説明

高分子フィルムロール梱包体

【課題】 ポリエステルやポリアミドなどのように吸湿性の高い高分子からなるフィルムを巻き上げたロールの端部が雰囲気中の水分を吸収して膨張することを防止し、フィルムの端部が中央部に比べ長くなるために発生するフリル状の弛みトラブルを改良した高分子フィルムロール梱包体をを提供する。
【解決手段】 含水率が0.5重量%以下である紙製の巻芯に巻き上げられた高分子フィルムロールを、放湿性のフィルムで包装してなることを特徴とする高分子フィルムロール梱包体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステルやポリアミドなどのように吸湿性の高い高分子からなるフィルムを巻き芯に巻き付けてロール形態としたものの梱包体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルやポリアミドなど比較的吸湿性の高い高分子からなるフィルムをロール形態に巻き上げた際、端部が雰囲気中の水分を吸収し膨張するため、水分を吸収していない中央部に比べ長くなるためフリル状に弛むトラブルを生じることがある。このため、アルミニウム箔あるいはアルミニウム蒸着層を有する防湿フィルムをフィルムロールに巻き付けて、湿気の侵入を防ぐ方法が一般に採られているが、近年、フィルムの弛みがないことが強く要求されるようになり、防湿フィルムで包み込まれた内部の空間の水分によるフィルムの弛みレベルをも問題にされるようになってきている
そこで、吸湿剤を防湿フィルムの内側に備え、フィルム内部の水分を除去し弛みを改良する方法が提案されているが、光学用途、電子部材用途のように極端に異物を嫌う用途においては、これら吸湿剤が異物の原因となる可能性があるため、多量の吸湿剤を適用することができず、十分な効果を発揮し得なかった。
【0003】
フィルムをロール状に形態した後、加工前に乾燥工程を設けてフィルム内部の水分を除去する方法も提案されているが、乾燥工程を要する分、製造コストが高くなるという門外がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭53−109806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その解決課題は、異物の要因となる吸湿剤を使用せず、また事前のフィルム乾燥を経ることなく、ポリエステルやポリアミドなどのように吸湿性の高い高分子からなるフィルムを巻き上げたロールの端部が雰囲気中の水分を吸収して膨張することを防止し、フィルムの端部が中央部に比べ長くなるために発生するフリル状の弛みトラブルを改良した高分子フィルムロール梱包体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、特定の構成を採用することによれば、上記課題を容易に解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の要旨は、含水率が0.5重量%以下である紙製の巻芯に巻き上げられた高分子フィルムロールを、放湿性のフィルムで包装してなることを特徴とする高分子フィルムロール梱包体に存する。
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に使用するフィルムロールの巻き芯には、乾燥された紙製の管を巻芯として使用する。巻芯の含水率は、0.5重量%以下であり、好ましくは0.4重量%以下、さらに好ましくは0.3重量%以下である。巻芯の含水率が0.5重量%を超えると、フィルムに発生するフリル状の弛みを防止することができない。
【0009】
紙管は、異物の原因ともなりうる毛羽立ちの少ない、防塵処理紙管を使用することが望ましい。
【0010】
本発明では、紙管が一種の吸湿剤として機能するため、想定される防湿フィルム内部の空気量に対して、紙管の含水容量について留意する必要があるが、紙管の密度等によっても代わるため適宜選択する。なお、巻き芯の内径と巻き芯の長さは必ずしも自由に選択できないため、紙管体積を増やして含水容量を増す必要がある時には、紙管の肉厚を増やすことで必要な含水容量を確保することが推奨される。
【0011】
紙管の乾燥方法は、特に限定されないが、例えば、乾燥熱風で熱処理する方法やクーラーや吸湿剤等で乾燥雰囲気に制御された保管スペースで数日〜数ヶ月保管する方法など、が挙げられる。
【0012】
本発明でいう、防湿性のフィルムとは、アルミニウム箔をラミネートしたものや、アルミニウム蒸着が施されたポリエチレンフィルムなど、透湿の極めて少ないフィルムを指す。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、異物の要因となる吸湿剤を使用することなく、また事前のフィルム乾燥を経なくても、フィルム中の水分に起因するフィルムのフリルを回避することができ、本発明の工業的価値は高い。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明は、以下の例に限定されるものではない。なお、本発明のおける測定方法・評価方法は、以下に示すとおりである。
【0015】
(1)紙管の含水率
株式会社ケツト製紙水分科学研究所計(PM−80)を用いて、紙管の含水量を測定する。
【0016】
(2)端部弛み個数
梱包後のフィルムロール梱包体を、23℃50RH%の環境下で30日間保管後、最表層フィルムを3m巻き出して採取し、平坦な台上に広げて端部に発生したフリル状の凹凸の個数を数える。
【0017】
(3)フィルムの含水率
フィルムの含水率測定は、カールフィッシャー水分計を用いて、フィルムを15mm幅のサイズに切り出し、重量が約1gになるように必要な長さだけ切り取る。切り取ったサンプルを小さく丸めてクリップで止め、測定を行う。
【0018】
実施例1:
紙管Gコア(肉厚15mm、内径6インチ、長さ1200m、含水分率7.8±1.5%)を、熱風オーブンも用いて、窒素気流下、110℃で1時間の乾燥を行い、窒素雰囲気のまま室温まで冷却した後、含水率0.3重量%の巻き芯を得た。この紙管に、厚さ188μmの二軸延伸ポリエステルフィルムであるダイアホイルT100−188(三菱樹脂社製 サイズ 1060mm×1200m)を、巻き上げてフィルムロールとした。なお、巻き上げ条件は、張力520N、速度150m/分とした。巻き上げ後、村角社製防湿フィルムアルミラミ紙(OPP/アルミニウムラミネートフィルム)で包み、さらにポリエチレンフィルムで包んで梱包した。
【0019】
比較例1:
紙管を乾燥しないほかは実施例1と同様にして製品を得た。
【0020】
比較例2:
ポリエチレンフィルムを使用しないこと以外は、実施例1と同様にして製品を得た。
【0021】
以上、得られた結果をまとめて下記表1に示す。
【0022】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、例えば、ポリエステルフィルムややポリアミドなどのように吸湿性の高い高分子からなるフィルムの梱包として好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
含水率が0.5重量%以下である紙製の巻芯に巻き上げられた高分子フィルムロールを、放湿性のフィルムで包装してなることを特徴とする高分子フィルムロール梱包体。

【公開番号】特開2010−163189(P2010−163189A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−7117(P2009−7117)
【出願日】平成21年1月16日(2009.1.16)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】