説明

高オレイン酸低リノレン酸油を含む、低繊維黄色キャノーラ種子

本発明は、低繊維、黄色種子のキャノーラ、ならびに関連するキャノーラミールおよび動物飼料を提供する。この種子から産生される油は、油中の総脂肪酸に対して少なくとも68%のオレイン酸を有し、リノレン酸は3%を有するに過ぎない。これらの特徴を示す特定のキャノーラ系統も同様に提供する。高品質のミールと共に優れた油という組み合わされた長所を提供するキャノーラ種子は、これまで提供されていない。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発明の背景
キャノーラは重要な油科作物である。キャノーラ油は、その飽和脂肪酸のレベルが低いことにより、優れた食用油であると考えられている。「キャノーラ」は、多くて2重量%である(種子の総脂肪酸含量と比較して)エルカ酸(C22:1)含量を有し、脱脂(油を含まない)ミール1 gあたり30 μmol未満のグルコシノレートを含む乾燥ミールを産生する(粉砕後)ナタネ(アブラナ種(Brassica spp.))を指す。これらのタイプのナタネは、種のより伝統的な品種と比較してその食用性によって区別されている。
【0002】
通常のキャノーラ油(ナタネの在来品種および初期の商業品種から抽出)は、α-リノレン酸含量(C18:3)(ALA)が比較的高い(8%〜10%)。この脂肪酸は不安定であり、調理の際に容易に酸化されて、これが油の香りの低下を引き起こす。これはまた、貯蔵の際のにおいの低下および敗油性の香りを発生させる。
【0003】
水素添加によってα-リノレン酸含量レベルを低減させると、油の酸化的安定性を増加させることは公知である。水素添加は、植物油の多価不飽和脂肪酸含量を低減させるために日常的に用いられている。食品産業は、水素添加を用いて、植物油の融点を上昇させ、それによってバター、ラード、および獣脂と類似のきめを有する油に基づく製品を作製してきた。水素添加の際に、不飽和脂肪酸のトランス異性体が一般的に産生される。しかし、トランス脂肪酸の栄養特性は飽和脂肪酸を模倣して、それによって水素添加油の全体的な望ましさが低減する。
【0004】
NATREON(Dow AgroSciencesの商標)油の開発により、さらに健康的なキャノーラ油が作製され、油の酸化的安定性は増加した。NEXERA種子は近縁である。NATREONキャノーラ油は、典型的に70%より多いオレイン酸(C18:1)および3%未満のリノレン酸(C18:3)を有する。高オレイン酸および低リノレン酸の食事に対する効果は、低密度リポタンパク質(LDL)を低下させることによって、健康に劇的な効果を有し、高密度リポタンパク質に対して有害な効果をほとんどまたは全く有しないことが示されている。LDLは、血管へのコレステロールの沈着を媒介して、それによってアテローム性動脈硬化症および冠血管心疾患が起こる。米国特許第6,489,543号(SV095-08);第6,433,254号(Nex 705);第6,455,763号(S010);および第6,444,879号(1709)は、栽培学上優れた高オレイン酸キャノーラ品種に関連する。米国特許第5,965,755号および第6,169,190号(AG019)は、高オレイン酸、低リノレン酸キャノーラ油に関する。
【0005】
ナタネミールは、タンパク質含量が比較的高いが、その繊維含量が高いために、その消化率および動物飼料における価値が減少している。大豆ミールと比較して通常のキャノーラミールは、より高い値の食物繊維を含む。その食物繊維が高いために、キャノーラミールは大豆ミールより約20%少ない代謝エネルギー(ME)を有する。その結果、ミールの価値は、大豆ミールのような他の油糧種子ミールと比較して低いままである。Rakow(2004a)は、大豆ミール(約4%粗繊維)と比較して主にキャノーラミールのその高い繊維含量(約12%粗繊維)が、特にブタおよび家禽の飼料供給におけるその飼料価値を低減させることから、キャノーラミールは大豆ミールの価格の約60〜70%で販売されていると報告している。キャノーラミールは、無処理の場合には約36〜38%粗タンパク質を含むが、大豆ミールは48%を含む。同様に、グルコシノレートの存在は、家畜の生育および繁殖に対してこれらの化合物が及ぼす有害な効果のために、いくつかのキャノーラミールの価値を減少させる。
【0006】
キャノーラにおいて、今日までのほとんどの遺伝的選択は、油含量および栽培学的特徴に重点が置かれてきた。ブラシカ・ナパス(Brassica napus)キャノーラにおけるミール品質の改善は、単胃動物に供給するための大豆ミールのような他の高タンパク質飼料とより競合させるために、ミールの代謝エネルギー(ME)を増加させることに集中しなければならない。繊維レベルの低減は、タンパク質の比率およびMEを上昇させることによって、キャノーラミールの栄養的価値を増加させるであろう。
【0007】
黄色の種皮を有するキャノーラは、暗色の種皮を有する品種より薄い外殻を有し、このようにより少ない繊維、より多くの油およびタンパク質を有することが見いだされている。種皮の色は、一般的に2つの主なクラス、すなわち黄色または黒色(または暗褐色)に分けられるが、これらの色には、赤みがかった褐色および黄色がかった褐色のような多様な色調も同様に観察されている。ナタネにおける種皮の色は、アブラナの特定の種および品種に応じて異なる可能性がある。黄色の種子のナタネ品種はアジア諸国および中国では一般的であり、特に黄色種子栽培品種、特にカラシナ(B. juncea)およびブラシカ・ラパ(B. rapa)品種の産生量は多い。
【0008】
Stringamら(1974)は、B.ラパの黄色の種子が、褐色種子より高い油、より高いタンパク質、およびより低い繊維含量を有することを報告した。Bell&Shires(1982)は、黄色および褐色のキャノーラ種子の外殻の組成を調べて、ブタによるその消化率を比較した。褐色の外殻は、より多くの繊維およびリグニンを含んだ。Shirzadegan & Robbelen(1985)は、褐色対黒色種子において平均で2.6%高い油およびタンパク質含量、ならびに一般的な黒色種子型と比較して黄色および褐色の種子の繊維および外殻含量の3%低減を報告している。
【0009】
Bell(1995)は、キャノーラミールが高い栄養品質を有するが、ミールに外殻が存在することにより、利用可能なエネルギーおよびタンパク質レベルのみならずアミノ酸および無機質レベルが低減することに気づいた。キャノーラミールの栄養価値は、繊維および/または外殻含量を低減させて、利用可能なタンパク質およびアミノ酸のより大きい消化率を得ることによって改善されうる。より少ない外殻を有す黄色種子品種の開発は、キャノーラミールの飼料としての価値を増加させる可能性として提供される。
【0010】
Simbayaら(1995)は、B.ナパス、カラシナ、およびB.ラパからの黄色種子ミールを、褐色種子のキャノーラと比較した。平均すると、黄色種子の飼料はより高いタンパク質およびより低い食物繊維(およびリグニン)を有した。
【0011】
Getinet & Rakow(1997)は、B.カリナタ(B. carinata)における種皮の色素沈着抑制の遺伝パターンを研究した。Slominskiら(1999)は、これらの系統/品種に由来するブロイラー鶏供給ミールの栄養価値を比較した。
【0012】
20年より長いあいだ、Agriculture and Agri-Food Canada (AAFC)-Saskatoonは、黄色種子のB.ナパスの開発に向けて研究を行って、異なる起源の黄色種子のB.ナパス生殖質を産生し(Rashid et al. 1994;Rashid & Rakow 1995;Rakow et al. 1999 a & b;およびRelf-Eckstein et al. 2003)、後者は、YN97-262および他の3つの黄色種子の系統を46A65と比較する。
【0013】
Rashidら(1994)は、黄色種子のB.ナパス(受精能の改善のような形質を有する)を開発するために用いた種間交配スキームを物語る。Rakowら(1999a)は、B.ナパスにおいて黄色種子型は天然に存在せず、全てがB.ナパス、カラシナ、およびB.ラパの様々な交配組み合わせでの種間雑種形成を通して開発されていることに注目する。初期の系統は、黒色種子系統よりより低い油含量を有し(胚芽発達不良により)、収量が低く、黒脚病(レプトスフェリア・マキュランス(Leptosphaeria maculans))に対して感受性が高かった。Rakowら(1999b)は、黄色種子のB.ナパスの「より必要な」新しい起源を物語っており、これは黒色種子WESTARと黄色種子のカラシナおよびB.カリナタとの種間交配によって開発された。このようにして得られた黄色種子系統は、低いエルカ酸、低いグルコシノレート、60〜65%オレイン酸、18〜20%リノール酸、および7〜9%リノレン酸を有することが報告された。
【0014】
Rakowら(2004b)は、黒色または褐色種子型と比較して、黄色種子アブラナ油糧種子が有意に低減されたミール繊維レベルおよび増加した種子油含量を有することを報告している。この参考文献は、黄色種子系統YN01-429を黒色種子46A65と比較した2003年12月の結果を考察している。結果は以下の通りである。
【0015】
(表1)

(*色は、方法E313、白色指数によって測定した)
【0016】
この参考文献はまた、揚げ物用途のために、高オレイン酸/低リノレン酸、熱安定性、低トランス脂肪酸植物油に関する需要の増加についても報告している。この参考文献は、飼料産業の植物性の高タンパク質ミール源に対する需要の増加に応じるため、キャノーラミールの全体的な栄養価値を増強するために繊維含量およびグルコシノレート含量を低減させようとすることに関して報告している。この参考文献はさらに、低い総飽和脂肪含量(4.5〜5.0%)、低い総グルコシノレート含量(種子1 gあたり<3μmol)、高い種子重量(>3 g/種子100個)および病気の抵抗性を有する生殖質系統が、B.ナパスの黄色種子型において開発されており、将来の目標には、そのような遺伝子プールを増加させ続けること、ならびにミールのタンパク質含量および種子の大きさを増加させることが含まれると報告している。
【0017】
Rakow&Raney(2003)は、ナタネ(キャノーラ)油がオレイン酸および必須多価不飽和脂肪酸の含量が高いこと、およびさらなる油の質の改善には、揚げ物用途において用いるための非常に高いオレイン酸/低いリノレン酸(HOLL)品種の開発ならびに低いおよび非常に低い(ゼロ)飽和脂肪油の作製が含まれるであろうと注目している。この参考文献に従って、ミールの品質改善は、黄色種子B-ナパス型の作製を通して繊維(特にリグニン)の低減に集中するであろう。グルコシノレートの低減または消失は、さらなる育種目標として記載される。本参考文献はさらに、カラシナおよびB.カリナタのような新規アブラナ油糧種子作物が開発中であることに注目しているが、それぞれの種は、油の質を改善するための脂肪酸組成の改変を含む、取り組む必要がある特定の種子油およびミール品質の努力目標を有することが注目される。
【0018】
油レベルおよびタンパク質レベルの改善は、ナタネ育種プログラムの主な目的である。このように、黄色種子外皮形質をキャノーラ品種に導入することは、種子油およびタンパク質レベルの双方において改善を提供するために望ましい。しかし、関連するアブラナ種からの種子色素沈着を制御する遺伝子を、キャノーラ品種のような貴重な油糧種子アブラナ品種に組み入れることは、現在利用可能な黄色種子系統における黄色種子外皮の遺伝に多数の劣性対立遺伝子が関係しているという事実によって複雑になる。莢の巻き上がりも同様に、黄色種子の色がカラシナおよびカリナタのような他のアブラナ種から遺伝子移入される場合の不良な染色体対形成による一般的な問題である。
【0019】
米国特許第6,547,711号および第6,380,466号は、一つの座の変異によって制御される黄色種子外皮を有するナタネに関する。欧州特許第1 031 577号は、透明な種子外皮遺伝子によって形質転換されたアブラナ植物に関する。
【0020】
特定の有用な油プロフィールを有することと組み合わせた黄色種子キャノーラの開発、および可能性がある長所は、これまで達成されていない。
【発明の開示】
【0021】
発明の簡単な概要
本発明は、有利な脂肪酸プロフィール(総脂肪酸と比較して、重量で68%より多いオレイン酸、および3%未満のリノレン酸)を有する油を産生するのみならず、ニワトリのような動物のための非常に栄養の高いミールを産生するために用いることができる黄色種子キャノーラを提供する。本発明のキャノーラ種子は、高タンパク質、低繊維動物飼料と共に健康な油(調理産業等のため)の非常に有利な組み合わせを提供する。この組み合わせはこれまで単一のタイプの種子からは得られていなかった。
【0022】
発明の詳細な説明
キャノーラ油は、ナタネの商業品種から抽出された油を指す。キャノーラ油を産生するために、種子は典型的に等級付けされ、許容される均一な製品を産生するため揚穀機で混合される。次に、混合された種子を破壊して、油は典型的にヘキサンによって抽出された後精製される。その後得られた油は、使用のために販売される。油含量は典型的に、全乾燥種子の百分率として測定され、異なるキャノーラ品種の特徴である。(油含量は、NMR、NIR、およびソックスレー抽出のような様々な分析技術を用いて測定されうる)。総脂肪酸の百分率は典型的に、種子から油の試料を抽出する段階、その油試料に存在する脂肪酸のメチルエステルを産生する段階、およびガスクロマトグラフィーを用いて試料中の様々な脂肪酸の比率を分析する段階によって測定される。脂肪酸組成はまた、品種の識別特徴ともなりうる。
【0023】
キャノーラ油は一般的に、非常に健康な油であると認識されているが、種子のミール成分(油成分の抽出後に残ったもの)は、高い繊維含量(および対応する栄養価値の減少)のために大豆ミールに比べて劣る(および経済的に競合できない)。このように、本発明は、これまで価値の低い副産物であった、非常に栄養価の高い経済的な動物飼料源であるキャノーラミールを提供する。本発明は、この「副産物」から価値を取り戻すことを提供する。このように、本発明はまた、貴重な資源を節約する。
【0024】
本発明は、部分的に、NATREON型油プロフィールを有するキャノーラ油を生成することができる黄色種子キャノーラに関する。本明細書において用いられるように、「NATREON型」または「NATREON様」の油プロフィールは、68〜80%、70〜80%、71〜77%、および72〜75%(より好ましくは)の範囲のオレイン酸含量であって、αリノレン酸含量は全て3%未満であることを表す。しかし、本発明は、そのような油を生成する黄色種子に限定されず、たとえば80%より高いオレイン酸含量を有するそのような種子からの油が含まれる。そのような脂肪酸含量を測定するために当技術分野において多くの方法が公知である。好ましい測定法を本明細書において、特に実施例において考察する。本発明の油は本質的に安定であり、それらは人工的に水素添加されていない。
【0025】
このように、本発明には、いくつかの態様において、油分画およびミール分画を含む黄色キャノーラ種子が含まれ、油分画はαリノレン酸含量が種子の総脂肪酸含量と比較して3%またはそれ未満であり、オレイン酸含量が種子の総脂肪酸含量と比較して68%またはそれより多い。定義により、エルカ酸(C22:1)含量も同様に、重量で2%未満(種子の総脂肪酸含量と比較して)であり、脱脂(油を含まない)ミール(粉砕および乾燥後の)1 gはグルコシノレート30μmol未満を含む。
【0026】
種子の黄色の色は、それが、油の抽出後に得られるミール成分の改善された栄養特徴に対応することから、重要である。リグニンの減少、フィチン酸塩の減少、ならびに糖およびデンプンの増加のような様々な改善された成分を以下により詳細に考察する。
【0027】
本発明は今や、優れた高オレイン酸および低リノレン酸油を提供する黄色種子低繊維キャノーラを初めて提供する。さらに、本発明は驚くべきことに、他の貴重な形質(優れた収量、高いタンパク質含量、および高い油含量のような)(品質のほかに)と共にこれらの形質をさらに提供する。一般的に、本発明の黄色種子は、黒色および褐色種子よりかなり薄い種皮を有する。より薄い種皮によって、ミールにおける繊維含量の低減が起こり、油およびタンパク質の正常レベルと比較して種子油およびタンパク質含量がこれに関連して増加する。本発明の黄色種子遺伝子型は一般的に、その種子においてより高い油およびタンパク質濃度を有する。さらに、食用タンパク質産物をナタネミールから作製する場合、黒色種子の暗色はかなり問題である。黒色の種皮は、ナタネミールから作製されたタンパク質産物に不快な灰色を与える。したがって、本発明のナタネの種皮の低減は、タンパク質の質を増加させて、本発明のミールによって提供される全体的に利用可能なエネルギーを改善する。
【0028】
黄色種子形質および得られたミールにおける関連する改善と共にNATREON様の油プロフィールを生成することができる植物系統は、これまでに得られていない。このように、本発明は、黄色種子キャノーラ系統のみならず、有利なNATREON様油プロフィールを有する黄色種子キャノーラ系統を有利に提供する。さらに驚くべきことは、これらの有利な油プロフィールは、優れた収量、タンパク質の品質および他の有利な品質を提供しながら黄色の種子によって得られうる点である。
【0029】
このように、本発明は、2つの非常に有用な成分を有するキャノーラ種子初めてを提供する:優れた油成分、および非常に栄養価値が高いミール成分。これらの成分の様々な局面を以下により詳細に記述する。
【0030】
いくつかの特定の態様において、本発明は、有利な(本質的に安定で(水素添加されていない)高いオレイン酸、低いリノレン酸)油プロフィールを有するブラシカ・ナパスの黄色種子品種を提供し、品種のいくつかは、DN03-3743、DN03-3745、DN03-3746、DN03-3747、DN03-3748、DN03-3749、DN03-3744、およびDN03-4169から選択される。本発明のキャノーラ系統は、総脂肪酸含量と比較して3%未満のリノレン酸含量および68%またはそれより高いオレイン酸含量を有する黄色種子を産生するように安定化されている。本発明に従って、ナタネの実質的に均一な集合体を産生することができる。そのような種子は、ナタネ植物の実質的に均一な圃場を産生するために用いることができる。
【0031】
本明細書において示されるように、これらは油に関する最小の必要条件であり、さらによりよい結果が得られている。たとえば、好ましい態様において、(本発明の)植物から得られた(本発明の)種子は、70%より多く、71%より多く、71.5%より多く、および72%より多くのオレイン酸(いくつかの場合において、72.4%および72.7%まで)を有し、一方2.4%未満、2%未満、1.9%未満、1.8%未満、および1.7%まで低いリノレン酸含量を有する油を産出した。これらの有利な油プロフィールは、先に考察したようにおよび以下により詳細に考察されるように、ミール成分における他の様々な貴重な特徴を保持しながら得られている。
【0032】
なおさらに、これらのプロフィールを有する油は、2未満、1未満、および1もの低い種子色の評定を有する植物から得られている。特に明記していなければ、本明細書において報告されるように、種子色の評定または「種子の色」は一般的に、完全なまたはほぼ完全な種子成熟時に健康な植物から得られた種子に基づいて1〜5の尺度で採点される。「1」は、良好な黄色を表す。「2」はいくらか褐色がかった主に黄色を表す。「3」は、褐色と黄色の混合物を示す。「4」および「5」はそれぞれ、褐色および黒色を表す。白色指数(WI)スコアも同様に表2において提供し、以下の実施例においてより詳細に記述される。黄色種子の親系統YN97-262および9592はそれぞれ、白色指数スコア-34.6および-33.2を有し、種子色尺度1を有する。黒色種子NATREON系統Nex 715およびNex 705はそれぞれ、白色指数スコア-0.2および-4.4を有し、種子色スコアは4である。黒色種子比較系統46A65およびQ2はそれぞれ、白色指数スコア0.3および-3.9を有し、種子色スコアは5である。例示される「DN03」黄色種子NATREONの7系統は、白色指数スコア-22.6〜-36.2を有し、種子色スコアは1〜2である。このように、本発明の種子の黄色はまた、これらの任意の対照またはチェック系統と比較した百分率または他の比率に関して記述されうる。
【0033】
(表2)3年目にAAFC-Saskatoon試験場で行われた繰り返し収量試験からのBC1F6子孫およびチェック系統の平均栽培学および品質データ

【0034】
本発明の種子のミール成分は、たとえば高タンパク質、低繊維、低リグニン、低グルコシノレート、低フィチン酸塩、および/または低シナピン酸エステル(SAEs)を有する。不溶性の繊維、リグニン、グルコシノレート、フィチン酸塩、およびSAEは、抗栄養性であり、タンパク質およびアミノ酸の消化を損ねる。植物はフィチン酸塩の形でリンを貯蔵し、そのため動物の排泄物における消化されないフィチン酸-リンは、有意な環境懸念である。
【0035】
本発明のミール成分およびそれらを含む動物飼料は、ブタおよびニワトリのような単胃動物にとって特によい。反すう動物(畜牛のような)の消化管は、繊維およびフィチン酸塩の摂取および消化にとって良好に適しているが、それらの動物は、タンパク質がルーメンの細菌によって急速に用いられることから、キャノーラミールの高品質のタンパク質成分をうまく利用できない。このように、本発明のキャノーラミールの繊維、フィチン酸塩、およびSAE成分を低減させることは、ブタ、ニワトリ等に関するこれらのミールの栄養価値を大きく増加させうる。
【0036】
以下の実施例においてより詳細に考察するように、本発明の黄色種子系統は、良好な収量を有し、任意の「対照」系統と比較して、かなり低い酸性デタージェント繊維(ADF)、酸性デタージェントリグニン(ADL)、および中性デタージェント繊維(NDF)を有する種子を産生する。本明細書において表される任意の表におけるいかなるデータポイントも、本発明の植物、種子、および油を定義するために用いることができることに注意すべきである。(例示されるいかなる数も、例示される数値より上、下、またはそのあいだの範囲を定義するためのエンドポイントとして用いられうる)。油の特徴に関するこれらの範囲のいくつかは、先に考察されている。同じことを他の要因に関しても説明することができる。本発明の系統および種子はまた、そのような範囲の組み合わせによっても定義されうる。たとえば、先に考察された油の特徴は、たとえば、特徴的な繊維レベルおよびフィチン酸レベルと共に、本発明の系統および種子を定義するために用いることができる。
【0037】
そのような特徴の他の組み合わせも同様に可能である。たとえば、種子の総油およびタンパク質含量を組み合わせたものも同様に有用な測定であり、本発明の種子の独自の特徴である。
【0038】
もう一つのより具体的な例として、例示の「DN03」の8系統は、ADLスコア1.0、1.2、1.3、および1.7を有する。表2を参照されたい。これらのスコアは、Nex 715と比較して81、83、84、85、86、および71%のリグニン低減を表す(本発明の品種に応じて)。リグニンは単胃動物によって完全に消化できないことから、単胃動物飼料の場合に低減させるべき特に重要な繊維成分である。このように、ミール源においてリグニンを減少させることは、そのような動物に関するミールの代謝エネルギーおよび栄養価値を大きく増加させうる。
【0039】
さらに、本発明の好ましい種子(およびミール)は、先に考察したように優れた油を提供するが、同様にグルコシノレートの非常に望ましい低レベルを有する。たとえば、グルコシノレート濃度は、13μmol/g未満、12.3未満、12.2未満、11.8未満、11.5未満、および11.2 μmol/gもの低さとなりうる(特に明記されている場合を除き、標準的な方法論を用いて測定)。このように、本発明には、先に明記された範囲の平均グルコシノレート含量(ミール1 gあたり)を有するブラシカ・ナパス種子である粉砕された種子が含まれる。
【0040】
フィチン酸塩も同様に、本発明の種子、植物、および系統または品種を定義するために用いることができる。たとえば、DN03-3746のフィチン酸塩は、Nex 715を除いて「対照」の全てより低い1.3%であると決定された。しかし、Nex 715はより低い油系統である(しかし黒脚病抵抗性である)。以下の表14を参照されたい。同様に、DN03-3746に関して約44.5%油、およびNex 715に関して約42.8%油を示す表2も参照されたい。
【0041】
繊維レベルおよび先に考察した他の要因のほかに、代謝エネルギー値は、ミールにおける蔗糖(および他の糖)の含量に関連する可能性がある。本発明は、改善された代謝エネルギーを有し、したがって改善されたミール価値を有する、高蔗糖(および他の糖)含量のキャノーラ品種を提供する。たとえば、DN03-3746は、蔗糖含量が約12%であり、これは、46A65、Nex 705、Nex 715、およびNex 720よりかなり高い。DN03-3746は、グルコース含量が約19%であり、これはQ2、46A65、Nex 705、Nex 715、Nex 710、およびNex 720よりかなり高い。DN03-3746も同様に、Q2、46A65、Nex 705、Nex 715、Nex 710、およびNex 720の全てに関するレベルより高いラムノース、フコース、アラビノース(6.1%)およびマンノース(1.8%を超える)レベルを有する。DN03-3746に関する約4.7%というガラクトースレベルも同様に、Nex 705、Nex 715、およびNex 710のレベルより高く、Nex 720のレベルと同等である。
【0042】
DN03-3746に関する粗タンパク質(約51%)も同様に、Q2、46A65、Nex 705、Nex 715、Nex 710、およびNex 720のレベルより高かった。
【0043】
ミール成分のこれらの局面を併せると、本発明にはまた、油分画が、該種子の総脂肪酸含量と比較して1.7%〜約2.3%(またはこの範囲未満)のα-リノレン酸含量を有する種子が含まれる。さらに、油成分は、約71.3%〜約72.7%(またはそれより高い)オレイン酸を含みうる。本発明の種子は、好ましくは約1〜約2の範囲の色のスコアを有し、繊維(リグニンを含む)、グルコシノレート、フィチン酸塩、および/またはSAE等が対応して低減された黄色種子である。ミール分画のこれらの成分に関する好ましい範囲は先におよび本明細書において他所で提供されている。
【0044】
本発明の例示的な1つの系統(たとえばDN03-3746)は、種子色スコア1、白色指数スコア約-36.2、約44.5%総油、約72%オレイン酸および約1.8%リノレン酸を含む油含量、ならびに約8.2%ADF、約1.2%ADL、約16.3%NDF、約47%タンパク質、および約1.3%フィチン酸塩を有するミール成分を有する種子を産生する。本発明の系統および種子を定義するためにこれらの特徴の必ずしも全てが必要ではないが、本発明の系統および種子を定義するためにさらなる特徴(%蔗糖、AME等のような)を用いることができる。主な特徴は、黄色の種皮および有利な(高オレイン酸、低リノレン酸)油プロフィールである。
【0045】
形質の様々な組み合わせもまた、以下の実施例において提供されるDN04または「04」系統において同定されることができ、それによって例示される。これらの系統に関するこれらの実施例において特に注目に値するのは、油プロフィールおよび低減された繊維含量のほかに収量、%油、および%タンパク質数である。これらの系統は、広範囲の有利なキャノーラ特徴および形質の様々な新しいおよび予測されない組み合わせを提供および得るために用いることができる。
【0046】
本発明のブラシカ・ナパス系統の有利な形質を、ブラシカ・ラパのような他のタイプのアブラナ(通常の育種等によって)に移入することができ、得られた植物は、黄色の種皮および改善された油含量(68%より高いオレイン酸含量および3%未満のリノレン酸含量)を有する種子を産生する。本発明のミールおよび種子は、種子繊維のレベルおよび他の関連する特徴の減少を有する。
【0047】
このように、本発明は、改善された油および利用可能なタンパク質含量、ならびに減少した繊維含量を有するキャノーラ種子系統の必要性に取り組む。本発明は、優れた油含量と黄色種皮との有利な組み合わせを有するナタネに向けられる。そのようなナタネを産生する植物のような、本発明の関連する局面が存在する。本発明には、NATREON油プロフィールを有するキャノーラの黄色種子のみならず、そのような種子から成長したまたはそうでなければ産生された植物、および本発明のキャノーラ植物の再生可能な細胞の組織培養物が含まれる。例示される系統は、遺伝子操作を行うことなく、変異誘発を行うことなく得られたことにも注意すべきである。
【0048】
本発明は一般的に、種子がNATREON型油プロフィールを有する、任意の黄色種子キャノーラ植物、または黄色種子そのものに関する。いくつかの特定の態様において、本発明は、本明細書に開示される特定の系統に向けられる。2つの代表的な系統からの種子が寄託されている。本開示の一部として、DN03-3746およびDN03-4169の種子少なくとも2500個がthe American Type Culture Collection (ATCC), Rockville, Md. 20852に寄託されており、制限なく(しかし特許の権利を受ける)公共に利用可能である。寄託物は、寄託日2005年6月24日にそれぞれ、ATCC寄託番号PTA-6806およびPTA-6807として寄託されている。寄託物は、30年間もしくは最も最近の要請から5年間、または特許の有効期限のあいだ、そのいずれか長いほう、公共の寄託所であるATCC寄託所で制限なく維持され、その期間に生育不能となった場合には交換されるであろう。
【0049】
本発明には、本明細書において開示される任意のブラシカ・ナパス品種の種子が含まれる。本発明にはまた、そのような種子によって産生されるブラシカ・ナパス植物と共に、そのような植物の生殖細胞の組織培養物が含まれる。同様に、特に、例示の品種の全ての形態学的および生理学的特性を発現することができるそのような組織培養物から再生されたブラシカ・ナパス植物が含まれる。本発明の好ましいブラシカ・ナパス植物は、寄託された種子から生長させた植物の重要なおよび/または生理学的および形態学的特徴を有する。
【0050】
本発明は、そのような種子および関心対象となる品質形質を保有する種子の子孫をさらに含む。本発明にはさらに、該種子に由来する上記の種子および油の子孫の少なくとも1つの親として本発明の系統および/または品種を用いて交配を行うプロセスが含まれる。
【0051】
たとえば、本発明には、本明細書において例示される任意の植物を1つまたは双方の親として有するF1ハイブリッドブラシカ・ナパス植物が含まれる。同様に、本発明のそのようなF1ハイブリッドによって産生されるブラシカ・ナパス種子が本発明に含まれる。本発明には、例示の植物を異なる同系交配キャノーラ植物と交配させる段階、および得られたハイブリッド種子を採取する段階によって、F1ハイブリッドブラシカ・ナパス種子を産生するための方法が含まれる。本発明には、雌性の親または雄性の親のいずれかである例示の植物が含まれる。
【0052】
例示の油およびタンパク質のレベルおよびプロフィールは、本発明の植物を、高い油およびタンパク質レベルを有する他の系統と交配させることによってさらに改善されうる。同様に、親植物を注意深く検討することによって他の特徴も改善する可能性がある。本発明の系統は、黄色種子および理想的な油プロフィール形質を他のナタネまたはキャノーラ系統に交配させるために有益である。これらの形質は現在、他家受粉および子孫の選択を含む通常の植物育種技術によって、同じ種内で他の植物に移入することができる。同様に、花粉の移入および選択を含む同じ従来の植物育種技術を用いて種のあいだに所望の形質を移入することができる。たとえば、Brassica crops and wild allies biology and breeding, edited by S. Tsunada et al, Japan Scientific Press, Tokyo (1980);Physiological Potentials for Yield Improvement of Annual Oil and Protein Crops, edited by Diepenbrock and Becker, Blackwell Wissenschafts-Verlag Berlin, Vienna (1995);Canola and Rapeseed, edited by F. Shahidi, Van Nostrand Reinhold, N. Y. (1990);およびBreeding Oilseed Brassicas, edited by Labana et al., Narosa Publishing House, New Dehli (1993)を参照されたい。
【0053】
本発明の代表的な系統を得て産生した後、本発明の黄色の種皮色および油の形質は現在では、通常の植物育種技術等によって、ブラシカ・カンペストリス(Brassica campestris)種を含む他の植物に容易に移入されうる。そのような通常の技術には、他家受粉および子孫の選択が含まれる。そのような技術はまた、種間に形質を移入するために用いることができる。市販のカンペストリス品種にはたとえば、Tobin、Horizon、Colt等が含まれる。1つのアプローチには、種間交配後、F2種子を産生するためにF1世代のメンバーの自家受粉が含まれる。次に、戻し交配を行って所望の形質を示す系統を得ることができる。さらに、プロトプラスト融合および核移植法を用いて、形質を1つの種からもう1つの種へと移入することができる。一般的に、"Fusion of Higher Plant Protoplasts" by Albert W. Ruesink, Methods in Enzymology, Vol. LVIII, Jakoby and Pastan. (eds). Academic Press, Inc., New York, N.Y. (1979)、およびその中で引用されている参考文献;ならびにCarlson et al. (1972), Proc. Natl. Acad Sci. USA 69:2292を参照されたい。
【0054】
本発明には、ブラシカ・ナパス品種と共に、例示の品種の少なくとも1つに本質的に由来している本質的に由来する品種が含まれる。さらに、本発明には、例示の品種の少なくとも1つの植物、そのような本質的に由来する品種の植物、およびそのような植物またはその組織(花粉、種子、および細胞を含む)から再生されたナタネ植物が含まれる。
【0055】
開始点として本発明の品種の1つを仮定すると、この品種によって与えられる特定の利益を、当業者は多数の方法で操作することができ、それらも本発明の範囲に含まれることは容易に明らかとなるであろう。たとえば、例示の品種に存在する種子油プロフィールを、たとえば他家受粉および子孫の選択を含む通常の植物育種技術によって、他の栽培学上望ましいブラシカ・ナパス品種に移入することができる。
【0056】
種子、小胞子、胚珠、花粉、栄養部分、特に小胞子のような、再生することができる植物細胞を選択することができる。ほとんどの場合、そのような植物細胞は、任意のアブラナ品種、特に所望の栽培学的形質を有する品種から選択することができる。
【0057】
再生技術は当技術分野において公知である。当業者は最初に、選択された植物または品種から再生することができる細胞(たとえば、種子、胚珠、花粉、栄養部分)を選択することができる。これらの細胞を、任意で変異誘発に供することができる。次に、細胞のタイプ(およびそれらが変異誘発されたか否か)に基づいて再生、受精、および/または生長技術を用いて、細胞から植物を生育させる。応用可能な再生技術は当業者に公知であり、たとえばArmstrong, C. L., and Green, C. E., Planta 164:207-214 (1985);Duncan, D. R. et al, Planta 165:322-332 (1985);およびClose, K. R., and Ludeman, L. A., Plant Science 52:81-89 (1987)を参照されたい。
【0058】
植物もしくは種子、またはその一部のそのような操作によって、「本質的に由来する」品種と呼ばれる可能性がある品種が作製される可能性がある。The International Union for the Protection of New Varieties of Plants(UPOV)は、品種が保護された品種に本質的に由来するか否かを決定するために以下のガイドラインを提供した。
[A] 品種は、以下である場合にもう1つの品種(「最初の品種」)に本質的に由来すると思われるであろう:
(i)最初の品種の遺伝子型または遺伝子型の組み合わせに起因する本質的な特徴の発現を保持しながら、最初の品種、またはそれ自身が主に最初の品種に由来する品種に主に由来している;
(ii)最初の品種と明らかに区別することができない;および
(iii)誘導の行為に起因する差を除き、最初の品種の遺伝子型または遺伝子型の組み合わせに起因する本質的な特徴の発現において、最初の品種に従う。
1992年10月30日、ジュネーブで開催されたUPOV第6回国際機構会議;the Office of the Unionによる文書作成(UPOV, Sixth Meeting with International Organizations, Geneva, Oct. 30, 1992; document prepared by the Office of the Union)
【0059】
本発明の好ましい態様には、先に考察された油およびミール特徴を有するキャノーラ種子を含むミールが含まれる。本発明には、先に考察された特徴の新規組み合わせを有する、ヘキサン抽出、乾燥キャノーラミールが含まれる。本発明には、寄託されたブラシカ・ナパス種子から産生されたミール、および該寄託された種子の子孫の種子から産生されたミールが含まれる。
【0060】
本明細書において用いられるように、「系統」は、少なくとも1つの形質に関して個体間で遺伝的変化をほとんどまたは全く示さない植物群である。そのような系統は、数世代の自家受粉および選択によって、または組織もしくは細胞培養技術を用いて単一の親からの栄養繁殖によって作製してもよい。本明細書において用いられるように、「栽培品種」および「品種」という用語は同義であり、商業的産生のために用いられる系統を指す。
【0061】
「安定性」または「安定な」は、所定の成分に関して、成分が世代から世代へと維持され、好ましくは、実質的に同じレベル、たとえば好ましくは±15%、より好ましくは±10%、最も好ましくは±5%で少なくとも3世代維持されることを意味する。安定性は温度、位置、ストレス、および移植時期によって影響を受ける可能性がある。圃場条件でのその後の世代の比較は、類似の方法で成分を産生すべきである。
【0062】
「商業的に有用な」系統は、穀物が通常の農業器機を用いて農夫によって産生されうるように、良好な植物の活力および高い繁殖可能性を有し、記述の成分を有する油は、通常の粉砕および抽出機器を用いて種子から抽出することができるる。商業的に有用となるために、種子重量、油含量、およびエーカーあたり産生される総油量によって測定される収量は、典型的に同じ地域で生長させた高い価値の形質を有しないがそれ以外は同等の商業的キャノーラ品種の平均収量の15%以内である。「栽培学上の極上」系統は、収量、成熟度、病気の抵抗性、および耐倒伏性のような所望の栽培学的特徴を有する。
【0063】
以下は、炭素原子および二重結合の数と共に、本明細書において用いられる脂肪酸の一般名の一覧である。飽和脂肪は二重結合ゼロ個を有する。
(表3)

*=δ-9位での二重結合
**=δ-11位での二重結合
【0064】
「飽和脂肪酸」は、ラウリン酸(C12:0)、ミリスチン酸(C14:0)、パルミチン酸(C16:0)、ステアリン酸(C18:0)、アラキドン酸(C20:0)、ベヘン酸(C22:0)、およびリグノセリン酸(C24:0)の合わせた含量を指す。「多価不飽和脂肪酸」は、リノール酸およびα-リノレン酸の合わせた含量を指す。本発明の油の特徴であるオレイン酸およびリノレン酸のような脂肪酸の量は、油の総脂肪酸含量の百分率として表記される(特に明記していなければ)。
【0065】
「タンパク質含量」は、全乾燥種子の百分率として測定され、異なる種子は異なる特徴的なタンパク質含量を有する。タンパク質含量は、NIRおよびケルダールのような様々な分析技術を用いて測定することができる。
【0066】
グルコシノレートは、乾燥脱脂ミール1 gあたりの総脂肪族グルコシノレートのマイクロモル(μmol)として測定される。グルコシノレートのレベルは、土壌の硫黄肥沃度によっていくぶん影響を受けるが、同様に各品種の遺伝的構成によっても制御される(およびこのように、品種の特徴付けにおいて有用となりうる)。
【0067】
特に明記していなければ、計算は全て(繊維含量等)、当技術分野において公知であり、産業において容認されている技術を用いて得られた。
【0068】
本発明は、ある特定の方法および材料を参照して本明細書において必然的に考察してきた。これらの方法および材料の列挙は単なる実例に過ぎず、決して本発明の範囲に対するいかなる制限も構成しない。当業者は、本明細書において提供された特定の教示の変更または代用を認識して実践してもよいが、それらも本発明の範囲に含まれると予想される。
【0069】
特に明記していなければ、本明細書において用いられるように「1つ(a)」、「1つ(an)」は、少なくとも1つを指す。
【0070】
本明細書において参照されたまたは引用された全ての特許、特許出願、仮出願、および刊行物は、それらが本明細書の明確な教示と不一致でない程度に、その全内容物が参照により本明細書に組み入れられる。
【0071】
以下は、本発明を実践するための技法を例示する実施例である。これらの実施例は、制限的に解釈してはならない。特に明記している場合を除き、百分率は全て重量百分率であり、全ての溶媒混合物の比率は体積である。
【0072】
実施例1−親系統および0年
0年目に、以下の親系統を選択した:DAS NATREON B. napus Nex 705(M94S007)およびNex 715(M97A222)、ならびにAAFC黄色種子系統YN97-262および9592。Nex 715は、Nex 710より油含量が低いが、Nex 715は黒脚病抵抗性遺伝子を有する。これらの系統の品質および栽培学的データを比較目的のため、ならびにその後の系統の進歩および改善を追跡するために測定した。
【0073】
Nex 705を戻し交配に用いて、以下の2つの子孫を作製した:YN97-262/Nex 715//Nex 705および9592/Nex715//Nex 705。
【0074】
黒脚病抵抗性遺伝子を遺伝子移入するために、これらの子孫をNex 715と戻し交配して、以下の2つの子孫を産生した:YN97-262/Nex 705//Nex 715および705、9592/Nex 705//Nex 715。
【0075】
BC1F1植物1235個体を生長させて、BC1F2種子を産生した。
【0076】
実施例2−1年目
1年目に、BC1F2 1092個体の列をSaskatoonにおいて生長させた。これらは[9592/Nex705//Nex 705]および[9592/Nex715//Nex 705]からのBC1F2子孫540個体、ならびに[YN97-262/Nex 705//Nex 715]および[YN97-262/Nex 715//Nex 705]からのBC1F2子孫552個体を含んだ。BC1F2子孫268個体の列も同様に9592交配から生長させて、BC1F2子孫252個体の列をYN97-262交配から生長させた。
【0077】
さらに、9592交配からのBC1F2子孫272個体の列およびYN97-262交配からのBC1F2子孫300個体をSaskatoonのAAFC試験場で生長させた。
【0078】
それぞれのBC1F2の列を2回繰り返して、親株を苗床において10列毎にチェック系統として用いた。
【0079】
Moon Lake農場で生長させた植物に関して、黄色種子色に関して分離する列を同定した。それぞれのBC1F2の列における全ての植物を、第一の実験において種子色に関して評価して、良好な黄色を有する植物のみを収穫した。第二の実験において、1回目の実験において3またはそれよりよい種子色評定を示す系統のみを収穫した。
【0080】
AAFC Saskatoon試験場において生長させた植物に関して、第一の実験植物をコンバインで収穫して種子を黄色の存在に関して評定した。この選択に基づいて、分離する黄色の種子列からの植物全てを、親チェック系統のいくつかの列を含む第二の実験から収穫した。
【0081】
双方の試験場から得られた種子に関して、選択されたBC1F3植物について全体の脂肪酸分析を最初に行った後、高いC18:1および低いC18:3を示す植物において種子半粒脂肪酸分析を行った。
【0082】
実施例3−1年目の12月から2年目の4月
BC1F3植物を温室において生長させて、BC1F4種子を産生させた。種子色の選択を行って、BC1F4植物189個体のみを2年目の圃場評価のために選択した。
【0083】
BC1F4系統をMoon Lake試験場およびSaskatoon試験場での再現苗床において評価した。2つの実験をそれぞれの試験場において播種した。双方の試験場に関して良好な栽培学的特徴を示す28系統を選択して各列から単一植物10個体を収穫した。各列からの残りの植物をまとめて油および脂肪酸プロフィールに関して分析した。
【0084】
個々の植物を1〜5の尺度を用いて色の評定を行った。2またはそれよりよい評定を有する植物を脂肪酸分析のために送付した。BC1F4の3列からの単一植物7個体を選択して種子半粒分析を行った。
【0085】
以下の4つの真の品種改良体、黄色のNATREON-B型. napus BC1F5系統を同定した:DN02-0548、DN02-0590、DN02-0591、およびDN02-0592。これらの4つの系統およびチェック系統からのまとめた種子試料を用いて、油および繊維レベルを測定した。黒色種子の品種Nex 715と比較して、4系統は平均で、酸性デタージェント繊維の34%低減、酸性デタージェントリグニンの68%低減、および中性デタージェント繊維の14%低減を有した。
【0086】
実施例4−2年目の冬〜3年目
DN02-0590、DN02-0591、およびDN02-0592からのBC1F5 7系統において半数播種を行った。これらを2〜3年の冬に温室において生長させた。
【0087】
さらに、BC1F5植物をNatreon系統DN99-6738(高い油およびタンパク質を有し、黒脚病に関してR-評定され、良好なNatreonプロフィールを有する)と交配させることによって、BC2F1交配を産生した。BC2F1を小胞子培養して、黄色のNATREON-DH型系統を産生して、4年目に苗床において評価した。
【0088】
3年目の繰り返し収量試験において、BC1F6植物のまとめた自家受粉種子を用いて、Nexera商業品種およびWCC/RRC(Western Canadian Canola / Rapeseed Recommending Committee)黒色種子チェック系統(Q2および46A65)と比較して黄色のNATREON型系統の栽培学的および品質性能を査定した。
【0089】
実施例5−さらなる系統の開発
BC1F6の7系統を、従来の戻し交配法を通してYN97-262/Nex 715//Nex 705の交配から開発した後、戻し交配世代における黄色&NATREON品質の再選択を行い、DN03-3743、DN03-3744、DN03-3745、DN03-3746、DN03-3747、DN03-3748、およびDN03-3749と命名した。DN03-4169は、9592/Nex 715/Nex 705交配から産生されたもう1つの黄色種子系統である。これらの系統は、NATREON型の油品質および非常に安定な黄色種子色を示した。
【0090】
表2は、これらの系統からの圃場生長材料に関して、Nex 715&46A65の平均値と比較して達成された繊維レベルの低減を示す。
【0091】
これらの系統は、選択6世代後で安定かつ均一である。様々な評価において型から外れた植物は示されなかった。これらの系統との最も進んだ交配は、4年目の夏にステージ1BであったBC2F1由来集団である。
【0092】
黄色種子NATREON型油プロフィールを有するこれらの系統は、多年評価において商業的に貴重な特徴を示した。真の品種改良黄色NATREON型系統も同様に、食物繊維の低減の価値(金銭的価値を含む)が容易に証明されうる飼料において用いるための貴重な材料である。
【0093】
Saskatoon試験場で生長させたこれらの8系統から得られたデータを表2に提供する。これらのデータには:開花までの日数(DTF)、成熟までの日数(DTM)、高さ、倒伏、種子重量、収量、および黒脚病抵抗性が含まれる。同様に、C18:1、C18:2、およびC18:3脂肪酸の百分率、総%飽和脂肪酸、%油(総油含量)(American Oil Chemists' Society (AOCS)公式方法Am 2-92)、グルコシノレート(AOCS公式方法Ak 1-92 (93))、種子色スコア、ADF、ADL、およびNDF(ならびにNex 715と比較した後者の3つの繊維スコアの%低減)も含まれる。表4は、親NATREON系統DN99-6738(A.K.A.NQC02X01)のほかにMoon Lake試験場で生長させたこれらの6つの系統からのデータを表す。本発明の系統に関する%タンパク質も同様に注目すべきである。
【0094】
(表4)3年目にMoon Lakeで行われた繰り返し収量試験からのBC1F6子孫およびチェック系統の平均栽培学的および品質データ

【0095】
実施例6−黄色種子キャノーラミールの代謝エネルギーおよび化学組成を決定するためのプロトコール、ならびにブロイラー鶏の成績
アミノ酸消化率(理想)を、ケージに収容した商業的ブロイラー雄鶏について決定した。ニワトリに商業的ミール飼料を1〜27日齢のあいだ与えて、キャノーラミール0または40%を含む処置飼料に変更した。全体としての飼料を顧みずに基本飼料に試験ミールを加えた。7日間の調節期間の後、断頭によってトリを屠殺して、遠位回腸(回盲接合部の前方12 cm〜2 cmまでの部分)の内容物を採取して後に分析するまで凍結した。各飼料を各2羽の4群に与えた。回腸の内容物を凍結乾燥して粉にし、十分に混合した後、総窒素(AOAC, 1980)、アミノ酸含量、および酸不溶性灰分(Newkirk et al., 2003)に関して分析した。
【0096】
窒素補正見かけの代謝エネルギー(AMEn)を同じ試験において決定したが、試験の最後の3日間に糞を毎日回収した。糞を毎回回収後直ちに凍結した。凍結した糞を排気乾燥器において50℃で乾燥させた後、同じレップおよび処置の他の回収物からの糞と共にプールした。試料を粉にして(1 mmグリッド)、総エネルギー、酸不溶性灰分、および窒素に関して分析した。
【0097】
AMEnおよび回腸の見かけのアミノ酸消化率を、Newkirk et al. (2003)によって報告される方法を用いて計算した。データを以下のように収集した。
(表5)

【0098】
試験のさらなる詳細は以下の通りであった。
1.飼料供給試験:3年目の2月〜3年目の5月
a.処置:Dow AgroSciencesからの6つのNATREON品種(Nex 705、Nex 710、Nex 715、Nex 720、CMI#1-トランスジェニックおよびCMI#1-Null)プラス1つの参照飼料(黄色種子系統DN03-3746)をプロジェクトにおいて用いる。各品種の種子10 kgをPOSによって粉砕して、脱脂ミール5 kgを得た。処置のそれぞれをpenおよびpenによるブロックに無作為に割付した。
【0099】
b.実験デザイン:6回繰り返しを有する完全な無作為化ブロックデザインを用いる。平均値の分離を伴う一元分散分析をデータ分析に用いる。多変量回帰分析を、化学組成および代謝エネルギーデータに適用する。
【0100】
c.トリのクラス:トリのタイプ:ブロイラー、系統:Ross 308;性別、雄性;起源:Wynard;トリ84個体
【0101】
d.温度:標準曲線:0日目−35℃34日目−22℃
【0102】
e.照明:50ルクスの光を23時間照明1時間消灯サイクルで1〜34日間維持した。
【0103】
f.飼料および水:自由;家畜は中等度のレベルで維持された;トリにしばしば飼料を与えた;飼料がこぼれた量は、糞採取期間では特に最小限にした。
【0104】
g.敷わらの管理:必要に応じて除去。31日目に全ての糞を除去して糞を回収するためにトリの下にプラスチックシートを置く。
【0105】
h.飼料の必要条件:0〜26日齢のトリは、1羽あたり市販のスターター飼料2 kgを摂取した;27〜34日齢のトリは1羽あたり1 kgの実験試料を摂取した。
【0106】
i.ミールの必要条件:6 reps* トリ2羽/rep * 1kg/1羽飼料* 40%ミール=飼料4.8 kg、分析のために200 g=5 kg/ミール
【0107】
j.飼料の明細
(表6)実験試料

(表7)微量栄養素プレミックス

(表8)基本プレミックス(2、40 kgバッチ混合)

(表9)飼料の組成(12 kg;トリ12羽 * 1 kg/トリ)

(表10)ミールについて行われた分析(実施のためのDAA)

【0108】
データ報告:データを3年目の4月中旬までに得て、3年目の5月中旬までに分析を行ったが、総食物繊維分画およびオリゴ糖の詳細な分析は3年目8月まで終了しなかった。
【0109】
2.栄養保持試験において用いるための系統を選択するための生殖質スクリーニング
37のNATREON育種系統からの種子40 gを、本明細書において同定されたパラメータを用いてミールの化学組成に関して査定した。得られた結果に基づいて、ブロイラー鶏の栄養保持試験において用いるための系統を同定した。
【0110】
Saskatoon、SKのPOS Pilot Plantにおいて種子をヘキサンによって溶媒抽出した。空気により溶媒を除去したミールを化学分析のためにthe University of Saskatchewanに提供した。
【0111】
ミールを1 mmスクリーンを通して粉にしてから化学分析を行った。各試料を表10に示される化学組成(アミノ酸を除く)に関して1試料あたり2個ずつ分析した。
【0112】
粗タンパク質をLeco法を用いて燃焼によって測定した。エーテル抽出物をLabconco Model 35001 Goldfisch extractorによるAOAC(1990)法を用いて決定した。ミールをジエチルエーテルを用いる4時間の抽出によって抽出した。
【0113】
蔗糖、遊離のグルコース、スタキオース、ラフィノースを、DB1701カラムおよびTMSI誘導体化を用いるGLCによって分析した。オリゴ糖(dp 3〜10)を、ゲル透過および屈折率検出によるHPLCによって分析した。デンプンは、Salmonsson, A.C. et al, (1984, Swed. J. Agric. Res., 14:111-117)の方法によって決定した。
【0114】
可溶性、不溶性、および総食物繊維は、Mongeau and Brassard (1990, Cereal Foods World 35:319-322)の方法を用いて決定した。可溶性および不溶性繊維分画を総糖分析に供した(Englyst, H. N.and Hudson, GJ., 1987 Animal Feed Sci. and Tech., 23 :27-42)。中性デタージェント繊維(NDF)、酸性デタージェント繊維(ADF)、およびNDF-リグニンおよびADF-リグニンの決定は、Van Soest, et al. (1991. J. Dairy Sci. 74:3583-3597)の方法を用いて行った。
【0115】
灰分および水分含量(もう一つのエネルギー減弱剤)をAOAC(1990 Official Methods of Analysis. 15th ed. Association of Official Analytical Chemists. Washington, DC)の方法を用いて決定した。
【0116】
3.3年目の5月から3年目の11月
品種あたり種子10 kgを産生するために10〜15系統の種子を増加させて、最初の6品種の総食物繊維分画およびオリゴ糖の詳細な分析を終了した。
【0117】
4.3年目の11月〜4年目の2月
a.10〜15品種のそれぞれから脱脂ミール5 kgを得た。
【0118】
b.ブロイラー鶏の栄養保持を査定するために試験を行った。
【0119】
処置:黄色種子系統DN03-3746を含む15のNATREON系統、最初の試験からの4つのDow AgroSciences 商業的対照(Nex 705、Nex 710、Nex 715、およびNex 720)、および1つの参照試料をプロジェクトにおいて用いた。各品種の種子10 kgをPOSによって粉砕して、脱脂ミール5 kgを得た。処置のそれぞれをpensおよびpenによるブロックに無作為に割付した。
【0120】
実験デザイン:6回の繰り返しを有する完全無作為化ブロックデザインを用いた。一続きのケージにおける限られた空間により、トリの試験#1および3において3回の繰り返しを行い、残りの繰り返しを試験2において行った。データを試験内でのブロック化によって分析した。平均分離を行う一元配置分散分析をデータ分析のために用いた。多変量回帰分析を化学組成および代謝エネルギーデータに適用した。
【0121】
データ報告:データを4年目の1月中旬に報告して、4年目の2月中旬までに分析を行った。
【0122】
5.3年目の11月−4年目の11月
キャノーラミールにおける代謝エネルギーの化学予測因子の開発。3年目の夏のあいだに増加した15系統からのミールに化学分析を行い、ミールの代謝エネルギーに対してデータを回帰して、測定された成分と代謝エネルギーとのあいだの関係を決定した。予測等式を開発するために、PCAを含む多変量アプローチを用いた。次に、得られた回帰等式を用いてキャノーラミールの将来的により高い価値の品種を選択する最善の方法を決定した。
【0123】
油を含まない空気により溶媒除去したミールを1 mmスクリーンを通して粉にした後、化学分析を行った。各試料を化学組成(アミノ酸を除く、タンパク質、エーテル抽出物、蔗糖、オリゴ糖、デンプン、総食物繊維(可溶性および不溶性)、NDF、ADF、灰分、水分、およびリグニン(ADLおよびNDL))に関して1試料あたり2個ずつ分析した。粗タンパク質を、Leco法を用いて燃焼によって決定した。エーテル抽出物の定量は、AOAC (1990) method a Labconco Model 35001 Goldfisch extractorによって行った。ミールをジエチルエーテルを用いて4時間抽出した。蔗糖、遊離のグルコース、スタキオース、およびラフィノースはDB1701カラムおよびTMSI誘導体化を用いてGLCによって分析した。オリゴ糖(dp 3〜10)分析は、ゲル透過および屈折率検出によってHPLCによって行った。デンプンの定量は、Salmonsson, A.C., O. Theander, and E. Westerlund (1984, Swed. J. Agric. Res., 14:111-117)の方法によって行った。可溶性、不溶性、および総食物繊維は、Mongeau and Brassard (1990, Cereal Foods World 35 : 319-322)の方法を用いて決定した。可溶性および不溶性繊維分画を総糖分析に供した(Englyst, H. N.; Hudson, G. J., 1987. Animal Feed Sci. and Tech., 23:27-42)。中性デタージェント繊維(NDF)、酸性デタージェント繊維(ADF)、ならびにNDF-リグニンおよびADF-リグニン分析は、Van Soest, TJ., J.B. Robertson, B.A. Lewis (1991. J. Dairy Sci. 74:3583-3597)の方法を用いて行った。灰分および水分含量分析は、AOAC(1990 Official Methods of Analysis. 15th ed. Association of Official Analytical Chemists. Washington, DC)の方法を用いて決定した。
【0124】
データ報告:データは4年目の12月中旬までに得た。
【0125】
実施例7−ブロイラー鶏によるキャノーラミールの消化率の結果および決定(見かけの代謝エネルギーおよびアミノ酸利用)、ならびにキャノーラミールの化学的特徴付け
本実施例は、キャノーラの特殊な品種のブロイラー鶏による代謝エネルギーおよびアミノ酸消化率を測定した結果を考察する。これらの試料を同様に、エネルギー利用に影響を及ぼしうる成分に関してもアッセイした。これらのキャノーラ試料の化学分析はまた、消化率データにも関連する。さらに、本実施例は、ブロイラー鶏のためのミールのAMEを予測する化学特徴について考察する。
【0126】
見かけの代謝エネルギー
本発明の1つの黄色種子系統DN03-3746を他の「チェック」系統と比較した。窒素補正見かけの代謝エネルギー(AME)の測定を表11に示す。表11(および表12)において示されるように、試験した黄色種子品種DN03-3746のAMEは、Nex 705, Nex 715, Q2(チェック1)、および46A65(チェック2)より優れている。再び、本発明の唯一の黄色種子系統を試験した;本発明の他の系統のさらなる試験は、AMEにおけるさらなる改善を示すと予想される。
【0127】
(表11)無処理および乾物ベースの窒素補正見かけの代謝エネルギー(AMEn)(kcal/g)、ならびにキャノーラ品種におけるタンパク質の見かけの回腸タンパク質消化率(ブロイラー鶏における)

【0128】
(表12)乾物ベースで示されたキャノーラミール試料の消化率および化学分析

1 乾物ベースのAME
2 乾物ベースで、ゼロ%脂肪に対して補正されたAME
3 アミノ酸レベルの合計×アミノ酸消化係数
4 アミノ酸消化係数の平均値
【0129】
タンパク質およびアミノ酸消化率
回腸のタンパク質消化率に及ぼすキャノーラミールの効果を同様に表11および12に示す。表11および12において示されるように、DN03-3746品種の回腸のタンパク質消化率(ブロイラー鶏における)は、Q2および46A65より良好である。
【0130】
化学分析
化学分析の結果は、表12および13において見いだされる。表12において、DN03-3746に関して試験され、比較されるカテゴリーには、全ての試料に関する乾物百分率、AME、タンパク質消化率、および平均アミノ酸消化係数が含まれる。同様に、粗タンパク質含量、灰分含量(灰はもう一つのエネルギー減弱成分である)、エーテル抽出物(EE−エネルギー貢献成分)、デンプン、蔗糖、およびフィチン酸塩含量も表12に含まれる。表13には、総食物繊維(TDF)、不溶性TDF(TDF-I)、可溶性TDF(TDF-S)、酸性デタージェント繊維(ADF)、酸性デタージェントリグニン(ADL)、中性デタージェント繊維(NDF)、中性デタージェント不溶性窒素(NDIN)、および総エネルギー(GE)が含まれる。同様に、様々なタイプの糖の量も表13において示される。
【0131】
(表13)乾物ベースで示されるキャノーラミール試料のさらなる消化率および化学分析

【0132】
表13において認められるように、DN03-3746の総食物繊維は、不溶性繊維と同様、非常に低かった。不溶性繊維は動物飼料およびミールにおいて非常に望ましくない。この系統に関するADF、ADL、およびNDF含量もまた、比較的非常に低い。不溶性窒素(NDIN)も同様に比較的かなり低い。不溶性窒素は栄養として用いることができない(およびミールを摂取する動物によってそれ以外は用いられうるであろう窒素に結合する)ことから、これは望ましい。同様に、都合のよいことに、糖含量は比較的高い。DN03-3746に関する粗タンパク質も同様に、全てのチェック/対照系統より高かった。
【0133】
表14は、さらなる糖、シナピン等の消化率および化学分析である。DN03-3746は、シナピンおよびフィチン酸塩の有利な低レベル、ならびに高いGEおよびイノシトール百分率を有する。
【0134】
(表14)乾物ベースで示されるキャノーラミール試料の消化率および化学分析

【0135】
表15は、調べたアミノ酸(必須アミノ酸を含む)のほぼ全ての最高含量を有したDN03-3746を含む様々な品種からのミールの総アミノ酸含量を示す。表16は、ブロイラー鶏によるこれらの系統に関する見かけの回腸アミノ酸消化率を示す。
【0136】
(表15)Nexera品種(%乾物ベース、2年目)からのミールの総アミノ酸含量

【0137】
(表16)Nexeraキャノーラ品種(2年目)の見かけの回腸アミノ酸消化率(ブロイラー鶏における)

【0138】
再び、表12、13、14、15、および16におけるこれらの数値および他の数値は、本発明の種子および系統の特徴の範囲のエンドポイントを定義するために用いることができる。
【0139】
実施例8−なおさらなる系統の開発−4年目
BC1F6系統を生じた6つのBC1F5系統(DN033743、DN033744、DN033745、DN033746、DN033747、DN033748、DN033749)をDAS黒色種子NATREON系統DN996738(akaNQC02X01)と交配させた。それぞれの交配からのF1植物を小胞子培養プロセスを通して採取して、二倍性半数体子孫を産生した。BC1F6系統、DH子孫、およびチェック品種をAAFC SaskatoonおよびDow AgroSciences(DAS)Moonlakeで同一に作製された苗床において評価した。苗床の区画は、2フィートの列の間隔を開けて植えた10フィートの長さの1列であり、2つの試験場で4回まで実験を繰り返した。
【0140】
栽培学的査定を開花までの日数(DTF)、成熟までの日数(DTM)、倒伏(LDG)、およびDAS Moonlake試験場での季節途中の活力(Late Season Vigor、LSV)に関して行った。種子試料を双方の農場の区画から採取して、それぞれの組織の分析化学研究室が白色指数および繊維を除く種子の品質パラメータに関して分析した。白色指数(WImini)、種子色の測定は、AAFCによるthe Hunter Analytical Instrumentを用いて双方の農場において試料から産生した。種子繊維(中性デタージェント繊維=NDF、酸性デタージェント繊維=ADF、酸性デタージェントリグニン=ADL)を、NIRを用いてAAFC農場からの試料に関して決定して、乾物ベースで表記する。脂肪酸組成は、脂肪酸メチルエステル分析を用いてガスクロマトグラフィーによって決定した。個々の脂肪酸は、飽和脂肪酸の全てを加算することによって計算された総プロフィールおよび総飽和脂肪酸の百分率として報告される。乾物ベースの(DM)油含量、種子のタンパク質含量(DM)、および総グルコシノレート含量をNIRを用いて決定した。脱脂ミールベースで表記されたタンパク質含量(%ミールタンパク質DM)を計算した。
【0141】
平均より低い気温の生育条件の後の初秋の霜は、双方の試験場での試験に影響を及ぼし、オレイン酸含量が通常予想されるより低いことが注目されうる。これらのデータを用いて、許容される成熟度、ならびに油、タンパク質、およびグルコシノレート含量と共に、繊維低減が組み合わさった所望の脂肪酸プロフィールを発現する優れた個体を同定した。BC1F6子孫、進歩のために選択したDH子孫、およびAAFC農場からのチェック系統の平均品質データの概要を表17において提供する。BC1F6子孫、進歩のために選択したDH子孫、およびDAS農場からのチェック系統の平均栽培学的および品質データの概要を表18において提供する。
【0142】
(表17)4年目のAAFC Saskatoonで実施された繰り返し苗床試験からのBC1F6子孫、選択されたDH子孫、およびチェック系統の平均品質データ

【0143】
(表18)4年目のAAFC Saskatoonで実施された繰り返し苗床試験からのBC1F6子孫、選択されたDH子孫、およびチェックの平均栽培学的および品質データ

【0144】
実施例9−収量試験−5年目
表17および18において要約したDH子孫を5年目に行われる繰り返し収量試験に進歩のために選択した。DH子孫21個体と共にBC1F6系統2個体、ならびに黄色種子と共に黒色種子チェック系統を、4つの繰り返し無作為化完全ブロックデザインを用いて小さい区画条件で比較した。5年目に4つの農場(DAS Rosthern、DAS Saskatoon、DAS Moonlake、AAFC Saskatoon)に植えた。
【0145】
激しい雨および洪水により、Moonlakeでの試験は完全に失われ、AAFC Saskatoon農場の2回の繰り返し実験およびRosthern農場に立っていた許容されない植物により、その農場からのデータを廃棄した。5年目に平均気温より低い気温を経験した。
【0146】
開花までの日数(DTF)、成熟までの日数(DTM)、高さ(HGT)、および倒伏(LDG)に関して栽培学的査定を行った。小区画収穫機器を用いて区画を収穫した。収量を、それぞれの区画から収穫された種子の量を測定する段階、および1ヘクタールあたりのkgでこれを表記する段階によって決定した。種子の品質パラメータ(乾物油含量、乾物タンパク質含量、総グルコシノレート、%NDFdm、%ADFdm、%ADLdm、クロロフィル)を、それぞれの組織の分析化学研究室がNIRを用いて測定した。脱脂ミールベースで表記されるタンパク質含量(%乾物ミールタンパク質含量)を計算した。白色指数(WI)は、the Hunter Analytical Instrumentを用いてAAFC Saskatoon農場からの試料に関してAAFCが測定した。脂肪酸組成は、脂肪酸メチルエステル分析を用いてガスクロマトグラフィーによって決定した。個々の脂肪酸は、総プロフィール、および飽和脂肪酸の全てを加算することによって計算された総飽和脂肪酸の百分率として報告される。
【0147】
データから、Nexeraチェック品種と類似の所望の脂肪酸プロフィールおよび黄色種子キャノーラチェック品種と類似の繊維レベルの低減の組み合わせを有する系統が、4年目において苗床から進歩したことが確認された。成熟度、高さ、および倒伏に関するさらなる栽培学的データと共に、種子収量は、進歩したDH系統のいくつかが、産業標準品種およびNexeraチェック品種と競合することを明らかにする。表19および20を参照されたい。
【0148】
表19および20において報告されたように、得られた収量は特に注目に値する。
【0149】
(表19)5年目にAAFC Saskatoonにおいて行われた繰り返し収量試験からのBC1F6子孫、選択されたDH子孫、およびチェック品種の平均栽培学的および品質データ

【0150】
(表20)5年目にDAS Saskatoonにおいて行われた繰り返し収量試験からのBC1F6子孫、選択されたDH子孫、およびチェックの平均栽培学的および品質データ

【0151】
実施例10−さらなる飼育試験
5年目の繰り返し収量試験において観察された最高の収量を示す7つのDH系統と共に黄色および黒色種子チェック系統を、黄色および黒色種子キャノーラ系統との比較において低繊維黄色種子系統からのミールのアミノ酸消化率およびエネルギー含量を査定するための家禽飼育試験において用いるために選択した。飼料供給のために選択され、5年目のDAS Saskatoon収量試験の第一の繰り返し実験から収穫された各系統の種子1500 gを連続的ねじプレス(Komet, type CA59; IBG Monforts Ockotec Gmbttt&Co Germany)を用いて低温プレスして、ヘキサンによって抽出した。ヘキサン抽出は、密封容器中のヘキサンに残りの固体を室温で16時間浸すことによって得た。接触期間の後、ヘキサンの大部分を試料からデカントして、試料をペーパータオルを敷いた大きい漏斗に入れて、残りの溶媒を排出させた。ヘキサンが除去されるように、換気フードの中で試料を浅い容器において1日蒸発させた。残留油含量を、溶媒としてヘキサンによってGoldfischExtractor(model 22166B, Labconco Corp.; Kansas city, Missouri, 64132, U.S.A.)を用いて小試料3 gについて溶媒抽出の前後に決定した。残留水分含量は、セ氏130℃の強制通気で2時間乾燥させた前後のミールの小試料1 gの重量を測定することによって決定した。
【0152】
粉にしたキャノーラミール試料を、家禽における真の代謝エネルギー含量(TMEn)およびアミノ酸(AA)消化率に関して試験した。TMEnおよびAA消化率を測定するために用いた技術は、回帰分析技術に基づく。このバイオアッセイ法は、食品における真の代謝エネルギーの測定において用いるためにSibbald(1976)によって初めて記述され、トリにおいて窒素として保持されるエネルギーを説明するようにさらに改変された(Sibbald, 1979)。本試験においてTMEnおよびアミノ酸消化率の双方を測定するために用いた方法は、Parsons et al.(1997)によって記述されている。試料を与えずに24時間後、素嚢挿管によりトリに試験試料30 gを与えて、さらなるトリを、乾物、エネルギー、窒素、およびアミノ酸の内因性の排泄を測定するために、全実験期間中試料を枯渇した。プラスチックトレイを各鳥かごの下に置いて、挿管後48時間のあいだ定量的に排泄物を採取した。排泄物試料を凍結乾燥して、重量を測定し、粉にして60メッシュスクリーンに通過させた。総エネルギー、窒素、およびアミノ酸濃度を、各個体の排泄物試料の少なくとも2つの同じ試料について決定した。アミノ酸の真の消化率は、Sibbald(1979)によって記述される方法に従って計算し、TMEnはParsons et al.(1982)の方法によって計算した。1%の油がエネルギー80 Kcalに寄与するが、タンパク質エネルギーの25 Kcalを置換し、したがって残留油1%毎に非タンパク質エネルギー55 Kcalを加算するという変換を用いて、TMEnを0%油に補正した。
【0153】
結果を表21および22に提供する。
【0154】
(表21)DH系統、黄色種子キャノーラ系統、および黒色種子キャノーラ系統から調製したミールに関するアミノ酸消化率(%)

【0155】
(表22)0%油含量に補正したキャノーラミールの真の代謝エネルギーの平均値

【0156】
参考文献



【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均で少なくとも68%のオレイン酸(C18:1)、および3%未満のリノレン酸(C18:3)を有する黄色外皮の種子を産生するキャノーラ植物。
【請求項2】
種子が、NIRによって測定した場合に乾物ベースで11%より低い酸性デタージェント繊維を有する、請求項1記載の植物。
【請求項3】
種子が少なくとも43%の油を含む、請求項1記載の植物。
【請求項4】
種子が少なくとも45%のタンパク質を含む、請求項1記載の植物。
【請求項5】
種子が、NIRを用いて測定した、乾物ベースで少なくとも43%の油および少なくとも45%のタンパク質を含む、請求項1記載の植物。
【請求項6】
1ヘクタールあたり平均で少なくとも1700 kgの種子を産出する、請求項1記載の植物の圃場。
【請求項7】
請求項1記載のキャノーラ植物によって産生された種子。
【請求項8】
請求項2記載の種子から生長した植物。
【請求項9】
平均で少なくとも68%のオレイン酸(C18:1)および3%未満のリノレン酸(C18:3)を有する黄色外皮種子を産生する、請求項8記載の子孫植物。
【請求項10】
PTA-6806およびPTA-6807から選択されるATCC寄託番号において入手可能である、請求項1記載のキャノーラ植物によって産生された種子。
【請求項11】
請求項7記載の種子のミールを含む動物飼料。
【請求項12】
遺伝子操作および変異誘発を行わずに産生された、請求項1記載の植物。
【請求項13】
請求項1記載の種子から産生されたキャノーラミール。
【請求項14】
少なくとも2400の真の平均代謝エネルギーを有する、請求項15記載のミール。
【請求項15】
表21において示されるアミノ酸消化率プロフィールを有する、請求項15記載のミール。
【請求項16】
種子が低減された抗栄養成分を有する、請求項1記載の植物。
【請求項17】
種子が、1.3%未満のフィチン酸含量、2%未満の酸性デタージェントリグニン含量、および17%未満の中性デタージェント繊維含量を有する、請求項16記載の植物。

【公表番号】特表2009−502199(P2009−502199A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−525094(P2008−525094)
【出願日】平成18年8月1日(2006.8.1)
【国際出願番号】PCT/US2006/029813
【国際公開番号】WO2007/016521
【国際公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(508029550)
【Fターム(参考)】