説明

高められたグリップ性を提供する幾何学的な特性を有する表面テクスチャーのラテックス手袋および物品、およびそれをインライン的に加工する方法

【課題】乾燥、湿潤または油状の物質を扱うときにすぐれた把持性を与える幾何学的な特性を有する表面地のラテックス手袋および物品を提供する。
【解決手段】外表面と内表面を含むラテックス手袋であって、外表面は明確に画定された内部の辺及び角状表面を有する複数のへこみを有し;ここで外表面の複数の該へこみの開口は内部開口よりも小さく;それによって外表面の部分の該へこみは改良された乾燥、湿潤または油性の表面把持特性を提供し、該へこみのサイズ範囲が直径5〜1800マイクロメーターであり、該複数のへこみの内部の辺及び角状表面は塩化ナトリウム、塩化カリウム、硝酸カルシウム、塩化カルシウム、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸ナトリウム、および炭酸水素ナトリウムからなる群から選択される粒子の表面を複製したものである、前記のラテックス手袋。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インラインの製造プロセスの間に手袋の外表面に一体的に形成される、ざらざらにした、幾何学的に画定された表面により提供される、高められた把持特性を有する合成または天然ラテックス手袋および物品に関する。
【背景技術】
【0002】
高められた把持特性を有する合成または天然ラテックス手袋は、濡れたものを取り扱うときでさえ、それらはスリップ抵抗性、把持作用を提供することから、特に望ましいことが知られている。手袋の外表面は、優れた把持特性を得るために、テクスチャー化されることができる。伝統的なアプローチは、模様をつけられた型の使用を含み、型は水性のラテックスエマルジョンに浸けられ、模様をつけられた型接触表面で、テクスチャー化された手袋表面が得られる。手袋は逆さにしたときに、手袋の外表面は型の表面に相当するパターンで模様付けられる。一般的に、型の外表面は、それぞれの指、親指の先、および本体部のそれぞれの部分にテクスチャー(模様)付けられた手袋を調製するために、模様付け、またはへこみをつけることができる。調製されえる模様の詳細は、手袋製造の要求に合わせて変えることができる。不幸にも、この単純なアプローチは、浸漬欠陥が模様を確定する先端に起こると、それは穴を有し、またはそれらの欠陥領域で容易に裂けてしまうラテックスフィルムを生じるので、適用が限られる。型−ラテックス界面に存在するテクスチャー(模様)のために、模様付けられた型の表面もたやすく分解し、そしてラテックス物品はラテックスフィルムを架橋したのち型からはがしにくい。はがす工程は、形成されたラテックス物品を裂き、または最悪の場合にはピンホールおよび他の欠陥を生じ、それは検出しにくいがラテックス産物のトータルの品質および信頼性を低下させる。たとえば、Bourneの米国特許6,081,928および国際特許公開公報WO00/19847は、高められた把持強度のエラストマー手袋を開示している。手袋の把持表面は、好ましくは指および親指先端のそれぞれおよび本体部を、たくさんの0.004および0.020インチの間のくぼんだへこみを有して成型されるか、または複数の0.008〜0.5インチ直径範囲の円形の縁の吸引カップ(吸盤)を有して成型される。その製造プロセスは、多数の突出部または吸引カップ構造からなる表面を有する手袋浸漬型を使用する。他の例は、Schallerの米国特許6,254,947は、ポリマースリップコーティングを有し、そしてそれらの表面に突の/窪んだざらざらを有する柔軟なプラスチック物品を開示している。このスリップコーティングは、ポリマー材料からなり、そして少なくとも部分的に、突部に対して窪みを有するネット状構造である表面の繰り返している形状の「ふれ」を有する。このスリップコーティングは手袋の内表面に適用されるが、手袋の外表面には適用されず、そしてソフトなスリップコーティング材料は天然ゴム上にポリアクリレートおよび/またはポリメタクリレートおよび/またはポリシロキサンを含むので、すべり滑りやすさを与えるが、改良された把持力を有するざらざら感は与えない。手袋は一連のへこみを有する磁器型に浸漬して調製され、そして型に接触した表面は突部を有する外部表面となるが、一方で窪みに接触していない表面は皮膚に触れる表面となり、ソフトなポリマーコーティングが施される。3つ目の例であるTanquaryらによる米国特許5,098,755は、テクスチャー化熱可塑性エラストマー性フィルム、それを含む物品、およびそのようなフィルムおよび物品を作る方法を開示している。コンドーム用にテクスチャー化され、エンボス加工されたフィルムが、エンボス加工表面に単位平方インチに1000〜100000の浮き出しされたパターンを与える。ラテックス物品の浸漬ではこの表面は得られないが、この浮き出しパターンは高められた熱および/または圧力形成条件で形成される。浮き出しパターンを生じさせるラテックスの加熱は、一般的にはその機械的およびバリアー特性を損なわせる。
【0003】
他のアプローチは、ラテックスの外表面を泡立たせることによって手袋の粗い把持表面を調製することである。水性ラテックス表面に空気を導入することによりこのあわ立たされた表面が調製される。ラテックス中の空気の泡は、一般的には小さな泡に接触するときにより大きな泡になるという本質的に不安定性のため、均一でない泡サイズの球状である。空気泡がそれぞれ接触するとき、それらはかなり大きい泡単位を形成し、そして調製される粗さはうまくコントロールされない。たとえばDe Laneyの米国特許2,393,298は、ゴム手袋とそのような物品を開示する。型をまず水性エマルジョン中に浸漬し、そしてその最初のラテックス層を硬くするために凝固剤に浸し、そしてそれから空気にさらした流動性のラテックスに浸され、空気泡が多孔の第二層を形成する、あわ立たせた第二ラテックス層に浸漬される。型はそれから第二のあわ立たされたラテックス層を硬くし、安定化するために凝固剤層に浸漬される。第二の例のJohnsonによる米国特許4,589,940は、泡立たされたスリップ抵抗性表面を調製する方法を開示する。その手袋の表面は、多孔で泡表面を提供し、それにより手袋は通気性があり、湿気吸収特性を有する。その多孔ラテックスフォームは、織られた(woven)または不織(non-woven)の基材に適用される。その層は多孔でフォーム(発泡)ラテックスは多孔(40−95%間隙率)なので、形成される手袋は通気性となる。そのフォームは摩耗抵抗性で改良された把持作用を与えると記載されている。3番目の例であるWatanabeによる米国特許4,497,072は、多孔で、コートされた手袋を開示している。その多孔の手袋は、織物素材に壊れた泡形状の鋭い突起を有するコート層でできており、それによって強靭な把持特性を与える。その織物手袋ベースは、ニット織物、織物(woven fabric)、またはステープル繊維材料から形成される。その織物は、それから溶媒ベースのラテックス泡溶液でコートされる。溶媒の蒸発プロセスは、空気泡を壊し、鋭い末端を形成させる減圧によって手助けされる。図3および4示されるように、多数の泡がともに壊され、手袋の表面がコントロールされないテクスチャーとなる。第4の例は、Yamashitaらによる米国特許6,527,990で、それはゴム手袋を調製する方法を開示している。ゴム手袋は連続的に手袋型を浸すことによって調製され、まず第一に凝固、熱的に膨張性のマイクロカプセルおよび発泡剤中に浸される。次にそれは、ゴムラミネートを形成するゲル化したゴム層を形成するために、ゴム−挿入ラテックス中に浸される。ゴムラミネートはそれから、ゴムラミネートを加硫し、そしてマイクロカプセルと泡を生成する発泡剤を膨張させるため加熱される。そのラミネートは、膨張したマイクロカプセル側を手袋の外表面を形成するように表裏逆にされる。この方法は、すぐれた抗−ブロッキング特性(接触する手袋間での粘着性がない)および乾燥またはウェット条件で優れた把持性のゴム手袋を、簡単で低コストで製造する。
【0004】
テクスチャー化されたラテックス手袋を得る他のアプローチは、加硫していないラテックス層に水−可溶性粒子を挿入する方法である。たとえば、Kishiによる日本特許JP1258917は、でこぼこした表面を開示し、たとえば凝固していない樹脂エマルジョンラテックス上に固体グラニュラ物質を付着させ凝固させることにより得られるゴム手袋を開示する。ラテックス組成物コーティングは型の表面上で形成される。その状態では、ラテックスコーティングはラテックス中では凝固せず、塩のような水溶液中で溶解する、依然凝固されていない粒子がラテックスコーティング上にバラまかれ付着している。そのコーティングを加硫した後、それらの表面に細かいくぼみまたは突起部を有する非空気浸透性および非水浸透性ゴムスキンを得るために、塩は水で洗浄して除去される。ラテックスは依然加硫前は流動性なので、挿入された粒子はラテックスで覆われ、望ましい表面構造を得るために容易には溶解されない。第2の例では、O'Brienらによる米国特許No. 2,997,746は、粗くしたゴム製品を調整する方法を開示している。その製造法は、ナフサのような非−水性媒体とゴムを本質的に溶解する他の炭化水素溶媒中の不溶性親水性固体を使用する。この接合剤は、糖または塩などの親水性の固体を添加し、そしてそれゆえ浸漬したときに型上にしっかり付着した親水性固体でコートされたラテックスを形成し、そして親水性固体は石鹸質の水に溶解され粗い表面を生じる。使用される親水性の固体は、ゴムを溶解するために使用されるナフサまたは他の炭化水素溶媒には不溶性である。糖は比重約1.4で、塩は比重2.165である。ラテックス溶媒溶液は、溶媒の選択に応じて、比重約1未満である。親水性固体は、親水性固体の沈降性のため、特に固体サイズが大きいとき、ラテックス溶媒溶液中にはたやすくは懸濁されない。ラテックス溶媒溶液中に親水性固体を縣濁させるには激しい攪拌が必要とされる。型をこのラテックス溶媒中に浸漬したとき、この沈降性のため、親水性固体の均一な分配はえられないであろうし、そしてラテックス溶液の高攪拌は導入された粒子を取り除いてしまう傾向にある。さらに、溶媒が乾燥するまで粒子はその場にとどまらず、そしてわずかなすばやく動く粒子が型上に形成されるラテックス層に捕えられて、不十分で不均一な、まばらに粗い物品を生じる。その親水性固体の膨張は、ラテックス接着溶液に添加される固体よりもかなり大きい間隙を生じ、それは溶媒の蒸発のためにさらに大きくなる可能性があり、本質的に形状のない間隙を生じる。それらの間隙は、組み合わされ、または合体し、原料糖結晶よりもかなり大きなより大きい間隙を形成するかもしれない。O'Brienは、ニトリルゴム用の溶媒は容易には利用可能でないので、ニトリルゴム組成物は開示していない。
【0005】
把持強化手袋に関連した幾つかの他の開示は、米国特許番号6,675,392(Albert)および米国特許番号6,745,403及び6,526,593(Sajovic)になされている。それらは、手袋上のプラスチック吸引カップ形状デバイスを取り付けることによって手袋をサポートするための把持力を得る方法に関する。それらの特徴は、手袋表面に後につけられるもので、手袋一体の部分ではなく、そして意図されたサポート目的に合った手袋の限られた領域にのみ把持力を与える。それらの吸引カップは全体的な把持力を提供するものではない。
【0006】
乾燥、湿潤または油状の物質を扱うときにすぐれた把持特性を与えるテクスチャーのラテックス物品および手袋表面が依然として必要をされている。手袋の外表面は、処理された表面を有していなければならず、好ましくはよくデザインされ、手袋の外表面と把持されるべき物質の表面の間の流動性境界層の除去に手助けとなる幾何学的特徴の再生産可能なテクスチャーを有していなければならない。ラテックスインライン(in-line)浸漬プロセスの最もよく使用される工業上のプロセスにて調製されるラテックス手袋の表面特性の、サイズ、形状、および分配の完全なコントロールが必要とされる、この処理された外側テクスチャーの手袋表面の調製のための確実なプロセスのニーズが依然として存在する。そのようなラテックス物品および手袋表面を提供すること、並びにそれらを調製する方法を提供することが、本発明の目的である。それらのおよび他の目的、利益、並びにさらなる発明の特徴は、以下の詳細な記述から明らかであろう。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、高められた把持性を提供する幾何学的な特性を有する表面地のラテックス手袋および物品を提供する。手袋の幾何学的表面テクスチャーは、デザイン仕様および要求に従って、再現的に調製される。そのデザイン仕様には、テクスチャーのサイズおよび形状、並びに手袋表面に亘るテクスチャーの配置を含む。より特定的には、親指、その他の指、手のひら領域でのテクスチャーは、個々に調製することができ、手袋の把持特性をコントロールするために異なって調製することができる。
【0008】
本発明は、工業上の設備で、確実に再生産可能な様式で、手袋表面に望ましい表面テクスチャーを正確に配置するプロセスを開示する。手袋の望ましい形を有する、なめらかな表面の型が選択される。型は、セラミックス、金属またはポリマーを含む、工業上よく使用されるよく知られた物質から調製される。型はまず、約5〜50μの範囲の厚さを有する、水ベースのポリマー性凝固剤コートに浸されコートされる。ポリマー性凝固剤型コート組成物は、水性ラテックスエマルジョンを不安定化し、凝固させることができる凝固剤を含む。ポリマー性型コーティングに入れられる凝固剤は、典型的には硝酸カルシウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム;等である。それらの凝固剤は水に高度に溶解性である。ポリマー性凝固剤コーティングが蒸発または乾燥すると、ポリマー性凝固剤コーティングは粘着性になる。このステージでは、手袋表面上に要求される窪みを示すサイズと形状の別個の凝固剤粒子が選ばれ、粘着性ポリマー性凝固剤コーティング上に一つまたはそれ以上のプロセスにて置かれる。それらのプロセスは水溶解性、部分的に水溶解性、または完全に水不溶性の別個の凝固剤粒子を使用することができ、そしてプロセスの最終ステップでのそれらの除去には水または適当な溶媒の使用が必要である。その最も簡単な形では、水溶解性で、別個の凝固剤粒子がスプレープロセスによって適用される。そのスプレープロセスは、ポリマー性凝固剤型コーティングの表面を均一に覆い、そしてその水溶解性の別個の凝固剤粒子はコーティング内に埋め込まれる。他の適当なプロセスには、限定的ではないが、個別の凝固剤粒子の流動床を粘着性型コーティングへの接触、または個別の凝固剤粒子を柔軟なメッシュ状に置き、それを粘着性表面上に接触させて回転させ、所望のパターンで個別の凝固剤粒子を配置する。他の態様では、異なったサイズ、形状および配置の個々の凝固剤粒子は、手袋型の親指領域、手のひら領域および一つまたはそれ以上の手の指の先端に置かれる。ポリマー性凝固剤コーティングが完全に乾燥するとき、個別の凝固剤粒子は明らかに型表面から突き出してポリマー性凝固剤によって置かれた位置に保たれる。埋め込まれた個別の凝固剤粒子を有するポリマー性凝固剤コーティング処理された型は、別々に調製され、貯蔵されることができ、またはインライン製造プロセスで製造される。
【0009】
一般的に述べると、ポリマー性コーティング組成物は均一なポリマー性コーティングの薄い層を形成するように、適切な型表面湿潤特性および十分な粘度またはレオロジー特性を有することが重要な要件である。これは、ポリマー性コーティング組成物に湿潤剤および粘度調節剤を添加することによって達成される。コーティングは明確な操作時間を提供するために、妥当な速度で乾燥されなければならず、その間、手袋表面の所望の幾何学的テクスチャーのサイズ、形状および配置を特徴づける個別の凝固剤粒子の施用を可能とするためにポリマー性凝固剤コーティングは粘着性を維持する。典型的なポリマー性凝固剤コーティング組成物は、ポリN−ビニル−2−ピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール (PVA)、ポリアクリル酸 (PAA)、ポリアクリルアミド (PAC)、および/またはPVP、PVA、PAAまたはPACのコポリマーまたは誘導体から選択されるポリマーを含む。存在するポリマーの量は、約0.1〜10乾燥重量%の範囲であり、好ましくは約0.5〜1.5乾燥重量%の範囲である。ポリマー性型コーティングに使用される凝固剤は、硝酸カルシウムおよび塩化カルシウムから選択される。ポリエチレングリコールまたはポリエチレンオキサイド/ ポリプロピレンオキサイドコポリマーを含むポリグリコールの添加は、ポリマー性コーティングのフロー特性(flow properties)を改善する。ポリマー性型コーティング中の界面活性剤は、エトキシ化アセチレンジオール(ethoxylated acetylenic diol)またはサーフィノール(Surfynol)465またはTween20などのような他の界面活性剤である。水−溶解性個別の凝固剤粒子は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硝酸カルシウム、塩化カルシウムおよび硫酸アルミニウムを含む群から選択される。水−溶解性個別の凝固剤粒子のサイズは約50ミクロン〜約2000の範囲である。
【0010】
埋め込まれた個別の凝固剤粒子を有するこのポリマー性凝固剤コーティングと型は、それから水性ラテックスエマルジョン中に浸漬される。ポリマー性凝固剤コーティング中に挿入された凝固剤は、速やかにコートされた型表面に近接した部分でラテックスエマルジョンを不安定にし、それによってラテックスフィルム層を形成する。その水−溶解性の個別の凝固剤粒子はまた、不安定な特性を有し、そしてラテックスエマルジョンもまた粒子を取り囲むラテックスフィルム層を形成する。このように、ラテックス層は完全に型表面を覆い、そして埋め込まれた水−溶解性の個別の凝固剤粒子は完全にラテックス層で囲まれる。埋め込まれた粒子のサイズと形状に依存して、ラテックス層は場合によっては内曲していて、ラテックス層をはがすのはポリマー性凝固剤コーティングからの粒子のむしり取り、またはラテックス層の拡張が必要であることを意味する。ラテックス層はポリマー性凝固剤コーティング中に埋め込まれた個別の凝固剤粒子のサイズおよび形状を反映し、埋め込み工程間で配置されたテクスチャーの正確な配置を維持する。型とラテックス層は、ラテックスフィルムが架橋され加硫する硬化サイクルへ移行する。
【0011】
幾何学的テクスチャーの手袋を調製するのに使用されるラテックス組成物は、天然または合成ゴムおよびニトリル組成物から調製することができる。それらの水性ラテックス組成物は当業者によく知られていて、そして硫黄、酸化亜鉛、有機凝固促進剤、安定剤、ワックス、抗−老化剤物質、粘度調整剤、充填剤および色素のような標準的な調剤混加物を含む。
【0012】
加硫工程が完了した後、一つの態様では、手袋ははがされ、表裏逆にされる。これは手術または検査用単一層手袋であってもよい。テクスチャーのサイズ、形状および配置を決定する水−溶解性の個別の凝固剤粒子は、加硫されたラテックス層と水−溶解性の個別の粒子との間の結合に比べて弱く保持されているので、手袋は型からたやすくはがれる。手袋が表裏逆にされると、水−溶解性の個別の凝固剤粒子は手袋の外表面上にくる。手袋の外表面は水、好ましくは温水(hot water)で洗浄され、水−溶解性の個別の凝固剤粒子が溶解され、ポリマー性型コーティング上に最初に置かれた水−溶解性の個別の凝固剤粒子のサイズ、形状および配置を正確に反映する窪みのテクスチャーを残す。もし部分的に水−溶解性または水−不溶性の個別の凝固剤粒子が使用されると、個別の凝固剤粒子を溶解して手袋外表面テクスチャーの窪みを露出させるためには、溶媒洗浄が必要となる。塩化ナトリウム結晶は角状表面を有していて、それらは正確に複製され、テクスチャー中に空隙を与え、それは空気吹込み形成された発泡体によって形成される円形の孔よりも大きな表面面積または大きな孔体積を有する。さらに、外表面での孔開口は、この複製法の内曲する性質のため、内部の方より小さくなり得る。その特徴はテクスチャー化された型を使用するのでは可能ではない。それゆえ、形成されたテクスチャーの吸盤は、把持する湿潤または油状の表面上に存在する水またはオイルを抽出する大きな能力を有し、それによって水またはオイル境界層を除去する。ラテックスの大きな表面領域が把持される表面と接触されると、孔の内曲した性質のため、増大した把持作用を提供する。もし幾何学的テクスチャーが水−溶解性の個別の凝固剤粒子が互いに触れ合うようにデザインされていると、そのテクスチャーは互いに連結する孔を有し、把持表面の境界層に存在する境界層水またはオイルのチャネリング効果(channeling effect)を与える。
【0013】
加硫工程が完了した後、第2の態様では、手袋は凝固剤溶液中に浸漬され、そして第2のラテックス層を形成するために再浸漬される。第2のラテックス層は発泡ラテックス層であってもよい。手袋が表裏逆にされると、発泡表面が皮膚に接触し、汗を吸収する能力を有し、そして湿っぽくない感じを与える。水−溶解性の個別の粒子を有する外表面は、手袋に幾何学的テクスチャーを現すために、第一の態様と類似の様式で洗浄される。
【0014】
加硫工程が完了した後、第3の態様では、手袋は粘着性のコーティングに浸漬され、そしてフロック状の繊維コーティングを調製するために綿またはレーヨン繊維をエアースプレーにて、または静電気的に施すことができる。手袋が表裏逆にされると、粘着性−コートされたレーヨンまたは綿フロックは皮膚に接触し、そして湿気を吸収する特性を与える。繊維フロックはまた、ソフトな皮膚接触を生じ、快適で湿っぽくない手袋の感じを与える。手袋の外表面は、手袋に幾何学的テクスチャーを現すために、第一の態様と類似の様式で洗浄される。
【0015】
加硫工程が完了した後、第4の態様では、手袋ははがされ、表裏逆にされ、そして幾何学的テクスチャーの裏当てシェル(外皮)を調製するために、第一の態様で開示したように洗浄される。型が取られ、そして編んだ手袋裏当てがその上につけられる。その編んだ裏当ては、綿、レーヨン、ナイロン、切断耐性繊維(Kevlar(商標)アラミド繊維、 Spectra(商標)ポリエチレン繊維、またはポリエステル被覆の編んだ鋼繊維を含む)から調製することができる。粘着層を編んだ手袋裏当てに施すことができる。幾何学的テクスチャーの裏当て外皮は、型上の粘着−コートされた編んだ裏当て上につけられ、そして硬化サイクルにさらされ、それにより幾何学的テクスチャーの裏当て外皮と編んだ手袋裏当ての間に柔軟な境界を形成する粘着を硬くする。この構築は、優れた把持特性と切断耐性を有した、支持された幾何学的テクスチャーの手袋を生じる。
【0016】
高められた把持力を与える幾何学的特性の表面テクスチャーを有するラテックス手袋の重要な特徴は、組み合わせで以下の特徴を含む:
へこみまたは窪みの規則的または不規則的列を含む、幾何学的テクスチャー特性を有する手袋表面;
手袋表面上に選択可能にそして精密に適用される特性のサイズ、形状および配置を有するテクスチャー特性;
はっきりと画定された明確な辺を有するへこみおよび/または窪みのテクスチャー特性;
内曲した表面を有するへこみおよび/または窪みのテクスチャー特性;
球状の空隙よりも大きな内部表面面積を有するへこみおよび/または窪みのテクスチャー特性;
把持表面上に存在する境界層オイルまたは水を吸って保持するに十分な内部体積を有するへこみまたは窪みの手袋外表面テクスチャー特性;および
手袋型からはがされる間に形成される空隙、裂けおよび欠陥がない手袋テクスチャー表面。
【0017】
高められた把持力を与える幾何学的特性表面テクスチャーを有する手袋を製造するプロセスの主要な特徴は、以下の工程を組み合わせで含む:
PVP、PVA、PAA、PACおよび/またはPVP、PVA、PAAまたはPACのコポリマーまたは誘導体から選択される水−溶解性を含むポリマー性凝固剤コーティング、硝酸カルシウムおよび塩化カルシウムから選択される凝固剤、ポリグリコール、および界面活性剤を調合する工程;
ポリマー性凝固剤コーティングを水性ラテックスエマルジョン中にて手袋を浸漬するために使用する型に施す工程;
コーティングが粘着性となるまで手袋型上でポリマー性凝固剤コーティングを乾燥する工程;
水−溶解性、部分的に水−溶解性, または水−不溶性個別の凝固剤粒子を、手袋型上の粘着性ポリマー性凝固剤コーティングに適用する工程;
手袋型上の埋め込まれた個別の粒子とポリマー性凝固剤コーティングを乾燥する工程;
ポリマー性凝固剤でコートされた個別の粒子が埋め込まれた手袋型の水性ラテックスエマルジョン中へのインラインまたは連続浸漬(sequential dipping)する工程;
ポリマー性凝固剤コーティングおよびポリマー性凝固剤コーティング中に埋め込まれた個別の凝固剤粒子上のラテックスエマルジョンを不安定にし、凝固させる工程、そのラテックスフィルム中に個別の凝固剤粒子を囲い、そして挿入するラテックスフィルムを形成する各工程;
ラテックスを加硫するために、ラテックスフィルムを有する型を硬化サイクルにさらす工程;
第一の態様では、型から加硫されたラテックスフィルムの手術または検査手袋(examination glove)をはがし、それを表裏逆とし、そしてそれを水または適当な溶媒中で個別の凝固剤粒子を溶解するために洗浄し、それによって手袋の外表面上に幾何学的テクスチャーを露出させる各工程;
第二の態様では、発泡ラテックスの第二の層を施し、その発泡ラテックス層を硬化し、型からその産業用手袋をはがし、それを表裏逆とし、そして個別の凝固時粒子を溶解するために水または適当な溶媒で洗浄し、それによって手袋の外表面上に幾何学的テクスチャーを露出させる各工程;
第三の態様では、粘着層を施し、綿またはレーヨンフロックのエアースプレーまたは静電気的スプレーをし、その粘着層を硬化し、型からその産業用手袋をはがし、表裏逆として湿気を逃がす手袋皮膚接触内表面を調製し、そして個別の凝固剤粒子を溶解するために水または適当な溶媒で洗浄し、手袋の外表面上に幾何学的テクスチャーを露出させる工程;および
第四の態様では、非−粘着性のポリウレタン層を加硫されたラテックス手袋外皮に施すことによって工程8で詳細に示すように型上に加硫されたラテックス手袋外皮を調製し、編んだ裏当てを粘着−コートされた加硫されたラテックス外皮上につけ、編んだ裏当てを有する加硫されたラテックス手袋外皮を結合するために熱によってポリウレタンを溶融して粘着し、その支えられた手袋を型からはがし、個別の凝固剤粒子を露出させるためにその手袋を表裏逆とし、そして個別の凝固剤粒子を溶解するために水または適当な溶媒で逆とした手袋を洗浄し、それによって幾何学的テクスチャーの手袋表面を露出させる各工程。
【0018】
このように、ここで示した原理の開示では、幾何学的テクスチャーの合成または天然ラテックス物品、特に産業用、家庭用および医療用手袋用途のものを、通常の浸漬法によって調製する方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、まずポリマー性凝固剤コーティング組成物中に浸漬し、コーティングが粘着性になるまで型の外表面コーティングを乾燥し、個別の凝固剤粒子を粘着性コーティングに適用し、そして埋め込まれた粒子とポリマー性凝固剤コーティングを乾燥することによる、手袋型のインラインプロセシングを図示したものである。
【図2】図2は、インラインプロセスラインの図解であり、1)浸漬工程で埋め込まれた水−溶解性の個別の凝固剤粒子を有するポリマー性凝固剤コーティングでコートされた型を水性ラテックスエマルジョン中に浸漬し、個別の凝固剤粒子を囲う凝固したラテックスのフィルムを形成し; 2)加硫ラテックスフィルムを加熱する工程; 3)はがし工程; 4)手袋を裏表逆にする工程; および5)個別の凝固剤粒子を溶解する水洗浄工程、を示している。
【図3A】図3Aは、埋め込まれた水−溶解性の個別の凝固剤粒子の角状特徴の正確な複製を示している、80倍での手袋の把持性外表面の走査電子顕微鏡写真である。
【図3B】図3Bは、埋め込まれた水−溶解性の個別の凝固剤粒子の角状特徴の正確な複製を示した、80倍での手袋の把持性外表面の断片の走査電子顕微鏡写真である。
【図4A】図4Aは、埋め込まれた個別の凝固剤粒子の角状特徴の正確な複製を示した50倍での手袋の把持性外表面の走査電子顕微鏡写真である。
【図4B】図4Bは、埋め込まれた個別の凝固剤粒子の角状特徴の正確な複製を示した、50倍での手袋の把持性外表面の断片の走査電子顕微鏡写真である。
【0020】
発明の詳細な説明
幾何学的特性表面構造を有するラテックス手袋は、手袋を浸漬するのに使用される滑らかな型に適用されるポリマー性凝固剤コーティングに結合している個別の凝固剤粒子のサイズ、形状および配置に従って把持力が変えられる能力を提供する。そのプロセスは、水溶性、部分的水溶性、または水不溶性の個別の凝固剤粒子を使用することができる。それらの個別の凝固剤粒子は、滑らかな型上に形成される粘着性、水−溶解性、ポリマー性凝固剤コーティングまたはフィルムに乾燥粉コーティングプロセスによって埋め込まれる。表面テクスチャーが手袋の外表面の特定の領域に選択的に適用される場合、個別の凝固剤粒子が埋め込まれた型がラテックスフィルムを形成するために合成または天然水性ラテックスエマルジョン中に浸漬される前に、ポリマー性凝固剤コーティングは手のひらおよび手の指領域中に凝固剤粒子を保持する。浸漬ラテックスフィルムの外把持表面上に規則正しい形状と配置でのくぼんだへこみまたは吸盤形状を得る能力は、水−溶解性ポリマー性凝固剤コーティングまたはフィルムによって規則正しい位置で保持された埋め込まれた個別の凝固剤粒子から生じる。手袋のラテックスフィルムが硬化されたのち、水洗、好ましくはホット水洗浄、または適当な溶媒洗浄によって溶解される個別の凝固剤粒子を露出させるために、手袋は逆転される。
一般的に述べると、本発明は、最もよく使用されている産業用手袋生産プロセスに類似したインライン製造プロセスを使用した、幾何学的テクスチャーの手袋の外表面上にコントロールされたサイズと配置を有する好ましい角状形状の精密に輪郭を有する吸盤またはへこみを達成する方法を提供する。そのプロセスは、標準的な滑らかな手袋型を使用し、そして個別の凝固剤粒子はその表面に、5〜50μの厚さ範囲で型に最初に適用される水−溶解性ポリマー性凝固剤コーティングを使用して結合される。ポリマー性凝固剤コーティングおよび埋め込まれた個別の凝固剤粒子のために、ラテックス層中にその窪みが生まれる。ラテックス層が硬化され、はがされ、逆さにされると、さらされた個別の凝固剤粒子を有する手袋の外層は、埋め込まれた粒子を溶解するために洗浄され、そしてテクスチャー化手袋の表面テクスチャーを露出させる。ポリマー性凝固剤コーティングは水中で溶解するので、型は速やかに洗浄され、そしてその型はダメージを受けることなしに次のプロセスサイクルに使用される。非常に高い確実性と精度にて手袋外表面に調製される幾何学的テクスチャーの結果として、手袋は乾燥、湿潤および油性の環境下で道具や装置をつかむための改良された性能を提供する。手袋のテクスチャー化外表面によって提供される牽引または把持力の程度は、使用する個別の凝固剤粒子の粒子サイズを選択することによって、制御された様式で選択することができる。約50〜200μのサイズ範囲の細かい個別の凝固剤粒子は、きめの粗い約150〜2000μのサイズ範囲の個別の凝固剤粒子に比べて滑らかな牽引を生じる。
【0021】
水−溶解性, ポリマー性凝固剤コーティング溶液は、PVP、PVA、PAA、PAC、および/またはPVP、PVA、PAAまたはPACのコポリマーまたは誘導体を含む群から選択されるポリマーを使用する。そのようなコポリマーの例は、1)l-ビニル-2-ピロリドンおよびl-メチル-3-ビニル-イミダゾリウム-メチルサルフェートのコポリマー、および2)ビニルカプロラクタム/ ビニルピロリドン/ ジメチルアミノエチルメタクリレートのコポリマーである。ポリアクリル酸の例には、水−溶解性アクリルホモポリマー類および/またはメタクリル酸ホモポリマー類が含まれる。PVPまたはPVPコポリマーおよびPACは主にヘアースタイル製品の成分としてよく使用されている。同様の原理で、ポリマーまたはそのコポリマーは、型が合成または天然水性ラテックスエマルジョンに浸漬されるまで、水−溶解性, 部分的に水−溶解性または水−不溶性の個別の凝固剤粒子を型の手のひらおよび手の指領域に保持する。ポリマー性凝固剤コーティング中に混ぜられる水−溶解性ポリマーの量は、0.01%〜10%乾燥重量の範囲で変えることができる。理想的には、そのレベルは、型表面に個別の凝集剤粒子を保持するのに十分な厚さを与えるためには、0.5%〜1.5%の範囲である。
【0022】
水−溶解性の個別の凝固剤粒子は、ラテックスエマルジョン凝固作用を示し、そして乾燥パウダーコーティングプロセスに適用される、乾燥塩の全ての種類を含む群から選択される。個別の凝固剤粒子として適当な塩の例には、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硝酸カルシウム、塩化カルシウム、および硫酸アルミニウムが含まれる。
【0023】
型上のポリマー性凝固剤コーティング中に埋め込まれた水−溶解性の個別の凝固剤粒子を使用することが好ましいけれども、炭酸カルシウムまたは炭酸水素ナトリウムのような水−不溶性の個別の凝固剤粒子を使用することも可能であり、乾燥パウダーコーティングプロセスにて適用され、そしてラテックス加硫後に水洗浄の代わりに酸洗浄を使用して洗浄される。個別の凝固剤粒子の乾燥パウダーコーティング適用は、スパークリングシステム(sprinkling system)、加圧スプレー(pressurized spray)、および霧状および流動化エアーベッド(atomizing and fluidized air beds)のような産業界においてよく使用されている標準的な技術を使用して実施することができる。
【0024】
図1に示すように、一般的に10としてインラインプロセスを図解しており、手袋型11をまずポリマー性凝固剤コーティング組成物12に浸漬し、13に示すようにコーティングが粘着性となるまで型外表面コーティングを乾燥し、水−溶解性の個別の凝固剤粒子14を粘着性コーティングに適用し、そして15で示したように埋め込まれた粒子を有するポリマー性凝固剤コーティングを乾燥する。各プロセスでの表面の詳細は、円形の拡大図で示している。第一の工程では、型11のみが存在する。ポリマー性凝固剤コーティング溶液に浸漬し乾燥した後、粘着性コーティング層がステップ2の拡大図(粘着性コーティング12を有する型11を示す)に示されるように形成される。ステップ3では、個別の凝固剤粒子が拡大図に示されるように粘着性ポリマー性凝固剤コーティングに適用される。そこで、ポリマー性凝固剤コーティング12は埋め込まれた個別の凝固剤粒子14を有することになる。この図では、袖口領域までの親指、その他の指および手のひら部分がポリマー性凝固剤コーティング溶液に浸漬される。しかし、粘着性コーティングは手袋の選択された領域のみに適用することができる。
【0025】
図2に示すように、インラインプロセスラインの図解20で、浸漬工程を一般的に示していて、型15は埋め込まれた水−溶解性の個別の凝固剤粒子14を有するポリマー性凝固剤コーティングでコートされていて、それは水性ラテックスエマルジョン21中に浸漬され、埋め込まれた水−溶解性の個別の凝固剤粒子14を囲む凝固したラテックス層のフィルムを形成する。加熱工程(示していない)では、ラテックスフィルムを加硫する。はがし工程25が示されていて、ここでは手袋は型からはがされ、そして拡大図に示されるように外表面上に個別の凝固剤粒子14がくるように表裏逆にされる。水洗浄工程26は、個別の凝固剤粒子14を溶解するためである。溶解した粒子は溶解した粒子は拡大図27に示されるように内曲した(re-entrant)角状窪みを残す。
【0026】
図3Aは、80倍での手袋の把持性外表面の走査電子顕微鏡写真を30で示していて、31は埋め込まれた水−溶解性の個別の凝固剤粒子の角状特徴の正確な複製を示している。塩化ナトリウムの個別の凝固剤粒子は、以下の実施例4に示されるように、約300−1630μのサイズ範囲を有する。
【0027】
図3Bは、80倍での手袋の把持性外表面の断面の走査電子顕微鏡写真35を示していて、埋め込まれた水−溶解性の個別の凝固剤粒子の角状特徴の正確な複製と36に示す内曲した窪みの存在を示している。塩化ナトリウムの個別の凝固剤粒子は、以下の実施例4に示されるように、約300−1630μのサイズ範囲を有する。その発泡層は37でラテックス層の下に写真中に明確に見られ、それは以下の実施例9で議論する。
【0028】
図4Aに示されるように、41として、埋め込まれた水−溶解性の個別の凝固剤粒子の角状特徴の正確な複製を示す、80倍での手袋の把持性外表面の走査電子顕微鏡写真を40として示している。塩化ナトリウムの個別の凝固剤粒子範囲は、以下の実施例6に示されるように、約470−700μの小さなサイズの範囲を有する。
【0029】
図4Bに示されるように、埋め込まれた水−溶解性の個別の凝固剤粒子の角状特徴の正確な複製と46で示す内曲した窪みの存在を示す、50倍での手袋の把持性外表面の断片の走査電子顕微鏡写真を46として示している。塩化ナトリウムの個別の凝固剤粒子は、以下の実施例6に示されるように、約470−700μの小さなサイズ範囲を有する。そのフロックは、47にてラテックス層の下に写真中に明確に見られ、それは以下の実施例9で議論する。
【実施例】
【0030】
実施例
以下の実施例は本発明を例示するために示しており、いかなる意味においても本発明の範囲を制限する意図ではない。
実施例1(比較例)
以下の組成の清澄な凝固剤溶液を調製した:
【0031】
【表1】

加熱した磁器型を、50−60℃に加熱した上述のポリマー性凝固剤溶液に浸漬し、そして40℃にて2分間乾燥した。標準的な空気圧粉末スプレーを使用して、細かい塩化ナトリウム個別の凝固剤粒子を型の乾燥凝固剤表面の手のひらおよび手の指領域上にスプレーする。
【0032】
型の手のひらおよび手の指領域に、塩化ナトリウムの個別の凝固剤粒子が不十分に付着し、塩のむらのあるスポットが生じた。この方法を使用して調製した手袋では、欠陥としてピンホールや薄いパッチ(patches)が生じやすい。
それから型を、以下の標準ニトリル産業用手袋ラテックス組成物に浸漬し、続いて2分間40℃にて浸出した。
【0033】
【表2】

それから手袋を35分間100℃にてオーブン中で硬化させた。それから得られた手袋を型からはがした。その手袋は、手のひらと手の指領域に不十分なテクスチャーを示し、手のひらと手の指領域に滑らかなのと粗い部分を有していた。
実施例2
他の凝固剤を以下の構成に従って調製した:
【0034】
【表3】

実施例1のように、同様の手袋浸漬工程を実施した。塩化ナトリウムの個別の凝固剤粒子は、型の手のひらおよび手の指表面領域上に乾燥凝固剤がよく付着した。手袋を型からはがして、手袋を表裏逆にし、そして置かれた塩のいくらかは乾燥したポリマー性凝固剤コーティング層を貫通して手袋に多くの小さなピンホールを生じていたが、手のひらと手の指領域で均一なラフなテクスチャーを有していた。
実施例3
他の凝固剤を以下の構成に従って調製した:
【0035】
【表4】

実施例1と2に示すように、同様の手袋浸漬工程を実施した。この凝固剤を使用して調製された手袋上のピンホールの数は実施例1および2と比較して顕著に減少されたのを除いて、この凝固剤実施例2で見られたのと同様の観察が記録された。
実施例4
他の凝固剤を以下の構成に従って調製した:
【0036】
【表5】

加熱した型を上述の凝固剤中に浸漬した後、塩化ナトリウム (300 - 1630 μ)の個別の凝固剤粒子を、型の手のひら指および手の指領域のあたりに均一にマニュアルでまいた。実施例1のようにニトリルラテックス組成物中に型を浸漬するまで、粘着性凝固剤は置かれた塩を保持することができた。この凝固剤を使用して製造された手袋は少ないピンホールが存在したのを除いて実施例2と3で示すのと同様の観察が記録され、このことはもしPVPコポリマーフィルムがより厚く個別の凝固剤粒子が均一に配置されていると、中間からきめの粗い塩化ナトリウムの個別の凝固剤粒子はニトリルラミネートの第一の層に最小の影響でその層に埋め込まれるであろうことを示唆している。
【0037】
手のひらと手の指領域での上述の手袋テクスチャーは、図3Aおよび3Bに示すように、上表面および断片の80倍拡大での走査電子顕微鏡(SEM)にて観測された。手袋を洗浄した後に埋め込まれた塩の形状から表面に形成された吸盤状のへこみは、SEM写真にて明らかである。
実施例5
実施例4に示す上述の実験にて、PVPをPVAに置き換えることによって実験を繰り返した。PVAを使用して、実施例4と同様な現象が観察され、それはPVAがPVPを代替するのに使用することができることを意味する。
実施例6
実施例4に示すのと同様の実験を、流動化エアーベッドユニットを使用して、かなり細かい塩化ナトリウム(470−700μ)の個別の凝固剤粒子をドライスプレーコーティングすることによって繰り返した。型上に置かれた個別の凝固剤粒子は、マニュアルまたはエアーパウダースプレーよりもより一定で、そしてピンホールは観察されなかった。はがされた手袋を、SEMに50倍にて、図4Aおよび4Bに示すように上表面と断片で観察した。
実施例7
水−溶解性のポリマー凝固剤−コート型上への塩の乾燥注入後まで、実施例6に示すように実験を繰り返した。その後、型を最初のラミネートとして第一のラテックス浸漬中におよそ10秒の短い浸漬時間浸漬し、そして第2のラミネートとして第二の浸漬中に40秒間の長い浸漬を行った。それから型を10%硝酸カルシウム溶液に浸漬し、発泡ラテックス組成物中に浸漬した。それから手袋を100℃にて35分間オーブン中で硬化させた。それから手袋をはがし、表裏逆にした。それから手袋から過剰な塩と界面活性剤を除くためにオフライン水洗浄した。洗浄された手袋を、55℃にて一時間タンブラー乾燥機(tumbler drier)で乾燥した。この方法にて調製された3層ラミネート手袋は、ピンホール欠陥の可能性は低かった。
【0038】
3層ラミネート手袋は、産業用手袋として、良好で快適な装着性、および乾燥、湿潤および油状での把持特性を有していた。同様の工程を使用して6つの手袋を浸漬し、標準的アンセルテスト法(Ansell test method)TM 126を使用して乾燥、湿潤および油状の把持力をテストした。結果を以下に示す:
【0039】
【表6】

乾燥および油状の把持力(標準的アンセルテスト法TM 126を使用して測定)は、以下のように典型的標準Ansell Solvex 産業用手袋を基準とした:
【0040】
【表7】

明らかに、幾何学的特性表面テクスチャーを有する製造された実験手袋は、これまで製造されている市販の手袋のいずれと比較しても、向上した乾燥、湿潤および油性把持特性を有する。
実施例8
本実験では、第2のニトリルラテックスラミネートの後に型をマイルドな塩素溶液に浸漬したのを除いて、繰り返した。実施例7に示すように、手袋は硬化され、はがされ、オフラインで洗浄され、乾燥された。この方法にて製造された2層ラミネート手袋はピンホール欠陥の発生があまりなかった。その2層ラミネート手袋はよい装着性および乾燥、湿潤および油状でのよい把持特性を有していた。
実施例9
本実験は、第2のニトリルラテックスラミネートの後に型を粘着性ラテックスに浸漬するのを除いて、繰り返した。綿またはレーヨンフロックを粘着層へエアーブローまたは静電気的方法によって施した。それから、前述の実施例のように、手袋をはがし、オフラインにて洗浄し、そして乾燥した。本方法にて製造された3層ラミネート手袋はよい装着性および乾燥、湿潤、油状でのよい把持力を有していた。個別の凝固剤塩粒子の水−溶解性ポリマー凝固剤表面へ埋め込むための使用は、図3Bおよび4Bの顕微鏡写真に示される。フロックは、顕微鏡写真のラテックス層の下に明確に見られる。
【0041】
出版物、特許出願、および特許を含む本明細書で引用したすべての参考文献を、それぞれの参考文献を参照として援用すると個々にそして特定的に示したように、およびその全体を援用すると示したように、その範囲で参照として本明細書に援用する。
【0042】
用語“a”および “an”および“the”、および発明を記述する文脈(特に以下のクレームの文脈)での類似の言語の使用は、特に示されていなければ、または文脈から明らかに矛盾しなければ、単数および複数の両方をカバーすると解釈すべきである。本明細書中の値の範囲の記載は、特に明示していなければ、単にその範囲内のそれぞれの個々の値を個別に言及するのの略式方法としての使用を意図しており、そしてそれぞれの個々の値は個別に記載されているとして、本明細書に挿入される。本明細書で記載しているすべての方法は、明細書中に特に断りがなければ、または文脈から明らかに矛盾しなければ、いずれの適当な順序であっても実施することができる。本明細書に記載されているすべての例、または例示的用語(たとえば“〜のような”)は、本発明をよりよく示すためだけを意図しており、特に述べていなければ本発明の範囲に制限を課すものではない。本明細書中のどの用語も、クレームされていない要素が本発明の実施に必須であると示唆しているように解釈してはならない。
【0043】
本発明の好ましい態様は、本発明を実施する発明者が知るベストモードを含み、本明細書に記載されている。例示されている態様は例示目的のみであり、本発明の範囲を制限するように理解してはならない。
[発明の態様]
[1]
外表面と内表面を含むラテックス手袋;
前記外表面は、明確に画定された内部の辺を示す幾何学的特性の複数のへこみを含む表面テクスチャーを有し、それによって手袋の外表面の幾何学的に画定された表面テクスチャーは改良された乾燥、湿潤または油状表面の把持特性を与え;および前記内表面は:
(i)粘着性結合綿またはレーヨンフロックで提供され、それによって手袋の内表面に粘着性結合した綿またはレーヨンフロックは改良された皮膚湿気吸収および皮膚刺激抵抗性を提供し;
(ii)硬化発泡ラテックスの層を提供し、それによって手袋の内表面で硬化発泡ラテックスの層は改良された皮膚湿気吸収性および皮膚刺激抵抗性を提供し;または、
(iii)アラミド繊維または鋼線を編んだ裏当てに粘着性結合していて、それによって粘着結合したアラミド繊維または鋼線を編んだ裏当ては、ラテックス手袋に切断耐性を提供する。
[2]
1のラテックス手袋であって、へこみは内曲した表面を有し、その内側の開きは手袋の外表面のへこみの表面開口よりも大きい、前記手袋。
[3]
1のラテックス手袋であって、へこみのサイズ範囲が直径約50〜2000マイクロメーターである、前記手袋。
[4]
1のラテックス手袋であって、手袋は改良された把持力の外科用または検査用手袋である、前記手袋。
[5]
1のラテックス手袋であって、改良された把持力の産業用手袋である、前記手袋。
[6]
幾何学的特性の表面テクスチャーを有するラテックス物品を製造する方法であって、以下の工程を含む方法:
a. 水−溶解性ポリマー、ポリグリコール、界面活性剤、および凝固性塩を含む水性ラテックスエマルジョンに浸漬するための滑らかな型上に粘着性のポリマー性凝固剤コーティングを提供する工程;
b. 選択されたサイズと配置の個別の凝固剤粒子を粘着性のポリマー性凝固剤コーティングに施す工程、ここで個別の凝固剤粒子は完全に水−溶解性、部分的に水−溶解性、または完全に水−不溶性であり;
c. 埋め込まれた個別の凝固剤粒子を有するポリマー性凝固剤コーティングを乾燥する工程;
d. 個別の凝固剤粒子を包み込んで有するポリマー性凝固剤コーティングの上に少なくとも一層のラテックス層を施す工程;
e. ラテックス層を有する型を加熱によってラテックス層を加硫または硬化する工程;
f. 個別の凝固剤粒子を露出させるために、ラテックス物品をはがして表裏逆にする工程;および
g.水または適当な溶媒で個別の凝固剤粒子を浸出または溶解する工程;
前記方法はさらに工程(e)と(f)の間に以下の工程を含んでいてもよい;
発泡ラテックス層を施す工程;および発泡ラテックス層を有する型を加熱することによって発泡ラテックス層を加硫または硬化する工程;
粘着層を施す工程;粘着層上に綿またはレーヨンフロックをエアーブローまたは静電気的ブローイングする工程;そして粘着層を硬化する工程;または
室温にて非−粘着性ポリウレタン粘着層を施す工程;非−粘着性ポリウレタン粘着層上に綿、アラミド繊維または鋼線を編んだ裏当てを施す工程;そしてテクスチャー手袋外皮と編んだ裏当てを有する型をポリウレタン粘着層を溶融するために加熱する工程、それによってテクスチャー手袋外皮と編んだ裏当ての間に永久的な柔軟な結合が形成される;
それによって、幾何学的特性表面テクスチャー、および選択的に発泡内部表面、フロック内部表面、または支持された編んだ裏当て内部表面を有するラテックス物品が得られる。
[7]
6の方法であって、ポリマー性凝固剤コーティングが厚さ約5〜50ミクロンの範囲である、前記方法。
[8]
6の方法であって、水−溶解性ポリマーがポリN−ビニル−2−ピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリルアミド(PAC)、および前記のいずれかのコポリマーおよび/または誘導体からなる群から選択される、前記方法。
[9]
8の方法であって、水−溶解性ポリマーがポリマー性凝固剤コーティング中に乾燥重量に基づいて約0.01%〜約10.0%の範囲の量存在する、前記方法。
[10]
9の方法であって、水−溶解性ポリマーがポリマー性凝固剤コーティング中に乾燥重量に基づいて約0.5%〜約1.5%の範囲の量存在する、前記方法。
[11]
8の方法であって、PAAがアクリルホモポリマーである、前記方法。
[12]
11の方法であって、アクリルホモポリマーがメタクリル酸ホモポリマーである、前記方法。
[13]
8の方法であって、コポリマーがPVPと1- メチル-3-ビニル-イミダゾリウム-メチルサルフェートのコポリマーである、前記方法。
[14]
8の方法であって、コポリマーがビニルカプロラクタム/ビニルピロリドン/ジメチルアミノエチルメタクリレートである、前記方法。
[15]
6の方法であって、ポリグリコールがポリエチレングリコールである、前記方法。
[16]
6の方法であって、ポリグリコールがポリエチレンオキサイド/ ポリプロピレンオキサイドコポリマーである、前記方法。
[17]
6の方法であって、界面活性剤がエトキシ化アセチレンジオール(ethoxylated acetylenic diol)である、前記方法。
[18]
6の方法であって、凝固剤塩が硝酸カルシウムまたは塩化カルシウムである、前記方法。
[19]
6の方法であって、個別の凝固剤粒子のサイズが約5〜1800ミクロンの範囲である、前記方法。
[20]
6の方法であって、水−溶解性の個別の凝固剤粒子が塩化ナトリウム, 塩化カリウム, 硝酸カルシウム, 塩化カルシウム, 塩化アルミニウム,および硫酸アルミニウムからなる群から選択される、前記方法。
[21]
6の方法であって、部分的に水−溶解性または水−不溶性の個別の凝固剤粒子が炭酸カルシウム, 炭酸マグネシウム, 炭酸ナトリウム、および炭酸水素ナトリウムの一つまたはそれ以上を含む、前記方法。
[22]
6の方法であって、ラテックス層のそれぞれがカルボキシル化アクリロニトリルブタジエン、非−カルボキシル化アクリロニトリルブタジエン、ブチルラテックス、ポリクロロプレン、天然ゴム、合成ポリイソプレン、およびポリウレタンからなる群から独立的に選択される、前記方法。
[23]
22の方法であって、ラテックス層の一つまたはそれ以上がさらに硬化剤を含む、前記方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外表面と内表面を含むラテックス手袋であって、
外表面は明確に画定された内部の辺及び角状表面を有する複数のへこみを有し;ここで外表面の複数の該へこみの開口は内部開口よりも小さく;それによって外表面の部分の該へこみは改良された乾燥、湿潤または油性の表面把持特性を提供し、該へこみのサイズ範囲が直径5〜1800マイクロメーターであり、該複数のへこみの内部の辺及び角状表面は塩化ナトリウム、塩化カリウム、硝酸カルシウム、塩化カルシウム、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸ナトリウム、および炭酸水素ナトリウムからなる群から選択される粒子の表面を複製したものである、前記のラテックス手袋。
【請求項2】
請求項1のラテックス手袋であって、該へこみのサイズ、形状および配置が改良された乾燥、湿潤または油性の表面把持特性を提供する、前記手袋。
【請求項3】
請求項1のラテックス手袋であって、手袋の指領域が該へこみを含む、前記手袋。
【請求項4】
請求項1のラテックス手袋であって、手袋の手のひら領域が該へこみを含む、前記手袋。
【請求項5】
請求項1のラテックス手袋であって、手袋の親指領域が該へこみを含む、前記手袋。
【請求項6】
請求項1のラテックス手袋であって、内表面は粘着性−結合コットンまたはレーヨンフロックを含み、内表面はそれによって改善された皮膚水分吸収性および改善された皮膚刺激性を提供する、前記手袋。
【請求項7】
請求項1のラテックス手袋であって、内表面は硬化発泡ラテックスの層を含み、内表面はそれによって改善された皮膚水分吸収性および改善された皮膚刺激性を提供する、前記手袋。
【請求項8】
請求項1のラテックス手袋であって、内表面は粘着性−結合編裏当てであってアラミド繊維、ポリエチレン繊維、鋼繊維、またはその組み合わせを含むものを含み、内表面はそれによって切断耐性を与える、前記手袋。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【公開番号】特開2012−184538(P2012−184538A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−73182(P2012−73182)
【出願日】平成24年3月28日(2012.3.28)
【分割の表示】特願2007−551232(P2007−551232)の分割
【原出願日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(598165943)アンセル・ヘルスケア・プロダクツ・エルエルシー (15)
【氏名又は名称原語表記】Ansell Healthcare Products LLC
【Fターム(参考)】