説明

高ガラス含有率を有するガラスストランド顆粒のためのサイジング組成物

本発明は、以下の構成要素を、固体質量%の以下の含有率で含む、ガラス−ストランドサイジング組成物に関係する:
−エチレン/酢酸ビニルコポリマーまたはエチレン/(メタ)アクリル酸コポリマーから選択された少なくとも一つのコポリマーが10〜99%;
−少なくとも一つのカップリング剤が1〜40%;および
−前記カップリング剤と反応可能である一以上の官能基を含む少なくとも一つのモノマーから派生した少なくとも一つのユニットによってグラフトしたポリプロピレンが0〜90%。
この得られたガラスストランドは、抽出成形技術を使用して刻んだガラスストランドによって強化した熱可塑性樹脂母材を有する複合材部品を生産するための高ガラス含有率のガラスストランド顆粒を生産するためのものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高ガラス含有率の顆粒を形成するために使用可能なガラスストランド用のサイジング組成物に関係する。これらの顆粒は、ガラスストランドによって強化された熱可塑性物質(これは「強化熱可塑性物質」の略語であるRPTとして知られている)で出来た成形部品を製造することを特に意図されている。
【背景技術】
【0002】
このような部品は様々の方法で、特に「射出成形」技術によって、製造可能である。
【0003】
一般に、RPT部品の射出成形は、鋳型を伴う射出成形機を含む装置で実施される。この射出成形機は、加熱した容器と射出スクリュー(概して「一軸スクリュー」型)を組み立てたものを含み、その上方には熱可塑性物質とガラスストランドを供給するための供給ホッパがある。
【0004】
この熱可塑性物質とガラスストランドは別々にホッパに導入され、そしてその後前記の容器/スクリューを組み立てたもので混合され、そこでこの熱可塑性物質を溶かされそして可塑化される(つまり射出成形可能な粘度の物質に転換される)、そして同時にガラスストランドは熱可塑性物質に浸透させられ、そしてそこに拡散される。
【0005】
この得られた熱可塑性物質/ガラス化合物はその後鋳型に射出される。この射出成形は3つの段階で実施する:
−充填(または射出):ラムとして作用する射出スクリューによって押された化合物が鋳型の空間を埋める。必要に応じて、充填の最後に鋳型に圧力をかける;
−圧縮成形:化合物は冷却ステップの間圧力をかけられる;および
−冷却:ポリマーが固化しそしてRPT部品が十分に硬いときに取り出される。
【0006】
前述の成形技術は、従来型の刻んだガラスストランドを直接ホッパーで使用することが出来なかった−ストランドが混ざってそして絡み合いを形成し、それが顆粒の熱可塑性物質およびガラスストランドの射出スクリューへの流れを塞ぐためである。
【0007】
好適なプロセス処理を提供するために、したがってこのガラスストランドは顆粒に転換される。
【0008】
顆粒状の様々な長さのガラスストランドが熱可塑性物質と結合することが知られている。
【0009】
1mm未満の長さの「短い」ストランド顆粒は、「二軸スクリュー」型のスクリューを備えた押出し機で熱可塑性物質と刻んだガラスストランドから形成され、そして形成された押し出し物は望ましい長さの顆粒に刻まれる。この型の押し出しスクリューによって生じた高せん断がガラスフィラメントを分散させ、そしてその結果としてそれらを十分に熱可塑性物質に浸透させ、そしてそれらを後者中に正しく分散させる。
【0010】
概して6mm超の長さを有する「長い」ガラスストランド顆粒は、一以上の連続的なガラスストランド、例えばロービング状のものもの、を溶融した熱可塑性物質を加えた染料をくぐらせることによって、そしてその後冷却したガラスストランドを望ましい長さに刻むことによって、得られる。この型の顆粒は、ペレットとしても知られ、その顆粒と同じ長さのガラスストランドを含む−このことが成形部品により良好な機械的特性を与える。
【0011】
90質量%超の高ガラス含有率の他の顆粒が、国際公開03/097543で公開されている。しかしながら、それらの顆粒は、含まれるガラスストランドが強化される熱可塑性物質中で正しく分散していないので、完全に満足いくものではない。母材内にストランドの塊が存在すると成形部品の品質を悪くし、その機械的特性が低減する。
【0012】
本発明は、高ガラス含有率を有する後者の型の顆粒に特に関係する。
【0013】
これらの顆粒を作るガラスストランドは、直径5〜24μm、例えば10〜17μm、そして概して30mmを超えない長さの多数の個別のフィラメント(ベースストランドあたり1,000〜100,000のオーダーのフィラメント)からなる。
【0014】
概して、このガラスフィラメントはサイジング剤でコートされる−ストランドを製造する間に磨耗からフィラメントを保護することは別として、サイジング剤も意図された使用に特有の追加的な特性を与えることが重要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
生じうる「微粉」の量が最低で同じ長さの要素、つまり最小の寸法の粒子、に刻むことができるストランドを与えるために、このサイジング剤はフィラメントと結合可能でなければならない。
【0016】
輸送は通常圧縮空気で行われるので、このサイジング剤はまた、お互いのストランドに対するおよび輸送ラインの壁に対するストランドの擦れに起因する、高い機械的ストレスに耐える能力をもったガラスストランド顆粒を提供しなければならない。この擦れにより、ストランドが開きそして構成成分であるガラスフィラメントを放出する(「フィラメンタイゼーション」と呼ばれるプロセス)。そのフィラメントはその後ラインの障害物となる「毛羽」とよばれるものを形成する。
【0017】
このサイジング剤はまた、計測装置および射出スクリューの供給ホッパを容易に流れることが可能な高密度顆粒のガラスストランドを形成するために、顆粒化の間にこのガラスストランドを結合することに寄与しなければならない。これは、ほとんどの計測装置が定常流れに基づいて質量を量る供給機であり、これは顆粒を放出するハッチを開口することによって操作し、開口する時間は計測され、その計測が進行するにつれて調整されるためである。それゆえに、この顆粒のアスペクト比−長さ/直径の比率によって定義される−が一定のままであること、ガラスストランドが十分な接着性のままであること、およびそれらが放出されそしてもつれ合うのを不可能とすることが、重要である。これらは射出スクリューに向かう材料の流れを邪魔するかまたは塞ぎさえする「ブリッジ」を形成するからである。本発明の対象は、刻んだストランド顆粒、特に射出成形にとって好適なもの、を形成するために、ガラスストランドをコーティング可能なサイジング組成物を提供することであり、これは高ガラス含有率と強化される熱可塑性物質の母材により良好な分散をもたらす。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の第一の対象となる、このサイジング組成物は、
以下の構成要素を、固体質量百分率で表される以下の含有率で含む水性組成物である:
−エチレン/酢酸ビニルコポリマーまたはエチレン/(メタ)アクリル酸コポリマーから選択された少なくとも一つのコポリマーが10〜99%;
−少なくとも一つのカップリング剤が1〜40%;および
−前記カップリング剤と反応可能である一以上の官能基を含む少なくとも一つのモノマーから派生した少なくとも一つのユニットによってグラフトしたポリプロピレンが0〜90%。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
このコポリマーにより、熱可塑性物質にストランドを浸透させる速度を変化することが可能となる。これは酢酸ビニル、アクリル酸およびメタクリル酸から選択された少なくとも一つのモノマーとエチレンとの重合に起因する。
【0020】
このコポリマーが、少なくとも50質量%、好ましくは少なくとも65質量%、そしてさらに良くは少なくとも80質量%のエチレン含有率であることが有利であり、これにより強化される熱可塑性物質の母材との良好な相性が得られる。
【0021】
このコポリマーの融点が、概して30℃、好ましくは少なくとも50℃で、強化される物質の融点未満である。一般則として、強化される物質がポリプロピレンであるとき、そのコポリマーは160℃未満、好ましくは140℃未満、そして有利には約110℃の融点を有する。
【0022】
このカップリング剤により、サイジング剤がガラスフィラメントの表面に付着することが可能となる。そのカップリング剤は、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、スチリルアミノエチルアミノプロピルトリメトキシシランまたはtert−ブチルカルバノイルプロピルトリメトキシシランのようなシラン、シロキサン、チタン酸塩、ジルコン酸塩、およびこれらの化合物を混合したものから選択される。好ましくはシランが、有利にはアミノシランが選択される。
【0023】
本発明によるグラフトしたポリプロピレンは、主たるポリプロピレン鎖に連結した少なくとも一つの側鎖を含み、その側鎖は、前記カップリング剤と反応可能な一以上の官能基を含む少なくとも一つのモノマーから派生したユニットである。好ましくは、このモノマーは、ビニルモノマー、および以下の官能基(アルコール、カルボン酸、酸、特にカルボン酸、無水物、アミドまたはエポキシド)の少なくとも一つを携行するモノマーから選択される。
【0024】
このポリプロピレンのグラフト化の度合い(グラフトしたポリマー質量に対するグラフトしたモノマー質量の比率x100)は、0.2〜8%、好ましくは0.5〜5%である。
【0025】
このポリプロピレンは無水マレイン酸でグラフトされるのが好ましい。一般則として、グラフトしたポリプロピレン中の無水マレイン酸含有率は0.2〜6%、好ましくは0.5〜4%で変化する。
【0026】
このグラフトしたポリプロピレンの融点は概して、上述した本発明によるコポリマーの融点よりも高い。
【0027】
本発明に関連して得られるサイジング組成物は、溶液、懸濁液、分散液または水性乳液の形態をとってもよい。通常は、このサイジング組成物は乳液である。
【0028】
好ましくは、このサイジング組成物は、以下の構成要素を、固体質量百分率で表される以下の含有率で含む:
−エチレン/酢酸ビニルコポリマーまたはエチレン/アクリル酸コポリマーの少なくとも一つが40〜90%;
−少なくとも一つのカップリング剤、好ましくはシランおよび有利にはアミノシラン、が5〜20%;ならびに
−グラフトしたポリプロピレン、好ましくは無水マレイン酸をグラフトしたポリプロピレン、が10〜60%。
【0029】
このサイジング組成物は、一以上の成分をさらに含んでもよい(以下「添加剤」と呼ぶ)。
【0030】
このようにして、この組成物は、ポリウレタン、エポキシ、ポリエステル、およびポリ酢酸ビニルから選択した少なくとも一つの膜形成剤を含んでもよい。この膜形成剤の含有率の範囲はこのサイジング組成物の40質量%までであり、好ましくは10質量%までである。
【0031】
この組成物は、添加剤として少なくとも一つの界面活性剤または潤滑剤を含んでもよく、それらはフィラメントを摩耗から保護するのに役立ちそして繊維化(fiberize)する間に毛羽が形成されることとストランドが刻まれることとを制限する。この界面活性剤または潤滑剤は、ラウリン酸デシル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸セチル、ステアリン酸イソプロピル、アジピン酸エチレングリコール、またはトリオクタン酸トリメチルロールプロパンのような脂肪酸エステル、およびアルコキシル化したもの特にエトキシル化したこれらのエステルの派生体、随意にアルコキシ基、特にエトキシ基を含む、ポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールのようなグリコールの派生体、およびこれらの化合物の混合物から選択される。
【0032】
また添加剤として、このサイジング組成物は第四アンモニウム塩のような帯電防止剤を含んでもよい。
【0033】
このサイジング組成物はまた、添加剤として、消泡剤、例えばポリジメチルシロキサンのようなポリアルキルシロキサンを含んでもよい。
【0034】
好ましくは、前述の各添加剤の含有率は、膜形成剤を別として、組成物の3質量%を超えず、これらの添加剤の総含有率は5%未満のままである。
【0035】
このサイジング組成物は概して固体含有率が2〜20%であり、好ましくは4〜15%であり、そして有利には約10%である。
【0036】
本発明によるサイジング組成物のガラスフィラメントへの適用は、当該分野で知られている通常の条件下で実施される。一以上のブッシングの底部に備えられたオリフィスから出る溶融ガラスの流れを、連続するフィラメントでできた一以上のシート状に薄くし、そしてその後フィラメントを一以上のストランドにまとめる。薄くする間に、このサイジング剤はストランドまたはブッシングの下に付着する。
【0037】
本発明の別の対象の構成要素となる、このサイジングしたストランドは、概して回転サポートに巻き取ったパッケージ(集合体)の形態で集められるかまたは、通常ブッシングの下に配置されそのストランドを引っ張るのにも役立つ装置によって集められる前に、刻まれる。この得られたストランドは集められた後はこのようにして、例えば連続するストランドのパッケージ(ケーク、一以上のベースストランドを含むロービング(まとめたロービング)、「コップ」等)のような、様々な形態であってもよく、または刻んだストランドの形態でもよい。
【0038】
これらのストランドを構成するガラスフィラメントの直径は非常に広い範囲で変化してもよく、通常は5〜30μm、好ましくは8〜20μmである。それらは任意のガラス、例えばE−ガラス、C−ガラス、AR(耐アルカリ)−ガラス、またはホウ素含有率を低減した(5%未満)のガラスからなってもよい。
【0039】
このベースストランドは概して、100〜10,000、好ましくは200〜5,000、そして有利には約1,000のフィラメントからなる。
【0040】
概して、ガラスストランドをコートするサイジング剤の量は、ストランドの質量の2%を超えず、好ましくは0.2〜1.8%であり、そして有利には0.5〜1.5%である。
【0041】
このガラスストランドをサイジング剤でコーティングすることは、強化される材料の融点より低い温度で柔らかくなるという特別の特徴を有する。したがって、この成形条件下で、このガラス−ストランド/熱可塑性物質顆粒を含む化合物が一軸射出スクリューを通るとき、熱可塑性物質の前にサイジング剤が流れ始める。これにより、材料の効果的な混合と、射出成形される化合物内でのストランドの均質な分布とが可能となる。
【0042】
概して、サイジング剤の軟化は、最も低い融点を有するサイジング剤成分の融点より数℃高い温度で、且つ強化される熱可塑性物質の融点より少なくとも10℃、好ましくは少なくとも20℃そして有利には少なくとも50℃低い温度で、起こる。
【0043】
本発明の別の対象の構成要素となる、サイジングしたガラスストランドは、高ガラス含有率の刻んだガラスストランド顆粒を形成するために使用される。
【0044】
この顆粒は当業者に知られた任意の方法によって得ることができ、例えば国際公開第96/40595号、国際公開第98/43920号、国際公開第01/05722号および国際公開第03/097543号に記載されている。
【0045】
例えば、上述したように、好ましくはブッシングの下で直接に、ガラスストランドを6〜30mmの長さに刻むことと、およびそれらを集めるために好適な装置で攪拌操作にさらすことにある方法を使用して、この顆粒を得ることができる。このやり方では、その刻んだストランドは濡らされて、そして概して5〜25質量%の水を含む。
【0046】
この刻んだガラスストランドは、必要であれば水分含有率が10〜25質量%になるように水が加えられ、少なくとも50質量%のガラスを含む顆粒を得るために十分な時間攪拌装置で処理される。この顆粒はその後水を除去するために乾燥させられる。
【0047】
有利には、攪拌中に化合物の総質量の3%を超えない比率で添加剤を加えてもよい。
【0048】
この添加剤は、強化される母材と結合するカップリング剤、例えば無水マレイン酸をグラフトしたポリプロピレン、熱抵抗性または光抵抗性を改善するための老化防止剤、およびフィラー、例えばカーボンブラックから選択される。
【0049】
乾燥させた顆粒は、並置して刻んだストランドからなり、そして最初に刻んだガラスストランドとほぼ等しい長さ、すなわち6〜30mm、好ましくは8〜25mmおよび有利には9〜15mmである。この顆粒の直径は概して0.5〜4mm、好ましくは1〜3mmである。
【0050】
この顆粒は、95質量%〜99.8質量%、好ましくは98〜99.5質量%で変化するガラス含有率を有する。
【0051】
この顆粒は、2質量%未満、好ましくは1.8質量%未満、そして有利には0.5〜1.5質量%で変化する強熱減量を有する。
【0052】
この顆粒は、ポリオレフィン、例えばポリエチレンおよびポリプロピレン、ポリアミド、ポリアルキレンテレフタレート、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリブチレンテレフタレート(PBT)、スチレンポリマー、例えばアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリカーボネートおよびポリアセタール、例えばポリオキシメチレン(POM)のような熱可塑性物質を強化するために使用されてもよい。ポリプロピレンは特に好ましい。
【0053】
概して、最終的な成形部品におけるガラス含有率は、10〜60%、有利には20〜30%である。
【0054】
それらの高ガラス含有率のせいで、本発明による組成物でコートしたガラスストランドから得た顆粒は、任意の熱可塑性物質の母材と組み合わせて使用できる。このことは、強化される物質と相性がよくないことがある熱可塑性物質を大量に(顆粒のタイプによって決まるが少なくとも30質量%から80質量%まで)含む、既知の射出成形用の顆粒を超える長所である。以下の例は本発明を説明するために役立つが、本発明を制限するものではない。
【実施例】
【0055】
例1〜12
a)サイジング組成物の調製
表1の固体質量含有率(%)で以下の化合物を含む、水性サイジング組成物を調製した:
−エチレン−酢酸ビニル(EVA)コポリマー:Michelman社より「EVAX(登録商標)−28」として市販されている;エチレン質量含有率:82%;
−エチレン/アクリル酸(EAA)コポリマー:Michelman社より「Michem(登録商標)Prime4983R」として市販されている;エチレン質量含有率:80%;重量平均分子量:8400;酸価:156;
−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン(シラン):General Electric社より「Silquest(登録商標)A-1100」として市販されている;
−無水マレイン酸をグラフトしたポリプロピレン(MAHgPP):Michelman社より「Michem(登録商標)43040」として市販されている;グラフト量:4質量%;酸価:45;重量平均分子量:9100;および
−ポリウレタン(PU):Bayer社より「Baybond(登録商標)PU401」として市販されている。
【0056】
このサイジング組成物の調製は以下のやり方で行った。
【0057】
シラン(3)のエトキシ基を、攪拌し続けている脱塩水で加水分解し、そしてそれから他の構成要素を加え、再び攪拌した。最終pHは約10であった。
【0058】
サイジング組成物中の固体質量含有率は10%であった。
【0059】
【表1】

【0060】
(b)サイジングしたストランドの作製
ブッシングのオリフィスから出るガラス流れから細くした直径約17μmのE−ガラスフィラメント(これらのフィラメントはまとめられてそれぞれ500フィラメントからなるストランドにされる)を、既知の方法でコーティングするためにこのサイジング組成物を使用した。
【0061】
例14〜26
例1〜13のガラスストランドを刻んで平均長さ12mm±1mmとし、および特許出願WO 03/097543号に記載された造粒機で粒状にした。その顆粒は、長さ12mm±1mm、直径2.5mm、比重0.8であり、そしてガラス含有率は98%超であった。
【0062】
この得られた顆粒は以下の条件下で分析をした:
−微粉の量、すなわちホッパに置いた顆粒の試料500gについて遊離した(free)ガラスロッドまたはフィラメントを測定した。ホッパの出口ダクトは振動溝から4mm離れて配置され、顆粒が均質に流れ且つ広がることが可能である。その微粉は吸引手段によって振動溝の上方に配置したトラップに集めた。輸送試験(次を参照)の前後の顆粒について、微粉の量を測定し、mg/kgで表現した;
−顆粒の圧気輸送(輸送試験)後の毛羽の量を以下のように測定した:
貯蔵タンクに収容した2kgの顆粒を、従来型の射出成形機の圧気射出ホッパに関しては、限界範囲(critical circuit)まで吸い込んだ。生成したフィラメントの毛羽を圧気ホッパのフィルタに集めてそして重量を量った。毛羽の量はmg/kgで表現した。
−この顆粒をPSI(圧気応力度)試験にかけた。この試験は現在の工業的条件よりも過酷な応力条件下且つ高圧下でこの顆粒を圧気輸送することを意味する。顆粒50gを45秒間、5bar(0.5MPa)の圧力下でステンレス鋼の閉じた範囲で回転させた。その毛羽を集めるために、この顆粒を回収し選別をした。顆粒の初期質量の関数として毛羽の百分率を測定した;
−強熱減量を、百分率で、ISO基準1887の条件下で測定した;および
−顆粒または繊維の流れを、秒/キログラムで表現し、以下のように測定した:
製品(5kg)をホッパに置き、このホッパの放出オリフィスは振幅1mmで振動する流れの溝から25.8mm離れて配置されていた。
【0063】
この顆粒の特性を表2に示す。
【表2】

【0064】
例14〜26の顆粒は15秒/kg未満の流動性であり、射出成形機での使用に適合する。
【0065】
本発明による顆粒は輸送中に良好な機械的強度特性を有した。比較例25および26の顆粒よりも例14〜20および22〜24の顆粒は特に、圧気輸送の前後で微粉の量が少なく、そしてこの射出の条件下(輸送試験)およびより過酷な条件下(PSI試験)で毛羽が少なかった。本発明による例で得た毛羽の非常に低い百分率は、例25および26と比べるとそれぞれ10および30倍低く、結果としてサイジング剤によるガラスストランドの高いレベルの完全性をもたらした。例21の顆粒は、比較例と比べて、中程度の強度特性を有し、意図する用途については受け入れられる程度に保たれている。
【0066】
比較として、刻んで(長さ:12mm;強熱減量0.75%)そして粒状にしなかった(比重:0.4)例13のサイジング剤でコートしたガラスストランドは前述の試験条件では分析できなかったことが注目される。−このストランドが急速に絡まってそして輸送範囲および/またはホッパで流れを塞ぐ「ブリッジ」を形成したということである。これらのストランドはまた耐摩耗性も低かった。
【0067】
例27〜39
例14〜26の顆粒を使用して射出成形技術により複合材部品を製造した。この顆粒は、刻んだガラスストランドと粒状にした熱可塑性物質(ポリプロピレン)からなり、空気圧によって一軸射出スクリューを備えた射出成形機上方に配置した計量フィーダーへ輸送された。この化合物を鋳型に射出して2mm厚の飾り額(plaque)を製造した。ガラスの量はこの飾り額の総質量の30%に相当した。
【0068】
この飾り額は以下の条件下で形成した:
−条件1:射出スクリューに圧力はかけず、1分あたり130回転の速度で運転した;
−条件2:射出スクリューに120bar(12MPa)の圧力をかけ、1分あたり130回転の速度で運転し、この速度は計測の最後では1分あたり80回転に下げ、これにより材料の混合時間をわずかに増すことおよび熱可塑性物質にストランドをより良好に浸透させることを可能にした。
【0069】
このようにして形成したこの飾り額は照明装置に配置され、刻んだストランドの塊が熱可塑性物質の母材中に分散していないことを表示することが可能となる。分散していない刻んだガラスストランドを含む領域の百分率を計算するために、イメージ処理ソフトウェア(Mesurim)をこの飾り額に使用した。
【0070】
この複合材部品の特性を表3に示した。
【0071】
【表3】

【0072】
成形条件がなんであろうと、本発明による顆粒から得た飾り額は、母材中でのガラスストランドのより良好な分散を示し、そしてそれゆえ既存の顆粒によるもの(比較例38と39)よりも欠陥率が低い。
【0073】
条件2で行った鋳型成形は、繊維の長さに目に見える影響を与えることなくより良好な分散をもたらし、そしてそれゆえに強化の点で安定した性能をもたらした。
【0074】
本発明によるサイジング剤でコートしたガラスストランドで強化した飾り額の機械的特性を、例38および39のもの、特に衝撃強度(シャルピーおよびアイゾッド試験)と曲げ強度、と比較した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスストランドのためのサイジング組成物であって、
以下の構成要素を、固体質量百分率で表される以下の含有率で含むことを特徴とするサイジング組成物:
−エチレン/酢酸ビニルコポリマーまたはエチレン/(メタ)アクリル酸コポリマーから選択された少なくとも一つのコポリマーが10〜99%;
−少なくとも一つのカップリング剤が1〜40%;および
−前記カップリング剤と反応可能である一以上の官能基を含む少なくとも一つのモノマーから派生した少なくとも一つのユニットによってグラフトしたポリプロピレンが0〜90%。
【請求項2】
前記コポリマーが、少なくとも50質量%、好ましくは少なくとも65質量%、そして有利には少なくとも80質量%のエチレン含有率であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記コポリマーが、160℃未満、好ましくは140℃未満、そして有利には約110℃の融点を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記カップリング剤が、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、スチリルアミノエチルアミノプロピルトリメトキシシランまたはtert−ブチルカルバノイルプロピルトリメトキシシランのようなシラン、シロキサン、チタン酸塩、ジルコン酸塩、およびこれらの化合物を混合したものから選択されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記カップリング剤が、シラン、好ましくはアミノシランであることを特徴とする、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記グラフトしたポリプロピレンは少なくとも一つのモノマーから派生した少なくとも一つのユニットを含み、該モノマーがビニルモノマー、および以下の官能基(アルコール、カルボン酸、酸、無水物、アミドまたはエポキシド)の少なくとも一つを携行するモノマーから選択されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記グラフトしたポリプロピレンが0.2〜8%、好ましくは0.5〜5%のグラフト度合を有することを特徴とする、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記ポリプロピレンの融点が前記コポリマーの融点よりも高いことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
−エチレン/酢酸ビニルコポリマーまたはエチレン/(メタ)アクリル酸コポリマーの少なくとも一つが40〜90%;
−少なくとも一つのカップリング剤、好ましくはシランが5〜20%;および
−グラフトしたポリプロピレン、好ましくは無水マレイン酸をグラフトしたポリプロピレンが10〜60%、
含むことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
グラフトしたポリプロピレンが、0.2〜6%、好ましくは0.5〜4%で変化する無水マレイン酸のグラフト度合を有することを特徴とする、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
ポリウレタン、エポキシ、ポリエステル、およびポリ酢酸ビニルから選択した少なくとも一つの膜形成剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
膜形成剤の含有率がサイジング組成物の質量の40%、好ましくは10%、を超えないことを特徴とする、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
固体含有率が2〜20%、好ましくは4〜15%、そして有利には約10%であることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載のサイジング組成物でコートしたガラスストランド。
【請求項15】
100〜10000、好ましくは200〜5000、そして有利には約1000のフィラメントからなることを特徴とする、請求項14に記載のガラスストランド。
【請求項16】
ストランドの質量の2%を超えず、好ましくは0.2〜1.8%、そして有利には0.5〜1.5%の量のサイジング剤でコートすることを特徴とする、請求項14または15に記載のガラスストランド。
【請求項17】
請求項14〜16のいずれか1項に記載のガラスストランドからなることを特徴とする、刻んだガラスストランド顆粒。
【請求項18】
95質量%〜99.8質量%、好ましくは98〜99.5質量%のガラスを含むことを特徴とする、請求項17に記載の顆粒。
【請求項19】
強熱減量が2質量%未満、好ましくは1.8質量%未満、そして有利には0.5〜1.5質量%で変化することを特徴とする、請求項17または18に記載の顆粒。
【請求項20】
6〜30mm、好ましくは8〜25mm、そして有利には9〜15mmの長さであることを特徴とする、請求項17〜19のいずれか1項に記載の顆粒。
【請求項21】
0.5〜4mm、好ましくは1〜3mmの直径であることを特徴とする、請求項17〜20のいずれか1項に記載の顆粒。
【請求項22】
射出成形技術を利用する熱可塑性物質および刻んだガラスストランドを含む、複合材部品を得るために、請求項17〜21のいずれか1項に記載の顆粒を使用する方法。
【請求項23】
前記熱可塑性物質が、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリアルキレンテレフタレート、スチレンポリマー、ポリカーボネートおよびポリアセタールから選択されることを特徴とする、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記熱可塑性物質がポリプロピレンであることを特徴とする、請求項23に記載の方法。

【公表番号】特表2008−540306(P2008−540306A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−509485(P2008−509485)
【出願日】平成18年5月2日(2006.5.2)
【国際出願番号】PCT/FR2006/050405
【国際公開番号】WO2007/000517
【国際公開日】平成19年1月4日(2007.1.4)
【出願人】(501399290)サン−ゴバン ベトロテックス フランス (33)
【Fターム(参考)】