説明

高分子コンジュゲート及びその製造方法

【課題】診断アッセイ及び治療薬に有用な新規の高分子コンジュゲートを提供する。
【解決手段】各コンジュゲートが2から30個の所定数の抗体を含むコンジュゲートの集団からなる組成物であって、3高分子層からなり、前記3層のうち少なくとも2層が複数の高分子を含み、前記層が3次元で表面を形成するコンジュゲート。さらには特異的結合メンバー、複数のエンドポイント分子、及び前記エンドポイント分子を実質的に分離する複数のスペーサー分子を含むコンジュゲート。第1高分子を安定な破壊性結合を介して固体に結合させ、追加の高分子を安定的に連結させ、高分子コンジュゲートを遊離させることを含む懸濁または可溶性高分子コンジュゲートの製造方法及びその方法により製造した高分子コンジュゲート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な高分子コンジュゲート、その使用及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複合高分子コンジュゲートの製造はバイオテクノロジー産業界にとって重要である。診断アッセイ及び治療薬は高分子コンジュゲートを用いる複数の技術分野の2つである。
【0003】
診断分野では、例えば抗体(及び抗原結合ポリペプチド)のようなタンパク質は、しばしば、前記抗体の抗原に対する結合が検出され得るように、検出可能な反応を触媒し得る酵素または他の高分子と、コンジュゲート形成されている。この技術の1例である1つの抗体−酵素コンジュゲートは、アルカリホスファターゼとコンジュゲート形成されたモノクローナルFAb断片である。FAbは特定のアナライトに結合し得、抗体と前記アナライトの結合はアルカリホスファターゼにより非発光または非発色物質を発光または発色物質に変換させることにより検出され、よってアナライトが検出できる。従って、当業者は試験サンプル中のアナライトの濃度を測定するために前記コンジュゲートを使用することができる。また、抗原結合ポリペプチド及び受容体リガンドもしばしば治療分野で治療用高分子とコンジュゲート形成されている。この場合、そのコンジュゲートは生物(または、その組織または流体)に接触すると抗原結合ポリペプチドまたは高分子受容体リガンドが生物の細胞、組織または領域の抗原または受容体に指向する。よって、毒素やホルモンのような治療用高分子は抗原または受容体の近くで濃縮され、治療用高分子の治療指数を好ましく上昇させる。当業者は高分子コンジュゲートの多くの他の用途及び実施態様が公知であり、生医学及び他の分野で使用されていることを認めている。
【0004】
高分子コンジュゲートは、通常コンジュゲート形成しようとする2つの高分子上に反応性部分を形成し、前記2つの高分子間で安定な結合が形成されるような適当な条件下でこれらの高分子を接触させることにより製造される。高分子の一方または両方がその表面上に1つの反応性部分しか有していないときは、コンジュゲート形成反応はうまく制御し得る。こうした状況では、1つの(1つまたはそれ以上の反応性部分を含有する)第1タイプの高分子と特定数の(1つの反応性部分しか含有していない)第2タイプの高分子しかコンジュゲートに取り込まれない。
【0005】
しかしながら、コンジュゲート形成反応中の2タイプ以上の高分子の各々が複数の反応性部分を含むときまたは自己反応性高分子が複数の反応性部位を含んでいるときは、コンジュゲート形成中に制御されない網状組織が形成される可能性が生ずる。これらのコンジュゲートまたは網状組織の大きさは様々であり得、コンジュゲート産物中に取り込まれる各反応物質の数も様々であり得る。例えば、上記したFAb−アルカリホスファターゼの例では、1つのFAbが3個のアルカリホスファターゼに結合し、そのアルカリホスファターゼの各々が1〜3個のFAbに結合し得、その後も同様である。こうすると、通常異なるサイズ、異なるアナライトまたは標的結合能、及び異なる受容体、エフェクターまたは他のエンドポイントモジュレーター含量を有するコンジュゲートの集団が生ずる。この変動を減らすために、コンジュゲート形成反応を制御する方法を1つまたはそれ以上使用することが望ましい。
【0006】
余り制御されていないコンジュゲートは複数の理由で望ましくない。
【0007】
診断分野では、例えば小さすぎるコンジュゲート(例えば、単純なダイマー)及び大きすぎる他のダイマー(例えば、各モノマーを10個含むコンジュゲート)はいずれかある1つの特定用途において十分にまたは全く機能しないことがある。また、1つの高分子の別の高分子に対する比が大きすぎるコンジュゲートでは、(例えば、1つ以上のアナライトに結合するが、1単位のシグナルしか発生しない1つのコンジュゲートによって引き起される)感受性の低下及び/または(例えば、反応容器または汚染物質へのアナライト結合メンバーの非特異的結合の増加によって引き起される)特異性の低下があり、(例えば、高価な高分子前駆体を最適数をコンジュゲートに複数個導入することにより)コンジュゲートの製造及び使用コストが不必要に高くなることがある。更に、安定性(寿命)、精度、ロット毎の再現性等がコンジュゲートの平均サイズ及びサイズの分布によって有意に異なり得る。
【0008】
治療分野では、例えば親和性部分または指向性部分がエフェクター分子とコンジュゲート形成され得る。例えば、腫瘍細胞に対して特異的なヒト化モノクローナル抗体は毒素とコンジュゲート形成され得る。コンジュゲート形成過程が十分に制御されないと、コンジュゲートの安定性、生物学的半減期(非限定的に分解及び半減期を含む)及び治療指数(すなわち、最高の医学的に許容され得る濃度での治療効果)が変動する恐れがある。
【0009】
更に、コンジュゲート形成過程が制御されていないとコンジュゲートの表面の組成は、異なり得、制御しがたい。従って、他の分子に対する表面親和性、電荷または疎水性及び/または粒子直径により、望ましくない凝縮及び表面付着が起こり得る。
【0010】
コンジュゲート形成過程を制御するために、従来方法はpH、温度、前駆体活性化の程度、高分子前駆体の絶対濃度、前駆体の立体化学及び反応物質の混合度を制御することに焦点が当てられていた。前記したコンジュゲート形成過程を制御する方法は工業的に有用な用途を与えるのに十分に有効であった。また、これらの方法は本発明の新規な特徴と有効に組み合わされ得る。
【0011】
同様に、広範囲のサイズ及び組成を有するコンジュゲートの集団はサイズ排除クロマトグラフィーまたは類似の方法により分画し得る。しかしながら、こうすると、所望サイズ範囲を外れるコンジュゲートが大量に無駄となる恐れがあり、大規模用途のためには余り実際的でないことがある。また同様、コンジュゲートのゲルクロマトグラフィーによる選択は、大きな多分散コンジュゲートにおいては達成可能な分離が比較的低いことから、限られている。従来のコンジュゲート形成方法のように、コンジュゲートを濃縮または精製する幾つかの従来方法は本発明の新規な特徴と組み合わせて使用され得る。
【0012】
更に、品質保証を助けるためにコンジュゲートが十分に規定された組成を有することがしばしば望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、(診断分野、治療分野、農業及び食品加工分野、化学製造及び加工分野及び他の分野において)コンジュゲート形成過程での制御を改善することにより高分子コンジュゲートを改良することが要望されている。本発明はこの要望に向けられている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、高分子のコンジュゲートを形成するための改良方法及びその方法により製造した新規なコンジュゲート形成された高分子(すなわち、コンジュゲート)に関する。本発明は、診断用高分子コンジュゲートを製造する改良方法により得た高分子コンジュゲートをアナライトと接触させることを含むアナライトの検出方法、治療用コンジュゲートを製造する新規方法を含む治療を要する生物に対して治療を施す方法、及び新規高分子コンジュゲートを含むキットをも提供する。
【0015】
本発明の方法は、第1高分子を反応性支持体と接触させて固体結合高分子複合体を形成することを含む。必要であれば、第1高分子を活性化するステップ及び/または反応性表面上の未反応の反応性部分を失活させるステップを実施する。第2高分子を必要により活性化し、第1高分子と接触させる。固体、第1高分子及び第2高分子を結合させて3元複合体を形成した後、固体と第1高分子間の結合を破壊して、好ましくは水溶液中に溶解または分散し得る高分子コンジュゲートを得る。
【0016】
高分子コンジュゲートに対して追加の高分子及び小さい分子もしくは原子を付加するために1つ以上の追加任意ステップを実施してもよい。追加の任意ステップを固体と第1高分子間の結合を破壊する前に実施することが好ましい。
【0017】
コンジュゲートの品質を実質的に低下させず、また反応物質をコンジュゲートに付加しても特性を実質的にさせない技術または試薬を用いて反応性表面と第1高分子間の結合を破壊して懸濁、分散または可溶性高分子コンジュゲートを形成することによりコンジュゲート形成過程を完了することが好ましい。
【0018】
好ましくは、過程の各ステップ、実際は全過程を酵素(例えば、ウシアルカリホスファターゼ)の生物学的活性を維持するのに適した水性条件下で実施する。
【0019】
改良特性を有する高分子コンジュゲートも提供し、前記した改良特性にはコンジュゲートサイズの均一性、コンジュゲート組成の均一性、コンジュゲートに導入される高分子及び他の基の親水性または疎水性、表面電荷及び空間配置の改良が含まれるが、これらに限定されない。
【0020】
本発明はまた、試験サンプルと本発明の高分子コンジュゲートを標的またはアナライトと高分子コンジュゲート間とで複合体を形成するのに適した条件下で接触させ、前記標的またはアナライトに結合した高分子コンジュゲートの存在または量を検出することを含む標的またはアナライトの検出方法を提供する。
【0021】
本発明はまた、治療を要する生物(好ましくは、動物)を治療有効量の本発明の高分子コンジュゲートと接触させて、前記高分子コンジュゲートの少なくとも1つの高分子または他の化学基を前記生物の細胞、組織または分子成分(例えば、神経伝達物質)と相互作用させて生物の症状または状態を改善させることを含む前記生物の治療方法を提供する。
【0022】
(発明の詳細な説明)
従来の高分子コンジュゲートの形成方法においてはコンジュゲート形成過程が十分に制御されていない。従って、従来の高分子コンジュゲートは、通常、該コンジュゲートを構成するモノマー間のような空間的関係が均一でなく、ランダムであり、制御されておらず、前記高分子コンジュゲートは架橋反応の制御されていない組合せの原因となっている。本発明は特にコンジュゲート形成過程に高度の制御を与える。本発明は、改良されたコンジュゲート形成方法を用いる方法によりコンジュゲート形成過程を改良し、本発明の方法により製造された生成物(すなわち、コンジュゲート)を改良する。本発明の方法を水性条件下で実施することが好ましく、全体を水性条件下で実施することがより好ましい。好ましくは、水性条件はコンジュゲート形成される高分子の所望活性を維持するように選択される。本発明方法の実施態様では、ウシ胃腸アルカリホスファターゼの触媒活性を維持するように水性条件を選択する。
【0023】
本発明の高分子のコンジュゲートを形成する方法は、第1高分子を固体に連結させて固体−第1高分子間複合体を形成することを含む。これは多くの場合本発明のコンジュゲート形成過程の第1ステップであるが、必ずしもそうである必要がない。第1高分子はまたこの第1高分子と同一であっても異なっていてもよい第2高分子と反応させる。次いで、連結させた固体−第1高分子−第2高分子を場合により第3高分子及び任意に第4高分子と反応させる。前記固体を第1高分子及び(使用する場合には)キャッピング化合物のみと反応させることが好ましい。第2高分子との反応が起こったら第1高分子が更に固体と反応しないことが好ましい。また、第3高分子と反応後第2高分子が更に第1高分子と反応しないことが好ましい。添加した高分子が1つの結合複合体としか反応しない、すなわち2つ以上の結合複合体間で架橋を形成せず、1つの高分子が任意のときに別のタイプの高分子(例えば、第3高分子)の1つとしか反応せず、2つの高分子間の反応が1回しか起こらないように、すべての高分子反応を逐次実施することが好ましい。理論的には、コンジュゲートに結合し得る高分子の数は限定されない。
【0024】
第1高分子の固体への結合により合成中心が与えられ、この中心の周りでコンジュゲートへの更なる付加が起こり得る。有利には、合成中心間の架橋を制御したり、好ましくは避けるように合成中心を固定し、通常は分散させる。よって、固体上のコンジュゲート間の架橋(または、ダイマー化)がないときに製造された分子コンジュゲートのモル量は、好ましくは、固体に連結させた第1高分子の量に等しいか、実質的に等しい。好ましくは、固体との反応へ添加した第1高分子の実質的にすべてが本発明の高分子コンジュゲートの製造方法の間、固体結合状態に変換させる。
【0025】
本発明の方法では任意の適当な固体が使用され得る。しかしながら、回旋状(convoluted)固体が好ましく、多孔質の固体がより好ましい。特定の理論に束縛されないが、回旋した、特に多孔質固体が好ましい。何故ならば、(i)表面の回旋または固体の孔は合成中心から成長した高分子コンジュゲートを他の合成中心から成長した他の高分子コンジュゲートから遮断する傾向を有すること、および(ii)回旋状多孔質固体の大表面積は、固体に結合する第1高分子結合部位間に分離(すなわち、距離)が生じるのに十分な領域を提供することによって、凝集度が制御され得るからである。固体は、好ましくはサイズ排除クロマトグラフィーにかけたビーズまたは粒子である。固体が架橋ポリアクリルアミドを含むかまたは本質的に架橋ポリアクリルアミドから構成されることがより好ましく、より好ましくはアガロースである。
【0026】
第1高分子は、固体と希釈条件で及び/または遅い反応速度で反応させ得、それによって、第1高分子と固体との反応により形成される合成中心が物理的に分離される。例えば、第1高分子(例えば、抗体)のpH、温度及び濃度は、第1高分子が結合する前に適当な固体の孔に浸透する良好な機会を有するように制御され得る。最適な反応条件を選択すると、第1高分子の大部分が固体の粒子の外表面上に結合する(すなわち、第1高分子が固体の他の粒子と接触している固体の外表面または固体を収容している容器の壁に結合する)のが防止され得る。
【0027】
場合により、高分子コンジュゲートは、例えばアフィニティークロマトグラフィーまたはサイズベース選択を用いて分画化または精製され得る。高分子コンジュゲートの分画または精製は適当な技術またはその組合せにより実施され得る。有利には、本発明の高分子コンジュゲートはしばしば精製または選択することなく診断用途、治療用途または他の用途に使用され得る。
【0028】
必要によりまたは所望により、第1高分子と反応性となるように固体が処理または製造される。必要ならば、固体を第1高分子と反応性となるように適当な部分または分子が使用され得る。これは、例えば固体を活性剤と接触させて固体表面上に反応性部分を生じさせるような方法を含めたいろいろな方法により達成され得る。前記した反応性部分の非限定例はヒドロキシル、アルデヒド、カルボン酸、ジエン、アミン、スルフヒドリル、ホスホリルまたは固体表面上の他の反応性化学部分である。場合により、反応性部分は水素以外に6個以上の原子を含む複合体であり得る。アビジン、ストレプトアビジンおよび類似分子と非常に安定な複合体を形成するビオチンは、固体表面を活性化するために使用し得る多様な適切な複合体反応性部分の1つである。
【0029】
有利には、本発明において二官能性リンカー、ヘテロ二官能性リンカー及び多官能性リンカーを含めたリンカーを使用することができる。リンカーの使用及び組成の幾つかは当業界で理解されている。二官能性リンカーは、好ましくは式X−R−Y[式中、Xは第1反応性部分であり、Rはスペーサーであり、Yは第2反応性部分である]を有する。X及びYは同一(すなわち、ホモ二官能性リンカー)でも異なって(すなわち、ヘテロ二官能性リンカー)いてもよい、適当な反応性部分であり得る。適当な反応性部分にはアルデヒド、アミン、カルボン酸(活性化された、またはEDACのような活性化剤の存在下で)、ジエン、ヒドラジド、ヒドロキシル、マレイミド、NHSエステル、ホスホリル、スルフヒドリル、チオール及び他の反応性部分が含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、X及びYのいずれかがアルデヒド、カルボン酸、ヒドラジド、マレイミドまたはチオールである。スペーサーRは適当な未置換もしくは置換脂肪族または芳香族有機部分であり得る。適当な有機部分はメチレン、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルアルキル、アリール、アルコシアルキル、ハロアリール、ヒドロキシアルキル、カルボキシ、カルボキシアルキル、アルカノイル、アルケニル及びアルキニルからなる群から選択され得るが、必ずしもそうする必要はない。スペーサー部分により、高分子間の立体制限が有利に制御し得る。このため及び他の理由で、スペーサーは好ましくは1〜90炭素原子、より好ましくは1〜30炭素原子、更に好ましくは3〜20炭素原子を含む。
【0030】
固体、第1高分子、第2高分子、及び高分子コンジュゲートに結合させようとする他の高分子を、場合により二官能性リンカーまたは多官能性リンカー、好ましくは別々に反応させたり活性化し得る少なくとも2つの反応性部分を有するヘテロ二官能性リンカーと反応させてもよい。別の手段は、コンジュゲートに結合させようとする1つ以上の高分子を隠れていたりまたは利用できない状態の活性基を露出させる試薬で処理することである。例えば、これに限定されないがタンパク質または他の高分子をジチオトレイトール(DTP)と接触させて適当に反応性であるスルホヒドリル部分を露出させる。
【0031】
二官能性リンカーは高分子のコンジュゲート形成を容易にし、二官能性リンカーがヘテロ二官能性リンカーの場合には、リンカーの非対称によりコンジュゲート形成反応を異なる程度に制御できる。適当な二官能性リンカーは各種ソースから市販されている。例えば、イリノイ州ロックフォードに所在のPierce Inc.の2001 Pierceカタログを参照されたい。また、二官能性リンカーは当業者により容易に合成し得る。本発明において適当な二官能性リンカーには、エチレングリコールビス[スクシンイミジルスクシネート]、NHSエステル、N−ε−マレイミドカプロン酸、N[ε−マレイミドカプロン酸]ヒドラジド、N−スクシンイミジルS−アセチルチオアセテート及びN−スクシンイミジルS−アセチルチオプロピオネートが含まれるが、これらに限定されない。好ましい二官能性リンカーには、N−スクインイミジルS−アセチルチオプロピオネート、N−スクインイミジルS−アセチルチオアセテート、2−イミノチオラン(Trauts試薬)、4−スクインイミジルオキシカルボニル−メチル−(2−ピリジルチオ)−トルエンスルホスクシンイミジル、4−[N−マレイミドメチル]−シクロヘキサン−1−カルボキシレート、N[γ−マレイミドブチリルオキシ]スルホ−スクインイミドエステル、N−(K−マレイミドウンデカノイルオキシ)スルホスクシンイミドエステル、マレイミド酢酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、N−(ε−マレイミドカプロン酸)ヒドラジド、N(K−マレイミドウンデカン酸)ヒドラジド、N−(β−マレイミドプロピオン酸)ヒドラジド及び3−(2−ピリジルジチオ)プロピオニルヒドラジドが含まれるが、これらに限定されない。
【0032】
多官能性リンカーは少なくとも1つの追加反応性部分を有する二官能性リンカーである。好ましくは、多官能性リンカーは少なくとも3タイプの反応性部分を含み、各反応性部分はリンカーが3つの高分子を非ランダムに逐次複合体化するために使用され得るように選択的に反応され得る。或いは、第1タイプの反応性部分を1個しか含まず、第2タイプの反応性部分を複数含む多官能性リンカーも好ましい。しかしながら、当業者は他の多官能性リンカーが本発明において適切であることを認識している。
【0033】
特定実施態様において、固体は特定の結合対を用いて誘導化される。特定結合対は、適当な条件下で相互に接触させたときに特異的に結合する特定結合エレメントの対である。特定結合対により、第1高分子と第2高分子間に結合、好ましくは予測できる特徴を有する結合が形成され得る。本発明では任意の適当な結合対を使用することができる。非限定例として、ビオチンとアビジン及び当業界で公知の均等分子(例えば、ビオチニル化ヌクレオシド及び/またはストレプトアビジン)が特定結合対クラスの1つである。他の実施態様では、1つまたは両方の特定結合対が核酸であり得る。非限定例として、第1高分子が核酸であり、固体の表面に結合しているときには第2高分子は場合により別の核酸、核酸に結合するかまたは固体に結合した第1高分子である特定核酸に結合する核酸結合ポリペプチドであり得る。別の実施態様では、特定結合対の1つの特定結合エレメントはポリペプチドであり得、例えば非限定例として、別の高分子に対して高親和性で結合し得る、抗原エピトープ、レクチン、ヒスチジニルオリゴポリマーが挙げられる。特定結合対の特異的結合エレメントはまた生体分子(非限定例として炭水化物、ジヌクレオチド、ファルネシル部分、ビタミン等が挙げられる)からなる群から選択され得、細胞または生物中に自然に特定対を形成するかまたは接種のような刺激に応答して細胞または生物により形成される、能力または傾向により特徴づけられ得る。別の好ましい特定結合対は抗原と抗原に対するアフィニティーを有し、好ましくは抗原に対して特異的である抗体または抗体断片である。
【0034】
本発明の高分子コンジュゲートのより複雑な実施態様では、コンジュゲートの成長は固体支持体が占める空間により立体的に制限され得る。例えば、多数の高分子が高分子コンジュゲート中に連結されているときには実質的に半球体形分子が生じ得る。有利には、固体と第1高分子間の連結は、半球体コンジュゲートを避けることが望ましい用途では合成中固体の表面と第1高分子間に距離を与えるように実質的に線状の部分を含み得る。適当な線状部分を使用し得る。好ましくは、線状部分は成長コンジュゲートの固体立体排除を少なくすべく十分に長いが、成長コンジュゲート間の架橋を抑制すべく十分に短い。当業者は、線状部分の最長及び最短所望長さが実施態様毎に固体の多孔性、固体上の反応性部分の密度及び固体と接触させる第1高分子の初期量に依存して異なることを認識している。このため、線状部分は好ましくは少なくとも5nmの長さ、より好ましくは10nm以上の長さ、場合により25nm以上の長さである。更に、線状部分は好ましくは700nm以下の長さ、より好ましくは350nm以下の長さ、更に好ましくは200nm以下の長さである。
【0035】
非限定例として、リンカーは両端を−SH基で活性化したポリエチレングリコールを含み得る。前記−SH基はEMCH活性化支持体と反応して、線状部分の末端にチオール基を与える。約2kDaの分子量を有するポリエチレングリコールは約16nmの線状長さを有することが公知であるのに対して、約10kDaの分子量を有するポリエチレングリコールは約80nmの線状長さを有する。対照的に、EMCHリンカーのみを使用したときには固体と第1高分子間を約1.2nmだけ分離させる。有利には、本発明の方法で注目されるものを含めた多数の各種官能基で両端を官能化したポリエチレングリコールポリマーが市販されている。また、例えばポリマーのような他の線状部分の両端は当業者により容易に官能化し得る。
【0036】
二官能性リンカーまたは反応物質(すなわち、固体、第1高分子、第2高分子及び/または他のコンジュゲート形成される高分子)上の部位が本発明の分子コンジュゲートを製造する際に反応物質分子をコンジュゲート形成するために使用されるかに関係なく、前記反応物質分子の各々上の残存反応性部分は固体または他の反応物質と反応後失活されるかまたは他の所望機能に変換され得る。第1高分子と反応させた後に残存する固体上の反応性部分を追加ステップを実施する前に失活させることが特に有利である。特に第1高分子上の反応性部分が成長コンジュゲートに対して追加高分子を連結させるために使用されるときにそうである。例えば(限定しないが)、第1高分子がヘテロ二官能性リンカーと反応させることにより活性化され得る。ヘテロ二官能性リンカーの第1反応性部分は第1高分子に共有結合される。誘導化第1高分子及び固体を接触させて第1高分子:固体の複合体を形成する。次いで、(第1高分子と同一でも異なっていてもよく、ヘテロ二官能性リンカーの第2反応性部分と反応性である)第2高分子を誘導化第1高分子と接触させ、固体−第1高分子−第2高分子の安定複合体を形成するのに適した所望期間インキュベートする。しかしながら、一般的な化学原則から、ヘテロ二官能性リンカーの第2反応性部分の一部は通常第2高分子と反応しない。ヘテロ二官能性リンカーの第2反応性部分が完全に反応させることができないことは、しばしば(常にではないが)反応を完全に進行させることにより避けられ得るが、これは多くの場合必要ではなく、また、高レベルの第2高分子を必要とし反応物質及び浪費産物の廃棄にかかるコストが高くなる点及び反応時間が商業的に魅力的でないくらい長くなる恐れがある点で望ましくない。従って、ヘテロ二官能性リンカーの第2反応性部分は不完全にしか反応し得ない。
【0037】
二官能性リンカーの残存(すなわち、未反応の)第2反応性部分が存在すると、表面へコンジュゲートを保持する結合を破壊する前、より一般的には破壊した後に問題が生じ得る。第1に、未反応の反応性部分が後に分子コンジュゲート集団中の別の分子上の第2高分子と反応することがあり得る。もしこのことがあると、序の欄に記載したように、望ましくないであろう分子コンジュゲートの制御されない架橋反応を生じさせる傾向を生む。第2に、反応性部分は第3高分子、第4高分子または別の高分子の付加において使用され得る。この場合、二官能性リンカーの残存する未反応の第2反応性部分は後続反応で競合し得る。よって、各反応性部分を反復使用するのを避けたり、コンジュゲート形成反応の制御のロスをある程度容認しなければならない。
【0038】
しかしながら、第3の観点から、未反応部分は、本発明の高分子コンジュゲートを取扱いしやすいように改善する機会を与える。未反応部分は、生じた高分子コンジュゲートの特性を取扱いしやすいように改変するために場合により使用され得るキャッピング化合物を用いて失活させ得る。キャッピング化合物は、高分子または高分子−結合リンカーの未反応の反応性残基のすべてまたは実質的にすべてを失活させるために使用され得る化合物である。典型的には、キャッピング化合物を特定タイプの残存する未反応の反応性部分を実質的に無くすのに十分な量で十分な期間、固体−高分子複合体と接触させる。1つ以上のキャッピング化合物が使用されるが、これらのキャッピング化合物は同時または逐次導入し得る。キャッピング化合物の適当なクラスには検出可能な化合物、電荷変更化合物、ポリマー化合物、立体スペーサー及び特異的結合対の特異的結合エレメントが含まれるが、これらに限定されない。例えば、スルフヒドリル反応性部分をキャップするためにハロアセトアミド及びマレイミドが好適に使用し得るが、マレイミド反応性部分をキャップするためにはチオール含有試薬が好適に使用し得る。
【0039】
キャッピング化合物が高分子の最終層を付加後導入することによりコンジュゲートの表面に配置され得る。適切なキャッピング化合物を使用することにより高分子コンジュゲートに有利な特性が付与され得る。例えば、キャッピング化合物は免疫診断薬に使用されるコンジュゲートの非特異的結合を低下させ得、患者の免疫系による破壊からコンジュゲートを保護し得る。
【0040】
適当な検出可能なキャッピング化合物の群は、非限定的にフルオレセイン−5−マレイミドのような小さな有機蛍光染料からなる。このキャッピング化合物を使用すると、コンジュゲートは蛍光検出システムにより検出、トレース及び定量し得る。蛍光団は、高分子コンジュゲートの(表面よりも)コアに配置したリンカーをキャップするために使用したときには、分子コンジュゲートが他の分子及び表面に粘着する傾向を増加させない。
【0041】
好適な電荷変更キャッピング化合物の群は、非限定的に2〜20炭素原子及び1つ以上の帯電部分を有するアルカニル、アルケニル、アルキニル化合物を含む。好適な帯電部分にはアミノ、カルボキシル、スルフヒドリル、ホスホリル及びチオホスホリル部分が含まれるが、これらに限定されない。(特定のアミノ酸のような)双イオン性帯電部分が水溶液中での高い可溶性及び他の理由で好ましい。荷電変更キャッピング化合物の好適な例にはシスタミン、チオ酢酸、システイン(2−アミノ−3−メルカプトプロピオン酸)、イミダゾール、アスパラギン酸(2−アミノブタン−ジオン酸)及びリシン(2,6−ジアミノヘザン酸)部分が含まれるが、これらに限定されない。システインのスルフヒドリル部分は例えば適当な未反応の第2反応性部分と反応して、約3〜約10のpHでそれぞれ正及び負に帯電する傾向を有するアミノ部分及びカルボン酸部分を残し得る。
【0042】
適当な立体スペーサーキャッピング化合物の群にはポリエチレングリコール及びポリサッカライドの誘導体が含まれるが、これらに限定されない。
【0043】
好適なポリマーキャッピング化合物の群にはデキストラン、ポリエチレングリコール及びポリサッカライドが含まれるが、これらに限定されない。好ましいポリサッカライドの中に、いずれもヒトを含めた動物に導入された化合物に対して有利な効果を与えることが公知のヘパリン及びシアル酸が含まれる。
【0044】
本発明において有用な他のキャッピング化合物にはチオ酢酸、N−エチルマレイミド、ヨード酢酸及びC1−25ハロ脂肪族化合物が含まれる。
【0045】
高分子コンジュゲートの合成は、場合により高分子コンジュゲートが固体から遊離されるように固体と第1高分子間の結合を破壊するステップをも含む。高分子コンジュゲートは水溶液中に不溶性であり得るが、好ましくは水溶液中に可溶性または分散性であり得る。高分子コンジュゲートが不溶性であるが水溶液に分散し得るときには、完全に分散することがより好ましい。
【0046】
場合により、固体の反応性基を第1高分子と非反応性とするのに有用なキャッピング化合物をまた、第1高分子の前、第1高分子と一緒または第1高分子を固体と接触させた後に、導入し得る。有利には、固体表面結合部位と競合させ、第1高分子に対する結合部位をまばらに保持することによって、成長しつつある高分子コンジュゲートの架橋(すなわち、架橋反応)を減らすために、固体の反応性を減ずるキャッピング化合物を使用し得る。また、反応が適当な期間進行した後、第1高分子と固体の反応を停止させるために、固体特異的キャッピング化合物を使用し得る。
【0047】
キャッピング化合物はまた、キャッピングする反応基とは異なる反応基を与えるためにも使用し得る。例えば、スルフヒドリル基をキャッピングするEMCHは、固体から高分子コンジュゲートを遊離させた後、選択的に修飾され得る。
【0048】
任意の適当な固体が本発明で使用し得る。固体表面は、例えばガラス、ペーパー、アガロース、ポリアクリルイミド、ポリデキストラン、ポリビニルピロリドン及びポリスチレンからなる群から選択され得る。固体の個々の粒子が20倍の倍率で正常な健康人の目に見えることが好ましく、肉眼で見えることがより好ましい。好ましくは、固体の粒子は合成の中心が相互に離れているように回旋状または窪んだ表面を含む。本発明において適した回旋状表面を有する固体の例には、核孔基板及びマイクロ電子技術分野で一般的に使用されており、生物分野で時々使用されているリソグラフィック表面が含まれるが、これらに限定されない。本発明において適当な多孔性固体の例にはセファデックスG25やセファロースCL2Bのようなゲル濾過粒子が含まれるが、これらに限定されない。本発明において有用な多孔性固体は、好ましくは50,000ダルトンの分子量、より好ましくは200,000ダルトンの分子量、更に好ましくは500,000ダルトン以上の分子量を有する球状分子を捕捉するのに十分な大きさの平均孔を有している。場合により、本発明において有用な多孔性固体は好ましくは10,000,000ダルトンの分子量を有する球状分子を捕捉するのに十分な大きさの平均孔を有し、この多孔性固体は多くの高分子層を有する高分子コンジュゲートを製造するために好ましい。
【0049】
第1高分子と固体間の結合は適当な形態をとり得る。例えば、前記結合は安定な結合、例えば共有、イオン性または疎水性結合であり得る。固体を高分子コンジュゲート中に組み込むときには安定な結合が最も有用である。結合が安定な非共有結合であるときには前記結合はヒト血清と等張性のpH7.0の水溶液中で好ましくは10−5M未満、より好ましくは10−8M未満、更に好ましくは10−10M未満のKdを有する。
【0050】
しかしながら、第1高分子と固体間の結合は破壊性であることが好ましい。破壊性結合は予定された条件下で切断され得、分子コンジュゲートを破壊乃至分離せず、好ましくはウシ腸アルカリホスファターゼを失活させないものである。本発明において適当な破壊性共有結合にはヒドラゾン、セミカルバゾン、シッフ塩基、ジスルフイド、ビシナルジオール及びエステルが含まれるが、これらに限定されない。適当な破壊性非共有結合にはイオン性、抗体−抗原、水素結合(例えば、相補性核酸配列を介する)が含まれるが、これらに限定されない。
【0051】
第1高分子、第2高分子及び任意に含まれる他の高分子(総称して高分子と呼ぶ)は独立してすべて着目高分子から選択される。例えば、前記高分子はタンパク質、核酸、ポリマー、サッカライド及び/または前記化合物の組合せから選択される。第1高分子または第2高分子がタンパク質または核酸の場合には、この高分子は少なくとも2つの位置で反応性(すなわち、二官能性)、より好ましくは少なくとも3つの位置で反応性、更に好ましくは少なくとも4つの位置で反応性、場合により10個以上または20個以上の位置で反応性である。
【0052】
理論上、本発明の高分子コンジュゲートに取り込まれた高分子上の反応性部位の数に上限はない。しかしながら、本発明の殆どの実施態様では、高分子コンジュゲートに取り込まれた高分子は約200個以下の反応性部位/分子、場合により約50個以下の反応性部位/分子を有する。ある実施態様では、本発明の高分子コンジュゲートに結合される第1高分子、第2高分子または他の高分子はエンドポイント分子である。
【0053】
エンドポイント分子は検出可能なシグナルを発生しまたは減衰し得る高分子であり得る。エンドポイント分子はまた、他の分子または表面に結合するように、反応を触媒するように、毒性作用を発揮するように、或いは有利なまたは治療効果を発揮するように、機能し得る。本発明において適当なエンドポイント分子には酵素(特に、無色反応物質を着色反応物質に変換させたり適当な条件下で基質と接触させると光を発することが当業界で公知の酵素)、蛍光体(例えば、非限定的に蛍光染料及び蛍光タンパク質が含まれる)、放射標識タンパク質、核酸及び他の分子、酵素に対するコファクター、発光分子及び発色団が含まれるが、これらに限定されない。エンドポイント分子により開始され得る相互作用には、それ自体例えば比色、分光光度、蛍光または放射性検出手段により容易に検出され得る基または複合体を生成する適当に特異的且つ選択的な相互作用が含まれる。前記相互作用はタンパク質−リガンド、酵素−基質、抗体−抗原、炭水化物−レクチン、タンパク質−コファクター、タンパク質−エフェクター、核酸−核酸及び核酸−リガンド相互作用の形態をとり得る。前記リガンド−リガンド相互作用の追加例にはジニトロフェニル−ジニトロフェニル抗体、ビオチン−アビジン、オリゴヌクレオチド−相補オリゴヌクレオチド、DNA−DNA、RNA−DNA及びNADH−デヒドロゲナーゼが含まれるが、これらに限定されない。このようなリガンド対の各々の1つがエンドポイント分子であり得る。
【0054】
1実施態様では、可溶性または懸濁分子コンジュゲートの第1高分子はタンパク質である。前記タンパク質は好ましくは少なくとも3個の反応性部位、より好ましくは少なくとも5個の反応性部位を有する。更に、前記タンパク質は少なくとも2,000ダルトンの分子量、より好ましくは少なくとも10,000ダルトンの分子量、更に好ましくは少なくとも30,000ダルトンの分子量を有する。この実施態様では、タンパク質を固体と接触させて表面結合タンパク質複合体を形成させ、好ましくは破壊性共有結合である。好ましくは、タンパク質の少なくとも大部分が固体の陥凹、回旋または孔内の表面に結合する。固体上の未反応の反応性部位を第1高分子と結合させた後失活させる。必要により、タンパク質を第2高分子または第2高分子の活性形態と反応性とすべく活性化する。同様に、第2高分子がタンパク質または活性化タンパク質と反応性とすることが必要ならば活性化する。次いで、第2高分子を結合第1高分子と接触させる。その後、高分子コンジュゲートは場合により上記したように処理され得る。こうした更なる処理は高分子コンジュゲートに取り込まれた第1高分子の残基と固体間の安定な結合を破壊する前、その間またはその後に実施され得る。
【0055】
別の実施態様では、本発明は高分子コンジュゲートを、及び懸濁または可溶性高分子コンジュゲートの製造方法を提供する。第1高分子は、(本発明の方法において使用される活性化または元々反応性の形態の)第1高分子と反応し得る反応性部分を複数有する第2高分子と直接または活性化中間体を介して相互作用し得る反応性部分を複数有する任意の適当な高分子であり得る。第1高分子は抗体、別のタンパク質または別の適当な高分子であり得る。前記方法は、表面結合高分子を形成すべく安定な破壊性結合を形成するのに適した条件下で接触させたときに相互に反応し得る第1高分子及び反応性表面を用意するステップを含む。必要により、第1高分子及び/または第2高分子は相互に反応性とすべく活性化され、第1高分子−固体複合体と及び第2高分子とを接触させて固体表面:第1高分子:第2高分子の安定な複合体が形成される。
【0056】
いずれの場合も、可溶性または分散性高分子コンジュゲートの製造には液体媒体中で固体表面と高分子コンジュゲートとの間の安定な結合を破壊して懸濁または可溶性高分子コンジュゲートを生じさせることを含む。
【0057】
本発明の方法により、新規で有用なコンジュゲートを製造することができる。
【0058】
例えば、本発明は特に、各コンジュゲートが単一抗体を含むコンジュゲート集団からなる組成物を提供する。
【0059】
1実施態様では、アナライト、受容体または他の所望標的分子に対して特異的な抗体を特定数含むコンジュゲートを製造することが可能である。ある好ましい実施態様では、コンジュゲート集団中のすべてまたは実質的にすべてのコンジュゲートが単一抗体を含む。他の好ましい実施態様では、各コンジュゲートは2〜30抗体を含み、より好ましくはコンジュゲート集団中のすべてまたは実質的にすべてのコンジュゲートが同数の抗体を含む。診断アッセイでは、このことはアナライトに結合する各コンジュゲートがたった1分子のアナライトにしか結合しないので有利である。対照的に、一般的な方法で製造した従来の凝集コンジュゲートは多くの場合多数の抗体及びエンドポイント分子(例えば、蛍光団または酵素)を含み得る。よって、これらのコンジュゲートは異なる量のアナライトに結合するが、アラナイトよりはむしろ含まれるエンドポイント分子の量により決定されるシグナルの量を発生する。従って、本発明のコンジュゲートは従来のコンジュゲートよりもより高い精度及び感受性を有する。
【0060】
別の実施態様では、第1高分子(場合により所望の標的分子に対して特異的な抗体であり得る)を第2高分子(場合により、血清アルブミン、蛍光タンパク質または別の高分子であり得る)とコンジュゲート形成させる。第2高分子が蛍光タンパク質の場合には、R−フィコエリトリン、B−フィコエリトリン及びフィコビリプロテイン(例えばカリフォルニア州サンレアンドロに所在のProzyme Inc.から市販されている)から選択することが好ましい。次いで、第2高分子は、第2高分子と第4高分子を分離するためにスペーサーとして機能する第3高分子とコンジュゲート形成される。本発明において好ましい適当なスペーサーの第3高分子は血清アルブミンであるが、当業者は多くの適当なスペーサー分子が存在することを認めている。次いで、第3高分子(スペーサー)は第4高分子とコンジュゲート形成される。この第4高分子は第2高分子と同一でも異なっていてもよく、好ましくは蛍光性である。場合により、1つの第1高分子層、1〜10個(好ましくは1〜4個)の第2高分子層、第2高分子の層をカバーする第3高分子層、及び第3高分子層により第2高分子層から分離される第4高分子層、及び場合により追加の高分子層を含む可溶性または分散性コンジュゲートが得られるように1〜10個の追加コンジュゲート形成層、好ましくは2〜5個の追加コンジュゲート形成層を存在させる。場合により、本発明の高分子コンジュゲートの幾つかまたはすべての高分子は上記したようにリンカー分子により連結される。更に、第4高分子の層及び追加の高分子層は、場合により、隣接蛍光団のフルオレッセンスを実質的に消光させないかまたはコンジュゲートのその後の使用において制御され得る方法によって消光させることを特徴とする蛍光高分子及びスペーサー高分子の混合物から構成され得る。
【0061】
また、本発明は単一のアナライト特異的抗体、複数の特異的結合メンバー分子及び複数のエンドポイント分子からなる高分子コンジュゲートを提供する。
【0062】
別の実施態様では、高分子コンジュゲートは3つの高分子層からなり、前記3層の少なくとも2層は複数の高分子からなり、これらの層は3次元で表面を形成する。
【0063】
更に別の実施態様では、コンジュゲートは特異的結合対の1つの特異的結合エレメント、複数のエンドポイント分子及びエンドポイント分子を実質的に分離している複数のスペーサー分子からなる。
【0064】
コンジュゲート集団は、分子の実質的に各々のコンジュゲートが1〜100分子の特異的結合メンバーを含み、この特異的結合メンバーはそれぞれコンジュゲートの表面上に配置されていて、実質的に各々のコンジュゲートがコンジュゲートの表面上に配置されていない分子を少なくとも1つ含むコアを含む。この実施態様は、特にコンジュゲートのコアに配置されている分子が安価なスペーサー分子であり得、有用なフルオレッセンスを有するのに対して、コンジュゲートの外表面に配置されている分子は高分子コンジュゲートと接触するアナライト、治療用標的及び他の部分と相互作用させるために使用し得るので有利である。
【0065】
更に別の実施態様では、本発明は高分子の1つが、好ましくは第1高分子が光学的に検出可能な高分子を含む高分子コンジュゲートを提供する。光学的に検出可能な分子は、好ましくは発色団または蛍光団であり、より好ましくはフィコビリプロテインであり、後者としてR−フィコエリトリン、B−フィコエリトリンまたはアロフィコシアニンが非限定的に例示される。発色団により、高分子コンジュゲートはコンジュゲートの他の高分子を光学的に区別し得、よって最終コンジュゲートは光学的に検出可能な高分子の光学量に従って定量され得る。
【0066】
この実施態様では、第1高分子が光学的に検出可能なとき、高分子コンジュゲートの“粒子”の数(すなわち、集団中のコンジュゲートの数)は支持体に付加した第1高分子の分子の数により制限される。こうすると、核の周囲にすべての他の高分子が層毎に付加されている核を形成する。最終コンジュゲートが固体から分離されると、そのコンジュゲートは1つの中心第1高分子を含む。
【0067】
有利には、R−フィコエリトリンは、多くの市販されている医学的診断及び研究アッセイで使用されているエンドポイント分子であるアルカリホスファターゼを含むコンジュゲート中の第1高分子として選択され得る。R−フィコエリトリンは565nmで高い吸光係数を有しているのに対して、アルカリホスファターゼ及び抗体は565nmで光を吸光しない。従って、この実施態様の分子コンジュゲートの正確な分子濃度は、コンジュゲート中に含まれるアルカリホスファターゼ及び抗体(または、抗体誘導)分子の数に関係なく容易に測定される。このことは、コンジュゲートの品質を評価する際に有利であり得る。
【0068】
また、本発明は標的またはアナライトの検出方法を提供し、その方法は前記標的またはアナライトと高分子コンジュゲート間で複合体を形成するのに適した条件下で試験サンプルを高分子コンジュゲートと接触させ、前記標的またはアナライトに結合した高分子コンジュゲートの存在または量を検出することを含む。
【0069】
また、本発明は治療を要する生物(好ましくは、動物)の治療方法を提供し、その方法は前記生物を治療有効量の本発明の高分子コンジュゲートと接触させ、前記生物の症状または状態を改善するために前記高分子コンジュゲートの少なくとも1つの高分子を生物の細胞、組織または分子成分(例えば、神経伝達物質またはサイトカイン)と相互作用させることを含む。
【0070】
治療効果を達成すべく本発明の高分子コンジュゲートに配合するのに適した高分子はエンドポイント分子であり、その中には毒素、オートクライン、パラクライン、エキソクライン、放射性同位元素、受容体に対するリガンド(あらゆるタイプのアゴニスト及びアンタゴニストを含む)、受容体断片、抗体、抗体またはそのコード配列から誘導される抗原結合ポリペプチド、ニューロモジュレーター、病原体由来抗原断片、免疫抑制物質及び多種多様の他の高分子が含まれる。
【0071】
好適なエンドポイント分子はまた、コンジュゲートの内部に配置され、標的細胞により飲み込まれ、プロセッシングされたときに小分子が標的細胞の行動を修飾し得る活性形態で放出されるように高分子の内側を覆った小分子から構成される高分子を含み得る。例えば、治療用分子は、高分子コンジュゲートが標的細胞により内部化されたときに高分子コンジュゲートの高分子と小分子間の連結が破壊され、小分子が細胞上で治療効果を発揮するように高分子コンジュゲートの高分子に対してヒドラゾンを介して連結され得る。
【0072】
また、本発明は、医薬的に許容され得る担体及び治療有効量の少なくとも1つの本発明の分子コンジュゲートを含む医薬組成物をも提供する。適当な担体が医薬組成物中に使用され得、担体は部分的に投与の特殊手段またはルート及び他の実施要件に依存する。前記した実施要件には、高分子コンジュゲートの可溶性に適した担体の提供、高分子コンジュゲートとの化学反応の回避、及び標的細胞、組織及び系に送達する前の高分子コンジュゲートの失活または分解からの保護が含まれるが、これらに限定されない。
【0073】
本明細書に記載されている医薬的に許容され得る担体、例えばベヒクル、賦形剤、アジュバントまたは希釈剤は当業者に公知であり、市販もされている。従って、本発明の医薬組成物の好適な製剤は広範囲に及ぶ。以下製剤を例示するが、これらに限定されない。
【0074】
注射製剤が好ましい製剤に含まれる。注射組成物用の有効な医薬用担体の要件は当業者に公知である(Banker及びChalmers編,「医薬品及び製薬プラクティス(Pharmaceutics and Pharmacy Practice)」,p.238−250,ペンシルバニア州フィラデルフィアに所在のJ.B.Lippincott Company(1982年)発行;「注射薬のASHPハンドブック(ASHP Handbook on Injectable Drugs)」,Toisel,第4版,p.622−630(1986年)発行参照)。好適な注射組成物は好ましくは静脈内または局所、すなわち治療を要する病気、損傷、機能不全または他の状態の部位またはその近くに投与され得る。
【0075】
非経口投与に適した製剤には、抗酸化剤、緩衝剤、静菌薬、及び製剤を予定レシピエントの血液と等張性とする溶質を含有し得る水性及び非水性の等張性滅菌注射溶液、並びに懸濁剤、可溶化剤、粘ちょう剤、安定剤及び保存剤を含み得る滅菌懸濁剤が含まれる。高分子コンジュゲートは、場合により医薬的に許容され得る界面活性剤(例えば、石鹸または洗剤)、懸濁剤(例えば、ペクチン、カルボマー、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロース)、または乳化剤及び他の医薬用アジュバンドを添加した水、食塩液、水性デキストロースや関連糖溶液、アルコール(例えば、エタノール、イソプロパノールまたはヘキサデシルアルコール)、グリコール(例えば、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコール)、ジメチルスルホキシド、グリセロールケタール(例えば、2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノール)、エーテル(例えば、ポリ(エチレングリコール)400)、オイル、脂肪酸、脂肪酸エステルまたはグリセリド、またはアセチル化脂肪酸グリセリドを含めた滅菌水性液体または液体混合物のような医薬用担体中の生理学的に許容され得る希釈物の形態で投与され得る。
【0076】
非経口製剤中に使用され得るオイルには石油、動物油、植物油または合成油が含まれる。オイルの具体例には落花生油、大豆油、ゴマ油、綿実油、コーン油、オリーブ油、ペトロラタム及び鉱油が含まれる。
【0077】
非経口製剤中に使用するのに適した脂肪酸にはオレイン酸、ステアリン酸及びイソステアリン酸が含まれる。オレイン酸エチル及びミリスチン酸イソプロピルが好適な脂肪酸カエステルである。
【0078】
非経口製剤中に使用するのに適した石鹸には脂肪アルカリ金属、アンモニウム及びトリエタノールアミン塩が含まれ、好適な洗剤には(a)カチオン性洗剤、例えばジメチルジアルキルアンモニウムハライド及びアルキルピリジニウムハライド、(b)アニオン性洗剤、例えばアルキル,アリール及びオレフィンスルホネート、アルキル,オレフィン,エーテル及びモノグリセリドスルフェート及びスルホスクシネート、(c)ノニオン性洗剤、例えば脂肪アミンオキシド、脂肪酸アルカノールアミド及びポリオキシエチレン−ポリプロピレンコポリマー、(d)両性洗剤、例えばアルキル−β−アミノプロピオネート及び2−アルキルイミダゾリン第4級アンモニウム塩、及び(e)その混合物が含まれる。
【0079】
非経口製剤は通常溶液中に約0.0005〜約25重量%の活性成分を含む。保存剤及び緩衝剤を使用し得る。注射部位の刺激を最小限とするかまたは無くすために、前記組成物は約12〜約17の親水性−親油性バランス(HLB)を有するノニオン性界面活性剤1つ以上を含み得る。前記組成物中の界面活性剤の量は通常約5〜約15重量%である。好適な界面活性剤にはポリエチレンソルビタン脂肪酸エステル(例えば、ソルビタンモノオレエート)、及びプロピレンオキシドとプロピレングリコールの縮合により形成される疎水性ベースとの高分子量エチレンオキシド付加物が含まれる。非経口製剤はアンプルやバイアルのような1回量及び複数回用量の密閉容器中に収容され得、使用直前に注射用の滅菌液体賦形剤(例えば、水)を添加することのみが必要な凍結乾燥状態で保存され得る。即時調合注射溶液及び懸濁液は上記した種類の滅菌粉末、顆粒及び錠剤から調製され得る。
【0080】
局所製剤は当業者に公知であり、本発明に適している。前記製剤は通常皮膚または他の体表面に適用される。
【0081】
経口投与に適した製剤は、(a)液体溶液、例えば有効量の高分子コンジュゲートを希釈剤(例えば、水、食塩液または有機液体)中に担持または懸濁させたもの、(b)各々が所定量の活性成分を固体または顆粒として含むカプセル、サッシェ、錠剤、口内錠及びトローチ、(c)粉末、(d)適当な液体中の懸濁液、及び(e)適当なエマルションから構成され得る。液体製剤は、場合により医薬的に許容され得る界面活性剤、懸濁剤または乳化剤を添加した希釈剤、例えば水及びアルコール(例えば、エタノール、ベンジルアルコール、ポリエチレンアルコール)を含み得る。カプセル剤は例えば界面活性剤、滑沢剤及び不活性充填剤(例えば、ラクトース、スクロース、リン酸カルシウム及びコーンスターチ)を含有する一般的な硬質または軟質ゼラチンタイプのものであり得る。錠剤は1つ以上のラクトース、スクロース、マンニトール、コーンスターチ、ポテトスターチ、アルギン酸、微晶質セルロース、アカシア、ゼラチン、グアーガム、コロイド状二酸化珪素、クロスカルメロースナトリウム、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸及び他の賦形剤、着色剤、希釈剤、緩衝剤、崩壊剤、湿潤剤、保存剤、矯臭剤及び医薬的に許容され得る賦形剤を含み得る。口内錠はフレーバー、通常スクロース、アカシアまたはトラガカント中活性成分を含み得、香剤は不活性基剤(例えば、ゼラチン、グリセリン、スクロース及びアカシア)中に活性成分を含み、エマルション、ゲル等は活性成分に加えて当業界で公知の賦形剤を含む。
【0082】
本発明の方法で有用な高分子コンジュゲートは単独でまたは他の好適成分と共に吸入により投与されるエアロゾル製剤に製剤化され得る。エアロゾル製剤は加圧許容され得る噴射剤、例えばジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素等に配され得る。エアロゾル製剤はネブライザーまたはアトマイザーのような非加圧医薬品として製剤化され得る。スプレー製剤は粘膜にスプレーするために使用され得る。
【0083】
更に、高分子コンジュゲートは乳化基材または水溶性基材のような各種基材と混合することにより坐剤に製剤化され得る。膣投与に適した製剤は活性成分に加えて、当業界で適当であると公知の担体を含むペサリー、タンポン、クリーム、ジェル、ペースト、フォームまたはスプレー製剤として製剤化され得る。
【0084】
上記した医薬組成物に加えて、高分子コンジュゲートはシクロデキストリン封入複合体のような封入複合体としてまたはリポソームの形態で製剤化され得る。
【0085】
本発明はキットをも提供する。前記キットは反応性コンジュゲート複合体及び開裂試薬を含む。反応性コンジュゲート複合体は第1高分子に結合した固体を含み、前記第1高分子は直接または間接的に反応性高分子と共有複合体化している。開裂試薬は固体と第1高分子間の結合を好ましくはウシ腸ホスファターゼを失活させない条件で開裂し得る。前記キットは活性化試薬をも含み得る。この活性化試薬は問題のタンパク質と接触して該タンパク質を反応性高分子と反応性とし得る。その後問題のタンパク質を反応性コンジュゲート複合体と反応させることが有利である。当業者は所定数の問題のタンパク質分子を有し、再現可能に製造され得るコンジュゲートを容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】実施例に示し、実施例中に更に説明する本発明の実施態様を示す。
【実施例1】
【0087】
本実施例は、アルカリホスファターゼ及び甲状腺刺激ホルモン(TSH)に対して特異的な抗体からなるコンジュゲートの製造及び初期特徴づけを例示する。
【0088】
本実施例では、多数の分子コンジュゲートを多孔質固体上で製造する。製造した分子コンジュゲートの各々は、第1高分子としてのR−フィコエリトリン(RPE)、1〜5つのアルカリホスファターゼ層、及び甲状腺刺激ホルモンのα−サブユニットに対して特異的な抗体からなる最終層からなる。製造した分子コンジュゲートの大きさ及びTSH特異的ELISA活性を比較する。
【0089】
図1に、本実施例で使用した対照コンジュゲート形成方法を概略的に例示する。アガロース支持体を過ヨウ素酸塩で酸化して、固定化アルデヒドを生じた。ヘテロ二官能性リンカーのN−[ε−マレイミドカプロン酸]ヒドラジド(EMCH)のヒドラジド官能基を前記アルデヒドと反応させて、マレイミド基をヒドラゾンを介して支持体に連結した。スルフヒドリル活性化タンパク質をマレイミドと反応させて安定なチオエーテル結合を形成したが、これは依然としてアガロース支持体に保持されていた。残存マレイミド基をメルカプトエタンスルホン酸のナトリウム塩(MESNA)を添加することにより分解した。非結合反応性物質を除去するためにアガロースを洗浄した後、マレイミド基含有第2タンパク質を添加した。このマレイミド基は第1タンパク質上の残存−SH基と反応して、チオエーテル結合を再び形成した。第1タンパク質上の利用可能な結合位置をすべて占めるように過剰量の第2タンパク質を添加した。第1タンパク質上に残存する未反応スルフヒドリル基は小分子との反応のみに利用可能であった。成長コンジュゲートの露出表面は、スルフヒドリル基含有第3タンパク質との反応に利用可能なマレイミド基を有する第2タンパク質から構成されており、前記第3タンパク質は場合により第1タンパク質のリピートであってもよいが、ここではスルフヒドリル基で活性化した第2タンパク質のリピートまたはスルフヒドリル基で活性化した抗体のいずれかであった。所望するタンパク質層を全て付加したら、残存マレイミド基をMESNAにより非反応性チオエーテルに変換した。その後、ヒドロキシルアミンを添加することによりコンジュゲートを支持体から遊離させた。特定の理論に束縛されることは望ましくないが、ヒドロキシルアミンはコンジュゲートを支持体に対して保持するヒドラゾン連結と反応し、コンジュゲートをヒドラジドとして遊離させると考えられる。
【0090】
アガロースを酸化するために、セファロースCL2B(Sigma製)(約20ml)を水で洗浄し、過剰の水(20ml)中に懸濁させて50%w/v スラリーを得た。このスラリーに100mM NaIO(200μl)を添加し、混合物を数回倒置させて混合した。室温(約25℃)で75分間後、グリセロール(1ml)を添加し、混合物を数回倒置させて混合した。15分後、カラムをフリットを取り付けたカラムを用いて排水し、数カラム容量の水で洗浄した後1カラム容量のリン酸緩衝食塩液(10mM リン酸ナトリウム,150mM 塩化ナトリウム,pH7.2;PBS)で洗浄した。
【0091】
RPEを活性化するために、100mM トリエタノールアミンHCl(pH7.6)中10mg/mlのR−フィコエリトリン(Prozyme製)(200μl)をジメチルホルムアミド中100mM N−スクシンイミジルS−アセチルチオアセテート(SATA)(100μl)に添加した。室温で1時間後、50% ヒドロキシルアミン(10ul)を添加した。室温で40分後、混合物を、10mM リン酸ナトリウム、150mM 塩化ナトリウム及び5mM EDTAを含有する緩衝液(pH7.2)で予め平衡化したセファデックスG25カラムを用いて脱塩して、550μlを集めた。分光光度的に565nmでの吸光度で調べた活性化RPEの濃度は10.1μMであり、Ellman試薬を用いて測定した1分子あたりのSH基の数は22.5であった。
【0092】
アルカリホスファターゼを活性化するために、100mM トリエタノールアミンHCl(pH7.6)中10mg/mlのウシ腸アルカリホスファターゼ(Boehringer Mannheim製)(500μl)に対してジメチルホルムアミド中1M リン酸ナトリウム(pH7.5)(50μl)及び100mM SATA(25μl)を添加した。室温で1時間後、50% ヒドロキシルアミン(25ul)を添加した。室温で40分間後、混合物をセファデックスG25を用いて10mM リン酸ナトリウム、150mM 塩化ナトリウム及び5mM EDTAを含有する緩衝液(pH7.2)中に脱塩して、1.2mlを収集した。分光光度的に280nmでの吸光度で測定した濃度は30.5μMであり、Ellman試薬を用いて測定した1分子あたりのSH基の数は15.3であった。
【0093】
以下の手順を用いてマレイミド官能基で活性化したアルカリホスファターゼを作成した。100mM トリエタノールアミンHCl(pH7.6)中10mg/mlのアルカリホスファターゼ(Boehringer Mannheim製)(500μl)に対してジメチルホルムアミド中1M リン酸ナトリウム(pH7.5)(50μl)及び100mM γ−マレイミド酪酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(GMBS)(25μl)を添加した。室温で100分間後、混合物をセファデックスG25を用いて10mM リン酸ナトリウム、150mM 塩化ナトリウム及び5mM EDTAを含有する緩衝液(pH7.2)中に脱塩して、1.2mlを収集した。分光光度的に280nmでの吸光度で調べた濃度は29.8μMであり、マレイミド発色団を分解するためにMESNAを添加後300nmでの吸光度の変化で調べた1分子あたりのマレイミド基の数は15.4であった。
【0094】
以下の手順を用いてマレイミド活性化抗体を作成した。100mM リン酸ナトリウム及び150mM 塩化ナトリウム(pH7.2)中7.03mg/mlの抗−TSHαIgG(Genzyme製)(200ul)に対して、ジメチルホルムアミド中100mM GMBS(10μl)及び1M NaCO(2μl)を添加して、pH7.7とした。室温で100分間後、混合物を10mM リン酸ナトリウム、150mM 塩化ナトリウム及び5mM EDTAを含有する緩衝液(pH7.2)中に脱塩して、550ulを収集した。分光光度的に280nmでの吸光度で調べた濃度は15.9μMであり、マレイミド発色団を分解するためにMESNAを添加後300nmでの吸光度の変化で調べた1分子あたりのSH基の数は28.5であった。
【0095】
以下の手順を用いてスルフヒドリル活性化抗体を作成した。100mM リン酸ナトリウム及び150mM 塩化ナトリウム(pH7.2)中7.03mg/mlの抗−TSHαIgG(Genzyme製)(100ul)に対して、ジメチルホルムアミド中100mM SATA(5μl)及び1M NaCO(1μl)を添加した。室温で1時間後、50% ヒドロキシルアミン(10μl)を添加した。室温で40分間後、混合物を10mM リン酸ナトリウム、150mM 塩化ナトリウム及び5mM EDTA(pH7.2)中に脱塩して、550ulを収集した。分光光度的に280nmでの吸光度で調べた濃度は11.7μMであり、Ellman試薬を用いて調べた1分子あたりのSH基の数は25.4であった。
【0096】
以下の手順を用いて酸化アガロースをEMCHで活性化した。酸化アガロース(6.0ml)をフリットを取り付けた20mlカラムに注いだ。このカラムを10mM リン酸ナトリウム、150mM 塩化ナトリウム、2mg/ml CHAPS及び5mM EDTAを含有する緩衝液(pH7.2)(PCE)(20ml)で洗浄した。カラムの端部に栓を被せ、PCE(3ml)及びジメチルホルムアミド中100mM EMCH(90μl)を添加し、全混合物を撹拌して、試薬を樹脂中に分散させた。室温で30分間後、カラムを排水し、冷TC75E緩衝液(100mM トリス,0.2% CHAPS,5mM EDTA;pH7.5)(15ml)で洗浄し、氷上に載せた。
【0097】
以下の手順を用いてRPE−SHを活性化アガロース上に固定化した。2ml容量のカラム8本のそれぞれにEMCH処理樹脂(600μl)を添加し、混合物をTC75E(2ml)で処理した。カラムに栓を被せ、TC75E(200μl)を添加し、カラムを氷上に置いた。冷却後、0.200nM RPE−SH(198μl)を各カラムに添加し、樹脂を撹拌して十分に分散させた。カラムを時々撹拌しながら氷上に保持した。20分間後、100mM MESNA(10μl)を各カラムに添加し、混合物を撹拌し、氷上に置いた。5分間後、カラムを排水し、冷TC8E(100mM トリス,0.2% CHAPS,5mM EDTA;pH8)(3.0ml)で洗浄した。最初に流出した流出液1.5mlの吸光度を565nmで分光光度的に測定して、流出液中のRPE−SHの量を測定した。これを元々添加した量から差し引いて、支持体に結合したRPEの量を求めた。
【0098】
以下の手順を用いてアルカリホスファターゼ−マレイミド、アルカリホスファターゼ−SH及びRPE−SHからコンジュゲート形成した。排水及び洗浄に費やした時間を除いて、カラムはコンジュゲート形成手順中氷浴に保持した。添加ステップを表1に示す。表中、1S、2M、3S等はどのタンパク質層を付加したかを示す(1はコンジュゲートの第1高分子コアを表し、付加したタンパク質がスルフヒドリル(S)またはマレイミジル(M)基で活性化されているかを表す)。表1に示す活性化タンパク質の量をそれぞれ1M 塩化マグネシウム(100μl)及び沈降樹脂上に少なくとも250μl(撹拌により樹脂を完全に分散させるのに必要な最小量)の上記液体を与えるのに十分なEC8Eを添加した。カラムを氷中で30分間インキキュベートした。インキュベート中2〜3回撹拌した。次いで、カラムを排水し、流出液を全部でほぼ1カラム容量に対しカラム中を再循環させた。次いで、カラムをTC8E(1.5ml)で洗浄して、流出液を収集した。カラムに栓を被せ、次の活性化タンパク質の添加を実施した。流出液の280nmでの吸光度を測定して、残存タンパク質の量を調べた(アルカリホスファターゼの場合には、280nmで140000M−1cm−1の吸光係数を使用した)。280nmでの吸光度を測定する前に、100mM MESNA(10μl)をアルカリホスファターゼ−マレイミド含有流出液に添加して、マレイミド発色団を除去した。これから、各ステップにおいて結合した活性化タンパク質の量を計算した。
【0099】
以下の手順を用いて抗体−マレイミド及び抗体−SHからコンジュゲート形成した。表1に従って活性化アルカリホスファターゼを最終添加し、インキュベートした後、カラムをTC75E(1.5ml)で洗浄し、栓を被せ、氷浴に置いた。10分間後、冷TC75E(200μl)及び指定量の活性化IgGを添加した。混合物を撹拌し、氷上に置いた。5分間後、1M 塩化マグネシウム(100μl)を添加し、混合物を撹拌した。氷浴において30分間後、カラムを排水し、TC8E(1.5ml)で洗浄した。流出液の280nmでの吸光度を測定し、流出液中に残存するIgGの量を210000という280nmでの吸光係数を用いて計算した。これから、樹脂に結合したIgGの量を計算した。
【0100】
以下の手順を用いて支持体からコンジュゲートを遊離させた。非結合IgGを樹脂から洗浄した後、カラムに栓を被せ、TC8E(200μl)及び100mM N−エチルマレイミド(5μl)を添加して、残存SH基を失活させた。混合物を撹拌して樹脂を分散させ、カラムを氷上に置いた。すべてのカラムについてタンパク質添加及び洗浄が完了するまでカラムを氷上に置いた。残存マレイミド基を失活させるために、100mM MESNA(10μl)を添加し、混合物を撹拌し、カラムを氷に戻した。10分間後、50% ヒドロキシルアミン(20μl)を添加し、カラムを撹拌して樹脂を分散させ、室温で60分間インキュベートした。次いで、カラムを予めPBSで平衡化したPD10脱塩素カラム(Pharmacia製)に直接排水し、産物をTC8E及びPBSで十分洗浄して、産物2.5mlを収集した。産物の濃度を565nmでの吸光度に基づいて求め、収率はRPEカラーの回収に基づいて計算した。コンジュゲートのタンパク質濃度は製造業者の指示に従って増強プロトコルを用いるBCAアッセイ(Pierce製試薬)により測定した。
【0101】
サンプルをHPLCにより分析した。各コンジュゲート(300μl)にPBS中100mg/mlのCHAPS(30μl)を添加した。サンプル(20μl)をWhatmann Macrospere GC 1000A(250mm×4.6mm)カラムに移動相としてのPBS中1mg/mlのCHAPSを0.2ml/分で流して、280nm及び566nmでダイオードアレーデテクタを用いてモニターした。
【0102】
製造したコンジュゲートのホスファターゼ活性を比較した。コンジュゲート形成反応における活性化アルカリホスファターゼの吸収に基づき、アルカリホスファターゼの回収がR−フィコエリトリンカラーの回収に比例していると仮定して、各コンジュゲートについて50mM ビストリプロパン、150mM NaCl、10mM MgCl、1mM ZnCl及び10% 市販の非特異的結合ブロック剤(すなわち、Superblock(商標)(Pierce))を含有する緩衝液(pH7.2)中の希釈物を調製して、10nM 結合アルカリホスファターゼを得た。マイクロプレートのウェル中の各コンジュゲート5.0μlに対して基質(PNPP,Pierce)(100μl)を添加し、混合物を撹拌し、5分間にわたって405nmでの吸収を測定した。10nMの非コンジュゲートアルカリホスファターゼを基準として用いた。
【0103】
コンジュゲートをTSH ELISAアッセイにおいて比較した。96ウェル微量測定プレートのウェルをTSHのβ−サブユニットに特異的なモノクーナル抗体(PBS中20g/ml)で37℃において60分間被覆し、市販されている非特異的結合ブロック剤(すなわち、Superblock(商標)(Pierce))でブロックした。ウェルにTSH含有標準溶液(25μl)を添加した。これらの溶液は市販のTSHアッセイに対するキャリブレーターとして用いた。サンプル容量の蒸発ロスを防ぐためにプレートにカバーを被せ、37℃において3時間インキュベートした。ウェルを排水し、水で5回洗浄し、50mM ビストリプロパン、150mM NaCl、10mM MgCl、1mM ZnCl及び10% 市販の非特異的結合ブロック剤(すなわち、Superblock(商標)(Pierce))を含有する緩衝液(pH7.2)中コンジュゲート(100μl)を添加した。コンジュゲート濃度は1つの試験で40pM RPEであり、別の試験で200ng/mlであった。37℃で3時間後、ウェルを排水し、水で5回洗浄した。基質(100μl)を添加し、プレートを37℃に置いた。405nmでの吸光度を30分間にわたり30秒間隔で測定した。各ウェルについてVmaxを計算した。
【0104】
【表1】

【0105】
結果
第1ステップ(1S)で、0.200ナノモルのSATA活性化RPEを得た。このステップのpHは反応を遅らすために後続のステップよりも低くし、RPEを連結前に支持体中に分散するようにした。各コンジュゲートの結合を最小限とし、均質産物を得るために前記コアタンパク質の固定化分子間の距離を長くすることが望ましい。0.200ナノモルの添加SATA活性化RPEのうち、0.168〜0.178ナノモルがEMCH活性化支持体に結合した。
【0106】
残存マレイミド基をMESNAで失活させ、洗浄して残存MESNA及び活性化RPEを除去した後、マレイミド活性化アルカリホスファターゼ(0.8ナノモル)を添加した(ステップ2M)。この層及びその後の活性化AP層を成長コンジュゲートに結合する量を最大限とするような条件で付加した。前記条件とは過剰の活性化タンパク質、(チオール−マレイミド反応を助けるための)pH8及び(負に帯電したタンパク質のイオン反発を解消するための)マグネシウムイオンの存在であった。本実施例では、コンジュゲート間のサイズの違いを最小限とするので成長コンジュゲートを新しいタンパク質層で飽和させることが望ましかった。このステップ(2M)では、平均3.6分子のAPが存在するRPEの各分子に結合した。
【0107】
次のステップ(3S)では、前の層中のAPの各分子に対して平均2.0分子のAPが結合し、これによりRPEの各分子に対して全部でほぼ11分子のAPが結合した。ステップ4Mでは、APの摂取は再びほぼ2倍であった。ステップ5Sで残っている1反応は、大過剰の活性化タンパク質を使用したが、ステップ4Mで摂取された分子あたりたった1.4分子のAPの摂取だけであった。
【0108】
最終タンパク質添加において使用されたIgGをSHまたはマレイミド誘導体で活性化して前のAP層の活性化を調節した。添加された量が多くのコンジュゲートにおいて予想された飽和レベルよりも有意に少なかったので、コンジュゲート上のタンパク質が不均一に摂取される危険性があり、コンジュゲートがより深い内部よりもアガロースビーズの表面近くに位置している。反応前にビーズ中への活性化IgGの分散を促進するために、このステップのpHを7.5に低下させ、IgG添加から5分間塩化マグネシウムを控えた。活性化IgGの摂取は反応Gを除くすべての反応でほぼ定量的であり、反応GではコンジュゲートをIgGで飽和させるために過剰量を使用した。反応Gでは、APの層を増やしたときに見られる傾向を維持しながら前の層中のAPの各分子につき1.2分子のGPを吸収させた。
【0109】
各反応で抗体添加ステップのインキュベーション終了時に、N−エチルマレイミドを添加してコンジュゲート上の残存SH基を失活させた。遊離ステップの直前に、MESNAを残存マレイミド基を失活させるために添加した。活性基の少なくとも1つを失活させると、支持体から遊離後のコンジュゲートの更なる連結(ダイマー化またはマルチマー化)が防止される。
【0110】
遊離は室温において希ヒドロキシアミン溶液で処理することにより実施され、1時間で終了した。ヒドロキシルアミンは支持体へのタンパク質アセンブリを保持するヒドラゾン結合と反応して、コンジュゲートをその最終形態で遊離させる。
【0111】
アガロースから分子コンジュゲートを遊離させた後に残存する1つのヒドラジド基は選択的に他の化合物に連結され得る。そのヒドラジドを介する連結のために適した化合物には、アルデヒド、ケトン及び活性化カルボン酸が含まれるが、これらに限定されない。
【0112】
報告されている遊離コンジュゲートの収率は565nmでの吸光度により調べた結合RPEの回収に基づく。収率は、AP層が1層しかないコンジュゲートAの場合の76%から、5層を有するコンジュゲートHの場合の50%の範囲である。残りは支持体中に残存するピンク色としてはっきりと目に見える。
【0113】
ヒドロキシルアミンに長期間露出した後非常に少量の別のコンジュゲートが支持体から遊離する。
【0114】
コンジュゲートのそれぞれ別個の単位中に1つのRPEコアを仮定して、各コンジュゲートの平均分子量を活性化タンパク質の取り込み量から計算した。計算値はコンジュゲートAの約1.5MDaからコンジュゲートHの約11MDaの範囲であり、サイズ排除カラムのコンジュゲートのHPLCは、計算分子量に一致するピークを示した。565nmでのモニタリングはより大きなコンジュゲートではピーク強度の低下を示し、このことは低い収率を反映しており、一方280nmでのモニタリングは大きいコンジュゲート上のAPレベルが高いために高いピーク強度を示す。
【0115】
コンジュゲート中に存在するRPEによりコンジュゲートのモル濃度を直接測定できる。コアとしてのその使用は、コンジュゲートの各最終単位中に1つしかRPE発色団が存在しないことを仮定するものである。その強い吸光率(565nmで1960000の吸光係数)により、本実施例で示すように少なくともnm範囲までコンジュゲート濃度を正確に測定できる。
【0116】
コンジュゲートを用いてTSHに対するELISAアッセイを実施した。モル濃度を40pMで一定に維持し、抗−TSH抗体が約6/コンジュゲート単位で一定であれば、PNPPの加水分解のVmaxは各TSHレベルで高分子コンジュゲートあたりのアルカリホスファターゼの量に比例して増加する。コンジュゲートの分子量は大体マグニチュードのオーダーの範囲で異なるので、同一実験を200ng/mlコンジュゲートの一定濃度で実施した。重量ベース実験で、以前のモルベース実験と比較して、コンジュゲートAの濃度は約3倍であり、コンジュゲートHの濃度は1/2未満である。多くのコンジュゲートがモルベース濃度で見られたとものと類似のシグナルを与え、これはシグナルが実質的に各コンジュゲートのアルカリホスファターゼ含量に依存し、存在する高分子コンジュゲートの数に依存しないことを実証している。コンジュゲートHは重量ベース実験で有意に少ないシグナルしか示さなかった。多分、高分子量及び低モル濃度によりコンジュゲートは結合TSH含有表面へゆっくり拡散する。よって、この結果は、本発明の高分子コンジュゲートは従来方法で得られたものよりも優秀であることを示す。
【0117】
アルカリホスファターゼ定数を保持しながらコンジュゲートの異なる抗体含量の影響を調べた。平衡で、抗体含量を2.2〜2.6/コンジュゲート単位とすると、シグナルは約20%だけしか変化せず、各コンジュゲート単位のAP含量がシグナルを発生させる能力の主な決定因子であることを示している。コンジュゲートの拡散速度及びコンジュゲートの固定アナライトに結合する速度は結合部位のサイズ及び含量の両方に依存し得る。
【実施例2】
【0118】
本実施例では、本発明の方法の具体例を用いて化学発光アッセイのためのコンジュゲートを製造した。従来技術では、多くの場合化学発光分子アクリジニウムを着目抗体のアミノ基に直接連結している。化学発光シグナルは1抗体あたりに結合したアクリジニウム部分の数に比例するので、できるだけ多くリンクさせることが望ましい。しかしながら、抗体に結合するアクリジニウムの量が過剰であると、標的分子に対するその特異的結合を妨害する可能性があり、またアッセイの他の成分への非特異的結合に関与する可能性があり、そのため性能が低下する。
【0119】
本実施例では、R−フィコエリトリンをチオール基で十分に置換し、次いで固体支持体に結合させる。抗体をマレイミド基を含有するように活性化し、R−フィコエリトリンコアに連結させた。前記混合物の1部では抗体上の残存マレイミド基をMESNAを用いてスルホネート基でキャッピングし、別の部分では残存マレイミド基をジチオトレイトールで処理した。後者の場合ジチオトレイトールはホモ二官能性試薬として作用してマレイミドの代わりにチオールを生ずる。支持体から過剰の試薬を洗浄した後、EMCHを添加した。この試薬上のマレイミド基は結合コンジュゲート上のチオール基とチオエーテルを形成して、ヒドラジド基を有するコンジュゲートが生ずる。両方の部分をヒドロキシルアミンで処理してコンジュゲートを遊離させ、このコンジュゲートを生理学的緩衝食塩液に透析する。コンジュゲートをアクリジニウム活性エステルで処理し、このエステルは中性pHで優先的にヒドラジド基と反応し、この位置をアクリジニウムで占める。第1部分でアクリジニウムは主にコンジュゲートのR−フィコエリトリン部分に連結し、第2部分ではアクリジニウムはR−フィコエリトリン及び抗体部分の両方に連結する。
【0120】
AbM:
生理学的緩衝食塩液中2.69mg/mlの抗体(500μl)に対して100mM トリエタノールアミン(pH7.7)(100ul)及びDMF中100mM GMBS(10ul)を添加した。室温で50分間後、混合物を5mM EDTAを含有する生理学的緩衝食塩液中に脱塩して、1.2mlを収集した。
【0121】
RS:
100mM トリエタノールアミン(pH7.7)中10mg/mlのR−フィコエリトリン(200ul)に対して500mM EDTA(10μl)及び水中100mM 2−イミノチオラン(40μl)を添加した。室温で55分間後、混合物を5mM EDTAを含有する生理学的緩衝食塩液中に脱塩して、1.2mlを収集した。
【0122】
R−フィコエリトリンに対する抗体のコンジュゲート形成:
フリットを取り付けたカラム中の酸化アガローススラリー(2.0ml)を10mMリン酸ナトリウム、150mM 塩化ナトリウム、0.2% CHAPS、5mM EDTA(pH7.2)(PCE)で洗浄した。カラムに蓋を被せ、PCE(500μl)及びDMF中100mM EMCH(50μl)を添加し、混合物を撹拌し、室温で70分間放置した。次いで、カラムを排水し、PCE(2ml)及びTC8E(100mM トリス,0.2% CHAPS,5mM EDTA;pH8.0)(6ml)で洗浄し、氷浴中に置いた。ここにRS(566μl,4.0ナノモル)を添加し、混合物を渦巻き撹拌し、氷に置いた。時々渦巻き撹拌しながら15分間後、100mM MESNA(100μl)を添加した。混合物を渦巻き撹拌し、氷に置いた。5分間後カラムを排水し、TC8E(10ml)で洗浄した。カラムに蓋を被せ、AbM(1.0ml,9.4ナノモル)を添加した。混合物を渦巻き撹拌し、氷に置いた。時々渦巻き撹拌しながら15分間後、カラムを排水し、冷TC8E(5.5ml)で洗浄した。
【0123】
次いで、活性基をキャッピングし、コンジュゲートを次のように遊離させた。混合物をフリットを取り付けたカラム中に等分に2分(A及びBと命名)した。抗体上のマレイミド基をキャッピングするためにAに対してTC8E(300μl)及び100mM MESNA(20μl)を添加した。抗体マレイミド活性化をチオール活性化に変換させるためにBに対してTC8E(300μl)及び100mM DTT(20μl)を添加した。A及びBの両方を渦巻き撹拌し、氷上に10分間置いた後冷TC8E(4.0ml)で洗浄した。カラムに蓋を被せ、それぞれにTC8E(300μl)及びDMF中100mM EMCH(20μl)を添加し、混合物を渦巻き撹拌し、氷上に置いた。10分間後、カラムを排水し、支持体をTC8E(1ml)及びTC7E(100mM トリス,0.2% CHAPS,5mM EDTA;pH7.0)(2ml)で洗浄した。カラムに蓋を被せ、TC7E(300μl)及び50% ヒドロキシルアミン(60μl)を添加し、混合物を渦巻き撹拌した。室温において60分間インキュベート後、カラムを排水し、TC7E(2ml)で洗浄した。集めた流出液を別々にリン酸緩衝食塩液に対して透析し、1/15A及びBと命名した。産物のゲル透過カラムでのHPLCはR−フィコエリトリンコア上の2抗体のコンジュゲートと一致した。
【0124】
次いで、コンジュゲートをアクリジニウム活性エステルと次のように反応させた。別々のチューブにおいてA及びB(各70μl)に対してDMF中5mg/mlのアクリジニウム活性エステル(20μl)を添加した。室温で4.5時間後、混合物を生理緩衝食塩液で平衡化した脱塩カラムに通して、それぞれ1.0mlを収集し、1/16A及びBと命名した。
【0125】
コンジュゲートの吸光度を280nm、370nm及び565nmで測定した。計算のためのR−フィコエリトリン発色団(RPE)のext565は1960000であり、アクリジニウム発色団(Ac)のext565は14650である。1/15A及びBから比A370/A565は0.118と算出された。この比を用いて1/16A及びBのR−フィコエリトリンが関与するA370を計算した。これを測定したA370値から差し引いて1/16A及びBのR−フィコエリトリンが関与するA370を計算した。これから、アクリジニウム濃度(単位:μM)及び置換率(SR)を計算した。
【0126】
【表2】

【0127】
1/16Aは、SR(アクリジニウム/コンジュゲート)が元の活性化後測定したRPEあたりのSH基に非常に近いことを示している。1/16Bはより多いSRを示し、これは多分抗体上の使用した追加活性基に由来するであろう。
【0128】
本発明を特定実施態様を参照して詳細に説明してきたが、これらの実施態様に対して本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく各種の変化及び修飾を加え得ることは当業者に自明である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各コンジュゲートが2から30個の所定数の抗体を含むコンジュゲートの集団からなる組成物。
【請求項2】
3高分子層からなり、前記3層のうち少なくとも2層が複数の高分子を含み、前記層が3次元で表面を形成するコンジュゲート。
【請求項3】
特異的結合メンバー、複数のエンドポイント分子、及び前記エンドポイント分子を実質的に分離する複数のスペーサー分子を含むコンジュゲート。
【請求項4】
分子の実質的に各コンジュゲートが1から30分子の特異的結合メンバーを含み、各特異的結合メンバーはコンジュゲートの表面上に配置されており、実質的に各コンジュゲートがコアを含み、前記コアはコンジュゲートの表面上に配置されていない分子を少なくとも1個含む、コンジュゲートの集団。
【請求項5】
反応性高分子と共有複合体化した第1高分子に結合した固体からなる反応性コンジュゲート複合体、及び前記固体及び前記第1高分子間の結合を開裂させ得る開裂試薬を含むキット。
【請求項6】
更に、着目タンパク質を反応性高分子と反応性にするために前記タンパク質と接触させ得る活性化試薬を含む請求の範囲第5項に記載のキット。

【図1】
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【公開番号】特開2009−294216(P2009−294216A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−172859(P2009−172859)
【出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【分割の表示】特願2003−570764(P2003−570764)の分割
【原出願日】平成14年12月16日(2002.12.16)
【出願人】(391008788)アボット・ラボラトリーズ (650)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
【Fターム(参考)】