説明

高さ変更自在な棚板の支持装置

【課題】簡易な構造で、棚板を好みの高さに容易に変更でき且つ確実に固定でき、使用性と機能性に優れた支持装置を提供すること。
【解決手段】上下方向Aに配置される縦レール部2と、縦レール部2と直交する横方向Bに配置される上下多段の横レール部3とを備え、各段の横レール部3を縦レール部2の上下複数箇所にそれぞれ直交状に連設すると共に、縦レール部2の上下方向Aの一端部に挿入用開口部6を設け、一方、棚板7の一辺7cの両端2箇所に、挿入用開口部6から順に挿入されて縦レール部2に沿ってスライド自在とされ且つ縦レール部2からいずれか任意の横レール部3にスライド自在に嵌合する一対の嵌合部8を隔設することで、高さ変更自在な棚板7の支持装置1を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、棚板の高さを変更自在とする支持装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、洗い場と浴槽とを備えるユニットバスの壁面に、シャンプー、リンスなどの洗髪用品を置く棚板を取り付けた構造が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
ところで、棚板は施工業者によって標準的な高さ寸法が定められている場合があるが、その場合、ユーザーが棚板を実際に使用してみると、棚板の高さがユーザの好みに合わず、使い勝手が悪くなる問題が生じ易いものであった。
【0004】
なお、高さの異なる位置に棚受ダボを設け、棚板を好みの棚受ダボに移し変えるようにしたラック類が知られているが、棚板が棚受ダボから浮き上がったりガタついたりするという問題があり、そのため固定手段(例えばマグネットやビス)を用いて固定する必要があった。
【0005】
他の従来例として、上下に延びる垂直レールに沿って棚板を昇降自在とすると共に、この棚板を懸架する吊り下げ紐をモータで巻き取り又は巻き戻すことで棚板の高さ調整を無段階で行なうものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
ところがこの従来例では、モータが別途必要となり、構造が複雑且つ大掛かりになるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実公平7−27316号公報
【特許文献2】特開平10−85063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は従来の問題点に鑑みて発明したものであって、その目的とするところは、簡易な構造で、棚板を好みの高さに容易に変更でき且つ確実に固定でき、使用性と機能性に優れた高さ変更自在な棚板の支持装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題を解決するために、本発明は、上下方向Aに配置される縦レール部2と、前記縦レール部2と直交する横方向Bに配置される上下多段の横レール部3とを備え、各段の横レール部3は前記縦レール部2の上下複数箇所にそれぞれ直交状に連設していると共に、前記縦レール部2の上下方向Aの一端部に挿入用開口部6が設けられており、棚板7の一辺7cの両端2箇所に、前記縦レール部2の挿入用開口部6から順に挿入されて縦レール部2に沿ってスライド自在とされ且つ縦レール部2からいずれか任意の横レール部3にスライド自在に嵌合する一対の嵌合部8が隔設されていることを特徴としている。
【0010】
このような構成とすることで、棚板7の一辺7cに設けた一対の嵌合部8を縦レール部2から任意の横レール部3にスライド嵌合させることによって、施工後においてもユーザーが棚板7を好みの高さに容易に変更自在となると共に、一対の嵌合部8が横レール部3に対して嵌合することで棚板7が横レール部3から浮き上がったりガタついたりしないように確実に固定できるようになる。
【0011】
また、前記一対の嵌合部8が任意の横レール部3に嵌合した状態で棚板7の一辺7cが該横レール部3により片持ち支持されるのが好ましく、この場合、例えば縦レール2と上下多段の横レール部3とをそれぞれ壁面13に沿って設置し、棚板7の一辺7cと反対側の他辺7dを自由端にすることにより、支持装置1の省スペース化を図ることができる。
【0012】
また、前記棚板7の一対の嵌合部8を任意の横レール部3に嵌合させた状態で該横レール部3と縦レール2とのレール交差部4に、各嵌合部8を該横レール部3に対して位置決めするためのストッパー部材5を着脱自在に取り付けてなるのが好ましく、この場合、ストッパー部材5によって横レール部3に対する棚板7の動きを確実に規制できるようになる。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の発明は、棚板の一対の嵌合部を縦レール部から任意の横レール部にスライド嵌合させるだけで、棚板の高さを容易に変更自在となると共に、モータや固定手段を別途用いる必要がないため、簡易な構造で、横レール部に対して棚板を好みの高さで固定でき、使用性と機能性とに富んだ支持装置が得られる。
【0014】
請求項2記載の発明は、横レール部により棚板の一辺を片持ち支持することによって、棚板の使い勝手が良くなると共に、支持装置を省スペースに設置できるものである。
【0015】
請求項3記載の発明は、レール交差部へのストッパー部材の取り付けによって横レール部に対する棚板の動きを確実に規制できると共に、ストッパー部材を取り外すことで棚板の高さ変更が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の高さ変更自在な棚板の支持装置の一実施形態を示し、(a)は正面図、(b)は(a)のD−D線に沿う側面断面図、(c)は(b)のC部の拡大図である。
【図2】同上の支持装置を設置した浴室ユニットの正面図である。
【図3】(a)は同上の縦レール部と横レール部とのレール交差部付近の正面図、(b)は(a)の下面図である。
【図4】(a)は同上の棚板の平面図、(b)は同上の棚板の一対の嵌合部が取り付けられる一辺の正面図である。
【図5】(a)〜(e)は同上の棚板を縦レール部から任意の横レール部にスライドさせて取り付ける動作説明図である。
【図6】他の実施形態であり、(a)(b)は棚板の表裏を反転させて取り付ける動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明する。
【0018】
本実施形態の高さ変更自在な棚板7の支持装置1は、図2に示すように、浴槽11を備える浴室ユニット10の洗い場12側の壁面13に設置される。図中の50は鏡である。この支持装置1は、上下方向Aに延びる縦レール部2と、横方向Bに延びる上下多段の横レール部3とが前面視で櫛形状に一体化されており、棚板7に設けた一対の嵌合部8,8を任意の横レール部3にスライド自在に嵌合させたものである。
【0019】
上記縦レール部2には、図3に示すように、前方Fに開口した断面略C字状のレール溝2aが形成されている。
【0020】
一方、上下多段の横レール部3は、上下方向Aに適度の間隔をあけて互いに平行に配置される。各横レール部3には、それぞれ、図1(b)(c)に示すように、前方Fに開口した断面略C字状のレール溝3aが形成されていると共に、各レール溝3aの長さ方向の一端部が、図3(a)に示す縦レール部2とのレール交差部4において縦レール部2のレール溝2aに対してそれぞれ直交状に連設している。各レール溝3aの長さ方向の他端部はそれぞれ閉塞されている。
【0021】
上記縦レール部2の下端部は、図3(a)に示すように、最下段に位置する横レール部3よりも更に下方に突出した挿入用開口部6となっている。
【0022】
図4は棚板7の一例を示している。本例の棚板7は、ベース板9の外周部に沿って立ち上がる周壁部9aで囲まれた部位に上方に開放された収納スペース9bが設けられている。棚板7の一辺7cと反対側の他辺7dは自由端部であり、図4(a)に示すように円弧状に湾曲形成され、手が触れた際の安全性が確保されている。図中の9cは、水抜き孔である。 この棚板7の一辺7cの両端2箇所には一対の嵌合部8が間隔をあけて取り付けられている。この一対の嵌合部8間の間隔Eは、横レール部3の全長G(図3(a))よりも若干短く設定され、横レール部3内に一対の嵌合部8が余裕を持ってスライド嵌合できるようにしている。本例の各嵌合部8は、図1(c)に示すように、横レール部3のレール溝3aの天面3b及び上部リップ内面3cにそれぞれ摺接する左右2個の上側ローラー8a(図4(b))と、レール溝3aの底面3d及び下部リップ内面3eに摺接する左右2個の下側ローラー8b(図4(b))とからなる組ローラーで構成されている。なお図中の8cはローラーフレームである。
【0023】
なお、棚板7として周壁部9aを持つ構造を例示したが、周壁部9aを持たない平面状のものであってもよく、棚板7の形状は適宜設計変更自在である。
【0024】
次に、棚板7を任意の横レール部3に取り付けるにあたっては、先ず、図5(a)のように棚板7を垂直姿勢にして一対の嵌合部8を縦レール部2の下端に設けた挿入用開口部6から順に挿入して、縦レール部2に沿ってスライドさせる。そして図5(b)のように、上側に位置する一方の嵌合部8を目標とする横レール部3とのレール交差部4を越えて上方に移動させ且つ下側に位置する他方の嵌合部8を該レール交差部4に位置させた状態で、図5(c)のように棚板7を垂直姿勢から水平姿勢に回動することによって、該横レール部3内に一対の嵌合部8が順にスライドしていき、完全にスライドした後に棚板7の一辺7cが横レール部3の外側面に面接触して片持ち支持された状態(図5(d))となる。最後に、図5(e)に示す略T型の固定用キャップよりなるストッパー部材5を該横レール部3と縦レール2とのレール交差部4に装着する。これにより棚板7の一対の嵌合部8が横レール部3に対して位置決めされる。
【0025】
一方、任意の横レール部3に支持された棚板7を、高さの異なる別の横レール部3にスライドさせる場合は、ストッパー部材5を取り外し、棚板7を後方移動させて後側の嵌合部8を縦レール部2に突き当てた状態で棚板7を水平姿勢から垂直姿勢に回動して、一対の嵌合部8を順に縦レール部2内に移動させる。その後は前記図5(b)(c)と同じ要領で縦レール部2から別の横レール部3内にスライドさせることで、棚板7の高さ変更が可能となる。
【0026】
上記構成によれば、浴室ユニット10の施工後においてもユーザーが棚板7を好みの高さに容易に変更自在となり、棚板7に収納される収納物の形状や大きさに柔軟に対応できるものであると共に、棚板7の嵌合部8が横レール部3に嵌合することで棚板7が浮き上がったりガタついたりしないように確実に支持できるようになり、さらに縦レール部2の挿入用開口部6からの新たな棚板7の追加或いは不要な棚板7の削減が簡単に行なえるものであり、支持装置1の使用性と機能性とが大幅に向上する。しかも、従来のようにモータを用いたり固定手段を別途設けたりする必要もないため、構造を簡素化できる利点がある。
【0027】
また本例の一対の嵌合部8は、図1(c)に示すように、横レール部3のレール溝3aの天面3bと底面3dと上下のリップ内面3c,3eにそれぞれ当たるローラー構造であり、且つ棚板7の一辺7cと一対の嵌合部8の間で横レール部3の側壁を挟み付ける構造であるので、棚板7を横レール部3により片持ち支持できるようになる。従って、棚板7の一辺7cとは反対側の他辺7dが自由端となり、しかも壁面13から前方Fへ突出するのは棚板7のみとなるので、支持装置1の省スペース化を図ることができる利点もある。
【0028】
前記実施形態では図5(d)のように表面7aが上向きとなるように棚板7を取り付ける場合を説明したが、他の実施形態として、棚板7の表側と裏側とを異なる収納形態にして、表裏の機能を選択できる構造としてもよい。例えば図6(a)(b)のように表面7aが下向き、裏面7bが上向きとなるように棚板7を縦レール部2から横レール部3にスライドさせることによって、棚板7の表裏の使い分けが可能となり、棚板7の用途が更に拡大する。
【0029】
また、前記実施形態では棚板7の一辺7cを1本の横レール部3で片持ち支持する場合を説明したが、例えば、相対する2つの壁面に、縦レール部2上下多段の横レール部3とを対向して設置し、棚板7の左右二辺にそれぞれ設けた一対の嵌合部8を、左右の縦レール部2から左右の任意の横レール部3にスライド嵌合させることにより、棚板7の相対する二辺7c、7dを左右2本の横レール部3で両持ち支持する構成とすることも可能である。
【0030】
前記実施形態では、挿入用開口部6を縦レール部2の下端部に設けたが、縦レール部2の上端部に設けてもよい。
【0031】
本発明の支持装置1は、浴室ユニット10に用いる棚板7に限らず、キッチン、押入れ内部や居間等、住宅の各部に設けられる収納棚全般に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0032】
1 支持装置
2 縦レール部
3 横レール部
4 レール交差部
5 ストッパー部材
6 挿入用開口部
7 棚板
7c 一辺
8 嵌合部
A 上下方向
B 横方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に配置される縦レール部と、前記縦レール部と直交する横方向に配置される上下多段の横レール部とを備え、各段の横レール部は前記縦レール部の上下複数箇所にそれぞれ直交状に連設していると共に、前記縦レール部の上下方向の一端部に挿入用開口部が設けられており、棚板の一辺の両端2箇所に、前記縦レール部の挿入用開口部から順に挿入されて縦レール部に沿ってスライド自在とされ且つ縦レール部から任意の横レール部にスライド自在に嵌合する一対の嵌合部が隔設されていることを特徴とする高さ変更自在な棚板の支持装置。
【請求項2】
前記一対の嵌合部が任意の横レール部に嵌合した状態で棚板の一辺が該横レール部により片持ち支持されることを特徴とする請求項1記載の高さ変更自在な棚板の支持装置。
【請求項3】
前記棚板の一対の嵌合部を任意の横レール部に嵌合させた状態で該横レール部と縦レール部とのレール交差部に、各嵌合部を該横レール部に対して位置決めするためのストッパー部材を着脱自在に取り付けてなることを特徴とする請求項1又は2記載の高さ変更自在な棚板の支持装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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