正確にはこの全体粘度を下げることができる。
【0027】
前記不飽和有機ポリマーは、エラストマータイプのものであるのが好ましい。この特徴は、シリコーンがすでにエラストマーであることを考えれば、オール−エラストマー系にとどまることを目的とするものである。不飽和有機ポリマーは天然エラストマーであっても合成エラストマーであってもよく、どちらであっても同等に好適であることを理解されたい。
【0028】
本発明の別の特徴に従えば、液状シリコーンエラストマー組成物は、1pcr〜10pcr、好ましくは1pcr〜3pcrの不飽和有機ポリマーを含む。この量はここでは慣用的に、pcr、即ち樹脂100部当たりの重量部として表わす。
【0029】
いずれにしても、混合物中に存在させる補強用ポリマーは非常に少量だけであることがわかる。このことは、費用に関しての有意の利点になるだけでなく、組成物の製造方法を大幅に容易にするという利点もある。
【0030】
本発明の別の有利な特徴に従えば、不飽和ポリオルガノシロキサンは少なくとも2個のペンダントタイプの不飽和結合を有し、これらは、鎖に沿って且つ/又は末端位置に配置される。かかる好ましい選択の理由、結果及び利点は、補強用ポリマーの特徴を説明する際に上で挙げたものと類似しているということに留意すべきである。
【0031】
不飽和ポリオルガノシロキサンが特に有利な態様において少なくとも1つのビニル基を有するという事実に関しても、同じことが当てはまる。
【0032】
本発明の別の特徴に従えば、液状シリコーンエラストマー組成物は、ヒドロシリル化触媒の抑制剤をさらに含む。この化合物を存在させるのは、特に抑制剤の脱錯化温度に相当する所定温度まで触媒を抑制し、次いでこの閾値温度を超えたら直ちに触媒の効力を解放することによって、ヒドロシリル化反応を制御できるようにすることを目指してのことである。
【0033】
ヒドロシリル化触媒は、白金触媒であるのが好ましい。もちろん、ヒドロシリル化反応を開始させ且つ/又は促進することができる他の任意の化合物も同等に用いることができ、金属錯体であることは必要ではない。
【0034】
本発明の別の特徴に従えば、液状シリコーンエラストマー組成物は、補強用充填剤、導電性充填剤、難燃性充填剤、可塑剤、熱安定剤、酸化防止剤、染料及び抗UV剤の群から選択される少なくとも1種の添加剤をさらに含む。
【0035】
「添加剤」という用語は、ここでは非常に一般的に、液状シリコーンエラストマー組成物に添加される任意の化合物を示すのに用いられる。かくして、この用語は、少量で加えられて材料の最終的な特性に対して基本的に何の影響も持たない添加剤と、はるかに多い量で組み込まれて材料の最終的な特徴を事前に変化させることがある充填剤との両方に同等に関する。
【0036】
この範疇においては、熱安定剤、酸化防止剤、染料及び抗UV剤は一般的に添加剤と見なされ、補強用充填剤、導電性充填剤、難燃性充填剤及び可塑剤は通常充填剤に属することに留意されたい。
【0037】
指標として、ポリマー混合物に添加することができる充填剤のいくつかの例を挙げることができる。特に、ガラス繊維又は炭素繊維のような補強用充填剤、二酸化チタン又は酸化鉄のような顔料、カーボンブラック、微粉砕金属充填剤若しくは酸化亜鉛のような導電性充填剤、ハロゲン化炭化水素、アルミナ三水和物又は水酸化マグネシウムのような難燃性充填剤、ポリジメチルシロキサン油のようなシリコーン用可塑剤等を用いることが可能である。
【0038】
特に有利な態様において、液状シリコーンエラストマーの組成物には、0.5〜50重量%、好ましくは0.5〜20重量%の添加剤を含有させる。
【0039】
本発明はまた、上記の組成物から作られた少なくとも1つの部品を含む電力付属品をも提供する。「電力付属品」という用語は、例えば終端部品や接続部品のような電力ケーブルに取り付けるための任意の装置を意味するのに用いられる。
【0040】
もちろん、本発明に従う液状シリコーンエラストマー組成物はまた、もっと一般的に、高い引裂き強さを示すことを必要とする任意のシリコーン成形部品を製造するために用いることもできる。
【0041】
最後に、本発明は、上記の液状シリコーンエラストマー組成物を調製することを可能にする製造方法を提供する。
【0042】
現時点において好ましい本発明の第1の方法においては、少なくとも前記ヒドロゲノポリオルガノシロキサンを含む成分(即ち構成要素)と少なくとも前記ヒドロシリル化触媒を含む成分とを互いに混合することによって液状シリコーンエラストマー組成物を調製する。かかる条件下において、前記の2つの成分を互いに混合した後に、不飽和有機ポリマー及びその特異的架橋剤を添加する。
【0043】
時期尚早でヒドロシリル化反応を引き起こすのを防ぐために、ヒドロゲノポリオルガノシロキサン及びヒドロシリル化触媒の両方が同じ成分中に存在することがないようにするのが重要である。不飽和ポリオルガノシロキサン及びシリカは、混合物の成分の内の一方又は両方に加えることができる。
【0044】
実用上、補強用ポリマー及びその特異的架橋剤を前記の2成分の混合物に加える工程は、全体組成物を成形型に導入する直前に行うのが有利である。
【0045】
第2の製造方法に従えば、少なくとも前記ヒドロゲノポリオルガノシロキサンを含む成分と少なくとも前記ヒドロシリル化触媒を含む成分とを互いに混合することによって前記液状シリコーンエラストマー組成物を調製するが、この方法においては、前記の2つの成分の内の少なくとも1つに前記不飽和有機ポリマー及びその特異的架橋剤を組み込み、その後に得られた2つの成分を互いに混合する。
【0046】
第1の実施態様におけるのと同様に、ヒドロゲノポリオルガノシロキサンとヒドロシリル化触媒とを同じ成分中に存在させてはならず、不飽和ポリオルガノシロキサン及びシリカは混合物の成分の内の一方又は両方に加えることができる。
【0047】
これは、補強用ポリマー及びその特異的架橋剤を最終的な混合工程の前段階で添加するという点で、より一層慣例的な手順である。最終的な混合は2つの成分の間でごく普通に行われるものであり、その特別な特徴は、前記の成分の内の少なくとも一方の組成物に前もって補強用ポリマー及び/又は関連する特異的架橋剤が添加されるという事実に由来する。
【0048】
本発明はまた、以下の説明からわかる特徴であって、単独で又は任意の技術上実現可能な組合せにおいて考慮する必要がある前記特徴にも関する。
【0049】
この説明は、非限定的な例として与えられるものであり、本発明がどのようなものから成るものであるか及び本発明をどのように実施することができるかをよりよく理解させるものである。また、この説明は、添付した図面を参照して与えられる。
【0050】
図1は、電力ケーブル用の高電圧接続部品の縦方向の断面図である。
【0051】
図2は、引裂き強さを示したグラフである。
【0052】
わかりやすくするために、本発明を理解するために必須の部品のみを示し、これには縮尺の配慮はされておらず、概略態様のものである。
【0053】
図1において、1は、高電圧ケーブル2を接続するための接続部品である。接続部品1は慣用的に、接続胴部3に2つの半導電性デフレクター(そらせ板)円錐体4及び5並びに中央の半導電性電極6が収納されて成る。
【0054】
接続胴部3は、本発明に従う液状シリコーンエラストマー組成物をヒドロシリル化することによって得られる絶縁材料製である。半導電性円錐体4及び5並びに中央電極6は、半電導特性にするためにカーボンブラックを充填したことを除いて、接続胴部3と同じ材料製のものである。
【実施例】
【0055】
本発明のその他の特徴及び利点は、以下の実施例の記載から明らかになる。これら実施例は、非限定的な例示として与えたものである。
【0056】
例I〜IIIは、電力付属品用の部品の製造に用いるためのシリコーン材料に関する。それらを誘導した組成物はすべて、同じLSR系、即ちRhodia社よりLSR 8540の名称で販売されている配合物をベースとする。
【0057】
表1に、例I〜IIIのサンプル1〜6を作るためにベースのLSR系に添加した補強用ポリマーの主な特徴をまとめる。かくして、Cray Valley社よりRiconの商品名で販売されている様々な液状ポリブタジエンのモル質量及び粘度を見出すことができる。
【0058】
【表1】

【0059】
各種サンプルはすべて、同じ調製手順を用いて作られたものである。LSR系の成分A及びBを50:50重量比で混合カプセル中に入れた。次いで、所望の量の補強用ポリマー(Ricon)を添加した。次いで、ミキサー中で混合を3工程で実施し、それらの工程の間にカプセルの縁部をスパチュラで掻き取った。特定的には、最初の混合工程は1500回転/分(rpm)で30秒間続け、第2の混合工程は1500rpmにおいて30秒間続け、第3の混合工程は2000rpmにおいて30秒間続けた。第3の混合工程が終わったら、3分間のガス抜き工程を実施した。こうして作られた混合物を次いで直径2mm×13mm×14mmの金属成形型中に流し込み、次いで、所望の温度において選択した長さの時間の間加圧下に置いて、架橋したプレートを得た。次いで、ISO規格34/1において設定された条件下でプレートから試験片を切り取った。
【0060】
例I
【0061】
この例は、より特定的には、液状シリコーンエラストマー組成物を120℃において1時間架橋させることによって得られた材料に関する。本発明に従うがしかし成分が異なる組成物から導かれた2つのサンプル1及び2を調製し、補強用ポリマーを含まない参照用サンプル1と比較した。
【0062】
表2の最初の部分には、各種組成物中に存在させる各種成分のそれぞれの割合を与える。表2の第2の部分には、ISO規格34−1の仕様に従って実施した引裂き強さ測定の結果を示す。この点に関しては、ズボンの形状の試験片に対して100mm/分の引っ張り速度を用いて引裂き強さを測定し、得られた値は中央値であることに留意されたい。
【0063】
【表2】

【0064】
何よりも、液状シリコーンエラストマー組成物から導かれた材料の引裂き強さは、存在させる補強用ポリマーの性状に拘らず、補強用ポリマーを含まない組成物から作られた材料の引裂き強さより有意に大きいことがわかる。
【0065】
例II
【0066】
この例は、より特定的には、組成物を140℃において1時間20分間架橋させることによって得られた材料に関する。本発明に従う組成物から導かれた1つのサンプル3を調製し、補強用ポリマーを含まない参照用サンプル2と比較した。
【0067】
例Iにおけるのと同様に、表3の最初の部分には、各種組成物中に存在させる各種成分のそれぞれの割合を与え、第2の部分には、ISO規格34−1の仕様に従って同様に実施した引裂き強さ測定の結果を示す。
【0068】
【表3】

【0069】
ここでもまた、本発明に従う組成物から導かれた材料が補強用ポリマーを含まない組成物から作られた材料の引裂き強さより明らかに大きい引裂き強さを示すことがわかる(図2)。
【0070】
例Iにおいて行われた測定との比較から、より長い時間でより高い温度において架橋を実施することによって、シリコーン材料の引裂き強さの有意の改善がもたらされることがわかる。
【0071】
例III
【0072】
この例は、より特定的には、液状シリコーンエラストマー組成物を120℃において1時間架橋させ、次いで150℃において8時間焼鈍を行うことによって作られた材料に関する。本発明に従うがしかし成分が異なる組成物から導かれた3つのサンプル4〜6を調製し、補強用ポリマーを含まない参照用サンプル3と比較した。
【0073】
表4の構成に関する所見は、表2及び3について上で与えたものと同じである。
【0074】
【表4】

【0075】
またしても、本発明に従う組成物から導かれた材料がより良好な引裂き強さを提供することがわかる。
【0076】
しかも、補強用ポリマーの性状を適宜選択することにより、非常に少量の補強用ポリマーを用いてこのような性能を得ることができることもわかる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】電力ケーブル用の高電圧接続部品の縦方向の断面図である。
【図2】引裂き強さを示したグラフである。
【符号の説明】
【0078】
1・・・接続部品
2・・・高電圧ケーブル
3・・・接続胴部
4、5・・・半導電性デフレクター円錐体
6・・・半導電性電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2個の不飽和結合を有する不飽和ポリオルガノシロキサン、少なくとも2個のケイ素−水素結合を有するヒドロゲノポリオルガノシロキサン、ヒドロシリル化触媒及びシリカを含む液状シリコーンエラストマー組成物であって、少なくとも2個の不飽和結合を有する不飽和有機ポリマー及び該不飽和有機ポリマーに対して特異的な架橋剤をさらに含むことを特徴とする、前記液状シリコーンエラストマー組成物。
【請求項2】
前記不飽和有機ポリマーのその特異的架橋剤による架橋反応に対して特異的な触媒をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記不飽和有機ポリマーが少なくとも2個のペンダントタイプの不飽和結合を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記不飽和有機ポリマーが少なくとも1個のビニル基を含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
前記不飽和有機ポリマーが0.5Pa・s〜1000Pa・sの範囲の粘度を示すことを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
前記不飽和有機ポリマーがエラストマータイプのものであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
不飽和有機ポリマーを1〜10重量部、好ましくは1〜3重量部含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
前記不飽和ポリオルガノシロキサンが少なくとも2個のペンダントタイプの不飽和結合を含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
前記不飽和ポリオルガノシロキサンが少なくとも1個のビニル基を含むことを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
ヒドロシリル化触媒の抑制剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
前記ヒドロシリル化触媒が白金触媒であることを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
補強用充填剤、導電性充填剤、難燃性充填剤、可塑剤、熱安定剤、酸化防止剤、染料及び抗UV剤の群から選択される少なくとも1種の添加剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
添加剤を0.5〜50重量%、好ましくは0.5〜20重量%含むことを特徴とする、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれかに記載の組成物から作られた部品を少なくとも1つ含むことを特徴とする、特に電力ケーブル及び/又は電気通信ケーブル用の、電力付属品。
【請求項15】
請求項1〜13のいずれかに記載の液状シリコンエラストマー組成物の製造方法であって、
少なくとも前記ヒドロゲノポリオルガノシロキサンを含む成分と少なくとも前記ヒドロシリル化触媒を含む成分とを互いに混合することによって前記組成物を調製すること、並びに、
前記の成分を互いに混合した後に、前記不飽和有機ポリマー及びその特異的架橋剤を添加すること
を特徴とする、前記製造方法。
【請求項16】
請求項1〜13のいずれかに記載の液状シリコンエラストマー組成物の製造方法であって、
少なくとも前記ヒドロゲノポリオルガノシロキサンを含む成分と少なくとも前記ヒドロシリル化触媒を含む成分とを互いに混合することによって前記組成物を調製すること、並びに、
前記の成分を互いに混合する前に、前記の2つの成分の内の少なくとも1つに前記不飽和有機ポリマー及びその特異的架橋剤を組み込むこと
を特徴とする、前記製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−511712(P2008−511712A)
【公表日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−528947(P2007−528947)
【出願日】平成17年8月30日(2005.8.30)
【国際出願番号】PCT/FR2005/050692
【国際公開番号】WO2006/027525
【国際公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(500547371)ネクサンス (5)
【Fターム(参考)】